特許拒絶査定不服審判
2019-015084
マルチパス環境におけるIPSECトンネルの効率的使用
- 審判番号
- 2019-015084
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-568321外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年11月11日
- 審決日
- 2022年04月27日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】サイトリックス システムズ,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】山本 秀策
- 【請求人代理人】森下 夏樹
- 分類
- P18 .121-WY (H04L) / P18 .537-WY (H04L) / P18 .536-WY (H04L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-568321「マルチパス環境におけるIPSECトンネルの効率的使用」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月 2日国際公開、WO2017/019798、平成30年 8月 9日国内公表、特表2018-522481、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1.手続きの経緯
本願は、2016年(平成28年)7月27日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2015年7月28日(以下、「優先日」という。)、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年 1月23日付け:拒絶理由通知
令和 元年 6月14日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年 7月 9日付け:拒絶査定(原査定)
令和 元年11月11日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 3年 3月31日付け:拒絶理由通知
(以下、「当審拒絶理由(1)」という。)
令和 3年 7月 1日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年10月20日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知
(以下、「当審拒絶理由(2)」という。)
令和 4年 1月19日 :意見書、手続補正書の提出
第2.原査定の概要
原査定(令和元年7月9日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1~14に係る発明は、以下の引用文献1~4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特表2015-515210号公報
2.特開2003-209569号公報
3.特開平5-95373号公報
4.特開2000-216815号公報
第3.当審拒絶理由の概要
1.当審拒絶理由(1)の概要は、次のとおりである。
理由1(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由2(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
理由3(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
理由1
(1)請求項1~14に係る発明の「前記データグラムの属性に基づいて、第2のメタデータのセットと前記データグラムとを関係づける」という構成は、発明の詳細な説明に記載されていない。
また、請求項1~14に係る発明の「データグラムの属性」が、発明の詳細な説明のどの記載に基づくものであるかも把握できない。
(2)請求項1~14に係る発明の「前記第2のメタデータのセットは、前記データグラムの優先順位と、前記データグラムの宛先IPアドレスまたはソースIPアドレスのうちの少なくとも1つとを含む」という構成は、発明の詳細な説明に記載されていない。
(3)請求項1~14に係る発明の「前記エンコードされたデータグラムと関連付けられた前記第1のメタデータのセットおよび前記データグラムと関連付けられた前記第2のメタデータのセットの前記データグラムの前記優先順位に基づいて、複数の接続から1つの接続を選択するように構成されるパケットルータ」という構成は、発明の詳細な説明に記載されていない。
(4)請求項1~6に係る発明には、「パケットルータ」は「ゲートウェイ」とは別の構成要素であることが記載されているものの、発明の詳細な説明には、両者を別の構成要素とすることについて記載されていない。
理由2
(1)請求項1~14に係る発明の「前記データグラムの属性に基づいて、第2のメタデータのセットと前記データグラムとを関連付ける」という構成の技術内容は不明確である。
(2)請求項1~14に係る発明の「前記エンコードされたデータグラムと関連付けられた前記第1のメタデータのセットおよび前記データグラムと関連付けられた前記第2のメタデータのセットの前記データグラムの前記優先順位に基づいて、複数の接続から1つの接続を選択するように構成されるパケットルータ」という構成の技術内容は不明確である。
理由3
(1)請求項1~14に係る発明の「前記データグラムの属性に基づいて、第2のメタデータのセットと前記データグラムとを関連付ける」という構成について、本願の発明の詳細な説明は、上記構成を当業者が実施できる程度に記載されたものではない。
(2)請求項1~14に係る発明の「前記エンコードされたデータグラムと関連付けられた前記第1のメタデータのセットおよび前記データグラムと関連付けられた前記第2のメタデータのセットの前記データグラムの前記優先順位に基づいて、複数の接続から1つの接続を選択するように構成されるパケットルータ」という構成について、本願の発明の詳細な説明は、上記構成を当業者が実施できる程度に記載されたものではない。
2.当審拒絶理由(2)の概要は、次のとおりである。
理由1(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
記
理由1
(1)請求項1~14に係る発明の「セキュリティ関連付け」の「関連付け」とはどのような関連付けか、不明確である。
(2)請求項1~14に係る発明の「複数の接続の各接続」が、「少なくとも1つのIPsecセキュリティ関連付け」と関連付けられているとは、「各接続」が関連付けられている「IPsecセキュリティ関連付け」は「1つ」なのか、「1つ」ではないのか不明確であって、どのような技術内容を意味するのか不明確である。
第4.本願発明
本願請求項1~14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明14」という。)は、令和4年1月19日になされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定される発明であり、このうち本願発明1は、以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
コンピューティングデバイスへの1つまたはそれを上回る接続にわたってネットワークトラフィックをセキュア化するためのシステムであって、前記システムは、
データグラムを得て、データグラムをエンコードするように構成されるIPsecエンコーダであって、前記IPsecエンコーダは、コンピューティングエンティティと関連付けられた少なくとも1つのIPsecセキュリティ関連付け(SA)を含む、IPsecエンコーダと、
第1のメタデータのセットと前記エンコードされたデータグラムとを関連付けるように構成されるパケット分析器と、
前記データグラムの属性に基づいて、前記データグラムと関連付けられた第2のメタデータのセットを作成するように構成される分類器であって、前記データグラムの前記属性は、ソースIPアドレスまたは宛先IPアドレスを含み、前記第2のメタデータのセットは、前記データグラムの優先順位を示すデータを含む、分類器と、
ゲートウェイと
を備え、
前記ゲートウェイは、前記データグラムの前記優先順位を示す前記データを含む、前記データグラムと関連付けられた前記第2のメタデータのセットに基づいて、複数の接続から1つの接続を選択するように構成されるパケットルータを備え、
前記ゲートウェイは、前記コンピューティングデバイスへと、前記複数の接続から選択された前記接続を使用して、前記エンコードされたデータグラムを伝送するように構成され、前記複数の接続の各接続は、同一の1つのIPsecセキュリティ関連付け(SA)と関連付けられている、システム。」
また、本願発明7及び11は、それぞれ、本願発明1をカテゴリ表現が異なる「方法」及び「非一過性コンピュータ可読記憶媒体」の発明として特定したものであり、本願発明2~6は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明8~10は、本願発明7を減縮した発明であり、本願発明12~14は、本願発明11を減縮した発明である。
第5.引用文献、引用発明等
1.引用文献1、引用発明について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、強調のために当審が付与した。)
「【発明を実施するための形態】
【0010】
IPsecは、引用によって本出願に援用される、インターネット技術タスクフォース(Internet Engineering Task Force,IETF)文書RFC 4301(非特許文献1)で説明されるように、さまざまなネットワークを経由するインターネットプロトコル(Internet Protocol,IP)通信を保護するためのセキュリティプロトコル群を含むセキュリティプロトコルスイートである。IPsecは、IP層(例えば、開放型システム間相互接続(Open Systems Interconnection,OSI)参照モデルの第3層及び/又はネットワーク層)での通信を保護し得る。IPsecは、セキュリティゲートウェイ間のデータフロー(例えば、通信)を保護するエンドツーエンドのセキュリティスキームとなり得る。IPsecは、単方向性のSA対を使用して、複数のデータパケットを含むデータフローを保護し得る。例えば、ローカルセキュリティゲートウェイは、リモートセキュリティゲートウェイに伝送する通信を保護するための第1のSAと、リモートセキュリティゲートウェイから受信する通信を保護するための第2のSAとを使用し得る。また、IPsecは、SA内にSAがネストされる(例えば、トンネル内にトンネルを通す)ことを含むSAバンドルを許容してよい。IPsecは、SA対及び/又はSAバンドル対を使用するように制限されてよい。IPsecは、順次にSAを経由してパケットを伝送してよい。また、各SAには、一意に定まるセキュリティパラメータインデックス(Security Parameter Index,SPI)が割り当てられてよい。このことから、盗聴ノードは、単一のネットワークノードを監視することによって、SAによって保護されたトンネルを通過するすべてのパケットを受信し、SPIを使用してパケットを互いに関連付けし得る。盗聴ノードがSAセキュリティ対策手段を突破した場合、その盗聴ノードは、データフロー全体への完全なアクセスを行えるようになり得る。
【0011】
本明細書で開示されるものは、保護されていないネットワークを経由して伝送されるデータトラフィックのための強化された保護機能を備えた方法及び/又はシステムである。IPsecのデータ保護は、データフローを複数のサブフローに分割し、複数のサブフローを(例えば、複数のサブトンネル及び/又は複数のトランスポート通信を介して、)並行して伝送することによって強化され得る。サブSAは、サブフロー毎に独立して設定されてよい。複数のサブSAが組み合わされて、SAクラスタが形成されてよい。各サブSAは、一意に定まるSPIを含んでよい。SAクラスタ中のサブSAは、ローカルセキュリティゲートウェイとリモートセキュリティゲートウェイとの間で異なるネットワークパスを使用してよく、又は使用しなくてもよい。このことから、盗聴ノードは、ネットワークパスの途中で単一のノードを監視することによっては、すべてのサブフローへのアクセスを行えず、他のネットワークパスの存在、数、又はルートを把握し得ない。また、各サブSAが一意に定まるSPIを含み得るので、複数のサブフローからパケットを取得する盗聴ノードであっても、データパケットを互いに関連付けて、それらが同一のフローに関係していると判断し得ない。また、複数のサブフローのパラレル伝送は、シリアル伝送を超えて伝送効率を向上させることを可能にし得る。SAクラスタについては、引用によって本出願に援用される、IETF文書draft-zhang-ipsecme-multi-path-ipsec-02(非特許文献2)に詳しい。」
「【0013】
図1は、IPsecセキュリティアーキテクチャ100の一実施形態を示す概略図である。IPsecセキュリティアーキテクチャ100は、ホスト150と、ホスト151とを具備し、これらは、保護されていないネットワーク130に位置するルータ120を経由して、セキュリティゲートウェイ110,112を介して通信を行い得る。ホスト150,151は、それぞれ、保護された接続143,144を介してセキュリティゲートウェイ100,112に接続され得る。ホスト150,151は、保護されていないネットワーク130を経由する通信を希望し得る。セキュリティゲートウェイ110は、セキュリティゲートウェイ112への伝送のために、例えば、IKE及び/又はIKEv2を使用して、単方向性のSA 141を設定してよい。同様に、セキュリティゲートウェイ112は、セキュリティゲートウェイ110への伝送のために、単方向性のSA 142を設定してよく、その結果、SA対が作成され得る。ホスト150は、保護された接続143を介してセキュリティゲートウェイ110と通信を行うことによって、ホスト151にデータを伝送し得る。セキュリティゲートウェイ110は、SA 141を使用して、ルータ120を介して保護されていないネットワーク130を経由してセキュリティゲートウェイ112に通信を伝送し得る。次いで、そのような通信は、保護された接続144を介してホスト151にルーティングされて、伝送された通信に対するエンドツーエンドセキュリティが達成され得る。ホスト151は、実質的に同一の手法で、ただし、SA 141の代わりにSA 142を使用して、ホスト152にデータパケットを伝送し得る。
【0014】
ホスト150,151などのホストは、ネットワークを介して他のホストと通信を行う任意のデバイスであってよい。例えば、ホスト150及び/又はホスト151は、サーバ、クライアント端末、又はそれらの組合せを含んでよい。ホスト150,151は、サービスリクエスト、アプリケーションホスティング等に応答して、リソースの共有を目的とするデータ通信を行うように構成されてよい。一例として、ホスト150は、クライアント端末を含んでよく、ホスト151は、サーバを含んでよく、かつホスト151は、アプリケーションをホストし、ホスト150からのアプリケーションリクエストに応答し得る。別の例では、ホスト150,151は、それぞれ、仮想マシン(Virtual Machine,VM)、記憶スペース、処理リソースなどのリソースを含んでよく、ネットワーク接続を介して、データ、アプリケーション等のリロケートを動的に行い得る。
【0015】
セキュリティゲートウェイ110,112などのセキュリティゲートウェイは、保護されたネットワークのエッジに位置する任意のネットワーク要素(Network Element,NE)であってよい。保護されたネットワークは、保護された接続143,144などの保護された接続を含んでよい。セキュリティゲートウェイ110,112は、その内部に位置する任意のデバイス及び/又は保護されたネットワークを通過する通信に対してセキュリティを提供し得る。セキュリティゲートウェイ110,112は、保護されたネットワークに許可なくアクセスすることを防止してよく(例えば、ファイアウォールとして)、かつ保護されたネットワークを離れる通信のためのセキュリティプロトコルを実装してもよい。例えば、ホスト150,151が、それぞれ、データセンターに配置されている場合、セキュリティゲートウェイ110,112は、保護されたネットワークを離れるすべてのトラフィックがゲートウェイ110及び/又はゲートウェイ112を通過するように、データセンターネットワークのエッジに配置されてよい。セキュリティゲートウェイ110,112は、それぞれ、ホスト150,151からデータを受信し、保護されていないネットワーク130(例えば、インターネット)を経由するIPsec SA 141,142を作成することによって、通信セッションを開始してよい。セキュリティゲートウェイ110,112は、そのようなSAの作成を目的として、例えば、IKE及び/又はIKEv2を使用することによって、セキュリティ鍵を交換してよい。
【0016】
SA 141,142などのIPsec SAは、トランスポートモード又はトンネルモードで動作し得る。トランスポートモードでは、データパケットのペイロード(例えば、伝送される実際のデータ)が暗号化されてよく、一方、データパケットルーティング情報を含むデータパケットのヘッダは暗号化されずともよい。トンネルモードでは、データパケット全体が暗号化されてよい。また、SAは、認証ヘッダ(Authentication Header,AH)及び/又はカプセル化セキュリティペイロード(Encapsulating Security Payload,ESP)動作をサポートするためのデータ及び/又はアルゴリズムを含んでよい。AHは、データフローに対するコネクションレス整合性及びデータ発信元認証を提供し得る。ESPは、データパケット秘匿性(例えば、カプセル化)、データ発信元認証、コネクションレス整合性、アンチリプレイサービス、及びフロー秘匿性を提供し得る。SA 141,142は、それぞれ、単方向性を有してよい。このことから、SA 141,142の対は、セキュリティゲートウェイ110,112間でデータパケットをやりとりするために必要とされ得る。一実施形態では、SA141,142は、それぞれ、SAバンドルを含んでよい。SAバンドルは、ネストされた2つのSA(例えば、トンネル内のトンネル)を含み得る。例えば、SAバンドルは、ESPSA内のAH SAを含んでよい。IPsecセキュリティアーキテクチャ100は、セキュリティゲートウェイ110,112間の保護された通信毎に、単一のSA対及び/又は単一のSA対バンドル(例えば、SA 141及びSA 142)を提供するように制限されてよい。各SAは、別個のSPIを含んでよく、別個のSPIは、SAデータベース(Security Association Database,SAD)でインデックスとして使用されてよく、かつSA宛先アドレスと組み合わされて、SAを一意に識別し、SAに関連付けられた暗号化鍵及びプロトコルを決定するために使用されてもよい。
【0017】
ルータ120は、保護されていないネットワーク130に位置する任意のNE又は複数のNEからなるグループであってよい。ルータは、セキュリティゲートウェイ110からデータパケットを受信し、セキュリティゲートウェイ112にデータパケットを転送してよく、また、その逆を行ってもよい。ルータ120は、OSI参照モデルの第2層、第2.5層、及び/又は第3層の技術を使用して、パケットをルーティングし得る。ルータ120は、データパケットのヘッダに基づいてルーティング決定を行ってよい。データパケットがカプセル化されている場合(例えば、ESPの場合)、ルータ120は、データパケットのヘッダ及び/又はペイロードに格納されたデータを意識することなく、カプセル化されたパケットのヘッダに基づいてルーティング決定を行ってよい。ルータ120は、セキュリティゲートウェイ110とセキュリティゲートウェイ112との間のエンドツーエンド接続可能性を提供し得る。ルータ120は、SA 141のための単一のネットワークパスと、SA 142のための単一のネットワークパスとを用意してよい。SA 141のためのネットワークパスは、SA 142のためのネットワークパスと同一のパスであってもよく、又は同一のパスでなくてもよい。」
「【0019】
図1は、セキュリティゲートウェイ110,112間にSAが位置することだけを示しているが、ホスト150及び/又はホスト151などのホストは、ある実施形態では、SAを介してゲートウェイ110及び/又はゲートウェイ112などのゲートウェイと直接に通信を行ってもよい。例えば、ホストとして機能するクライアント端末は、保護されたネットワーク上に配置されなくてよい。その場合、クライアント端末は、SAを使用して、保護されていないネットワーク130を経由してセキュリティゲートウェイと直接に通信を行い得る。
【0020】
図2は、IPsecセキュリティアーキテクチャ200の別の実施形態を示す概略図である。アーキテクチャ200は、ホスト250,251、保護された接続243,244、セキュリティゲートウェイ210,212、及びルータ221,222を含んでよく、これらは、それぞれ、ホスト150,151、保護された接続143,144、セキュリティゲートウェイ110,112、及びルータ120と実質的に同一であってよい。セキュリティゲートウェイ210,212は、SAクラスタ241及びSAクラスタ242を介して通信を行い得る。
【0021】
SAクラスタ241,242は、それぞれ、複数のパラレルサブSAを含んでよい。パラレルサブSAは、同一の発信元ノード(例えば、セキュリティゲートウェイ210)と、同一の宛先ノード(例えば、セキュリティゲートウェイ212)とを備えた複数の単方向性サブSAであってよく、それぞれ、同一のデータフローの一部分を搬送してよい。例えば、SAクラスタ241は、パラレルサブSA 241a,241bを含んでよく、SAクラスタ242は、パラレルサブSA 242a,242bを含んでよい。SAクラスタは、サブSAがネストされ得るSAバンドルとは異なり得る。しかしながら、ある実施形態では、サブSAは、SAバンドルを含んでもよい。SAクラスタ毎に2つのサブSAだけが示されているが、SAクラスタ241,242は、特定の通信のために望まれる分だけより多くのサブSAを含んでもよい。サブSA 241a,241bは、それぞれ、SA 141と同様のものであってよく、サブSA 242a,242bは、それぞれ、SA 142と同様のものであってよい。しかしながら、各サブSAは、データフローの一部分の搬送及び/又はカプセル化だけを行い得る。例えば、セキュリティゲートウェイ210は、複数のデータパケットを含むデータフローを、SAクラスタ241を介してセキュリティゲートウェイ212に伝送することを希望し得る。セキュリティゲートウェイ210は、サブSA 241a,241b間でパケットを交番させ、サブSA 241bよりも多くのパケットをサブSA 241aで送信し、フローを別個のデータパケットブロックに分割し、サブSA 241a,241b間のブロックに交番させる等を行い得る。サブSAは、それぞれ、異なるSPIを有してよく、したがって、SAクラスタ241及び/又はSAクラスタ242は、複数のSPIを有し得る。SAクラスタ中の複数のサブSAは、セキュリティゲート間で同一の経路又は異なる経路を使用してよい。例えば、SAクラスタ241は、それぞれ、ルータ221を介する経路を使用するサブSA 241aと、ルータ222を介する経路を使用するサブSA 241bとを含んでよい。別の例として、SAクラスタ242は、そのどちらもルータ221を介する経路を使用するサブSA 242a及びサブSA 242bを含んでもよい。
【0022】
アーキテクチャ200は、データフローが分割され、盗聴ノードによって予測し得ない方法でルーティングされるようにし得る。各SAクラスタが未知数のサブSAを含み得るので、盗聴ノードは、特定のデータフローに関係するデータパケットの正確な数を把握し得ない。さらに、各SAクラスタが複数のSPIを含み得るので、盗聴ノードは、取得した任意のデータパケットを互いに関連付けることができず、複数のデータパケットが同一のデータフローに関連することを判断できない。さらに、あるサブSAは他のサブSAとは異なるネットワーク経路を通過し得るので、盗聴ノードは、単一のネットワークノードを監視することによっては、フローのデータパケットのすべてを取得できず、残りのデータパケットを取得するために他のどのデータパケットを監視すべきかを判断できない。このように、SAクラスタ241及び/又はSAクラスタ242の使用は、盗聴及び/又はハッキングプロセスに重大な不確実性を付与し得、したがって、保護されていないネットワーク上のセキュリティを強化し得る。また、パラレルサブSAでデータパケットを送信する機能は、伝送を最適化し得る。例えば、ルータ221が輻輳状態となった場合、発信データパケットは、通信セッションを終了することなく、サブSA 241aからサブSA241bに移されてよい。さらに、データフローパケットのパラレル伝送は、アーキテクチャ100によって必要とされるデータフローパケットのシリアル処理と比較して、並列プロセッサの処理効率を増大させ得る。例えば、SAルックアップ、シーケンス番号の生成、及び/又はアンチリプレイチェックは、データフローパケットが並列に伝送される場合には、並列に実行されてよい。」
「【0026】
データの機密性は、送信されたデータを盗聴などの受動的攻撃から保護し得る。IPsecの実装形態(例えば、アーキテクチャ100)において、すべてのIPデータグラムは、1つのIPsecトンネル内を伝送されてよく、1つのSAによる保護が提供され得る。機密セキュリティサービスを向上させるためには、SAのセット(例えば、サブSA241a、サブSA 241b、サブSA 242a、及び/又はサブSA 242b)がトラフィックを保護するために使用されてよい。複数のトンネルは、2つのエンティティ間にセットアップされ、次いで、一緒にクラスタ化されて、1つのクラスタ化トンネル(例えば、SAクラスタ241及び/又はSAクラスタ242)を形成し得る。1つのIPパケットは、なお、単一のSAによって保護され得る。送信エンティティは、トラフィックをこれらすべてのサブSAに分割してよい。受信エンティティは、複数のIPsecトンネルからのトラフィックを多重化し得る。一緒にクラスタ化されたトンネルは、サブトンネルと称されてよい。サブトンネルに対するSAは、サブSAと称されてよい。1つのクラスタ化トンネル内で保護され得るIPトラフィックは、すべてのサブトンネルに分割されてよい。SAクラスタという用語は、トラフィックがセキュリティポリシを満たすように処理されなければならないSAの組合せを説明するために使用されてよい。複数のサブトンネルが2つの保護されたエンティティ間のトラフィックの同一のフローに設定されるので、物理パスは異なり得る。これらのクラスタ化SAの処理順序は、これらすべてのSAがSAにネストされてよく、又はネストされなくてもよいので、ローカルの問題となり得る。」
「【0035】
先に記載したように、送信エンティティは、IPsecトラフィックを複数のサブトンネルを介するように分割及び/又は交番させ得る。SAクラスタがセキュリティポリシ設定に基づいてトラフィック処理のために選択された場合、1つのサブSAは、指定されたパケットの発信IPsec処理のために選択され得る。ローカル実装は、指定されたIPパケットにどのSAが適用されるべきかを決定し得る。シーケンス番号がすべてのサブSAに共有され得ることを除いて、アーキテクチャ100に関連する他の処理手順は、変更されずともよい。送信エンティティにおけるローカル実装は、パケットのシーケンス番号を取得するための任意の方法を選択してよく、サブSAの選択とは独立していてよい。代替実施形態では、各サブSAは、独自のシーケンス番号を生成してよく、サブSA間のシーケンス番号の共有を必要としなくともよい。
【0036】
図5は、SAクラスタを介してデータを受信する方法500の一実施形態を示すフロー図である。アンチリプレイは、IPsecの機能であり、受信NEが同一のパケットを複数回処理することを防止するために使用されてよい。単一のSAが使用される場合、パケットは、順番通りに受信されてよく、受信NEは、最後に受信したパケットのシーケンス番号よりも小さいシーケンス番号を有する新たに受信したパケットを破棄することを許可され得る。SAクラスタが使用される場合、パケットは、並行して送信されてよい。このことから、データパケットは、共有されるシーケンス番号が使用される場合には、順番通りには受信され得ない。方法500は、アンチリプレイビットマップの使用を介してSAクラスタを使用するとき、アンチリプレイ機能を実現するために使用されてよい。
【0037】
ステップ510で、受信パケットは、例えば、セキュリティゲートウェイ210及び/又はセキュリティゲートウェイ212によって、受信され得る。ステップ512で、方法は、例えば、SPIを使用してSPDに問い合わせを行うことによって、アンチリプレイがSAによって使用されるか否かを決定し得る。アンチリプレイがSAに使用されていない場合、方法500は、ステップ514へ進み、パケットを処理し得る。アンチリプレイが使用される場合、方法500は、ステップ516へ進み得る。ステップ516で、方法500は、データパケットのシーケンス番号を取得し、そのシーケンス番号をアンチリプレイビットマップと比較し得る。例えば、アンチリプレイビットマップは、シーケンス番号に対応するパケットが受信されているか否かを示すための対応する値(例えば、それぞれ、値「0」、値「1」、又はそれらの組合せに設定される)を有する使用可能なすべてのシーケンス番号を含んでよい。ステップ518で、方法500は、シーケンス番号がリプレイビットマップに設定されているか否かを決定し得る。シーケンス番号が(例えば、値「1」に)設定されている場合、方法は、そのシーケンス番号を有するパケットが既に受信されたと決定し、ステップ520へ進んで、パケットを破棄し得る。シーケンス番号が(例えば、値「1」に)設定されていない場合、方法は、そのシーケンス番号を有するパケットが受信されていないと決定し、ステップ522へ進み得る。ステップ522で、方法は、当該シーケンス番号に関連付けられたパケットが受信されていることを示すように、アンチリプレイビットマップを(例えば、対応する値を値「0」に設定することによって)更新し得る。次いで、方法500は、ステップ514へ進み、パケットを処理し得る。
【0038】
先に記載したように、受信側のサブSAの選択は、単一のSAの選択と同様のプロセスで行われよく、そのどちらも、SPI及びIPアドレス情報に基づいてよい。シーケンス番号の処理への変更を除いて、他の態様は変更されずともよい。複数のサブトンネルの使用は、2つのエンティティ間の保護された通信チャネルに対して、IPsecパケットの配信順序の乱れを生じさせ得る。対処法としては、受信エンティティが送信順序の維持を必要とする場合に、データパケットのIPsecヘッダ中のシーケンス番号を使用できる。アンチリプレイが有効になっている場合、すべてのサブトンネルは、受信エンティティで1つの共有アンチリプレイビットマップを使用してよい。アンチリプレイのチェックは、特定のサブSAの代わりに、SAクラスタを対象として完了されてよい。
【0039】
マルチパスソリューションが配信順序の乱れの問題をもたらすのであるが、この順序の乱れの問題は、単一のSAにも発生することがある。再順序付け(リオーダー)プロセスは、TCPリオーダー及び/又はIPリアセンブリと同様の手法で、特定のネットワークのトポロジーに基づいて、アグリゲートノード及び/又はエンドホスト(例えば、ホスト240及び/又はホスト241)において完了されてよい。」
「
[図:0001383460000001.jpg]
」
「
[図:0001383460000002.jpg]
」
したがって、引用文献1には、一実施形態である「図1」に示される「IPsecセキュリティアーキテクチャ100」に注目すると、下記の記載事項(以下、「引用文献1記載事項」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献1記載事項>
「IPsecセキュリティアーキテクチャ100(図1)において、
IPsecセキュリティアーキテクチャ100は、ホスト150と、ホスト151とを具備し、これらは、保護されていないネットワーク130に位置するルータ120を経由して、セキュリティゲートウェイ110,112を介して通信を行い、ホスト150,151は、それぞれ、保護された接続143,144を介してセキュリティゲートウェイ100,112に接続され、ホスト150,151は、保護されていないネットワーク130を経由する通信を希望し、セキュリティゲートウェイ110は、セキュリティゲートウェイ112への伝送のために、例えば、IKEを使用して、単方向性のSA141を設定し、同様に、セキュリティゲートウェイ112は、セキュリティゲートウェイ110への伝送のために、単方向性のSA 142を設定し、その結果、SA対が作成され、ホスト150は、保護された接続143を介してセキュリティゲートウェイ110と通信を行うことによって、ホスト151にデータを伝送し、セキュリティゲートウェイ110は、SA141を使用して、ルータ120を介して保護されていないネットワーク130を経由してセキュリティゲートウェイ112に通信を伝送し、次いで、そのような通信は、保護された接続144を介してホスト151にルーティングされて、伝送された通信に対するエンドツーエンドセキュリティが達成され、ホスト151は、実質的に同一の手法で、ただし、SA141の代わりにSA 142を使用して、ホスト152にデータパケットを伝送し、
ホスト150,151などのホストは、ネットワークを介して他のホストと通信を行う任意のデバイスであってよく、セキュリティゲートウェイ110,112などのセキュリティゲートウェイは、保護されたネットワークのエッジに位置する任意のネットワーク要素(Network Element,NE)であり、セキュリティゲートウェイ110,112は、保護されたネットワークに許可なくアクセスすることを防止し、セキュリティゲートウェイ110,112は、それぞれ、ホスト150,151からデータを受信し、保護されていないネットワーク130(例えば、インターネット)を経由するIPsecSA 141,142を作成することによって、通信セッションを開始し、セキュリティゲートウェイ110,112は、そのようなSAの作成を目的として、例えば、IKEを使用することによって、セキュリティ鍵を交換し、
SA 141,142などのIPsec SAは、トランスポートモード又はトンネルモードで動作し、トランスポートモードでは、データパケットのペイロードが暗号化され、一方、データパケットルーティング情報を含むデータパケットのヘッダは暗号化されず、トンネルモードでは、データパケット全体が暗号化され、また、SAは、認証ヘッダ(AH)及び/又はカプセル化セキュリティペイロード(ESP)動作をサポートするためのデータ及び/又はアルゴリズムを含み、
SA 141,142は、それぞれ、単方向性を有し、このことから、SA 141,142の対は、セキュリティゲートウェイ110,112間でデータパケットをやりとりするために必要とされ、IPsecセキュリティアーキテクチャ100は、セキュリティゲートウェイ110,112間の保護された通信毎に、単一のSA対及び/又は単一のSA対バンドル(例えば、SA141及びSA 142)を提供するように制限され、各SAは、別個のSPIを含み、
ルータ120は、データパケットのヘッダに基づいてルーティング決定を行い、データパケットがカプセル化されている場合(例えば、ESPの場合)、ルータ120は、カプセル化されたパケットのヘッダに基づいてルーティング決定を行い、ルータ120は、セキュリティゲートウェイ110とセキュリティゲートウェイ112との間のエンドツーエンド接続可能性を提供し、ルータ120は、SA141のための単一のネットワークパスと、SA 142のための単一のネットワークパスとを用意し、SA 141のためのネットワークパスは、SA 142のためのネットワークパスと同一のパスであってもよく、又は同一のパスでなくてもよい、
IPsecセキュリティアーキテクチャ100。」
また、当該「IPsecセキュリティアーキテクチャ100」と実質的に同一の構成を含む、別の実施形態である「図2」に示される「IPsecセキュリティアーキテクチャ200」に注目すると、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「保護されていないネットワークを経由して伝送されるデータトラフィックのための強化された保護機能を備えたシステムであって、
IPsecのデータ保護は、データフローを複数のサブフローに分割し、複数のサブフローを並行して伝送することによって強化され、サブSAは、サブフロー毎に独立して設定されてよく、複数のサブSAが組み合わされて、SAクラスタが形成され、各サブSAは、一意に定まるSPI(Security Parameter Index)を含むものであって、
IPsecセキュリティアーキテクチャ200(図2)において、
アーキテクチャ200は、ホスト250,251、保護された接続243,244、セキュリティゲートウェイ210,212、及びルータ221,222を含み、これらは、それぞれ、ホスト150,151、保護された接続143,144、セキュリティゲートウェイ110,112、及びルータ120と実質的に同一であり、セキュリティゲートウェイ210,212は、SAクラスタ241及びSAクラスタ242を介して通信を行い、
SAクラスタ241,242は、それぞれ、複数のパラレルサブSAを含み、パラレルサブSAは、同一の発信元ノード(例えば、セキュリティゲートウェイ210)と、同一の宛先ノード(例えば、セキュリティゲートウェイ212)とを備えた複数の単方向性サブSAであり、それぞれ、同一のデータフローの一部分を搬送し、例えば、SAクラスタ241は、パラレルサブSA 241a,241bを含み、SAクラスタ242は、パラレルサブSA 242a,242bを含み、
SAクラスタ毎に2つのサブSAだけが示されているが、SAクラスタ241,242は、特定の通信のために望まれる分だけより多くのサブSAを含んでもよく、サブSA 241a,241bは、それぞれ、SA 141と同様のものであってよく、サブSA 242a,242bは、それぞれ、SA 142と同様のものであってよく、各サブSAは、データフローの一部分の搬送及び/又はカプセル化だけを行い、例えば、セキュリティゲートウェイ210は、複数のデータパケットを含むデータフローを、SAクラスタ241を介してセキュリティゲートウェイ212に伝送することを希望し、セキュリティゲートウェイ210は、サブSA 241a,241b間でパケットを交番させ、サブSA 241bよりも多くのパケットをサブSA 241aで送信し、フローを別個のデータパケットブロックに分割し、サブSA 241a,241b間のブロックに交番させる等を行い、サブSAは、それぞれ、異なるSPIを有し、したがって、SAクラスタ241及び/又はSAクラスタ242は、複数のSPIを有し、SAクラスタ中の複数のサブSAは、セキュリティゲート間で同一の経路又は異なる経路を使用してよく、例えば、SAクラスタ241は、それぞれ、ルータ221を介する経路を使用するサブSA 241aと、ルータ222を介する経路を使用するサブSA 241bとを含み、
アーキテクチャ200は、データフローが分割され、盗聴ノードによって予測し得ない方法でルーティングされるようにし、各SAクラスタが未知数のサブSAを含み得るので、盗聴ノードは、特定のデータフローに関係するデータパケットの正確な数を把握し得ず、さらに、各SAクラスタが複数のSPIを含み得るので、盗聴ノードは、取得した任意のデータパケットを互いに関連付けることができず、複数のデータパケットが同一のデータフローに関連することを判断できず、さらに、あるサブSAは他のサブSAとは異なるネットワーク経路を通過し得るので、盗聴ノードは、単一のネットワークノードを監視することによっては、フローのデータパケットのすべてを取得できず、残りのデータパケットを取得するために他のどのデータパケットを監視すべきかを判断できず、
データの機密性は、送信されたデータを盗聴などの受動的攻撃から保護し、機密セキュリティサービスを向上させるためには、SAのセット(例えば、サブSA241a、サブSA 241b、サブSA 242a、及び/又はサブSA 242b)がトラフィックを保護するために使用され、複数のトンネルは、2つのエンティティ間にセットアップされ、次いで、一緒にクラスタ化されて、1つのクラスタ化トンネル(例えば、SAクラスタ241及び/又はSAクラスタ242)を形成し、1つのIPパケットは、なお、単一のSAによって保護され、送信エンティティは、トラフィックをこれらすべてのサブSAに分割し、受信エンティティは、複数のIPsecトンネルからのトラフィックを多重化し、一緒にクラスタ化されたトンネルは、サブトンネルと称され、サブトンネルに対するSAは、サブSAと称され、SAクラスタという用語は、トラフィックがセキュリティポリシを満たすように処理されなければならないSAの組合せを説明するために使用され、
送信エンティティは、IPsecトラフィックを複数のサブトンネルを介するように分割及び/又は交番させ、SAクラスタがセキュリティポリシ設定に基づいてトラフィック処理のために選択された場合、1つのサブSAは、指定されたパケットの発信IPsec処理のために選択され、ローカル実装は、指定されたIPパケットにどのSAが適用されるべきかを決定し、送信エンティティにおけるローカル実装は、パケットのシーケンス番号を取得するための任意の方法を選択してよく、サブSAの選択とは独立していてよく、各サブSAは、独自のシーケンス番号を生成してよく、サブSA間のシーケンス番号の共有を必要としなくともよく、
受信側のサブSAの選択は、単一のSAの選択と同様のプロセスで行われ、そのどちらも、SPI及びIPアドレス情報に基づいてよく、シーケンス番号の処理への変更を除いて、他の態様は変更されず、複数のサブトンネルの使用は、2つのエンティティ間の保護された通信チャネルに対して、IPsecパケットの配信順序の乱れを生じさせ、対処法としては、受信エンティティが送信順序の維持を必要とする場合に、データパケットのIPsecヘッダ中のシーケンス番号を使用できる、システム。」
2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0002】
【従来の技術】従来、インターネットに代表されるTCP/IP(Transmission Control Protocol / Internet Protocol)を用いた通信において、通信内容を秘匿するために、例えばIPsec(Security Architecture for Internet Protocol)又はSSL(Secure Socket Layer)のような暗号化プロトコルが用いられている。
【0003】IPsecとは、認証ヘッダ又は暗号ペイロードのフィールドをIPパケットに付加し、IPパケット単位でユーザデータを暗号化するものである。これにより、発着IPアドレスの対で表されるホスト間において、通信内容の秘匿性が向上する。また、SSLとは、TCPセグメントのユーザデータを暗号化するものである。これにより、発着IPアドレスの対及び発着TCPポート番号の対で表されるTCPセッション間において、通信内容の秘匿性が向上する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、暗号化プロトコルを用いた場合であっても、1つの経路において一箇所での盗聴が可能となる。盗聴時にリアルタイムにデータを解読することが不可能であっても、データを蓄積することにより、その後解読が行われる可能性がある。
【0005】また、暗号化プロトコルを用いた場合、送信元ホスト及び宛先ホストのそれぞれに、暗号化プログラム及び復号化プログラムを備える必要がある。また、暗号化及び復号化の処理には、ホストに一定の処理能力が必要とされる。
【0006】そこで、本発明は、暗号化プロトコルを用いることなく、比較的容易にパケットの秘匿性を向上させるための通信装置を提供することを目的とする。」
「【0013】
【発明の実施の形態】以下では、図面を用いて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0014】図1は、本発明の経路分散装置を用いたシステム構成図である。
【0015】図1によれば、経路分散装置1は、衛星モデム31、有線モデム41及び無線モデム51の複数の経路に接続されている。例えば、ホスト21から受信したパケットが、秘匿性を必要とするパケットであるか、又は秘匿性を必要とする経路を通過するパケットであるならば、そのパケットは、分割され、それぞれ異なる経路に分散して送信される。図1によれば、分割された1つのパケットは、衛星モデム31を用いて通信衛星を介して送信され、1つのパケットは、有線モデム41を用いて有線回線を介して送信され、1つのパケットは、無線モデム51を用いて無線回線を介して送信される。受信側では、既存のIPプロトコルに対応したルータ6によって、パケットが再構築されてホスト22へ送信される。
【0016】尚、秘匿性を必要としないパケット又は秘匿性を必要とする経路を通過しないパケットは、通常のIP経路選択処理に従って送信される。これにより、秘匿性の向上が必要なパケットについてのみ、経路分散処理を実現することが可能となる。
【0017】図2は、本発明の経路分散装置1の機能構成図である。
【0018】図2によれば、経路分散装置1は、経路分散手段10と、フィルタ条件テーブル11と、ホスト21との通信インタフェース12と、経路毎の通信インタフェース13とを有する。経路分散手段10は、ホスト21から受信したパケットが、フィルタ条件テーブル11に登録された1つのフィルタ条件に合致した場合、該フィルタ条件に従ってそのパケットを経路に分散して送信する。
【0019】図3は、本発明によるフィルタ条件テーブルの一例である。
【0020】図3によれば、フィルタ条件テーブルは、フィルタ条件として、発着IPアドレスの対、ネットワークマスク、発着TCP/UDPポート番号の対、IPプロトコル番号及び/又は上位プロトコルを登録する。また、フィルタ条件に合致したパケットに対する処理として、複数の転送経路、経路選択方法、分割プロトコル、分割ポリシ及び/又はTCPコネクション情報を登録する。このフィルタ条件テーブルに従って、ホスト21からホスト22へ送信されるべきパケットは、経路分散装置1によって分割され、それぞれの経路に分散して転送される。」
「
[図:0001383460000003.jpg]
」
「
[図:0001383460000004.jpg]
」
したがって、上記引用文献2には、以下の技術的事項(以下、「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献2技術事項>
「従来、インターネットに代表されるTCP/IP(Transmission Control Protocol / Internet Protocol)を用いた通信において、通信内容を秘匿するために、例えばIPsec(Security Architecture for Internet Protocol)のような暗号化プロトコルが用いられているが、暗号化プロトコルを用いた場合であっても、1つの経路において一箇所での盗聴が可能となり、盗聴時にリアルタイムにデータを解読することが不可能であっても、データを蓄積することにより、その後解読が行われる可能性があり、また、暗号化プロトコルを用いた場合、送信元ホスト及び宛先ホストのそれぞれに、暗号化プログラム及び復号化プログラムを備える必要があることから、
暗号化プロトコルを用いることなく、比較的容易にパケットの秘匿性を向上させるための通信装置を提供することを目的として、
衛星モデム31、有線モデム41及び無線モデム51の複数の経路に接続されている経路分散装置1において、
ホスト21から受信したパケットが、秘匿性を必要とするパケットであるか、又は秘匿性を必要とする経路を通過するパケットであるならば、そのパケットは、分割され、それぞれ異なる経路に分散して送信され、
分割された1つのパケットは、衛星モデム31を用いて通信衛星を介して送信され、1つのパケットは、有線モデム41を用いて有線回線を介して送信され、1つのパケットは、無線モデム51を用いて無線回線を介して送信され、
受信側では、既存のIPプロトコルに対応したルータ6によって、パケットが再構築されてホスト22へ送信され、
経路分散装置1は、経路分散手段10と、フィルタ条件テーブル11と、ホスト21との通信インタフェース12と、経路毎の通信インタフェース13とを有し、経路分散手段10は、ホスト21から受信したパケットが、フィルタ条件テーブル11に登録された1つのフィルタ条件に合致した場合、該フィルタ条件に従ってそのパケットを経路に分散して送信し、フィルタ条件テーブルは、フィルタ条件として、発着IPアドレスの対、ネットワークマスク、発着TCP/UDPポート番号の対、IPプロトコル番号及び/又は上位プロトコルを登録し、フィルタ条件に合致したパケットに対する処理として、複数の転送経路、経路選択方法、分割プロトコル、分割ポリシ及び/又はTCPコネクション情報を登録し、このフィルタ条件テーブルに従って、ホスト21からホスト22へ送信されるべきパケットは、経路分散装置1によって分割され、それぞれの経路に分散して転送される、経路分散装置1。」
3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来のマルチリンク制御方式では、マルチリンクを通る送受信データ量と構成する回線の品質に関係なく、固定的規則の中で運用されるためデータ量が少なく、マルチリンク内の最大回線数を使用する必要のない場合やマルチリンクを構成する回線の内、一本でも品質の悪い回線を使用するとデータの持ち合わせが生じ、マルチリンクの方がシングルリンクより伝送効率が極端に低下するという欠点がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明のマルチリンク制御方式は、マルチリンク手順におけるマルチリンク間での送受信データ量を記憶するための第1の記憶手段と、前記マルチリンクを構成する各回線毎にエラー回数を記憶するための第2の記憶手段とをパケット交換機に備え、前記第1及び第2の記憶手段にそれぞれ記憶されたデータから得られる一定時間における送受信データ量及びエラー回数に基づき、前記マルチリンク内の回線構成と各回線データ送受信比率とを最適値に自動選択する構成である。」
4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来のマルチリンクは誤り率の低い回線での利用を中心に考えられており、各回線の伝送速度は一定と見なされてきた。従って、通信の各回線への振り分けは、一度設定されると固定的に行なわれていた。しかしこれを、無線回線の様な有線回線に比較して誤り率が高く、あるいは回線の品質が時間と共に変動する様な系で用いると、通信の振り分ける量が各回線の実効的な伝送速度に一致せず、通信がなかなか終了しない回線が生じる。この結果、全体としても実効的な帯域使用効率が低くなるという問題があった。特に、MPの様に順序逆転を防止する機能を持つ制御を行なっている場合は、平均伝送遅延も増大し、この傾向が顕著になる。
【0005】そこで本発明では、マルチリンク処理に、回線監視の機能を設け、通信の振り分けを監視結果をベースに、各回線の実効的な伝送速度に応じて実施する機能を備えることにより、全体として、低遅延で効率的なマルチリンクによる通信を実現する。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために、本発明は、対向する装置の間で、その実効的な伝送速度が変動する通信回線を含む、複数の論理的な通信回線を同時に用いて一つの仮想的な通信回線に見せることにより、上位機能との間で種々のデータを前記複数の回線の個々を区別することなくやりとりできるマルチリンク通信の機能を有する通信装置において、各回線の実効的な伝送速度を監視する機能と各回線の実効的な伝送速度に応じてデータを振り分ける機能を有することを特徴とするマルチリンク通信装置を供する。」
第6.対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
上記本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア
(ア)引用発明の「IPsecセキュリティアーキテクチャ200」における「ホスト250」と「ホスト251」は、本願発明1の「コンピューティングデバイス」に相当する。
(イ)引用発明の「保護されていないネットワークを経由して伝送されるデータトラフィック」は、本願発明の「ネットワークトラフィック」に相当する。そして、引用発明の「IPsecセキュリティアーキテクチャ200」は、「保護されていないネットワークを経由して伝送されるデータトラフィックのための強化された保護機能を備えたシステム」であるから、本願発明1の「ネットワークトラフィックをセキュア化するためのシステム」に相当する。
(ウ)引用発明の「IPsecセキュリティアーキテクチャ200」は、「ホスト250,251、保護された接続243,244、セキュリティゲートウェイ210,212、及びルータ221,222を含み、これらは、それぞれ、ホスト150,151、保護された接続143,144、セキュリティゲートウェイ110,112、及びルータ120と実質的に同一であり、セキュリティゲートウェイ210,212は、SAクラスタ241及びSAクラスタ242を介して通信を行」うところ、「SAクラスタ241,242は、それぞれ、複数のパラレルサブSAを含み、パラレルサブSAは、同一の発信元ノード(例えば、セキュリティゲートウェイ210)と、同一の宛先ノード(例えば、セキュリティゲートウェイ212)とを備えた複数の単方向性サブSAであり、それぞれ、同一のデータフローの一部分を搬送し、例えば、SAクラスタ241は、パラレルサブSA241a,241bを含み、SAクラスタ242は、パラレルサブSA 242a,242bを含」むことから、結局、引用発明の「IPsecセキュリティアーキテクチャ200」における「ホスト250」と「ホスト251」は、「複数のパラレルサブSA」の「パラレルサブSA241a,241bを含」む「SAクラスタ241」、及び「パラレルサブSA 242a,242bを含」む「SAクラスタ242」を「介して通信を行」うものである。
したがって、引用発明の「IPsecセキュリティアーキテクチャ200」は、上記(ア)及び(イ)を踏まえると、本願発明1の「コンピューティングデバイスへの1つまたはそれを上回る接続にわたってネットワークトラフィックをセキュア化するためのシステム」に相当する。
イ
(ア)引用発明の「IPsecセキュリティアーキテクチャ200」における「ホスト250」と「ホスト251」が「通信を行う」ため送受信する「データパケット」は、本願発明1の「データグラム」に相当する。
そして、引用文献1記載事項において開示されている「トランスポートモード」では「データパケットのペイロードが暗号化され」、また、「トンネルモード」では「データパケット全体が暗号化され」、これらの各「モード」における「暗号化」は引用発明においても「実質的に同一」の構成であることから、引用発明では「トランスポートモード」または「トンネルモード」において「データパケット」を「暗号化」する手段を備えるといえる。よって、当該手段は、本願発明1の「データグラムをエンコードするように構成されるIPsecエンコーダ」に相当するといえる。
(イ)引用発明では、「データの機密性は、送信されたデータを盗聴などの受動的攻撃から保護し、機密セキュリティサービスを向上させるためには、SAのセット(例えば、サブSA241a、サブSA241b、サブSA 242a、及び/又はサブSA 242b)がトラフィックを保護するために使用され、複数のトンネルは、2つのエンティティ間にセットアップされ、次いで、一緒にクラスタ化されて、1つのクラスタ化トンネル(例えば、SAクラスタ241及び/又はSAクラスタ242)を形成し」、「送信エンティティは、トラフィックをこれらすべてのサブSAに分割し、受信エンティティは、複数のIPsecトンネルからのトラフィックを多重化」することから、引用発明の「送信エンティティ」及び「受信エンティティ」は、本願発明1の「コンピューティングエンティティ」に相当する。
(ウ)引用発明の「IPsecセキュリティアーキテクチャ200」における「SAクラスタ241,242は、特定の通信のために望まれる分だけより多くのサブSAを含んでもよく、サブSA241a,241bは、それぞれ、(IPsec)SA 141と同様のものであってよく、サブSA 242a,242bは、それぞれ、(IPsec)SA 142と同様のものであってよ」いものである。一方、引用文献1記載事項の「IPsecセキュリティアーキテクチャ100」における「IPsec SA 141,142」は、本願発明1の「IPsecセキュリティ関連付け(SA)」に相当することから、引用発明の「SAクラスタ241,242」は、本願発明1の「IPsecセキュリティ関連付け(SA)」に相当する。
(エ)引用発明の「IPsecセキュリティアーキテクチャ200」は、「ホスト250,251、保護された接続243,244、セキュリティゲートウェイ210,212、及びルータ221,222を含み、これらは、それぞれ、ホスト150,151、保護された接続143,144、セキュリティゲートウェイ110,112、及びルータ120と実質的に同一であ」るから、引用文献1記載事項の「セキュリティゲートウェイ110,112」と同様に、「IPsecセキュリティアーキテクチャ200」における「セキュリティゲートウェイ210,212」において、「データパケット」を「暗号化」する手段は、上記(ア)~(ウ)を踏まえると、本願発明1の「データグラムを得て、データグラムをエンコードするように構成されるIPsecエンコーダであって、前記IPsecエンコーダは、コンピューティングエンティティと関連付けられた少なくとも1つのIPsecセキュリティ関連付け(SA)を含む、IPsecエンコーダ」に相当する。
ウ 引用発明の「パケットのシーケンス番号」は、「送信順序の維持を必要とする場合に」、「使用でき」る「データパケットのIPsecヘッダ中のシーケンス番号」であるから、本願発明1の「データグラム」と「関連付け」られる「第1のメタデータ」に相当し、引用発明において、「各サブSAは、独自のシーケンス番号を生成してよ」いことから、「各サブSA」に対応する「シーケンス番号」は、上記イ(ア)を踏まえると、本願発明1の「前記エンコードされたデータグラム」と「関連付け」られる「第1のメタデータのセット」に相当する。
したがって、引用発明において、「パケットのシーケンス番号を取得するための任意の方法を選択してよく、サブSAの選択とは独立していてよく、各サブSAは、独自のシーケンス番号を生成してよ」い「ローカル実装」のある「送信エンティティ」、及び、「送信順序の維持を必要とする場合に、データパケットのIPsecヘッダ中のシーケンス番号を使用でき」る「受信エンティティ」は、「各サブSA」において「シーケンス番号」と「データパケット」を関連づける手段を備えるといえることから、引用発明における当該手段は、本願発明1の「第1のメタデータのセットと前記エンコードされたデータグラムとを関連付けるように構成されるパケット分析器」に相当するといえる。
エ 引用発明の「IPアドレス情報」は、「データパケット」の「ソース」または「宛先」を含む「IPアドレス」といえることから、本願発明1における「ソースIPアドレスまたは宛先IPアドレスを含」む「前記データグラムの属性」に相当する。
オ 引用発明の「IPsecセキュリティアーキテクチャ200」における「セキュリティゲートウェイ210,212」は、本願発明1の「ゲートウェイ」に相当する。
カ 引用発明の「IPsecセキュリティアーキテクチャ200」における「セキュリティゲートウェイ210は、複数のデータパケットを含むデータフローを、SAクラスタ241を介してセキュリティゲートウェイ212に伝送することを希望し、セキュリティゲートウェイ210は、サブSA241a,241b間でパケットを交番させ、サブSA 241bよりも多くのパケットをサブSA 241aで送信し、フローを別個のデータパケットブロックに分割し、サブSA 241a,241b間のブロックに交番させる等を行い、」「SAクラスタ中の複数のサブSAは、セキュリティゲート間で同一の経路又は異なる経路を使用してよく、例えば、SAクラスタ241は、それぞれ、ルータ221を介する経路を使用するサブSA 241aと、ルータ222を介する経路を使用するサブSA 241bとを含」むことから、引用発明における「複数のデータパケット」を含む「フローを別個のデータパケットブロックに分割」して「送信」するための「サブSA241a」と「241b」は、それぞれ本願発明1の「接続」に相当するものといえる。また、引用発明の個々の「データパケット」は、上記「サブSA 241a」と「241b」のうち、どちらかの「サブSA」を使用して送信されるのであるから、当該どちらかの「サブSA」を使用する構成は、本願発明1の「複数の接続から1つの接続を選択する」構成に相当する。また、引用発明の「セキュリティゲートウェイ210」は、「複数のデータパケットを含むデータフロー」を「SAクラスタ241を介してセキュリティゲートウェイ212に伝送する」ために、「ルータ221を介する経路を使用するサブSA241a」と「ルータ222を介する経路を使用するサブSA 241b」を介して「サブSA 241a,241b間でパケットを交番させ」て「送信」するという「ルータ」の機能を備えているといえる。
したがって、引用発明の「セキュリティゲートウェイ210」が、「サブSA 241a,241b間でパケットを交番させ」て「送信」する「ルータ」の機能を備える構成は、本願発明1の「前記ゲートウェイは、前記データグラムの前記優先順位を示す前記データを含む、前記データグラムと関連付けられた前記第2のメタデータのセットに基づいて、複数の接続から1つの接続を選択するように構成されるパケットルータを備え」る構成とは、「前記ゲートウェイは、複数の接続を選択するように構成されるパケットルータを備え」る構成である点で共通する。
キ 上記ア(ウ)、イ(ア)及びカを踏まえると、引用発明の「IPsecセキュリティアーキテクチャ200」における「セキュリティゲートウェイ210」が、「セキュリティゲートウェイ212」に接続された「ホスト251」へと、「サブSA241a,241b」を介して、「トランスポートモード」または「トンネルモード」により「暗号化」された「データパケット」を「送信」する構成は、本願発明1の「前記ゲートウェイは、前記コンピューティングデバイスへと、前記複数の接続から選択された前記接続を使用して、前記エンコードされたデータグラムを伝送する」構成に相当する。
そして、引用発明の「SAクラスタ241」は、「サブSA 241a,241b」を含むことから、上記イ(ウ)を踏まえると、引用発明における「サブSA241a,241b」は、1つの「SAクラスタ241」と関連付けられていることは、本願発明1の「前記複数の接続の各接続は、同一の1つのIPsecセキュリティ関連付け(SA)と関連付けられている」ことに相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
[一致点]
「コンピューティングデバイスへの1つまたはそれを上回る接続にわたってネットワークトラフィックをセキュア化するためのシステムであって、前記システムは、
データグラムを得て、データグラムをエンコードするように構成されるIPsecエンコーダであって、前記IPsecエンコーダは、コンピューティングエンティティと関連付けられた少なくとも1つのIPsecセキュリティ関連付け(SA)を含む、IPsecエンコーダと、
第1のメタデータのセットと前記エンコードされたデータグラムとを関連付けるように構成されるパケット分析器と、
ゲートウェイと
を備え、
前記ゲートウェイは、複数の接続から1つの接続を選択するように構成されるパケットルータを備え、
前記ゲートウェイは、前記コンピューティングデバイスへと、前記複数の接続から選択された前記接続を使用して、前記エンコードされたデータグラムを伝送するように構成され、前記複数の接続の各接続は、同一の1つのIPsecセキュリティ関連付け(SA)と関連付けられている、システム。」
[相違点]
(相違点1)
システムにおいて、本願発明1は、「前記データグラムの属性に基づいて、前記データグラムと関連付けられた第2のメタデータのセットを作成するように構成される分類器であって、前記データグラムの前記属性は、ソースIPアドレスまたは宛先IPアドレスを含み、前記第2のメタデータのセットは、前記データグラムの優先順位を示すデータを含む、分類器」を備えるのに対し、引用発明には、上記エで示すとおり、「データパケット」の「IPアドレス情報」(本願発明1における「ソースIPアドレスまたは宛先IPアドレスを含」む「前記データグラムの属性」に相当する。)についての特定があるものの、本願発明1に記載されるような「分類器」について、特定されていない点。
(相違点2)
ゲートウェイが備えるパケットルータが、複数の接続から1つの接続を選択するのは、本願発明1では、「前記データグラムの前記優先順位を示す前記データを含む、前記データグラムと関連付けられた前記第2のメタデータのセットに基づいて」行うのに対し、引用発明には、そのような特定がされていない点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討すると、相違点2に係る本願発明1の「前記データグラムの前記優先順位を示す前記データを含む、前記データグラムと関連付けられた前記第2のメタデータのセットに基づいて、複数の接続から1つの接続を選択するように構成される」という構成は、上記引用文献1~4には記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。
特に、引用発明には、「データパケット」が、本願発明1のような「優先順位」を示す「メタデータ」を含むことについて記載されておらず、さらに、引用発明の「セキュリティゲートウェイ210」から「セキュリティゲートウェイ212」に「SAクラスタ241」を介して伝送される「複数のデータパケットを含むデータフロー」は、「送信されたデータを盗聴などの受動的攻撃から保護し、機密セキュリティサービスを向上させるため」、「ルータ221を介する経路を使用するサブSA241a」と「ルータ222を介する経路を使用するサブSA 241b」に「データフローが分割され」、これにより「盗聴ノードによって予測し得ない方法でルーティングされるようにし、各SAクラスタが未知数のサブSAを含み得るので、盗聴ノードは、特定のデータフローに関係するデータパケットの正確な数を把握し得ず、さらに、各SAクラスタが複数のSPIを含み得るので、盗聴ノードは、取得した任意のデータパケットを互いに関連付けることができず、複数のデータパケットが同一のデータフローに関連することを判断できず、さらに、あるサブSAは他のサブSAとは異なるネットワーク経路を通過し得るので、盗聴ノードは、単一のネットワークノードを監視することによっては、フローのデータパケットのすべてを取得でき」ないようにする機能を奏するものである。したがって、引用文献1には、本願発明1のような「第2のメタデータのセットに基づいて、複数の接続から1つの接続を選択する」構成は記載されていない。
また、引用文献2は、「IPsec(Security Architecture for Internet Protocol)」のような「暗号化プロトコルを用いることなく、比較的容易にパケットの秘匿性を向上させるための通信装置を提供することを目的」とする「衛星モデム31、有線モデム41及び無線モデム51の複数の経路に接続されている経路分散装置1において」、「ホスト21から受信したパケットが、秘匿性を必要とするパケットであるか、又は秘匿性を必要とする経路を通過するパケットであるならば、そのパケットは、分割され、それぞれ異なる経路に分散して送信され」るものであり、
「フィルタ条件として、発着IPアドレスの対、ネットワークマスク、発着TCP/UDPポート番号の対、IPプロトコル番号及び/又は上位プロトコルを登録し、フィルタ条件に合致したパケットに対する処理として、複数の転送経路、経路選択方法、分割プロトコル、分割ポリシ及び/又はTCPコネクション情報を登録」する「フィルタ条件テーブルに従って、ホスト21からホスト22へ送信されるべきパケットは、経路分散装置1によって分割され、それぞれの経路に分散して転送される、経路分散装置1」という技術的事項が開示されるものであって、上記「パケット」が、本願発明1のような「優先順位」を示す「メタデータ」を含むことについて記載されておらず、さらに、上記「パケット」を転送する「経路分散装置1」が、本願発明1のような「第2のメタデータのセットに基づいて、複数の接続から1つの接続を選択する」構成は記載されていない。
したがって、相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2~4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2~6について
本願発明2~6は、本願発明1を減縮した発明であるから、上記相違点2に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものである。したがって、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明及び引用文献2~4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
3.本願発明7及び11について
本願発明7及び11は、それぞれ、本願発明1をカテゴリ表現が異なる「方法」及び「非一過性コンピュータ可読記憶媒体」の発明として特定したものであるから、上記相違点2に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものである。したがって、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明及び引用文献2~4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
4.本願発明8~10について
本願発明8~10は、本願発明7を減縮した発明であるから、上記3.で示した本願発明7と同じ理由により、当業者であっても引用発明及び引用文献2~4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
5.本願発明12~14について
本願発明12~14は、本願発明11を減縮した発明であるから、上記3.で示した本願発明11と同じ理由により、当業者であっても引用発明及び引用文献2~4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
第7.当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由(1)について
令和3年3月31日付けの当審拒絶理由(1)における理由1~理由3について、それぞれ以下のとおりである。
理由1 (サポート要件)
(1)当審では、請求項1~14に係る発明の「前記データグラムの属性に基づいて、第2のメタデータのセットと前記データグラムとを関係づける」という構成は、発明の詳細な説明に記載されていない旨を通知したが、令和4年1月19日になされた手続補正書においては、上記請求項に係る構成を「前記データグラムの属性に基づいて、前記データグラムと関連付けられた第2のメタデータのセットを作成する」とする補正がなされていることから、この拒絶理由は解消した。
また、請求項1~14に係る発明の「データグラムの属性」が、発明の詳細な説明のどの記載に基づくものであるかも把握できない旨を通知したが、令和4年1月19日になされた手続補正書においては、上記請求項において「前記データグラムの前記属性は、ソースIPアドレスまたは宛先IPアドレスを含み、」との記載を追加する補正がなされていることから、この拒絶理由は解消した。
(2)当審では、請求項1~14に係る発明の「前記第2のメタデータのセットは、前記データグラムの優先順位と、前記データグラムの宛先IPアドレスまたはソースIPアドレスのうちの少なくとも1つとを含む」という構成は、発明の詳細な説明に記載されていない旨を通知したが、令和4年1月19日になされた手続補正書においては、上記請求項に係る構成を「前記第2のメタデータのセットは、前記データグラムの優先順位を示すデータを含む」とする補正がなされていることから、この拒絶理由は解消した。
(3)当審では、請求項1~14に係る発明の「前記エンコードされたデータグラムと関連付けられた前記第1のメタデータのセットおよび前記データグラムと関連付けられた前記第2のメタデータのセットの前記データグラムの前記優先順位に基づいて、複数の接続から1つの接続を選択するように構成されるパケットルータ」という構成は、発明の詳細な説明に記載されていない旨を通知したが、令和4年1月19日になされた手続補正書においては、上記請求項に係る構成を「前記データグラムの前記優先順位を示す前記データを含む、前記データグラムと関連付けられた前記第2のメタデータのセットに基づいて、複数の接続から1つの接続を選択するように構成されるパケットルータ」とする補正がなされていることから、この拒絶理由は解消した。
(4)当審では、請求項1~6に係る発明には、「パケットルータ」は「ゲートウェイ」とは別の構成要素であることが記載されているものの、発明の詳細な説明には、両者を別の構成要素とすることについて記載されていない旨を通知したが、令和4年1月19日になされた手続補正書においては、上記請求項において、「ゲートウェイ」は、「パケットルータ」を「備え」る構成とする旨の補正がなされていることから、この拒絶理由は解消した。
理由2(明確性)
(1)当審では、請求項1~14に係る発明の「前記データグラムの属性に基づいて、第2のメタデータのセットと前記データグラムとを関連付ける」という構成の技術内容は不明確である旨を通知したが、上記理由1(1)で述べたように、令和4年1月19日になされた手続補正書においては、上記請求項に係る構成を「前記データグラムの属性に基づいて、前記データグラムと関連付けられた第2のメタデータのセットを作成する」とする補正がなされていることから、この拒絶理由は解消した。
(2)当審では、請求項1~14に係る発明の「前記エンコードされたデータグラムと関連付けられた前記第1のメタデータのセットおよび前記データグラムと関連付けられた前記第2のメタデータのセットの前記データグラムの前記優先順位に基づいて、複数の接続から1つの接続を選択するように構成されるパケットルータ」という構成の技術内容は不明確である旨を通知したが、上記理由1(3)で述べたように、令和4年1月19日になされた手続補正書においては、上記請求項に係る構成を「前記データグラムの前記優先順位を示す前記データを含む、前記データグラムと関連付けられた前記第2のメタデータのセットに基づいて、複数の接続から1つの接続を選択するように構成されるパケットルータ」とする補正がなされていることから、この拒絶理由は解消した。
理由3(実施可能要件)
(1)当審では、請求項1~14に係る発明の「前記データグラムの属性に基づいて、第2のメタデータのセットと前記データグラムとを関連付ける」という構成について、本願の発明の詳細な説明は、上記構成を当業者が実施できる程度に記載されたものではない旨を通知したが、上記理由1(1)で述べたように、令和4年1月19日になされた手続補正書において、上記請求項に係る構成を「前記データグラムの属性に基づいて、前記データグラムと関連付けられた第2のメタデータのセットを作成する」とする補正がなされていることから、この拒絶理由は解消した。
(2)当審では、請求項1~14に係る発明の「前記エンコードされたデータグラムと関連付けられた前記第1のメタデータのセットおよび前記データグラムと関連付けられた前記第2のメタデータのセットの前記データグラムの前記優先順位に基づいて、複数の接続から1つの接続を選択するように構成されるパケットルータ」という構成について、本願の発明の詳細な説明は、上記構成を当業者が実施できる程度に記載されたものではない旨を通知したが、上記理由1(3)で述べたように、令和4年1月19日になされた手続補正書においては、上記請求項に係る構成を「前記データグラムの前記優先順位を示す前記データを含む、前記データグラムと関連付けられた前記第2のメタデータのセットに基づいて、複数の接続から1つの接続を選択するように構成されるパケットルータ」とする補正がなされていることから、この拒絶理由は解消した。
2.当審拒絶理由(2)について
令和3年10月20日付けの当審拒絶理由(2)における理由1について、以下のとおりである。
理由1(明確性)
(1)当審では、請求項1~14に係る発明の「セキュリティ関連付け」の「関連付け」とはどのような関連付けか、不明確である旨を通知したが、令和4年1月19日になされた手続補正において、上記請求項に係る発明の「セキュリティ関連付け」を「セキュリティ関連付け(SA)」とする補正がなされた結果、この拒絶理由は解消した。
(2)当審では、請求項1~14に係る発明の「複数の接続の各接続」が、「少なくとも1つのIPsecセキュリティ関連付け」と関連付けられているとは、「各接続」が関連付けられている「IPsecセキュリティ関連付け」は「1つ」なのか、「1つ」ではないのか不明確であって、どのような技術内容を意味するのか不明確である旨を通知したが、令和4年1月19日になされた手続補正において、上記請求項に係る発明の「複数の接続の各接続」は、「同一の1つのIPsec関連付け」と関連付けられているとする旨の補正がなされた結果、この拒絶理由は解消した。
第8.原査定についての判断
令和4年1月19になされた手続補正により補正された請求項1~14は、上記相違点2に係る「前記データグラムの前記優先順位を示す前記データを含む、前記データグラムと関連付けられた前記第2のメタデータのセットに基づいて、複数の接続から1つの接続を選択するように構成される」ことを有するものとなっており、上記「第6.」のとおり、本願発明1~14は、上記引用発明及び引用文献2~4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。
第9.むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-015084