特許拒絶査定不服審判
2020-000475
射出成形機、および射出成形機の制御方法
- 審判番号
- 2020-000475
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-161051
- 請求日
- 2020年01月14日
- 審決日
- 2021年07月05日
- 公報発行日
- 2021年10月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】芝浦機械株式会社
- 【請求人代理人】蔵田 昌俊
- 【請求人代理人】野河 信久
- 【請求人代理人】井上 正
- 【請求人代理人】峰 隆司
- 【請求人代理人】河野 直樹
- 審判長/審判官
- 審判長 細井 龍史
- 審判官 大畑 通隆
- 審判官 大島 祥吾
- 分類
- P18 .113-Z (B29C) / P18 .121-Z (B29C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-161051「射出成形機、および射出成形機の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月23日出願公開、特開2017- 39235〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年8月18日の出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。
平成31年 4月 4日付け:拒絶理由通知
令和 1年 5月29日 :意見書、手続補正書の提出
同年10月 7日付け:拒絶査定
令和 2年 1月14日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、令和2年1月14日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「第1金型と第2金型を接触させて型締めする型締め機構と、
上記第1金型と上記第2金型の間に形成されるキャビティ内に溶融材料を送り込むスクリュを有し、このスクリュによって溶融材料を上記キャビティ内へ射出する射出機構と、
上記第1金型と上記第2金型の間に微小な隙間を形成して、上記キャビティが密閉されていない状態で、上記スクリュによって溶融材料の射出を開始し、上記スクリュが所定位置を通過した時点で上記第1金型と上記第2金型を型締めして上記キャビティを密閉するように、上記型締め機構と上記射出機構を動作制御する制御部と、
を有する射出成形機。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1又は3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3項に該当し、特許を受けることができない、という理由、及び、前記発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献1:特開2012-803号公報
引用文献3:特開平9-39053号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1には、「射出成型方法」に関して、おおむね、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当審で付したものである。以下同様。
・「【請求項1】
パーティング面にガス抜き部が形成された割金型を備える射出成形機の射出成形方法において、
成形材料の充填開始後の所定のタイミングで、前記ガス抜き部の流路断面を小さくすることを特徴とする射出成形方法。
【請求項2】
前記所定のタイミングで型締力を大きくすることによって、前記流路断面を小さくする請求項1に記載の射出成形方法。
【請求項3】
前記型締力を大きくすることによって前記割金型のパーティング面の間隔を小さくすることにより、前記流路断面を小さくする請求項2に記載の射出成形方法。」
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂製、例えば、PET樹脂製の容器を成形するための延伸ブロー成形方法においては、あらかじめ射出成形機によって予備的な成形品、すなわち、予備成型品としてのプリフォーム(有底のバリソン)が成形され、該プリフォームが延伸ブロー成形機内にセットされ、加熱されて軟化させられた状態で、機械的に軸方向に延伸させられ、空気の吹込みによって半径方向に延伸させられ、完成した成形品、すなわち、完成品としての容器が成形されるようになっている。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の金型装置においては、ガスベントを通る際にガスに含有される成分、例えば、オリゴマー(低分子樹脂)が前記ガスベントの内周面に異物として付着するので、ガスベントが短期間で詰まってしまう。したがって、金型装置を定期的に清掃し、付着したオリゴマーを除去する必要があるので、金型装置の保守・管理の作業が煩しいだけでなく、プリフォームの生産性が低下してしまう。
【0011】
本発明は、前記従来の金型装置の問題点を解決して、ガスベントが詰まるのを抑制することができ、金型装置の保守・管理の作業を簡素化することができ、成形品の生産性を向上させることができる射出成形方法を提供することを目的とする。」
・「【発明を実施するための形態】
【0019】
・・・
【0021】
図において、11は第1の金型としての固定金型、12は該固定金型11に対して進退自在に配設された第2の金型としての可動金型であり、前記固定金型11及び可動金型12によって金型装置が構成される。
【0022】
また、前記固定金型11は図示されない固定プラテンに、可動金型12は図示されない可動プラテンにそれぞれ取り付けられ、該可動プラテンが型締力発生部としての図示されないトグル機構によって進退させられるのに伴って、前記可動金型12が進退させられ、金型装置の型閉じ、型締め及び型開きが行われ、型締め時に固定金型11と可動金型12とによって、プリフォームに対応する形状を有するキャビティ空間Cが形成される。なお、PLは固定金型11と可動金型12との合せ面、すなわち、パーティング面を構成するパーティングラインである。そして、前記固定プラテン、可動プラテン及びトグル機構によって型締装置が構成される。該型締装置は、型締用の駆動部としての型締用モータを備え、該型締用モータを駆動することによって前記トグル機構を作動させ、可動プラテンを進退させることができる。また、前記トグル機構及び型締用モータに代えて型締用シリンダを使用することができる。
・・・
【0025】
なお、前記マニホルドの後方に前記固定プラテンが配設され、該固定プラテンの後方に図示されない射出装置が配設される。該射出装置は、シリンダ部材としての加熱シリンダ、及び該加熱シリンダ内において回転自在に、かつ、進退自在に配設された射出部材としてのスクリューを備えるとともに、該スクリューを回転させたり、前進させたりするために、計量用の駆動部としての計量用モータ、射出用の駆動部としての射出用モータ等を備える。そして、計量工程において、前記計量用モータを駆動してスクリューを回転させると、加熱シリンダ内におけるスクリューより前方に成形材料としての樹脂を溜めることができ、射出工程において、前記射出用モータを駆動してスクリューを前進させると、溜められた樹脂を加熱シリンダの前端に取り付けられた射出ノズルから射出し、前記キャビティ空間Cに充填することができる。
・・・
【0029】
また、可動金型12は、コア座34、該コア座34によって支持され、大径の基部35、並びに該基部35から前方に、かつ、前記ボトムキャビティ18内及びサイドキャビティ22内に向けて突出させて形成された筒状のコア型36を備えたコア37、該コア37における所定の箇所、本実施の形態においては、基部35の前方に取り付けられ、コア型36を包囲して配設された第2の締付け部材としての環状のロッキングリング41、該ロッキングリング41の前方に移動自在に、コア型36を包囲して配設された割金型としてのスプリット43等を備える。
・・・
【0031】
また、前記スプリット43は、プリフォームのねじ部に対応する箇所に配設され、円周方向における所定の箇所で分割された複数の、本実施の形態においては、2個の型部材としてのスライドブロック44、45から成る。該各スライドブロック44、45は、半割構造を有し、金型装置の型開閉に連動して図示されないカムが作動させられ、該カムの作動に伴って径方向(図2における矢印A、B方向)に移動させられる。各スライドブロック44、45は、いずれも、軸方向における中央部に形成されたフランジ部55、該フランジ部55から前方に向けて突出させて形成され、フランジ部55より径の小さいハブ部56、及び前記フランジ部55から後方に向けて突出させて形成され、フランジ部55より径の小さいハブ部57を備える。
・・・
【0036】
前記構成の金型装置において、型締装置が前記可動プラテンを前進させることによって可動金型12を前進させ、型閉じを行うと、退避位置に置かれていたスライドブロック44、45は、カムの作動に伴って径方向内方に移動させられ、作動位置に置かれて互いに当接させられ、続いて、スプリット43(スライドブロック44、45)とサイドキャビティ22とが当接させられる。これに伴って、固定金型11と可動金型12との間、すなわち、固定金型11におけるボトムキャビティ18及びサイドキャビティ22と、可動金型12におけるコア37との間に、キャビティ空間Cが形成される。
【0037】
続いて、型締装置が型締力を発生させ、型締めを行うと、前記型締力によって可動金型12が固定金型11に押し付けられ、射出装置によって射出された樹脂は、前記ホットランナ、貫通穴23及びゲート31を通ってキャビティ空間Cに充填される。
【0038】
このとき、前記テーパ面saとテーパ面scとを摺動させることによって、ハブ部56がロッキングリング30の穴内に進入させられ、前記テーパ面sbとテーパ面sdとを摺動させることによって、ハブ部57がロッキングリング41の凹部内に進入させられ、それに伴って、スライドブロック44とスライドブロック45とが合せ面で強く当接させられる。したがって、キャビティ空間Cに充填された樹脂がスライドブロック44とスライドブロック45との隙間から漏れることがない。
・・・
【0041】
そこで、本実施の形態においては、スプリット43において、スライドブロック44とスライドブロック45との間にガス抜き部としてのガスベント71を形成し、該ガスベント71を介してキャビティ空間C内の空気及びガスを金型装置外に排出するようにしている。
・・・
【0046】
そこで、本実施の形態においては、金型装置において型閉じが開始された後、所定の時間だけ、スライドブロック44とスライドブロック45とを合せ面で弱い力で当接させ、スライドブロック44とスライドブロック45との間の隙間、及びガスベント71の流路断面を大きくするようにしている。」
・「【0047】
図4は本発明の実施の形態における射出成形機の制御ブロック図、図5は本発明の実施の形態における射出成形機の動作を示すタイムチャートである。
【0048】
図4において、81は制御部であり、該制御部81は演算装置としてのCPU82、及び記録部としての、かつ、記憶装置としてのメモリ83を備える。また、84は表示部、85は操作部、86は計量用モータ、87は射出用モータ、88は型締用モータである。
【0049】
前記構成の射出成形機において、まず、可動金型12は型開き位置Q1に置かれ、スクリューは計量完了位置R1に置かれる。そして、タイミングt1で、CPU82の図示されない型開閉処理手段(型開閉処理部)は、型開閉処理を行い、型締用モータ88を駆動し、型閉じを開始し、可動金型12を前進させる。
【0050】
次に、タイミングt2で可動金型12が固定金型11と当接すると、その後、型締力は徐々に大きくなり、タイミングt3で、可動金型12が金型保護位置(固定金型11と可動金型12との間に異物が存在しているかどうかを確認するために設定された位置)に到達すると、固定金型11と可動金型12との間に異物が存在していないことが分かるので、前記型開閉処理手段は、型締力を大きくする。
【0051】
続いて、タイミングt4で、前記型開閉処理手段は、第1の型締力F1による型締めを開始する。
【0052】
この場合、第1の型締力F1は、スライドブロック44とスライドブロック45とが合せ面で弱い力で当接させられ、スライドブロック44とスライドブロック45との間の隙間、及びガスベント71の流路断面が大きくなるように設定される。なお、このとき、前記型開閉処理手段は、流路断面設定処理手段(流路断面設定処理部)として機能する。
【0053】
そして、タイミングt4の後の所定のタイミングt5で、CPU82の図示されない射出処理手段(射出処理部)は、射出処理を行い、計量完了位置R1に置かれているスクリューの前進を開始し、キャビティ空間Cへの樹脂の充填を開始する。
【0054】
また、タイミングt6でスクリューが、前進限位置R3より手前の昇圧スクリュー位置R2に到達すると、前記型開閉処理手段は、型締力を大きくし、第2の型締力(設定型締力)F2にする。
【0055】
なお、前記型開閉処理手段は、タイミングt4から所定の時間τ1が経過したタイミングt6で型締力を大きくし、第2の型締力(設定型締力)F2にすることもできる。
【0056】
この場合、スクリューが昇圧スクリュー位置R2に到達するまでの間、樹脂の圧力で可動金型12が後退させられるが、キャビティ空間Cに充填された樹脂はガスベント71に到達しないので、樹脂がガスベント71を通って金型装置外に漏れ出すことはない。
【0057】
この場合、第2の型締力F2は、スライドブロック44とスライドブロック45とが合せ面で大きい力で当接させされ、スライドブロック44とスライドブロック45との間の隙間(パーティングラインPLの間隔)、及びガスベント71の流路断面が小さくなるように設定される。なお、このとき、前記型開閉処理手段は、流路断面変更処理手段(流路断面変更処理部)として機能する。
【0058】
その後、タイミングt7で前記スクリューは前進限位置R3に到達する。
【0059】
このように、本実施の形態においては、タイミングt4からt6までの間、第1の型締力F1が発生させられるので、ハブ部56がロッキングリング30の穴内に、ハブ部57がロッキングリング41の凹部内に完全には進入せず、スライドブロック44とスライドブロック45との間の隙間、及びガスベント71の流路断面が大きくされる。したがって、ガスベント71を流れるガスの流量を多くすることができるので、オリゴマーがガスベント71の内周面に付着するのを防止することができ、ガスベント71が詰まるのを抑制することができる。」
・「【図2】
」
・「【図3】
」
・「【図5】
」
2 引用発明1
引用文献1には、発明の実施の形態における、特に段落【0022】、【0025】、【0031】、【0047】ないし【0057】、【図4】及び【図5】の記載から、次のとおりの発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認める。
「固定プラテンに取り付けられた固定金型11、可動プラテンに取り付けられた可動金型12、及び、該可動プラテンを進退させる型締力発生部としてのトグル機構を有し、
前記可動金型12は、割金型としてのスプリット43を備え、前記スプリット43は、プリフォームのねじ部に対応する箇所に配設され、円周方向における所定の箇所で分割された2個の型部材としてのスライドブロック44、45から成るものであって、
型締め時に固定金型11と可動金型12とによって、プリフォームに対応する形状を有するキャビティ空間Cが形成され、
シリンダ部材としての加熱シリンダ、及び該加熱シリンダ内において回転自在に、かつ、進退自在に配設された射出部材としてのスクリューを備えるとともに、該スクリューを回転させ前進させる、計量用の駆動部としての計量用モータ、射出用の駆動部としての射出用モータを備え、射出工程において、射出用モータを駆動してスクリューを前進させると、溜められた樹脂を加熱シリンダの前端に取り付けられた射出ノズルから射出し、前記キャビティ空間Cに充填することができる射出装置と、
演算装置として機能するCPU82、並びに記録部としての、かつ、記憶装置としてのメモリ83を備える制御部81と、
を備えた射出成形機であって、
上記制御部81は、タイミングt1で、型開閉処理を行い、タイミングt4で、第1の型締力F1による型締めを開始し、該第1の型締力F1は、スライドブロック44とスライドブロック45とが合せ面で弱い力で当接させられ、スライドブロック44とスライドブロック45との間の隙間、及びガスベント71の流路断面が大きくなるように設定され、
タイミングt4の後の所定のタイミングt5で、射出処理を行い、計量完了位置R1に置かれているスクリューの前進を開始し、キャビティ空間Cへの樹脂の充填を開始し、
タイミングt6でスクリューが、前進限位置R3より手前の昇圧スクリュー位置R2に到達すると、型締力を大きくし、第2の型締力(設定型締力)F2にし、第2の型締力F2で、スライドブロック44とスライドブロック45とが合せ面で大きい力で当接させされ、スライドブロック44とスライドブロック45との間の隙間(パーティングラインPLの間隔)、及びガスベント71の流路断面が小さくなるように設定される、
射出成形機。」
3 引用文献3の記載
引用文献3には、「射出成形機の型締制御方法」に関して、おおむね次の記載がある。
・「【請求項1】
金型タッチ位置と型締完了位置との間に設定された型締停止位置までムービングプラテンを前進させて保持すると共に射出を開始し、
金型タッチ位置と型締停止位置との間に設定された型開き停止位置までムービングプラテンを後退させて保持し、
その後、型締完了位置までムービングプラテンを前進させることを特徴とした射出成形機の型締制御方法。
・・・
【請求項3】
射出スクリューが設定所定位置に到達するまで前記型締停止位置にムービングプラテンを保持することを特徴とした請求項1記載の射出成形機の型締制御方法。」
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、射出成形機の型締制御方法の改良に関する。」
・「【0007】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的は、前記従来技術の欠点を解消し、導光板の成形作業等に対しても好適に使用することができ、しかも、成形品のソリやヒズミ等をより確実に防止することのできる射出成形機の型締制御方法を提供することにある。」
・「【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、金型タッチ位置と型締完了位置との間に設定された型締停止位置までムービングプラテンを前進させて保持すると共に射出を開始し、金型タッチ位置と型締停止位置との間に設定された型開き停止位置までムービングプラテンを後退させて保持し、その後、型締完了位置までムービングプラテンを前進させることを特徴とした構成により前記目的を達成した。
・・・
【0011】また、金型タッチ位置と型締完了位置との間に設定された型締停止位置までムービングプラテンを前進させた段階、つまり、定格型締力よりも型締力が低い状態で射出が開始されるので、金型キャビティからのガス抜きが容易に行われて樹脂が金型キャビティの隅々まで容易に回り込むことができる。従って、ショートショット等の成形不良の心配がなく、低い射出圧力で射出充填動作を行うことができ、結果的に、バリ等の成形不良も未然に防止される。
・・・
【0015】型締停止位置からのムービングプラテンの後退開始タイミングは、タイマ等による設定所定時間の経過確認、射出スクリューの設定所定位置への到達確認、射出圧力の設定所定圧力への到達確認等を契機として決めることができる。」
・「【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の幾つかを説明する。図1は本発明を適用した一実施形態の射出成形機30の要部を示すブロック図である。符号33は固定プラテン、符号32はムービングプラテン、符号34は射出シリンダ、符号35は射出スクリューであり、固定プラテン33とムービングプラテン32との間には金型39が装着されている。ムービングプラテン32は、型締め用サーボモータM1の軸出力により、ボールナット&スクリューやトグル機構等からなる型締め機構31を介し、従来と同様、射出成形機のタイバーに沿って移動されるようになっている。また、射出スクリュー35は、駆動源の軸回転を射出軸方向の直線運動に変換するための駆動変換装置37を介して射出用サーボモータM2により軸方向に駆動され、また、歯車機構36を介してスクリュー回転用モータM3により計量回転される。
【0019】そして、射出スクリュー35の基部にはロードセル等からなる圧力検出器38が設けられ、射出スクリュー35の軸方向に作用する樹脂圧力、即ち、射出保圧工程における射出保圧圧力や計量混練り工程におけるスクリュー背圧が検出されるようになっている。
【0020】射出用サーボモータM2には射出スクリュー35の位置や移動速度を検出するためのパルスコーダP2が配備され、また、型締め用サーボモータM1の側には、可動プラテン32を駆動する型締め機構31のクロスヘッドの位置を検出するためのパルスコーダP1が配備されている。これらはいずれも公知の構成要素である。
【0021】射出成形機を駆動制御する制御装置10は、数値制御用のマイクロプロセッサであるCNC用CPU25、プログラマブルマシンコントローラ用のマイクロプロセッサであるPMC用CPU18、サーボ制御用のマイクロプロセッサであるサーボCPU20、ならびに、A/D変換器16および圧力検出器38を介して射出保圧圧力やスクリュー背圧のサンプリング処理を行うための圧力モニタ用CPU17を有し、バス22を介して相互の入出力を選択することにより各マイクロプロセッサ間での情報伝達が行えるようになっている。
・・・
【0026】以上の構成により、CNC用CPU25がROM27の制御プログラムや不揮発性メモリ24の成形条件等に基いて各軸のサーボモータに対してパルス分配を行い、サーボCPU20は各軸に対してパルス分配された移動指令とパルスコーダP1,P2等の検出器で検出された位置のフィードバック信号および速度のフィードバック信号に基いて位置ループ制御,速度ループ制御さらには電流ループ制御等のサーボ制御を行い、いわゆるディジタルサーボ処理を実行する。
【0027】図5は本実施形態における型締制御方法の概略を型閉じ開始後の経過時間とムービングプラテン32の位置との関係で示す概念図である。なお、トグル機構等からなる型締め機構31の場合においてはパルスコーダP1で検出される位置は実際にはクロスヘッド位置であってムービングプラテン32の位置それ自体ではないが、クロスヘッドの位置とムービングプラテン32の位置とを対応させる変換式およびそれに必要とされる内部処理等については既に公知であるので、ここでは、図5においてもまた後述のフローチャートにおいても、ムービングプラテン32の位置を直接的に検出できるものとし、飽くまで、ムービングプラテン32の位置を基準として説明を進める。
【0028】図5に示す通り、型締停止位置P2は金型タッチ位置P0と型締完了位置P3との間に設定する必要があり、また、型開き停止位置P1は金型タッチ位置P0と型締停止位置P2との間に設定しておく必要がある。課題を解決するための手段の項でも既に述べた通り、型締停止位置P2からのムービングプラテン32の後退開始タイミングは、タイマによる設定時間,射出時における射出スクリュー35の位置,射出圧力の設定値到達等いずれの条件に基いて設定してもよく、どのような条件を用いてムービングプラテン32の後退開始タイミングを決めるかは、金型39や成形品および樹脂の特性等を考慮して選択するようにする。
【0029】まず、図2のフローチャートを参照して、型締停止位置P2からのムービングプラテン32の後退開始タイミングをタイマ設定によって決めるようにした例について説明する。なお、図2のフローチャートは型閉じの開始から型締の完了までのPMC用CPU18の処理動作について示したものであり、その他、スクリュー回転による計量やエジェクタ装置による成形品の離型操作等の公知処理については全て記載を省略している。
【0030】そこで、まず、PMC用CPU18はCNC用CPU25に型閉じ指令を出力して型締め用サーボモータM1の駆動を開始させ、型開き完了位置からムービングプラテン32の型閉じ動作を開始させる(ステップA1)。そして、PMC用CPU18はムービングプラテン32が型締停止位置P2に到達するまで待機し(ステップA2)、ムービングプラテン32の移動を型締停止位置P2で一時停止し、該位置決め保持させる(ステップA3)。そして、PMC用CPU18は射出用サーボモータM2を駆動して射出動作を開始させると共に(ステップA4)、経過時間計測タイマに型締停止位置P2におけるムービングプラテン32の保持時間T1を設定して計時を開始させる(ステップA5)。なお、図5に示す通り、金型タッチ位置P0においてムービングプラテン32の移動速度が低速側に変化するように設定しているが、これは金型保護のためである。
【0031】既に述べた通り、型締停止位置P2が型締完了位置P3よりも手前に設定されているため、射出開始時点における型締力は定格型締力に比べて遥かに低く、金型39内の空気は容易に金型39のパーティングラインを抜けて外部に噴出することができる。従って、ガス圧縮による成形品のヤケや気泡の発生は未然に防止され、また、キャビティ内における溶融樹脂の流れも容易となるため、低い射出圧力で樹脂の充填作業を行うことができ、バリの発生も簡単に回避することができる。
【0032】そして、金型39のキャビティに対する樹脂の充填が進行して経過時間計測タイマによる保持時間T1の計時動作が終了すると(ステップA6)、PMC用CPU18は経過時間計測タイマに型開き停止位置P1におけるムービングプラテン32の保持時間T2を設定して計時を開始させると共に(ステップA7)、型締め用サーボモータM1を逆転駆動してムービングプラテン32の型開き動作を開始させ(ステップA8)、ムービングプラテン32が型開き停止位置P1に到達するまで待機する(ステップA9)。従って、保持時間T2は厳密にいえば型開き停止位置P1におけるムービングプラテン32の保持時間ではなく、型締停止位置P2から型開き停止位置P1への移動時間を含んだ時間である。タイマT2のスタートをステップA6の後ではなく、ステップA9の後にして、型開き停止位置P1の保持時間を設定保持時間T2としてもよい。
【0033】このように、金型39のキャビティに対する樹脂の充填進行中に一旦ムービングプラテン32を後退させるため、金型39におけるキャビティの容積が実質的に増加してキャビティ内圧が相対的に下降し、充填樹脂の内部応力が均一化すると共に応力ヒズミ等が除去されるのである。
【0034】そして、設定所定時間T2が経過して型開き停止位置P1における経過時間計測タイマの計時動作が終了し、成形品の内部応力が均一化すると(ステップA10)、PMC用CPU18は型締め用サーボモータM1を正転駆動してムービングプラテン32の型締動作を再開させ(ステップA11)、ムービングプラテン32が型締完了位置P3に到達するまで待機し(ステップA12)、以下、従来と同様にして、冷却およびスクリュー回転による計量や型開きおよびエジェクタ装置による成形品の離型操作等のプロセスを制御して1成形サイクルの処理を終了する。
【0035】型開き停止位置P1におけるムービングプラテン32の保持時間T2が経過した時点では、保持時間T1の経過時点に比べてゲートのシール状態は更に進行しているので、型開き停止位置P1から型締完了位置P3へのムービングプラテン32の移動で生じるキャビティ体積の減少によって金型キャビティ内の樹脂が強く圧縮され、キャビティ形状や複雑な彫刻が成形品に正確に転写されることになる。また、強力な型締力によって金型39が閉じ合わされ、ゲートシールも概ね完了しているので、保圧圧力が高い場合であっても射出シリンダ34の側から金型39のキャビティ内に新たな溶融樹脂が流れ込むといったことはなく、樹脂の追加充填による内部応力の不均一化やヒズミの発生といった問題が解消される。
・・・
【0038】以上、実施形態の1つとして型締停止位置P2からのムービングプラテン32の後退動作の開始タイミングをタイマ設定によって決めるようにした場合について説明したが、射出動作時における射出スクリュー35の位置、または、射出圧力を基準にしてムービングプラテン32の後退動作を開始させるようにしてもよい。射出スクリュー35が設定所定位置に到達したことを検知してムービングプラテン32の後退動作を開始させる場合には前述のステップA5およびA6の処理に代えて図3(a)に示す判別処理を適用し、また、射出圧力が設定所定圧力に到達したことを検知してムービングプラテン32の後退動作を開始させる場合には前述のステップA5およびA6の処理に代えて図3(b)に示す判別処理を適用するようにする。
【0039】また、型開き停止位置P1からの型締動作の開始もこれと同様であり、ステップA10の判別処理を射出スクリュー35の位置や射出圧力を基準に実施することができる。この場合、ステップA7の処理は不要となるが、ムービングプラテン32が型開き停止位置P1に後退した後、必ずしも射出スクリュー35の位置や射出圧力が設定値に到達するとは限らないので、ムービングプラテン32が型開き停止位置P1に後退した時点で経過時間の計測を開始し、所定の設定時間が経過しても射出スクリュー35の位置や射出圧力が設定値に到達しない場合には、そのまま型締動作を開始させるようにした方がよい。」
・「【図1】
【図2】
【図3】
」
・「【図5】
」
4 引用発明3
引用文献3には、特に発明の実施の形態に係る、段落【0018】ないし【0039】及び図面の記載から、請求項1及び3の記載に合わせて整理すると、次のとおりの発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認める。
ここで、引用文献3には、ムービングプラテン32の後退動作や型締動作の開始タイミングをタイマ設定によって決めるようにした場合と、射出動作時における射出スクリュー35の位置、または、射出圧力を基準にした場合とが併記されているため(【請求項3】、段落【0028】、【0038】及び【0039】参照。)、引用発明3の認定は、「射出動作時における射出スクリュー35の位置」への到達に基づく制御を行う場合に基づいて行っている。具体的には、ステップA6の終点の制御に係るタイマT1の計時であるステップA5、及び、ステップA10の終点の制御に係るタイマT2の計時であるステップA7が、該射出スクリュー35の位置に基づく制御に代替されている。
「固定プラテン33と、型締め用サーボモータM1の軸出力により型締め機構31を介して射出成形機のタイバーに沿って移動されるようになっているムービングプラテン32との間に装着された金型39と、
射出用サーボモータM2により軸方向に駆動され、歯車機構36を介してスクリュー回転用モータM3により計量回転される射出スクリュー35と、
各軸のサーボモータに対して、いわゆるディジタルサーボ処理を実行し、射出成形機を駆動制御する制御装置10と
を有する射出成形機であって、
該制御装置10は、型開き完了位置からムービングプラテン32の型閉じ動作を開始させ(ステップA1)、
ムービングプラテン32が、金型タッチ位置P0と型締完了位置P3との間に設定された型締停止位置P2に到達するまで前進させ(ステップA2)、
ムービングプラテン32の移動を型締停止位置P2で一時停止し、ムービングプラテン32を位置決め保持させ(ステップA3)、
射出用サーボモータM2を駆動して射出動作を開始させ(ステップA4)、
射出スクリュー35が設定所定位置に到達するまで、金型39のキャビティに対する樹脂の充填を進行させ(ステップA6)、
型締め用サーボモータM1を逆転駆動してムービングプラテン32の型開き動作を開始させ(ステップA8)、
ムービングプラテン32が、金型タッチ位置P0と型締停止位置P2との間に設定された型開き停止位置P1に到達するまで後退させ(ステップA9)、
射出スクリュー35が設定所定位置に到達し、成形品の内部応力が均一化すると(ステップA10)、型締め用サーボモータM1を正転駆動してムービングプラテン32の型締動作を再開させ(ステップA11)、
ムービングプラテン32が型締完了位置P3に到達するまで前進(ステップA12)させる、
駆動制御を行う射出成形機。」
第5 対比・判断
1 引用発明1との対比・検討
(1)対比
本願発明と引用発明1を対比する。
引用発明1の「固定金型11」、「可動金型12」及び「トグル機構」は、本願発明の「第1金型」、「第2金型」及び「型締め機構」それぞれ相当する。
引用発明1の射出成形機は、「型締め時に固定金型11と可動金型12とによって、プリフォームに対応する形状を有するキャビティ空間Cが形成され」、「スクリューを前進させると、溜められた樹脂を加熱シリンダの前端に取り付けられた射出ノズルから射出し、前記キャビティ空間Cに充填する」ものであるから、引用発明1の「射出部材としてのスクリュー」は、本願発明の「第1金型と上記第2金型の間に形成されるキャビティ内に溶融材料を送り込むスクリュ」に相当し、引用発明1の「スクリューを前進させると、溜められた樹脂を加熱シリンダの前端に取り付けられた射出ノズルから射出し、前記キャビティ空間Cに充填することができる射出装置」は、本願発明の「スクリュによって溶融材料を上記キャビティ内へ射出する射出機構」に相当する。
また、引用発明1の「制御部81」は、型開閉処理と射出処理を制御するものであるから、本願発明の「制御部」に対し、「上記型締め機構と上記射出機構を動作制御する制御部」である限りにおいて一致する。
したがって、本願発明と引用発明1とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「第1金型と第2金型を接触させて型締めする型締め機構と、
上記第1金型と上記第2金型の間に形成されるキャビティ内に溶融材料を送り込むスクリュを有し、このスクリュによって溶融材料を上記キャビティ内へ射出する射出機構と、
上記型締め機構と上記射出機構を動作制御する制御部と、
を有する射出成形機。」
そして、本願発明と引用発明1とは、以下の点で一応相違する。
<相違点1>
制御部による射出開始制御に関し、
本願発明は、「上記第1金型と上記第2金型の間に微小な隙間を形成して、上記キャビティが密閉されていない状態で、上記スクリュによって溶融材料の射出を開始」すると特定されるのに対し、引用発明1は、「第1の型締力F1」によって「スライドブロック44とスライドブロック45とが合せ面で弱い力で当接させられ、スライドブロック44とスライドブロック45との間の隙間、及びガスベント71の流路断面が大きくなるように設定され」ている状態で「キャビティ空間Cへの樹脂の充填」、すなわち、溶融材料の射出が開始されると特定される点。
<相違点2>
制御部による型締制御に関し、
本願発明は、「スクリュが所定位置を通過した時点で上記第1金型と上記第2金型を型締めして上記キャビティを密閉するように、上記型締め機構と上記射出機構を動作制御する」と特定されるのに対し、引用発明1は、「タイミングt6でスクリューが、前進限位置R3より手前の昇圧スクリュー位置R2に到達すると、型締力を大きくし、第2の型締力(設定型締力)F2にし、第2の型締力F2で、スライドブロック44とスライドブロック45とが合せ面で大きい力で当接させされ、スライドブロック44とスライドブロック45との間の隙間(パーティングラインPLの間隔)、及びガスベント71の流路断面が小さくなるように設定」することが特定される点。
(2)相違点についての検討
ア 相違点1についての検討
引用発明1における射出開始が、タイミングt5であることは、「タイミングt5で、CPU82の射出処理手段(射出処理部)は、射出処理を行い、計量完了位置R1に置かれているスクリューの前進を開始」と特定するとおりである。
そして、可動金型と固定金型との位置関係を検討するに、引用文献1におけるタイミングt5に係る以下の記載、「本実施の形態においては、タイミングt4からt6までの間、第1の型締力F1が発生させられるので、ハブ部56がロッキングリング30の穴内に、ハブ部57がロッキングリング41の凹部内に完全には進入せず、スライドブロック44とスライドブロック45との間の隙間、及びガスベント71の流路断面が大きくされる。」(段落【0059】)から、引用発明1は、タイミングt5において、可動金型を構成するスライドブロック44、45と、固定金型を構成するサイドキャビティ22との間には、ハブ部56が完全に進入しない分、可動金型の進行方向に微小な隙間が形成され、キャビティが密閉されていない状態であるものと解される。
そうすると、射出開始時点における金型の位置関係について、本願発明と引用発明1とは相違しない。
イ 相違点2についての検討
引用発明1における「第2の型締力(設定型締力)F2」について、引用文献1には、金型に前記F2が加えられた状態では「キャビティ空間Cに充填された樹脂はガスベント71に到達しないので、樹脂がガスベント71を通って金型装置外に漏れ出すことはない。」(段落「【0056】)との記載があることに鑑みると、引用発明1において第2の型締力F2で型締めされている際には、本願発明と同様にキャビティが密閉された状態になっているものと解される。
また、該型締めを開始するタイミングに関し、引用発明1において、「タイミングt6でスクリューが、前進限位置R3より手前の昇圧スクリュー位置R2に到達すると、型締力を大きくし、第2の型締力(設定型締力)F2に」することから、本願発明と同様に「スクリュが所定位置を通過した時点」をもって第2の型締力F2をかけるべく型締めを開始することは明らかである。
そうすると、型締めによる金型の密閉状況及び型締め開始タイミングの制御について、本願発明と引用発明1とは相違しない。
ウ 相違点についての検討まとめ
よって、相違点1及び2は、いずれも実質的な相違点とはいえない。
(3)審判請求人の主張について
審判請求人は、令和2年1月14日に提出された審判請求書において、以下の主張をしている。
ア 「本願発明では、溶融材料の射出を開始するときには金型に形成したキャビティは密閉されていない状態(開いた状態)にあります。金型が開いた状態とは、締結力がゼロであることを意味します。
これに対し、引用文献1の射出成形機では、射出を開始する時点(図5のタイミングt5)において、型締力F1が発生しております。つまり、引用文献1の射出成形機では、射出開始時に金型が閉じていることは明らかです。」
イ 「引用文献1の射出成形機は、本願発明のようにパーティングラインを介してガス抜きをするのではなく、ガスベントを介して排気するものであります。ガスベントがパーティング面に形成されていることは明細書の[0012]段落に記載されております。このように、ガスベントを介してガス抜きすることと、本願発明のようにパーティングラインからガス抜きすることは、全く違うものであります。」
審判請求人の上記主張を検討する。
まず、上記アの主張に関し、「密閉されていない状態」を「開いた状態」とする審判請求人の主張の前提に基づけば、引用発明1においても、上記(2)アで検討したように、射出成形開始時には金型が密閉されておらず、「開いた状態」というべきものといえる。なお、引用発明1において、型締力F1が射出開始時に発生しているが、締結力の有無についての主張は、本願発明の発明特定事項に基づくものではないから、採用することができない。
次に、上記イの主張に関し、ガス抜きをする経路に関し、本願発明は、ガスベントを設けることについて排除するものではなく、また、第1金型と第2金型との微小な隙間の存在については、上記(2)アにおいて検討したとおりであって、第1金型と第2金型との境界におけるパーティングラインからも当然ガス抜きがされていると解されるし、そもそもパーティングラインからの脱気は、発明特定事項でもない。
よって、審判請求人の上記ア及びイいずれの主張も採用できない。
(4)引用発明1との対比・検討の小括
したがって、本願発明は、引用発明1すなわち引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
仮にそうでないとしても、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2 引用発明3との対比・検討
(1)対比
本願発明と引用発明3を対比する。
引用発明3の「金型39」のうち、固定プラテン33に装着されたものは、本願発明の「第1金型」に相当し、引用発明3の「金型39」のうち、ムービングプラテン32に装着されたものは、本願発明の「第2金型」に相当する。
引用発明3の射出スクリュー35は、金型39に形成されるキャビティ内に溶融材料を送り込むものであることは明らかであるから、引用発明3の「射出スクリュー35は、射出用サーボモータM2により軸方向に駆動され、また、歯車機構36を介してスクリュー回転用モータM3により計量回転され」る機構は、本願発明の「射出機構」に相当する。
また、引用発明3の「制御装置10」は、各軸のサーボモータに対して、いわゆるディジタルサーボ処理を実行し、射出スクリューの制御とムービングプラテンを前進させる型締制御等の「射出機を駆動制御する」ものであるから、本願発明の「制御部」に対し、「上記型締め機構と上記射出機構を動作制御する制御部」である限りにおいて一致する。
したがって、本願発明と引用発明3とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「第1金型と第2金型を接触させて型締めする型締め機構と、
上記第1金型と上記第2金型の間に形成されるキャビティ内に溶融材料を送り込むスクリュを有し、このスクリュによって溶融材料を上記キャビティ内へ射出する射出機構と、
上記型締め機構と上記射出機構を動作制御する制御部と、
を有する射出成形機。」
そして、本願発明と引用発明3とは、以下の点で一応相違する。
<相違点3>
制御部による射出開始制御に関し、
本願発明は、「上記第1金型と上記第2金型の間に微小な隙間を形成して、上記キャビティが密閉されていない状態で、上記スクリュによって溶融材料の射出を開始」すると特定されるのに対し、
引用発明3は、「ムービングプラテン32の移動を型締停止位置P2で一時停止し、ムービングプラテン32を位置決め保持させ(ステップA3)、射出用サーボモータM2を駆動して射出動作を開始させ(ステップA4)」ることが特定される点。
<相違点4>
制御部による型締制御に関し、
本願発明は、「スクリュが所定位置を通過した時点で上記第1金型と上記第2金型を型締めして上記キャビティを密閉するように、上記型締め機構と上記射出機構を動作制御する」と特定されるのに対し、引用発明3は、「射出スクリュー35が設定所定位置に到達し、成形品の内部応力が均一化すると(ステップA10)、型締め用サーボモータM1を正転駆動してムービングプラテン32の型締動作を再開させ(ステップA11)、ムービングプラテン32が型締完了位置P3に到達するまで前進(ステップA12)させる」と特定される点。
(2)相違点についての検討
ア 相違点3についての検討
引用発明3における射出開始は、「ムービングプラテン32が、金型タッチ位置P0と型締完了位置P3との間に設定された型締停止位置P2」にある際に行われることが特定され、ここで、引用文献3の「型締停止位置P2が型締完了位置P3よりも手前に設定されているため、射出開始時点における型締力は定格型締力に比べて遥かに低く、金型39内の空気は容易に金型39のパーティングラインを抜けて外部に噴出することができる。」(段落【0031】)との記載から、引用発明3においても、本願発明の「上記第1金型と上記第2金型の間に微小な隙間を形成して、上記キャビティが密閉されていない状態で、上記スクリュによって溶融材料の射出を開始」しているものと解される。
そうすると、射出開始時点における金型の位置関係について、本願発明と引用発明3とは相違しない。
イ 相違点4についての検討
型締め開始のタイミングについて、引用発明3において「射出スクリュー35が設定所定位置に到達し、・・・ムービングプラテン32の型締動作を再開させ(ステップA11)」ると特定されることから、射出中における型締めは、「スクリュが所定位置を通過した時点」をもって行うことは明らかである。
そして、引用発明3における型締完了位置P3にムービングプラテン32が到達している際には、引用文献3の「強力な型締力によって金型39が閉じ合わされ、ゲートシールも概ね完了している」(段落「【0035】)との記載から鑑みると、本願発明同様、キャビティが密閉された状態になっているものと解されるから、型締め時のキャビティの状態について、本願発明と引用発明3とは相違しない。
ウ 相違点についての検討まとめ
よって、相違点3及び4は、いずれも実質的な相違点とはいえない。
(3)審判請求人の主張について
審判請求人は、令和2年1月14日に提出された審判請求書において、以下の主張をしている。
ア 「引用文献3の射出成形機において、明細書の[0030]段落及び[図5]に記載されているように、射出を開始する時点で、金型は型締停止位置(P2)にあります。型締停止位置(P2)は金型タッチ位置(P0)より図5で下(型締完了位置(P3)側)に位置しておりますので、この位置で金型が閉じていることは明らかです。」
イ 「引用文献3の射出成形機において射出を開始する時点で金型が閉じていることは明らかであるため、この状態からパーティングラインを介してガスが抜けるためには、金型が閉じている力以上の力が金型の内圧としてかかり、且つ金型が金型タッチ位置(P0)より図5で上にある必要があります。逆に言えば、図5のような制御をしている限り、通常ではパーティングラインからガスが抜けることはあり得ません。」
審判請求人の上記主張を検討する。
まず、主張アに係る金型の開閉状況に関し、引用発明3において、射出を開始する時点、すなわち金型が型締停止位置(P2)にある際の金型の状態は、引用文献3の段落【0031】に「射出開始時点における型締力は定格型締力に比べて遥かに低く、金型39内の空気は容易に金型39のパーティングラインを抜けて外部に噴出することができる。」と記載されるように、空気が抜ける程度の「微小な隙間」が存在すると解され、「金型が密閉されていない状態」であることは明らかである。そして、「密閉されていない状態」を「開いた状態」とする審判請求人の主張の前提に基づけば、引用発明3における射出成形開始時には、審判請求人がいうところの金型が「開いた状態」にあるというべきである。
次に、主張イに係るパーティングラインからの脱気に関し、審判請求人による「引用文献3の射出成形機において射出を開始する時点で金型が閉じていることは明らかである」との主張は、相違点3について上記(2)アで検討したとおりであって、その前提において失当といえるし、そもそも、本願発明は、パーティングラインからの脱気を特定事項とするものではない。
よって、審判請求人の上記主張は採用できない。
(4)引用発明3との対比・検討の小括
したがって、本願発明は、引用発明3すなわち引用文献3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
仮にそうでないとしても、本願発明は、引用文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明、すなわち請求項1に係る発明は、引用発明1又は3、すなわち、引用文献1又は3に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないか、引用発明1又は3から当業者が容易に発明をすることができたものであるから同法同条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-000475