2019-014754
撮像レンズ
- 審判番号
- 2019-014754
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-528388外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年11月05日
- 審決日
- 2020年05月29日
- 公報発行日
- 2020年07月31日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
折りたたみ中(クリックで表示)
本願は、平成28年7月1日(先の出願に基づく優先権主張 平成27年7月13日)を国際出願日とする国際特許出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
第2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、本願の請求項1~6に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
(当合議体注:引用文献1~4は、いずれも主引用例である。引用文献5~9は、いずれも周知技術を示す文献である。)
第3 本願発明
本願請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」~「本願発明6」という。)は、令和元年11月5日にした手続補正後の特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりの、次のものである。
「【請求項1】ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.12~0.32、かつTg+10℃で2倍延伸した際の波長589nmにおける配向複屈折が0.7×10-3以下であって、式(1)及び式(2)を下記式の割合で含むポリカーボネートからなる撮像レンズ。50mol%≦(1)<70mol%30mol%<(2)≦50mol%続きを表示(全18行)【化1】(1)【化2】(2)【請求項2】ポリカーボネート樹脂の屈折率が1.57~1.60で且つアッベ数が27~31である請求項1に記載の撮像レンズ。【請求項3】ポリカーボネート樹脂の屈折率が1.58~1.59である請求項1または2のいずれかに記載の撮像レンズ。【請求項4】ポリカーボネート樹脂のアッベ数が27.5~29.5である請求項1~3のいずれかに記載の撮像レンズ。【請求項5】ポリカーボネート樹脂の吸水率が0.2%以下である請求項1~4のいずれか記載の撮像レンズ。【請求項6】携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、デジタルカメラ、ビデオカメラ、車載カメラ、監視カメラのいずれかに用いる請求項1~5のいずれかに記載の撮像レンズ。」
第4 引用文献、引用発明
1 引用文献4の記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
原査定の拒絶の理由で引用文献4として引用され、先の出願前に、日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、特開2010-77249号公報(以下、同じく「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付与したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。
(1)「【特許請求の範囲】【請求項1】下記式【化1】(式中、R1およびR2は夫々独立して、水素原子、炭素数1~10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子を示し、R3およびR4は夫々独立して、炭素数1~10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示し、mおよびnは夫々独立して0~4の整数を示し、pおよびqは、夫々独立して0以上の整数を示す。)で表される繰り返し単位(A)及び下記式【化2】(式中、R5~R8は夫々独立して、水素原子または炭素数1~10のアルキル基を示す。)で表される繰り返し単位(B)を含み、単位(A)と単位(B)の割合がモル比で(A):(B)=5:95~80:20の範囲であるポリカーボネート共重合体からなる光ディスクの光透過層用フィルム。」
(2)「【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】本発明は、レーザー光などにより情報の記録、再生、消去などを行う光ディスクの光透過層として用いる薄肉のフィルムに関する。続きを表示(全16行)【背景技術】【0002】<光記録層と光透過層>ポリカーボネート樹脂は透明性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性、更に加工性に優れることから光学用途に広く利用されている。例えば、レーザー光を使用する光ディスクは、高密度、大容量の記録媒体として種々の研究、開発、商品化がおこなわれている。光ディスクに動画情報を含む大容量の記憶が可能なような種々の技術が開発されている。その一つに片面から情報を読み出す膜面入射方式の光ディスクの技術が提案され、特許文献1及び非特許文献1~2等が公表されている。【0003】膜面入射方式の光ディスクとは、上記の文献類に記載されたように主にポリカーボネート樹脂より形成されたディスク状に光記録層が付与された高密度記録媒体のことであり、光記録層は厚み約0.6~1.1mmのディスク面上に形成される。さらにこの光記録層を保護するために、約0.01~0.1mmの厚みのフィルムを光透過層として接着剤等で光記録層に付着(接着)させたものである。本発明では光ディスクの信号記録層を光記録層と呼び、また、この光記録層を保護するための薄肉フィルムを光透過層用フィルムと呼ぶことにする。・・・(中略)・・・【発明の開示】【発明が解決しようとする課題】【0011】本発明の目的は、高い耐熱性を有し、複屈折が小さく、かつ光弾性定数が低い光ディスクの光透過層用フィルムを提供することである。」
(3)「【0014】以下、本発明について詳細に説明する。<光記録層および光ディスク基板>光ディスクにおける光記録層は、読み出しだけ可能なROM型、読み出しと書き込みだけが可能なWORAM型、および読み出し、書き込み、消去が可能な書き換え可能型がある。ROM型には誘電体やALなどの光反射膜を利用するCD、CD-ROMやビディオディスク、また、書き込み型には有機色素やTeなどの無機材料を用いるCD-Rや一般の追記型ディスク、また、書き換え型にはTbFeCoに代表される光磁気記録媒体やGeTeSbに代表される相変化記録媒体が挙げられる。ただし本発明で使用される光ディスクの光記録層はこれらの材料に限られるものではない。続きを表示(全78行)【0015】<光透過層>本発明は上記の光ディスクの光記録層を保護し、光透過層として用いるためのポリカーボネートフィルムである。本発明の光ディスクの光透過層用フィルムは、厚みが10~150μmの範囲であり、好ましくは10~100μmの範囲である。この厚みは光ディスクの信号を最適状態で入出力するために重要である。【0016】本発明の光ディスクの光透過層用フィルムは、全光線透過率が好ましくは89% 以上であり、より好ましくは90%以上である。光透過層を通しての光信号の劣化を防止するには全光線透過率は高いほど良く、89%未満では光信号の劣化が光ディスクとして許容できない場合がある。【0017】本発明の光ディスクの光透過層用フィルムは、波長550nmにおけるフィルム面内の位相差R(550)が下記式(1)R(550)<5nm・・・(1)の範囲にあり、より好ましくは下記式(2)R(550)<3nm・・・(2)の範囲にあり、特に好ましくは下記式(3)R(550)<1nm・・・(3)の範囲である。面内の複屈折率が高くなると、読取り光の再生信号へのモジュレーションが大きくなり再生信号レベルが不安定化する。【0018】(ポリカーボネート共重合体)本発明の光透過層用フィルムは、繰り返し単位(A)及び繰り返し単位(B)を含むポリカーボネート共重合体から形成される。【0019】(繰り返し単位(A))単位(A)は下記式で表される。【化6】【0020】単位(A)中、R1およびR2は夫々独立して、水素原子、炭素数1~10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子を示す。炭化水素基として、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~10のアラルキル基、炭素数1~10のアルケニル基が挙げられる。ハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。【0021】R3およびR4は夫々独立して、炭素数1~10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示す。炭化水素基は、好ましくは炭素数1~10のアルキレン基、さらに好ましくは炭素数1~4のアルキレン基、より好ましくはエチレン基である。【0022】pおよびqは、それぞれ-(R3-O)-および(O-R4)-の繰り返しの数を表す。pおよびqは、夫々独立して、0以上の整数であり、好ましくは0~20の整数、さらに好ましくは0~12の整数、さらにより好ましくは0~8の整数、特に好ましくは0~4の整数、最も好ましくは0または1である。mおよびnは、夫々独立して0~4の整数を示す。【0023】(pおよびqが1以上の整数の場合)pおよびqが1以上の整数の場合、単位(A)として、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン・・・(中略)・・・【0024】これらのうち、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9, 9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン}等が好ましい。【0025】特に、下記式【化7】で示される9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF)から誘導される単位(A1)が好ましい。・・・(中略)・・・【0032】(繰り返し単位(B))繰り返し単位(B)は下記式で表される。【化9】【0033】式中、R5~R8は夫々独立して、水素原子または炭素数1~10のアルキル基を示す。アルキル基として炭素数1~3のアルキル基が好ましい。特にメチル基が好ましい。単位(B)は、光弾性定数が低く、耐熱性の高いスピロ環を有するジヒドロキシ化合物から誘導される単位である。【0034】単位(B)として、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3,9-ビス(1,1-ジエチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)、3,9-ビス(1,1-ジプロピル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピ[5,5]ウンデカン等から誘導される単位が挙げられる。【0035】(単位(B1))特に、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(以下スピログリコールと略す)から誘導される下記式で表される単位(B1)が好ましい。【0036】【化10】【0037】(ポリカーボネート共重合体の組成比)ポリカーボネート共重合体中の、単位(A)と単位(B)の割合がモル比で(A):(B)=5:95~80:20の範囲である。好ましくは(A):(B)=10:90~70:30の範囲であり、より好ましくは(A):(B)=15:85~60:40の範囲である。単位(A)の割合が5モル%未満の場合、ポリカーボネート共重合体のガラス転移温度が100℃より低くなり、耐熱性に劣り好ましくない。また、単位(A)の割合が80モル% を超えるとポリカーボネート共重合体の光弾性定数が25×10-12Pa-1を超えるため好ましくない。単位(A)と単位(B)とのモル比は、日本電子社製JNM-AL400のプロトンNMRにて測定し算出する。【0038】(ポリカーボネート共重合体の粘度平均分子量)本発明に使用されるポリカーボネート共重合体の分子量は、粘度平均分子量で表して好ましくは1.0×104~3.0×104の範囲である。粘度平均分子量が1.0×104より低いとフィルムとして脆くなり、自己支持性がなく製膜が困難となる場合があり好ましくない。一方、粘度平均分子量が3.0×104より高いと溶融粘度が高くなることから製膜時にポリマーが配向しやすくなるためフィルムに複屈折が生じやすくなり、またゲル、ダイ筋等が出やすくなる場合があるため好ましくない。ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、1.2×104~1.9×104の範囲であることがより好ましく、更に好ましくは1.4×104~1.8×104の範囲である。上記分子量は、使用されるポリカーボネート樹脂が2種以上の混合物である場合には、混合物全体についての分子量をいう。【0039】ここで粘度平均分子量とは、塩化メチレン100mLにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液の20℃における比粘度ηspを測定し、下記式により算出される粘度平均分子量Mをいう。ηsp/c=[η]+0.45×[η]2c[η]=1.23×10-4M0.83(ただし、[η]は極限粘度であり、cは濃度(0.7g/dL)である。)【0040】(ポリカーボネート共重合体の光弾性定数)ポリカーボネート共重合体の光弾性定数の絶対値は、25×10-12Pa-1以下、より好ましくは20×10-12Pa-1以下である。絶対値が25×10-12Pa-1より大きいと、応力による複屈折が大きく、光透過層用フィルムとして好ましくない。光弾性定数はフィルムから長さ50mm、幅10mmの試験片を切り出し、日本分光(株)製 Spctroellipsometer M-220を使用し測定する。【0041】(ポリカーボネート共重合体のガラス転移温度:Tg)本発明で用いられるポリカーボネート共重合体のガラス転移温度は100~200℃の範囲が好ましく、より好ましくは120~180℃の範囲である。ガラス転移温度が高すぎると樹脂の溶融粘度が高くなりすぎ溶融製膜が困難となるため好ましくなく、一方ガラス転移温度が低すぎると得られるフィルムの耐熱性が不足することがあり、特に偏光膜の保護フィルムとして使用する場合に好ましくない。・・・(中略)・・・【発明の効果】【0055】本発明の光ディスクの光透過層用フィルムは、高い耐熱性を有し、複屈折が小さく、かつ光弾性定数が低いことから、その奏する工業的効果は格別である。」
(4)「【実施例】【0056】以下実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中「部」とは「重量部」を意味する。実施例において使用した使用樹脂及び評価方法は以下のとおりである。【0057】続きを表示(全50行)(1)粘度平均分子量ポリカーボネート樹脂0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液の20℃ における比粘度を測定し、下記式から算出したものである。ηsp/c=[η]+0.45×[η]2c[η]=1.23×10-4M0.83ηsp : 比粘度η : 極限粘度c : 定数(=0.7)M : 粘度平均分子量【0058】(2)ガラス転移温度ポリカーボネート樹脂を用いてティー・エイ・インスツルメント(株)製の熱分析システムDSC-2910を使用して、JIS K7121に準拠して窒素雰囲気下(窒素流量:40ml/min)、昇温速度:20℃/minの条件下で測定した。【0059】(3)光弾性定数フィルムから長さ50mm、幅10mmの試験片を切り出し、日本分光(株)製 Spctroellipsometer M-220を使用し測定した。【0060】(4)位相差測定フィルムから長さ50mm、幅10mmの試験片を切り出し、切り出したフィルムを日本分光(株)製 Spctroellipsometer M-220を使用し、波長550nmにおけるフィルム面内の位相差(R(550))を測定した。【0061】(5)ポリマー組成比(1H-NMR)日本電子社製JNM-AL400の1H-NMRにて測定し、ポリマー組成比を算出した。【0062】[実施例1]<ポリカーボネート共重合体樹脂の製造>3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン(以下スピログリコールと略す)85.13部、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(以下BCFと略す)45.37部、ジフェニルカーボネート89.29部、および触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド1.8×10-2部と水酸化ナトリウム1.6×10-4部を窒素雰囲気下180℃に加熱し溶融させた。その後、30分かけて減圧度を13.4kPaに調整した。その後、20℃/hrの速度で260℃ まで昇温を行い、10分間その温度で保持した後、1時間かけて減圧度を133Pa以下とした。合計6時間撹拌下で反応を行い、反応終了後、触媒量の4倍モルのドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を添加し、触媒を失活した後、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。【0063】<光学フィルムの製造>次に、(株)テクノベル製15φ二軸押出混練機に幅150mm、リップ幅500μmのTダイとフィルム引取り装置を取り付け、得られたポリカーボネート樹脂をフィルム成形することにより透明な押出しフィルムを得た。得られたフィルムの中央部付近の厚み60±0.8μmである部分より50mm×10mmサイズのサンプルを切り出し、そのサンプルを用いて光弾性定数、面内位相差を測定した。結果を表1に示す。・・・(中略)・・・【0068】[実施例4]<ポリカーボネート共重合体樹脂の製造>スピログリコール60.81部、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(以下BPEFと略す)87.71部、ジフェニルカーボネート89.29部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、芳香族-脂肪族共重合ポリカーボネートを得た。NMRより組成比を測定した。【0069】<光学フィルムの製造>次に実施例1と同様にしてフィルム(厚み60±0.8μm)を作成した。得られたフィルムの光弾性定数、面内位相差を評価した。結果を表1に示す。【0070】[実施例5]<ポリカーボネート共重合体樹脂の製造>スピログリコール48.65部、BPEF105.25部、ジフェニルカーボネート89.29部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、芳香族-脂肪族共重合ポリカーボネートを得た。NMRより組成比を測定した。【0071】<光学フィルムの製造>次に実施例1と同様にしてフィルム(厚み60±0.9μm)を作成した。得られたフィルムの光弾性定数、面内位相差を評価した。結果を表1に示す。・・・(中略)・・・【0074】【表1】」
2 引用発明
(1)引用文献4の【0001】の「技術分野」として、「本発明は、レーザー光などにより情報の記録、再生、消去などを行う光ディスクの光透過層として用いる薄肉のフィルムに関する。」及び【0015】の「本発明は上記の光ディスクの光記録層を保護し、光透過層として用いるためのポリカーボネートフィルムである。本発明の光ディスクの光透過層用フィルムは、厚みが10~150μmの範囲であり、好ましくは10~100μmの範囲である。」との記載により、【0071】に記載された実施例5において製造された光学フィルムは、光ディスクの光透過層用フィルムである。
(2)引用文献4の【0018】の「本発明の光透過層用フィルムは、繰り返し単位(A)及び繰り返し単位(B)を含むポリカーボネート共重合体から形成される」との記載と、【0019】~【0025】の単位(A)は式【化7】で示される単位(A1)が好ましいとの記載と、【0032】~【0035】の単位(B)は式【化10】で示される単位(B1)が好ましいとの記載により、【0070】に記載された実施例5において製造されたポリカーボネート共重合体樹脂は、繰り返し単位(A1)及び繰り返し単位(B1)を含むポリカーボネート共重合体から形成される。
(3)引用文献1の【0074】の【表1】には、実施例5について、BPEFとSPGの組成比は、BPEFが60mol%、SPGが40mol%であり、ポリマーの粘度平均分子量が18200であり、フィルムのR(550)が0.3nmであることが記載されている。ここで、【表1】のポリマー、フィルムは、それぞれ、ポリカーボネート樹脂、光学フィルムであることは明らかである。
そして、【0068】の記載により、BPEFは9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンである。また、技術常識により、SPGは、スピログリコール(3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)である。さらに、【0067】の記載により、R(550)は、波長550nmにおけるフィルム面内の位相差である。
(4)そうしてみると、引用文献1には、【0070】、【0071】に記載された実施例5として、次の発明(「以下「引用発明」という。」)が記載されていると認められる。
「 スピログリコール(SPG)48.65部、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF)105.25部、ジフェニルカーボネート89.29部、および触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド1.8×10-2部と水酸化ナトリウム1.6×10-4部を窒素雰囲気下180℃に加熱し溶融させ、その後、30分かけて減圧度を13.4kPaに調整し、その後、20℃/hrの速度で260℃まで昇温を行い、10分間その温度で保持した後、1時間かけて減圧度を133Pa以下とし、合計6時間撹拌下で反応を行い、反応終了後、触媒量の4倍モルのドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を添加し、触媒を失活した後、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得て、ポリカーボネート共重合体樹脂を製造し、次に、二軸押出混練機に幅150mm、リップ幅500μmのTダイとフィルム引取り装置を取り付け、得られたポリカーボネート共重合体樹脂をフィルム成形することにより透明な押出しフィルムを得て、光透過層用フィルムを製造するものであって、ポリカーボネート共重合体樹脂は、BPEFから誘導される式【化7】で示される単位(A1)とSPGから誘導される式【化10】で示される単位(B1)を含むポリカーボネート共重合体から形成され、BPEFとSPGの組成比は、BPEFが60mol%、SPGが40mol%であり、粘度平均分子量が18200であり、光透過層用フィルムは、中央部付近の厚み60±0.9μmであり、波長550nmにおけるフィルム面内の位相差R(550)が0.3nmである、光ディスクの光透過層用フィルム。【化7】【式10】」
3 引用文献6の記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
原査定の拒絶の理由で引用文献6として引用され、先の出願前に、日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、特開2011-79898号公報(以下、同じく「引用文献6という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付与したものであり、判断等に活用した箇所を示す。
(1)「【技術分野】【0001】本発明は、光弾性定数が低く、流動性の良好なポリカーボネート樹脂および延伸しても全波長領域で位相差が発生しにくい所望の波長分散性を有する光学フィルムに関するものである。」
(2)「【0007】一方、ポリカーボネート樹脂を用いてなる光学フィルムは、位相差フィルム、偏光板の保護フィルムとして好適に用いられる。偏光板の保護フィルムは延伸しても全波長領域で位相差が発現しにくい光学フィルムが好適に用いられ、フルオレン系ビスフェノール骨格を含有するポリカーボネート樹脂からなる光学フィルムが提案されている(例えば特許文献6参照)。しかし、ガラス転移温度(Tg)が高く、フィルムの延伸加工に高い温度を必要とし、従来と異なる特別な加工設備を必要とする。また、光弾性定数が高く応力による複屈折が大きく、光学フィルムとして使用する場合に光抜けが起こるという問題がある。【0008】その為、低い光弾性定数と成形に適した流動性とを高度に具備し、かつ延伸しても全波長領域で位相差が発現しにくい所望の波長分散性を実現できるポリカーボネート樹脂およびそれを用いてなる光学フィルムは未だ提供されていなかった。・・・(中略)・・・【発明が解決しようとする課題】【0010】本発明の目的は、光弾性定数が低く、流動性の良好で、しかも延伸しても全波長領域で位相差が発現しにくく所望の波長分散性を発現できるポリカーボネート樹脂およびそれを用いた所望の波長分散を有する光学フィルムを提供することである。」
(3)「【0011】本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、立体障害の大きいアルキル基を有する特定構造のジオールと脂肪族ジオールとを特定の割合でカーボネート前駆物質を反応させることによって、驚くべき低い光弾性定数と成形に適した流動性を高度に具備するポリカーボネート樹脂が得られることを究明した。更に、この樹脂を用いてなる光学フィルムに所望の波長分散を発現できることを究明し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、以下の通りである。【0012】続きを表示(全17行)1.繰り返し単位が下記式【化1】[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は夫々独立して、水素原子、炭素原子数1~10の炭化水素基であり、R1、R2が結合して炭素環、もしくは複素環を形成しても良い。また、R4、R5が結合して炭素環、もしくは複素環を形成しても良い。mおよびnは同一または異なる1~4の整数を示す。]で表される繰り返し単位(A)と下記式【化2】[式(B)中、R7は炭素原子数2~18のアルキレン基、炭素原子数4~20のシクロアルキレン基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでも良い。rは0または1の整数を示す。]で表される繰り返し単位(B)からなり、それら繰り返し単位(A)(以下(A)成分)と繰り返し単位(B)(以下(B)成分)とのモル比(A/B)が40/60以上60/40未満の範囲で、20℃の塩化メチレン溶液で測定された比粘度が0.20~1.50であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。・・・(中略)・・・【発明の効果】【0016】本発明のポリカーボネート樹脂は、立体障害の大きいアルキル基を有する特定構造のジオールと脂肪族ジオールにカーボネート前駆物質を反応させることによって、驚くべき低い光弾性定数と成形に適した流動性を有することが可能となった。【0017】さらに、本発明のポリカーボネート樹脂を用いることで、光弾性定数が低く、しかも延伸しても全波長領域で位相差が発現しにくい所望の波長分散性を示す光学フィルムを提供することが可能となった。本発明の光学フィルムは、特に、偏光板保護フィルムとして好適に用いることができ、熱ムラ試験後も継続してその性能を維持することが可能となった。そのため、その奏する工業的効果は格別である。」
(4)「【0057】<光学成形品>本発明のポリカーボネート樹脂を用いてなる光学成形品は、例えば射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、溶液キャスティング法など任意の方法により成形される。本発明のポリカーボネート樹脂は、光弾性定数が低く、延伸により所望の波長分散性を実現することができるため特に光学フィルムとして有利に使用することができる。もちろん本発明のポリカーボネート樹脂は、光弾性定数が低く、しかも成形性にも優れているので、光ディスク基板、光学レンズ、液晶パネル、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、コネクター、蒸着プラスチック反射鏡、ディスプレーなどの光学部品の構造材料または機能材料用途に適した光学用成形品としても有利に使用することができる。」
(5)「【0093】【表1】」
第5 当審の判断
1 本願発明1
(1)引用発明
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(ア)ポリカーボネート、式(1)、式(2)
引用発明の「ポリカーボネート共重合体樹脂」は、「スピログリコール(SPG)48.65部、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF)105.25部、ジフェニルカーボネート89.29部、および触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド1.8×10-2部と水酸化ナトリウム1.6×10-4部を窒素雰囲気下180℃に加熱し溶融させ、その後、30分かけて減圧度を13.4kPaに調整し、その後、20℃/hrの速度で260℃まで昇温を行い、10分間その温度で保持した後、1時間かけて減圧度を133Pa以下とし、合計6時間撹拌下で反応を行い、反応終了後、触媒量の4倍モルのドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を添加し、触媒を失活した後、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得て」製造したものであり、「BPEFから誘導される式【化7】で示される単位(A1)とSPGから誘導される式【化10】で示される単位(B1)を含むポリカーボネート共重合体から形成され」るものである。
上記組成及び製造方法からみて、引用発明の「ポリカーボネート共重合体」は、本願発明1の「ポリカーボネート」に相当する。また、引用発明の「BPEFから誘導される式【化7】で示される単位(A1)」及び「SPGから誘導される式【化10】で示される単位(B1)」は、それぞれ、本願発明1の「式(1)」及び「式(2)」に相当する。
(イ)式(1)及び式(2)の割合
引用発明の「ポリカーボネート共重合体樹脂」において、「BPEFとSPGの組成比は、BPEFが60mol%、SPGが40mol%であ」る。
ここで、引用発明の「BPEFから誘導される式【化7】で示される単位(A1)」及び「SPGから誘導される式【化10】で示される単位(B1)」が、それぞれ、本願発明1の「式(1)」及び「式(2)」に相当することは、前記(ア)で述べたとおりである。
そうしてみると、引用発明は、本願発明1の「式(1)及び式(2)」を「50mol%≦(1)<70mol%」、「30mol%<(2)≦50mol%」「の割合で含む」との要件を満たす。
イ 一致点・相違点
(ア)一致点
以上の対比結果を踏まえると、本願発明1と引用発明は、以下の点で一致する。
「 式(1)及び式(2)を下記式の割合で含むポリカーボネート。50mol%≦(1)<70mol%30mol%<(2)≦50mol%【化1】(1)【化2】(2)」
(イ)相違点
本願発明1と引用発明は、以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1の「ポリカーボネート樹脂」は、「比粘度が0.12~0.32」であるのに対して、引用発明の「ポリカーボネート共重合体樹脂」は、「粘度平均分子量が18200であ」る点。
(相違点2)
本願発明1の「ポリカーボネート樹脂」は、「Tg+10℃で2倍延伸した際の波長589nmにおける配向複屈折が0.7×10-3以下であ」るのに対して、引用発明は、「Tg+10℃で2倍延伸した際の波長589nmにおける配向複屈折」が不明である点。
(当合議体注:引用発明の、「波長550nmにおけるフィルム面内の位相差R(550)が0.3nmである」という構成は、「Tg+10℃で2倍延伸した際の」ものではなく、また、測定波長も、同一ではない。)
(相違点3)
本願発明1は、「撮像レンズ」であるのに対して、引用発明は、「光ディスクの光透過層用フィルム」である点。
ウ 判断
事案に鑑みて、上記相違点1及び3について検討する。
引用発明は、「光ディスクの光透過層用フィルム」であるところ、引用文献4の特許請求の範囲の請求項1には、「光ディスクの光透過層用フィルム」、明細書においても、【技術分野】(【0001】)には、「光ディスクの光透過層用として用いる薄肉のフィルム」、【発明が解決しようとする課題】(【0011】)及び【発明の効果】(【0055】)には、「光ディスクの光透過層用フィルム」、【課題を解決するための手段】(【0012】)には、「光ディスクの光透過用フィルム」とそれぞれ記載されている。他の記載をみても、引用文献4には、ポリカーボネートの用途を具体的に記載しているのは光ディスクの光透過層用フィルムのみであって、光ディスクの光透過層用フィルムとして課題を解決するために、ポリカーボネートの組成や特性を規定することが記載されている。また、引用文献4には、引用発明の「ポリカーボネート共重合体樹脂」を、他の用途に用いて良いとの記載はない。
そうしてみると、たとえ当業者といえども、引用発明の「光ディスクの光透過層」に用いる「ポリカーボネート共重合体樹脂」を、撮像レンズに用いることを想定できない。
ところで、引用文献4の【0002】には、「ポリカーボネート樹脂は透明性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性、更に加工性に優れることから光学用途に広く利用されている。」と記載されている。また、これらポリカーボネート樹脂の性質は、携帯電話等の撮像レンズに求められる性能とも、相通ずるところがある。
しかしながら、引用発明の「粘度平均分子量が18200であ」ることと、引用文献4の【0039】【0057】の粘度平均分子量と比粘度の式により、引用発明の「ポリカーボネート共重合体樹脂」の比粘度は、0.335であって0.32を超えるものである。
したがって、仮に、引用発明の「ポリカーボネート共重合体樹脂」を撮像レンズに用いる当業者を想定しても、前記相違点1に係る本願発明の構成には到らない。
さらに進んで検討する。
引用文献6の【0057】には、「本発明のポリカーボネート樹脂」の用途が列挙されているところ、その中には、「光学レンズ」が含まれる。
しかしながら、引用文献6の【0012】に記載された「本発明のポリカーボネート樹脂」は「比粘度が0.20~1.50である」。また、【0093】の【表1】からは、実施例1~実施例4の全ての「ポリカーボネート樹脂」の比粘度が、本願発明の比粘度の範囲の上限を超えていることが理解される。
したがって、仮に、引用文献6に記載された技術を心得た当業者を仮定したとしても、相違点1に係る本願発明の構成にまで到るということはできない。
したがって、引用発明の「光ディスクの光透過層用フィルム」を撮像レンズとするとともに、引用発明の「ポリカーボネート共重合体樹脂」の比粘度を0.12~0.32として、上記相違点1及び3に係る本願発明1の構成とすることは、当業者といえども、容易に想到し得たとはいえない。
エ 小括
以上のとおりであるから、他の相違点について言及するまでもなく、本願発明1は、当業者といえども、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
(2)引用文献1~3
原査定の拒絶の理由に引用され、先の出願前に、日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、国際公開第2008/156186号(以下、同じく「引用文献1」という。)、特開2013-164501号公報(以下、同じく「引用文献2」という。)、国際公開第2010/071079号(以下、同じく「引用文献3」という。)には、いずれも光学フィルムの発明が記載されている。また、引用文献1の第45頁、引用文献3の第31頁には、「位相差フィルムに有用である」こと、引用文献2の【0100】には、「位相差フィルム‥‥に好適に利用できる」が記載されている。
そして、撮像レンズの課題や機能は、位相差フィルムの課題や機能と異なるものであるから、当業者といえども、引用文献1~3に記載された位相差フィルムに有用又は好適である光学フィルムの発明を撮像レンズに適用することは、容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本願発明1は、引用文献1~3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
2 本願発明2~6
本願発明2~6は、本願発明1の構成のすべてを備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者といえども、引用発明、引用文献1~3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
第6 原査定について
前記「第5」で述べたとおりであるから、原査定の理由を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定によっては、本願を拒絶をすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2019-014754