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特許拒絶査定不服審判

2018-013582

ループ型保護リレーシステム

審判番号
2018-013582
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2014-122396外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年10月11日
審決日
2019年12月12日
公報発行日
2020年02月28日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (H04L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2014-122396「ループ型保護リレーシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月12日出願公開、特開2016-  5022、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成26年6月13日の出願であって、平成29年12月14日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年3月9日付けで手続補正がされ、平成30年7月5日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年10月11日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成30年7月5日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-4に係る発明は、以下の引用文献1-9に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2003-111266号公報 2.特開2002-135280号公報 3.特開2000-244562号公報 4.国際公開第2006/121014号 5.特開平11-088387号公報 6.特開平11-261615号公報 7.特開2000-354054号公報 8.特開昭63-245213号公報 9.特開平2-51313号公報 第3 本願発明 本願請求項1-3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。)は、平成30年10月11日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 電力系統に電気量データを計測するリレー端末を複数配置し、前記リレー端末を通信回線でループ端を設定することなくループ状に接続し、前記電気量データを含む第1の通信フレームを他の前記リレー端末に配信し合うことで前記電気量データを共有するループ型保護リレーシステムにおいて、 各リレー端末は、 2回線の通信ポートと、 前記第1の通信フレームを他の前記リレー端末との間で送受信する通信ドライバと、 前記電気量データを用いて所定の保護演算を行う演算部、を備え、 前記通信ドライバは、 前記演算部から電気量データを受け取り、当該電気量データに基づいて同一の電気量データを格納した第1の通信フレームを2つ生成し、前記2回線の通信ポートから、接続された前後の前記リレー端末のそれぞれへ、同一の前記第1の通信フレームを送信する送信処理部と、 前記2回線の通信ポートを介して、接続された前後の前記リレー端末のそれぞれから前記第1の通信フレームを受信する受信処理部、を備え、 前記受信処理部は、 予め定められた条件に基づき、前記通信ポートを介して受信した前記第1の通信フレームに関して、当該第1の通信フレームを受信した側と反対側の前記通信ポートへ、前記第1の通信フレームを中継するか否かを判定する中継要否判定部と、 前記中継要否判定部が前記第1の通信フレームを中継すると判定すると、前記第1の通信フレームを前記通信ポートに送出する中継送出部と、 前記中継要否判定部の中継判定結果にかかわらず、前記第1の通信フレームを前記演算部に通知する通信フレーム通知部、を備え、 前記各リレー端末は、前記2回線の通信ポートの両方で同期制御データを含む第2の通信フレームにて同期通信し、前記各通信ポートでの同期通信における通信遅延時間の変動を比較して、前記2回線の通信ポートの同期通信のうち通信遅延時間の変動が少ない方の通信ポートの同期通信を、当該通信ポートを含む回線による同期通信として採用するように構成したことを特徴とするループ型保護リレーシステム。 【請求項2】 前記通信フレーム通知部は、前記第1の通信フレームが重複すると、先着した前記第1の通信フレームを前記演算部に通知し、後着した前記第1の通信フレームを破棄するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のループ型保護リレーシステム。 【請求項3】 前記中継要否判定部を独立したハードウェアとして構成し、これを汎用の通信ハードウェアに接続したことを特徴とする請求項1又は2に記載のループ型保護リレーシステム。」 第4 引用例、引用発明 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)段落【0014】-【0019】 「【0014】 【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態を示す保護継電システムの全体構成図である。図1において、本発明に係る保護継電システムは、π型送電線10、母線12a~12dからなる4端子送電線を保護するシステムとして構成されており、4端子送電線の各端子にはそれぞれ保護継電装置100a~100dが設けられている。各保護継電装置100a~100dは保護継電装置間で情報の授受を行うためのハイブリット(双方向)伝送路としてのA方向(時計回り方向)伝送路20a、B方向(反時計回り方向)伝送路20bを介してループ状に接続されている。各端子に設けられた保護継電装置100a~100dでは、それぞれ相手端の系統情報をPCM伝送によって受信し、受信した全端子の系統情報から電流差動演算を行うことによって送電線10の内部(保護区間内)に事故が発生したか否かの常時監視を行い、送電線10の内部に事故が発生したと判断したときには、各端子の遮断器(図示省略)にトリップ信号を出力することを基本動作としている。 【0015】PCM伝送により送受信する1つの端子の系統情報データは電気角30°ごとに送出されるため、相手端の系統情報を受信する際には、その系統情報は計測時刻が同一であり、且つ送電系統1サイクル=20ms(50Hz時)以内に処理可能でなくてはならない。 【0016】ここで、大きな物理的障害となるデータの伝送遅延時間を短縮するために、本実施形態では、各保護継電装置100a~100dに、系統情報に関するデータを双方向に伝送処理するためのA方向伝送処理部102a~102dが設けられているとともに、B方向伝送処理部103a~103dが設けられている。 【0017】各端子における系統情報データを相手端に伝送するに際しては、各端子において、保護区間の電流を計器用変流器14a~14dで計測し、この計測データをA/D変換部101a~101dでディジタルデータに変換し、変換されたディジタルデータを自端のデータとしてメモリ105a~105dに格納するようになっている。そしてメモリ105a~105dにそれぞれ格納された自端のデータはA方向伝送処理部102a~102dの処理によりA方向伝送路20aを介して相手端に伝送されるとともに、B方向伝送処理部103a~103dの処理によりB方向伝送路20bを介して相手端に伝送される。すなわち、各A方向伝送処理部102a~102d、B方向伝送処理部103a~103dは系統情報データを双方向に伝送するデータ伝送手段として構成されている。そして各伝送路20a、20bを伝送する系統情報データは各保護継電装置100a~100dのA方向伝送処理部102a~102d、B方向伝送処理部103a~103dで受信され、受信されたデータはルート切替処理部104a~104dの処理により、受信データのうち伝送時間上短い方のデータが選択され、選択されたデータがそれぞれメモリ105a~105dに相手端データとして格納される。 【0018】つまり、各端子からは、後述するように、サンプリング時刻同期制御されたあと、時刻同期された系統情報データに方向情報が付加され、方向情報が付加された2つの同期時刻データが双方向に送出されることになる。この場合、受信する相手端データの数は4端子系統の場合、3×2=6データとなるが、受信する相手端データのうち、利用するデータの方向については、ルート切替処理部104a~104dのルート切替処理によって決定される。 【0019】各保護継電装置100a~100dから系統情報データを伝送するに際しては、図2に示すような伝送データフォーマットが採用されている。図2における各フレームは電気角30°分である1端子の系統データを示し、90ビット長で表現される。このフレームを12個繋げたものを1スーパーフレームと呼び、電気角360°の送電系統1サイクル分の送信データとなる。本実施形態における伝送路選択パターン制御は1フレーム(90ビット)中8ビット長の「制御」情報401で表現され、次に挙げる9つの制約条件を有する。」 (2)段落【0030】 「【0030】次に、図1に示す保護継電システムの作用を図3にしたがって説明する。保護継電装置100a~100dのうち保護継電装置100aを主局Aとし、他の保護継電装置100b~100dをそれぞれ順番に従局B~Dとし、端子間のサンプリング同期制御方向およびデータ同期(伝送)方向をそれぞれ矢印で表現することとする。サンプリング時刻同期を行うに際しては、主局A、従局B~Dをそれぞれ統括制御する制御部(図示省略)の処理により、伝送路20a、20bを介して双方向にデータを伝送するとともに、他の局からの伝送データを受信し、送信データと受信データの伝送時間の差を基にサンプリング時刻同期制御を実行する。この場合、サンプリングの同期は主局Aを基準として、従局Bは主局Aに同期を取り、従局Cは従局Bに同期を取り、従局Dは従局Cにそれぞれ同期を取る。各局における時刻を同一にするための時刻同期が取られると、この時刻同期にしたがって各局のフレーム同期の番号が決定される。この場合、制御部は時刻同期制御手段を構成することになり、サンプリング時刻同期の同期方向は「A←B←C←D」と表現される。この方向がサンプリング同期制御方向となる。従来、このサンプリング同期制御方向とデータ同期(伝送)方向は同一であったが、本実施形態においては、サンプリング同期制御方向とデータ同期(伝送)方向をそれぞれ個別に制御することを特徴としている。」 (3) 引用発明 したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「4端子送電線の各端子にはそれぞれ保護継電装置100a~100dが設けられ、 各保護継電装置100a~100dは、A方向(時計回り方向)伝送路20a、B方向(反時計回り方向)伝送路20bを介してループ状に接続され、 それぞれ相手端の系統情報をPCM伝送によって受信し、受信した全端子の系統情報から電流差動演算を行い、 各端子における系統情報データを相手端に伝送するに際しては、各端子において、保護区間の電流を計器用変流器14a~14dで計測し、この計測データをA/D変換部101a~101dでディジタルデータに変換し、変換されたディジタルデータを自端のデータとしてメモリ105a~105dに格納し、 それぞれ格納された自端のデータはA方向伝送処理部102a~102dの処理によりA方向伝送路20aを介して相手端に伝送されるとともに、B方向伝送処理部103a~103dの処理によりB方向伝送路20bを介して相手端に伝送され、 すなわち、各A方向伝送処理部102a~102d、B方向伝送処理部103a~103dは系統情報データを双方向に伝送するデータ伝送手段として構成され、 系統情報データは各保護継電装置100a~100dのA方向伝送処理部102a~102d、B方向伝送処理部103a~103dで受信され、 各端子からは、サンプリング時刻同期制御されたあと、時刻同期された系統情報データに方向情報が付加され、方向情報が付加された2つの同期時刻データが双方向に送出され、 各保護継電装置100a~100dから系統情報データを伝送するに際しては、伝送データフォーマットが採用され、各フレームは電気角30°分である1端子の系統データを示し、 サンプリング時刻同期を行うに際しては、主局A、従局B~Dをそれぞれ統括制御する制御部の処理により、伝送路20a、20bを介して双方向にデータを伝送するとともに、他の局からの伝送データを受信し、送信データと受信データの伝送時間の差を基にサンプリング時刻同期制御を実行する、 保護継電システム。」 2.引用文献2について また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の段落【0001】-【0003】には、以下の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電力系統の保護を行うディジタル保護継電システムに係り、特に1系と2系のループ伝送路によって親局と端末装置間の情報伝送を行うための伝送方式に関する。 【0002】 【従来の技術】この種のシステムは、図3にディジタル保護継電システムの伝送路構成を示すように、親局1、2と端末装置31~3n間を1系と2系のループ回線の伝送路で接続し、情報送信側は両伝送系に同一情報を送り、情報受信側は、1系と2系の伝送路のうちどちらか早く到着した系の情報で制御するシステムとする。 【0003】詳細には、親局1,2で二重化され、通常時には親局1がその役目を行い、親局2はサブマスタである。親局は、端末へのデータ送信と端末局のポーリング処理を行う。サブマスタは、親局に不具合があった場合に親局の代わりとなる。通常は、端末の役割となり、親局のポーリングに答える。親局は、一定周期で1系と2系の伝送路に同時にデータを送信し、端末局をポーリングする。ポーリング信号は、1系、2系それぞれの親局受信で受信され、データが正しく送られたことを確認する。データが受信されないと異常となる。端末局は、1系、2系のどちらか早い方の受信データを判断し、一定時間待って自局のデータを送信する。」 3.引用文献8について また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献8の第3頁左下欄3行目-10行目には、以下の記載がある。 「差動継電器12の受信器41は差動継電器11からの事故判別用情報Adを受信すると、その先頭で信号Siを発生し、予め設定された既知の伝送遅延時間Tab分だけ遡った時刻t2で自端の事故判別用情報Bdの送信を開始する。更に時刻t2よりサンプリング周期Ts後の時刻T6よりTC時間tcだけ遡った時刻つまりT2よりTs-tc後の時刻t5で電流Ibをサンプリングする。」 4.引用文献9について また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献9の第5頁左上欄9行目-右上欄4行目には、以下の記載がある。 「こうしたサンプリング同期は、第2図に示すタイムチャートになる。同図(A)はループ回線が正常にある通常時のサンプリング同期タイムチャートを示し、ループ回線R1からの送信を端末装置351が時刻t1で受信し、ループ回線R2からの受信が時刻t2で行われるときに、端末装置351は時間T3の計時から1/2の時間遅れに一致するサンプリングタイミング信号を得る。なお、T0はサンプリング周期を示す。 このようなタイミングは端末装置の位置に拘わらず同じ時刻でのサンプリングになる。」 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 ア 引用発明の「4端子送電線」は、本願発明1の「電力系統」に相当する。 また、引用発明の「系統情報データ」は、「各端子において、保護区間の電流を計器用変流器14a~14dで計測し、この計測データをA/D変換部101a~101dでディジタルデータに変換し、変換されたディジタルデータを自端のデータとして」得られたものであることから、本願発明1の「電気量データ」に相当する。 また、引用発明の「保護継電装置100a~100dが」、「A方向伝送路20a」と「B方向伝送路20b」を介して、「ループ状に接続され」ている構成は、本願発明1の「リレー端末を複数配置し、前記リレー端末を通信回線で」「ループ状に接続」する構成に相当する。 また、引用発明の「伝送データフォーマット」は、「各フレームは電気角30°分である1端子の系統データを示し」ていることから、本願発明1の「前記電気量データを含む第1の通信フレーム」に相当する。 また、引用発明の「保護継電装置100a~100d」が「系統情報データを双方向に伝送する」構成は、本願発明の「前記電気量データを含む第1の通信フレームを他の前記リレー端末に配信し合うことで前記電気量データを共有する」構成に対応する。 したがって、引用発明の、「4端子送電線の各端子にはそれぞれ保護継電装置100a~100dが設けられ、」「ループ状に接続され、」「各保護継電装置100a~100dから系統情報データを伝送するに際しては、伝送データフォーマットが採用され、各フレームは電気角30°分である1端子の系統データを示し」「各端子における系統情報データを相手端に伝送するに際しては、各端子において、保護区間の電流を計器用変流器14a~14dで計測し、この計測データをA/D変換部101a~101dでディジタルデータに変換し、変換されたディジタルデータを自端のデータと」する点は、本願発明1の「電力系統に電気量データを計測するリレー端末を複数配置し、前記リレー端末を通信回線でループ端を設定することなくループ状に接続し、前記電気量データを含む第1の通信フレームを他の前記リレー端末に配信し合うことで前記電気量データを共有する」点と、「電力系統に電気量データを計測するリレー端末を複数配置し、前記リレー端末を通信回線でループ状に接続し、前記電気量データを含む第1の通信フレームを他の前記リレー端末に配信し合うことで前記電気量データを共有する」点で共通するといえる。 イ 引用発明の「A方向伝送処理部102a~102d」及び「B方向伝送処理部103a~103d」は、「系統情報データを」「A方向伝送路20a」と「B方向伝送路20b」の「双方向に伝送」していることから、本願発明1の「通信ドライバ」に相当する。 引用発明の「A方向伝送処理部102a~102d」及び「B方向伝送処理部103a~103d」が、「系統情報データを」「A方向伝送路20a」と「B方向伝送路20b」の「双方向に伝送」する際に、「A方向伝送処理部102a~102d」と「A方向伝送路20a」とをつなぐ通信ポート、及び「B方向伝送処理部103a~103d」と「B方向伝送路20b」とをつなぐ通信ポートという、本願発明1の「2回線の通信ポート」に相当する構成を備えており、これらの通信ポートを介して伝送を行うことは自明である。 ウ 引用発明の「それぞれ相手端の系統情報をPCM伝送によって受信し、受信した全端子の系統情報から電流差動演算を行」う構成は、「系統情報」データを用いて「演算」を行うものであるから、本願発明1における「前記電気量データを用いて所定の保護演算を行う演算部」に相当するといえる。 エ また、「A方向伝送路20a」と「B方向伝送路20b」のいずれにも前後の保護継電装置が接続されていることから、引用発明の「各A方向伝送処理部102a~102d、B方向伝送処理部103a~103dは系統情報データを双方向に伝送するデータ伝送手段」は、本願発明1の「前記演算部から電気量データを受け取り、当該電気量データに基づいて同一の電気量データを格納した第1の通信フレームを2つ生成し、前記2回線の通信ポートから、接続された前後の前記リレー端末のそれぞれへ、同一の前記第1の通信フレームを送信する送信処理部」と、「前記2回線の通信ポートから、接続された前後の前記リレー端末のそれぞれへ、前記第1の通信フレームを送信する送信処理部」である点で共通するといえる。 オ 引用発明の「A方向伝送処理部102a~102d」及び「B方向伝送処理部103a~103d」は、前後に接続された保護継電装置から「系統情報データ」を受信していることから、本願発明1の「前記2回線の通信ポートを介して、接続された前後の前記リレー端末のそれぞれから前記第1の通信フレームを受信する受信処理部」にも対応するといえる。 カ 引用発明の「保護継電システム」は、アに示したように、保護継電装置が、「ループ状に接続」されていることから、本願発明1の「ループ型保護リレーシステム」に対応する。 したがって、本願発明1と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「電力系統に電気量データを計測するリレー端末を複数配置し、前記リレー端末を通信回線でループ状に接続し、前記電気量データを含む第1の通信フレームを他の前記リレー端末に配信し合うことで前記電気量データを共有するループ型保護リレーシステムにおいて、 各リレー端末は、 2回線の通信ポートと、 前記第1の通信フレームを他の前記リレー端末との間で送受信する通信ドライバと、 前記電気量データを用いて所定の保護演算を行う演算部、を備え、 前記通信ドライバは、 前記2回線の通信ポートから、接続された前後の前記リレー端末のそれぞれへ、前記第1の通信フレームを送信する送信処理部と、 前記2回線の通信ポートを介して、接続された前後の前記リレー端末のそれぞれから前記第1の通信フレームを受信する受信処理部、を備えたことを特徴とするループ型保護リレーシステム。」 [相違点1] 本願発明1は、リレー端末を通信回線で「ループ端を設定することなく」ループ状に接続しているのに対し、引用発明はループ端の設定について明記がない点。 [相違点2] 本願発明1は、「前記演算部から電気量データを受け取り、当該電気量データに基づいて同一の電気量データを格納した第1の通信フレームを2つ生成し」て、「同一の」前記第1の通信フレームを送信しているのに対し、引用発明は、「A方向伝送処理部102a~102d」及び「B方向伝送処理部103a~103d」から送信する「系統情報データ」が2つ生成された同一の電気量データを格納した、同一の第1の通信フレームである旨の明記がない点。 [相違点3] 本願発明1は、「前記受信処理部は、 予め定められた条件に基づき、前記通信ポートを介して受信した前記第1の通信フレームに関して、当該第1の通信フレームを受信した側と反対側の前記通信ポートへ、前記第1の通信フレームを中継するか否かを判定する中継要否判定部と、 前記中継要否判定部が前記第1の通信フレームを中継すると判定すると、前記第1の通信フレームを前記通信ポートに送出する中継送出部と、 前記中継要否判定部の中継判定結果にかかわらず、前記第1の通信フレームを前記演算部に通知する通信フレーム通知部、を備え」ているのに対して、引用発明には、「受信処理部」が、「中継要否判定部」、「中継送出部」、「通信フレーム通知部」を備えることについての記載がない点。 [相違点4] 本願発明1は、各リレー端末間の同期通信として、「前記各リレー端末は、前記2回線の通信ポートの両方で同期制御データを含む第2の通信フレームにて同期通信し、前記各通信ポートでの同期通信における通信遅延時間の変動を比較して、前記2回線の通信ポートの同期通信のうち通信遅延時間の変動が少ない方の通信ポートの同期通信を、当該通信ポートを含む回線による同期通信として採用するように構成し」ているのに対し、引用発明は「伝送路20a、20bを介して双方向にデータを伝送するとともに、他の局からの伝送データを受信し、送信データと受信データの伝送時間の差を基にサンプリング時刻同期制御を実行」することで同期を行っており、「通信遅延時間の変動が少ない方」の同期通信を採用することが特定されていない点。 (2)判断 [相違点4]について 事案に鑑みて、相違点4について先に検討する。 上記引用文献1-9及び、平成30年11月21日付けでなされた前置報告書で引用された、引用文献10.特開2009-177739号公報、及び、引用文献11.特開2006-238314号公報のうち、同期制御のために、2系統の同期通信を行う点についての記載や示唆があるのは、引用文献1、8-9のみである。 引用文献2は「電力系統の保護を行うディジタル保護継電システム」であって、「親局1、2と端末装置31~3n間を1系と2系のループ回線の伝送路で接続し、情報送信側は両伝送系に同一情報を送り、情報受信側は、1系と2系の伝送路のうちどちらか早く到着した系の情報で制御するシステム」が開示されているものの、そもそも、システムの同期制御のために、同期通信を行うことについての記載がない。 ア 引用文献1に記載された引用発明には、(1)[相違点4]に記載したように、「伝送路20a、20bを介して双方向にデータを伝送するとともに、他の局からの伝送データを受信し、送信データと受信データの伝送時間の差を基にサンプリング時刻同期制御を実行」することで、同期を行っており、本願発明1のように「2回線の通信ポートの同期通信のうち通信遅延時間の変動が少ない方の通信ポートの同期通信を、当該通信ポートを含む回線による同期通信として採用する」ことについての記載や示唆はない。 イ 引用文献8には、「差動継電器12の受信器41は差動継電器11からの事故判別用情報Adを受信すると、その先頭で信号Siを発生し、予め設定された既知の伝送遅延時間Tab分だけ遡った時刻t2で自端の事故判別用情報Bdの送信を開始」し、「更に時刻t2よりサンプリング周期Ts後の時刻T6よりTC時間tcだけ遡った時刻つまりT2よりTs-tc後の時刻t5で電流Ibをサンプリングする」ことによって同期を行う技術が記載されているが、本願発明1のように「2回線の通信ポートの同期通信のうち通信遅延時間の変動が少ない方の通信ポートの同期通信を、当該通信ポートを含む回線による同期通信として採用する」ことについての記載や示唆はない。 ウ 引用文献9には、「ループ回線R1からの送信を端末装置351が時刻t1で受信し、ループ回線R2からの受信が時刻t2で行われるときに、端末装置351は時間T3の計時から1/2の時間遅れに一致するサンプリングタイミング信号を得る」ことによって同期を行う技術が記載されているが、本願発明1のように「2回線の通信ポートの同期通信のうち通信遅延時間の変動が少ない方の通信ポートの同期通信を、当該通信ポートを含む回線による同期通信として採用する」ことについての記載や示唆はない。 エ また、「前記各リレー端末は、前記2回線の通信ポートの両方で同期制御データを含む第2の通信フレームにて同期通信し、前記各通信ポートでの同期通信における通信遅延時間の変動を比較して、前記2回線の通信ポートの同期通信のうち通信遅延時間の変動が少ない方の通信ポートの同期通信を、当該通信ポートを含む回線による同期通信として採用するように構成」することが、周知技術であるとも認められない。 よって、当業者といえども、引用発明及び引用文献2-11に記載された技術的事項に基づいて、相違点4に係る本願発明1の「前記各リレー端末は、前記2回線の通信ポートの両方で同期制御データを含む第2の通信フレームにて同期通信し、前記各通信ポートでの同期通信における通信遅延時間の変動を比較して、前記2回線の通信ポートの同期通信のうち通信遅延時間の変動が少ない方の通信ポートの同期通信を、当該通信ポートを含む回線による同期通信として採用する」という構成を容易に想到することはできない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2-11に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2-3について 本願発明2-3は、本願発明1を減縮した発明であって、本願発明2-3も、本願発明1の上記相違点4に係る「前記各リレー端末は、前記2回線の通信ポートの両方で同期制御データを含む第2の通信フレームにて同期通信し、前記各通信ポートでの同期通信における通信遅延時間の変動を比較して、前記2回線の通信ポートの同期通信のうち通信遅延時間の変動が少ない方の通信ポートの同期通信を、当該通信ポートを含む回線による同期通信として採用するように構成」するものと同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-11に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 原査定について 審判請求時の補正により、本願発明1-3は「前記各リレー端末は、前記2回線の通信ポートの両方で同期制御データを含む第2の通信フレームにて同期通信し、前記各通信ポートでの同期通信における通信遅延時間の変動を比較して、前記2回線の通信ポートの同期通信のうち通信遅延時間の変動が少ない方の通信ポートの同期通信を、当該通信ポートを含む回線による同期通信として採用するように構成」するという事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-9に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2018-013582

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