特許拒絶査定不服審判
2019-011223
位相差フィルムの製造方法
- 審判番号
- 2019-011223
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-002542外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年08月27日
- 審決日
- 2020年07月29日
- 公報発行日
- 2020年11月27日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015- 2542「位相差フィルムの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月11日出願公開、特開2016-126292〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2015-2542号(以下、「本件出願」という。)は、平成27年1月8日)を出願日とする特許出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
平成30年10月 2日付け:拒絶理由通知書
平成30年12月 3日付け:意見書
平成30年12月 3日付け:手続補正書
令和 元年 5月17日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和 元年 8月27日付け:審判請求書
2 本願発明
本件出願の請求項1に係る発明は、平成30年12月3日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりの、次のものである(以下、「本願発明」という。)。
「 長尺状フィルムを斜め延伸する工程と、先に斜め延伸工程に供された長尺状フィルムの終端部と該長尺状フィルムと接合する新たな長尺状フィルムの始端部とを粘着テープで接合する工程とを含む位相差フィルムの製造方法であって、
該先に斜め延伸工程に供された長尺状フィルムの終端部と該長尺状フィルムと接合する新たな長尺状フィルムの始端部とが、両端部を突き合わせて接合されており、
該先に斜め延伸工程に供された長尺状フィルムの終端部と該長尺状フィルムと接合する新たな長尺状フィルムの始端部との接合ラインと長尺状フィルムの幅方向とのなす角度が-10°~10°である、位相差フィルムの製造方法。」
3 原査定の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本件出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:国際公開第2012/053218号
引用文献2:特開2014-194484号公報
引用文献3:特開2009-90650号公報
引用文献4:特開2008-238678号公報
(当合議体注:引用文献1、引用文献2のそれぞれが主引用例であり、引用文献3及び引用文献4は周知技術を示す文献である。)
第2 当合議体の判断
1 引用文献の記載及び引用発明
(1) 引用文献2
原査定の拒絶の理由において引用文献2として引用された特開2014-194484号公報(以下、「引用文献2」という。)は、本件出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある(当合議体注:下線は当合議体が付した。)。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差フィルムの製造方法および円偏光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(OLED)等の画像表示装置において、表示特性の向上や反射防止を目的として円偏光板が用いられている。円偏光板は、代表的には、偏光子と位相差フィルム(代表的にはλ/4板)とが、偏光子の吸収軸と位相差フィルムの遅相軸とが45°の角度をなすようにして積層されている。従来、位相差フィルムは、代表的には、縦方向および/または横方向に一軸延伸または二軸延伸することにより作製されているので、その遅相軸は、多くの場合、フィルム原反の横方向(幅方向)または縦方向(長尺方向)に発現する。結果として、円偏光板を作製するには、位相差フィルムを横方向または縦方向に対して45°の角度をなすように裁断し、1枚ずつ貼り合わせる必要があった。
【0003】
このような問題を解決するために、斜め方向に延伸することにより、位相差フィルムの遅相軸を斜め方向に発現させる技術が提案されている(例えば、特許文献1)。しかし、斜め方向の延伸により得られる位相差フィルムは、二軸性が高い(例えば、Nz係数が大きい)。このような位相差フィルムは、反射率の高い画像表示装置に用いられた場合に、視野角に依存して反射率や反射色相の変化が大きいという問題がある。また、現在までに提案されている技術はいずれも、位相差の配向性が低く、位相差フィルムや円偏光板の厚みが厚いという問題がある。
・・・略・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、一軸性および面内配向性が高く、斜め方向に遅相軸を有する長尺状の位相差フィルムを高い製造効率で製造し得る方法を提供することにある。
・・・略・・・
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は位相差フィルムの製造方法を提供する。本発明の位相差フィルムの製造方法は、フィルムの左右端部を、それぞれ、縦方向のクリップピッチが変化する可変ピッチ型の左右のクリップによって把持すること(把持工程)、該フィルムを予熱すること(予熱工程)、該左右のクリップ間の距離を拡大させながら、一方のクリップのクリップピッチを増大させ、かつ、他方のクリップのクリップピッチを減少させて、該フィルムを斜め延伸すること(第1の斜め延伸工程)、該左右のクリップ間の距離を拡大させながら、左右のクリップのクリップピッチが等しくなるように該一方のクリップのクリップピッチを維持または減少させ、かつ、該他方のクリップのクリップピッチを増大させて、該フィルムを斜め延伸すること(第2の斜め延伸工程)、および該フィルムを把持するクリップを解放すること(解放工程)を含む。
・・・略・・・
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フィルムの一方の側縁部を長手方向に収縮させ、かつ、他方の側縁部を長手方向に伸長させながら斜め延伸を行うことにより、一軸性および面内配向性が高く、斜め方向に遅相軸を有する長尺状の位相差フィルムを高い製造効率で得ることができる。
・・・略・・・
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の製造方法に用いられ得る延伸装置の一例の全体構成を説明する概略平面図である。
・・・略・・・
【図4】本発明の製造方法における斜め延伸の1つの実施形態を説明する模式図である。
【図5】図4に示す斜め延伸の際の延伸装置の各ゾーンとクリップピッチとの関係を示すグラフである。」
イ 「【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0010】
本発明の位相差フィルムの製造方法は、フィルムの左右端部を、それぞれ、縦方向のクリップピッチが変化する可変ピッチ型の左右のクリップによって把持すること(把持工程);該フィルムを予熱すること(予熱工程);該左右のクリップ間の距離を拡大させながら、一方のクリップのクリップピッチを増大させ、かつ、他方のクリップのクリップピッチを減少させて、該フィルムを斜め延伸すること(第1の斜め延伸工程);該左右のクリップ間の距離を拡大させながら、左右のクリップのクリップピッチが等しくなるように該一方のクリップのクリップピッチを維持または減少させ、かつ、該他方のクリップのクリップピッチを増大させて、該フィルムを斜め延伸すること(第2の斜め延伸工程);および該フィルムを把持するクリップを解放すること(解放工程);を含む。以下、各工程について詳細に説明する。
【0011】
A.把持工程
最初に、図1~図3を参照して、本工程を含む本発明の製造方法に用いられ得る延伸装置について説明する。図1は、本発明の製造方法に用いられ得る延伸装置の一例の全体構成を説明する概略平面図である。図2および図3は、それぞれ、図1の延伸装置においてクリップピッチを変化させるリンク機構を説明するための要部概略平面図であり、図2はクリップピッチが最小の状態を示し、図3はクリップピッチが最大の状態を示す。延伸装置100は、平面視で、左右両側に、フィルム把持用の多数のクリップ20を有する無端ループ10Lと無端ループ10Rとを左右対称に有する。なお、本明細書においては、フィルムの入口側から見て左側の無端ループを左側の無端ループ10L、右側の無端ループを右側の無端ループ10Rと称する。左右の無端ループ10L、10Rのクリップ20は、それぞれ、基準レール70に案内されてループ状に巡回移動する。左側の無端ループ10R(当合議体注:「10R」は「10L」の誤記である。)は反時計廻り方向に巡回移動し、右側の無端ループ10Rは時計廻り方向に巡回移動する。延伸装置においては、シートの入口側から出口側へ向けて、把持ゾーンA、予熱ゾーンB、第1の斜め延伸ゾーンC、第2の斜め延伸ゾーンD、および解放ゾーンEが順に設けられている。
・・・略・・・
【0012】
把持ゾーンAおよび予熱ゾーンBでは、左右の無端ループ10R、10Lは、延伸対象となるフィルムの初期幅に対応する離間距離で互いに略平行となるよう構成されている。第1の斜め延伸ゾーンCおよび第2の斜め延伸ゾーンDでは、予熱ゾーンBの側から解放ゾーンEに向かうに従って左右の無端ループ10R、10Lの離間距離が上記フィルムの延伸後の幅に対応するまで徐々に拡大する構成とされている。解放ゾーンEでは、左右の無端ループ10R、10Lは、上記フィルムの延伸後の幅に対応する離間距離で互いに略平行となるよう構成されている。
【0013】
左側の無端ループ10Lのクリップ(左側のクリップ)20および右側の無端ループ10Rのクリップ(右側のクリップ)20は、それぞれ独立して巡回移動し得る。例えば、左側の無端ループ10Lの駆動用スプロケット11、12が電動モータ13、14によって反時計廻り方向に回転駆動され、右側の無端ループ10Rの駆動用スプロケット11、12が電動モータ13、14によって時計廻り方向に回転駆動される。その結果、これら駆動用スプロケット11、12に係合している駆動ローラ(図示せず)のクリップ担持部材30に走行力が与えられる。これにより、左側の無端ループ10Lは反時計廻り方向に巡回移動し、右側の無端ループ10Rは時計廻り方向に巡回移動する。左側の電動モータおよび右側の電動モータを、それぞれ独立して駆動させることにより、左側の無端ループ10Lおよび右側の無端ループ10Rをそれぞれ独立して巡回移動させることができる。
【0014】
さらに、左側の無端ループ10Lのクリップ(左側のクリップ)20および右側の無端ループ10Rのクリップ(右側のクリップ)20は、それぞれ可変ピッチ型である。すなわち、左右のクリップ20、20は、それぞれ独立して、移動に伴って縦方向(MD)のクリップピッチ(クリップ間距離)が変化し得る。可変ピッチ型は、任意の適切な構成により実現され得る。
・・・略・・・
【0016】
上記のような延伸装置を用いてフィルムの斜め延伸を行うことにより、斜め方向(例えば、縦方向に対して45°の方向)に遅相軸を有する位相差フィルムが作製され得る。まず、把持ゾーンA(延伸装置100のフィルム取り込みの入り口)において、左右の無端ループ10R、10Lのクリップ20によって、延伸対象となるフィルムの両側縁が互いに等しい一定のクリップピッチで把持され、左右の無端ループ10R、10Lの移動(実質的には、基準レール70に案内された各クリップ担持部材30の移動)により、当該フィルムが予熱ゾーンBに送られる。
【0017】
B.予熱工程
予熱ゾーン(予熱工程)Bにおいては、左右の無端ループ10R、10Lは、上記のとおり延伸対象となるフィルムの初期幅に対応する離間距離で互いに略平行となるよう構成されているので、基本的には横延伸も縦延伸も行わず、フィルムが加熱される。
・・・略・・・
【0018】
予熱工程においては、フィルムを温度T1(℃)まで加熱する。温度T1は、フィルムのガラス転移温度(Tg)以上であることが好ましく、より好ましくはTg+2℃以上、さらに好ましくはTg+5℃以上である。一方、加熱温度T1は、好ましくはTg+40℃以下、より好ましくはTg+30℃以下である。用いるフィルムにより異なるが、温度T1は、例えば70℃~190℃であり、好ましくは80℃~180℃である。
・・・略・・・
【0020】
C.第1の斜め延伸工程
第1の斜め延伸ゾーン(第1の斜め延伸工程)Cにおいては、左右のクリップ間の距離(より具体的には、左右の無端ループ10R、10Lの離間距離)を拡大させながら、一方のクリップのクリップピッチを増大させ、かつ、他方のクリップのクリップピッチを減少させて、フィルムを斜め延伸する。このようにクリップピッチを変化させることによって左右のクリップを異なる速度で移動させ、これにより、フィルムの一方の側縁部を長手方向に伸長させ、かつ、他方の側縁部を長手方向に収縮させながら斜め延伸を行うことができる。その結果、所望の方向(例えば、長手方向に対して45°の方向)に高い一軸性および面内配向性で遅相軸を発現させることができる。
【0021】
以下、第1の斜め延伸の1つの実施形態を、図4および図5を参照しながら具体的に説明する。まず、予熱ゾーンBにおいては、左右のクリップピッチはともにP1とされている。P1は、フィルムを把持した際のクリップピッチである。次に、フィルムが第1の斜め延伸ゾーンCに入ると同時に、一方の(図示例では右側)クリップのクリップピッチの増大を開始し、かつ、他方の(図示例では左側)クリップのクリップピッチの減少を開始する。第1の斜め延伸ゾーンCにおいては、右側クリップのクリップピッチをP2まで増大させ、左側クリップのクリップピッチをP3まで減少させる。したがって、第1の斜め延伸ゾーンCの終端部(第2の斜め延伸ゾーンDの開始部)において、左側クリップはクリップピッチP3で移動し、右側クリップはクリップピッチP2で移動することとされている。なお、クリップピッチの比はクリップの移動速度の比に概ね対応し得る。よって、左右のクリップのクリップピッチの比は、フィルムの右側側縁部と左側側縁部のMD方向の延伸倍率の比に概ね対応し得る。
・・・略・・・
【0024】
上記増大するクリップピッチの変化率(P2/P1)は、好ましくは1.25~1.75、より好ましくは1.30~1.70、さらに好ましくは1.35~1.65である。また、減少するクリップピッチの変化率(P3/P1)は、例えば0.50以上1未満、好ましくは0.50~0.95、より好ましくは0.55~0.90、さらに好ましくは0.55~0.85である。クリップピッチの変化率がこのような範囲内であれば、フィルムの長手方向に対して概ね45度の方向に高い一軸性および面内配向性で遅相軸を発現させることができる。
・・・略・・・
【0026】
第1の斜め延伸工程におけるフィルムの幅方向の延伸倍率(W2/W1)は、好ましくは1.1倍~3.0倍、より好ましくは1.2倍~2.5倍、さらに好ましくは1.25倍~2.0倍である。当該延伸倍率が1.1倍未満であると、収縮させた側の側縁部にトタン状のシワが生じる場合がある。また、当該延伸倍率が3.0倍を超えると、得られる位相差フィルムの二軸性が高くなってしまい、円偏光板等に適用した場合に視野角特性が低下する場合がある。
【0027】
1つの実施形態において、第1の斜め延伸は、一方のクリップのクリップピッチの変化率と他方のクリップのクリップピッチの変化率との積が、好ましくは0.7~1.5、より好ましくは0.8~1.45、さらに好ましくは0.85~1.40となるように行われる。変化率の積がこのような範囲内であれば、一軸性および面内配向性の高い位相差フィルムが得られ得る。
【0028】
第1の斜め延伸は、代表的には、温度T2で行われ得る。温度T2は、樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)に対し、Tg-20℃~Tg+30℃であることが好ましく、さらに好ましくはTg-10℃~Tg+20℃、特に好ましくはTg程度である。用いる樹脂フィルムにより異なるが、温度T2は、例えば70℃~180℃であり、好ましくは80℃~170℃である。上記温度T1と温度T2との差(T1-T2)は、好ましくは±2℃以上であり、より好ましくは±5℃以上である。1つの実施形態においては、T1>T2であり、したがって、予熱工程で温度T1まで加熱されたフィルムは温度T2まで冷却され得る。
【0029】
D.第2の斜め延伸工程
第2の斜め延伸ゾーン(第2の斜め延伸工程)Dにおいては、左右のクリップ間の距離(より具体的には、左右の無端ループ10R、10Lの離間距離)を拡大させながら、左右のクリップのクリップピッチが等しくなるように一方の側のクリップのクリップピッチを維持または減少させ、かつ、他方の側のクリップのクリップピッチを増大させて、フィルムを斜め延伸する。このように左右のクリップピッチの差を縮小しながら、斜め延伸することにより、余分な応力を緩和しつつ、斜め方向に十分に延伸することができる。また、左右のクリップの移動速度が等しくなった状態でフィルムを解放工程に供することができるので、左右のクリップの解放時にフィルムの搬送速度等のバラつきが生じ難く、その後のフィルムの巻き取りが好適に行われ得る。
【0030】
以下、第2の斜め延伸の1つの実施形態を、図4および図5を参照しながら具体的に説明する。まず、フィルムが第2の斜め延伸ゾーンDに入ると同時に、左側クリップのクリップピッチの増大を開始する。第2の斜め延伸ゾーンDにおいては、左側クリップのクリップピッチをP2まで増大させる。一方、右側クリップのクリップピッチは、第2の斜め延伸ゾーンDにおいてP2のまま維持される。したがって、第2の斜め延伸ゾーンDの終端部(解放ゾーンEの開始部)において、左側クリップおよび右側クリップはともに、クリップピッチP2で移動することとされている。
【0031】
上記実施形態における増大するクリップピッチの変化率(P2/P3)は、本発明の効果を損なわない限りにおいて制限はない。該変化率(P2/P3)は、例えば1.3~4.0、好ましくは1.5~3.0である。
・・・略・・・
【0034】
第2の斜め延伸工程におけるフィルムの幅方向の延伸倍率(W3/W2)は、好ましくは1.1倍~3.0倍、より好ましくは1.2倍~2.5倍、さらに好ましくは1.25倍~2.0倍である。当該延伸倍率が1.1倍未満であると、収縮させた側の側縁部にトタン状のシワが生じる場合がある。また、当該延伸倍率が3.0倍を超えると、得られる位相差フィルムの二軸性が高くなってしまい、円偏光板等に適用した場合に視野角特性が低下する場合がある。また、第1の斜め延伸工程および第2の斜め延伸工程における幅方向の延伸倍率(W3/W1)は、上記と同様の観点から、好ましくは1.2倍~4.0倍であり、より好ましくは1.4倍~3.0倍である。
・・・略・・・
【0043】
第2の斜め延伸は、代表的には、温度T3で行われ得る。温度T3は、温度T2と同等であり得る。
【0044】
E.解放工程
最後に、フィルムを把持するクリップを解放して、位相差フィルムが得られる。必要に応じて、フィルムを熱処理して延伸状態を固定し、冷却した後にクリップを解放する。
【0045】
熱処理は、代表的には、温度T4で行われ得る。温度T4は、延伸されるフィルムによって異なり、T3≧T4の場合も、T3<T4の場合もあり得る。一般的に、フィルムが非晶性材料である場合はT3≧T4であり、結晶性材料である場合はT3<T4にすることで結晶化処理を行う場合もある。T3≧T4の場合、温度T3とT4の差(T3-T4)は好ましくは0℃~50℃である。
・・・略・・・
【0046】
熱固定されたフィルムは、通常Tg以下まで冷却され、クリップを解放後、フィルム両端のクリップ把持部分をカットし巻き取られる。
【0047】
F.延伸対象のフィルムおよび延伸により得られる位相差フィルム
本発明の製造方法(実質的には、上記A項~E項に記載の延伸方法)に好適に用いられるフィルムとしては、位相差フィルムとして用いられ得る任意の適切なフィルムが挙げられる。フィルムを構成する材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂・・・略・・・である。」
ウ 「【実施例】
【0060】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0061】
(1)配向角(遅相軸の発現方向)
実施例および比較例で得られた位相差フィルムの中央部を、一辺が当該フィルムの幅方向と平行となるようにして幅50mm、長さ50mmの正方形状に切り出して試料を作成した。この試料を、ミュラーマトリクス・ポラリメーター(Axometrics社製 製品名「Axoscan」)を用いて測定し、波長550nm、23℃における配向角θを測定した。なお、配向角θは測定台に試料を平行に置いた状態で測定した。
(2)面内位相差Re
上記(1)と同様にして、Axometrics社製 製品名「Axoscan」を用いて、波長550nm、23℃で測定した。
(3)厚み方向位相差Rth
上記(1)と同様にして、Axometrics社製 製品名「Axoscan」を用いて、波長550nm、23℃で測定した。
(4)Nz係数
式:Nz=Rth/Reから算出した。
(5)視野角特性
有機ELディスプレイ(LG社製、製品名:15EL9500)より有機ELパネルを取り出し、この有機ELパネルに貼り付けられている偏光板を剥がした。実施例および比較例で得られた位相差フィルムの配向角と偏光板の吸収軸が45°となるように粘着剤で貼り合せた円偏光板を作製した。この円偏光板を偏光板を剥がした有機ELパネルに、粘着剤で貼り付けた。円偏光板が貼られた有機ELパネルを様々な方向から目視観察し、その反射率・反射色相を確認した。評価基準は以下のとおりである:
○・・・ディスプレイを様々な方向から見ても、反射色相や反射率が概ね一定である
△・・・ディスプレイを見る角度が深くなると、反射色相や反射率が変化しているのがわかる
×・・・ディスプレイを見る角度によって、反射色相や反射率が変化するのがわかる
(6)シワ
実施例および比較例で得られた位相差フィルムの状態を目視にて確認した。判断基準は以下のとおりである:
○・・・フィルム全体にわたってシワも波打ちも認められない
△・・・フィルムの幅方向端部は、トタン状にシワが有り波打っているが、中央部は波打ちはない
×・・・トタン状にシワが入り、フィルムが波打っている。
(7)厚み
マイクロゲージ式厚み計(ミツトヨ社製)を用いて測定した。
(8)複屈折(Δn)
上記Axometrics社製 製品名「Axoscan」で得られたRe値を、上記マイクロゲージ式厚み計(ミツトヨ社製)を得られた膜厚で割ることで求めた。
【0062】
<実施例1>
(ポリカーボネート樹脂フィルムの作製)
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置を用いて重合を行った。9,9-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BHEPF)、イソソルビド(ISB)、ジエチレングリコール(DEG)、ジフェニルカーボネート(DPC)、および酢酸マグネシウム4水和物を、モル比率でBHEPF/ISB/DEG/DPC/酢酸マグネシウム=0.348/0.490/0.162/1.005/1.00×10-5になるように仕込んだ。反応器内を十分に窒素置換した後(酸素濃度0.0005~0.001vol%)、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。
【0063】
第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、反応液をストランドの形態で抜出し、回転式カッターでペレット化を行い、BHEPF/ISB/DEG=34.8/49.0/16.2[mol%]の共重合組成のポリカーボネート樹脂Aを得た。このポリカーボネート樹脂の還元粘度は0.430dL/g、ガラス転移温度は128℃であった。
【0064】
得られたポリカーボネート樹脂を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(いすず化工機社製、スクリュー径25mm、シリンダー設定温度:220℃)、Tダイ(幅900mm、設定温度:220℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み150μmのポリカーボネート樹脂フィルムを作製した。
【0065】
(予熱ならびに第1および第2の斜め延伸工程)
上記のようにして得られたポリカーボネート樹脂フィルムを、図1~図3に示すような装置を用い、図5に示すようなクリップピッチのプロファイルで、予熱処理、第1の斜め延伸および第2の斜め延伸処理に供し、位相差フィルムを得た。具体的には、以下のとおりである:ポリカーボネート樹脂フィルム(厚み150μm、幅(W1)765mm)を延伸装置の予熱ゾーンで145℃に予熱した。予熱ゾーンにおいては、左右のクリップのクリップピッチ(P1)は125mmであった。次に、フィルムが第1の斜め延伸ゾーンCに入ると同時に、右側クリップのクリップピッチの増大および左側クリップのクリップピッチの減少を開始した。第1の斜め延伸ゾーンCの終端部における右側クリップのクリップピッチの変化率(P2/P1)は1.42であり、左側クリップのクリップピッチの変化率(P3/P1)は0.72であった。なお、第1の斜め延伸は138℃で行った。第1の斜め延伸後のフィルム幅(W2)は1092mmであった(TD延伸倍率(W2/W1)=1.45倍)。次に、フィルムが第2の斜め延伸ゾーンDに入ると同時に、左側クリップのクリップピッチの増大を開始し、P3からP2まで増大させた。第2の斜め延伸ゾーンDにおける左側クリップのクリップピッチの変化率(P2/P3)は1.97であった。一方、右側クリップのクリップピッチは、第2の斜め延伸ゾーンDにおいてP2のまま維持した。なお、第2の斜め延伸は138℃で行った。第2の斜め延伸後のフィルム幅(W3)は1419mmであった。また、上記第1の斜め延伸工程および第2の斜め延伸工程における幅方向への延伸倍率(W3/W1)は、1.9倍であった。
【0066】
(解放工程)
次いで、解放ゾーンにおいて、125℃で60秒間フィルムを保持して熱固定を行った。熱固定されたフィルムを、100℃まで冷却後、左右のクリップを解放した。
【0067】
以上のようにして、位相差フィルム(厚み55μm、幅1419mm)を得た。得られた位相差フィルムを上記(1)~(8)の評価に供した。結果を表1に示す。
・・・略・・・
【0079】
【表1】
(当合議体注:便宜のため、表1を90度回転した。)
【0080】
<評価>
上記表に示されるとおり、本発明の製造方法によって得られた長尺状の位相差フィルムは、長手方向に対しておよそ45度の方向に遅相軸を有し、およそ140nmの面内位相差を有することから、長手方向または幅方向に吸収軸を有する長尺状の偏光子とのロールトゥロールプロセスで積層することにより、高い生産効率で円偏光板を形成できる。また、本発明の製造方法によって得られた位相差フィルムは、1.3以下のNz係数を有し、一軸性が高いことがわかる。さらに、複屈折(Δn)が高く、面内配向性にも優れている。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の製造方法により得られる位相差フィルムは、円偏光板に好適に用いられ、結果として、液晶表示装置(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(OLED)等の画像表示装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0082】
10L 無端ループ
10R 無端ループ
20 クリップ
30 クリップ担持部材
70 基準レール
90 ピッチ設定レール
100 延伸装置」
エ 「【図1】
」
オ 「【図4】
」
カ 「【図5】
」
(2) 引用発明
引用文献2の【0010】に記載の「位相差フィルムの製造方法」は、【図1】に看取される「延伸装置」や【0064】に記載の「ポリカーボネート樹脂フィルム」により具体化されるものである。
そうしてみると、引用文献2には、次の「位相差フィルムの製造方法」の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。
「 フィルムの左右端部を、それぞれ、縦方向のクリップピッチが変化する可変ピッチ型の左右のクリップによって把持する把持工程と、
フィルムを予熱する予熱工程と、
左右のクリップ間の距離を拡大させながら、一方のクリップのクリップピッチを増大させ、かつ、他方のクリップのクリップピッチを減少させて、フィルムを斜め延伸する第1の斜め延伸工程と、
左右のクリップ間の距離を拡大させながら、左右のクリップのクリップピッチが等しくなるように一方のクリップのクリップピッチを維持させ、かつ、他方のクリップのクリップピッチを増大させて、フィルムを斜め延伸する第2の斜め延伸工程と、
フィルムを把持するクリップを解放する解放工程、を含む、
位相差フィルムの製造方法であって、
位相差フィルムの製造方法に用いられる延伸装置は、平面視で、左右両側に、フィルム把持用の多数のクリップを有する無端ループを左右対称に有し、
フィルムは、ポリカーボネート樹脂を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機、Tダイ、チルロール及び巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて作製された厚み150μmのポリカーボネート樹脂フィルムである、
位相差フィルムの製造方法。」
(3) 対比
本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりである。
ア 引用発明の「フィルムは、ポリカーボネート樹脂を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機、Tダイ、チルロール及び巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて作製された厚み150μmのポリカーボネート樹脂フィルムであ」る。
上記フィルムの成膜装置の構成からみて、引用発明の「フィルム」は,長尺状のものである。
イ また、引用発明の「位相差フィルムの製造方法」は、「左右のクリップ間の距離を拡大させながら、一方のクリップのクリップピッチを増大させ、かつ、他方のクリップのクリップピッチを減少させて、フィルムを斜め延伸する第1の斜め延伸工程と」、「左右のクリップ間の距離を拡大させながら、左右のクリップのクリップピッチが等しくなるように一方のクリップのクリップピッチを維持させ、かつ、他方のクリップのクリップピッチを増大させて、フィルムを斜め延伸する第2の斜め延伸工程」具備する。
上記「第1の斜め延伸工程」及び「第2の斜め延伸工程」からみて、引用発明の「位相差フィルムの製造方法」は、フィルムを斜め延伸する工程を含むものである。
ウ 以上ア及びイからみて、引用発明の「位相差フィルムの製造方法」は、本願発明の、「長尺状フィルムを斜め延伸する工程を含む」とされる、「位相差フィルムの製造方法」に相当する。
(4) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明と引用発明は,次の構成で一致する。
「長尺状フィルムを斜め延伸する工程を含む位相差フィルムの製造方法。」
イ 相違点
本願発明と引用発明は,以下の点で相違する。
(相違点)
本願発明は、「先に斜め延伸工程に供された長尺状フィルムの終端部と該長尺状フィルムと接合する新たな長尺状フィルムの始端部とを粘着テープで接合する工程」を含み、「該先に斜め延伸工程に供された長尺状フィルムの終端部と該長尺状フィルムと接合する新たな長尺状フィルムの始端部とが、両端部を突き合わせて接合されており」、「該先に斜め延伸工程に供された長尺状フィルムの終端部と該長尺状フィルムと接合する新たな長尺状フィルムの始端部との接合ラインと長尺状フィルムの幅方向とのなす角度が-10°~10°である」のに対して、
引用発明は、そのような工程を含んでいない点。
(5) 判断
上記相違点について検討する。
ア 引用発明における「フィルムは、ポリカーボネート樹脂を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機、Tダイ、チルロール及び巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて作製された厚み150μmのポリカーボネート樹脂フィルムであ」る。
そうすると、引用発明の「位相差フィルムの製造方法」においては、「フィルム成膜装置」の「巻取機」により一旦巻き取られた「ポリカーボネート樹脂フィルム」を繰り出した後、「把持工程」~「解放工程」に供給する必要があるから、引用発明の「把持工程」~「解放工程」は、ポリカーボネート樹脂フィルムの製造ラインとは別の、オフライン(工程)であると理解できる。
また、引用発明の「位相差フィルムの製造方法に用いられる延伸装置は、平面視で、左右両側に、フィルム把持用の多数のクリップを有する無端ループを左右対称に有し」たものである。
そうすると、引用発明の「位相差フィルムの製造方法」は、「延伸装置」に「ポリカーボネート樹脂フィルム」を連続的に送り込んで、位相差フィルムを製造することに適したものと理解できる。
イ ここで、「フィルムを延伸して位相差フィルムを製造する工程を、(原反)フィルムを製造する工程と別のオフライン(工程)とした時、オフライン(工程)を効率よく行うために、先行する(原反)フィルムと後行の(原反)フィルムの端部同士を接合すること」は、当業者の技術常識である(例えば、原査定において引用された引用文献1(国際公開第2012/053218号)の[0004]、[0005]、引用文献4(特開2008-238678号公報)の【0003】、【0004】、引用文献3(特開2009-90650号公報)の【0003】~【0005】等を参照。)。
また、位相差フィルムの製造方法において、「(原反)フィルムの端部同士を接合する際に、先行する(原反)フィルムの後端部と後行の(原反)フィルムの先端部とを突き合わせて粘着テープで接合すること、(原反)フィルムの端部同士の接合ラインの方向を(原反)フィルムの幅方向と(平行に)すること」は、本件出願の出願前に、普通に採用されている周知慣用技術である(例えば、原査定において引用された引用文献4の【0027】、図8や図2、図4、引用文献3の図2等、あるいは、本件出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開2008-238679号公報の【0031】、図2、図4、特開2009-233890号公報の図4等参照。)。
ウ 引用発明の【発明が解決しようとする課題】は、「一軸性および面内配向性が高く、斜め方向に遅相軸を有する長尺状の位相差フィルムを高い製造効率で製造し得る方法を提供すること」(【0005】)である。
そうすると、上記イの技術常識を心得る当業者が、「位相差フィルムを高い製造効率で製造」することを課題とし、「フィルム把持用の多数のクリップを有する無端ループ」を用いる引用発明において、先行するフィルム(ポリカーボネート樹脂フィルム)と後行のフィルムの端部同士を接合して位相差フィルムの製造効率を高めることには、動機付けがあると理解できる。
以上勘案すると、高い製造効率に着目する当業者が、引用発明において、上記周知慣用技術を採用し、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、容易になし得たことである。
(6) 本願発明の効果について
本願発明の効果に関して、本件出願の明細書の【0007】には、「本発明の位相差フィルムの製造方法では、長尺状フィルムの接合工程において長尺状フィルムの幅方向と接合ラインとのなす角度が-10°~10°となるよう2つ長尺状フィルムを配置して、粘着テープを貼り付ける。このような角度で接合された長尺状フィルムを用いることにより、接合した長尺状フィルムの分離等の不具合なしで、斜め方向に遅相軸を有する位相差フィルムを高い製造効率で得ることができる。」、「また、得られる位相差フィルムにおいては、接合された長尺状フィルムごとに位相差特性が異なるという不具合も防止され得る。そのため、位相差特性が均一な位相差フィルムを連続して製造することができる。」と記載されている。
しかしながら、引用文献2の【図4】の「本発明の製造方法における斜め延伸の1つの実施形態を説明する模式図」からも理解されるように、引用発明の左右のクリップの把持による斜め延伸の原理によれば、ポリカーボネート樹脂フィルムは常に左右のクリップにより把持される方向に延伸される。そうすると、接合ラインを、左右のクリップ(20)により把持される方向に対応する、延伸前の長尺状のポリカーボネート樹脂フィルムの幅方向(同【図4】参照。)とすることによって、ポリカーボネート樹脂フィルムの延伸方向と接合ラインとを常に平行とし、斜め延伸しても接合部の分離が生じにくくなることは、当業者にとって予測可能なことである。また、高い製造効率が得られる、位相差特性が均一な位相差フィルムを連続して製造することができるなどの効果は、引用文献2の【0005】,【0007】,【0061】,【0079】【表1】及び【0080】の記載が示唆する範囲内のものである(当合議体注:延伸による位相差フィルム製造技術に関わる当業者であれば、引用文献1の長尺状ポリマーフィルムの製造方法の内容についても熟知しているところ、引用文献1の請求の範囲、[0045]~[0048]、実施例、[図3A]、[図3B]等には、原反フィルムの接合ラインと原反フィルムの幅方向とのなす角度φ0を-10°超25°以下の範囲とし、(斜め延伸後の)ポリマーフィルムの接合ラインと前記ポリマーフィルムの幅方向とのなす角度φ1と、前記ポリマーフィルムの面内遅相軸と前記ポリマーフィルムの幅方向とのなす角度θ1(40≦θ1≦50°)とが|φ1-θ1|≦10°を満たすように製造された位相差フィルムにおいては接合部に起因する破断が起こりにくいことが記載・示唆されている。)
(7) 請求人の主張について
ア 請求人は、審判請求書「(3)本願発明が特許されるべき理由」「(3-2)本願発明と引用文献2~4に記載の発明との対比」において、「通常、フィルムを接合して延伸する工程を含む製造方法では、フィルムを延伸する力が加わる方向と、フィルム同士を接合した接合ラインとが一致するよう接合されます。このことは、引用文献3および4の記載からも明らかです。引用文献3および4はいずれもフィルムを幅方向に延伸することを開示するものです(引用文献3の請求項1、引用文献4の請求項1)。そのため、接合ラインが横方向(TD方向)となるよう先行するフィルムと後行するフィルムとが接合されます(引用文献3の図5、引用文献4の図4)。」、「また、斜め延伸を行う上記引用文献1では延伸後に得られるポリマーフィルムの面内配向角θ1がフィルム幅方向に対して10°~80°となるよう設定すること、および、ポリマーフィルムの面内配向角θ1と接合ラインとポリマーフィルムの幅方向とのなす角度φ1との差が10°以下となるようにすることことが開示されています(引用文献1の請求項1および0031段)。このように、延伸処理されるフィルムの接合は接合ラインと延伸方向とができるだけ一致するよう行われます。」、「したがって、当業者であれば、引用文献2に開示されるようなフィルムを斜め延伸する位相差フィルムの製造方法では、斜め延伸する方向と接合ラインとが一致するよう配置します。」、「上記の通り、本願発明は斜め延伸工程を含むにも関わらず、先に斜め延伸工程に供された長尺状フィルムの終端部と該長尺状フィルムと接合する新たな長尺状フィルムの始端部との接合ラインと長尺状フィルムの幅方向とのなす角度を-10°~10°とするものです。当業者であれば、斜め延伸工程を含む位相差フィルムの製造方法において、接合ラインとフィルム幅方向とのなす角度を-10°~10°とする動機付けがありません。したがって、本願発明は引用文献2~4の記載から当業者が容易に想到することができたものではありません。」旨主張している。
しかしながら、上記(5)ア~ウで述べたとおり、(原反)フィルムの端部同士を接合する際に、(原反)フィルムの端部同士の接合ラインを(原反)フィルムの幅方向と(平行に)することは、周知慣用の技術(構成)であり、オフライン(工程)の引用発明において、そのような周知慣用の技術(構成)を採用することは、効率的な製造を考える当業者が容易になし得たことである。
請求人は、「通常、フィルムを接合して延伸する工程を含む製造方法では、フィルムを延伸する力が加わる方向と、フィルム同士を接合した接合ラインとが一致するよう接合され」ると主張するところ、上記(6)で述べた引用発明のフィルム幅方向左右のクリップの把持による斜め延伸の原理を心得た当業者であれば、引用発明において、フィルムの端部同士を接合する際、接合ラインの方向をフィルムの幅方向と(平行に)する構成が、フィルムを延伸する力が加わる方向と接合ラインとが一致する点から好ましいと理解し、これを採用することができる。仮に、引用発明において、フィルムの端部同士を接合するときにフィルムの接合ラインを斜め延伸後の遅相軸方向に対応する斜め方向(例えば45°)とすると、フィルムを延伸する力が実際に加わっているときに、かえって、力が加わる方向と接合ラインの方向が一致せず、破断・分離の点で好ましくない。請求人の上記主張において挙げられている引用文献1の実施例1においても、やはり「原反フィルムの接合ライン(f)と原反フィルムの幅手方向(a)とのなす角φ0を0°」(引用文献1の[0320]、図3A参照。)としている。
以上のとおり、請求人の上記主張は、引用発明のフィルム幅方向左右のクリップの把持による斜め延伸の原理を何ら考慮しないものであって、これを採用することはできない。
イ また、請求人は、「(2)本願発明の要旨および効果」において、「本願発明の製造方法では、先に斜め延伸工程に供された長尺状フィルム(以下、先行する長尺状フィルムともいう)の終端部と、該長尺状フィルムと接合する新たな長尺状フィルムの始端部とが両端部を突き合わせるよう接合されます。両端部が突合せで接合されることにより、長尺状フィルムの接合部分の厚みが他の部分に比べて過度に厚くなることが防止されます。そのため、斜め延伸工程への悪影響(例えば、得られる位相差フィルムでの位相差特性のバラつき)を防止することができます(本願明細書の0015段)。」旨主張している。
しかしながら、「両端部が突合せで接合される」ことにより、「長尺状フィルムの接合部分の厚みが他の部分に比べて過度に厚くなることが防止され」る、「そのため、斜め延伸工程への悪影響(例えば、得られる位相差フィルムでの位相差特性のバラつき)を防止することができ」るとの効果は、本件出願の出願当初の明細書等の記載に基づかない主張である(自明の事項とも認められない。)。仮にそうでないとしても、引用発明において、上記の周知慣用の技術に基づき、両端部を突き合わせて接合する構成としたものにおける自明な効果にすぎない。
第3 まとめ
本願発明は,引用文献2に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、本件出願の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-011223