2020-004730
積層体、積層体の製造方法、画像表示装置、画像表示装置の製造方法及び偏光板の光透過率改善方法
- 審判番号
- 2020-004730
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-027946外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年04月07日
- 審決日
- 2021年02月03日
- 公報発行日
- 2021年03月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】大日本印刷株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人 安富国際特許事務所
- 分類
- P18 .113-WY (G02B) / P18 .121-WY (G02B) / P18 .537-WY (G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 16項目
第1 手続等の経緯
特願2014-27946号(以下「本件出願」という。)は、平成26年2月17日の出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
第2 本件発明
本件出願の請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明7」という。)は、令和2年11月10日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるところ、本件発明1及び本件発明2は、それぞれ、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】面内に複屈折率を有する光透過性基材と反射防止層とが積層された構成を有し、画像表示装置のバックライト光源と、該バックライト光源側の偏光子との間に配置され、バックライト光源側の偏光板の光透過率を向上させるために用いられる積層体を備える画像表示装置であって、前記面内に複屈折率を有する光透過性基材の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記偏光子の透過軸とのなす角度が、0°±15°となるように、前記面内に複屈折率を有する光透過性基材と前記偏光子とが配置されており、前記面内に複屈折率を有する光透過性基材は、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.01以上であり、前記バックライト光源側の偏光子に、偏光された光が入射されるものであり、前記偏光された光の偏光軸と、前記面内に複屈折率を有する光透過性基材の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記偏光子の透過軸とのなす角度が、0°±15°であり、前記光透過性基材を構成する材料はポリエチレンナフタレートであり、前記反射防止層は、低屈折率層であり、前記光透過性基材の前記バックライト光源側に配置されていることを特徴とする画像表示装置。」
「 【請求項2】面内に複屈折率を有する光透過性基材と反射防止層とが積層された構成を有し、画像表示装置のバックライト光源と、該バックライト光源側の偏光子との間に配置され、バックライト光源側の偏光板の光透過率を向上させるために用いられる積層体を備える画像表示装置であって、前記面内に複屈折率を有する光透過性基材の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記偏光子の透過軸とのなす角度が、0°±15°となるように、前記面内に複屈折率を有する光透過性基材と前記偏光子とが配置されており、前記面内に複屈折率を有する光透過性基材は、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.01以上で、厚さが5~300μm(但し、75μm以下である場合を除く)であり、前記バックライト光源側の偏光子に、偏光された光が入射されるものであり、前記偏光された光の偏光軸と、前記面内に複屈折率を有する光透過性基材の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記偏光子の透過軸とのなす角度が、0°±15°であり、前記反射防止層は、低屈折率層であり、前記光透過性基材の前記バックライト光源側に配置されていることを特徴とする画像表示装置。」
なお、本件発明3~5は、本件発明1又は本件発明2に対してさらに他の発明特定事項を付加したものである。
また、本件発明6は、本件発明1に対応する製造方法の発明であり、本件発明7は、本件発明1に対応する偏光板の光透過率改善方法の発明であり、いずれも本件発明1とカテゴリ表現上の差異となる発明である。
第3 引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明
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1 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用文献2011-59488号公報(以下、同じく「引用文献1」という。)には、以下の記載事項がある。なお、当合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。
(1)「【技術分野】【0001】本発明は、偏光板およびそれを用いた液晶表示装置に関する。・・・(省略)・・・続きを表示(全19行)【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0010】そこで、本発明の目的は、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする偏光板であって、液晶表示装置に搭載した際の色ムラが少なく視認性に優れ、かつ薄型化を実現し、コストパフォーマンスや生産性にも優れる偏光板を提供することにある。また、本発明のもう一つの目的は、前記の偏光板を用いた視認性に優れる液晶表示装置を提供することにある。【課題を解決するための手段】【0011】本発明者らは、上記色ムラ問題を解決するべく、鋭意研究を行なってきた。その結果、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする偏光板において、面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたときに、(nx-nz)/(nx-ny)で表されるNz係数が2.0未満の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとして用いることで、液晶表示装置の色ムラを効果的に低減でき、高い視認性と薄型化、低コスト化との両立が実現できることを見出した。【0012】すなわち、本発明によれば、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムと、該偏光フィルムの片面に、第一の接着剤層を介して積層された延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、を備え、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたときに、(nx-nz)/(nx-ny)で表されるNz係数が2.0未満であることを特徴とする偏光板が提供される。【0013】本発明の偏光板において、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、面内の位相差値が200~1200nmもしくは2000~7000nmの値であることが好ましい。・・・(省略)・・・【発明の効果】【0021】本発明によれば、Nz係数が2.0未満の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとして用いることで、液晶表示装置の表示時における色ムラが少なく優れた視認性を示し、かつ薄型化を実現し、コストパフォーマンスや生産性にも優れる偏光板を提供することができる。また、本発明によれば、前記の偏光板を用いた視認性に優れる液晶表示装置を提供することができる。」
(2)「【発明を実施するための形態】【0022】<偏光板>本発明の偏光板は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムと、該偏光フィルムの片面に、第一の接着剤層を介して積層された延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、を備えるものである。また、本発明の偏光板は、偏光フィルムにおける延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層されている面とは反対側の面に、第二の接着剤層を介して積層された保護フィルムまたは光学補償フィルムを備えていてもよい。以下、本発明の偏光板について具体的に説明する。続きを表示(全32行)【0023】(偏光フィルム)本発明に用いる偏光フィルムは、通常、公知の方法によってポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、およびホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造されるものである。・・・(省略)・・・【0038】(延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)本発明に用いる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとは、一種以上のポリエチレンテレフタレート系樹脂を溶融押出によって製膜し、横延伸してなる一層以上の一軸延伸フィルム、または、製膜後引き続いて縦延伸し、次いで横延伸してなる一層以上の二軸延伸フィルムである。ポリエチレンテレフタレートは、延伸により屈折率の異方性および、それらで規定される位相差値、Nz値、光軸を任意に制御することができ、本発明においては、必要な光学性能を効率よく付与できることから一軸延伸品が好ましく用いられる。【0039】ポリエチレンテレフタレート系樹脂とは、繰り返し単位の80mol%以上がエチレンテレフタレートで構成される樹脂を意味し、他のジカルボン酸成分とジオール成分を含んでいてもよい。他のジカルボン酸成分としては、特に限定されるものでないが、たとえば、イソフタル酸、4,4’-ジカルボキシジフェニール、4,4’-ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4-カルボキシフェニル)エタン、アジピン酸、セバシン酸、および1,4-ジカルボキシシクロヘキサン等が挙げられる。【0040】他のジオール成分としては、特に限定されるものではないが、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。・・・(省略)・・・【0072】本発明の偏光板においては、かかる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとして、Nz係数が2.0未満であるものを用いる。このため、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、一軸延伸にて作製することが好ましい。このような光学性能の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを採用することで、かかる偏光板を搭載した液晶表示装置における色ムラを効果的に低減することが可能となる。Nz係数は、2.0未満であれば小さいほど色ムラ低減の効果を発揮し、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下である。Nz係数が2.0以上の場合は、かかる偏光板を搭載した液晶表示装置において強い色ムラが発生し、視認性に劣るものとなる。Nz係数が2.0以上4未満である場合、色ムラ低減効果を得ることができない。なお、Nz係数が4以上である場合であっても色ムラ低減効果を得ることができ、この場合、Nz係数の値が高いほど、色ムラ低減に有利である。【0073】また、本発明の偏光板における延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、膜厚をdとしたときに、(nx-ny)×dで定義される面内位相差値R0が200~1200nmもしくは2000~7000nmのものが好適に採用できる。R0がかかる範囲外、すなわちR0が1200を超え、2000nm未満の範囲にある場合は、比較的目立つ色ムラが発生する傾向にある。したがって、より効果的に色ムラを低減する観点から、面内位相差値R0は、1200nm以下もしくは2000nm以上であることが好ましい。また、R0が200nm未満と小さい場合は、安定的にNz係数を2.0未満に制御することが困難であり、生産性やコストの面に問題を有する。一方で、R0が7000nmを超える場合は、Nz係数は低減させやすいものの、機械的強度に劣るフィルムとなる傾向にある。【0074】本発明の偏光板においては、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸の軸ズレ角度は目的や生産上の制約等に応じて任意に選択することができる。たとえば、本発明の偏光板を、偏光性の強いバックライト光源を備える液晶表示装置のバックライト光源側(入射側)偏光板として適用する場合、延伸ポリエチレンテレフタレートの面内位相差に由来する正面方向からの干渉色の発現を防ぐため、偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの軸ズレ角度は小さい方が好ましい。好ましくは、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度は、0度以上15度以下の範囲とすることが好ましい。かかる場合においても、Nz係数を2.0未満とすることが、色ムラの低減に効果的である。【0075】偏光性の強いバックライト光源として、たとえば、バックライトユニット内に反射型偏光分離フィルムを備えるもの等が挙げられる。反射型偏光分離フィルムとは、バックライトの光を選択的に反射させ、再利用することで可視範囲の輝度を向上させる機能を有するフィルムである。反射型偏光分離フィルムに相当する市販品としては、米国の3M Company〔日本では住友スリーエム(株)〕から販売されている「DBEF」(商品名)などがある。【0076】一方で、上記以外の場合には、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度が大きいものも好ましく用いることができる。中でも、20度以上50度以下のズレ角度であるものがより好ましい。偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの軸ズレ角度を上記の範囲とすることで、より効果的に液晶表示装置の色ムラを低減することができる。・・・(省略)・・・【0079】本発明の偏光板に用いられる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みは、15~75μmの範囲内であることが好ましく、20~60μmの範囲内であることがより好ましい。延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みが15μm未満である場合には、ハンドリングしにくい(取り扱い性に劣る)傾向にあり、また厚みが75μmを超える場合には、厚膜となるためコスト高となり、さらには、薄肉化のメリットが薄れる傾向にある。・・・(省略)・・・【0217】<液晶表示装置>以上のようにしてなる偏光板、すなわち、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/第一の接着剤層/偏光フィルム/第二の接着剤層/[保護フィルムまたは光学補償フィルム]/粘着剤層/剥離フィルムとの層構造を有する偏光板は、粘着剤層から剥離フィルムを剥離して、液晶セルの片面または両面に貼合し、液晶パネルとすることができる。この液晶パネルは、液晶表示装置に適用することができる。」
(3)「【実施例】【0223】以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。【0224】続きを表示(全26行)以下の例において、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みは、メーカー呼称値で示した。面内位相差値R0およびNz係数は、位相差フィルム・光学材料検査装置RETS(大塚電子株式会社製)にて測定した。また、環状オレフィン系樹脂からなる光学補償フィルムの厚み、面内位相差値R0および厚み方向位相差値Rthはメーカー呼称値で示した。環状オレフィン系樹脂からなる光学補償フィルムのR0およびRthは位相差フィルム・光学材料検査装置RETS(大塚電子株式会社製)を用いて実測もしているが、ほぼ同様の値が得られている。【0225】<実施例1>(a)偏光フィルムの作製平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に56.5℃で浸漬した。引き続き8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを得た。延伸は、主に、ヨウ素染色およびホウ酸処理の工程で行ない、トータル延伸倍率は5.3倍であった。【0226】(b)粘着剤付き偏光板の作製厚み38μmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(Nz係数:1.0、R0:2160nm)の貼合面に、コロナ処理を施した後、脂環式エポキシ化合物を含有する無溶剤の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を、チャンバードクターを備える塗工装置によって厚さ2μmで塗工した。また、厚み73μmの環状オレフィン系樹脂からなる光学補償フィルム(面内位相差値R0:63nm、厚み方向位相差値Rth:225nm)の貼合面に、コロナ処理を施した後、上記と同じ接着剤組成物を同様の装置にて厚さ2μmで塗工した。【0227】次いで、直ちに上記(a)にて得られた偏光フィルムの片面に上記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、もう一方の面に上記光学補償フィルムを、各々接着剤組成物の塗工面を介して貼合ロールによって貼合した。この際、偏光フィルムの透過軸と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレは0度とした。その後、この積層物の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム側から、メタルハライドランプを320~400nmの波長における積算光量が600mJ/cm2となるように照射し、両面の接着剤を硬化させた。さらに、得られた偏光板の光学補償フィルムの外面に、厚み25μmのアクリル系粘着剤の層(セパレートフィルム付き)を設けた。【0228】(c)液晶表示装置の作製ソニー(株)製の垂直配向モードの液晶表示装置“BRAVIA”(対角寸法40インチ=約102cm)の液晶パネルから光出射側偏光板を剥がし、その代わりに、市販の偏光板(スミカランSRW842E-GL5、住友化学(株)製)を、オリジナルの偏光板と同じ軸方向で、その粘着剤層側にて貼り付けた。また、光入射側偏光板も剥がし、その代わりに、上記(b)で作製した粘着剤層付き偏光板からセパレートフィルムを剥がしたものを、オリジナルの偏光板と同じ軸方向で、その粘着剤層を用いて貼り付けた。得られた液晶表示装置について、目視にて観察したところ、斜め方向の色ムラ(干渉ムラ)は小さく、視認性は良好であった。・・・(省略)・・・【0234】各例につき、偏光板における延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの光学特性と試験結果を表1にまとめた。【0235】【表1】【0236】表1に示されるように、偏光板における延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのNz係数が2.0未満である実施例1~5については、偏光板を搭載した液晶表示装置における色ムラが少なく、視認性に優れる効果が認められた。一方で、Nz係数が2.0以上である比較例1については、色ムラが強く、視認性に劣るものであった。【0237】今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は前記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。」
2 引用発明
引用文献1の上記1の記載に基づけば、引用文献1には、偏光フィルムを用いて粘着剤付き偏光板を作製し、さらに得られた粘着剤付き偏光板から作製した、実施例1の液晶表示装置として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬し、その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に56.5℃で浸漬し、引き続き8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを得、ここで、延伸は、主に、ヨウ素染色およびホウ酸処理の工程で行ない、トータル延伸倍率は5.3倍であり、厚み38μmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(Nz係数:1.0、R0:2160nm)の貼合面に、コロナ処理を施した後、脂環式エポキシ化合物を含有する無溶剤の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を、厚さ2μmで塗工し、また、厚み73μmの環状オレフィン系樹脂からなる光学補償フィルム(面内位相差値R0:63nm、厚み方向位相差値Rth:225nm)の貼合面に、コロナ処理を施した後、上記と同じ接着剤組成物を厚さ2μmで塗工し、次いで、直ちに得られた偏光フィルムの片面に上記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、もう一方の面に上記光学補償フィルムを、各々接着剤組成物の塗工面を介して貼合ロールによって貼合し、この際、偏光フィルムの透過軸と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレは0度とし、その後、両面の接着剤を硬化させ、さらに、得られた偏光板の光学補償フィルムの外面に、厚み25μmのアクリル系粘着剤の層(セパレートフィルム付き)を設け、垂直配向モードの液晶表示装置(対角寸法40インチ=約102cm)の液晶パネルから光出射側偏光板を剥がし、その代わりに、市販の偏光板を、オリジナルの偏光板と同じ軸方向で、その粘着剤層側にて貼り付け、また、光入射側偏光板も剥がし、その代わりに、上記粘着剤層付き偏光板からセパレートフィルムを剥がしたものを、オリジナルの偏光板と同じ軸方向で、その粘着剤層を用いて貼り付けた、液晶表示装置。」
第4 対比・判断
1 本件発明1
(1)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
ア 光透過性基材
引用発明の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」が、光透過性であり、面内に複屈折率を有するものであることは、自明のことである。
そうしてみると、引用発明の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、本件発明1の「光透過性基材」に相当する。また、引用発明の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、本件発明1の「光透過性基材」の「面内に複屈折率を有する」との要件を満たす。
イ バックライト光源、偏光子、画像表示装置
引用発明は、「得られた偏光フィルムの片面に上記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、もう一方の面に上記光学補償フィルムを、各々接着剤組成物の塗工面を介して貼合ロールによって貼合し」、「その後、両面の接着剤を硬化させ、さらに、得られた偏光板の光学補償フィルムの外面に、厚み25μmのアクリル系粘着剤の層(セパレートフィルム付き)を設け」、「垂直配向モードの液晶表示装置の液晶パネルから光出射側偏光板を剥がし、その代わりに、市販の偏光板を、オリジナルの偏光板と同じ軸方向で、その粘着剤層側にて貼り付け、また、光入射側偏光板も剥がし、その代わりに、上記粘着剤層付き偏光板からセパレートフィルムを剥がしたものを」、「その粘着剤層を用いて貼り付けた」ものである。
一般に、液晶表示装置においてはバックライト光源が用いられるところ、引用発明においてもバックライト光源が用いられていることは、自明のことである(当合議体注:このことは、引用文献1の【0222】の「液晶表示装置を構成するバックライト」との記載からも明らかである。)。
上記製法から理解される積層構造からみて、引用発明の「液晶表示装置」及び「偏光フィルム」は、それぞれ、本件発明1の「画像表示装置」及び「偏光子」に相当する。また、本件発明1の「画像表示装置」と引用発明の「液晶表示装置」とは、「面内に複屈折率を有する光透過性基材」「を備える」点で共通する。
ウ 光透過性基材と偏光子との配置
引用発明は、「偏光フィルムの透過軸と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレは0度と」するものである。
引用発明の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の「遅相軸」は、その文言どおり、本件発明1の「光透過性基材」の「遅相軸」に相当する。また、引用発明の「偏光フィルム」の「透過軸」は、その文言どおり、本件発明1の「偏光子」の「透過軸」に相当する。
そうしてみると、引用発明の「液晶表示装置」は、本件発明1の「画像表示装置」における、「前記面内に複屈折率を有する光透過性基材の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記偏光子の透過軸とのなす角度が、0°±15°となるように、前記面内に複屈折率を有する光透過性基材と前記偏光子とが配置されて」いるとの要件を満たす。
エ 光透過性基材の複屈折率
引用発明の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、「厚み38μm」であり、「R0:2160nm」である。
ここで、「R0」は、面内位相差値を示す(当合議体注:このことは、引用発明の「光学補償フィルム(面内位相差値R0:63nm」との記載からも明らかである。)。また、面内位相差値R0を厚みで除した値が、遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸(ny)との差になる。そこで、引用発明の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」について「nx-ny」を計算すると、2160nm/38μm=0.0568となる。
そうしてみると、引用発明の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、本件発明1の「前記面内に複屈折率を有する光透過性基材」における、「屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.01以上であ」るとの要件を満たす。
(2)一致点及び相違点
以上より、本件発明1と引用発明とは、
「面内に複屈折率を有する光透過性基材を備える画像表示装置であって、前記面内に複屈折率を有する光透過性基材の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記偏光子の透過軸とのなす角度が、0°±15°となるように、前記面内に複屈折率を有する光透過性基材と前記偏光子とが配置されており、前記面内に複屈折率を有する光透過性基材は、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.01以上である画像表示装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
「画像表示装置」が、本件発明1は、「面内に複屈折率を有する光透過性基材と反射防止層とが積層された構成を有し、画像表示装置のバックライト光源と、該バックライト光源側の偏光子との間に配置され、バックライト光源側の偏光板の光透過率を向上させるために用いられる積層体を備える」とともに、「前記光透過性基材を構成する材料はポリエチレンナフタレートであり」、「前記反射防止層は、低屈折率層であり、前記光透過性基材の前記バックライト光源側に配置されている」のに対して、引用発明は、「積層体を備える」ものとはされておらず、また、本件発明1の「光透過性基材」に相当する物の材料は「ポリエチレンテレフタレート」であり、その余の構成も明らかではない点。
(相違点2)
「画像表示装置」が、本件発明1は、「前記バックライト光源側の偏光子に、偏光された光が入射されるものであり」、「前記偏光された光の偏光軸と、前記面内に複屈折率を有する光透過性基材の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記偏光子の透過軸とのなす角度が、0°±15°であ」るのに対して、引用発明は、「上記粘着剤層付き偏光板からセパレートフィルムを剥がしたもの」に、偏光された光が入射されるものであるか不明であり、その余の構成も明らかではない点。
(3)判断
上記相違点1及び相違点2について検討する。
まず、引用文献1には、「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の材料としてポリエチレンナフタレートを用いることは、記載も示唆もない。むしろ、引用文献1の【0010】には、発明が解決しようとする課題として、「本発明の目的は、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする偏光板であって、液晶表示装置に搭載した際の色ムラが少なく視認性に優れ、かつ薄型化を実現し、コストパフォーマンスや生産性にも優れる偏光板を提供することにある。」と記載されていて、引用発明は、ポリエチレンテレフタレートフィルムを具備することを前提とするものである。そうしてみると、引用文献2の[0018]にポリエチレンナフタレートが記載されているように、光透過性基材としてポリエチレンナフタレートは周知技術であるといえども、ポリエチレンテレフタレートフィルムを具備する引用発明において、フィルムをポリエチレンナフタレートとする動機付けはない。また、一般に、「ポリエチレンナフタレート」は、「ポリエチレンテレフタレート」よりも「コストパフォーマンスや生産性に」劣るものであるから、引用発明の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の材料としてポリエチレンナフタレートを用いることには阻害要因があるといえる。
次に、引用発明の「液晶表示装置」は、「対角寸法40インチ=約102cm」であるところ、このような、小型とはいえず、コストパフォーマンスが求められる「液晶表示装置」には、DBEF等の反射型偏光子は採用されない(相違点2に係る本件発明1の構成に到らない。)。
さらに、引用文献1の【0218】には、視認側の偏光板において反射防止層を備えることが好ましいことが記載されているが、バックライト側の偏光板において反射防止層を備えることについては、記載も示唆もない。
そして、本件発明1は、相違点1に係る本件発明1の積層体、及び相違点2に係る角度配置を採用することにより、本件明細書の【0030】及び【0032】に記載されているような、引用発明の構成からは予測することができない効果を奏するものと理解される。
したがって、当業者であっても、引用発明に基づいて上記相違点1及び相違点2に係る本件発明1の構成とすることが、容易になし得たということはできない。
なお、原査定の拒絶の理由に示された他の引用文献や、刊行物提出書(平成30年12月14日、令和元年7月9日及び令和2年10月29日提出)で挙げられた文献にも、引用発明において相違点1及び相違点2に係る本件発明1の構成を採用することが容易であることを窺わせる記載はない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、当業者であっても、引用文献1~4等に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということができない。
2 本件発明2について
(1)対比、一致点及び相違点
本件発明2と引用発明とを対比すると、本件発明2と引用発明とは、
「面内に複屈折率を有する光透過性基材を備える画像表示装置であって、前記面内に複屈折率を有する光透過性基材の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記偏光子の透過軸とのなす角度が、0°±15°となるように、前記面内に複屈折率を有する光透過性基材と前記偏光子とが配置されており、前記面内に複屈折率を有する光透過性基材は、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.01以上である画像表示装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点3)
「画像表示装置」が、本件発明2は、「面内に複屈折率を有する光透過性基材と反射防止層とが積層された構成を有し、画像表示装置のバックライト光源と、該バックライト光源側の偏光子との間に配置され、バックライト光源側の偏光板の光透過率を向上させるために用いられる積層体を備える」とともに、「前記反射防止層は、低屈折率層であり、前記光透過性基材の前記バックライト光源側に配置されている」のに対して、引用発明は、「積層体を備える」ものとはされておらずその余の構成も明らかではない点。
(相違点4)
「光透過性基材」の「厚さ」が、本件発明2は、「5~300μm(但し、75μm以下である場合を除く)であ」るのに対して、引用発明の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の「厚み」は、「38μm」である点。
(相違点5)
「画像表示装置」が、本件発明2は、「前記バックライト光源側の偏光子に、偏光された光が入射されるものであり」、「前記偏光された光の偏光軸と、前記面内に複屈折率を有する光透過性基材の屈折率が大きい方向である遅相軸と、前記偏光子の透過軸とのなす角度が、0°±15°であ」るのに対して、引用発明は、「上記粘着剤層付き偏光板からセパレートフィルムを剥がしたもの」に、偏光された光が入射されるものであるか不明であり、その余の構成も明らかではない点。
(2)判断
上記相違点3~相違点5について検討する。
ア 上記相違点3及び相違点5について
上記1(3)で示したのと同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて上記相違点3及び相違点5に係る本件発明2の構成とすることが、容易になし得たということはできない。
イ 上記相違点4について
引用文献1には、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの膜厚を5~300μm(但し、75μm以下である場合を除く)とすることについて、記載も示唆もない。むしろ、引用文献1の【0079】には、「本発明の偏光板に用いられる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みは、15~75μmの範囲内であることが好ましく、20~60μmの範囲内であることがより好ましい。延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みが15μm未満である場合には、ハンドリングしにくい(取り扱い性に劣る)傾向にあり、また厚みが75μmを超える場合には、厚膜となるためコスト高となり、さらには、薄肉化のメリットが薄れる傾向にある。」と記載されていて、引用発明の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの膜厚は、75μmを越えるものを除外するものである。
そうしてみると、当業者であっても、引用発明に基づいて上記相違点4に係る本件発明2の構成とすることが、容易になし得たということはできない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件発明2は、当業者であっても、引用文献1~4等に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということができない。
3 本件発明3~5について
本件発明3~5は、本件発明1又は本件発明2の構成を全て具備するものであるから、本件発明3~5も、本件発明1又は本件発明2と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1~4等に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということができない。
4 本件発明6について
本件発明6は、本件発明1に対応する製造方法の発明であり、本件発明1の構成を全て具備するものであるから、本件発明6も、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1~4等に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということができない。
5 本件発明7について
本件発明7は、本件発明1に対応する偏光板の透過率改善方法の発明であり、本件発明1の構成を全て具備するものであるから、本件発明7も、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1~4等に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということができない。
第5 原査定の概要及び原査定についての判断
1 原査定の拒絶の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、理由1(新規性)本件出願の請求項1~3、7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、理由2(進歩性)本件出願の請求項1~7に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
記
(当合議体注:引用文献1は主引例であり、引用文献2~4は副引例又は周知技術を示す文献である。)
2 原査定についての判断
上記第4で述べたように、本件発明1~3、7は、引用文献1に記載された発明であるということができない。また、上記第4で述べたように、本件発明1~7は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1~4に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたということができない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第6 当合議体が通知した拒絶の理由について
令和2年11月10日に提出された手続補正書により補正されたので、当合議体が通知した拒絶の理由は解消された。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-004730