特許拒絶査定不服審判
2019-005605
熱間用乾式吹付材及び熱間乾式吹付施工方法
- 審判番号
- 2019-005605
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-187646外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年04月25日
- 審決日
- 2020年08月04日
- 公報発行日
- 2020年09月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】黒崎播磨株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人英和特許事務所
- 分類
- P18 .113-WY (C04B) / P18 .121-WY (C04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2018-187646「熱間用乾式吹付材及び熱間乾式吹付施工方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月 9日出願公開、特開2020- 55710、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成30年10月2日の出願であって、平成30年11月27日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年12月25日付けで手続補正がされ、平成31年2月6日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成31年4月25日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成31年2月6日付け拒絶査定)の理由は、要するに次のとおりである。
本願請求項1~4に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された周知技術に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
(引用文献等一覧)
引用文献1 特開2006-160558号公報
引用文献2 特開2004-10458号公報
引用文献3 耐火物手帳 改訂12版、耐火物技術協会、2015年8月31日、第309頁、第580頁
第3 本願発明
本願請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明4」という。)は、平成30年12月25日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりの発明であると認める。
「【請求項1】
耐火材料とバインダーとを含む熱間用乾式吹付材であって、
前記耐火材料及び前記バインダーの合量100質量%中において、粒径0.075mm以上1mm未満の苦土石灰石を10質量%以上50質量%以下含み、
前記耐火材料及びバインダーの合量100質量%中において、粒径0.075mm未満の苦土石灰石の含有量が35質量%以下(0を含む。)である、熱間用乾式吹付材。
【請求項2】
前記バインダーは、リン酸塩及び珪酸塩の中から選択される少なくとも1種を含むものである、請求項1に記載の熱間用乾式吹付材。
【請求項3】
前記粒径0.075mm未満の苦土石灰石の含有量が5質量%以上35質量%以下である、請求項1又は2に記載の熱間用乾式吹付材。
【請求項4】
耐火材料及びバインダーを含む配合物を、配管を通じて吹付ノズルに向けて圧送し、前記吹付ノズルの先端部において水を添加して熱間で吹き付ける熱間乾式吹付施工方法において、
前記配合物は、前記耐火材料及び前記バインダーの合量100質量%中において、粒径0.075mm以上1mm未満の苦土石灰石を10質量%以上50質量%以下含み、
前記耐火材料及びバインダーの合量100質量%中において、粒径0.075mm未満の苦土石灰石の含有量が35質量%以下(0を含む。)である、熱間乾式吹付施工方法。」
第4 引用文献に記載された技術的事項(引用発明)
1 引用文献1について
原査定において引用された上記引用文献1には、「吹付け材料」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
マグネシア、ドロマイト、スピネル、高アルミナ、電融アルミナ、焼結アルミナ、シャモット等の1種または複数種の耐火性材料に、粉末ケイ酸ナトリウムまたは粉末ケイ酸カリウムを1~4重量%、ピッチを1~3重量%、フェノール樹脂を1~5重量%、だれ防止剤を1~5重量%、硬化促進剤を1~5重量%、粉体流動化促進剤を0.1~1重量%を添加したことを特徴とする吹付け材料。
【請求項2】
耐火性材料の粒度は1000~3500μmが25~45重量%で、75μm以下が20~40重量%以下で、75~1000μmがその残りであることを特徴とする請求項1に記載の吹付け材料。」
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「マグネシア、ドロマイト、スピネル、高アルミナ、電融アルミナ、焼結アルミナ、シャモット等の1種または複数種の耐火性材料に、粉末ケイ酸ナトリウムまたは粉末ケイ酸カリウムを1~4重量%、ピッチを1~3重量%、フェノール樹脂を1~5重量%、だれ防止剤を1~5重量%、硬化促進剤を1~5重量%、粉体流動化促進剤を0.1~1重量%を添加した吹付け材料であって、
耐火性材料の粒度は1000~3500μmが25~45重量%で、75μm以下が20~40重量%以下で、75~1000μmがその残りである、吹付け材料。」
2 引用文献2について
原査定において引用された上記引用文献2には、「転炉用等の吹付け材」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、耐火物分野における、特に転炉やトピードカー等の精錬用の炉壁を熱間で補修する転炉用等の吹付け材に関するものである。」、
「【0011】
上記吹付け材の耐火骨材は、転炉やトピードカー、電気炉等の精錬炉に使用されるマグネシア系、マグネシア・カーボン系のものであり、その吹付け方法は乾式材料に吹付けノズルで水を添加する一般的な方法で行うことができる。」
したがって、上記引用文献2には、熱間乾式吹付け材に吹付けノズルで水を添加して精錬用の炉壁に吹き付けて補修するとの技術的事項が記載されていると認められる。
3 引用文献3について
原査定において引用された上記引用文献3には、次の事項が記載されている。
「マグネシウムとカルシウムの複合炭酸塩(複塩)であるドロマイト(Dolomite,[(Mg,Ca)CO3]:鉱物名 苦灰石(くかいせき))を加熱すると600℃以上で熱分解してCO2を放出し始め,約900℃以上でCO2成分が完全に除去され,ドロマイトクリンカーが得られる。」(第309頁右欄第12~17行)、
「
」
(第580頁)
したがって、上記引用文献3には、ドロマイトの和名が苦灰石であり、化学式がMgCO3・CaCO3であるという技術的事項が記載されていると認められる。
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、本願発明1は、「苦土石灰石」を含んでいるのに対して、引用発明は、「ドロマイト」を含んでいる点で、少なくとも相違するものと認められる(以下、「相違点1」という。)。
(2)相違点1についての判断
ア 相違点1が実質的な相違点か否かについて
まず、「ドロマイト」との用語について検討すると、一般的には、上記第4の3のとおり、ドロマイトの和名は苦灰石であり、化学式はMgCO3・CaCO3であるとされていることが理解できる。
他方、上記引用文献3には、上記第4の3の技術的事項に加えて、
「ドロマイトクリンカーはマグネシア[MgO]とカルシア[CaO]の混合物である。耐食性が高く,また水と反応し消化する性質を有する。
なお,ドロマイトクリンカーのことを単にドロマイトと称する場合もあるため注意が必要である。」(第308頁左欄第7~11行)
ことが記載され、さらに、特許第2797866号公報の段落【0009】、特許第6288462号公報の段落【0033】、及び、特開2011-5358号公報の段落【0022】には、それぞれ「ドロマイト(CaO・MgO)」と記載されていることからして、マグネシアとカルシアの混合物(CaO・MgO)であるドロマイトクリンカーを、慣用的に「ドロマイト」と称する場合があることも、当該技術分野における技術常識であるといえる。
そうしてみると、引用発明の「ドロマイト」の意味するところを、その用語のみから、苦灰石(MgCO3・CaCO3)を示している、あるいは、ドロマイトクリンカー(CaO・MgO)を示していると、一義的に判断するのは早計である。
そこで、更に検討すると、引用発明では、「マグネシア、ドロマイト、スピネル、高アルミナ、電融アルミナ、焼結アルミナ、シャモット等の1種または複数種の耐火性材料」と特定されており、「ドロマイト」は、マグネシア(MgO)、スピネル(MgAl2O4)、高アルミナ(Al2O3)、電融アルミナ(Al2O3)、焼結アルミナ(Al2O3)、シャモット(Al2O3・SiO2)と同列のものとして特定されていることに照らすと、引用発明の「ドロマイト」は、酸化物であるドロマイトクリンカー(CaO・MgO)のことを示していると解するのが合理的である。
したがって、相違点1は実質的な相違点であるから、その他の相違点を検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1に記載された発明であるということはできない。
イ 相違点1の容易想到性について
次に、当該相違点1に係る本願発明1の構成の容易想到性について検討する。
引用文献1には、ドロマイトクリンカー(CaO・MgO)を苦土石灰石(CaCO3・MgCO3)に置換することについては記載も示唆もされていない。また、上記引用文献2及び3には、上記第4の2及び3に示した技術的事項が記載されているにすぎず、ドロマイトクリンカー(CaO・MgO)の代替耐火性材料として、苦土石灰石(CaCO3・MgCO3)を使用することについては何ら記載されていないし、このようなことが技術常識であるというに足りる証拠も見当たらない。
したがって、引用発明の「ドロマイト」を苦土石灰石(CaCO3・MgCO3)にすることは、当業者が容易に想到できるものとはいえない。
よって、その他の相違点について更に検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。
2 本願発明2~4について
本願発明2及び3は、本願発明1を引用するものであり、「苦土石灰石」を含むとのと発明特定事項を備えるものであるし、本願発明4は、「熱間乾式吹付施工方法」に用いる「耐火材料及びバインダーを含む配合物」に「苦土石灰石」を含むことから、本願発明2~4はいずれも、本願発明1と同じ理由により、引用文献1に記載された発明であるとはいえないし、容易想到のものといえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1~4は、引用文献1に記載された発明であるとも、引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明できたものであるともいえないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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