特許拒絶査定不服審判
2019-001099
レーザー光源駆動装置及び表示装置
- 審判番号
- 2019-001099
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-036053外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年01月28日
- 審決日
- 2019年11月13日
- 公報発行日
- 2019年12月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】日本精機株式会社
- 分類
- P18 .121-WY (H01S) / P18 .537-WY (H01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014- 36053「レーザー光源駆動装置及び表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月 7日出願公開、特開2015-162526、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成26年2月26日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年10月10日付け:拒絶理由通知書
平成29年12月 7日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 5月23日付け:拒絶理由通知書
平成30年 7月27日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年10月26日付け:拒絶査定
平成31年 1月28日 :審判請求書の提出
令和元年 8月 8日付け:拒絶理由通知書
令和元年 10月 4日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1-3に係る発明(以下、「本願発明1」~「本願発明3」という。)は、令和元年10月4日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載される発明であり、そのうち本願発明1は以下のとおりのものである。
「【請求項1】
駆動電流が供給されると光を出射し、閾電流値以上の電流が供給されるとレーザー発振する光源と、
入力する画像データが要求する階調レベルに対応する前記駆動電流を読み出し可能な光強度特性を記憶する記憶部と、
前記光強度特性に基づいて、入力した前記階調レベルに対応する前記駆動電流を前記光源に供給し、前記階調レベルが黒色の表示を求めている場合に初期電流値で前記光源を駆動する光源制御手段と、
外光の強度を検出する外光検出手段と、を備え、
前記光強度特性は、前記光源に供給される駆動電流と前記階調レベルが対応した前記光源の光強度との関係を示す直線として表され、前記閾電流値未満の電流値を含む第1の直線と、前記閾電流値以上の電流値を含む第2の直線と、を有し、
前記光源制御手段は、前記外光検出手段が検出した外光強度が所定値未満の場合に、前記初期電流値をゼロに設定した上で、前記第1の直線又は前記第2の直線に基づき、前記階調レベルに対応した前記駆動電流を前記光源に供給し、
前記外光検出手段が検出した外光強度が前記所定値以上の場合に、前記初期電流値を前記閾電流値よりも小さい前記第1の直線上の任意値に設定した上で、前記第2の直線に基づき、前記階調レベルに対応した前記駆動電流を前記光源に供給する、
ことを特徴とするレーザー光源駆動装置。」
なお、本願発明2、3の概要は以下のとおりである。
本願発明2は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明3は、本願発明1又は2のレーザー光源駆動装置を備えた表示装置の発明である。
第3 原査定の概要
この出願の請求項1-3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2012-108397号公報
2.特開2009-244797号公報
3.特開2007-223109号公報
第4 引用文献、引用発明
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2012-108397号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。以下同じ。)。
「【0009】
しかしながら、上述した特許文献3の画像表示装置では、閾値電流値未満のレーザー駆動電流を投入した際の光出力は無視し、レーザー駆動電流を閾値電流値以上の2点以上変化させて光出力を検出し、電流-光出力特性を演算している。
【0010】
一方、車両用ヘッドアップディスプレイ装置1では外光強度に合わせて表示輝度を大きく変化させ、調光比を大きくとる必要がある。最大輝度では数千~数万cd/m2以上、最小輝度では数cd/m2が要求される。このような最小輝度を達成するためにはレーザー駆動電流を閾値電流値未満に調整し、レーザー発振していない光も利用する必要があるため、閾値電流値未満の電流-光出力特性に基づいてレーザー光源を所定の電流値で駆動する必要がある。
【0011】
したがって、特許文献3の方法を車両用ヘッドアップディスプレイ装置1に応用した場合、閾値電流値を正確に特定することは出来ず、閾値電流値未満の電流-光出力特性も不明であるため、特に低輝度状態で表示輝度が不安定になる、所望の表示色が得られないといった問題があった。」
「【0020】
図2に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置1は、合成レーザー光発生器(レーザー光源)10と、MEMSスキャナー(走査手段)20と、透過スクリーン(スクリーン)30と、カラーセンサ(レーザー光検出部)40と、反射部50と、ライトセンサ(外光検出部)60と、ハウジング70とを備えている。
【0021】
合成レーザー光発生器10は、三原色のレーザー光R,G,Bを合波して1本の合成レーザー光Cを出射するものであり、レーザーダイオード11r,11g,11bと、集光光学系12r,12g,12bと、ダイクロイックミラー14,15と、を備える(図3参照)。
・・・(中略)・・・
【0026】
このように、レーザー光R,G,Bは1本の合成レーザー光Cに合波され、合成レーザー光発生器10から出射される。なお、レーザーダイオード11r,11g,11bの各々が調整して配設されることにより、合波されたレーザー光R,G,Bの各々の偏光方向は一致しており、ウインドシールド3の反射率の偏光依存性を考慮して決定される。なお、ダイクロイックミラー14,15は、LED光についても合波し、合波した光は合成レーザー光発生器10から出射される。
・・・(中略)・・・
【0032】
ハウジング70は、硬質樹脂等から形成され、上方に所定の大きさの窓部71を備えた箱状になっている。ハウジング70は、合成レーザー光発生器10,MEMSスキャナー20,カラーセンサ40,透過スクリーン30,反射部50,ライトセンサ60等を所定の位置に収納する。ライトセンサ60は、窓部71の下面に設置されている。
【0033】
窓部71は、アクリル等の透光性樹脂から湾曲形状に形成されており、ハウジング70の開口部に溶着等により取り付けられる。窓部71は、拡大ミラー52で反射された光を透過させる。また、窓部71は、その下面側にライトセンサ60を備える。
【0034】
次に、図4及び図5に基づいて、合成レーザー光発生器10のレーザーダイオード11r,11g,11bについて詳述する。レーザーダイオード11rは赤色のレーザー光Rを発するものであり、レーザーダイオード11gは緑色のレーザー光Gを発するものであり、レーザーダイオード11bは青色のレーザー光Bを発するものである。レーザーダイオード11r,11g,11bは、閾値電流値ITH未満の駆動電流によって非レーザー光を出射し、閾値電流値ITH以上の駆動電流によってレーザー光R,G,Bを出射する(図4参照)。
【0035】
レーザーダイオード11r,11g,11bの電流-光出力特性は、閾値電流値ITH以上と未満の各領域において、特性が異なっているが、どちらも線形である。このような閾値電流値ITHを有する理由としては活性層の電子分布を反転分布させるためのエネルギーと、増幅される光量がロス分を上回る必要があるためである。
【0036】
閾値電流値ITH以上では誘導放出によるレーザー光R,G,Bが発振されるが、閾値電流値ITH未満では自然放出による非レーザー光が出射される。そのため、閾値電流値ITH未満の非レーザー光では波長の帯域幅がレーザー光R,G,Bに比べて数nm程度拡大する。しかしながら、閾値電流値ITHの近傍で発光色の主波長,色度は殆ど変化しないことから、所望の色を得るために閾値電流値ITH未満であっても、閾値電流値ITH以上におけるレーザー光R,G,Bの混色比を変化させる必要はない。」
「【0040】
カラーセンサ40は、レーザー光R,G,Bの光強度を検出し、光強度のアナログデータをマイコン81に出力する。ライトセンサ60は、外光強度を検出し、光強度のアナログデータをマイコン81に出力する。
【0041】
マイコン81は、ヘッドアップディスプレイ装置1における種々の動作を制御する。また、マイコン81には、表示画像Dを表示するための画像データが映像信号100として、LVDS(Low Voltage Differential Signal)通信等によって供給される。マイコン81は、所定の位置に配置されたカラーセンサ40の位置データを予め記憶している。
【0042】
マイコン81は、映像信号100を受け取り、映像信号100が要求する強度にするための制御データを生成し、出力制御部82を介して、レーザーダイオード11r,11g,11bを駆動することで、合成レーザー光発生器10からMEMSスキャナー20へ合成レーザー光Cを出射する。
【0043】
前記制御データとは、カラーセンサ40から受信したレーザー光強度のデジタルデータに基づいて、レーザーダイオード11r,11g,11bの各々が出射するレーザー光R,G,Bの光強度を、映像信号100が要求する強度にするためのデータである。」
「【0050】
マイコン81はフレーム毎の上述のタイミングでレーザーダイオード11r,11g,11bを駆動する際に、光出力と駆動するレーザーダイオード11r,11g,11bを変化させる。例えば、1フレーム目ではレーザーダイオード11rを電流値IF1、2フレーム目ではレーザーダイオード11rを電流値IF2、3フレーム目ではレーザーダイオード11rを電流値IF3で駆動する。このとき、カラーセンサ40は各電流値に相当する光出力値PO1、光出力値PO2、光出力値PO3を検出し、マイコン81へ出力する。
【0051】
電流値IF1,IF2,IF3は、使用するレーザーダイオード11rの平均的な電流-光出力特性から決定されるものであり、電流値IF1は閾値電流値ITH1未満、電流値IF2は閾値電流値ITH1以上、電流値IF3は電流値IF2以上のような関係である。ただし、電流値IF1,IF2,IF3はレーザーダイオード11rの個体差あるいは温度特性により、閾値電流値ITH1が変化した場合であっても、閾値電流値ITH1未満もしくは以上の関係を維持している必要がある。例えば、電流値IF2は閾値電流値ITH1以上の電流値であるが、レーザーダイオード11rが高温になり、閾値電流値ITH1が増加した場合であっても、閾値電流値ITH1以上になっている必要がある。上述の条件を満たすために、レーザーダイオード11rの温度に合わせて電流値IF1,IF2,IF3を変化させても良い。
【0052】
マイコン81はカラーセンサ40から入力された各レーザーダイオードの3つの光出力値光出力値PO1,PO2,PO3から電流-光出力特性を演算する。演算する電流-光出力特性は、第一の直線M1と第二の直線M2とからなり、閾値電流値ITH1が屈曲点となるグラフで表せる。第一の直線M1は、原点(0,0)と(電流値IF1,光出力値PO1)を結ぶ直線である。
・・・(中略)・・・
【0055】
第一の直線M1と第二の直線M2の交点、即ち、閾値電流値ITH1を演算し、閾値電流値ITH1未満では第一の直線M1を、閾値電流値ITH1以上では第二の直線M2をレーザーダイオード11rの電流-光出力特性とする。
【0056】
レーザーダイオード11rと同様に、4~6フレームではレーザーダイオード11gを電流値IF4,IF5,IF6、7~9フレームではレーザーダイオード11bを電流値IF7,IF8,IF9で駆動し、カラーセンサ40は各電流値に相当する光出力値PO4,PO5,PO6,PO7,PO8,PO9を検出し、マイコン81へ出力する。レーザーダイオード11g,11bの電流-光出力特性は、閾値電流値ITH2,ITH3を境界とした第一の直線M3,M5及び第二の直線M4,M6からなる。
【0057】
マイコン81は、演算が終了した次フレームにおいて、出力制御部82を介して演算結果から得られる電流値でレーザーダイオード11r,11g,11bを駆動する。具体的には、ライトセンサ60で検出された外光強度がマイコン81に入力されると、マイコン81は入力された外光強度レベルに適した表示輝度レベルを設定し、その輝度レベルが得られるように、上述の電流-光出力特性から駆動電流値を決定する。出力制御部82はマイコン81が出力したそれぞれの駆動電流値でレーザーダイオード11r,11g,11bを駆動する。
【0058】
なお、演算した電流-光出力特性を維持する期間は任意であり、環境や用途に応じて変更可能である。定めた期間が終了した後は、再び各レーザーダイオードの光強度を検出し、演算を行なうサイクルを繰り返す。
【0059】
本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1は、一定期間ごとにレーザーダイオード11r,11g,11b夫々の電流-光出力特性を演算し、その演算結果に基づいてレーザーダイオード11r,11g,11bの駆動電流値を決定する。これにより、レーザーダイオード11r,11g,11bが温度変化した場合であっても、夫々の温度に応じた電流-光出力特性を参照しているため、輝度変化や色変化を生じにくい。また、閾値電流値ITH1,ITH2,ITH3を特定し、閾値電流値未満の電流-光出力特性も演算することで、低輝度状態でも安定してレーザーダイオード11r,11g,11bを駆動することが可能であり、調光比を大きく取ることができる。」
したがって、上記引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「閾値電流値未満の駆動電流によって非レーザー光を出射するとともに、閾値電流値以上の駆動電流によってレーザー光を出射するレーザーダイオードを備える合成レーザー光発生器(レーザー光源)と、
演算された電流-光出力特性を一定期間維持するとともに、供給された映像信号が要求する強度にするための制御データを生成し、演算された電流-光出力特性に基づいて決定された電流値でレーザーダイオードを駆動するマイコンと、
外光強度を検出するライトセンサと、を備え、
電流-光出力特性は、レーザーダイオードを駆動する電流値と光出力値との関係を示す、閾値電流値未満での第一の直線と閾値電流値以上での第二の直線とからなり、
マイコンは、ライトセンサで検出された外光強度が入力されると、入力された外光強度レベルに適した表示輝度レベルを設定し、その輝度レベルが得られるように、電流-光出力特性から駆動電流値を決定する、
ヘッドアップディスプレイ装置。」
2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2009-244797号公報)には、次の事項が記載されている。
「【0053】
各レーザ21,22,23は、上述のように半導体レーザなどを用いており容量成分を含むことから、閾値電流値Ith以上の駆動電流を流し始めてから発光し始めるまでに遅延時間が生じる。そこで、この発光遅延を抑制するために、各レーザ21,22,23にそれぞれ閾値電流値Ithのバイアス電流Ibをその発光前に供給しておくことにより、各レーザ21,22,23の応答性を高めるように構成している。」
「【0077】
この映像信号供給回路11は、後述する閾値電流値Ithr,Ithg,Ithb及び最大電流値Imr,Img,Imbが制御部12から通知される。映像信号供給回路11は、無効走査範囲Z1及び有効走査範囲Zにおいて輝度が0のときのタイミングで、閾値電流値Ithr,Ithg,Ithbに応じたバイアス電流Ibr,Ibg,Ibbをレーザ21,22,23に供給するための映像信号13r,13g,13bを生成して、レーザドライバ16,17,18へ出力し、各レーザ21,22,23の応答性を高めている。」
したがって、上記引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「輝度が0のときに、閾値電流値に応じたバイアス電流を供給しておくことにより、半導体レーザの応答性を高めること。」
3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2007-223109号公報)には、次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、半導体レーザに通電してレーザ発振光を発生させる光学制御装置に関し、詳しくは、その半導体レーザにレーザ発振光が発生しない程度のバイアス電流を通電することにより、迅速にレーザ発振光を発生させることを可能にした光学制御装置に関する。」
「【0035】
また、レーザダイオードLDのカソードには、高速変調回路71及びLDパワー制御部72と並列に、バイアス制御部77(バイアス通電手段の一例)が接続されている。このバイアス制御部77は、ASIC80から入力されるPWM信号をアナログの電圧に変換するPWM/A変換部78と、PWM/A変換部78から出力される電圧に応じてレーザダイオードLDへのバイアス電流を制御するLDバイアス電流制御回路79とを備えている。」
「【0043】
このように、本実施の形態では、閾値電流Ithに対応するバイアス制御PWMに、そのバイアス制御PWMに応じた係数をかけることによって画像形成用のバイアス制御PWMを設定しているので、レーザダイオードLDが不用意に発振するのを良好に抑制することができる。また、起動時に閾値電流Ith(厳密にはそれに対応したバイアス制御PWM)を検出しているので、環境温度等によって閾値電流Ithが変化した場合でもレーザダイオードLDが不用意に発振するのを良好に抑制し、延いては印字かぶりの発生も良好に抑制することができる。」
したがって、上記引用文献3には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「閾値電流に応じてバイアス電流を設定し、レーザダイオードに供給することにより、レーザダイオードが不用意に発振するのを抑制しつつ、迅速にレーザ発振光を発生させること。」
第5 当審の判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比する。
イ 引用発明の「閾値電流値未満の駆動電流によって非レーザー光を出射するとともに、閾値電流値以上の駆動電流によってレーザー光を出射するレーザーダイオードを備える合成レーザー光発生器(レーザー光源)」は、本願発明1の「駆動電流が供給されると光を出射し、閾電流値以上の電流が供給されるとレーザー発振する光源」に相当する。
ウ 引用発明の「マイコン」は、「供給された映像信号が要求する強度にするための制御データを生成し、演算された電流-光出力特性に基づいて決定された電流値でレーザーダイオードを駆動」するものであるから、引用発明の「電流-光出力特性」は、本願発明1の「光強度特性」に相当し、「入力する画像データが要求する階調レベルに対応する前記駆動電流を読み出し可能な」ものであると認められる。
エ 引用発明の「マイコン」は、「演算された電流-光出力特性を一定期間維持する」ものであるから、本願発明1の「光強度特性を記憶する記憶部」に相当する構成を備えているものと認められる。
オ 引用発明の「マイコン」は、「供給された映像信号が要求する強度にするための制御データを生成し、演算された電流-光出力特性に基づいて決定された電流値でレーザーダイオードを駆動」するものであるから、「前記光強度特性に基づいて、入力した前記階調レベルに対応する前記駆動電流を前記光源に供給し」、「前記光源を駆動する光源制御手段」を備えているものと認められる。
カ 引用発明の「外光強度を検出するライトセンサ」は、本願発明1の「外光の強度を検出する外光検出手段」に相当する。
キ 引用発明の「電流-光出力特性」における各光出力値が「供給された映像信号が要求する強度」に対応していることは明らかであるから、引用発明における「電流-光出力特性」の「レーザーダイオードを駆動する電流値と光出力値との関係を示す」という構成は、本願発明1における「光強度特性」の「前記光源に供給される駆動電流と前記階調レベルが対応した前記光源の光強度との関係を示す直線として表され」るという構成に相当する。
ク 引用発明の「第一の直線」、「第二の直線」は、それぞれ本願発明1の「第1の直線」、「第2の直線」に相当するから、引用発明における「電流-光出力特性」の「閾値電流値未満での第一の直線と閾値電流値以上での第二の直線とからな」るという構成は、本願発明1における「光強度特性」の「前記閾電流値未満の電流値を含む第1の直線と、前記閾電流値以上の電流値を含む第2の直線と、を有」するという構成に相当する。
ケ 引用発明の「マイコン」は、「ライトセンサで検出された外光強度が入力されると、入力された外光強度レベルに適した表示輝度レベルを設定し、その輝度レベルが得られるように、電流-光出力特性から駆動電流値を決定する」ものであるから、「前記外光検出手段が検出した外光強度」に応じて、「前記階調レベルに対応した前記駆動電流を前記光源に供給」しているといえる。
コ 引用発明の「ヘッドアップディスプレイ装置」はレーザー駆動を行う構成を含むものであるから、本願発明1の「レーザー駆動装置」に相当する。
サ したがって、本願発明1と引用発明とを対比したときの一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「駆動電流が供給されると光を出射し、閾電流値以上の電流が供給されるとレーザー発振する光源と、
入力する画像データが要求する階調レベルに対応する前記駆動電流を読み出し可能な光強度特性を記憶する記憶部と、
前記光強度特性に基づいて、入力した前記階調レベルに対応する前記駆動電流を前記光源に供給し、前記光源を駆動する光源制御手段と、
外光の強度を検出する外光検出手段と、を備え、
前記光強度特性は、前記光源に供給される駆動電流と前記階調レベルが対応した前記光源の光強度との関係を示す直線として表され、前記閾電流値未満の電流値を含む第1の直線と、前記閾電流値以上の電流値を含む第2の直線と、を有し、
前記光源制御手段は、前記外光検出手段が検出した外光強度に応じて、前記階調レベルに対応した前記駆動電流を前記光源に供給する、
レーザー光源駆動装置。」
<相違点1>
階調レベルに対応した駆動電流を光源に供給する構成について、本願発明1では、「前記外光検出手段が検出した外光強度が所定値未満の場合」には「前記第1の直線又は前記第2の直線に基づき」供給を行う一方で、「前記外光検出手段が検出した外光強度が前記所定値以上の場合」には「前記第2の直線に基づき」供給を行うのに対し、引用発明では、「ライトセンサで検出された外光強度が入力されると、入力された外光強度レベルに適した表示輝度レベルを設定し、その輝度レベルが得られるように」、「第一の直線」及び「第二の直線」からなる「電流-光出力特性から駆動電流値を決定している」点。
<相違点2>
階調レベルが黒色の場合の表示制御について、本願発明1では、「前記階調レベルが黒色の表示を求めている場合に初期電流値で前記光源を駆動する」ように構成され、「前記外光検出手段が検出した外光強度が所定値未満の場合」には「前記初期電流値をゼロに設定」する一方で、「前記外光検出手段が検出した外光強度が前記所定値以上の場合」には「前記初期電流値を前記閾電流値よりも小さい前記第1の直線上の任意値に設定」するのに対し、引用発明では、階調レベルが黒色の表示を求めている場合の駆動方法について不明である点。
(2)相違点についての判断
ア 相違点2は、相違点1に係る構成を採用することが前提となったものであるため、相違点1、2を一体的に判断する。
イ 引用発明は、「ライトセンサで検出された外光強度が入力されると、入力された外光強度レベルに適した表示輝度レベルを設定し、その輝度レベルが得られるように、電流-光出力特性から駆動電流値を決定している」ものであるが、「外光強度」には様々な値があることを考えると、それにしたがって、「外光強度レベルに適した表示輝度レベル」も様々な値に設定されると考えるのが自然である。そうすると、引用発明は、そのような様々な「外光強度」に応じて、「電流-光出力特性」の「第一の直線」及び「第二の直線」にわたって駆動電流の領域を設定し、明るさを制御することができるものであると考えられる。そのようなところ、引用発明において、(様々な「外光強度」に必ずしも応じることがない)使用する駆動電流の領域を第1の直線、第2の直線のいずれかのみに基づいて決定するようにした本願発明の構成を採用する動機は見出せない。
ウ 仮に、照明の技術分野において慣用的に用いられている、外光強度が所定値未満であれば照明を点灯し、所定値以上であれば消灯するというように2つの場合に分けて駆動電流を制御するという構成や、制御の簡素化を目的として制御パターンの数を減少させるという一般的な技術思想を勘案することにより、引用発明において、相違点1に係る本願発明1の構成を採用することが当業者にとって容易に想到し得たものであるといえたとしても、相違点2に係る本願発明1の構成を採用することは当業者にとって容易に想到し得たものであるとはいえない。
エ すなわち、外光強度が所定値以上の場合には、黒色の表示も含めて第2の直線のみに基づいて表示制御を行うことが普通であると考えられるところ、黒色以外の表示では(黒色に限りなく近い暗い表示も含めて)第2の直線に基づいて表示制御を行う一方、黒色の表示に限っては、あえてこのような制御から離れて(外光強度が低い場合に使用する)第1の直線に基づいて表示制御を行うことに、合理的な理由は見出せない。
オ 引用文献2、3に記載された技術は、半導体レーザを迅速に立ち上げるための技術であって、このような技術がよく知られているからといって、上述のとおり、引用発明に適用する動機付けは認められない。
カ したがって、相違点1及び2に係る外光強度に応じた表示制御は、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(3)小括
よって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
2 本願発明2、3について
本願発明2、3も、上記相違点1及び2に係る本願発明1の外光強度に応じた表示制御に関する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
第6 当審拒絶理由について
令和元年8月8日付けで、請求項1-3について発明が明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとの拒絶理由を通知しているが、令和元年10月4日付けの手続補正により補正がされた結果、この拒絶理由は解消した。
第7 原査定について
原査定においては、引用発明は外光強度レベルに適した表示輝度レベルが得られるように駆動されるものであるものであり、低い表示輝度レベルでは第1の直線、高い表示輝度レベルでは第2の直線に基づいて駆動されるものであることを指摘しつつ、引用発明の第2の直線に基づく駆動はレーザ光が出射される駆動であることから、引用発明に、半導体レーザにおいて周知の技術である引用文献2、3に記載されたバイアス電流の構成を適用することにより、本願発明1を構成することは、当業者が容易に発明し得たものである旨を判断している。
しかしながら、上述のとおり、外光強度が所定値以上の場合における黒色表示の際の駆動電流として、バイアス電流に相当する電流を採用する動機は見出せない。
したがって、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、本願発明1-3は、当業者が引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-001099