特許拒絶査定不服審判
2018-014168
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、その製造方法および成形体
- 審判番号
- 2018-014168
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-507485外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年10月25日
- 審決日
- 2019年07月22日
- 公報発行日
- 2019年09月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-507485「ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、その製造方法および成形体」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月17日国際公開、WO2015/137228、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)3月5日(優先権主張 平成26年3月10日)を国際出願日とする出願であって、 その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年10月4日付け 拒絶理由通知
平成30年 2月8日 意見書、手続補正
同年 7月23日付け 拒絶査定
同年10月25日 審判請求
第2 原査定の概要
原査定(平成30年7月23日付け拒絶査定)の概要は、本願の請求項1~4に係る発明は、以下の引用文献1、2又は3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2012-36386号公報
引用文献2:特開平10-298430号公報
引用文献3:特開2011-228685号公報
第3 本願発明
本願請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」等という。)は、平成30年2月8日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、見かけ比重0.7以上の水酸化マグネシウム(B)とを、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の30~70質量部に対して、前記水酸化マグネシウム(B)を70~30質量部の範囲で溶融混練押出機に投入し、吐出量100(kg/hr)以上なる混練条件下に溶融混練することを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
吐出量(kg/hr)とスクリュー回転数(rpm)との比率(吐出量/スクリュー回転数)が0.4(kg/hr/rpm)以上なる混練条件下で溶融混練する請求項1記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、見かけ比重0.7以上の水酸化マグネシウム(B)に加え、さらに繊維状強化材(C)を、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)及び前記水酸化マグネシウム(B)の合計100質量部に対して10~50質量部の範囲で溶融混練押出機に投入する請求項1又は2記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、見かけ比重0.7以上の水酸化マグネシウム(B)に加え、さらに粘土鉱物(D)を、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)及び前記水酸化マグネシウム(B)の合計100質量部に対して1~25質量部の範囲で溶融混練押出機に投入する請求項1~3のいずれか一項記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。」
第4 引用文献の記載及び引用文献に記載された発明
1 引用文献1について
ア 引用文献1には、以下の記載がある。
(ア-1)「【0063】
・・・
【実施例】
・・・
【0073】
参考例2 水酸化マグネシウム
B1:協和化学工業社製“KISUMA5EU”。
・・・
【0080】
実施例1~13
スクリュー径44mmの同方向回転ベント付き2軸押出機(日本製鋼所製、TEX-44)を用いて、表1に示す参考例1のポリフェニレンスルフィド樹脂および、参考例4のオレフィン系樹脂を元込め部から添加し、参考例2の水酸化マグネシウムおよび、参考例3のガラス繊維、参考例5のタルク、参考例6のマイカを中間添加口から投入し、樹脂温度300℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混練を行い、ペレットを得た。ついで130℃の熱風乾燥機で5時間乾燥した後、後述する評価を行った。結果を表1に示す。」
(イ-1)「【0089】
」
イ 記載事項(ア-1)及び(イ-1)(特に実施例1~3、5~7)から、引用文献1には以下の発明が記載されていると認められる。
「スクリュー径44mmの同方向回転ベント付き2軸押出機を用いて、ポリフェニレンスルフィド樹脂を元込め部から添加し、水酸化マグネシウム「協和化学工業社製”KISUMA5EU”」及び、ガラス繊維を中間添加口から投入し、樹脂温度300℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混練を行い、ペレットを得る方法であって、ポリフェニレンスルフィド樹脂、水酸化マグネシウム、及び、ガラス繊維の配合量が、(43重量%、41重量%、16重量%)、(28重量%、28重量%、44重量%)、(33重量%、52重量%、15重量%)、(35重量%、30重量%、35重量%)又は(30重量%、43重量%、27重量%)である方法。」(以下、「引用発明1」という。)
2 引用文献2について
ア 引用文献2には、以下の記載がある。
(ア-2)
「【0051】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
・・・
【0060】
・・・
(D)タルク、水酸化マグネシウム
D-1:タルク
D-2:水酸化マグネシウム、協和化学工業社製”キスマ”5EU
・・・
【0062】実施例1~8
表1に示す各成分を表1に示す割合でドライブレンドした後、280~320℃の温度条件に設定したスクリュー式単軸押出機により溶融混練後ペレタイズした。得られたペレットを用い耐トラッキング性および曲げ強度測定試験片を成形し、成形下限圧力を測定した。得られた試験片について測定したCTI、曲げ強度を表1に示す。」
(イ-2)「【0067】
」
イ 記載事項(ア-2)及び(イ-2)(特に実施例5)から、引用文献2には以下の発明が記載されていると認められる。
「PPS樹脂を100重量部、カオリンを110重量部、水酸化マグネシウム「協和化学工業社製”キスマ”5EU」を55重量部、充填材を70重量部をドライブレンドした後、280~320℃の温度条件に設定したスクリュー式単軸押出機により溶融混練後ペレタイズして、ペレットを製造する方法。」(以下、「引用発明2」という。)
3 引用文献3について
ア 引用文献3には、以下の記載がある。
(ア-3)「【0056】
・・・
【実施例】
・・・
【0065】
参考例2 水酸化マグネシウム
B1:協和化学工業社製“KISUMA5EU”、密度2.4g/cm3
・・・
【0068】
実施例1~9
スクリュー径44mmの同方向回転ベント付き2軸押出機(日本製鋼所製、TEX-44)を用いて、表1に示す参考例1のポリフェニレンスルフィド樹脂および、参考例4のオレフィン系樹脂を元込め部から添加し、参考例2の水酸化マグネシウムおよび、参考例3のガラス繊維を中間添加口から投入し、樹脂温度300℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混練を行い、ペレットを得た。ついで130℃の熱風乾燥機で5時間乾燥した後、後述する評価を行った。結果を表1に示す。」
(イ-3)「【0075】
」
イ 記載事項(ア-3)及び(イ-3)(特に実施例1~3、5~7)から、引用文献3には以下の発明が記載されていると認められる。
「スクリュー径44mmの同方向回転ベント付き2軸押出機を用いて、ポリフェニレンスルフィド樹脂を元込め部から添加し、水酸化マグネシウム「協和化学工業社製”KISUMA5EU”」及びガラス繊維を中間添加口から投入し、樹脂温度300℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混練を行い、ペレットを得る方法であって、ポリフェニレンスルフィド樹脂、水酸化マグネシウム及びガラス繊維の配合量が、(44重量%、41重量%、15重量%)、(28重量%、27重量%、45重量%)、(35重量%、50重量%、15重量%)、(35重量%、30重量%、35重量%)又は(27重量%、12重量%、61重量%)である方法。」(以下、「引用発明3」という。)
第5 対比・判断
1 引用文献1を主引用例とした場合
(1)本願発明1について
引用発明1の「ポリフェニレンスルフィド樹脂」は、本願発明1の「ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)」に相当する。
引用発明1の「水酸化マグネシウム「協和化学工業社製”KISUMA5EU”」」は、本願明細書に記載された実施例で使用された「水酸化マグネウム「キスマ5EU」(協和化学株式会社製)見かけ比重0.87」と同一のものであると解されるから、本願発明1の「見かけ比重0.7以上の水酸化マグネシウム(B)」に相当する。
引用発明1の「スクリュー径44mmの同方向回転ベント付き2軸押出機を用いて、ポリフェニレンスルフィド樹脂を元込め部から添加し、水酸化マグネシウム「協和化学工業社製”KISUMA5EU”」及びガラス繊維を中間添加口から投入」し「溶融混練を行」ことは、本願発明1の「ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、見かけ比重0.7以上の水酸化マグネシウム(B)とを」「溶融混練押出機に投入し」「溶融混練する」ことに相当する。
引用発明1の「ペレット」はポリフェニレンスルフィド樹脂を含むものであり、本願発明1の「ポリアリーレンスルフィド組成物」に相当する。
引用発明1のポリフェニレンスルフィド樹脂、水酸化マグネシウム及びガラス繊維の配合量に基づいて、ポリフェニレンスルフィド樹脂と水酸化マグネシウムとの重量割合を計算すると、ポリフェニレンスルフィド樹脂39~54質量部、水酸化マグネシウム61~46質量部と計算され、いずれもそれぞれ、「30~70質量部」、「70~30質量部」の範囲に包含される。
してみると、本願発明1と引用発明1とは、
「ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、見かけ比重0.7以上の水酸化マグネシウム(B)とを、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の30~70質量部に対して、前記水酸化マグネシウム(B)を70~30質量部の範囲で溶融混練押出機に投入し、溶融混練するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
溶融混練に関し、本願発明1では、吐出量100(kg/hr)以上なる混練条件下に溶融混練するに対して、引用発明1ではこの点についての記載がない点。
相違点1について検討する。
本願発明1は、本願明細書全体の記載、特に【0006】、【0039】及び【0045】~【0060】の記載からみて、フィードネック現象を抑制し、安定した生産が可能な、優れた生産性を有するポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法を提供することを課題とし、特定の見かけ比重を有する水酸化マグネシウムを使用することにより、当該課題を解決したものと解される。
これに対して引用発明1は、見かけ比重が本願発明1の規定を満たす水酸化マグネシウムを使用しているものの、引用文献1には、溶融混練の際の吐出量についての記載は何らなく、ましてや、上記水酸化マグネシウムを使用することにより、吐出量100(kg/hr)以上としてもフィードネック現象が抑制され、安定した生産が可能であることについては何ら記載されていないから、引用発明1において、溶融混練の際の吐出量を「100(kg/hr」とすることについては、何らの動機付けも見出せない。
してみると、相違点1に係る事項は、当業者が容易に相当し得たものではない。
よって、本願発明1は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本願発明2~4について
本願発明2は、本願発明1において、吐出量(kg/hr)とスクリュー回転数(rpm)との比率を特定したものであり、本願発明3は、本願発明1又は2において、さらに繊維状強化材(C)を特定量溶融混練押出機に投入することを特定したものであり、本願発明4は、本願発明1~3のいずれかにおいて、さらに粘土鉱物(D)を特定量溶融混練押出機に投入することを特定したものである。
そして、本願発明1が、上記(1)で述べたとおり引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本願発明2~4も、上記(1)と同様の理由により、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 引用文献2を主引用例とした場合
(1)本願発明1について
引用発明2の「PPS樹脂」は、本願発明1の「ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)」に相当する。
引用発明2の「水酸化マグネシウム「協和化学工業社製”キスマ”5EU」」は、本願明細書に記載された実施例で使用された「水酸化マグネウム「キスマ5EU」(協和化学株式会社製)見かけ比重0.87」と同一のものであると解されるから、本願発明1の「見かけ比重0.7以上の水酸化マグネシウム(B)」に相当する。
引用発明2の「PPS樹脂」、「カオリン」、「水酸化マグネシウム「協和化学工業社製”キスマ”5EU」及び「充填材」を「ドライブレンドした後、280~320℃の温度条件に設定したスクリュー式単軸押出機により溶融混練」することは、この工程において、「PPS樹脂」及び「水酸化マグネシウム「協和化学工業社製”キスマ”5EU」が「スクリュー式短軸押出機」に投入されることは明らかであるから、本願発明1の「ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、見かけ比重0.7以上の水酸化マグネシウム(B)とを」「溶融混練押出機に投入し」、「溶融混練する」ことに相当する。
引用発明2の「ペレット」は、PPS樹脂を含むものであり、本願発明1の「ポリアリーレンスルフィド組成物」に相当する。
引用発明2の「PPS樹脂」と「水酸化マグネシウム「協和化学工業社製”キスマ”5EU」」の重量割合は、それぞれ65質量部、35質量部と計算され、それぞれ本願発明1の「30~70質量部」、「70~30質量部」の範囲に包含される。
してみると、本願発明1と引用発明2とは、
「ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、見かけ比重0.7以上の水酸化マグネシウム(B)とを、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の30~70質量部に対して、前記水酸化マグネシウム(B)を70~30質量部の範囲で溶融混練押出機に投入し、溶融混練するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2>
溶融混練に関し、本願発明1では、吐出量100(kg/hr)以上なる混練条件下に溶融混練するに対して、引用発明2ではこの点についての記載がない点。
相違点2について検討する。
本願発明1は、本願明細書全体の記載、特に【0006】、【0039】及び【0045】~【0060】の記載からみて、フィードネック現象を抑制し、安定した生産が可能な、優れた生産性を有するポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法を提供することを課題とし、特定の見かけ比重を有する水酸化マグネシウムを使用することにより、当該課題を解決したものと解されることは、上記1(1)で述べたとおりである。
これに対して引用発明2は、見かけ比重が本願発明1の規定を満たす水酸化マグネシウムを使用しているものの、引用文献2には、溶融混練の際の吐出量についての記載は何らなく、ましてや、上記水酸化マグネシウムを使用したことにより吐出量100(kg/hr)以上としてもフィードネック現象が抑制され、安定した生産が可能であることについては何ら記載されていないから、引用発明2において、溶融混練の際の吐出量を「100(kg/hr」とすることについては、何らの動機付けも見出せない。
してみると、相違点2に係る事項は、当業者が容易に相当し得たものではない。
よって、本願発明1は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本願発明2~4について
本願発明2は、本願発明1において、吐出量(kg/hr)とスクリュー回転数(rpm)との比率を特定したものであり、本願発明3は、本願発明1又は2において、さらに繊維状強化材(C)を特定量溶融混練押出機に投入することを特定したものであり、本願発明4は、本願発明1~3のいずれかにおいてさらに粘土鉱物(D)を特定量溶融混練押出機に投入することを特定したものである。
そして、本願発明1が、上記(1)で述べたとおり引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本願発明2~4も、上記(1)と同様の理由により、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 引用文献3を主引用例とした場合
(1)本願発明1について
引用発明3の「ポリフェニレンスルフィド樹脂」は、本願発明1の「ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)」に相当する。
引用発明3の「水酸化マグネシウム「協和化学工業社製”KISUMA5EU”」」は、本願明細書に記載された実施例で使用された「水酸化マグネウム「キスマ5EU」(協和化学株式会社製)見かけ比重0.87」と同一のものであると解されるから、本願発明1の「見かけ比重0.7以上の水酸化マグネシウム(B)」に相当する。
引用発明3の「スクリュー径44mmの同方向回転ベント付き2軸押出機を用いて、ポリフェニレンスルフィド樹脂を元込め部から添加し、水酸化マグネシウム「協和化学工業社製”KISUMA5EU”」及び、ガラス繊維を中間添加口から投入」し「溶融混練を行」ことは、本願発明1の「ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、見かけ比重0.7以上の水酸化マグネシウム(B)とを」「溶融混練押出機に投入し」「溶融混練する」ことに相当する。
引用発明3の「ペレット」はポリフェニレンスルフィド樹脂を含むものであり、本願発明1の「ポリアリーレンスルフィド組成物」に相当する。
引用発明3のポリフェニレンスルフィド樹脂、水酸化マグネシウム及びガラス繊維の配合量に基づいて、ポリフェニレンスルフィド樹脂と水酸化マグネシウムとの重量割合を計算すると、ポリフェニレンスルフィド樹脂41~69質量部、水酸化マグネシウム59~31質量部と計算され、いずれもそれぞれ、「30~70質量部」、「70~30質量部」の範囲に包含される。
してみると、本願発明1と引用発明3とは、
「ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、見かけ比重0.7以上の水酸化マグネシウム(B)とを、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の30~70質量部に対して、前記水酸化マグネシウム(B)を70~30質量部の範囲で溶融混練押出機に投入し、溶融混練するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3>
溶融混練に関し、本願発明1では、吐出量100(kg/hr)以上なる混練条件下に溶融混練するに対して、引用発明3ではこの点についての記載がない点。
相違点3について検討する。
本願発明1は、本願明細書全体の記載、特に【0006】、【0039】及び【0045】~【0060】の記載からみて、フィードネック現象を抑制し、安定した生産が可能な、優れた生産性を有するポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法を提供することを課題とし、特定の見かけ比重を有する水酸化マグネシウムを使用することにより、当該課題を解決したものと解されることは上記1(1)で述べたとおりである。
これに対して引用発明3は、見かけ比重が本願発明1の規定を満たす水酸化マグネシウムを使用しているものの、引用文献3には、溶融混練の際の吐出量についての記載は何らなく、ましてや、上記見かけ比重の水酸化マグネシウムを使用したことにより吐出量100(kg/hr)以上としてもフィードネック現象が抑制され、安定した生産が可能であることについては何ら記載されていないから、引用発明3において、溶融混練の際の吐出量を「100(kg/hr」とすることについては、何らの動機付けも見出せない。
してみると、相違点3に係る事項は、当業者が容易に相当し得たものではない。
よって、本願発明1は、引用発明3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本願発明2~4について
本願発明2は、本願発明1において、吐出量(kg/hr)とスクリュー回転数(rpm)との比率を特定したものであり、本願発明3は、本願発明1又は2において、さらに繊維状強化材(C)を特定量溶融混練押出機に投入することを特定したものであり、本願発明4は、本願発明1~3のいずれかにおいてさらに粘土鉱物(D)を特定量溶融混練押出機に投入することを特定したものである。
そして、本願発明1が、上記(1)で述べたとおり引用発明3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本願発明2~4も、上記(1)と同様の理由により、引用発明3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 原査定について
なお、原査定において、上記相違点1~3に係る本願発明1の「吐出量100(kg/hr)以上なる混練条件下に溶融混練する」という事項について、溶融混練する際の吐出量等の条件設定は当業者が適宜行うことであるとの判断がされているが、上記1~3に述べたとおり、引用発明1~3において、「吐出量100(kg/hr)以上なる混練条件下に溶融混練する」ことは、何ら動機づけられず、「吐出量100(kg/hr)以上なる混練条件下に溶融混練する」と設定することが、当業者が適宜行うことであるとすることはできない。
また、原査定において、特に「実施例6」と「参考例4」を挙げて、本願発明1の効果が格別であるとはいえないとしているが、「実施例6」と「参考例4」をみると、見かけ比重が0.87である水酸化マグネシウムを用いた場合、吐出量が140(kg/hr)(実施例6)であっても、吐出量が70(kg/hr)(参考例4)である場合と同程度の供給安定性が得られていることがみてとれるから、本願発明1の効果が格別であるとはいえないとすることはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明1~4は、当業者が引用発明1、2又は3に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-014168