2020-000992
内燃機関装置
- 審判番号
- 2020-000992
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-248833外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年01月24日
- 審決日
- 2020年10月15日
- 公報発行日
- 2020年12月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】トヨタ自動車株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人アイテック国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (F02D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 16項目
第1 手続の経緯
本願は、平成28年12月22日の出願であって、令和元年9月10日付け(発送日:令和元年9月17日)で拒絶理由が通知され、令和元年11月6日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和元年11月15日付け(発送日:令和元年11月26日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して令和2年1月24日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
(進歩性)本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項1に対して 引用文献1ないし5
<引用文献等一覧>
1.特開2012-219732号公報
2.特開2008-297954号公報
3.特開平4-308311号公報
4.特開2000-314318号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2007-218132号公報(周知技術を示す文献)
第3 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和元年11月6日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】多気筒の内燃機関と、前記内燃機関の空燃比がリッチとリーンとを繰り返すように前記内燃機関を制御するディザ制御と、前記内燃機関の回転変動に基づいて前記内燃機関に失火が生じているか否かを判定する失火判定と、を実行する制御判定装置と、を備える内燃機関装置であって、前記内燃機関は、排気系に粒子状物質を除去するフィルタを有し、前記制御判定装置は、前記失火判定を実行するための判定実行条件が成立し、且つ、前記ディザ制御を実行するための制御実行条件が成立し、且つ、前記内燃機関の吸入空気量または前記内燃機関から出力されるトルクが所定値以上のときには、前記ディザ制御および前記失火判定を実行し、前記判定実行条件が成立し、且つ、前記制御実行条件が成立し、且つ、前記内燃機関の前記吸入空気量または前記内燃機関から出力される前記トルクが前記所定値未満のときには、前記ディザ制御を実行せずに前記失火判定を実行する、内燃機関装置。」
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2012-219732号公報(以下「引用文献1」という。)には、「PMフィルタ及びPMフィルタの再生方法」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下同様。)
(1)「【0021】<実施例1>(内燃機関)図1は、本発明の実施例1に係るPMフィルタを適用する内燃機関の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、気筒を4つ有する水冷式の4ストロークサイクル・ガソリンエンジンである。内燃機関1は、車両に搭載されている。この車両は、内燃機関1がガソリンエンジンであることから、通常走行時の内燃機関1の排気空燃比がストイキ近傍に制御されて三元触媒等の触媒で排気浄化を行うストイキ制御車である。なお、内燃機関1は、ディーゼルエンジン等の他の内燃機関であってもよく、その場合にもストイキ制御が行われても良い。【0022】内燃機関1には、排気通路2が接続されている。排気通路2には、PMフィルタ3が配置されている。PMフィルタ3は、内燃機関1から排出され排気通路2内を流通する排気中のPM(粒子状物質)を捕集する。PMフィルタ3は、壁部としてのハニカム構造となるコーディエライト等の耐熱性セラミックス基材のセル壁3aを用い、排気の流路となる多数のセルを入口又は出口のどちらかが互い違いとなるように目封じされて構成されている。PMフィルタ3のセル壁3aは多孔性を有する多孔質の壁部である。PMフィルタ3に流入した排気は、出口が目封じされた流路に流入し、セル壁3aを透過しながら下流へ流れ、入口が目封じされた流路から流出する。その間に、PMがセル壁3aの孔やセル壁面に捕集されて堆積して行く。つまり、PMは、PMフィルタ3のセル壁3aを排気が透過する際にPMフィルタ3に捕集される。」
(2)「【0026】以上述べたように構成された内燃機関1には、内燃機関1を制御するための電子制御ユニットであるECU6が併設されている。ECU6は、内燃機関1の運転条件や運転者の要求に応じて内燃機関1の運転状態を制御するユニットである。ECU6には、クランクポジションセンサ、アクセルポジションセンサ等の各種センサが電気配線を介して接続され、これら各種センサの出力信号がECU6に入力される。ECU6は、クランクポジションセンサ、アクセルポジションセンサ等の出力信号を受けて内燃機関1の運転状態を判別し、判別された機関運転状態に基づいて内燃機関1等を電気的に制御する。【0027】例えば、ECU6は、燃料噴射制御などの既知の制御の他に、PMフィルタ3を強制的に再生する制御(以下、フィルタ再生制御という)を実行する。フィルタ再生制御は、PMフィルタ3にPMが規定量以上に捕集された場合に行われる。【0028】(フィルタ再生制御)本実施例に係るフィルタ再生制御は、PMフィルタ3にPMが規定量以上に捕集された場合に、PMフィルタ3を、PMが自己燃焼するPM自己燃焼温度である580℃以上に昇温させて、PMフィルタ3に堆積したPMを酸化除去(自己燃焼)するものである。具体的なフィルタ再生制御は、内燃機関1の運転状態から推定されるPMフィルタ3の温度が、PMフィルタ3の活性温度である350℃以上、且つ、過昇温となる温度である780℃以下の場合に、図3に示すように内燃機関1から排出される排気空燃比をリッチとリーンとに交互に強制的に制御する。図3は、本実施例に係るフィルタ再生制御中の排気空燃比の制御を示す図である。図3に示すように、ストイキ(理論空燃比)であるλ=1を中心に、排気通路2に配置された全触媒の酸素吸蔵能力の範囲内で排気空燃比をリッチとリーンとに交互に制御する。ここで、フィルタ再生制御中は、予め導出したマップを用いて、推定されるPMフィルタ3の温度がPM自己燃焼温度以上の所定温度に制御されるようにするとよい。【0029】なお、推定されるPMフィルタ3の温度が350℃よりも低い場合や、780℃を超える場合には、このフィルタ再生制御、すなわち排気空燃比をリッチとリーンとに交互に制御することは行わない。」
(3)「内燃機関1」と「ECU6」とで「内燃機関装置」が構成されているといえる。
上記記載事項、認定事項及び図面(特に、図1を参照。)の図示内容から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
〔引用発明〕
「4気筒の内燃機関1と、前記内燃機関1の排気空燃比をリッチとリーンに交互に制御するフィルタ再生制御を実行するECU6と、を備える内燃機関装置であって、前記内燃機関1は、排気通路2に粒子状物質を捕集するPMフィルタ3を有し、前記ECU6は、PMフィルタ3にPMが規定量以上に捕集された場合であって、内燃機関1の運転状態から推定されるPMフィルタ3の温度が、PMフィルタ3の活性温度である350℃以上、且つ、過昇温となる温度である780℃以下の場合にフィルタ再生制御を実行する、内燃機関装置。」
2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された特開2008-297954号公報(以下「引用文献2」という。)には、「異常検出装置およびそれを用いた燃料噴射システム」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0020】以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。本発明の一実施形態による燃料噴射システムを図1に示す。(燃料噴射システム10)蓄圧式の燃料噴射システム10は、フィードポンプ14、高圧ポンプ16、コモンレール20、圧力センサ22、減圧弁24、燃料噴射弁30、電子制御装置(Electronic Control Unit;ECU)40、電子駆動装置(Electronic Driving Unit;EDU)42等から構成されており、4気筒のディーゼルエンジン50の各気筒に燃料を噴射する。図の煩雑さを避けるため、図1においてはEDU42から1個の燃料噴射弁30への制御信号線だけを示している。」
(2)「【0029】また、ECU40は、NEセンサ56および気筒判別センサ58が出力するパルス信号に基づいて各気筒のエンジン回転数を検出し、エンジン回転数の変動から各気筒において着火しているかを判定する。」
(3)「【0033】(異常検出)次に、燃料噴射システム10における着火異常の検出について説明する。図2~図4において「S」はステップを表している。図2は、エンジン制御のメインループでECU40が常時実行する異常検出ルーチンである。図3は、ディーゼルエンジン50の気筒において着火しているか否かを判定する着火判定ルーチンである。図4は、燃料噴射弁30が指令噴射量に基づいて正常に燃料を噴射しているか否かを判定する正常噴射判定ルーチンである。図2~図4に示すルーチンは、ECU40のROM又はフラッシュメモリ等の記憶装置に記憶されている。尚、図2のS302、S304における判定は、図3の着火判定ルーチン、図4に示す正常噴射判定ルーチンの実行結果に基づいて行われる。【0034】図2の異常検出ルーチンにおいてECU40は、まずS300において、ディーゼルエンジン50において着火判定条件が成立しているかを判定する。例えば、ディーゼルエンジン50の始動が終了し、エンジン回転数(NE)および燃料噴射弁30の噴射量(Q)がそれぞれ所定値Kn、Kqよりも大きくなると、ECU40は、着火判定条件が成立していると判断しS302に処理を移行する。着火判定条件が成立していない場合、ECU40は本ルーチンを終了する。【0035】S302においてECU40は、4気筒のうち着火していない気筒があるかを判定する。ECU40は、全気筒が着火していれば本ルーチンを終了し、着火していない気筒があればS304に処理を移行する。」
(4)「【0036】S304においてECU40は、着火していない気筒のコモンレール圧を取得し、燃料噴射弁30への噴射指示に同期して変化するコモンレール圧の圧力低下特性により、燃料噴射弁30が指令噴射量に基づいて正常に燃料を噴射しているか否かを判定する。ECU40は、コモンレール圧の圧力低下特性が正常であれば燃料噴射弁30の噴射特性が正常であると判定し、S306に処理を移行する。ECU40は、コモンレール圧の圧力低下特性が異常であれば燃料噴射弁30の噴射特性が異常であると判定し、S316に処理を移行する。」
(5)「【0040】次に、S306においてECU40は、異常判定カウンタNpを+1する。異常判定カウンタNpの値は本ルーチンを実行するときに初期値として例えば0に設定されている。S308においてECU40は、カウンタNpの値が所定値Kpを超えたかを判定する。【0041】カウンタNpの値が所定値Kpを超えていない場合、S310においてECU40は、噴射系は正常であるが、内燃機関側に故障が発生しているとディスプレイ等に表示する。続きを表示(全11行)そして、S312においてECU40は、燃料噴射弁30の噴射時期を進角側または遅角側に変更するか、あるいは強制的に微少噴射を行ってパイロット噴射量を学習する。公知技術であるパイロット噴射量の学習は、例えばNEセンサ56でエンジン回転数の変動を検出して行う。このように、燃料噴射弁30の噴射時期またはパイロット噴射量を学習して補正することにより、燃料噴射弁30の噴射燃料を着火していない気筒で着火させようと試みる。S312において、燃料噴射弁30の噴射時期の補正およびパイロット噴射量を組み合わせて補正してもよい。【0042】S312において燃料噴射弁30の噴射時期またはパイロット噴射量を学習して補正することにより着火していない該当気筒において着火すると、S302においてECU40は着火異常が解消したと判断し本ルーチンを終了する。【0043】S308において異常判定カウンタNpの値が所定値Kpを超えると、ECU40は、噴射時期またはパイロット噴射量を学習し所定回数補正して燃料噴射弁30から燃料を噴射しても該当気筒において着火しないと判断し、S314において着火しない該当気筒の燃料噴射弁30への噴射指示を停止する。着火している気筒への噴射は継続されるので、運転者は車両を退避走行することができる。【0044】これにより、着火しない気筒に対して燃料噴射弁30から燃料を噴射することを防止し、着火していない気筒から未燃燃料が排出されることを停止できる。その結果、PMフィルタ再生用の触媒で未燃燃料が燃焼することにより所定時期にPMを再生できなくなることを防止可能である。」
上記記載事項及び図面(特に、図2、3及び5を参照。)の図示内容から、引用文献2には次の事項(以下「引用文献2記載事項1」及び「引用文献2記載事項2」という。)が記載されている。
〔引用文献2記載事項1〕
「4気筒のディーゼルエンジン50で、エンジン回転数の変動から各気筒において着火しているかを判定するものにおいて、着火判定条件が成立しているときに4気筒のうち着火していない気筒があるかを判定すること。」
〔引用文献2記載事項2〕
「着火しない気筒に対して燃料噴射弁30から燃料を噴射することを防止し、着火していない気筒から未燃燃料が排出されることを停止することで、PMフィルタ再生用の触媒で未燃燃料が燃焼することにより所定時期にPMを再生できなくなることを防止可能であること。」
3 引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-308311号公報(以下「引用文献3」という。)には、「エンジン制御装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0022】以下、要旨である三元触媒38の早期暖期方法について説明する。i)点火時期遅角による方法図3は三元触媒38の暖機中に、全点火遅角した場合と間欠遅角(1点火おきに遅角)した場合の排気ガス温度の上昇率とエミッション減少率を示したものである。【0023】点火時期を遅角するとエンジントルクが減少するが、同一のトルク減少点(X,Y)で両者を比較した場合、全点火遅角より間欠遅角の方がエミッション減少率及び排ガス温度上昇率が高くなっている。続きを表示(全12行)【0024】そのため、間欠遅角を行なうことにより全点火遅角する場合に比べ触媒が早期に暖機され、エミッションの悪化が抑制される。ii)燃料噴射ディザ制御による方法燃料噴射量を燃焼毎に増減させて空燃比を理論空燃比に対してリッチ側とリーン側に振ることでリッチ燃焼とリーン燃焼とを繰り返し、リッチ燃焼により一酸化炭素(CO)とリーン燃焼により酸素(O2)とを発生させる。【0025】そして、このように発生させた一酸化炭素と酸素は以下の式に示す酸化反応を行ない熱(Q)を発生する。【0026】【数1】2CO+O2=2CO2+Qこの酸化反応によって発生する熱(Q)で排気ガス温度が上昇し三元触媒38の暖機が促進される。【0027】本実施例では上記i)ii)の両方を用いて三元触媒を暖機する様制御している。ところで、上述の遅角制御,燃料噴射ディザ制御を行なうと図4,図5に示す様にエンジントルクが変動するため、これを抑制しながら上述制御を行なう必要がある。」
(2)「【0078】また、噴射ディザ制御のみまたは間欠遅角制御のみ行なった場合は、これらの制御によるトルク変動の影響の少ない運転領域(たとえば高負荷域,中高回転域)に限定して行なえば運転性の悪化が防止される。」
上記記載事項から、引用文献3には次の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。
〔引用文献3記載事項〕
「燃料噴射量を燃焼毎に増減させて空燃比を理論空燃比に対してリッチ側とリーン側に振ることでリッチ燃焼とリーン燃焼とを繰り返す燃料噴射ディザ制御を行うとエンジントルクが変動するため、燃料噴射ディザ制御は、トルク変動の影響の少ない運転領域(たとえば高負荷域,中高回転域)に限定して行なえば運転性の悪化が防止されること。」
4 引用文献4
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-314318号公報(以下「引用文献4」という。)には、「内燃機関の燃焼制御装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0065】第2実施形態では筒内の燃料とガス(空気と既燃ガスの合計)の割合は一定となる。理論空燃比を例えば14.5とすると1回目の燃焼時の空燃比は29となる。続く2回目の燃焼では燃料量が一定のため、ガスと燃料の割合すなわちG/Fは29となるものの、空気量に対する燃料の比率すなわちA/Fは14.5となる。このように第2実施形態ではガス量に対する燃料量は一定のため、要求負荷に応じた制御は吸入空気量の制御で行う。このため、スロットル制御部6からの信号によってスロットルバルブ21の開度を制御している。【0066】図19は、第2実施形態の制御の流れを示すフローチャートである。第2実施形態の制御の流れは、図16に示した第1実施形態とほぼ同様であるが、燃料量制御の処理が異なる。即ち、図16のS16で燃焼が2回と判断された後に、S19でバルブタイミング変更するまでに、図19に示した燃料量制御のフローが挿入される。【0067】図19において、S30で要求エンジン回転数Nと要求トルク(負荷)Tを確認する。次いでS31で負荷Tをもとに、図20のマップからスロットル開度TVOを求め、スロットル制御部6からスロットル21に制御信号を送り、マップで求めたスロットル開度TVOにスロットル21をセットする。」
(2)図20から、要求負荷Tの増加とともに、スロットル開度TVOも増加することが看取できる。そして、スロットル開度TVOが増加すれば、吸入空気量が増加することは技術常識である。
上記記載事項、認定事項及び図面(特に、図20を参照。)の図示内容から、引用文献4には次の事項(以下「引用文献4記載事項」という。)が記載されている。
〔引用文献4記載事項〕
「内燃機関において、要求トルク(負荷)Tの増加とともに、吸入空気量も増加すること。」
5 引用文献5
原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-218132号公報(以下「引用文献5」という。)には、「内燃機関の制御装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0028】図2は、リーン運転からストイキ運転へ切り換える際に吸入空気量、トルクが変化する様子を示す特性図である。図2において、横軸は負荷KLを、縦軸はトルクTqを示しているが、負荷KLは吸入空気量と同等の特性値と考えることができるため、以下の説明では、KLを吸入空気量として説明を行う。図2中の実線の特性はストイキ運転における吸入空気量KLとトルクTqとの関係を示しており、破線の特性はリーン運転における吸入空気量KLとトルクTqとの関係を示している。」
(2)図2から、ストイキ運転及びリーン運転のいずれにおいても、吸入空気量KLの増加とともに、トルクTqも増加することが看取できる。
上記記載事項、認定事項及び図面(特に、図2を参照。)の図示内容から、引用文献5には次の事項(以下「引用文献5記載事項」という。)が記載されている。
〔引用文献5記載事項〕
「内燃機関において、吸入空気量KLの増加とともに、トルクTqも増加すること。」
第5 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「4気筒」は、その機能、構成または技術的意義から見て、本願発明における「多気筒」に相当し、以下同様に、「内燃機関1」は「内燃機関」に、「排気空燃比をリッチとリーンに交互に制御する」は「空燃比がリッチとリーンとを繰り返すように前記内燃機関を制御する」に、「フィルタ再生制御」は「ディザ制御」に、「排気通路2」は「排気系」に、「捕集する」は「除去する」に、「PMフィルタ3」は「フィルタ」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明における「ECU6」と本願発明における「制御判定装置」とは、「制御装置」という限りにおいて一致しており、引用発明における「ECU6は、PMフィルタ3にPMが規定量以上に捕集された場合であって、内燃機関1の運転状態から推定されるPMフィルタ3の温度が、PMフィルタ3の活性温度である350℃以上、且つ、過昇温となる温度である780℃以下の場合にフィルタ再生制御を実行する」と本願発明における「制御判定装置は、前記失火判定を実行するための判定実行条件が成立し、且つ、前記ディザ制御を実行するための制御実行条件が成立し、且つ、前記内燃機関の吸入空気量または前記内燃機関から出力されるトルクが所定値以上のときには、前記ディザ制御および前記失火判定を実行し、前記判定実行条件が成立し、且つ、前記制御実行条件が成立し、且つ、前記内燃機関の前記吸入空気量または前記内燃機関から出力される前記トルクが前記所定値未満のときには、前記ディザ制御を実行せずに前記失火判定を実行する」とは、「制御装置は、前記ディザ制御を実行するための制御実行条件が成立したときに、前記ディザ制御を実行する」という限りにおいて一致している。
したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
〔一致点〕
「多気筒の内燃機関と、前記内燃機関の空燃比がリッチとリーンとを繰り返すように前記内燃機関を制御するディザ制御を実行する制御装置と、を備える内燃機関装置であって、前記内燃機関は、排気系に粒子状物質を除去するフィルタを有し、前記制御装置は、前記ディザ制御を実行するための制御実行条件が成立したときに、前記ディザ制御を実行する、内燃機関装置。」
〔相違点〕
「制御装置」に関して、本願発明においては、内燃機関の空燃比がリッチとリーンとを繰り返すように前記内燃機関を制御するディザ制御と、「前記内燃機関の回転変動に基づいて前記内燃機関に失火が生じているか否かを判定する失火判定」と、を実行する「制御判定装置」であって、「制御判定装置は、前記失火判定を実行するための判定実行条件が成立し、且つ、前記ディザ制御を実行するための制御実行条件が成立し、且つ、前記内燃機関の吸入空気量または前記内燃機関から出力されるトルクが所定値以上のときには、前記ディザ制御および前記失火判定を実行し、前記判定実行条件が成立し、且つ、前記制御実行条件が成立し、且つ、前記内燃機関の前記吸入空気量または前記内燃機関から出力される前記トルクが前記所定値未満のときには、前記ディザ制御を実行せずに前記失火判定を実行する」ものであるのに対して、引用発明においては、内燃機関1の排気空燃比をリッチとリーンに交互に制御するフィルタ再生制御を実行するECU6であって、ECU6は、内燃機関の回転変動に基づいて前記内燃機関に失火が生じているか否かを判定する失火判定を実行するものではなく、失火判定を実行するための判定実行条件が成立し、且つ、前記ディザ制御を実行するための制御実行条件が成立し、且つ、前記内燃機関の吸入空気量または前記内燃機関から出力されるトルクが所定値以上のときには、前記ディザ制御および前記失火判定を実行し、前記判定実行条件が成立し、且つ、前記制御実行条件が成立し、且つ、前記内燃機関の前記吸入空気量または前記内燃機関から出力される前記トルクが前記所定値未満のときには、前記ディザ制御を実行せずに前記失火判定を実行するものではない点。
上記相違点について検討する。
引用文献2記載事項1は上記のとおり「4気筒のディーゼルエンジン50で、エンジン回転数の変動から各気筒において着火しているかを判定するものにおいて、着火判定条件が成立しているときに4気筒のうち着火していない気筒があるかを判定すること。」というものであって、引用文献2記載事項2は上記のとおり「着火しない気筒に対して燃料噴射弁30から燃料を噴射することを防止し、着火していない気筒から未燃燃料が排出されることを停止することで、PMフィルタ再生用の触媒で未燃燃料が燃焼することにより所定時期にPMを再生できなくなることを防止可能であること。」というものであって、引用文献3記載事項は上記のとおり「燃料噴射量を燃焼毎に増減させて空燃比を理論空燃比に対してリッチ側とリーン側に振ることでリッチ燃焼とリーン燃焼とを繰り返す燃料噴射ディザ制御を行うとエンジントルクが変動するため、燃料噴射ディザ制御は、トルク変動の影響の少ない運転領域(たとえば高負荷域,中高回転域)に限定して行なえば運転性の悪化が防止されること。」というものであって、ディザ制御及び失火判定の双方を実行すること、並びに、失火判定を実行するための判定実行条件が成立し、且つ、ディザ制御を実行するための制御実行条件が成立し、且つ、内燃機関の吸入空気量または前記内燃機関から出力されるトルクが所定値以上のときには、前記ディザ制御および前記失火判定を実行し、前記判定実行条件が成立し、且つ、前記制御実行条件が成立し、且つ、前記内燃機関の前記吸入空気量または前記内燃機関から出力される前記トルクが前記所定値未満のときには、前記ディザ制御を実行せずに前記失火判定を実行すること、を開示ないし示唆するものではない。
引用文献2記載事項2は、PMフィルタの具体的な再生方法まで開示するものではないから、引用文献2記載事項1及び引用文献2記載事項2から、ディザ制御および失火判定の双方を実行することを導き出すことはできない。
仮に、引用発明に、引用文献2記載事項1、引用文献2記載事項2及び引用文献3記載事項を組み合わせたとしても、上記相違点に係る発明特定事項のうち「失火判定を実行するための判定実行条件が成立し、且つ、ディザ制御を実行するための制御実行条件が成立し、且つ、内燃機関の吸入空気量または前記内燃機関から出力されるトルクが所定値以上のときには、前記ディザ制御および前記失火判定を実行し、前記判定実行条件が成立し、且つ、前記制御実行条件が成立し、且つ、前記内燃機関の前記吸入空気量または前記内燃機関から出力される前記トルクが前記所定値未満のときには、前記ディザ制御を実行せずに前記失火判定を実行する」という事項は、自ずと得られるものではない。
引用文献4記載事項及び引用文献5記載事項は、吸入空気量とトルクとの間に相関関係があることを示すものであって、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を開示ないし示唆するものではない。
そうすると、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明において引用文献2記載事項ないし引用文献5記載事項を参酌することにより、当業者が容易に想到することができたということはできない。
そして、本願発明は、「失火の誤判定を抑制することができる」という、発明の詳細な説明(例えば、段落【0008】)に記載の作用効果を奏する。
したがって、本願発明は、引用文献1ないし5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-000992