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特許拒絶査定不服審判

2018-015116

カリクレイン7産生促進剤

審判番号
2018-015116
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2014-123582外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年11月14日
審決日
2019年09月27日
公報発行日
2019年11月29日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .536-WY (A61K) / P18 .537-WY (A61K) / P18 .113-WY (A61K) / P18 .121-WY (A61K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2014-123582「カリクレイン7産生促進剤」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月12日出願公開、特開2016-  3198、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 【第1】手続の経緯 本願は、平成26年6月16日の出願であって、平成29年12月13日付けで拒絶理由通知がなされ、平成30年4月13日を受付日とする意見書及び手続補正書が提出されたが、同年9月14日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対し、同年11月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、当審において令和1年6月18日付けで拒絶理由通知がなされ、同年7月4日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 【第2】本願発明 本願の請求項1~3に係る発明は、令和1年7月4日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 『 【請求項1】 チオレドキシン(チオレドキシンリダクターゼを含むものを除く)からなる皮膚におけるカリクレイン7産生促進剤(レドックス制御機構の正常化、または、皮膚炎予防治療を目的として使用するものを除く)。 【請求項2】 請求項1に記載のカリクレイン7産生促進剤を含有する皮膚におけるカリクレイン7産生促進用の組成物(レドックス制御機構の正常化、または、皮膚炎予防治療を目的として使用するものを除く。チオレドキシンリダクターゼを含むものを除く)。 【請求項3】 医薬品、化粧品、食品、飲料のいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の皮膚におけるカリクレイン7産生促進用の組成物(レドックス制御機構の正常化、または、皮膚炎予防治療を目的として使用するものを除く。チオレドキシンリダクターゼを含むものを除く)。 』 [合議体注] 1.以下、本願の請求項1~3に係る発明を順に「本願発明1」~「本願発明3」ということがあり、また、これらをまとめて単に「本願発明」ということがある) 2.以下、「チオレドキシン」、「チオレドキシンリダクターゼ」を順に「TRX」、「TRXリダクターゼ」ということがあり、「カリクレイン7」を「KLK7」ということがある。 【第3】当審拒絶理由通知書における拒絶の理由について 1.当審による令和1年6月18日付けの拒絶理由通知書における拒絶の理由の概要は、次のとおりである。 ・理由1:この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 ・理由2:この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 ・理由3:この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 ( 記 ) (1)理由3(明確性の要件)について 請求項1~3では、「チオレドキシン」から除外されるものとして「(チオレオキシンリダクダーゼを含むものを除く)」ことが記載されているのに対し、「カリクレイン7産生促進剤」から除外されるものとしては「(レドックス制御機構の正常化、または、皮膚炎予防治療を目的として使用する場合を除く)」ことが記載されている。 即ち、「物」である前者(「チオレドキシン」)からの除外対象が「もの」即ち「物」として規定されているのに対し、後者(「カリクレイン7産生促進剤」)も物であるにもかかわらずそれからの除去対象が「(レドックス制御機構の正常化、または、皮膚炎予防治療を目的として使用する場合」とされているところ、ここでいう「場合」とはいわば使用の態様であって「物」としての除外対象を明確に規定しているものとは認められない。 そうすると、請求項1~3においては、各請求項の発明から除外される「物」の範囲が明確に規定されているとはいえないから、全体として各請求項に係るカリクレイン産生促進剤の範囲が明確であるとはいえない。 (2)理由1(実施可能要件)、2(サポート要件)について 請求項1に係る剤については、「カリクレイン産生促進」作用が及ぼされる適用対象被験体の部位について特段の限定はないから、「チオレドキシン(チオレドキシンリダクターゼを含むものを除く)」により「カリクレイン産生促進」作用がもたらされ得る任意の部位を適用対象とするカリクレイン産生促進剤の態様が、形式上包含されているものと解される。 これに対し、本願明細書の発明の詳細な説明において、現実の薬理試験結果を以てTRX投与によるKLK7の産生促進作用が明らかにされているのは、TRXの適用対象としてヒト新生児皮膚由来のヒト表皮角化細胞を用いた例についてのみ(実施例1)である。また、例えば、本願明細書の【0002】で引用されている「非特許文献1」:J.INVEST.DERMATOL.,(2010) 130(5) P.1297-1306の1297頁右欄で引用されているLUMDWALL AND BRATTSAND, CELL.MOL.LIFE SCI.,(2008)65 P.2019-2038中の2025頁の表3の記載によれば、KLK7の発現及びその制御環境は、組織(又は当該組織を構成する細胞)により必ずしも一様とはいえないものと推測される。そうすると、本願明細書の実施例1で採用された表皮角化細胞以外の任意の組織(又は当該組織を構成する細胞)においても、同様にTRX処理すれば同様のKLK7産生促進作用がもたらされる、とは直ちには予期し得ない。 そして、これらの点を踏まえた上でもなお、皮膚の表皮角化細胞以外の任意の組織(又はそれを構成する細胞)においてもTRXで処理すれば実施例1の結果と同様のKLK7産生促進作用をもたらすことができ、かつその際のTRXの適用条件が当業者にとり許容範囲内の試行錯誤により見出され得る、ということについて、合理的に説明している箇所を本願明細書中に見出すことはできない。 したがって、本願明細書の発明の詳細な説明には、請求項1に係る発明のうち、TRXにより「カリクレイン7産生促進」作用が及ぼされる適用対象の作用部位が皮膚又はその角層であるもの以外の任意の態様について、当業者が理解かつ実施することができるといえる程度の明確かつ十分な記載がなされているとはいえないし、また、請求項1に係る発明のうち、TRXの適用部位が皮膚又はその角層であるもの以外の任意の態様は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものである。 請求項1に係る剤を直接又は間接的に引用して規定されている請求項2、3の各組成物の発明についても同様である。 2.当審拒絶理由通知書に対する当審の判断 (1)理由3(明確性の要件)について 【第2】に記載したとおり、令和1年7月4日付けの手続補正書の補正により、当該補正の前の請求項1~3(平成30年11月14日付け手続補正書の請求項1~3)における各「皮膚炎予防治療を目的として使用する場合を除く」は、いずれも「皮膚炎予防治療を目的として使用するものを除く」に補正されているから、請求項1~3においては、各請求項の発明から除外される「物」の範囲は明確に把握し得ることとなった。 よって、当審拒絶理由通知書における理由3の不備は既に解消している。 (2)理由1、2について (2-1)理由1(実施可能要件)について (i) 【第2】に記載したとおり、令和1年7月4日付けの手続補正書の補正により、当該補正前の請求項1(平成30年11月14日付け手続補正書の請求項1)における「カリクレイン7産生促進剤(レドックス・・・を除く)」は「皮膚におけるカリクレイン7産生促進剤(レドックス・・・を除く)」に補正されており、同補正前の請求項2、3(平成30年11月14日付け手続補正書の請求項2、3)の各「カリクレイン7産生促進用の組成物(レドックス・・・を除く)」はそれぞれ「皮膚におけるカリクレイン7産生促進用の組成物(レドックス・・・を除く)」に補正されている。 (ii) そして、本願発明に係る剤又は組成物に関し、本願明細書の実施例1の項(【0022】~【0023】)には、新生児皮膚由来のヒト表皮角化細胞:NHEK-Neo(Life Technologies Japan社製)(【0019】)の培養系に対し、TRXとしてヒト組換え体TRX(rhuTRX、アリスタヘルスアンドニュートリションサイエンス株式会社製)を1~10μg/mlの範囲で加えると濃度依存的に細胞内KLK7産生が促進されたこと(【0022】、図1)、並びに、同様の培養系に対し、TRX高含有清酒抽出物(アリスタヘルスアンドニュートリションサイエンス株式会社製 清酒TRX)を5~15μg/mlの範囲で加えると濃度依存的に細胞内KLK7産生が促進されたこと(【0023】、図2)が記載されている。そして、ここで、rhuTRX並びに清酒TRXの投与時にTRXリダクターゼを併せ用いたことの特段の記載はないから、後述する引用文献1:特開平9-12471号公報の【0006】にいわれるようなTRX及びTRXリダクターゼで形成されるレドックス制御系(本願発明中に規定される「レドックス制御機構」に相当する)を形成しているとは認められず、また、上述のrhuTRX並びに清酒TRXの投与が皮膚炎予防治療を目的としたものである旨の特段の記載もないことから、本実施例のTRX使用の態様は本願発明の「(レドックス制御機構の正常化、または、皮膚炎予防治療を目的として使用するものを除く)」の規定を満たすものと解される。 これらの明細書及び図面に記載された、ヒト皮膚由来の表皮角化細胞に対するTRXの用量等の採用条件を踏まえつつ、TRX成分を実際に例えばヒト生体の皮膚に適用する際に、当該皮膚の表皮角化細胞内でKLK7産生促進作用がもたらされるのに必要な量のTRXを当該皮膚の表皮角化細胞に送達するための用法・用量等を検討することを通じて、当該皮膚へのTRX投与条件を決定し実行することは、当業者にとり格別の複雑高度な試行錯誤等を要することなくなし得たことである。 (iii) したがって、本願明細書の発明の詳細な説明には、請求項1~3に係る発明について、当業者が理解かつ実施することができる程度の明確かつ十分な記載がなされているといえる。 (2-2)理由2(サポート要件)について (i) 特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を買い解決できると認識し得る範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (ii) (i)の点を踏まえ本願発明並びに本願明細書及び図面の記載をみるに、請求項1~3に係る各発明により解決されるべき技術課題は、各請求項の規定からみて、皮膚におけるKLK7産生促進をもたらしめることであると把握されるところ、(2-1)(ii)で述べたとおり、本願明細書の実施例1では、ヒトの皮膚を構成する表皮角化細胞の培養系に対しTRX(TRXリダクターゼを含むものを除く)を投与することで当該細胞内のKLK7産生を促進せしめ得たことが実際の試験結果と共に示されている(【0022】~【0023】、図1、2); そして、当該実施例1の採用条件及び試験結果を含む本願明細書及び図面の記載をみた当業者であれば、TRXを実際に例えばヒト生体の皮膚に適用する際に、当該皮膚におけるKLK7産生を促進するに適切なTRXの用法・用量等の条件を決定し得ること、並びに、同条件を実行することで当該皮膚におけるKLK7産生促進を実際にもたらしめ得ることを認識し得るものといえる。 してみれば、当業者は、本願明細書の発明の詳細な説明の記載に基づき、本願発明に係る剤並びに組成物がいずれも上述の技術課題を解決できると認識し得るものといえる。 (iii) したがって、請求項1~3に係る発明は、いずれも本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものである。 (2-3) よって、当審拒絶理由通知書における理由1、2のいずれの不備もまた、既に解消している。 (3)小活 以上の検討のとおりであるから、当審により令和1年6月18日付けで通知された拒絶理由通知書における拒絶の理由を以て、本願を拒絶することはできない。 【第4】原査定の拒絶の理由について 1.原査定の拒絶の理由は、概要次の1-1.、1-2.のとおりである。 ・1-1. 本願の請求項2~3に係る発明は、下記の引用文献13~16の記載を踏まえると、下記の引用文献1に記載された発明であり、また、同引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができない。 ・1-2. 本願の請求項1~3に係る発明は、下記の引用文献13~16の記載を踏まえると、下記の引用文献2に記載された発明であり、また、同引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができない。 ( 記 ) ・引用文献1:特開平09-012471号公報 ・引用文献2:特開2011-001269号公報 ・引用文献13:国際公開第2012/115247号(周知技術を示す文献) ・引用文献14:特開2002-234845号公報(周知技術を示す文献) ・引用文献15:特開2004-131431号公報(周知技術を示す文献) ・引用文献16:特許第5362219号公報(周知技術を示す文献) 2.原査定の拒絶の理由に対する当審の判断 2-1.引用文献の記載事項(下線は当審による) (i)引用文献1 ・1a.「【請求項1】 チオレドキシン及びチオレドキシンリダクターゼを含有することを特徴とする皮膚外用剤。 【請求項2】 チオレドキシン及びチオレドキシンリダクターゼと、還元型ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)とを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。 【請求項3】 皮膚外用剤が化粧料であることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用剤。 【請求項4】 皮膚外用剤が化粧料であることを特徴とする、請求項2に記載の皮膚外用剤。」 ・1b.「【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、紫外線等により生じた酸化ストレスから皮膚を保護し、さらに皮膚の線維芽細胞の増殖を促進して皮膚の老化を防止し、またチロシナーゼ生成阻害作用により優れた美白効果を発揮し得る、非常に生理活性の高い皮膚外用剤に関する。さらに詳しくは、チオレドキシンとチオレドキシンリダクターゼの複合体、或いは前記複合体と還元型ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド(NADPH)とを含有して成る皮膚外用剤に関する。」 ・1c.「【0002】 【従来の技術】 紫外線,放射線,重金属などにより生じた活性酸素種は、動物の生体内において様々な反応を惹き起こすが、皮膚組織においても、これらの損傷や老化に深く関与することが知られている。このような酸化ストレスに対して、生体内ではさまざまな機構でレドックス制御が行われている。そして、かかるレドックス制御に関わる物質を皮膚外用剤に応用しようとする試みも見られ、グルタチオンエステルの配合(特公昭48-1505)、チオレドキシンの金属により触媒される酸化傷害への応用(特開昭62-246520,同63-230637)が知られている。 【0003】 しかしながら、上記した従来用いられている技術においては、主としてグルタチオンやチオレドキシンの有する還元作用を利用したものであって、生体の有するレドックス制御機構の正常化といった観点に立ったものではなかった。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 今回、本発明では、皮膚組織において生体の有するレドックス制御機構を正常化し、より活性化することにより、酸化ストレスに対する抵抗性を向上させ、酸化ストレスにより生じる種々の傷害反応を防止するという観点に立って、全く新しいタイプの皮膚外用剤を得ることを目的とした。」 ・1d.「【0005】【課題を解決するための手段】 本発明において、われわれは特にチオレドキシンを中心としたレドックス制御系に着目し、チオレドキシンとその還元酵素であるチオレドキシンリダクターゼの複合体を皮膚外用剤に配合することにより、酸化ストレスに対する抵抗性の向上,活性酸素種により生じる皮膚傷害の防止,改善作用の他に、優れた生理活性が得られることを見い出し、本発明を完成させるに至った。また、さらに水素供与体である還元型ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド(NADPH)を加えることにより、前記の生理活性がさらに高められることを見い出した。 【0006】 チオレドキシンは、分子量10,000~13,000のチオール(SH)基を有する電子伝達タンパク質で、リボヌクレオチドリダクターゼがリボヌクレオチド二リン酸をデオキシリボヌクレオチド二リン酸に還元する際の直接の電子供与体として作用する。生体内においては、チオレドキシンリダクターゼとともにレドックス制御系を形成する。・・・」 ・1e「【0009】(1)紫外線照射による細胞傷害に対する保護効果 マウスケラチノサイトを・・・培養した後、・・・、100μg/mlとしたチオレドキシン及びチオレドキシンリダクターゼ画分各100μlを添加し、FL-20S・Eランプを光源として・・・中波長紫外線(UVB)を照射した。照射後、・・・、ニュートラルレッド法により細胞生存率を求めた。結果は、図1において、UVBを照射しない対照培養系(1)の生存率を100%として、チオレドキシン及びチオレドキシンリダクターゼを添加しないでUVBを照射した系(2)、100μg/mlのNADPHのみを添加してUVBを照射した系(3)と比較して示した。 【0010】図1より、チオレドキシン画分及びチオレドキシンリダクターゼ画分を添加した系(4)では、これらを添加しなかった対照培養系(2)に比べて、UVB照射後の細胞生存率は約130%に上昇していた。なお、NADPHのみを添加した系(3)では、有意な細胞生存率の上昇は認められなかった。」 ・1f.「【0011】 (2)線維芽細胞増殖促進効果 ヒト線維芽細胞を・・・培養し、100μg/mlのチオレドキシン画分及びチオレドキシンリダクターゼ画分或いはさらに100μg/mlNADPHを各100μl添加し、さらに・・・培養した後、細胞数をチオレドキシン等を加えない対照(1)、及びNADPHのみを添加した系(3)と比較して、図2に示した。 【0012】 図2より、チオレドキシン画分及びチオレドキシンリダクターゼ画分を添加した系(4)では、対照(1)に比べて112%の細胞増殖促進効果が認められた。さらにNADPHを加えた系(5)ではほぼ120%の細胞増殖促進が見られた。一方、NADPHのみを加えた系(3)では、有意な細胞の増殖は認められなかった。」 ・1g.「【0013】(3)チロシナーゼ生合成阻害効果 100μg/mlのチオレドキシン画分及びチオレドキシンリダクターゼ画分或いはさらに100μg/mlのNADPHを、マウスB16メラノーマ細胞の懸濁液(・・・)に添加し、・・・培養を行った後、以下の方法により細胞中のチロシナーゼ活性を測定した。・・・。対照として、精製水を添加して同様に培養し、・・・。なお、ポジティブコントロールとして乳酸ナトリウムを最終濃度が0.3mMとなるように添加した系(6)、及びチオレドキシン画分を単独で添加した系(7)についても、同様にチロシナーゼ生合成阻害率を測定した。結果は図3に示した。 ・・・ 【0014】図3より明らかなように、チオレドキシン画分及びチオレドキシンリダクターゼ画分をともに添加した系(4)においては、細胞中のチロシナーゼ量は対照(1)の約60%まで減少していた。また、さらにNADPHを添加した系(5)においても同程度のチロシナーゼ生合成の阻害が認められた。一方、チオレドキシン画分を単独で添加した系(7)では、対照(1)に比べて有意なチロシナーゼ生合成量の減少は認められなかった。」 ・1h.「(図1~図3) 」 ・1i.「【0016】 【作用】 本発明に係る皮膚外用剤においては、チオレドキシン及びチオレドキシンリダクターゼの有する細胞保護作用,線維芽細胞増殖促進作用及びチロシナーゼ生合成阻害作用により、紫外線による皮膚の炎症や老化症状の防止及び改善、皮膚の創傷治癒促進,皮膚のしわ,たるみの消失,皮膚弾力性の回復等の皮膚細胞の賦活作用、しみやそばかすの改善や日焼け等の防止,改善といった皮膚の美白作用が認められる。」 ・1j.さらに、引用文献1の【実施例】の項(【0018】~【0035】)には、実施例1~6(【0018】~【0023】)の各種化粧料について「紫外線による皮膚の老化の防止効果、創傷治癒効果及び美白効果を評価した」(【0024】)試験及びその結果として、概要次の1j-1)~1j-3): ・1j-1) TRX及びTRXリダクターゼを併せ配合してなる各種化粧料(実施例1~6)、並びに、実施例1~6の各化粧料におけるTRX及びTRXリダクターゼに相当する成分を精製水に代替したもの(比較例1~6)を、それぞれ戸外で作業する20~50才の男女バネラー20名を1群とした各群の顔面及び手に1日2回6ヵ月間(4~9月)使用させたところ、実施例1~6のいずれもしわ減少及び皮膚弾性の上昇効果をもたらしたのに対し、比較例では変化がなかったか、又はしわが増加し皮膚弾性が低下したこと(【0025】~【0028】); ・1j-2) 1j-1の実施例1~6、比較例1~6の各種化粧料を、それぞれ人工的に創傷又は炎症を生じさせたマウス各5匹に対し1日2回7日間塗布したところ、実施例1~6のいずれも有効な創傷治癒及び抗炎症作用をもたらしたのに対し、比較例1~6ではいずれも創傷の完全治癒は認められず抗炎症作用もほとんど無効であったこと(【0029】~【0031】); ・1j-3) 1j-1の実施例1~6、並びに、実施例1~6の各化粧料におけるTRX及びTRXリダクターゼをTRXリダクターゼを配合せず2倍相当量のTRXに代替したもの(実施例7~12)を、それぞれ日焼け等の色素沈着が顕著に認められる30才~50才代の女性パネラー20名を1群とした各群に朝夕各1回3ヵ月継続して使用させたところ、実施例1~6では実施例4使用群の1例を除き色素沈着症状の改善がみられたのに対し、比較例使用分では若干の色素沈着の改善は認められるものの実施例使用群に比して改善の度合いは低かったこと(【0032】~【0034】); が記載されている。 (ii)引用文献2 ・2a.「【請求項1】 チオレドキシンスーパーファミリーのポリペプチドを有効成分とする紫外線誘発皮膚炎又は一次刺激性皮膚炎の予防又は治療用外用剤。 【請求項2】 チオレドキシンスーパーファミリーのポリペプチド及びヒアルロン酸又はその塩を有効成分とする紫外線誘発皮膚炎又は一次刺激性皮膚炎の予防又は治療用外用剤。 【請求項3】 チオレドキシンスーパーファミリーのポリペプチドが、ヒトチオレドキシンである請求項1又は2記載の予防又は治療用外用剤。」 ・2b.「【背景技術】 【0002】 紫外線を過剰に照射された皮膚には、あかみ、はれ、ほてり等が生じ、重篤化した場合には全身倦怠感、頭痛、発熱、悪寒、食欲不振、吐き気等の全身症状も生じる。これは日光皮膚炎とも呼ばれ、アレルギー性皮膚炎とは明確に区別されている。 一方、一次刺激性皮膚炎は、アレルギー性皮膚炎とは全く相違し、原因物質の刺激により皮膚の炎症を誘発する疾患であり、アレルギーとは無関係なので誰にでも起こり得るという特徴を有する。症状としてはそう痒を伴う発疹が、原因物質が接触した部分に出現し発赤、浮腫が生じることが多く、重症例では潰瘍を伴うこともある。原因物質としては、油、洗剤、石けんなどの刺激物質、アンモニア(おむつかぶれ)などがある。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 紫外線誘発皮膚炎又は一次刺激性皮膚炎の治療に用いられるステロイド薬は、副作用が懸念され、連用はさけるべきである。・・・ 従って、本発明の課題は局所投与可能な、紫外線誘発皮膚炎又は一次刺激性皮膚炎予防治療剤を提供することにある。」 ・2c.「【課題を解決するための手段】 【0007】 そこで本発明者は、チオレドキシンに着目して紫外線誘発皮膚炎又は一次刺激性皮膚炎に適用したところ、全く意外にも、チオレドキシンは、局所に外用した場合にこれらの皮膚炎を顕著に抑制することを見出した。さらにチオレドキシンとヒアルロン酸とを併用するとその効果が増強されることも見出した。 ・・・ 【0009】 本発明によれば、紫外線誘発皮膚炎及び各種一次刺激性皮膚炎、日光皮膚炎、及び例えば洗剤や油剤に起因するかぶれなどの治療が外用により安全に可能になった。」 ・2d.「【0023】 実施例1 アルビノヘアレスマウスの背部にチオレドキシン含有ヒドロゲル(チオレドキシン0.001w/v%、ヒアルロン酸1w/v%)を塗布(0.5μg/cm2)した。その2時間後にUV-Bを750J/m2照射した。UV-B照射直後、6時間後及び24時間後に皮膚を採取し、ヘマトキシリン染色によりサンバーン細胞を染色し、サンバーン細胞の消失を観察した。その結果を図1及び2に示す。図1及び2から明らかなようにプラセボ(ヒドロゲルのみ塗布)群では存在した多くのサンバーン細胞が、チオレドキシン塗布群では消失しており、チオレドキシンの外用により、紫外線照射による炎症が抑制されることが判明した。 【0024】 実施例2 ウィスター系雄性ラットの耳介に5%クロトン油含有起炎剤(クロトン油:エーテル:ピリジン:水=1:14:4:1)を塗布し、一次刺激性皮膚炎を惹起した。 チオレドキシン含有ヒドロゲル(チオレドキシン0.001w/v%、ヒアルロン酸1w/v%)は、皮膚炎惹起の2時間前に塗布した。炎症惹起6時間後及び24時間後に耳介の腫脹を測定した。その結果を図3に示すように、チオレドキシン塗布により一次刺激性皮膚炎が抑制されることが判明した。 なお、チオレドキシンを、アセトン:オリーブオイル(4:1)に溶解して塗布した場合の耳介腫脹の抑制効果は、チオレドキシンとヒアルロン酸とを併用した場合に比べて低かった。」 (iii)引用文献13 引用文献13には、 ・13a.角層(SC)キモトリプシン酵素であるKLK7、及びトリプシン様酵素であるKLK5が、皮膚の剥離において極めて重要な機能を有しており([0003])、角層剥離は細胞接着の働きを示すデスモゾームにKLKが作用してそれを分解することで生じる([0008]); ところ、 ・13b.当該角層剥離に寄与するKLK7がメソトリプシンにより直接活性化されることが見出され、角層剥離促進剤として使用するメソトリプシンの発現亢進作用を有する薬剤として、イチョウ葉エキス、ユキノシタエキス、イザヨイバラエキス、グリチルリチン酸ジカリウム及びエクトインがスクリーニングされたこと([0011];[0022]~[0026]、図1、図2;請求項1、2); が記載されている。 (iv)引用文献14 引用文献14には、 ・14a.正常な皮膚では、角質層の細胞同士を接着しているデスモソームの分解がスムーズに行われるため角質層の自然な剥離(落屑)が行われる一方、肌荒れの特徴としてはデスモソームが切れずに最外層の角質層でも残っていることから、このデスモソームの分解を促進させることが肌荒れ及び老化角質の重層化の改善につながることが期待されていること(【0002】); そのような肌荒れの改善のため、デスモソームの分解に関与するキモトリプシン様セリンプロテアーゼやトリプシン様セリンプロテアーゼの酵素活性を増強することにより、そのような肌荒れの改善が期待できること(【0003】~【0004】); を踏まえ、 ・14b.「角質層のpHである弱酸性条件下で角質層の剥離を再現する方法の確立により、皮膚の生理学的剥離効果を促進、さらには酵素活性阻害物質の存在下でも酵素の角質剥離効果を高め、健康な皮膚とすることを補助できる角質剥離促進剤及び皮膚化粧料等の皮膚外用剤を提供すること」、また「皮膚の角質層のターンオーバー速度を早め、古い角質を速やかに除去することにより古い角質層に含まれるメラニンを除去し、シミ・ソバカスや肌のくすみを改善しつつ、肌の透明感を向上させる効果にすぐれる化粧料を提供すること」(【0006】); を目的として、 ・14c.皮膚のトリプシン及びキモトリプシン様プロテアーゼの角層剥離効果を高める物質としてビタミンB12活性を有するコバラミン類を含有する角質剥離促進剤(請求項1)が提供されること; ・14d.同剤は「優れた角質層の剥離促進効果を有し、角質層の自然な剥離(落屑)を促すので、皮膚化粧料等の皮膚外用剤に配合した場合、皮膚の角質層のターンオーバー速度を早め、生理学的にも、美容的にも健やかな皮膚とすることができる」こと、また「肌荒れ防止剤とすることもできる」こと、その結果、「皺や肌荒れ、ドライスキンの防止、延いては角質層が異常に肥厚した疾患である乾癬又は角化症の外用治療剤等に利用できる」ことや、また「皮膚の角質層のターンオーバー速度を早め、古い角質を速やかに除去することにより古い角質層に含まれるメラニンを除去し、シミ・ソバカスや肌のくすみを改善しつつ、肌の透明感を向上させる効果にすぐれる化粧料」が提供されること(【0036】); が記載されている。、 (v)引用文献15 引用文献15には、 ・15a.大豆由来のサポニン、若しくはケール及び/又はその抽出物を含むことを特徴とする紫外線傷害予防又は改善用組成物(請求項1,2); について記載されており、より具体的には、 ・15b.プロテアソームは紫外線や酸化ストレスにより変性や傷害を受けた細胞内の異常タンパク質を除去し、ストレス応答にも密接に関係している(【0004】)ことから、生体内のプロテアソーム活性を促進し種々の疾病を予防及び改善する組成物が開発されている(【0005】)ところ; ・15c.大豆由来のサポニンがヒト皮膚線維芽細胞における紫外線(UBV)照射後の傷害を抑制し(【0043】~【0046】)、また、UVB照射の有無にかかわらず濃度依存的にトリプシン様プロテアソーム活性及びキモトリプシン様プロテアソーム活性を促進し(【0047】~【0050】)、UVB照射後に増加するカルボニル化タンパク質(生体内における老化の指標として知られている)を有意に低下させること(【0050】~【0052】); ケール抽出物も株化したラット肝細胞におけるトリプシン様プロテアソーム活性及びキモトリプシン様プロテアソーム活性を促進したこと(【0053】~【0055】); が記載されている。 (vi)引用文献16 引用文献16には、 ・16a.「皮膚から採取された女性の皮膚細胞及び/又は皮膚組織における分泌タンパク質及び/又は細胞内タンパク質の発現及び/又はその遺伝子発現を測定することを含む、加齢により生じた皮膚の老化現象の程度を判定する方法であって、前記分泌タンパク質及び/又は細胞内タンパク質が、Kallikrein 7である前記方法。」(請求項1); について記載されており、より具体的には、 ・16b.「ヒトの皮膚老化度の指標として、加齢との相関が明らかになっている目尻の弾力性としわ体積率」(23頁25~26行)を用いて、KLK7の発現と皮膚老化度との相関性を調べたところ、KLK7の発現量は、目尻弾力性の低下に伴って有意に減少し、目尻のしわ体積率の増加に伴って有意に減少したこと(23頁36~40行、図18、図19); 以て、KLK7がヒトの皮膚老化度と相関することが明らかになったこと(23頁41~43行); が記載されている。 2-2.対比・判断 (1)理由1-1についての判断 (1-1)本願発明2について (i) 本願発明2は、【第2】の請求項2に記載されたとおりのものである。 ここで、請求項2は請求項1を引用する形式で記載されているところ、当該請求項1の記載を請求項2内に直接記載して表すと、次のようになる。 『 チオレドキシン(チオレドキシンリダクターゼを含むものを除く)からなる皮膚におけるカリクレイン7産生促進剤(レドックス制御機構の正常化、または、皮膚炎予防治療を目的として使用するものを除く) を含有する皮膚におけるカリクレイン7産生促進用の組成物(レドックス制御機構の正常化、または、皮膚炎予防治療を目的として使用するものを除く。チオレドキシンリダクターゼを含むものを除く)。 』 (ii)引用文献1に記載された発明 2-1.(i)の引用文献1の記載によれば、同文献に係る皮膚外用剤(摘示事項1a)が、従来のTRXの酸化傷害への応用はTRXの還元作用を利用したものであって生体の有するレドックス制御機構の正常化を企図するものではなかったこと(摘示事項1c)を踏まえ、皮膚におけるレドックス制御を正常化しより活性化することにより酸化ストレスに対する抵抗性を向上させ、酸化ストレスにより生じる種々の傷害反応を防止するために提供されるものであることが把握でき(摘示事項1c,1d)、そのような酸化ストレスにより生じる種々の傷害反応として摘示事項1e~1jで採用されているいずれかの症状、例えば紫外線照射による細胞障害(摘示事項1e)が挙げられるものと把握することができる。 そうすると、これらの摘示事項を含む引用文献1には、次の発明: 「 チオレドキシン及びチオレドキシンリダクターゼを含有することを特徴とする、皮膚におけるレドックス制御を正常化しより活性化することにより酸化ストレスに対する抵抗性を向上させ、酸化ストレスにより生じる種々の皮膚の傷害反応を防止するための、皮膚外用剤 」 (以下、単に「引用発明1」ということがある)が記載されているものと認められる。 (iii)対比・判断 (iii-1)新規性について (i)の本願発明2と引用発明1を対比するに、両者は ‘チオレドキシンを含有する、皮膚用の組成物’ の点で一致するが、次の1)及び2)の点: 1) 組成物中の「チオレドキシン」について、 ・本願発明2では「チオレドキシン」からなり「チオレドキシンリダクダーゼを含むものを除く」のに対し、 ・引用発明1では「チオレドキシン」及び「チオレドキシンリダクターゼ」を含有する; 2) 「チオレドキシン」並びにそれを含む「組成物」の皮膚における作用又は用途について、 ・本願発明2では次の要件2A及び2B: 2A) 「皮膚におけるカリクレイン7産生促進」用 2B) 「レドックス制御機構の正常化、または、皮膚炎予防治療を目的として使用するものを除く。」 を共に満たすのに対し、 ・引用発明1では 上の2Aに係る限定はなく、かつ、 同2Bに係る限定はなく、「皮膚におけるレドックス制御を正常化しより活性化することにより酸化ストレスに対する抵抗性を向上させ、酸化ストレスにより生じる種々の傷害反応を防止するための」とされている; (以下、1)、2)を順に「相違点1」、「相違点2」ということがある)において、相違する。 そうすると、本願発明2は引用文献1に記載された発明とはいえない。 (iii-2)進歩性について 以下、上記相違点1、2について検討する。 (ア)相違点1について (ii)でも述べたとおり、引用文献1の記載から、引用発明1に係る皮膚外用剤が、従来のTRXの酸化傷害への応用はTRXの還元作用を利用したものであって生体の有するレドックス制御機構の正常化を企図するものではなかったこと(摘示事項1c)を踏まえ、皮膚におけるレドックス制御を正常化しより活性化することにより酸化ストレスに対する抵抗性を向上させ、酸化ストレスにより生じる種々の傷害反応を防止するために提供されるものであることが把握できる(摘示事項1c,1d)のだから、引用発明1において、TRXと共に当該レドックス制御機構を形成する要素であるTRXリダクターゼ(摘示事項1d)を敢えて含まないものとすることの動機付けが、引用文献1から容易に得ることができるとは到底いえない。 また、引用文献13~16には、TRX及びTRXリダクターゼで形成されるレドックス制御機構について具体的な記載乃至示唆が認められず、また、TRXそれ自体及びその作用についてすら具体的な記載乃至示唆を認めることができず(2-1.(iii)~(vi))、かかる引用文献13~16の記載を併せ参酌したとしても、引用発明1のTRXにおいて相違点1に係る要件を付加することが、当業者にとり引用文献1に基づいて容易に想到し得たことであるとはいえない。 (イ)相違点2について (イ1)要件2B:「「レドックス制御機構の正常化、または、皮膚炎予防治療を目的として使用するものを除く。」」点について 事案に鑑み、上述の相違点2に係る要件2A、2Bのうちまず2Bについて検討する。 引用発明1が、皮膚における「レドックス制御を正常化し活性化すること」に基づいて酸化ストレスに対する抵抗性を向上させるためのものである以上、引用発明1において、敢えて上述の相違点2の要件2Bに含まれる「「レドックス制御機構の正常化」を目的として使用するものを除く」という要件を付加することの動機付けが、引用文献1から容易に得ることができるとは到底いえない。引用文献13~16の記載を併せ参酌しても同様である。 そうすると、引用発明1の組成物において、たとえ引用文献13~16の記載を併せ参酌しても、同要件2Bに含まれる「「レドックス制御機構の正常化」を目的として使用するものを除く」との要件を付加することが、当業者にとり引用文献1に基づいて容易に想到し得たことであるとはいえない。 (イ2)要件2A:「「皮膚におけるカリクレイン7産生促進」用」である点について ・(イ2-1) 引用文献1には、引用発明1の有効成分であるTRX及びTRXリダクターゼの組合せが、皮膚におけるKLK7の産生を促進する作用を有することについて、記載も示唆もされていない。 また、引用発明1の「皮膚におけるレドックス制御を正常化しより活性化する」作用、若しくは同作用により「酸化ストレスに対する抵抗性を向上させ、酸化ストレスにより生じる種々の傷害反応を防止する」作用について、 ・その作用機序から、皮膚におけるKLK7の産生促進作用を自然に導き出し得る; とか、若しくは ・その作用機序と密接に関連する薬理効果により、皮膚におけるKLK7の産生促進作用が必然的に生じる; といった技術常識の存在が本願優先日当時当業者において知られていたものとも認められない。引用文献13~16(2-1.(iii)~(vi))の記載を併せ参酌しても同様である。 ・(イ2-2) また、TRXの皮膚における作用に関し、 ・本願明細書の記載によれば、目尻の弾力性の低下や目尻のしわ体積率の増加といった指標で表され得る加齢による皮膚老化に伴って、皮膚の角層KLK7発現量は減少するところ(本願明細書【0001】~【0002】。なお、ここでいう皮膚老化が加齢によるものである点については、要すれば【0002】で「特許文献1」として引用されている引用文献16の摘示事項16a、16bを参照のこと)、当該皮膚角質におけるKLK7は「角質層の細胞間どうしの結合部分を切断することにより皮膚表面からの細胞の落屑を促」す作用を有する(本願明細書【0009】)ことから、本願発明に係るKLK7産生促進剤により「皮膚内のKLK7量を増加させることで皮膚の抗老化作用が期待できる」(本願明細書【0009)】)こと; 及び ・引用文献1には、紫外線等により生じた酸化ストレスが皮膚の損傷や老化に関与しているところ、そのような酸化傷害に対しTRXの還元作用を利用することは以前から知られていたことが併せ記載されていること(摘示事項1c); を併せみると、皮膚における抗老化作用という点では、本願発明2と引用文献1のTRXの作用は、一見共通しているかのようにも思われる。 しかしながら、以下のa)及びb)の点を考慮すれば、引用文献1のTRXの還元作用に基づく抗老化作用と、本願発明2のKLK7産生促進作用に基づく皮膚の抗老化作用とが同質の作用であるとはいえないし、また、TRXによる還元作用から、若しくは引用発明1に係るTRX-TRXリダクターゼの組合せによるレドックス制御機構の正常化作用を通じた紫外線等による皮膚の光老化の防止及び改善作用から、本願発明2のKLK7産生促進作用に基づく皮膚の抗老化作用が予期し得たということもできない。 a) 引用発明1のTRX又はレドックス制御系(TRX-TRXリダクターゼ複合体)による抗老化作用は、紫外線等の「酸化ストレスにより生じる種々の皮膚の傷害反応を防止する」作用を介してもたらされるものである。 これに対し、本願発明2のTRX(TRXリダクターゼを含むものと除く)による抗老化作用は、上述のとおり、産生促進されたKLK7による「角質層の細胞間どうしの結合部分を切断することにより皮膚表面からの細胞の落屑を促」す作用を高め、以て、例えば引用文献14に記載されるように、皮膚の角質層のターンオーバー速度を早め、古い角質層を速やかに除去して(摘示事項14b、14d)老化角質の重層化を改善し(摘示事項14a)、古い角質層に含まれるメラニンを除去することでシミ・ソバカスや肌のくすみを改善する(摘示事項14b、14d)、という作用を介してもたらされるものと考えられる。 即ち、本願発明2による抗老化作用と、引用発明1のTRX又はレドックス制御系による抗老化作用とは、同じ「抗老化」作用ではあっても、それらの作用によりもたらされる皮膚への作用効果は質的に同様であるとはいえない。 b) 一口に皮膚老化といっても、その原因は自然老化(加齢による皮膚の変化)と光老化に大別されるところ(この点については、要すれば 日本化粧品技術者会編「化粧品事典」(平成17年4月25日第3刷発行)(株)丸善 の ・b1)自然老化について、511~512頁「自然老化」の項 ・b2)光老化について、679頁「光老化」の項 を参照のこと)、本願明細書の【0001】~【0002】にいう加齢による皮膚老化は前者に相当し、引用文献1の紫外線等により生じる酸化ストレスによる酸化傷害は後者に相当する。そして、b1)の「自然老化」の項によれば、「自然老化と光老化では、皮膚の性状や内部の組織変化は大きく異なっている」(511頁右欄7~9行。下線は当審による)。 また、上のb1)の「自然老化」の項によれば、「自然老化」自体、「角層バリア機能の変化」(角層バリア破壊が起こった場合、老化皮膚ではバリア回復が遅くなる)、「水分保持機能の変化」(老化するとアミノ酸を中心とする天然保湿因子(NMF)が低下しその結果として角層水分量が低下する)、「皮脂分泌機能の変化」(皮脂腺の活動に影響するホルモンの血中濃度の変化)、「表皮の変化」(表皮基底細胞の増殖能の低下によるターンオーバー時間の長期化、メラノサイト数の減少等)、「真皮の変化」(線維芽細胞の増殖機能の低下)、「皮膚血流の変化」(毛細血管の減少による細胞機能の低下)、「更年期後の女性の皮膚変化」(女性ホルモンの大きな減少)(511頁右欄16行~512頁右欄6行)といった、遺伝的な素因や内分泌の変化等の加齢に伴う、種々の細胞機能低下に起因する現象である(511頁右欄13~15行)。 即ち、皮膚の老化には、引用文献1に記載された紫外線等の酸化ストレスに伴い生じる皮膚傷害(光老化)以外にも、自然老化(加齢による老化)が存在し、しかも、当該自然老化を生じさせる要因としては様々なことが考えられる。そして、そうであれば、皮膚の老化に対する防止又は改善法も、当該老化の要因に応じ、様々に異なるものと考えられる。 してみれば、引用文献1に、TRX又は引用発明1に係るレドックス制御系により、酸化ストレスによる皮膚老化の症状の防止又は改善が見込まれるからといって、皮膚におけるKLK7産生促進及びそれに伴う角質の落屑(ターンオーバー)速度の向上を介した抗老化作用がもたらされることも併せて予期される、とは、当業者といえども直ちに想到し得るものではない。 ・(イ2-3) なお、2-1.(iii)~(v)で摘記したとおり、イチョウ葉エキス等のメソトリプシン発現亢進剤又やビタミンB12活性を有するコバラミン類により、皮膚角層のKLK7又はキモトリプシン様セリンプロテアーゼの発現又は活性を高めることで角層の落屑(ターンオーバー)を促進せしめることは、引用文献13又は14に記載され、また、大豆サポニンにより、皮膚線維芽細胞における紫外線傷害が抑制されると共にキモトリプシン様プロテアソーム活性が高まることは引用文献15に記載されているところ、これら引用文献13~15及び引用文献16(2-1.(vi))のいずれも、TRX(TRXリダクターゼを含むものを除く)について言及されておらず、TRX(TRXリダクターゼを含むものを除く)のKLK7産生促進剤(レドックス制御機構の正常化、または、皮膚炎予防治療を目的とするものを除く)としての作用又は用途について想起させるものでないことは、上の(ア)等で既に述べたとおりである。 (ウ) 以上の(ア)~(イ)での検討を踏まえると、引用発明1に対し、上記相違点1及び2に係る要件を併せ具備することの動機付けのいずれも、引用文献1や引用文献13~16の記載から得ることができたとはいえないから、本願発明2は、引用発明1及び引用文献13~16の記載に基づいて当業者にとり容易に想到し得たものということはできない。 (エ)本願発明の効果について 本願明細書の実施例1で具体的な試験結果を以て示されるとおり、本願発明2に係る組成物は、その有効成分であるTRX(TRXリダクターゼを含むものを除く)により皮膚の表皮角化細胞におけるKLK7の産生が促進され、しかもその促進作用の程度は既知のKLK7産生促進剤である塩化カルシウムやレチノイン酸(本願明細書【0002】、若しくは【第3】1.(2)で引用された「非特許文献1」:J.INVEST.DERMATOL.,(2010) 130(5) P.1297-1306中の1298頁図1を参照)より高い、という格別の効果を奏するものである。 (iv)小活 以上の検討のとおりであるから、本願発明2は、たとえ引用文献13~16の記載を踏まえても、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (1-2)本願発明3について 本願発明3は、本願発明2を引用する本願発明2の従属発明であるから、本願発明2について(1-1)(iii-1)で述べたのと同様の相違点1及び2に係る発明特定事項を併せ具備するものである。 よって、本願発明3は、上記相違点1、2以外の相違点について検討するまでもなく、本願発明2について(1-1)で述べたのと同様の理由により、引用文献13~16の記載を踏まえても、引用文献1に記載された発明であるとはいえず、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (1-3)付記:本願発明1について なお、原査定においては、本願発明1は理由1-1.に基づく新規性否定及び/又は進歩性否定の拒絶の理由の対象とはなっていないが、 ・(1-1)(iii-2)(イ2)で述べたとおり、本願発明1に係る有効成分であるTRX(TRXリダクターゼを含むものを除く)によりKLK7産生促進作用をもたらしめることは、たとえ引用文献13~16の記載を考慮したとしても引用文献1から当業者が容易に想到し得たとはいえず; そして、 ・(1-1)(iii-2)(エ)で述べたとおり、当該TRX(TRXリダクターゼを含むものを除く)により、皮膚の表皮角化細胞におけるKLK7の産生が促進され、しかもその促進作用の程度は既知のKLK7産生促進剤である塩化カルシウムやレチノイン酸よりも高い、という本願明細書に記載された格別の効果がもたらされる; のであるから、本願発明1もまた、原査定の理由1-1.により新規性及び進歩性が否定されるものでないことを付記しておく。 (2)理由1-2についての判断 (2-1)本願発明1について (i) 本願発明1は、【第2】の請求項2に記載されたとおりのものである。 (ii)引用文献2に記載された発明 引用文献2の摘示事項2aによれば、引用文献2には、次の発明: ‘チオレドキシンを有効成分とする、紫外線誘発皮膚炎又は一次刺激性皮膚炎の予防又は治療用外用剤’ (以下、単に「引用発明2」ということがある)の発明が記載されているものと認められる。 (iii)対比・判断 (iii-1)新規性について 本願発明1と引用発明2を対比するに、引用文献2には引用発明2におけるTRXがTRXリダクターゼを併せ配合してなるものであることの特段の記載が認められないことを踏まえると、両者は ‘チオレドキシン(チオレトキシンリダクターゼを含むものと除く)を含有する、皮膚用の剤’ の点で一致するが、次の3)の点: 3) 「チオレドキシン」の皮膚における作用又は用途について、 ・本願発明1では次の要件3A及び3B: 3A) 「皮膚におけるカリクレイン7産生促進」用 3B) 「レドックス制御機構の正常化、または、皮膚炎予防治療を目的として使用するものを除く。」 を共に満たすのに対し、 ・引用発明2では 上の3Aに係る限定はなく、かつ、 同3Bに係る限定はなく、「紫外線誘発皮膚炎又は一次刺激性皮膚炎の予防又は治療用」のものである; (以下、「相違点3」ということがある)において、相違する。 そうすると、本願発明1は引用文献2に記載された発明とはいえない。 (iii-2)進歩性について 以下、上記相違点3について検討する。 (ア)要件3B:「「レドックス制御機構の正常化、または、皮膚炎予防治療を目的として使用するものを除く。」」点について 事案に鑑み、上述の相違点3に係る要件3A、3Bのうちまず3Bについて検討する。 引用文献2の記載からみて、引用発明2が、皮膚炎の中でも特定の、(アレルギー性皮膚炎とは明確に区別される)紫外線誘発皮膚炎又は一次刺激性皮膚炎を予防又は治療対象とするものであることが意図されている(摘示事項2b、2c)以上、引用発明2の予防又は治療対象から、上記紫外線誘発性皮膚炎及び一次刺激性皮膚炎を含め任意の「皮膚炎」の予防治療を目的として使用するものを「除く」ことを規定する要件3Bを付加することの動機付けが、引用文献2から容易に得ることができるとは到底いえない。引用文献13~16の記載を併せ参酌しても同様である。 そうすると、たとえ引用文献13~16の記載を併せ参酌しても、同要件3Bに含まれる「「皮膚炎予防治療」を目的として使用するものを除く」との要件を付加することが、当業者にとり引用文献2に基づいて容易に想到し得たことであるとはいえない。 (イ)要件3A:「「皮膚におけるカリクレイン7産生促進」用」である点について ・(イ2-1) 引用文献2には、引用発明2の有効成分であるTRXが皮膚におけるKLK7の産生を促進する作用を有することについて、記載も示唆もされていない。 また、引用発明2の「紫外線誘発皮膚炎又は一次刺激性皮膚炎の予防又は治療」作用について、 ・その作用機序から、皮膚におけるKLK7の産生促進作用を自然に導き出し得る; とか、若しくは ・その作用機序と密接に関連する薬理効果により、皮膚におけるKLK7の産生促進作用が必然的に生じる; といった技術常識の存在が本願優先日当時当業者において知られていたものとも認められない。引用文献13~16の記載(2-1.(iii)~(vi))を併せ参酌しても同様である。 ・(イ2-2) また、TRXの皮膚における作用に関し、 ・(1-1)(iii-3)(イ2-2)で述べたとおり、本願明細書の【0001】~【0002】及び【0009】等の記載によれば、本願発明1のTRX(TRXリダクターゼを含むものと除く)により産生促進されたKLK7により「角質層の細胞間どうしの結合部分を切断することにより皮膚表面からの細胞の落屑を促」す作用が高められ、以て、例えば引用文献14に記載されるように、皮膚の角質層のターンオーバー速度を早め、古い角質層が速やかに除去されて老化角質の重層化が改善され、古い角質層に含まれるメラニンが除去されることでシミ・ソバカスや肌のくすみが改善されるという作用を介したもたらされるものと考えられる; のに対し、 ・引用文献2には、TRXによる上述のような老化角質の重層化の改善作用や古い角質層に含まれるメラニンの除去作用について記載乃至示唆がみられないのみならず、紫外線誘発皮膚炎又は一次刺激性皮膚炎に伴う皮膚の老化症状も予防又は治療の対象とすることについての特段の記載乃至示唆もない。 してみると、たとえ(1-1)(iii-3)(イ2-2)b)で述べたように、皮膚の老化の中には例えば引用文献2の紫外線照射に伴う「光老化」が含まれることを併せ考慮したとしても、TRXによる紫外線誘発皮膚炎又は一次刺激性皮膚炎に対する予防又は治療効果がもたらされることが引用文献2に記載されているからといって、皮膚におけるKLK7産生促進及びそれに伴う角質の落屑(ターンオーバー)速度の向上を介した抗老化作用がもたらされることも併せて引用文献2から予期される、とまでは、当業者といえども容易に想到し得るものではない。 (ウ) 以上の(ア)~(イ)での検討を踏まえると、引用発明2に対し、上記相違点3に係る要件を併せ具備することの動機付けは、引用文献2や引用文献13~16の記載から得ることができたとはいえないから、本願発明1は、引用発明2及び引用文献13~16の記載に基づいて当業者にとり容易に想到し得たものということはできない。 (エ) そして、本願発明1は、(1-1)(iii-2)(エ)で述べたように、本願明細書の実施例1で具体的な試験結果を以て示されるとおりの、格別の効果を奏するものである。 (iv)小活 したがって、本願発明1は、たとえ引用文献13~16の記載を踏まえても、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2-2)本願発明2、3について 本願発明2は、本願発明1に係るカリクレイン7産生促進剤を含有する、皮膚におけるカリクレイン7産生促進用の組成物であって「(レドックス制御機構の正常化、または、皮膚炎予防治療を目的として使用するものを除く。チオレドキシンリダクターゼを含むものを除く)」ものであり、また、本願発明3は、本願発明2を引用する本願発明2の従属発明である。 即ち、本願発明2、3は共に、本願発明1に係る発明を発明特定事項として含むものであって、本願発明1について(2-1)(iii-1)で述べたのと同様の相違点3に係る発明特定事項を併せ具備するものである。 よって、本願発明2、3はいずれも、上記相違点3以外の相違点について検討するまでもなく、本願発明1について(2-1)で述べたのと同様の理由により、引用文献13~16の記載を踏まえても、引用文献2に記載された発明であるとはいえず、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者容易に発明をすることができたものであるともいえない。 【第5】付記:前置報告書における拒絶の理由について 1. 平成31年1月22日付けの前置報告書に示されたいわゆる独立特許要件違反の理由の概要は、前述の引用文献14~16の記載を考慮すると、本願発明1~3はいずれも、引用文献18~20のいずれかに記載された発明と用途上区別し得ないから、特許法第29条第1項第3号、同法同条第2項の規定により独立して特許を受けることができない、というものである。 ( 記 ) ・引用文献18:京大発ベンチャー、清酒由来成分の事業化本格化、黄桜から化粧品,化学工業日報,2013年 4月 1日,第5頁,[ONLINE],日経テレコン, [retrieved on 2019-01-18] ・引用文献19:化粧品原料 アリスタヘルス&ニュートリション,化学工業日報,2013年 3月15日,第8頁,[ONLINE],日経テレコン, [retrieved on 2019-01-18] ・引用文献20:日本酒成分入り化粧品、黄桜、40~60代女性向け。,日本経済新聞 地方経済面 京都・滋賀,2013年 4月 4日,第45頁,[ONLINE],日経テレコン, [retrieved on 2019-01-18] 2.そこで、上記1.の独立特許要件違反の理由の当否についても念のため検討しておく。 (1) 引用文献18には、清酒由来の機能性成分TRXを配合してなる「京美水エイジケア」なる化粧品が開発されたこと等が記載されており、当該TRXが炎症や免疫応答、老化を抑制する作用を有していることが記載されている。 また、引用文献20にも、引用文献18の記載と同じ製品名の「京美水エイジケア」、並びに、同製品に配合された日本酒由来の成分であるTRXには抗酸化作用があり、炎症を抑えたり乾燥した肌を回復させたりする効果があることが記載されている。 引用文献19にも、清酒由来の抗ストレス成分であるTRXが開発中であり、UV等のストレス防御や抗老化作用、アトピー改善効果が確認されたことが記載されており、新規スキンケア成分とし得ることが示唆されている。 (2) しかしながら、これら引用文献18~20のいずれにも、TRX(TRXリダクターゼを含むものを除く)がKLK7の産生促進剤としての作用又は用途を有することについて、記載も示唆もされていない。前述の引用文献14~16の記載を併せ考慮したとしても同様である。 さらに、【第4】2-2.の(1-1)(iii-3)(イ2)や(2-1)(iii-3)(イ2)において、引用文献1に記載された酸化ストレスに対する抑制作用及びそれに伴う抗老化作用や、引用文献2に記載された紫外線誘発皮膚炎又は一次刺激性皮膚炎に対する予防又は治療作用について検討・説示したのと同様に、引用文献18~20において単にTRXがUV等のストレスに対する防御作用、抗老化作用、及び/又は抗炎症作用を有していることが記載乃至示唆されているからといって、皮膚におけるKLK7産生促進及びそれに伴う角質の落屑(ターンオーバー)速度の向上を介した抗老化作用がもたらされることも併せて予期される、とまでは、当業者といえども容易に想到し得るものではない。 そして、本願発明1に係る剤、並びに同剤を含有する本願発明2及び3の各組成物は、上の【第4】2-2.(1-1)(iii-3)(エ)等で述べたとおりの、本願明細書に記載された格別の効果を奏するものである。 したがって、本願発明1~3はいずれも、引用文献14~16の記載を踏まえたとしても、引用文献18~20のいずれかに記載されたものではないし、引用文献18~20のいずれかに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 よって、上記1.の理由はない。 【第6】むすび 以上のとおりであるから、当審からの拒絶理由通知書における拒絶の理由、原査定時に示された拒絶の理由のいずれによっても、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2018-015116

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