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特許拒絶査定不服審判

2018-014057

エクオール含有組成物の製造方法

審判番号
2018-014057
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2014-015367外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年10月24日
審決日
2019年08月13日
公報発行日
2019年11月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (C12P)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2014- 15367「エクオール含有組成物の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月 3日出願公開、特開2015-139424〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成26年1月30日の出願であって、平成30年7月17日付けで拒絶査定され、同年10月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に、手続補正書が提出されたものである。 第2 平成30年10月24日付け手続補正についての補正却下の決定 [結論] 平成30年10月24日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正 本件補正は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1に、 (補正前)「【請求項1】 (1)イソフラボン類を、前記イソフラボン類をアグリコンに変換する酵素で処理する工程、 (2)前記工程(1)で得られた前記アグリコンを含有する培地で嫌気性微生物を培養し、前記嫌気性微生物により、前記アグリコンをエクオールに変換する工程、及び、 (3)前記工程(2)で産生された前記エクオールを含有するエクオール含有組成物を、前記培地から回収する工程、 を含む、エクオール含有組成物の製造方法。」とあったものを、 (補正後)「【請求項1】 (1)イソフラボン類を含有する大豆胚軸を、前記イソフラボン類をアグリコンに変換する酵素で処理する工程、 (2)前記工程(1)で得られた前記アグリコンを含有する培地で嫌気性微生物を培養し、前記嫌気性微生物により、前記アグリコンをエクオールに変換する工程、及び、 (3)前記工程(2)で産生された前記エクオールを含有するエクオール含有組成物を、前記培地から回収する工程、 を含む、実質的にアレルゲンを含まないエクオール含有組成物の製造方法。」とする補正事項を含むものである。(下線は補正された事項である。) 2.目的要件について 上記補正事項によって、補正前の請求項1に記載されていた「イソフラボン類」が「イソフラボン類を含有する大豆胚軸」に補正され、すなわち、「イソフラボン類」が大豆胚軸由来のものに限定された。 また、補正前の請求項1に記載されていた「エクオール含有組成物」が「実質的にアレルゲンを含まないエクオール含有組成物」に限定された。 上記補正は、その補正の前後において発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であると認められるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認められる。 そこで、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 3.独立特許要件について (1)引用例 (1-1)引用例1 原査定で文献1として引用された、本願の出願日前の公知文献である特開2012-135217号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付したものである(以下も同様)。 ア 「【請求項1】 イソフラボン類を含む培地に、曇り点が50℃以上の界面活性剤を添加し、エクオール生産能を有する偏性嫌気性微生物の一種を作用させることを特徴とするエクオールの製造方法。 【請求項2】 前記イソフラボン類は、イソフラボン、イソフラボンアグリコン、ダイゼイン配糖体、ダイゼイン、ジヒドロダイゼインからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のエクオールの製造方法。」(特許請求の範囲) イ 「【発明の効果】 【0027】 本発明のエクオールの製造方法によれば、培地中におけるイソフラボン類の添加量を従来に比べ多くすることでエクオールの生産量は増加し、また、驚くべきことに界面活性剤による発泡が無く又はほとんど無く、発酵槽での生産および生産されたエクオールの回収が容易であり、さらにエクオール得量が従来に比べ増大する。 【0028】 本発明のエクオール産生組成物によれば、従来に比べ、エクオールの生産性が高く、また、界面活性剤による発泡が無く又はほとんど無く、生産されたエクオールの回収が容易である。」 ウ 「【0033】 本実施の形態におけるイソフラボン類は、主に大豆、クズ、レッドクローバー、カンゾウなどマメ科植物から得られるもので、イソフラボン、イソフラボンアグリコン、ダイゼイン配糖体、ダイゼイン、ジヒドロダイゼインからなる群から選択される少なくとも一種である。 【0034】 イソフラボンはそのままか、β-グルコシダーゼ等の酵素あるいは微生物を作用させ、イソフラボンアグリコンに変換して本培養に用いることができる。 また、イソフラボンアグリコンは、例えば、大豆胚芽に麹菌を加え発酵させ、得られた発酵大豆胚芽から抽出することにより得られる。」 エ 「【0040】 本実施の形態におけるイソフラボン類は、イソフラボン、イソフラボンアグリコン、ダイジン、ダイゼインが好ましい。ここで、イソフラボンは例えばフジッコ社製フジフラボンP40、P10などを用いることができる。イソフラボンアグリコンとして、例えば、AglyMax-30」(ニチモウバイオテックス社製)を用いることができる。」 オ 「【0076】 以下の実施例で使用したダイゼイン(以下「DAI」と略す)はLKT Labotatories,Inc.社製を使用した。イソフラボンアグリコンはニチモウバイオテックス社製AglyMax-30を使用した。これの組成はDAI 21.2%、グリシテイン 9.8%、ゲニステイン 3.0%である(いずれもメーカー分析値、重量%)また、エクオールは「EQL」と略す。」 カ 「【0081】 実施例7、比較例2: 表3に示す組成になるように調製し、予め115℃、15分間滅菌したGAMブイヨン+1%アルギニン培地に、実施例1と同様にして培養したこの種培養液を0.1mL植菌し、水素/炭酸ガス(4:1,vol/vol)で無菌的に3分間以上置換した後、37℃、200spmの条件で振とう培養を行った。9,27,79時間後、培養液を取り出し、高速液体クロマトグラフィーにより生成したEQLを定量した。結果を図3に示す。 【0082】 【表3】 【0083】 試薬ダイゼインのみならず、イソフラボンアグリコンでもTween 20添加でEQL生産が促進されることが明らかとなった。」 (1-2)引用例2 原査定で文献6として引用された、本願の出願日前の公知文献である特開平11-89589号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】大豆胚軸に微生物由来の酵素を作用させて、その胚軸中のイソフラボン配糖体を分解して、その非配糖体であるアグリコン化したイソフラボン化合物を多く含む生成物を得ることを特徴とする大豆胚軸を原料としたイソフラボン化合物を含有する生成物の製造法。」(特許請求の範囲) イ 「【0002】 【従来の技術】大豆には、大豆特有のダイジン、ゲニスチン、ダイゼイン、ゲニステイン等のイソフラボン化合物が含まれており、中でも発芽時に幼芽、幼根となる部分である胚軸部に高濃度に含まれている。このイソフラボンは、近年、乳癌、前立腺癌、大腸癌などを抑制すること(Barnesら、Nutr.Cancer、21、113 ~131 、1994)、また疫学的にも大豆製品の摂取量と癌のリスクは逆相関になることが報告されている( 渡辺ら、J.Epidemiology、3 、47~61、1993)。また、イソフラボン化合物のうち、配糖体であるダイジン、ゲニスチンよりも、アグリコン化したダイゼイン、ゲニステインの方が癌抑制等に、より効果的であるとの指摘がなされている。しかしながら、胚軸中のイソフラボンは大部分が配糖体の形として存在しアグリコンとして存在しているものは約5%以下程度である。そこで、大豆由来の原料からアグリコン化したイソフラボン化合物を得るために、いくつかの方法が試みられている。例えば、大豆中のβ-グルコシダーゼの作用により、アグリコンへの変換する方法(特開平1-258669)、醤油粕または醤油油に生成されたイソフラボンアグリコンから抽出する方法(特開平5-170756)、大豆蛋白に麹菌を作用させてアグリコンを含むイソフラボン化合物を得る方法(特開平8-214787)、植物蛋白質を抽出後、β-グルコシダーゼ又はエステラーゼによってアグリコン化する方法(特表平9-503781)等が知られている。」 (1-3)引用例3 原査定で文献5として引用された、本願の出願日前の公知文献である特開2005-224162号公報(以下、「引用例3」という。)には、以下の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 イソフラボン配糖体を固形物成分において3.0%以上含有する組成物に対し、グルコシダーゼ酵素で処理し、酵素処理後の不溶成分を回収することを特徴とするイソフラボンアグリコンの製造法。」 イ 「【実施例1】 【0025】 多く市販の工業用酵素は粗精製物であり、不純物としてグルコシダーゼ活性、つまり、イソフラボン配糖体をアグリコンへと変換する活性を有していることが多いが、製造法を確立するに当り、いくつかの市販の酵素について配糖体のアグリコンへの変換力について検討した。 【0026】 大豆胚軸より調製した40.0%イソフラボン配糖体調製物5.0gを50mlのイオン交換水に懸濁し、これに表1に示した各酵素を0.5g添加し、50℃で18時間振とうした。これを乾燥し、HPLCで分析した。全イソフラボンに占めるアグリコンの割合(変換率)を表1に示した。今回の検討で比較的変換率の高かったのは、ユニアーゼ2K(変換率0.64)、ペクチナーゼGアマノ(変換率0.82)であった(表1)。」 (1-4)引用例4 本願の出願日前の公知文献である特開2012-228252号公報(以下、「引用例4」という。)には、以下の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 大豆発酵物に含まれる総イソフラボンの合計量に対し、乾燥重量換算で、 (a)30~70重量%のエクオール (b)1~20重量%のダイジン、マロニルダイジン、アセチルダイジン、ダイゼイン、及びジヒドロダイゼインから成る群より選択される少なくとも1種のダイゼイン類 (c)0.1~15重量%のゲニスチン、マロニルゲニスチン、アセチルゲニスチン、ゲニステイン、及びジヒドロゲニステインから成る群より選択される少なくとも1種のゲニステイン類、並びに (d)10~50重量%のグリシチン、マロニルグリシチン、アセチルグリシチン、グリシテイン、及びジヒドログリシテインから成る群より選択される少なくとも1種のグリシテイン類 を含む、大豆発酵物。 【請求項2】 腸内細菌によって発酵されている、請求項1に記載の大豆発酵物。 【請求項3】 腸内細菌が乳酸菌である、請求項2に記載の大豆発酵物。 【請求項4】 大豆が大豆胚軸である、請求項1~3のいずれかに記載の大豆発酵物。 【請求項5】 大豆中のアレルゲンの含量が低減されている、請求項1~4のいずれかに記載の大豆発酵物。」(特許請求の範囲) イ 「【0007】 一方、大豆胚軸部分には、大豆加工食品として利用されている子葉部分に比べて、イソフラボンやサポニン等の有用成分が高い割合で含まれていることが知られており、その抽出物については種々の用途が開発されている(例えば、特許文献3)。しかしながら、大豆胚軸抽出物は、それ自体コストが高いという欠点がある。また、大豆胚軸抽出物は、エクオールの製造原料とする場合には、エクオール産生菌による発酵のために別途栄養素の添加が必要になるという問題点がある。このような理由から、大豆胚軸抽出物は、エクオールを工業的に製造する上で、原料として使用できないのが現状である。 【0008】 一方、大豆胚軸自体については、特有の苦味があるため、それ自体をそのまま利用することは敬遠される傾向があり、大豆の胚軸の多くは廃棄されているのが現状である。また、大豆胚軸には、大豆の子葉部分と同様に、アレルゲン物質が含まれているため、大豆アレルギーを持つ人にとって、大豆胚軸を摂取乃至投与することができなかった。そのため、大豆胚軸を有効利用するには、大豆胚軸自体に更に付加価値を備えさせることにより、その有用性を高めることが重要である。」 ウ 「【0011】 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、ダイゼイン類を資化してエクオールを産生する能力を有する微生物を用いて、大豆の胚軸を発酵させると、高い効率でエクオールが生成し、エクオール含有大豆胚軸発酵物が得られることを見出した。更に、斯くして得られるエクオール含有大豆胚軸発酵物には、大豆胚軸に含まれるアレルゲンが低減されているので、低アレルゲンの素材としても有用であることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に改良を重ねることにより完成したものである。」 (1-5)引用例5 本願の出願日前の公知文献である国際公開第2007/066655号(以下、「引用例5」という。)には、以下の事項が記載されている。 「[0010] 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、ダイゼイン類を資化してエクオールを産生する能力を有する微生物を用いて、大豆の胚軸を発酵させると、 高い効率でエクオールが生成し、エクオール含有大豆胚軸発酵物が得られることを見出した。更に、斯くして得られるエクオール含有大豆胚軸発酵物には、大豆胚軸に含まれるアレルゲンが低減されているので、低アレルゲンの素材としても有用であることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に改良を重ねることにより完成したものである。」 (2)引用発明 引用例1の記載事項ア~カより、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 『イソフラボンアグリコンを含む培地に、エクオール生産能を有する偏性嫌気性微生物の一種を作用させることによる、エクオールの製造方法。』 4.対比 補正後の本願の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)と引用発明を対比する。 引用発明の「イソフラボンアグリコンを含む培地に、エクオール生産能を有する偏性嫌気性微生物の一種を作用させることを特徴とするエクオールの製造方法。」は、補正発明の「アグリコンを含有する培地で嫌気性微生物を培養し、前記嫌気性微生物により、前記アグリコンをエクオールに変換する工程、 を含む・・・・エクオール含有組成物の製造方法。」に相当すると認められる。 したがって、両者は、 「(2)イソフラボンアグリコンを含有する培地で嫌気性微生物を培養し、前記嫌気性微生物により、前記アグリコンをエクオールに変換する工程、 を含む、エクオール含有組成物の製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違すると認められる。 (相違点1) 補正発明では、工程(1)として「イソフラボン類を含有する大豆胚軸を、前記イソフラボン類をアグリコンに変換する酵素で処理する工程」が特定され、さらに工程(2)において「前記工程(1)で得られた前記アグリコン」を含有する培地を用いることが特定されている、すなわち、培地に含有されるイソフラボンアグリコンが大豆胚軸のイソフラボンに由来するものであること、及び、大豆胚軸に酵素を作用させるという方法でイソフラボンアグリコンが調製されることが特定されているのに対して、引用発明ではイソフラボンが大豆胚軸に由来することや、イソフラボンアグリコンの調製方法について特定されていない点。 (相違点2) 補正発明では「(3)前記工程(2)で産生された前記エクオールを含有するエクオール含有組成物を、前記培地から回収する工程」を含む、と、エクオールの回収工程が特定されているのに対して、引用発明では特定されていない点。 (相違点3) 補正発明では回収されたエクオール含有組成物が実質的にアレルゲンを含まないことが特定されているのに対して、引用発明では特定されていない点。 5.判断 (1)相違点1について 引用例1には、「イソフラボンは・・・β-グルコシダーゼ等の酵素あるいは微生物を作用させ、イソフラボンアグリコンに変換して本培養に用いることができる。」(段落【0034】)と、イソフラボンアグリコンがβ-グルコシダーゼ等の酵素の作用によりイソフラボンから変換されたものであることは記載されているが、引用例1の記載からは、イソフラボンの由来は明らかでない。 しかし、イソフラボンは大豆胚軸に多く含まれていることが周知であり(引用例2の段落【0002】参照。)、引用例2、3には、大豆胚軸に酵素を作用させてイソフラボンアグリコンを調製することが記載されているから、引用発明のイソフラボンアグリコンとして、イソフラボンを含有する大豆胚軸に酵素を作用させて調製したものを特定することは当業者が容易になし得ることである。 (2)相違点2について 引用例1には、引用発明のエクオールの製造方法によれば、製造されたエクオールの回収が容易であることが記載されており(段落【0027】、【0028】)、引用発明はエクオールの製造方法であるから、製造物であるエクオールの回収工程は当然存在するといえる。 したがって、相違点2は実質的な相違点でないか、仮に相違するとしても当業者が適宜なし得ることである。 (3)相違点3について 引用例4(【0008】)、引用例5([0008])に記載されるように、大豆胚軸にはアレルゲンが含まれることが知られており、引用例4(特許請求の範囲、【0011】)、引用例5([0010])には、大豆胚軸をエクオール産生微生物で発酵すると大豆胚軸に含まれるアレルゲンが低減できることが教示されている。 そうすると、引用発明において、培地として大豆胚軸に酵素を作用させて調製したイソフラボンアグリコンを含むものを用い、エクオール産生微生物で発酵した場合、大豆胚軸に由来するアレルゲンが低減されるといえ、そのことについて、実質的にアレルゲンを含まないなどと特定することは当業者が適宜なし得ることである。 そして、補正発明において引用例1~5から予測できない効果が奏されたとはいえない。 したがって、補正発明は、引用例1~5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 6.審判請求人の主張について 審判請求人は審判請求書において、概ね次の点を主張している。 補正後の本願発明は、アレルゲンを含むイソフラボン類を含有する大豆胚軸から実質的にアレルゲンを含まないエクオール含有組成物を製造することを目的としている。 原査定で引用された文献1~7には、補正後の本願発明の「実質的にアレルゲンを含まないエクオール含有組成物を製造する」という課題が記載されておらず、アレルゲンの有無について何ら開示していない。 審判請求人の上記主張について検討すると、上記5.の(3)で述べたとおり、大豆胚軸にアレルゲンが含まれること、大豆胚軸をエクオール産生微生物で発酵するとアレルゲンが低減できることは、今回新たに示した引用例4及び前置報告書で引用した引用例5(文献8)に記載されて公知である。 したがって、大豆胚軸に由来するアレルゲンが低減されることについて、実質的にアレルゲンを含まないなどと特定することは当業者が適宜なし得ることである。 (上申書について) 審判請求人は平成31年2月15日付け上申書を提出し、「嫌気性微生物」を『アサッカロバクター・セラツス(Asaccharobacter celatus)DSM 18785』に限定する新たな補正案を示し、次の点を主張している。 前置報告書で引用された文献8の実施例1において、主要アレルゲンの低減を確認した大豆胚軸発酵物は、ラクトコッカス20-92株(FERM BP-10036号)の発酵で得られたものであり、アサッカロバクター・セラツス(Asaccharobacter celatus)DSM 18785で発酵した場合に、大豆胚軸に含まれていたアレルゲンを実質的に含有しないエクオール含有組成物が得られるという本願発明の効果について記載及び示唆はない。 しかし、引用例1(原査定の文献1)の実施例(【0072】~【0089】)には、エクオール生産能を有する偏性嫌気性微生物として『アサッカロバクター・セラツス(Asaccharobacter celatus)DSM 18785』を用いたことが記載されており(【0077】)、引用発明において『アサッカロバクター・セラツス(Asaccharobacter celatus)DSM 18785』を用いることは強く動機付けられるといえ、かつ、これを用いた場合には、補正発明と同様にアレルゲンを実質的に含有しないエクオール含有組成物が得られるといえる。 また、引用例5(文献8)には、“ダイゼイン類を資化してエクオールを産生する能力を有する微生物を用いて大豆の胚軸を発酵させると、大豆胚軸に含まれるアレルゲンが低減されること”([0010])が教示されていると認められ、「アサッカロバクター・セラツス」もこの「ダイゼイン類を資化してエクオールを産生する能力を有する微生物」に該当するから、文献8の「ダイゼイン類を資化してエクオールを産生する能力を有する微生物」が「ラクトコッカス20-92株(FERM BP-10036号)」のみに限定されるなどとはいえない。 さらに、引用例4にも、ダイゼイン類を資化してエクオールを産生する能力を有する微生物で発酵することで大豆胚軸に由来するアレルゲンが低減されること(【0011】)が記載されているところ、『アサッカロバクター・セラツス(Asaccharobacter celatus)DSM 18785』がこのダイゼイン類を資化してエクオールを産生する能力を有する微生物に該当すると認められることは上述のとおりである。 したがって、上申書の補正案の発明において、引用例1~5から予測できない効果が奏されたとはいえない。 7.小括 以上のとおり、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではなく、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~7に係る発明は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1~7に記載の事項により特定される発明であると認める。 2.原査定の理由 原査定の理由は、本願の請求項1~4、6、7に係る発明は、引用文献1~6に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 3.当審の判断 本願の請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 1.に(補正前)として記載したものであり、補正発明(補正後)は、本願発明に特定される事項のすべてを含み、本願発明の「イソフラボン類」を「イソフラボン類を含有する大豆胚軸」、本願発明の「エクオール含有組成物」を「実質的にアレルゲンを含まないエクオール含有組成物」にさらに限定したものである。 そうすると、本願発明と引用発明とは、上記(相違点1)のうちのイソフラボンアグリコンの調製方法の点、及び(相違点2)で相違すると認められるが、これらの相違点は補正発明について述べた(相違点1)及び(相違点2)と同様の理由から当業者が容易になし得ることである。 したがって、本願発明は、引用文献1(引用例1)、引用文献6(引用例2)、及び引用文献5(引用例3)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたといえる。 4.小活 本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第4 むすび 以上のとおりであるから、他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2018-014057

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