特許拒絶査定不服審判
2019-009479
改質フライアッシュの製造方法およびフライアッシュ原粉の品質判断方法
- 審判番号
- 2019-009479
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-132742外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年07月16日
- 審決日
- 2020年08月18日
- 公報発行日
- 2020年10月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社フジイ・ケミカルズ
- 【請求人代理人】特許業務法人ライトハウス国際特許事務所
- 【請求人】株式会社藤井基礎設計事務所
- 【請求人代理人】特許業務法人ライトハウス国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (B09B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2018-132742「改質フライアッシュの製造方法およびフライアッシュ原粉の品質判断方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 1月16日出願公開、特開2020- 6355、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成30年 7月12日を出願日とする出願であって、同年12月27日付けで拒絶理由が通知され、平成31年 3月 8日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年 4月 5日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、令和1年 7月16日付けで本件拒絶査定不服審判の請求がされ、同年 7月17日付けで甲第1号証を添付して手続補足書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願請求項1~3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明3」という。)は、平成31年 3月 8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
フライアッシュの分級JIS灰およびフライアッシュの非JIS灰からなる原粉と水とを混合してなるフライアッシュスラリーを攪拌により均質化する工程と、
均質化したフライアッシュスラリーのpHをpH7~pH8に維持する工程と、
フライアッシュスラリーに含まれる凝集粒子および集塊粒子を、遠心力により微粒子とする工程と、
前記微粒子とする工程を経たフライアッシュスラリーから、浮遊分の浮灰を除外する工程と、
前記浮灰を除外する工程を経たフライアッシュスラリーから、マグネットキャッチャーにより磁性を有する粒子を除外する工程と、
前記磁性を有する粒子を除外する工程を経たフライアッシュスラリーを、動圧ろ過により分級する工程を含む、改質フライアッシュの製造方法。
【請求項2】
前記pHを維持するために強アルカリと強酸とを使用し、
前記強アルカリは、生コンクリート工場においてプラント水処理設備から発生する強アルカリの上澄み液であり、
前記強酸は、生コンクリート工場においてプラント水処理設備に使用する硫酸である、請求項1に記載の改質フライアッシュの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の改質フライアッシュの製造方法に用いる装置であって、
フライアッシュと混合する水、ならびに、フライアッシュスラリーに添加する強アルカリおよび強酸の配合によるpHの調整を、改質フライアッシュスラリー貯蔵槽に設置された密度計からの信号の配信により検知して制御部にて管理する構成とする、改質フライアッシュの製造装置。」
第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、本願発明1~3は、引用文献1に記載される発明、引用文献2~3に記載される事項及び本願出願日における周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2009-165903号公報
引用文献2:特開2010-23018号公報
引用文献3:実願平1-27075号(実開平2-117039号)のマイクロフィルム
第4 当審の判断
1 各引用文献の記載事項等
(1)引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載される発明
(ア)引用文献1には、以下(1a)~(1e)の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「…」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭灰の脱じん処理システムに設けられる微粒径石炭灰生成装置において、
脱じん塔シックナーから排出される酸性のアンダーフロー水を貯留するとともに、中和処理剤の混合により、前記アンダーフロー水の沈殿灰中に微粒径のフライアッシュを生成させる生成用タンクを備えたことを特徴とする微粒径石炭灰生成装置。
…
【請求項6】
石炭灰の脱じん処理システムにおける微粒径石炭灰生成方法において、
生成用タンクに、脱じん塔シックナーから排出される酸性のアンダーフロー水を貯留するとともに、中和処理剤を混合させることにより、前記アンダーフロー水の沈殿灰中に微粒径のフライアッシュを生成させることを特徴とする微粒径石炭灰生成方法。」
(1b)「【0004】
微粒径のフライアッシュは、微粒であるために、研磨剤等に用いる等ができるため、それよりも大径なものに比してより用途を広げることができ、資源の再利用のために生成が要望されている。
…
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、微粒径のフライアッシュを容易に生成することができなかった。従来における微粒径のフライアッシュの生成は、クリンカをミル等で粉砕して生成し、その後、径別に選別する等の多くの工程を必要としており、手間とコストがかかった。従来の粉砕では、直径20μm以下のものは生成できないとともに、一様な微粒径のフライアッシュを得ることが困難であった。
【0007】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、簡単な構成で微粒径のフライアッシュを容易に生成することができる微粒径石炭灰生成装置および方法を提供することを目的とする。」
(1c)「【0017】
(実施の形態)
図1は、この発明の実施の形態による微粒径石炭灰生成装置を含む脱じん処理システムの全体構成図である。脱じん処理システム100は、脱じん塔101に供給された水により水と混合した石炭灰(フライアッシュ)が脱じん塔シックナー102に排出される。脱じん塔シックナー102の下部に接続されたポンプ103により、アンダーフロー水(排水シックナー)が抜き出され、バルブ104により、一定量が生成用タンク110に抜き出され、その他は、クリンカ灰沈殿槽105に排出される。
【0018】
クリンカ灰沈殿槽105と脱じん塔シックナー102との間は接続され、ポンプ103によりアンダーフロー水が循環するようになっている。脱じん塔シックナー102からオーバーフローした排水シックナーは、オーバーフロータンク106に貯留され、ポンプ107によって脱じん塔シックナー102に水を供給する。
【0019】
生成用タンク110は、図示の例では、固液分離用タンク111と、排水張込タンク112とを有している。これら固液分離用タンク111と、排水張込タンク112には、ブローピット108が接続され、ブローピットポンプ108aは水成分を排水処理装置に排出する。そして、これら固液分離用タンク111と、排水張込タンク112には、それぞれアンダーフロー水が注入されるとともに、苛性ソーダタンク113から苛性ソーダ(NaOH)が混入される。
【0020】
生成用タンク110に注入されるアンダーフロー水には、不図示の電気集じん器を通過した微細なフライアッシュが含まれている。これに中和処理剤(例えば、苛性ソーダ)を加えると、中和時の作用によりフライアッシュが微粒径に生成され、この微粒径フライアッシュが沈殿分離する。
【0021】
生成用タンク110に沈殿した微粒径フライアッシュは、所定の期間毎に生成用タンク110の底部にプロベスター120のホース120aを接続して抜き出す。抜き出した後スラッジ仮置き場122に搬出され、乾燥後に微粒径フライアッシュとして搬出される。
【0022】
図2は、脱じん塔排水の処理タンクを示す図である。この図に示す処理タンク200は、図1に記載の脱じん塔シックナー102および苛性ソーダタンク113と、生成用タンク110との間に設けることができる。図示の処理タンク200は、中和タンク201と凝集タンク202とによって構成されている。
【0023】
脱じん塔シックナー102から供給されるアンダーフロー水(UF水)は、中和タンク201に供給されるとともに、再度、脱じん塔シックナー102に送出される経路を有する。バルブ210を介して中和タンク201にアンダーフロー水が注入される。また、苛性ソーダタンク113からの苛性ソーダが流量計211およびバルブ212を介して所定量注入される。中和タンク201に注入された、これらアンダーフロー水と苛性ソーダは、攪拌機213によって攪拌により混合された後、液面の上部から排出ダクト214を介して凝集タンク202に送出される。
【0024】
アンダーフロー水は、石炭成分に起因する金属イオンが含まれ、pH1.0程度の酸性水であり、微細なフライアッシュが含まれた状態で中和タンク201に注入される。中和タンク201に対する苛性ソーダの注入量を流量計211を見ながら監視する。そして、中和タンク201から送出されたアンダーフロー水は、凝集タンク202において、アンダーフロー水中においてフライアッシュが凝集される。この凝集タンク202には、攪拌機220およびpH計221が設けられ、pH7.0程度に中和される。凝集タンク202におけるアンダーフロー水は、液面上部からダクト222を介して生成用タンク110に送出される。」
(1d)「【図1】
」
(1e)「【図2】
」
(イ)前記(ア)(1a)によれば、引用文献1には、石炭灰の脱じん処理システムにおける「微粒径石炭灰生成方法」が記載されており、当該「微粒径石炭灰生成方法」は、生成用タンクに、脱じん塔シックナーから排出される酸性のアンダーフロー水を貯留するとともに、中和処理剤を混合させることにより、前記アンダーフロー水の沈殿灰中に微粒径のフライアッシュを生成させるものである。
具体的には、前記「微粒径石炭灰生成方法」は、前記(ア)(1c)、(1d)、(1e)によれば、脱じん塔101に供給された水により水と混合した石炭灰(フライアッシュ)が脱じん塔シックナー102に排出され、脱じん塔シックナー102の下部に接続されたポンプ103により、アンダーフロー水(排水シックナー)が抜き出され、バルブ104により、一定量が生成用タンク110に抜き出され、その他は、クリンカ灰沈殿槽105に排出されるものであり、
生成用タンク110は、固液分離用タンク111と、排水張込タンク112とを有し、これら固液分離用タンク111と排水張込タンク112には、ブローピット108が接続され、ブローピットポンプ108aは水成分を排水処理装置に排出するものであり、これら固液分離用タンク111と、排水張込タンク112には、それぞれアンダーフロー水が注入されるとともに、苛性ソーダタンク113から苛性ソーダ(NaOH)が混入されるものである。
そして、生成用タンク110に注入されるアンダーフロー水には、電気集じん器を通過した微細なフライアッシュが含まれており、これに中和処理剤を加えると、中和時の作用によりフライアッシュが微粒径に生成され、この微粒径フライアッシュが沈殿分離するのであるが、生成用タンク110に沈殿した微粒径フライアッシュは、所定の期間毎に生成用タンク110の底部にプロベスター120のホース120aを接続して抜き出し、抜き出した後スラッジ仮置き場122に搬出され、乾燥後に微粒径フライアッシュとして搬出されるものである。
更に、前記「微粒径石炭灰生成方法」は、脱じん塔シックナー102および苛性ソーダタンク113と、生成用タンク110との間に処理タンク200を設けるものであり、処理タンク200は、中和タンク201と凝集タンク202とによって構成され、脱じん塔シックナー102から供給されるアンダーフロー水は、中和タンク201に供給されるとともに、再度、脱じん塔シックナー102に送出される経路を有し、バルブ210を介して中和タンク201にアンダーフロー水が注入され、また、苛性ソーダタンク113からの苛性ソーダが流量計211およびバルブ212を介して所定量注入されるものであり、中和タンク201に注入された、これらアンダーフロー水と苛性ソーダは、攪拌機213によって攪拌により混合された後、液面の上部から排出ダクト214を介して凝集タンク202に送出され、中和タンク201から送出されたアンダーフロー水は、凝集タンク202において、アンダーフロー水中においてフライアッシュが凝集されるものであり、この凝集タンク202には、攪拌機220およびpH計221が設けられ、pH7.0程度に中和されるものであり、凝集タンク202におけるアンダーフロー水は、液面上部からダクト222を介して生成用タンク110に送出されるものである。
(ウ)前記(イ)によれば、引用文献1には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「引用発明1」という)。
「生成用タンクに、脱じん塔シックナーから排出される酸性のアンダーフロー水を貯留するとともに、中和処理剤を混合させることにより、前記アンダーフロー水の沈殿灰中に微粒径のフライアッシュを生成させる、微粒径石炭灰生成方法であって、
脱じん塔に供給された水により水と混合した石炭灰(フライアッシュ)が脱じん塔シックナーに排出され、脱じん塔シックナーの下部に接続されたポンプにより、アンダーフロー水(排水シックナー)が抜き出され、バルブにより、一定量が生成用タンクに抜き出され、その他は、クリンカ灰沈殿槽に排出され、
生成用タンクは、固液分離用タンクと、排水張込タンクとを有し、これら固液分離用タンクと排水張込タンクには、ブローピットが接続され、ブローピットポンプは水成分を排水処理装置に排出するものであり、これら固液分離用タンクと、排水張込タンクには、それぞれアンダーフロー水が注入されるとともに、苛性ソーダタンクから苛性ソーダ(NaOH)が混入され、
生成用タンクに注入されるアンダーフロー水には、電気集じん器を通過した微細なフライアッシュが含まれており、これに中和処理剤を加えると、中和時の作用によりフライアッシュが微粒径に生成され、この微粒径フライアッシュが沈殿分離するのであるが、生成用タンクに沈殿した微粒径フライアッシュは、所定の期間毎に生成用タンクの底部にプロベスターのホースを接続して抜き出し、抜き出した後スラッジ仮置き場に搬出され、乾燥後に微粒径フライアッシュとして搬出されるものであり、
更に、脱じん塔シックナーおよび苛性ソーダタンクと、生成用タンクとの間に処理タンクを設け、処理タンクは、中和タンクと凝集タンクとによって構成され、脱じん塔シックナーから供給されるアンダーフロー水は、中和タンクに供給されるとともに、再度、脱じん塔シックナーに送出される経路を有し、バルブを介して中和タンクにアンダーフロー水が注入され、また、苛性ソーダタンクからの苛性ソーダが流量計およびバルブを介して所定量注入されるものであり、
中和タンクに注入された、これらアンダーフロー水と苛性ソーダは、攪拌機によって攪拌により混合された後、液面の上部から排出ダクトを介して凝集タンクに送出され、中和タンクから送出されたアンダーフロー水は、凝集タンクにおいて、アンダーフロー水中においてフライアッシュが凝集されるものであり、この凝集タンクには、攪拌機およびpH計が設けられ、pH7.0程度に中和されるものであり、凝集タンクにおけるアンダーフロー水は、液面上部からダクトを介して生成用タンクに送出される、微粒径石炭灰生成方法。」
(エ)また、前記(ア)(1a)によれば、引用文献1には、石炭灰の脱じん処理システムにおける「微粒径石炭灰生成装置」が記載されており、当該「微粒径石炭灰生成装置」は、引用発明1に係る「微粒径石炭灰生成方法」に用いるものといえる。
(オ)前記(エ)によれば、引用文献1には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「引用発明1’」という)。
「引用発明1に係る微粒径石炭灰生成方法に用いる、微粒径石炭灰生成装置。」
(2)引用文献2の記載事項
引用文献2には、以下(2a)~(2d)の記載がある。
(2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
未燃カーボンを含有する石炭灰と水からなるスラリー化した石炭灰を供給してスラリー化した石炭灰より未燃カーボンを除去する浮遊選鉱の前に、浮遊選鉱に供給する前記スラリー化した石炭灰から未燃カーボンを分離する効率を高める前処理を行うことを特徴とするスラリー化した石炭灰前処理方法。」
(2b)「【0026】
図1に示す石炭灰処理設備は、スラリー化した石炭灰前処理装置1、浮遊選鉱装置2、安定化処理装置12、脱水処理装置14が順次配列されている。
【0027】
図2では、スラリー化した石炭灰前処理装置1のスラリー化容器はホッパー3の下部に円筒部4が形成されている。石炭灰と水がホッパー3の上部の投入口5から供給されてスラリー化した石炭灰6となる。円筒部3の下部には、スラリー化した石炭灰6を排出する開閉可能なスラリー排出口7が設けられている。この時pHを測定し、酸性のpH値を示す場合、これを選別する。
【0028】
図2では、円筒部4の外周に超音波振動素子8を備えた超音波発生装置が設けられている。超音波発生装置は、円筒部3の周囲に超音波振動素子8が間隔をおいて取り付けら、超音波振動素子8は超音波発振器9に接続されている。
…
【0030】
スラリー化した石炭灰前処理装置1の下流に浮遊選鉱装置2が配置されている。浮遊選鉱装置2は、スラリー化した石炭灰前処理装置1からのスラリー化した石炭灰6に未燃カーボン捕集剤、気泡剤を加え、空気吹込口10から空気を吹き込んで気泡を発生させる。気泡に未燃カーボン、未燃カーボンを多く含有する石炭灰を捕集し、未燃カーボン含有量が高いフロス灰を取り出し、未燃カーボンと水を分離する。分離した水は回収水としてスラリー化した石炭灰前処理装置1に戻される。
【0031】
浮遊選鉱装置2に沈んだ未燃カーボンが分離されて未燃カーボン含有量が低下したテール灰を抜く抜き出し口11からテール灰を抜く。
【0032】
なお、浮遊選鉱装置内に、電磁石を内蔵した有孔回転板からなる攪拌板を配置し、磁石によりスラリー化した石炭灰から鉄分を酸化鉄として分離するようにしてもよい。
【0033】
テール灰は、浮遊選鉱装置2の下流に配置された安定化処理装置12に送られる。安定化処理装置12では、空気吹込口13から空気を吹き込んで空気中の二酸化炭素により高アルカリ成分をpH7前後に中和し、コンクリート材料に利用できるpHにする。
【0034】
安定化処理したスラリーは脱水処理装置14により圧縮して石炭灰70~80質量%の濃縮スラリーにし、コンクリート材料にする。」
(2c)「【図1】
」
(2d)「【図2】
」
(3)引用文献3の記載事項
引用文献3には、以下(3a)~(3c)の記載がある。
(3a)「2.実用新案登録請求の範囲
(1) フィルタにより濾過分級する湿式分級装置であって、装置本体の空洞部を、この空洞部に立設されたフィルタにより、フィルタ濾面側流路とフィルタ背面側流路とに仕切ると共に、前記フィルタ濾面側流路の底部にスラリー供給口を、上部にスラリー排出口を設け、且つ前記フィルタ背面側流路に吸引口を設ける一方、前記スラリー供給口にスラリー供給手段を、また前記吸引口に吸引手段を配設してなることを特徴とする湿式分級装置。」
(3b)「図において、1は分級装置の本体であって、この装置本体1の空洞部2には、フィルタ3が濾面を対向して立設され、この立設されたフィルタ3により、空洞部2がフィルタ濾面側流路4とフィルタ背面側流路5とに仕切られている。そして、このフィルタ濾面側流路4の底部6にはスラリー供給口17が、また上部8にはスラリー排出口9がそれぞれ設けられ、一方フィルタ背面側流路5には吸引口10が設けられている。
11はスラリータンクであって、タンク内にスラリー12の攪拌機13を備えている。
14はスラリー供給用ポンプであって、タンク11とスラリー供給口7との間に配管されたスラリー供給管15の途中に設けられている。
16はスラリー排出管であって、一端をスラリー排出口9に接続し、他端をタンク11内に開放している。
17は吸引用管であって、一端をフィルタ背面側流路5の吸引口10に接続し、他端を次処理工程(図示せず)に開放し、且つ配管途中に真空ポンプ18が配設されている。」(6頁15行~7頁15行)
(3c)「
」
2 対比・判断
(1)本願発明1について
(1-1)対比
(ア)本願発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1において、「脱じん塔に供給された水により水と混合した石炭灰(フライアッシュ)」が排出される「脱じん塔シックナ-」から抜き出される「アンダーフロー水」は、本願発明における、「フライアッシュ」「からなる原粉と水とを混合してなるフライアッシュスラリー」に相当し、引用発明1において、「脱じん塔シックナーおよび苛性ソーダタンクと、生成用タンクとの間に処理タンクを設け、処理タンクは、中和タンクと凝集タンクとによって構成され」、「バルブを介して中和タンクにアンダーフロー水が注入され、また、苛性ソーダタンクからの苛性ソーダが流量計およびバルブを介して所定量注入され」、「中和タンクに注入された、これらアンダーフロー水と苛性ソーダは、攪拌機によって攪拌により混合された後、液面の上部から排出ダクトを介して凝集タンクに送出され、中和タンクから送出されたアンダーフロー水は、凝集タンクにおいて、アンダーフロー水中においてフライアッシュが凝集され」、「この凝集タンクには、攪拌機およびpH計が設けられ、pH7.0程度に中和される」ことは、本願発明1における、「フライアッシュスラリーを攪拌により均質化する工程」と、「均質化したフライアッシュスラリーのpHをpH7~pH8に維持する工程」に相当する。
また、引用発明1において、「生成用タンクに注入されるアンダーフロー水には、電気集じん器を通過した微細なフライアッシュが含まれており、これに中和処理剤を加えると、中和時の作用によりフライアッシュが微粒径に生成され」ることは、本願発明1における、「フライアッシュスラリーに含まれる凝集粒子および集塊粒子を」、「微粒子とする工程」に相当し、引用発明1における「微粒径石炭灰生成方法」は、本願発明1における「改質フライアッシュの製造方法」に相当する。
(イ)すると、本願発明1と引用発明1とは、
「フライアッシュからなる原粉と水とを混合してなるフライアッシュスラリーを攪拌により均質化する工程と、
均質化したフライアッシュスラリーのpHをpH7~pH8に維持する工程と、
フライアッシュスラリーに含まれる凝集粒子および集塊粒子を、微粒子とする工程とを含む、改質フライアッシュの製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1:本願発明1は、「改質フライアッシュの製造方法」の「原粉」が、「フライアッシュの分級JIS灰およびフライアッシュの非JIS灰からなる原粉」である、との発明特定事項を有するのに対して、引用発明1は、前記発明特定事項を有するか否かが明らかでない点。
・相違点2:本願発明1は、「改質フライアッシュの製造方法」が、「フライアッシュスラリーに含まれる凝集粒子および集塊粒子を、遠心力により微粒子とする工程と、前記微粒子とする工程を経たフライアッシュスラリーから、浮遊分の浮灰を除外する工程と、前記浮灰を除外する工程を経たフライアッシュスラリーから、マグネットキャッチャーにより磁性を有する粒子を除外する工程と、前記磁性を有する粒子を除外する工程を経たフライアッシュスラリーを、動圧ろ過により分級する工程を含む」、との発明特定事項を有するのに対して、引用発明1は前記発明特定事項を有しない点。
(1-2)判断
(ア)事案に鑑み、前記(1-1)(イ)の相違点2から検討すると、前記相違点2に係る発明特定事項の、「前記微粒子とする工程を経たフライアッシュスラリーから、浮遊分の浮灰を除外する工程」における「微粒子とする工程」は、その前の「フライアッシュスラリーに含まれる凝集粒子および集塊粒子を、遠心力により微粒子とする工程」を意味し、同様に、「前記浮灰を除外する工程を経たフライアッシュスラリーから、マグネットキャッチャーにより磁性を有する粒子を除外する工程」における「浮灰を除外する工程」は、その前の「前記微粒子とする工程を経たフライアッシュスラリーから、浮遊分の浮灰を除外する工程」を意味し、「前記磁性を有する粒子を除外する工程を経たフライアッシュスラリーを、動圧ろ過により分級する工程」における「磁性を有する粒子を除外する工程」は、その前の「前記浮灰を除外する工程を経たフライアッシュスラリーから、マグネットキャッチャーにより磁性を有する粒子を除外する工程」を意味することは明らかである。
そうすると、本願発明1は、「フライアッシュスラリーに含まれる凝集粒子および集塊粒子を、遠心力により微粒子とする工程」、「前記微粒子とする工程を経たフライアッシュスラリーから、浮遊分の浮灰を除外する工程」、「前記浮灰を除外する工程を経たフライアッシュスラリーから、マグネットキャッチャーにより磁性を有する粒子を除外する工程」及び「前記磁性を有する粒子を除外する工程を経たフライアッシュスラリーを、動圧ろ過により分級する工程」を、この順序で連続して行うものといえる
(イ)一方、前記1(2)(2a)~(2d)によれば、引用文献2には、浮遊選鉱装置により、スラリー化した石炭灰から未燃カーボンを除去すると共に、浮遊選鉱装置に電磁石を内蔵した有孔回転板からなる攪拌板を配置し、磁石によりスラリー化した石炭灰から鉄分を酸化鉄として分離すること、更に、未燃カーボン量が低下したテール灰を安定化処理装置においてpH7前後に中和し、コンクリート材料に利用できるpHにし、安定化処理したスラリーを脱水処理装置により圧縮して石炭灰70~80質量%の濃縮スラリーにし、コンクリート材料にすることが記載されており、同(3)(3a)~(3c)によれば、引用文献3には、フィルタにより濾過分級する湿式分級装置であって、装置本体の空洞部を、この空洞部に立設されたフィルタにより、フィルタ濾面側流路とフィルタ背面側流路とに仕切ると共に、前記フィルタ濾面側流路の底部にスラリー供給口を、上部にスラリー排出口を設け、且つ前記フィルタ背面側流路に吸引口を設ける一方、前記スラリー供給口にスラリー供給手段を、また前記吸引口に吸引手段を配設してなる、湿式分級装置が記載されている。
ところが、引用文献2~3には、「フライアッシュスラリーに含まれる凝集粒子および集塊粒子を、遠心力により微粒子とする工程」、「前記微粒子とする工程を経たフライアッシュスラリーから、浮遊分の浮灰を除外する工程」、「前記浮灰を除外する工程を経たフライアッシュスラリーから、マグネットキャッチャーにより磁性を有する粒子を除外する工程」及び「前記磁性を有する粒子を除外する工程を経たフライアッシュスラリーを、動圧ろ過により分級する工程」を、この順序で連続して行うことが記載も示唆もされるものではないし、このことが本願出願日における周知技術であることを示す証拠もない。
(ウ)また、前記1(1)(ア)(1b)によれば、引用発明1は、資源の再利用のために微粒径のフライアッシュの生成が要望されているのであるが、従来における微粒径のフライアッシュの生成は、クリンカをミル等で粉砕して生成し、その後、径別に選別する等の多くの工程を必要としており、手間とコストがかかった、という課題を解決して、簡単な構成で微粒径のフライアッシュを容易に生成することができる微粒径石炭灰生成装置および方法を提供することを目的とするものであって、脱じん塔シックナーから排出される酸性のアンダーフロー水に中和処理剤を混合させることにより、生成用タンクの底部に、微粒径のフライアッシュが含まれた沈殿灰を沈殿させることで、前記課題を解決して、目的を達成するものである。
そして、前記相違点2に係る発明特定事項である、「フライアッシュスラリーに含まれる凝集粒子および集塊粒子を、遠心力により微粒子とする工程」、「前記微粒子とする工程を経たフライアッシュスラリーから、浮遊分の浮灰を除外する工程」、「前記浮灰を除外する工程を経たフライアッシュスラリーから、マグネットキャッチャーにより磁性を有する粒子を除外する工程」、「前記磁性を有する粒子を除外する工程を経たフライアッシュスラリーを、動圧ろ過により分級する工程」は、引用発明1でいう、クリンカをミル等で粉砕して生成し、その後、径別に選別する等の、手間とコストがかかる多くの工程にほかならない。
(エ)すると、仮に、「改質フライアッシュの製造方法」において、前記相違点2に係る発明特定事項を含むものとすることが、本願出願日における周知技術であったとしても、引用発明1において、「脱じん塔シックナーから排出される酸性のアンダーフロー水を貯留するとともに、中和処理剤を混合させることにより、前記アンダーフロー水の沈殿灰中に微粒径のフライアッシュを生成させる」ことに加えて、あるいは、このことに代えて、前記相違点2に係る発明特定事項を含むものとする動機付けは存在しない。
(オ)前記(イ)~(エ)によれば、引用発明1において、「改質フライアッシュの製造方法」を、「フライアッシュスラリーに含まれる凝集粒子および集塊粒子を、遠心力により微粒子とする工程と、前記微粒子とする工程を経たフライアッシュスラリーから、浮遊分の浮灰を除外する工程と、前記浮灰を除外する工程を経たフライアッシュスラリーから、マグネットキャッチャーにより磁性を有する粒子を除外する工程と、前記磁性を有する粒子を除外する工程を経たフライアッシュスラリーを、動圧ろ過により分級する工程を含む」、との前記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を有するものとすることを、引用文献2~3に記載される事項及び及び本願出願日における周知技術に基いて当業者が容易になし得るとはいえないから、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本願発明1を、引用文献1に記載される発明、引用文献2~3に記載される事項及び本願出願日における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(2)本願発明2について
(ア)本願発明2は本願発明1を引用するものであって、本願発明2と引用発明1とを対比した場合、少なくとも前記(1)(1-1)(イ)の相違点2の点で相違する。
(イ)そして、引用発明1において、「改質フライアッシュの製造方法」を、「フライアッシュスラリーに含まれる凝集粒子および集塊粒子を、遠心力により微粒子とする工程と、前記微粒子とする工程を経たフライアッシュスラリーから、浮遊分の浮灰を除外する工程と、前記浮灰を除外する工程を経たフライアッシュスラリーから、マグネットキャッチャーにより磁性を有する粒子を除外する工程と、前記磁性を有する粒子を除外する工程を経たフライアッシュスラリーを、動圧ろ過により分級する工程を含む」、との前記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を有するものとすることを、引用文献2~3に記載される事項及び及び本願出願日における周知技術に基いて当業者が容易になし得るとはいえないことは、前記(1)(1-2)(オ)に記載のとおりであるから、同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本願発明2を、引用文献1に記載される発明、引用文献2~3に記載される事項及び本願出願日における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3)本願発明3について
(ア)本願発明3と引用発明1’とを対比した場合、少なくとも以下の点で相違する。
・相違点3:本願発明3は、「改質フライアッシュの製造装置」が、「請求項1又は2に記載の改質フライアッシュの製造方法に用いる装置であ」る、との発明特定事項を有するのに対して、引用発明1’は、「引用発明1に係る微粒径石炭灰生成方法に用いる」ものである点。
(イ)以下、前記(ア)の相違点3について検討すると、本願発明1を、引用文献1に記載される発明、引用文献2~3に記載される事項及び本願出願日における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえないことは、前記(1)(1-2)(オ)に記載のとおりであり、本願発明2を、引用文献1に記載される発明、引用文献2~3に記載される事項及び本願出願日における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえないことは、前記(2)(イ)の記載のとおりである。
(ウ)すると、同様の理由により、引用発明1’において、「改質フライアッシュの製造装置」を、「請求項1又は2に記載の改質フライアッシュの製造方法に用いる装置であ」る、との前記相違点3に係る本願発明3の発明特定事項を有するものとすることを、引用文献2~3に記載される事項及び本願出願日における周知技術に基づいて当業者が容易になし得るものではないから、本願発明3を、引用文献1に記載される発明、引用文献2~3に記載される事項及び本願出願日における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
3 小括
したがって、本願発明1~3を、引用文献1に記載される発明、引用文献2~3に記載される事項及び本願出願日における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえないので、本願発明1~3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-009479