特許拒絶査定不服審判
2019-005537
モータ
- 審判番号
- 2019-005537
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-114320
- 請求日
- 2019年04月25日
- 審決日
- 2020年04月22日
- 公報発行日
- 2020年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ファナック株式会社
- 【請求人代理人】千葉 剛宏
- 【請求人代理人】宮寺 利幸
- 【請求人代理人】千馬 隆之
- 【請求人代理人】仲宗根 康晴
- 【請求人代理人】坂井 志郎
- 【請求人代理人】関口 亨祐
- 審判長/審判官
- 審判長 佐々木 芳枝
- 審判官 堀川 一郎
- 審判官 窪田 治彦
- 分類
- P18 .121-Z (H02K) / P18 .572-Z (H02K) / P18 .575-Z (H02K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項、特許法第159条第1項、特許法第53条第1項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第36条第5項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2017-114320「モータ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月27日出願公開、特開2018-207755〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、平成29年6月9日の出願であって、平成30年12月4日付で
拒絶の理由が通知され(発送日:平成30年12月11日)、これに対し、平成31年2月8日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成31年3月8日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成31年3月19日)、これに対し、平成31年4月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ、令和元年9月6日付で上申書が提出されたものである。
2.平成31年4月25日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年4月25日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由I]
(1)補正の内容
本件補正前の特許請求の範囲は、以下のとおりである。
「【請求項1】
モータの外形を構成する固定子コアを有するモータであって、
前記固定子コアの側面には樹脂が塗布され、
前記モータの回転軸方向に直交する断面視において、
前記固定子コアの外形は、四角形の四隅が除去された形状を有し、
前記四隅が除去された各部分の前記固定子コアの外形は、隣接する前記四角形の辺とのなす角度が90°より大きく135°より小さい2つの直線で形成されている、モータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータであって、
前記モータの回転軸方向に直交する断面視において、
前記直線と隣接する前記四角形の辺とのなす角度は、105°~120°の範囲内である、モータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のモータであって、
前記2つの直線は、前記四角形の対角線を挟んだ両側に位置する、モータ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のモータであって、
前記固定子コアの外形は、前記モータの回転軸方向に沿って前記四角形の前記四隅が除去された形状を有する、モータ。」
本件補正により、特許請求の範囲は、以下のように補正された。
「【請求項1】
モータの外形を構成する固定子コアを有するモータであって、
前記固定子コアにおける前記モータの回転軸方向に沿った一端部には、第1ハウジングが取り付けられ、
前記固定子コアにおける前記回転軸方向に沿った他端部には、第2ハウジングが取り付けられ、
前記固定子コア、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングの各側面には樹脂が塗布され、
前記回転軸方向に直交する断面視において、
前記固定子コアの外形は、四角形の四隅が除去された形状を有し、
前記四隅が除去された各部分の前記固定子コアの外形は、隣接する前記四角形の辺とのなす角度が90°より大きく135°より小さい2つの直線で形成されている、モータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータであって、
前記回転軸方向に直交する断面視において、
前記直線と隣接する前記四角形の辺とのなす角度は、105°~120°の範囲内である、モータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のモータであって、
前記2つの直線は、前記四角形の対角線を挟んだ両側に位置する、モータ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のモータであって、
前記固定子コアの外形は、前記回転軸方向に沿って前記四角形の前記四隅が除去された形状を有する、モータ。」
(2)目的要件
本件補正が、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。
特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮」は、第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限られる。また、補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって、かつ、補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請され、補正前の請求項と補正後の請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。
本件補正前後で請求項数は4で本件補正前後の請求項の引用関係も同じであるから、本件補正後の請求項1は本件補正前の請求項1に対応するものとして検討する。
本件補正前の請求項1は、モータであって、固定子コアの側面に樹脂が塗布されていたものが、本件補正後の請求項1は、モータであって、第1ハウジングおよび第2ハウジングを有し、固定子コア、第1ハウジングおよび第2ハウジングの各側面に樹脂が塗布されるものとなっている。
そうすると、本件補正前の請求項1の、「前記固定子コアの側面には樹脂が塗布され」る構成をどの様に限定しても、本件補正後の請求項1の、第1ハウジングおよび第2ハウジングを有し、固定子コア、第1ハウジングおよび第2ハウジングの各側面に樹脂が塗布される構成とはならず、むしろ、本件補正前の請求項1に第1ハウジング、第2ハウジングの各側面に樹脂が塗布されるとの事項をさらに付加するものであるから、本件補正は、特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものには該当せず、特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものには該当しない。
したがって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正とは認められない。
また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正及び明瞭でない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
[理由II]
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるが、仮に本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の請求項に記載されたものが特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(1)本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上記した平成31年4月25日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2014-236576号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。
a「図1~図3は、本発明の第1の実施形態である2相ハイブリッド(HB)型ステッピングモータ1の全体構成を示し」(【0013】)
b「固定子10は、外形が四隅を切除したほぼ正四辺形状に形成され内周がほぼ円周面に形成された環状のバックヨーク部12aとこのバックヨーク部12aより放射状内方に突出して設けられた8個の主極12bとからなる固定子コア12と」(【0014】)
c「図2において、固定子10の軸方向両側には、上カバー部材30及び下カバー部材32が配置され、固定子10の外周面と共にモータ外表面を構成している。両カバー部材30・32はそれぞれ金属材料により構成され、その外側はそれぞれ固定子コア12と同様にほぼ正四辺形状に形成されている。」(【0023】)
上記記載及び図4、6を参照すると、固定子の外周面がモータ外表面を構成しているから、固定子コアがモータの外形を構成している。
上記記載及び図4、6を参照すると、回転軸方向に直交する断面視において、固定子コアの外形は、四隅を切除したほぼ正四辺形状に形成されている。
上記記載及び図4、6を参照すると、四隅が除去された各部分の固定子コアの外形は、隣接する四角形の辺とのなす角度が90°より大きく135°より小さい2つの直線で形成されている。
上記記載事項からみて、引用例1には、
「モータの外形を構成する固定子コアを有するモータであって、
固定子の軸方向両側には、上カバー部材及び下カバー部材が配置され、
前記軸方向に直交する断面視において、
前記固定子コアの外形は、四隅を切除したほぼ正四辺形状に形成され、
前記四隅が除去された各部分の前記固定子コアの外形は、隣接する前記四角形の辺とのなす角度が90°より大きく135°より小さい2つの直線で形成されている、モータ。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「軸方向」、「上カバー部材」、「下カバー部材」は、それぞれ本願補正発明の「モータの回転軸方向」、「第1ハウジング」、「第2ハウジング」に相当する。
引用発明の上カバー部材及び下カバー部材は固定子の軸方向両側に配置されているので、引用発明の「固定子の軸方向両側には、上カバー部材及び下カバー部材が配置され」は、本願補正発明の「前記固定子コアにおける前記モータの回転軸方向に沿った一端部には、第1ハウジングが取り付けられ、前記固定子コアにおける前記回転軸方向に沿った他端部には、第2ハウジングが取り付けられ」に相当する。
引用発明の「四隅を切除したほぼ正四辺形状に形成され」は、本願補正発明の「四角形の四隅が除去された形状を有し」に相当する。
したがって、両者は、
「モータの外形を構成する固定子コアを有するモータであって、
前記固定子コアにおける前記モータの回転軸方向に沿った一端部には、第1ハウジングが取り付けられ、
前記固定子コアにおける前記回転軸方向に沿った他端部には、第2ハウジングが取り付けられ、
前記回転軸方向に直交する断面視において、
前記固定子コアの外形は、四角形の四隅が除去された形状を有し、
前記四隅が除去された各部分の前記固定子コアの外形は、隣接する前記四角形の辺とのなす角度が90°より大きく135°より小さい2つの直線で形成されている、モータ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
〔相違点〕
本願補正発明は、固定子コア、第1ハウジングおよび第2ハウジングの各側面には樹脂が塗布されるのに対し、引用発明は、この様な構成を有しない点。
(4)判断
固定子コアがモータの外形の一部となるモータにおいて、固定子コアが外部からの液体等の影響を直接受けない様に側面に樹脂を塗布することは周知の事項(必要があれば、特開平9-247888号公報【0015】、実願平3-85523号(実開平5-39178号)のCD-ROM【0008】参照。)であり、又、固定子コアがモータの外形の一部となるモータにおいて、固定子コア、ハウジングが外部からの液体等の影響をモータ内部にも及ぼさない様に固定子コア、固定子コア両側のハウジングの各側面に樹脂を塗布することも周知の事項(必要があれば、特開平10-112953号公報【0011】参照。)であるから、引用発明において、固定子コア、第1ハウジングおよび第2ハウジングの各側面に樹脂が塗布されることは当業者が容易に考えられることと認められる。
そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(5)上申書補正案
請求人は、令和元年9月6日付上申書で補正案を提示し、その補正内容は、本件補正後の請求項1の記載に「前記固定子コアの一端部と前記第1ハウジングとの間、および、前記固定子コアの他端部と前記第2ハウジングとの間は、シール部材を介して連結され」との記載を加えるものである。
しかし、固定子コアがモータの外形の一部となるモータにおいて、モータの内部に外部からの液体等の影響を及ぼさないために、固定子コアとハウジングとの接合部にシール部材を設けることは周知の事項(必要があれば、特開平9-285079号公報【0002】、【0003】参照。)であるから、引用発明において、固定子コアの一端部と第1ハウジングとの間、および、前記固定子コアの他端部と第2ハウジングとの間を、シール部材を介して連結させることは当業者が適宜なし得ることと認められる。
したがって、上申書補正案のものであっても、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(6)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、上記した本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。
(1)拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
「この出願の請求項1-4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された特開2014-236576号公報(以下、「引用例1」という。)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
(2)引用例
引用例1の記載事項は、「2.[理由II](2)」に記載したとおりである。
(3)対比・判断
本願発明は、「2.[理由II]」で検討した本願補正発明から「第1ハウジング」、「第2ハウジング」の限定事項である「前記固定子コアにおける前記モータの回転軸方向に沿った一端部には、第1ハウジングが取り付けられ、前記固定子コアにおける前記回転軸方向に沿った他端部には、第2ハウジングが取り付けられ」、「前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングの各側面には樹脂が塗布され」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、「2.[理由II](4)」に記載したとおり、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)むすび
したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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