特許拒絶査定不服審判
2019-017395
機器用配線集合体
- 審判番号
- 2019-017395
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-123409外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年12月24日
- 審決日
- 2020年12月02日
- 公報発行日
- 2021年01月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】日立金属株式会社
- 分類
- P18 .121-WY (H01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2019-123409「機器用配線集合体」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年11月21日出願公開、特開2019-200997、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年7月28日に出願した特願2015-148580号(以下、「原出願」という。)の一部を令和元年7月2日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和 元年 7月 2日 :上申書の提出
令和 元年 7月23日付け:拒絶理由通知書(起案日)
令和 元年 9月27日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年10月 4日付け:拒絶査定(起案日)(以下、「原査定」という。)
令和 元年12月24日 :審判請求書
令和 2年 7月31日付け:拒絶理由通知書(起案日)(以下、「当審拒絶理由」という。)
令和 2年 9月24日 :意見書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和 元年10月 4日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-4に係る発明は、以下の引用文献Aに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
A.特開2014-13675号公報
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
本願請求項1-3に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2008-25975号公報(当審拒絶理由で新たに引用された文献)
2.特開2014-13675号公報(原査定で引用された引用文献A)
3.特開2011-62053号公報(当審拒絶理由で新たに引用された文献)
第4 本願発明
本願請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、令和 2年 9月24日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-4は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
導体と前記導体の外周に設けられた絶縁体とを備え、前記導体の両端には、2つの接続部が設けられており、機器本体と当該機器本体を収容する機器ケースとを備えた機器内に
屈曲された状態で配線される機器用配線部材を3つ備えた機器用配線集合体において、
3つの前記機器用配線部材のそれぞれの前記導体及び前記絶縁体は、1つずつであり、
屈曲された状態の3つの前記機器用配線部材を保持し、前記機器ケース内に全体が収容される保持部材を備え、
前記2つの接続部は、それぞれ前記機器ケースに収容されており、
前記2つの接続部の一方は、機器の接続端子と接続されるボルト穴を有する圧着端子であり、前記2つの接続部の他方は、圧着端子ではなく、ボルト穴を有しない板状に形成されており、
前記保持部材は、前記機器ケース内において前記2つの接続部の他方よりも前記導体の前記圧着端子に近い端側に設けられており、3つの前記ボルト穴が直線状に所定間隔となるように前記機器用配線部材を保持する、
機器用配線集合体。
【請求項2】
前記保持部材は、150℃~200℃の耐熱性を有する絶縁性樹脂からなり、
前記保持部材は、前記機器本体に固定されている、
請求項1の記載の機器用配線集合体。
【請求項3】
3つの前記機器用配線部材の長さが異なっている、
請求項1又は2の記載の機器用配線集合体。
【請求項4】
導体と前記導体の両端に設けられた2つの接続部とを備え、機器本体と当該機器本体を収容する機器ケースとを備えた機器内に屈曲された状態で配線される機器用配線部材を3つ備えた機器用配線集合体において、
屈曲された状態の3つの前記機器用配線部材を保持し、前記機器ケース内に全体が収容される保持部材を備え、
前記2つの接続部は、それぞれ前記機器ケースに収容されており、
前記2つの接続部の一方は、機器の接続端子と接続されるボルト穴を有する圧着端子であり、
前記保持部材は、前記機器ケース内において前記2つの接続部の他方よりも前記導体の前記圧着端子に近い端側に設けられており、3つの前記ボルト穴が直線状に所定間隔となるように前記機器用配線部材を保持し、
前記導体は、素線を複数本撚り合わせた子撚り線をさらに複数本撚り合わせた複合撚線導体である撚線導体であり、
前記2つの接続部の他方は、ワイヤハーネスのメス端子が嵌合され接続されるオス端子であり、
前記オス端子と前記撚線導体とは、超音波接合により接続されており、前記オス端子の前記撚線導体の延出側の端部には、面取り加工が施されている、
機器用配線集合体。」
第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)当審拒絶理由で引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付加したもの。以下同じ。)
「【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置の室外機1の前面パネルを開放してその内部を示す全体図である。冷凍サイクル装置の室外機1は、仕切板2を境にして熱交換室3と機械室4とから構成される。熱交換室3内には、ファン3aとファン3aの奥にファン3aと対向するように熱交換器3bが設置されている。ファン3aが駆動することにより、熱交換器3bに風が送られて熱交換器3b内を循環する冷媒を冷却する。なお、本発明の実施の形態においてはファン3aが垂直方向に2つ設けられているが、このファン3aの数は単数でも複数でも良い。」
「【0012】
本発明の実施の形態における冷凍サイクル装置の室外機1では、熱交換器3bが熱交換室3内に設けられている。機械室4内には、冷媒を循環させるパイプ等様々な機器が収納されているが、主な機器は上部より下部に向けて、インバータ5と、バルブ固定板6と、バルブ固定板6に設けられている配線固定具7と、圧縮機8とが設けられている。このように、基本的には機械室4は雨水等の水が入らないように設計されるが、万が一、水が浸入した場合もできる限り故障することがないようインバータ5や制御回路等の電気・電子部品はできるだけ上部に配置されている。」
「【0016】
インバータ5に設けられている出力端子5aないし5cには、リード線9(以下、適宜複数の「リード線9aないし9c」を「リード線9」と表わす。)の一端が各々接続され、リード線9aないし9cの他端は圧縮機8に設けられている入力端子8aないし8cに接続されている。また、これらリード線9aないし9cは、機械室4内で他の機器に接触等しないようにバルブ固定板6に設けられている配線固定具7に固定されて束ねられている。」
「【0018】
リード線9は、図2に示すように、その一端にインバータ5の出力端子5aないし5cと接続されるインバータ側接続端子9vが設けられ、他端には圧縮機8に設けられている入力端子8aないし8cに接続される圧縮機側接続端子9wが設けられている。さらにこのリード線9は、インバータ側接続端子9vから圧着端子9xまでは塩化ビニル線9yで構成されている。一方、圧着端子9xから圧縮機側接続端子9wまでは架橋ポリエチレン線9zで構成されている。この塩化ビニル線9yは架橋ポリエチレン線9zと比べて耐熱性に劣る面があるが安価である。また塩化ビニル線9yは架橋ポリエチレン線9zに比べ柔軟性が高く、配線接続の作業性が良い。」
(2)引用文献1の【図1】、【図2】は、以下のとおりのものである。
ア 引用文献1の【図1】から、屈曲された状態のリード線9aないし9cが見てとれる。
イ 引用文献1の【図1】から、インバータ5の出力端子5aないし5cと接続されるリード線9の一端に近い端側に、配線固定具を設けることが見てとれる。
ウ 引用文献1の【図2】から、インバータ側接続端子9vは、ボルト穴を有することが見てとれる。
(3)引用発明1
上記(1)、(2)から、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「室外機1は、仕切板2を境にして熱交換室3と機械室4とから構成され、機械室4内には、冷媒を循環させるパイプ等様々な機器が収納されているが、主な機器は上部より下部に向けて、インバータ5と、配線固定具7と、圧縮機8とが設けられ、
屈曲された状態のリード線9aないし9cは、機械室4内で配線固定具7に固定されて束ねられ、
インバータ5の出力端子5aないし5cと接続されるリード線9の一端に近い端側に、配線固定具を設け、
リード線9は、図2に示すように、その一端にインバータ5の出力端子5aないし5cと接続されるインバータ側接続端子9vが設けられ、インバータ側接続端子9vから圧着端子9xまでは塩化ビニル線9yで構成され、他端には圧縮機8に設けられている入力端子8aないし8cに接続される圧縮機側接続端子9wが設けられ、インバータ側接続端子9vは、ボルト穴を有している、
リード線9及び配線固定具7。」
2 引用文献2について
(1)当審拒絶理由及び原査定で引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0004】
このコネクタを機器に取り付ける際は、ケースの取付孔にハウジングを嵌合し、シールドシェルの取付部に形成されたボルト孔を貫通するボルトによって、シールドシェルをケースにボルト締めする。電線の先端部に圧着された端子は、ケース内にて、機器側端子にボルトによって固定され、電気的に接続される。」
「【0017】
このワイヤハーネス1は、先端部に端子91が圧着により接続された3本の電線90と、これら3本の電線90を保持する電線保持装置10とを備えている。電線保持装置10は、シール保持部材としてのリテーナ2と、3本の電線90を保持する電線ホルダ3と、電線ホルダ3の一部を収容するシールドシェル4とを有している。
【0018】
リテーナ2と電線ホルダ3とは、3本の電線90の延伸方向に沿って並んでいる。リテーナ2は、3本の電線90を挿通させる3つの挿通孔20を有し、外周面2aには環状溝21が形成されている。この環状溝21には、例えばシリコンゴム等からなる外周シール部材22が保持されている。外周シール部材22には、その延伸方向に対して直交する方向に突出する突起22aが複数箇所に形成され、この突起22aによって外周シール部材22が回り止めされている。
【0019】
リテーナ2及び電線ホルダ3は、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)やPA(ポリアミド)、あるいはPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の電気絶縁性を有する樹脂からなり、例えば射出成形により成形される。」
「【0033】
電線90は、銅等の金属からなる導体部901と、導体部901を被覆する絶縁体からなる絶縁被覆部902とを有している。リテーナ2は、その端子91側の端面が3つの挿通孔20の開口20bを有する開口端面200aとして形成されている。」
「【0036】
図4は、電線保持装置10の使用状態の一例を示す説明図である。
【0037】
シールドシェル4は、被取付部材7に固定される。本実施の形態では、被取付部材7が電気自動車のモータに電流を供給するインバータのケースである場合について説明する。被取付部材7(インバータのケース)内には、端子台5が配置されている。この端子台5は、インバータのスイッチング素子の出力端子と3本の電線90に接続された端子91とを接続するために用いられる。
【0038】
シールドシェル4の被取付部材7への取り付けは、図4に示すように、リテーナ2及び電線ホルダ3におけるリテーナ2側の先端部を被取付部材7の取付孔70に収容し、シールドシェル4の固定部42に形成された貫通孔42aを貫通するボルト8を締め付けて、被取付部材7に形成された図略のネジ穴に螺合させることにより実施する。その後、被取付部材7内で端子91を端子台5にボルト6で締め付ける。」
(2)引用文献2の【図1】、【図4】は、以下のとおりのものである。
ア 引用文献2の【図1】から、リテーナ2及び電線ホルダ3は、3つのボルト穴が直線状に所定間隔となるように3本の電線90を保持することが見てとれる。
イ 引用文献2の【図1】、【図4】から、端子91は、インバータの端子台5と接続されるボルト穴を有することが見てとれる。
ウ 引用文献2の【図4】から、電線90が、インバータのケース内に屈曲された状態で配線されることが見てとれる。
(3)技術的事項
引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「ワイヤハーネス1は、先端部に端子91が圧着により接続された3本の電線90を備えること」
「リテーナ2及び電線ホルダ3は、3つのボルト穴が直線状に所定間隔となるように3本の電線90を保持すること」
「リテーナ2及び電線ホルダ3は、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)やPA(ポリアミド)、あるいはPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の電気絶縁性を有する樹脂からなること」
(4)引用発明A
上記(1)、(2)から、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。
「銅等の金属からなる導体部901と、導体部901を被覆する絶縁体からなる絶縁被覆部902とを有し、先端部に端子91が圧着により接続された3本の電線90とを備えたワイヤハーネス1において、
3本の電線90を保持する電線保持装置10とを備え、電線保持装置10は、シール保持部材としてのリテーナ2と、3本の電線90を保持する電線ホルダ3と、電線ホルダ3の一部を収容するシールドシェル4とを有し、リテーナ2及び電線ホルダ3におけるリテーナ2側の先端部をインバータのケースの取付孔70に収容されており、
電線90は、インバータのケース内に屈曲された状態で配線され、
端子91は、インバータの端子台5と接続されるボルト穴を有しており、
リテーナ2及び電線ホルダ3は、3つのボルト穴が直線状に所定間隔となるように3本の電線90を保持する、
ワイヤハーネス1。」
3 引用文献3について
(1)当審拒絶理由で引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0026】
このクランプ41,43は、合成樹脂から成形されたもので、クランプ本体54と、このクランプ本体54に一体的に取り付けられるカバー55とを有している。クランプ本体54およびカバー55には、断面円弧状の凹部54a,55aが形成されており、クランプ本体54に対してカバー55を取り付けて一体化させると、それぞれの凹部54a,55aからなる保持孔52が形成される。
【0027】
つまり、凹部54aにシールドケーブル25を配置させながらクランプ本体54にカバー55を取り付けることにより、シールドケーブル25にクランプ41,43が取り付けられ、保持孔52に挿通されて固定された状態となる。これにより、シールドケーブル25は、クランプ41,43によって互いに所定の間隔をあけた状態にクランプされて配置される。
【0028】
このクランプ41,43には、クランプ本体54に、孔部56が形成されており、これら孔部56には、このクランプ41,43をインバータ23へ固定するためのネジが挿通される。」
(2)引用文献3の【図5】は、以下のとおりのものである。
ア 引用文献3の【図5】から、クランプ41、43は、3つの接続端子31が直線状に所定間隔となるように3本のシールドケーブル25を保持することが見てとれる。
(3)技術的事項
引用文献3には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「クランプ41、43は、3つの接続端子31が直線状に所定間隔となるように3本のシールドケーブル25を保持すること」
「クランプ41,43は、合成樹脂から成形され、クランプ41、43をインバータ23へ固定すること」
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)引用発明1を主引用発明とする理由について
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用発明1の「リード線9及び配線固定具7」は、本願発明1の「機器用配線集合体」に対応する。
(イ)引用発明1の「室外機1は、仕切板2を境にして熱交換室3と機械室4とから構成され、機械室4内には、冷媒を循環させるパイプ等様々な機器が収納されているが、主な機器は上部より下部に向けて、インバータ5と、配線固定具7と、圧縮機8とが設けられ」ることから、引用発明1の「インバータ5」は、本願発明1の「機器本体」に相当し、「インバータ5」を収納する引用発明1の「機械室4」は、本願発明1の「機器ケース」に相当し、「インバータ5」と「機械室4」とを備える引用発明1の「室外機1」は、本願発明1の「機器」に相当する。
また、引用発明1の「屈曲された状態のリード線9aないし9c」は、配線であり、「その一端にインバータ5の出力端子5aないし5cと接続されるインバータ側接続端子9vが設けられ、インバータ側接続端子9vから圧着端子9xまでは塩化ビニル線9yで構成され、他端には圧縮機8に設けられている入力端子8aないし8cに接続される圧縮機側接続端子9wが設けられ」ていることから、本願発明1と引用発明1とは、「導体と前記導体の外周に設けられた絶縁体とを備え、前記導体の両端には、2つの接続部が設けられ」る点で一致する。
そして、引用発明1では、「機械室4」内に「インバータ5」と「圧縮機8」とが設けられており、「インバータ5」と「圧縮機8」とを接続する「屈曲された状態のリード線9aないし9c」についても「機械室4」、つまり「室外機1」内に設けられることは明らかであり、引用発明1の「リード線9aないし9c」のそれぞれは、本願発明1の「導体と前記導体の外周に設けられた絶縁体とを備え、前記導体の両端には、2つの接続部が設けられており、機器本体と当該機器本体を収容する機器ケースとを備えた機器内に屈曲された状態で配線される機器用配線部材」に相当する。
(ウ)引用発明1では、「リード線9aないし9cは、機械室4内で配線固定具7に固定されて束ねられ」ており、「リード線9aないし9c」の3本からなる「リード線9」であることから、引用発明1の「リード線9及び配線固定具7」は、本願発明1の「機器用配線部材を3つ備えた機器用配線集合体」に相当する。
(エ)引用発明1は、「機械室4内に」「配線固定具7」を備え、「リード線9aないし9cは、機械室4内で配線固定具7に固定されて束ねられ」ることから、引用発明1の「配線固定具7」は、本願発明1「保持部材」に相当し、「機械室4」内に全体が収容されるものである。
(オ)上記(イ)のとおり、引用発明1の「リード線9aないし9c」は、「機械室4」内に設けられており、本願発明1と引用発明1とは、「前記2つの接続部は、それぞれ前記機器ケースに収容され」る点で一致する。
(カ)引用発明1の「インバータ側接続端子9v」は、本願発明1の「2つの接続部の一方」に相当し、引用発明1の「インバータ5の出力端子5aないし5cと接続されるインバータ側接続端子9v」は、「ボルト穴を有している」ことから、本願発明1と引用発明1とは、「前記2つの接続部の一方は、機器の接続端子と接続されるボルト穴を有する」点で一致する。
(キ)引用発明1では、「インバータ5の出力端子5aないし5cと接続されるリード線9の一端に近い端側に、配線固定具を設け」られ、本願発明1の「2つの接続部の一方」は、「前記導体の前記圧着端子」であることから、本願発明1と引用発明1とは、「前記保持部材は、前記機器ケース内において前記2つの接続部の他方よりも」「2つの接続部の一方」「に近い端側に設けられ」る点で一致する。
(ク)したがって、本願発明1と引用発明1との、一致点と相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「導体と前記導体の外周に設けられた絶縁体とを備え、前記導体の両端には、2つの接続部が設けられており、機器本体と当該機器本体を収容する機器ケースとを備えた機器内に屈曲された状態で配線される機器用配線部材を3つ備えた機器用配線集合体において、
屈曲された状態の3つの前記機器用配線部材を保持し、前記機器ケース内に全体が収容される保持部材を備え、
前記2つの接続部は、それぞれ前記機器ケースに収容されており、
前記2つの接続部の一方は、機器の接続端子と接続されるボルト穴を有し、
前記保持部材は、前記機器ケース内において前記2つの接続部の他方よりも一方に近い端側に設けられている、
機器用配線集合体。」である点。
(相違点)
(相違点1)本願発明1では、「3つの前記機器用配線部材のそれぞれの前記導体及び前記絶縁体は、1つずつであ」るのに対し、引用発明1では、そのような特定はなされていない点。
(相違点2)本願発明1の「前記2つの接続部の一方は、」「圧着端子であり、前記2つの接続部の他方は、圧着端子ではなく、ボルト穴を有しない板状に形成されて」いるのに対し、引用発明1では、そのような特定はなされていない点。
(相違点3)本願発明1の「前記保持部材は、」「3つの前記ボルト穴が直線状に所定間隔となるように前記機器用配線部材を保持する」のに対し、引用発明1では、そのような特定はなされていない点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点1、2についてまとめて検討する。
(ア)引用発明1の「リード線」は、引用文献1の段落【0005】、【0006】に記載されるように、「塩化ビニル線」と「架橋ポリエチレン線」からなり、「本発明の目的は、インバータ出力端子側に塩化ビニル線を用い、圧縮機のモータ入力端子側に架橋ポリエチレン線を用い、塩化ビニル線と架橋ポリエチレン線とを圧着端子により接続してリード線として使用することにより、耐熱性、経済性及び作業性に優れた冷凍サイクル装置の室外機を提供することである。」と記載されている。
そうすると、「塩化ビニル線」と「架橋ポリエチレン線」とを1つにすることは、引用文献1の目的に反するため、引用発明1において、「3つの前記機器用配線部材のそれぞれの前記導体及び前記絶縁体は、1つずつ」とすることが、設計的事項とはいえない。
(イ)引用発明1の「リード線」のうち「塩化ビニル線」のみを、本願発明1の「機器用配線部材」に対応する構成と認定すると、引用発明1の「塩化ビニル線」は、導体と導体を覆う塩化ビニルが1つずつであることから、本願発明1とは、「3つの前記機器用配線部材のそれぞれの前記導体及び前記絶縁体は、1つずつであ」る点で一致する。
ここで、引用発明1の「塩化ビニル線」の接続部の一方は、「インバータ側接続端子9v」であり、接続部の他方は、「圧着端子9x」であることから、上記相違点2で相違する。
相違点2について、引用文献2の「ワイヤハーネス1は、先端部に端子91が圧着により接続された3本の電線90を備えること」の技術的事項を参酌し、引用発明1において、「インバータ側接続端子9v」を圧着により接続されたものとすることまでは、当業者が適宜なし得た設計事項であるものの、引用文献2、3には、「2つの接続部の他方は、圧着端子ではなく、ボルト穴を有しない板状に形成され」ることに対応する技術は記載されていない。
さらに、圧着端子ではなく、ボルト穴を有しない板状の端子が周知であったとしても、引用発明1において、「インバータ側接続端子9v」を圧着端子に変更した上で、圧着端子である「圧着端子9x」を、「圧着端子ではなく、ボルト穴を有しない板状に形成」することは、必要性や作業効率の向上があるとはいえず、動機付けはないというべきである。
(ウ)したがって、上記相違点3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
(2)引用発明Aを主引用発明とする理由について
ア 対比
本願発明1と引用発明Aとを対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用発明Aの「ワイヤハーネス1」は、本願発明1の「機器用配線集合体」に対応し、引用発明Aの「導体部901」、「絶縁被覆部902」、「インバータ」、「インバータのケース」は、それぞれ、本願発明1の「導体」、「絶縁体」、「機器本体」、「機器ケース」に相当する。
また、引用発明Aの「導体部901」を含む「電線90」は、機器間を接続するものであることから、「導体部901」の両端に2つの接続部を備えることは、自明であり、引用発明Aの「電線90」は、本願発明1の「機器用配線部材」に対応する。
そして、引用発明Aは、「銅等の金属からなる導体部901と、導体部901を被覆する絶縁体からなる絶縁被覆部902とを有し、先端部に端子91が圧着により接続された3本の電線90とを備えたワイヤハーネス1」であり、「電線90は、インバータのケース内に屈曲された状態で配線され」ることから、本願発明1と引用発明Aとは、「導体と前記導体の外周に設けられた絶縁体とを備え、前記導体の両端には、2つの接続部が設けられており、機器本体と当該機器本体を収容する機器ケースとを備えた機器内に屈曲された状態で配線される機器用配線部材を3つ備えた機器用配線集合体」である点で一致する。
(イ)引用発明Aの「電線90」は、「導体部901」と「絶縁被覆部902」を1つずつ備えることから、本願発明1と引用発明Aとは、「3つの前記機器用配線部材のそれぞれの前記導体及び前記絶縁体は、1つずつであ」る点で一致する。
(ウ)引用発明Aの「3本の電線90を保持する電線保持装置10」は、本願発明1の「保持部材」に対応し、「電線保持装置10」の一部である「リテーナ2及び電線ホルダ3におけるリテーナ2側の先端部をインバータのケースの取付孔70に収容」することから、本願発明1と引用発明Aとは、「屈曲された状態の3つの前記機器用配線部材を保持し、前記機器ケース内に」一部「が収容される保持部材」である点で共通する。
(エ)引用発明Aの「電線90」の「端子91は、インバータの端子台5と接続される」ことから、本願発明1と引用発明Aとは、「前記2つの接続部」の一方は、「前記機器ケースに収容され」る点で共通する。
(オ)引用発明Aにおいて、「先端部に端子91が圧着により接続された3本の電線90」であり、「端子91は、インバータの端子台5と接続されるボルト穴を有」することから、本願発明1と引用発明Aとは、「前記2つの接続部の一方は、機器の接続端子と接続されるボルト穴を有する圧着端子であ」る点で一致する。
(カ)引用発明Aでは、「リテーナ2及び電線ホルダ3は、3つのボルト穴が直線状に所定間隔となるように3本の電線90を保持する」ことから、本願発明1と引用発明Aとは、「前記保持部材は、3つの前記ボルト穴が直線状に所定間隔となるように前記機器用配線部材を保持する」点で共通する。
(キ)したがって、本願発明1と引用発明Aとの、一致点と相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「導体と前記導体の外周に設けられた絶縁体とを備え、前記導体の両端には、2つの接続部が設けられており、機器本体と当該機器本体を収容する機器ケースとを備えた機器内に
屈曲された状態で配線される機器用配線部材を3つ備えた機器用配線集合体において、
3つの前記機器用配線部材のそれぞれの前記導体及び前記絶縁体は、1つずつであり、
屈曲された状態の3つの前記機器用配線部材を保持し、前記機器ケース内に一部が収容される保持部材を備え、
前記2つの接続部の一方は、前記機器ケースに収容されており、
前記2つの接続部の一方は、機器の接続端子と接続されるボルト穴を有する圧着端子であり、
前記保持部材は、3つの前記ボルト穴が直線状に所定間隔となるように前記機器用配線部材を保持する、
機器用配線集合体。」である点。
(相違点)
(相違点1)本願発明1では、「前記機器ケース内に全体が収容される保持部材」であるのに対し、引用発明Aでは、「電線保持装置10」の一部のみが「インバータのケース」に収容される点。
(相違点2)本願発明1では、「前記2つの接続部は、それぞれ前記機器ケースに収容され」るのに対し、引用発明Aでは、「端子91」のみ「インバータのケース」に収容される点。
(相違点3)本願発明1では、「前記2つの接続部の他方は、圧着端子ではなく、ボルト穴を有しない板状に形成され」るのに対し、引用発明Aでは、そのような特定はなされていない点。
(相違点4)本願発明1では、「前記保持部材は、前記機器ケース内において前記2つの接続部の他方よりも前記導体の前記圧着端子に近い端側に設けられ」るのに対し、引用発明Aでは、そのような特定はなされていない点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点1、2についてまとめて検討する。
引用発明Aの「ワイヤハーネス1」は、引用文献1の段落【0001】、【0002】等の記載を参酌すると、「インバータ」とモータのような他の機器とを接続するためのものと認められる。
そして、相違点1、2のとおり、本願発明1では、「機器ケース内」に「保持部材」の全体や「機器用配線部材」の「2つの接続部」を収容されることから、「機器用配線集合体」は、「機器ケース内」に配置されるものであり、「2つの接続部の他方」は他のものと接続する構成を有すること(本願の明細書の段落【0019】には、ワイヤハーネスのメス端子と接続されることが記載されている。)から、「機器用配線集合体」は、「機器」のインタフェース部分といえる。
そうすると、ワイヤハーネスのような外部配線と機器のインタフェース部分では技術が異なり、引用発明Aの「ワイヤハーネス1」の全体を「インバータのケース」内に配置することが、設計的事項とはいえない。
また、引用文献1、3には、上記のとおり、「インバータのケース」内の配線に対応する技術は記載されていない。
したがって、上記相違点3、4について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明A及び引用文献1、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2 本願発明2-4について
(1)引用発明1を主引用発明とする理由について
ア 本願発明2、3について
本願発明2、3も、本願発明1の「3つの前記機器用配線部材のそれぞれの前記導体及び前記絶縁体は、1つずつであ」り、「前記2つの接続部の一方は、」「圧着端子であり、前記2つの接続部の他方は、圧着端子ではなく、ボルト穴を有しない板状に形成されて」いることと同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
イ 本願発明4について
(ア)対比
本願発明4と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
a 本願発明4の「導体」、「2つの接続部」、「機器本体」、「機器ケース」、「機器」、「機器用配線部材」、「機器用配線集合体」、「保持部材」の構成のうち、本願発明1と共通する部分については、上記1(1)ア(ア)-(キ)のとおりである。
b したがって、本願発明4と引用発明1との、一致点と相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「導体と前記導体の両端に設けられた2つの接続部とを備え、機器本体と当該機器本体を収容する機器ケースとを備えた機器内に屈曲された状態で配線される機器用配線部材を3つ備えた機器用配線集合体において、
屈曲された状態の3つの前記機器用配線部材を保持し、前記機器ケース内に全体が収容される保持部材を備え、
前記2つの接続部は、それぞれ前記機器ケースに収容されており、
前記2つの接続部の一方は、機器の接続端子と接続されるボルト穴を有し、
前記保持部材は、前記機器ケース内において前記2つの接続部の他方よりも一方に近い端側に設けられている、
機器用配線集合体。」である点。
(相違点)
(相違点1)本願発明4の「前記2つの接続部の一方は、」「圧着端子であ」るのに対し、引用発明1では、そのような特定はなされていない点。
(相違点2)本願発明4の「前記保持部材は、」「3つの前記ボルト穴が直線状に所定間隔となるように前記機器用配線部材を保持する」のに対し、引用発明1では、そのような特定はなされていない点。
(相違点3)本願発明4では、「前記導体は、素線を複数本撚り合わせた子撚り線をさらに複数本撚り合わせた複合撚線導体である撚線導体であ」るのに対し、引用発明1では、そのような特定はなされていない点。
(相違点4)本願発明4では、「前記2つの接続部の他方は、ワイヤハーネスのメス端子が嵌合され接続されるオス端子であ」るのに対し、引用発明1では、そのような特定はなされていない点。
(相違点5)本願発明4では、「前記オス端子と前記撚線導体とは、超音波接合により接続されており、前記オス端子の前記撚線導体の延出側の端部には、面取り加工が施されている」のに対し、引用発明1では、そのような特定はなされていない点。
(イ)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点4について先に検討する。
引用発明1の「電線90」の接続部の一方は、「インバータ側接続端子9v」であり、接続部の他方は、「圧縮機側接続端子9w」である。
上記相違点4について、引用文献2の「ワイヤハーネス1は、先端部に端子91が圧着により接続された3本の電線90を備えること」の技術的事項を参酌し、引用発明1において、「インバータ側接続端子9v」を圧着により接続されたものとすることまでは、当業者が適宜なし得た設計事項であるものの、引用文献2、3には、「前記2つの接続部の他方は、ワイヤハーネスのメス端子が嵌合され接続されるオス端子であ」ることに対応する技術は記載されていない。
さらに、ワイヤハーネスのメス端子が嵌合され接続されるオス端子が周知であったとしても、引用発明1は、「室外機1」に関する技術であり、「室外機1」内に「電線90」と接続するワイヤハーネスを配置する必要性はないことから、動機付けはないというべきである。
したがって、上記相違点1-3、5について判断するまでもなく、本願発明4は、当業者であっても引用発明1及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
(2)引用発明Aを主引用発明とする理由について
本願発明2-4も、本願発明1の「前記機器ケース内に全体が収容される保持部材」や、「前記2つの接続部は、それぞれ前記機器ケースに収容され」ることと同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明A、引用文献1、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定についての判断
令和 2年 9月24日付けの補正により、補正後の請求項1-4は、「前記機器ケース内に全体が収容される保持部材」や、「前記2つの接続部は、それぞれ前記機器ケースに収容され」ることという技術的事項を有するものとなった。当該「前記機器ケース内に全体が収容される保持部材」や、「前記2つの接続部は、それぞれ前記機器ケースに収容され」ることは、原査定における引用文献A(当審拒絶理由における引用文献2)には記載されておらず、本願の原出願の出願日前における周知技術でもないので、本願発明1-4は、当業者であっても、原査定における引用文献Aに基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-017395