特許拒絶査定不服審判
2019-013774
受精判定システム
- 審判番号
- 2019-013774
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-199618
- 請求日
- 2019年10月16日
- 審決日
- 2021年06月02日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】福永 憲隆
- 【請求人代理人】特許業務法人明成国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 中島 庸子
- 審判官 森井 隆信
- 審判官 一宮 里枝
- 分類
- P18 .121-WZ (C12M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2016-199618「受精判定システム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 4月19日出願公開、特開2018- 61440〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は平成28年10月11日の出願であって、令和1年7月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年10月16日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。その後の当審における手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年12月17日付け 拒絶理由通知書
令和3年2月22日付け 意見書、手続補正書
第2 本願発明
本願の請求項1~6に係る発明は、令和3年2月22日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載されたとおりのものであるところ、そのうちの請求項1に係る発明は、次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
「【請求項1】
受精判定システムであって、
受精処理された卵を培養するウェルを複数備えた培養部と、
前記培養部によって培養されている前記卵の状態を、培養開始後24時間までに、設定された時間間隔で撮影して前記卵についての複数の画像を取得する画像取得部と、
前記卵の培養中に、前記複数の画像に写った前記卵の状態を解析することによって前記卵が受精しているか判定する判定部と、
を備え、
前記判定部は、
教師あり学習によって画像に写った卵の前核の数について学習しており、
前記各ウェルで培養されている卵について前記取得された複数の画像のそれぞれを、前記学習に基づいて解析して、各画像における前核の数を判定し、
前記24時間の間に取得された前記複数の画像における前記卵の前記前核の数の経時的な変化を解析して、前記ウェルで培養されている卵についての前記複数の画像に、前記前核の数の差を認識できる2枚の画像が含まれており、前記2枚の画像の一方が前記卵における前核の数が0の画像であり、前記2枚の画像の他方が前記卵における前核の数が2である画像である場合、前記卵が正常に受精していると判定し、
前記判定部は、前記判定を、前記複数のウェルで培養されている全ての卵について行なう、
受精判定システム。」
第3 当審で通知した拒絶の通知
令和2年12月17日付けで当審が通知した拒絶の理由の概要は、本願の請求項1~6に係る発明は、本願出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明と、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術(引用文献3~6)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、との理由を含むものである。
(引用文献)
1.Journal of Mammalian Ova Research,2014年,Vol.31, No.4,pp.107-114
2.国際公開第2016/050964号
3.特表2016-509845号公報
4.国際公開第2011/021391号
5.特表2000-513465号公報
6.Medical Image Computing and Computer-Assisted Intervention - MICCAI, 2015, pp.234-241
第4 当審の判断
1.引用文献の記載事項
(1)引用文献1
当審の拒絶理由で引用文献1として引用した、本願出願日前に頒布された、「生殖医療におけるTime Lapse Imaging Systemの現状と臨床的有用性」と題された学術文献である「Journal of Mammalian Ova Research,2014年,Vol.31, No.4,pp.107-114」には、以下の事項が記載されている。下線は当審が付した。
ア 「現在、生殖医療分野で脚光を浴びているImaging機器はImagingと培養を同時に行うことを想定したTime Lapse Imaging-Incubator Systemである。この機器の将来性には2つあり、一つ目にこれまで見ることができなかった胚発生の一部始終を画像として観察することができ更にTime Pointを解析することによって胚発育をこれまでの一時点のみの形態観察以上の情報を得ることができる。2つ目に胚の観察を画像で行えることから顕微鏡での直接観察を必要とせず、胚発育の一連の培養期間を空気中に一切曝すこと無く、低酸素環境を維持した連続観察・連続培養を実現することができる。」(第107頁の要旨)
イ 「前述したように、定時の顕微鏡観察で不受精と判断された胚のTime Lapse Imaging Systemを用いた観察によって、前核の形成と消失は我々が定時観察していた時間よりも早期に起こす胚があることを示した。そこで我々はTime Lapse Imaging Systemを臨床的に運用する方法として全媒精症例の媒精直後から翌朝までの時間とした。これまでは見られなかった前核の形成過程をImagingによって確認し、前核早期消失胚の存在を検証するとともに、これらの胚を救済することを目的とする臨床でのTime Lapse Imaging Systemの運用を開始した。
この運用方法で2前核が出現した567胚をImagingで解析した。これらの胚で前核の平均出現時間は7.7±2.1hであり、最短4.0h、最長18.2hであった。そのうちこれまでの定時観察と同時間である媒精後19.5~21.5時間に2前核が消失していた胚は9.7%(55/567)も確認された。これら早期消失胚の平均前核消失時間は20.1±0.8hであり最短17.4h、最長21.5hであった(図8-11)。
我々は臨床胚のImagingによって、これまでは不受精と判断されていた早期前核消失胚が9.7%存在することを明らかにした。更にこれらの胚をTime Lapse Imagingすることにより正常受精胚と判断し救済することができた。臨床で媒精後からのImagingは前核の形成過程を確実に捉えることが可能であり、その胚が受精しているかどうかを間違いなく判断できる点で非常に有用である。受精確認は顕微鏡下の観察が一般的であるが、この検討によって約10%もの正常受精胚が見逃されてきた背景が考えられる。我々の培養業務はいまだに完全ではないということを常に意識しなければならない。
これらのデータから当施設では全症例の媒精後からTime Lapse Imagingを実施し受精判定に応用している。この運用方法は、限られた症例しか培養できないこれらの機器で全症例に有効利用できる唯一の方法と言える。」(第111頁右欄下から5行~第112頁右欄第5行)
ウ 「
[図:0001388585000001.jpg]
」(第113頁の図11)
(2)引用文献2
当審の拒絶理由で引用文献2として引用した、本願出願日前に頒布された「国際公開第2016/050964号」には、以下の事項が記載されている。なお、英文で記載されているため、特許ファミリーである特表2017-529844号公報に記載の訳文にて記載する。下線は当審が付した。
ア 「ここ数年にわたって開発された胚品質を評価するための強力なツールは、タイムラプス胚イメージングである。タイムラプス胚イメージングでは、胚の発生中に胚の画像を得ることを必要とする。これは、細胞分裂などの様々な発生事象のタイミング、ならびに/または例えば、異なる段階における細胞均一性(均等性) 、前核(PN)の出現、および多核形成(MN)の存在の観点からの胚の発生に関する他の特性の存在もしくは非存在を確立することを可能にすることができる。」(第1頁第30~末行)
イ 「胚の発生潜在力を評価するための単純なモデルの例として、1細胞から2細胞への分裂の相対的に早期の時間は、良品質胚の指標であると判明している。他の形態運動的パラメータ、例えば、2細胞から4細胞に分裂するときの2つの分裂のシンクロニシティの程度も、胚品質に感受性であることが判明している。より一般に、胚のin-vitro発生に関するパラメータから胚の発生潜在力を評価するための様々な手法が提案されている。したがって、タイムラプスイメージングの目的は、様々な胚発生事象のタイミング、ならびに/または異なる段階の細胞均一性(均等性) 、前核(PN)の出現、および多核形成(MN)の存在の観点からの胚の発生に関する他の特性に関する様々なパラメータの値を確立することである。一連のタイムラプス画像から胚発生に関する値および特性を確立することは、アノテーションと時に呼ばれる。」(第2頁第14~25行)
ウ 「既に述べたように、胚の発生に関連した様々なパラメータ、例えば、上記に論じたタイミングに対応する(またはそれに基づく)パラメータから胚の発生潜在力の尺度を確立することが公知であり、これを行うために、目的の該当するパラメータの値を、胚が該当する段階を通じて発生する際の胚のタイムラプス画像から判定することができる。胚の発生潜在力を判定するための一部の手法では、他の発生特性が目的となり得る。例えば、胚の品質の評価を、以下の形態学的特性について確立された値を考慮に入れることができる。
・NOT2PN:2つの前核が胚について適切に同定されているか否かの指標。この特性は、適切な発生段階を有する部位における(at the appropriate develop the site with a mental stage)胚の画像から視覚的に判定することができ、例えば、前核が胚について適切に同定されているか否か(whether or not to pro-nuclei are properly identified the embryo)を示す単純なバイナリ値をとることができ、または胚について同定された標的にされた数を示す値、例えば、胚について同定された前核の数によって「0」、「1」、「2」、「3」、もしくは「4またはそれ超」に対応する値(「2」の値が正常である)をとることができる。」(第10頁第3~17行)
エ 「受精は、精子細胞が認識され、卵母細胞によって受け入れられる時点であると見なすことができる。精子細胞は、卵母細胞の減数分裂周期が第2の減数分裂の中期で中断された後に卵活性化(egg activation)を誘発する。これは、第2の極体の生成および押出をもたらす。精子および卵子(ovum)が融合して数時間後に、DNA合成が始まる。男性および女性の前核(PN)が出現する。PNは、卵の中心に移動し、膜が分解し、PNが消失する(衰退する)。2つのゲノムのこの組合せは、配偶子合体と呼ばれる。その後、細胞分裂が始まる。」(第13頁第1~7行)
オ 「図4は、本発明のある特定の実施形態によって胚8の発生潜在力を判定するための機器2を概略的に表す。機器2は、胚イメージングシステム6にカップリングした汎用コンピューター4を備える。胚イメージングシステム6は、一般に慣例的であり得、確立された技法に従って発生の様々な段階における胚8の画像を得るように構成されている。一般に、胚イメージングシステム6は、典型的には、監視期間にわたって単一の胚だけでなく、複数の胚の画像を得るように構成されることが十分に理解される。例えば、典型的な研究は、いくつかの胚、例えば、72の胚の分析に関与し得る。胚イメージングシステムは、次の胚の画像化に進む前に1つずつ各胚の画像(潜在的に複数の焦点面で撮られている画像を有する)を記録するように構成することができる。すべての胚が画像化された後、それは、例えば、5分を要し得るが、個々の胚を画像化するサイクルを繰り返して、次の時点のそれぞれの胚のそれぞれの画像を提供することができる。
汎用コンピューター4は、さらに以下に記載するように、胚イメージングシステム6から得られる画像の分析から胚の発生潜在力を判定/評価するための方法を実行するように適応される(プログラムされる)。」(第15頁第1~16行)
カ 「ある特定の例の実装による胚8は、胚イメージングシステム6を使用して定期的に監視されて関連情報(すなわち、特定の胚発生事象と関連したタイミング、特定の胚発生特性の(非)存在)が得られる。胚は、好ましくは、1時間当たり少なくとも1回、例えば、1時間当たり少なくとも2回、例えば、1時間当たり少なくとも3回、例えば、1時間当たり少なくとも4回、例えば、1時間当たり少なくとも6回、例えば、1時間当たり少なくとも12回監視される。監視は、好ましくは、胚が、胚を培養するのに使用されるインキュベーター内に置かれている間に行われる。これは、好ましくは、タイムラプス法に関して本明細書に論じたものなどの胚の画像取得によって実施される。」(第16頁第3~11行)
キ 「したがって、要約すると、胚の形態学的発生に関する以下の特性の値を、図5の方法の一例の実装に従って各胚について求めることができる:NOT2PN;tPNf;t2;t3;t5およびt8。すべての胚のすべてのこれらの特性の値を得ることが可能でない場合があることが十分に理解される。例えば、胚が観察期間内に8細胞期に到達しないことがあり得、この場合では、t8の値を得ることが可能でないはずである(胚が観察/監視期間内に8細胞に到達しなかったという判定に対応する)。
これらのパラメータの値を、慣例的な技法に従って、例えば、インキュベーター内の胚の慣例的なタイムラプスイメージングを使用して発生中の胚の一連の画像を得、一連の画像から様々な関連した形態学的事象のタイミングおよび出現を同定するための慣例的なアノテーション手順を使用して得ることができる。例えば、これらのパラメータの値を、インキュベーション中の胚をタイムラプスモニタリングするためのEmbryoScope(RTM)デバイス、および目的の事象をアノテートするためのその関連したEmbryoViewer(RTM)ソフトウェアを使用して得ることができる。EmbryoScope(RTM)デバイスおよびEmbryoViewer(RTM)ソフトウェアは、Unisense FertiliTech A/S(Aarhus、デンマーク)によって開発され、この会社から入手可能である。以前に確立された技法に従って、アノテーションを、手作業で(例えば、ユーザー入力に基づいて)、かつ/または自動的に(例えば、数値的画像解析/処理に基づいて)、かつ/または半自動的に(例えば、数値的画像処理およびユーザー入力の混合に基づいて)実施できることが十分に理解される。」(第17頁第7~26行)
(3)引用文献3
当審の拒絶理由で引用文献3として引用した、本願出願日前に頒布された「特表2016-509845号公報」には、以下の事項が記載されている。下線は当審が付した。
「いくつかの実施形態では、1つ以上の分類器の各々は、1つ以上の細胞の複数の画像の各々に適用することができる。複数の画像は、経時的な一連の画像等の時間連続的な一連の画像であり得る。複数の画像に示される細胞は、任意の目的とする細胞であり得る。いくつかの実施形態では、各画像内の細胞の数が関心となり、それは、本発明の側面によって決定することができる。例えば、細胞は、ヒト胚であり得、細胞の数は、1細胞段階、2細胞段階、3細胞段階、4細胞段階等のうちの1つ以上の段階での胚を表すことができる。いくつかの実施形態では、4細胞段階は、4つ以上の細胞を表す。そのような目的とする細胞の他の実施例は、卵母細胞および多能性細胞を含むが、それらに限定されない。
任意の好適な分類器が採用され得る。いくつかの実施形態では、分類器は、機械学習アルゴリズムに基づく。分類器は、AdaBoost(適応ブースティング)分類器、またはサポートベクターマシン(S VM)の別の分類器であり得る。いくつかの実施形態では、分類器は、細胞特徴および/またはパターン認識に基づく。細胞特徴は、限定されないが、細胞形状、テクスチャ、縁、および/または同等物の認識等の1つ以上の細胞(胚、卵母細胞、または多能性細胞等)の1つ以上の画像に基づいて取得される、特徴である。細胞特徴は、単一の細胞のみに関連付けられる特徴に限定されず、複数の細胞に関連付けられる特徴、および/または、1つ以上の細胞および画像背景等の1つ以上の細胞を示す画像の別の部分に関連付けられる特徴を指すことができる。いくつかの実施形態では、分類器は、標識画像を使用することによって等、1つ以上の教師あり学習アプローチを介して訓練される。いくつかの実施形態では、分類器が基づく細胞特徴は、1つ以上の教師なし学習アプローチを通して決定される。これらの教師なし学習アプローチは、非標識画像を使用し得る。」(【0085】、【0086】)
(4)引用文献4
当審の拒絶理由で引用文献4として引用した、本願出願日前に頒布された「国際公開第2011/021391号」には、以下の事項が記載されている。下線は当審が付した。
「[請求項1] 培養容器内で培養される対象細胞を時系列に撮像した複数の画像を取得する画像取得部と、
前記画像に含まれる前記対象細胞の形態学的特徴をそれぞれ示す複数種類の特徴量を、各々の前記画像で求める特徴量取得と、
複数種類の前記特徴量および観察時期の組み合せから選択された指標に元付いて評価属性の異なる細胞をクラス分けする判別モデルを記憶する記憶部と、
前記判別モデルの前記指標と、前記対象細胞の各観察時期での前記特徴量とを照合し、前記対象細胞をクラス分けする評価処理部と、
を備える培養細胞評価装置。
[請求項2] 請求項1に記載の培養細胞評価装置において、
前記判別モデルは同種類の細胞の劣化度合いを細胞の継代回数相当でクラス分けするモデルである培養細胞評価装置。
[請求項3] 請求項2に記載の培養細胞評価装置において、
前記判別モデルは、それぞれ継代回数の異なる細胞を時系列に撮像して取得した複数組の教師画像群を用いる教師付き学習で構築される培養細胞評価装置。」(請求の範囲における請求項1~3)
(5)引用文献5
当審の拒絶理由で引用文献5として引用した、本願出願日前に頒布された「特表2000-513465号公報」には、以下の事項が記載されている。下線は当審が付した。
「1. 自動顕微鏡、ビデオシステム、およびニューラルネットワーク(NN)を備えた評価コンピュータを用いて行う、スライドガラス上の生体組織の試料または体液の試料の自動顕微鏡検査方法であって;
下記ステップ、すなわち
a)試料の画像を上記ビデオシステムで記録し、次いでディジタル化信号を個々の画像点に割り当て、
b)試料のタイプを分類し、
c)上記画像点を接続したセグメントに分割し、次いで、そのセグメントのディジタル化画像信号を1種以上のニューラルネットワーク(NNβi)の入力ニューロンに送ることによって、1種以上のニューラルネットワークNNβiで各セグメントを分析し、
d)1種以上のニューラルネットワークNNγiでセグメントを分析して、
試料のタイプに属していない細胞型が存在しているか、または
構造細胞/組織の変化が存在している場合、病的であると試料を分類する、
ステップを含んでなる生体組織の試料または体液の試料の自動顕微鏡検査方法。」(特許請求の範囲における請求項1)
(6)引用文献6
当審の拒絶理由で引用文献6として引用した、本願出願日前に頒布された、「U-Net.バイオメディカル画像のセグメンテーションのための畳み込みネットワーク」と題された学術文献である「Medical Image Computing and Computer-Assisted Intervention - MICCAI, 2015, pp.234-241」には、以下の事項が記載されている。英文であるため当審による訳文にて記載する。下線は当審が付した。
「ディープネットワークの学習を成功させるためには、何千ものアノテーション付き学習サンプルが必要であることが広く知られている。本研究では、利用可能な注釈付き学習サンプルをより効率的に利用するために、データの増強を強力に利用することに依存したネットワークと学習戦略を提示する。そのアーキテクチャは、文脈を捕捉するための縮小パスと、正確な定位を可能にする対称的な拡張パスから構成されている。このようなネットワークは、非常に少ない画像からエンドツーエンドで学習することができ、ISBI課題である電子顕微鏡スタック中の神経細胞構造のセグメンテーションにおいて、先行する最良の手法(スライドウィンドウ畳み込みネットワーク)を凌駕することを示している。透過光顕微鏡画像(位相コントラストとDIC)上で訓練した同じネットワークを用いて、これらのカテゴリでISBIの細胞追跡チャレンジ2015で大差をつけて優勝した。さらに、このネットワークは高速である。512x512の画像のセグメンテーションは、最近のGPUでは1秒もかからない。完全な実装(Caffeに基づく)と訓練されたネットワークは、http://lmb.informatik.uni-freiburg.de/people/ronneber/u-net。」(第234頁要旨)
2.引用発明
上記1.(1)アによれば、引用文献1におけるTime Lapse Imaging Systemは、胚について連続観察・連続培養を実現するシステムであり、そして、上記1.(1)イ及びウによれば、当該システムを用いることで、胚の受精後から24時間までの間において前核の出現と消失について1時間ごとに確認した結果が示されており、1時間ごとの確認には1時間間隔で撮影された画像を要すると解されるから、当該システムは、受精後の胚を培養する培養部、及び、培養部によって培養されている受精後の胚の状態を、胚の受精後から24時間までに1時間間隔で撮影して、受精後の胚についての複数の画像を経時的に取得する画像取得部を備えていると理解される。
また、上記1.(1)イによれば、上記システムを用いて2前核、すなわち前核が2つ出現した複数の胚を解析した結果、これまでの定時観察では不受精と判断されていた早期前核消失胚、すなわち胚の受精後から24時間までの間における早期に前核の数が0となった胚について、上記システムを用いることでこれを正常受精胚と判断して救済できたというのであるから、受精後の胚では、正常に受精している場合には、受精後から24時間までの間において前核は出現して消失し、そのため前核の数は0→2→0という経時的な変化が認められること、そして正常に受精した胚における前核の出現・消失についてのそのような経時的な変化を前提として、上記システムを用いて胚の受精後から24時間までに1時間間隔で取得された複数の画像をヒトが解析することで、受精後から24時間までの間に前核が2つ出現し、消失したことが確認された場合には、その受精後の胚は正常に受精しているとヒトが判断する、ということが記載されているといえる。
そうすると、引用文献1には、
「受精後の胚を培養する培養部と、
前記培養部によって培養されている前記胚の状態を、胚の受精後から24時間までに1時間間隔で撮影して、前記胚についての複数の画像を取得する画像取得部と、
を備える、受精後の胚の連続観察・連続培養を実現するシステムを用いて、
当該システムによって胚の受精後から24時間までに1時間間隔で取得された複数の画像を解析することで、受精後から24時間までの間に前核が2つ出現し、消失したことが確認された場合には、その受精後の胚が正常に受精していると判断する、
方法。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「胚」、「受精後の胚」は、本願発明の「卵」、「受精処理された卵」にそれぞれ相当し、また、引用発明における受精後の胚についての画像を「胚の受精後から24時間までに1時間間隔で撮影」するという画像を撮影する時間の間隔は、連続観察・連続培養を実現するシステムにおいて設定された時間間隔であるから、引用発明の「前記培養部によって培養されている前記胚の状態を、胚の受精後から24時間までに1時間間隔で撮影して、前記胚についての複数の画像を取得する画像取得部」は、本願発明の「前記培養部によって培養されている前記卵の状態を、培養開始後24時間までに、設定された時間間隔で撮影して前記卵についての複数の画像を取得する画像取得部」に相当する。
さらに、引用発明において、胚の受精後から24時間までの間における2つの前核の出現とその消失、すなわち受精後の胚についての受精後から24時間までの間における前核の数の0→2→0という経時的な変化が認められるか否かの確認は、1時間間隔で撮影された複数の画像を解析することで行っているのであるから、引用発明の「当該システムによって胚の受精後から24時間までに1時間間隔で取得された複数の画像を解析することで、受精後から24時間までの間に前核が2つ出現し、消失したことが確認された場合」は、本願発明の「前記24時間の間に取得された前記複数の画像における前記卵の前記前核の数の経時的な変化を解析して、前記培養されている卵についての前記複数の画像に前記前核の数の差を認識できる2枚の画像が含まれており、前記2枚の画像の一方が前記卵における前核の数が0の画像であり、前記2枚の画像の他方が前記卵における前核の数が2である画像である場合」に相当し、そして、引用発明の「受精後の胚が正常に受精していると判断」することは、本願発明の「卵が正常に受精していると判定」することに相当する。
したがって、両者は、
「受精処理された卵を培養する培養部と、
前記培養部によって培養されている前記卵の状態を、培養開始後24時間までに、設定された時間間隔で撮影して前記卵についての複数の画像を取得する画像取得部と、
を備えたシステムを用いて、
前記複数の画像に写った前記卵の状態を解析することによって前記卵が受精しているか判定する方法であって、
前記判定は、
前記24時間の間に取得された前記複数の画像における前記卵の前記前核の数の経時的な変化を解析して、前記培養されている卵についての前記複数の画像に、前記前核の数の差を認識できる2枚の画像が含まれており、前記2枚の画像の一方が前記卵における前核の数が0の画像であり、前記2枚の画像の他方が前記卵における前核の数が2である画像である場合、前記卵が正常に受精していると判定する、
方法。」
である点で一致し、以下の点で相違すると認められる。
(相違点1)
本願発明は、培養部と画像取得部に加え、さらに「判定部」を備えたシステムを提供するものであり、そして、卵が受精しているかの判定は、本願発明では、前記判定部が行っており、前記判定部は、教師あり学習によって画像に写った卵の前核の数について学習しており、培養されている卵について取得された複数の画像のそれぞれを、前記学習に基づいて解析して、各画像における前核の数を判定するのに対して、引用発明では、システムは判定部を備えておらず、培養されている卵について取得された複数の画像における前核の数をヒトが確認して、卵が受精しているかの判定をヒトが行っている点。
(相違点2)
卵が受精しているかの判定について、本願発明では「卵の培養中に」行うことが特定されているのに対して、引用発明では特定されていない点。
(相違点3)
本願発明では、培養部は「ウェルを複数備えた」ものであり、そして、卵の受精判定は「複数のウェルで培養されている全ての卵について行う」のに対して、引用発明ではそれらの特定がなされていない点。
4.判断
(相違点1について)
ヒトの手作業により行われている工程について、コンピュータなどの機械によってそれを行う手法が存在していれば、機械化によってシステムを組み上げようとすることは、引用文献1において受精後の胚の連続観察・連続培養を行うのにTime Lapse Imaging Systemを採用しているように、当業者の常套手段である。
ここで、上記1.(2)ア~キによれば、胚イメージングシステムにカップリングした汎用コンピューターシステムを備えた胚の発生潜在力(胚の品質)を評価するための機器及び方法について記載する引用文献2には、胚のタイムラプス画像で確認される受精処理後に出現もしくは衰退/消失する前核の数に基づいて、2つの前核が胚について適切に同定されているか否かの指標であるパラメータ値NOT2PNを、一連の画像から確立し、NOT2PNの値が2の場合には胚は正常であるとみなし、他の値の場合には正常でないとみなすことを、機器における汎用コンピューターシステムのプログラムが行う機器が記載されている。当該機器は、培養部と画像取得部に加え、胚の発生潜在力(胚の品質)の評価に必要な、取得した画像によって確認される前核の数が2の場合に正常であると定めた指標についての判定を、汎用コンピューターシステムのプログラムが行う判定部を備えるものである。そして特に、上記1.(2)キによれば、引用文献2には、前記NOT2PN等のパラメータ値を、インキュベータ内の胚の慣例的なタイムラプスイメージングを使用して得られる、発生中の胚の一連の画像から様々な関連した形態学的事象のタイミングおよび出現を同定するための慣例的なアノテーション手順を使用して得ることができること、アノテーションは数値的画像解析/処理に基づいて「自動的に」実施できると記載されているところ、例えば、上記1.(3)~(6)のとおり引用文献3~6に記載されているように、胚や卵母細胞などの細胞の形態学的特徴についての画像を用いた教師あり学習による機械学習に基づいて各種判定を行う手法は、本願出願日前における周知技術である。
してみると、引用発明において、培養されている卵について取得された複数の画像における前核の数をヒトが確認して、卵が受精しているかの判定をヒトが行うことに代えて、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、教師あり学習によって画像に写った卵の前核の数について学習しており、培養されている卵について取得された複数の画像のそれぞれを、前記学習に基づいて解析して、各画像における前核の数を判定する「判定部」を採用し、そして、培養部と画像取得部にさらに当該判定部を加えた受精判定システムを構築することに、当業者は格別困難を要しない。
(相違点2について)
本願発明における取得した複数の画像に写った卵の状態の解析及び卵が受精しているか判定を行うタイミングである「卵の培養中に」とは、「卵が培養部において培養されている状態のままであり、培養部から取り出された状態にないこと」を意味しているのか、それとも、「卵が培養されている期間の間であって、卵の培養を終えた後ではないこと」を意味しているのか、当該記載からは定かではないが、前者のとおりに解した場合、引用発明におけるシステムは受精後の胚の連続観察・連続培養を実現するものであり、撮像のために胚を培養部から取り出す必要はないものであるから、撮像した画像を用いた解析・判定について、胚を培養部から取り出すことなく実施することは当業者が当然行うことにすぎない。また、後者のとおりに解しても、引用文献1は生殖医療について記載するものであって、正常な受精卵であることが確認されれば不妊治療のために生体内に移植されるまで卵の培養は継続されるのが通常であり、そして、正常に受精した受精後の卵における前核の出現・消失に伴う0→2→0という前核の数の経時的な変化は、最初の卵割が生じる前である受精後から24時間までの間に起こる事象であるから、前核の数に基づく受精後の卵が正常に受精しているか否かの判定を、卵の培養終了後まで待つことなく、卵が培養されている期間の間において行うことは、当業者が当然に行うことにすぎない。
(相違点3について)
上記「相違点1について」において記載したとおり、引用発明において、教師あり学習によって画像に写った卵の前核の数について学習しており、培養されている卵について取得された複数の画像のそれぞれを、前記学習に基づいて解析して、各画像における前核の数を判定する「判定部」を採用することで、培養部と画像取得部にさらに当該判定部を加えた受精判定システムを構築することに格別困難はなく、そして、受精後の卵が複数存在していれば、それら全てについて受精が正常か否か判定を行おうとすることは自明の課題であるところ、上記1.(2)オのとおり引用文献2には複数の胚について画像取得・分析を行うことが記載されているから、上記受精判定システムを構築する上で、受精後の卵を培養する培養部について「ウェルを複数備えた」ものとし、そして、卵の受精判定を「複数のウェルで培養されている全ての卵について行う」ことは、当業者が適宜設計し得たものにすぎない。
5.審判請求人の主張について
審判請求人は、令和3年2月22日付け意見書において、本願発明(請求項1に係る発明)が進歩性を有することについて概ね次の点を主張している。
ア 引用文献1は、媒精後のどのタイミングで受精を判定すれば、受精判定の誤りを最小限にできるか、という課題を解決することが、論文の目的の一つであって、論文執筆者等は、この観点で、Time Lapse Imaging Systemで取得された画像を見ているのであり、そして、第113頁の図11のキャプションに記載された「受精確認は受精から約11~19時間後に行なうことで前核の見逃しを防ぐことができる可能性が高い」という説明のとおり、引用文献1において論文執筆者等が行ったことは、多数の胚の前核の出現時間と消失時間を調べて、不妊治療において望ましい判断の時間帯を特定することであり、経時的な観察により受精を判定しようとする発想は、引用文献1には見られない。
イ 引用発明に組み合わされる引用文献2では、受精判断は受精処置後の少なくとも72時間経過後に行われており、卵の培養中に受精判断を行っていない。
ウ 引用発明に組み合わされる引用文献2には、2つの前核が胚について適切に同定されているか否かの指標であるパラメータ値NOT2PNの同定手法について何ら記載されておらず、本願発明の特徴である前核の数に基づく受精の成立の判断の手法を導き得ない。
エ 従来顕微鏡下で胚培養士などが肉眼で行なっていた受精を確認する作業では、卵を転がして行なうなどの必要があり、培養中の卵の画像を設定した時間毎に取得したとしても、1枚の画像で、前核の数を確認するというだけでは、正常な受精と判断できないため、画像における前核の数を特定する際に教師あり学習を用いて行うとする本願発明の特徴は、ヒトが行っている判断を単に機械学習に置き換えている訳ではなく、また、ウェルの数が12、設定された画像取得の時間間隔が15分という、本願明細書に記載された条件では、受精後24時間で1152枚の画像が得られるところ、それらの画像について前核の数とその経時的な変化の確認を昼夜問わず実行し、正常な受精を判定するという作業を、ヒトにより行わせるというシステムを構想し得るとは考えられず、想定し得る受精判定システムの一部を、単に機械学習に置き換えたものではない。
オ 主引例である引用文献1と副引例である引用文献2とを組み合わせた上で、更に周知技術を挙げ、これを進歩性を否定する方向への論理付けとすることは許されず、さらに、周知技術とされたものは、審査基準に示された、
(i)一定の課題を解決するための公知材料の中からの最適材料の選択
(ii)一定の課題を解決するための数値範囲の最適化又は好適化
(iii)一定の課題を解決するための均等物による置換
(iv)一定の課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計変更や設計的事項の採用
に関しては、(i)及び(ii)は明らかに該当せず、また、(iii)については、少なくとも均等の第1要件が満たされないので該当せず、そして、(iv)については、引用文献3~6には、前核の数の確認や、その経時的な変化による受精の判定の実施といった課題を解決するものではなく、「一定の課題を解決するため」が該当しない。
主張アについて
上記1.(1)イのとおり、引用文献1には、これまでは不受精と判断されていた早期前核消失胚が一定割合存在することを明らかにしたことに加え、それらの胚をTime Lapse Imagingする、すなわち連続観察・連続培養することで正常受精胚と判断し救済できたこと、及び、臨床で媒精後からのImagingは前核の形成過程を確実に捉えることが可能であり、その胚が受精しているかどうかを間違いなく判断できる点で非常に有用であることが記載されている。したがって、引用文献1には、多数の胚の前核の出現時間と消失時間を調べて、不妊治療において望ましい判断の時間帯を特定することのみならず、受精後の胚の経時的な観察により受精を判定しようとする発想についても記載されていることを、当業者は把握できるといえる。
主張イについて
引用文献2では、前核の数のみならず、前核の消失後に生じる卵割等の他の事象についても、受精後の胚の品質を評価するのに用いる指標に含めるために、受精処置後の少なくとも72時間経過後に受精判断を行っているのであり、引用文献1に記載されているように、受精が正常であれば、受精から24時間までの間に0→2→0と経時的に変化することが知られている前核の数に基づいて判定するのであれば、受精後72時間が経過するまで待たなくとも、受精から24時間ほどが経過した前核が消失しているタイミングで、胚の培養の継続中に、それまでに取得された画像を確認して、受精が正常か否か判断すればよいことは当業者には明らかである。したがって、引用文献2において受精判断が受精処置後の少なくとも72時間経過後に行われていることは、引用発明に対して引用文献2に記載された、受精後の胚において出現・消失する前核の数を指標とした判定をコンピューターシステムのプログラムが行う判定部にて行う、という技術的事項を適用することの妨げにはならない。
主張ウについて
引用文献1に記載されているように、受精が正常であれば胚における前核の数は、受精後から24時間までの間に0→2→0と経時的に変化することが知られており、引用発明は、そのように経時的に変化する前核の数に基づいて判定を行うのであるから、本願発明における前核の数の差を認識できる複数の画像をもとに正常な受精を判定する手法は、引用文献2において2つの前核が胚について適切に同定されているか否かの指標であるパラメータ値NOT2PNを同定する手法について詳述されていなければ、当業者は導き得ないというものではない。
主張エについて
胚培養士などのヒトが行う場合には審判請求人が説明するような困難が伴うとしても、上記1.(3)~(6)のとおり引用文献3~6に記載されているように、細胞の形態学的特徴についての画像を用いた教師あり学習による機械学習に基づいて各種判定を行う手法は本願出願日前に周知であるから、引用発明において、卵が正常に受精しているか判定するために、前記周知技術に鑑みて、教師あり学習によって画像に写った卵の前核の数について学習した判定部を採用することに格別困難はないし、細胞の形態学的特徴が前核の数である場合には、その画像を用いても、教師あり学習による機械学習が行えないといったような、阻害要因も特段見当たらない。
また、審判請求人は、本願明細書に記載されたウェルの数が12、設定された画像取得の時間間隔が15分であることに基づいて、その結果として受精後24時間で得られる1152枚の画像について、前核の数とその経時的な変化の確認を昼夜問わず実行し、正常な受精を判定するという作業は、ヒトが行うという構成そのものが想定できない状況であると説明するが、上記ウェル数や画像取得の時間間隔は本願請求項1には記載されておらず、審判請求人の説明は請求項における記載に基づかないものである。そして、例えば、ウェル数が2であり、設定された画像取得の時間間隔が引用文献1のように1時間である場合には、受精後24時間で得られる画像数は48枚であり、これについて前核の数とその経時的な変化の確認を行い、正常な受精を判定するという作業は、ヒトであっても十分に行い得るものといえる。また、ヒトが行う代わりに、コンピュータなどによって自動化された機械やシステムを導入すれば、ヒトでは行い得ないような作業量をこなせるようになることは、周知の事項である。
主張オについて
審判請求人が言及する「特許・実用新案 審査基準」には、「第III部 第2章 第2節 進歩性」の「3.1.1 主引用発明に副引用発明を適用する動機付け」において、「主引用発明(A)に副引用発明(B)を適用したとすれば、請求項に係る発明(A+B)に到達する場合(注1)には、その適用を試みる動機付けがあることは、進歩性が否定される方向に働く要素となる。」と記載されており、そして、「(注1) 当業者の通常の創作能力の発揮である設計変更等(3.1.2(1)参照)は、副引用発明を主引用発明に適用する際にも考慮される。よって、主引用発明に副引用発明を適用する際に、設計変更等を行いつつ、その適用をしたとすれば、請求項に係る発明に到達する場合も含まれる。」と記載されている。したがって、上記判断は審査基準に反するものではない。
また、引用発明において受精後の胚における前核の数の確認により受精の判定を実施することは、細胞である胚における形態学的特徴の一つに基づいて判定を行うことであり、そのような細胞の形態学的特徴に基づいて判定を行うという「一定の課題」を解決するために、引用文献3~6によって示される周知技術、すなわち胚や卵母細胞などの細胞の形態学的特徴についての画像を用いた教師あり学習による機械学習に基づいて判定を行う手法を採用することは、上記「(iv)一定の課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計変更や設計的事項の採用」に該当するといえる。
したがって、審判請求人の上記主張ア~オはいずれも採用できない。
6.小括
本願発明は引用文献1に記載された発明に加え、引用文献1及び2に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-013774