特許拒絶査定不服審判
2018-012616
液晶表示装置、偏光板及び偏光子保護フィルム
- 審判番号
- 2018-012616
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-239613外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年09月21日
- 審決日
- 2019年09月17日
- 公報発行日
- 2019年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】東洋紡株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人三枝国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-239613「液晶表示装置、偏光板及び偏光子保護フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月30日出願公開、特開2017- 62503〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年12月27日(優先権主張 平成24年7月31日 平成23年12月28日)に出願した、特願2012-284048号の一部を、平成28年12月9日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続の経緯は、以下のとおりである。
平成29年4月4日:手続補正書の提出
平成29年10月6日付け:拒絶理由通知書
平成29年12月14日:意見書、手続補正書の提出
平成30年4月18日付け:拒絶理由通知書
平成30年6月21日:意見書、手続補正書の提出
平成30年6月29日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成30年9月21日:審判請求書、手続補正書の提出
平成31年1月8日:上申書の提出
第2 平成30年9月21日提出の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年9月21日提出の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりの、次のものである(下線部は、補正箇所である。)。
「 リタデーションが3000~30000nmであり、且つ、リタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)が0.2以上であるポリエステルフィルムの片面に、酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂及び粒子を含有する塗布層を有し、該粒子は、屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物である粒子A及び平均粒径が200~700nmである粒子Bを含み、
前記ポリエステルフィルムは他方の面にポリエステル樹脂を主成分とする易接着層を有し、
前記易接着層上に紫外線硬化型、電子線硬化型、及び/又は熱硬化型の接着剤を介して偏光子が積層されており、
前記ポリエステルフィルムの配向主軸は、偏光子の吸収軸に対して垂直である偏光板であって、
連続的な発光スペクトルを有する白色光源をバックライト光源とする液晶表示装置の射出光側に配置される射出光側用偏光板(但し、前記塗布層又は易接着層にオキサゾリン基及びポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂を含む偏光板を除く)。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の本願発明は、平成30年6月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりの、次のものである。
「 リタデーションが3000~30000nmであるポリエステルフィルムの片面に、酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂及び粒子を含有する塗布層を有し、該粒子は、屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物である粒子A及び平均粒径が200~700nmである粒子Bを含み、
前記ポリエステルフィルムは他方の面にポリエステル樹脂を主成分とする易接着層を有し、
前記易接着層上に紫外線硬化型、電子線硬化型、及び/又は熱硬化型の接着剤を介して偏光子が積層されており、
前記ポリエステルフィルムの配向主軸は、偏光子の吸収軸に対して垂直である偏光板であって、
連続的な発光スペクトルを有する白色光源をバックライト光源とする液晶表示装置の射出光側に配置される射出光側用偏光板(但し、前記塗布層又は易接着層にオキサゾリン基及びポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂を含む偏光板を除く)。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ポリエステルフィルム」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項及び引用発明
ア 引用文献10の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先権主張の日(以下、「本件優先日」という。)前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2011-59488号公報(平成23年3月24日公開。以下「引用文献10」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
(ア)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板およびそれを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費電力が低く、低電圧で動作し、軽量でかつ薄型の液晶表示装置が、携帯電話、携帯情報端末、コンピュータ用のモニター、およびテレビ等の情報用表示デバイスとして急速に普及している。さらに、液晶技術の発展に伴い、様々なモードの液晶表示装置が提案され、従来、応答速度、コントラスト、および視野角等の液晶表示装置の問題とされていた点が解消されつつある。
【0003】
一方で、液晶表示装置のさらなる薄型軽量化を望む強い市場要求を受けて、液晶表示装置を構成する液晶パネル、拡散板、バックライトユニット、および駆動IC等の薄型化や小型化が進められている。このような状況下、液晶パネルを構成する部材である偏光板も10μmの単位で薄型化することが求められている。
【0004】
同時に、液晶表示装置の普及に伴って、市場からのコストダウン要求も日増しに強くなっており、偏光板においてもさらなるコストダウンや生産性の向上が必須となっている。
・・・(省略)・・・
【0007】
上記要求を満足できる技術として、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする手法が提案されている。ポリエチレンテレフタレートは機械的強度に優れることから、薄膜化に適しており、偏光板の薄型化を実現できる。さらに、トリアセチルセルロースや環状オレフィン系樹脂と比較して、一般的にコストの面からも優位性を有する。加えて、トリアセチルセルロースと比較して、低透湿性で低吸水性といった特徴を有することから、耐湿熱性や耐冷熱衝撃性にも優れ、環境変化に対して高い耐久性を持つことも期待できる。
【0008】
しかしながら、一方で、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとした偏光板を液晶表示装置に搭載した場合、トリアセチルセルロースフィルムを保護フィルムとする一般的な偏光板に比べて、その高いレタデーション値に由来する斜め方向からの色ムラ(干渉ムラ、虹ムラとも言う)が目立ち、視認性に劣るという問題を有している。この問題について、たとえば特開2009-109993号公報(特許文献3)では、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとした偏光板と、ヘイズ値を制御した防眩層を付与した偏光板とを組み合わせて液晶表示装置を構成することで、色ムラを低減する手法が開示されている。しかしながら、この手法を用いても色ムラの低減は不十分であり、より効果的な手法の確立が望まれていた。
・・・(省略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的は、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする偏光板であって、液晶表示装置に搭載した際の色ムラが少なく視認性に優れ、かつ薄型化を実現し、コストパフォーマンスや生産性にも優れる偏光板を提供することにある。また、本発明のもう一つの目的は、前記の偏光板を用いた視認性に優れる液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記色ムラ問題を解決するべく、鋭意研究を行なってきた。その結果、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする偏光板において、面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたときに、(nx-nz)/(nx-ny)で表されるNz係数が2.0未満の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとして用いることで、液晶表示装置の色ムラを効果的に低減でき、高い視認性と薄型化、低コスト化との両立が実現できることを見出した。
・・・(省略)・・・
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、Nz係数が2.0未満の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとして用いることで、液晶表示装置の表示時における色ムラが少なく優れた視認性を示し、かつ薄型化を実現し、コストパフォーマンスや生産性にも優れる偏光板を提供することができる。また、本発明によれば、前記の偏光板を用いた視認性に優れる液晶表示装置を提供することができる。」
(イ)「【発明を実施するための形態】
【0022】
<偏光板>
本発明の偏光板は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムと、該偏光フィルムの片面に、第一の接着剤層を介して積層された延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、を備えるものである。また、本発明の偏光板は、偏光フィルムにおける延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層されている面とは反対側の面に、第二の接着剤層を介して積層された保護フィルムまたは光学補償フィルムを備えていてもよい。以下、本発明の偏光板について具体的に説明する。
【0023】
(偏光フィルム)
本発明に用いる偏光フィルムは、通常、公知の方法によってポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、およびホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造されるものである。」
(ウ)「【0038】
(延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)
本発明に用いる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとは、一種以上のポリエチレンテレフタレート系樹脂を溶融押出によって製膜し、横延伸してなる一層以上の一軸延伸フィルム、または、製膜後引き続いて縦延伸し、次いで横延伸してなる一層以上の二軸延伸フィルムである。ポリエチレンテレフタレートは、延伸により屈折率の異方性および、それらで規定される位相差値、Nz値、光軸を任意に制御することができ、本発明においては、必要な光学性能を効率よく付与できることから一軸延伸品が好ましく用いられる。
・・・(省略)・・・
【0068】
なお、ここで延伸方向とは、縦延伸または横延伸における延伸倍率の大きい方向をいう。ポリエチレンテレフタレートフィルムの二軸延伸では、通常、横延伸倍率の方が縦延伸倍率より若干大きくなされるので、この場合、延伸方向とは、前記フィルムの長尺方向に対して垂直方向をいう。また、一軸延伸では、通常、前記のように横方向へ延伸されるので、この場合、延伸方向とは、同じく長尺方向に対して垂直方向をいう。
【0069】
また、ここで配向主軸とは、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上の任意の点における分子配向方向をいい、ここでは遅相軸のことを指す。配向主軸(遅相軸)の延伸方向に対する歪みとは、遅相軸と延伸方向との角度差をいう。
・・・(省略)・・・
【0071】
延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおいて、上記縦延伸または横延伸における延伸倍率は、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率であるnx、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率であるny、厚み方向の屈折率であるnzを制御する上で最も重要な因子であり、一般的に延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの作製において、一軸延伸は、(nx-nz)/(nx-ny)で表されるNz係数が比較的小さい、二軸延伸は比較的大きいフィルムを作製することに適している。
【0072】
本発明の偏光板においては、かかる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとして、Nz係数が2.0未満であるものを用いる。このため、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、一軸延伸にて作製することが好ましい。このような光学性能の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを採用することで、かかる偏光板を搭載した液晶表示装置における色ムラを効果的に低減することが可能となる。Nz係数は、2.0未満であれば小さいほど色ムラ低減の効果を発揮し、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下である。Nz係数が2.0以上の場合は、かかる偏光板を搭載した液晶表示装置において強い色ムラが発生し、視認性に劣るものとなる。Nz係数が2.0以上4未満である場合、色ムラ低減効果を得ることができない。なお、Nz係数が4以上である場合であっても色ムラ低減効果を得ることができ、この場合、Nz係数の値が高いほど、色ムラ低減に有利である。
【0073】
また、本発明の偏光板における延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、膜厚をdとしたときに、(nx-ny)×dで定義される面内位相差値R0が200~1200nmもしくは2000~7000nmのものが好適に採用できる。R0がかかる範囲外、すなわちR0が1200を超え、2000nm未満の範囲にある場合は、比較的目立つ色ムラが発生する傾向にある。したがって、より効果的に色ムラを低減する観点から、面内位相差値R0は、1200nm以下もしくは2000nm以上であることが好ましい。また、R0が200nm未満と小さい場合は、安定的にNz係数を2.0未満に制御することが困難であり、生産性やコストの面に問題を有する。一方で、R0が7000nmを超える場合は、Nz係数は低減させやすいものの、機械的強度に劣るフィルムとなる傾向にある。
【0074】
本発明の偏光板においては、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸の軸ズレ角度は目的や生産上の制約等に応じて任意に選択することができる。たとえば、本発明の偏光板を、偏光性の強いバックライト光源を備える液晶表示装置のバックライト光源側(入射側)偏光板として適用する場合、延伸ポリエチレンテレフタレートの面内位相差に由来する正面方向からの干渉色の発現を防ぐため、偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの軸ズレ角度は小さい方が好ましい。好ましくは、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度は、0度以上15度以下の範囲とすることが好ましい。かかる場合においても、Nz係数を2.0未満とすることが、色ムラの低減に効果的である。
【0075】
偏光性の強いバックライト光源として、たとえば、バックライトユニット内に反射型偏光分離フィルムを備えるもの等が挙げられる。反射型偏光分離フィルムとは、バックライトの光を選択的に反射させ、再利用することで可視範囲の輝度を向上させる機能を有するフィルムである。反射型偏光分離フィルムに相当する市販品としては、米国の3M Company〔日本では住友スリーエム(株)〕から販売されている「DBEF」(商品名)などがある。
【0076】
一方で、上記以外の場合には、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度が大きいものも好ましく用いることができる。中でも、20度以上50度以下のズレ角度であるものがより好ましい。偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの軸ズレ角度を上記の範囲とすることで、より効果的に液晶表示装置の色ムラを低減することができる。」
(エ)「【0081】
(機能層)
本発明に用いられる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムには、そのフィルムが偏光板の視認側に用いられる場合、偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に、防眩層、ハードコート層、反射防止層、および帯電防止層から選ばれる少なくとも1つの機能層を設けることが好ましい。
【0082】
防眩層は、外光の映り込みやギラツキを防ぐために設けられる。ハードコート層は、表面の耐擦傷性などを改善するために設けられる。反射防止層は、外光の反射を防ぐために設けられる。また帯電防止層は、静電気の発生を防ぐために設けられる。これらの機能層を本発明の偏光板に形成する場合、塗工など公知の方法で直接延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上に設けてもよいし、基材上にこれらの機能層が設けられたフィルムを延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに貼合してもよい。また、これらの機能層を予め延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに形成しておき、これをその機能層とは反対側の面で偏光フィルムに貼合する方法も採用できる。
・・・(省略)・・・
【0084】
さらに、本発明に用いられる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムには、本発明の効果を妨げない限り、上記以外にも様々な機能層を片面または両面に積層することができる。積層される上記以外の機能層としては、たとえば、導電層、平滑化層、易滑化層、ブロッキング防止層、および易接着層等が挙げられる。中でも、この延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、偏光フィルムと接着剤層を介して積層されることから易接着層が積層されていることが好ましい。
【0085】
易接着層を構成する成分は、特に限定されるものではないが、たとえば、極性基を骨格に有し比較的低分子量で低ガラス転移温度である、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、またはアクリル系樹脂等が挙げられる。また、必要に応じて架橋剤、有機または無機フィラー、界面活性剤、および滑剤等を含有することができる。」
(オ)「【0087】
(第一の接着剤層)
本発明の偏光板において、偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとは、通常、透明で光学的に等方性の接着剤を介して貼着される。これらの接着には、それぞれのフィルムに対する接着性を考慮して任意のものを用いることができる。たとえば、ポリビニルアルコール系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられるが、本発明においては、脂環式エポキシ化合物を含有する活性エネルギー線硬化性組成物を採用することが好ましく、脂環式エポキシ化合物を含有する無溶剤の活性エネルギー線硬化性組成物を採用することがより好ましい。かかる接着剤を採用することにより、過酷な環境下における偏光板の耐久性を向上させることが可能になるとともに、無溶剤のものを用いた場合には、接着剤を乾燥させる工程が不要になるため、生産性を向上させることができる。脂環式エポキシ化合物を含有する活性エネルギー線硬化性組成物を接着剤として用いる場合、偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとを当該接着剤を介して積層させた後、活性エネルギー線を照射して当該接着剤を硬化させることにより、当該活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層からなる第一の接着剤層が形成される。
・・・(省略)・・・
【0142】
上記接着剤層を介して積層された偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとの積層体に対して活性エネルギー線を照射し、接着剤層を硬化させることにより、本発明の偏光板を得ることができる。」
(カ)「【0217】
<液晶表示装置>
以上のようにしてなる偏光板、すなわち、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/第一の接着剤層/偏光フィルム/第二の接着剤層/[保護フィルムまたは光学補償フィルム]/粘着剤層/剥離フィルムとの層構造を有する偏光板は、粘着剤層から剥離フィルムを剥離して、液晶セルの片面または両面に貼合し、液晶パネルとすることができる。この液晶パネルは、液晶表示装置に適用することができる。
【0218】
本発明の偏光板は、たとえば、液晶表示装置において、光出射側(視認側)に配置される偏光板として用いることができる。光出射側とは、液晶セルを基準に、液晶表示装置のバックライト側とは反対側を指す。光出射側の偏光板として本発明の偏光板が採用される場合、当該偏光板は、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に、防眩層、ハードコート層、反射防止層、および帯電防止層から選ばれる少なくとも1つの機能層を備えることが好ましい。また、液晶表示装置の光入射側(バックライト側)に配置される偏光板は、本発明の偏光板であってもよいし、従来公知の偏光板であってもよい。
・・・(省略)・・・
【0222】
液晶表示装置を構成するバックライトも、一般の液晶表示装置に広く使用されているものでよい。たとえば、拡散板とその背後に配置された光源で構成され、光源からの光を拡散板で均一に拡散させたうえで前面側に出射するように構成されている直下型のバックライトや、導光板とその側方に配置された光源で構成され、光源からの光を一旦導光板の中に取り込んだうえで、その光を前面側に均一に出射するように構成されているサイドライト型のバックライトなどを挙げることができる。バックライトにおける光源としては、蛍光管を使って白色光を発光する冷陰極蛍光ランプや、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)などを採用することができる。」
(キ)「【実施例】
【0223】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0224】
以下の例において、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みは、メーカー呼称値で示した。面内位相差値R0およびNz係数は、位相差フィルム・光学材料検査装置RETS(大塚電子株式会社製)にて測定した。また、環状オレフィン系樹脂からなる光学補償フィルムの厚み、面内位相差値R0および厚み方向位相差値Rthはメーカー呼称値で示した。環状オレフィン系樹脂からなる光学補償フィルムのR0およびRthは位相差フィルム・光学材料検査装置RETS(大塚電子株式会社製)を用いて実測もしているが、ほぼ同様の値が得られている。
【0225】
<実施例1>
(a)偏光フィルムの作製
平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に56.5℃で浸漬した。引き続き8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを得た。延伸は、主に、ヨウ素染色およびホウ酸処理の工程で行ない、トータル延伸倍率は5.3倍であった。
【0226】
(b)粘着剤付き偏光板の作製
厚み38μmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(Nz係数:1.0、R0:2160nm)の貼合面に、コロナ処理を施した後、脂環式エポキシ化合物を含有する無溶剤の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を、チャンバードクターを備える塗工装置によって厚さ2μmで塗工した。また、厚み73μmの環状オレフィン系樹脂からなる光学補償フィルム(面内位相差値R0:63nm、厚み方向位相差値Rth:225nm)の貼合面に、コロナ処理を施した後、上記と同じ接着剤組成物を同様の装置にて厚さ2μmで塗工した。
【0227】
次いで、直ちに上記(a)にて得られた偏光フィルムの片面に上記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、もう一方の面に上記光学補償フィルムを、各々接着剤組成物の塗工面を介して貼合ロールによって貼合した。この際、偏光フィルムの透過軸と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレは0度とした。その後、この積層物の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム側から、メタルハライドランプを320~400nmの波長における積算光量が600mJ/cm2となるように照射し、両面の接着剤を硬化させた。さらに、得られた偏光板の光学補償フィルムの外面に、厚み25μmのアクリル系粘着剤の層(セパレートフィルム付き)を設けた。
【0228】
(c)液晶表示装置の作製
ソニー(株)製の垂直配向モードの液晶表示装置“BRAVIA”(対角寸法40インチ=約102cm)の液晶パネルから光出射側偏光板を剥がし、その代わりに、市販の偏光板(スミカランSRW842E-GL5、住友化学(株)製)を、オリジナルの偏光板と同じ軸方向で、その粘着剤層側にて貼り付けた。また、光入射側偏光板も剥がし、その代わりに、上記(b)で作製した粘着剤層付き偏光板からセパレートフィルムを剥がしたものを、オリジナルの偏光板と同じ軸方向で、その粘着剤層を用いて貼り付けた。得られた液晶表示装置について、目視にて観察したところ、斜め方向の色ムラ(干渉ムラ)は小さく、視認性は良好であった。
【0229】
<実施例2>
Nz係数が1.4、面内位相差値R0が3360nmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、偏光フィルムの透過軸と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度が40度となるよう接着貼合したこと以外は実施例1の(b)と同様にして偏光板を作製し、さらに、実施例1の(c)と同様にして、液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置について、目視にて観察したところ、斜め方向の色ムラ(干渉ムラ)は小さく、視認性は良好であった。
【0230】
<実施例3>
Nz係数が1.8、面内位相差値R0が3950nmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、偏光フィルムの透過軸と延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度が40度となるよう接着貼合したこと以外は実施例1の(b)同様にして偏光板を作製し、さらに、実施例1の(c)と同様にして、液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置について、目視にて観察したところ、斜め方向の色ムラ(干渉ムラ)は比較的小さく、視認性は比較的良好であった。」
イ 引用発明
上記アからみて、引用文献10には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムと、該偏光フィルムの片面に、第一の接着剤層を介して積層された延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、を備え、
延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの面内位相差値R0が3360nm又は3950nmであり、
延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのNz係数が1.4又は1.8であり、
延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムには、偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に、防眩層、ハードコート層、反射防止層、および帯電防止層から選ばれる少なくとも1つの機能層を設け、
機能層は、塗工など公知の方法で直接延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上に設け、
延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムには、様々な機能層を片面または両面に積層することができ、積層される機能層としては、たとえば、導電層、平滑化層、易滑化層、ブロッキング防止層、および易接着層等が挙げられ、中でも、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、偏光フィルムと接着剤層を介して積層されることから易接着層が積層されていることが好ましく、
易接着層を構成する成分は、ポリエステル系樹脂であり(当合議体注:「易接着層」を「構成する成分」について、段落【0085】には、「特に限定されるものではないが」として、複数例示された樹脂のうちの一つとして、「ポリエステル系樹脂」が記載されている。)、
第一の接着剤層は、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層からなり、
液晶表示装置を構成するバックライトにおける光源として、発光ダイオード(LED)を採用する、液晶表示装置において、光出射側(視認側)に配置される偏光板。」
ウ 引用文献8の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本件優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2009-143226号公報(平成21年7月2日公開。以下「引用文献8」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用易接着性ポリエステルフィルムに関する。例えば、タッチパネル、液晶表示板(LCD)、テレビやコンピューターのブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)等の表示画面の前面に装着して、外光の写り込み、ぎらつき、虹彩状色彩等を抑制する反射防止性を付与し、ハードコート層との密着性及び高温高湿処理後の密着性に優れる光学用易接着性ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル、コンピューター、テレビ、液晶表示装置等のディスプレイ、装飾材等の前面には、透明なハードコート層を積層させたハードコートフィルムが使用されている。また、基材の透明プラスティックフィルムとしては、透明な二軸配向ポリエステルフィルムが一般的に用いられ、基材のポリエステルフィルムとハードコート層との密着性を向上させるために、これらの中間層として易接性を有する塗布層を設ける場合が多い。
【0003】
前記のハードコートフィルムには、温度、湿度、光に対する耐久性、透明性、耐薬品性、耐擦傷性、防汚性等が求められている。また、ハードコートフィルムにはディスプレイや装飾材などの表面に用いられることが多いため、視認性や意匠性が要求されている。そのため、任意の角度から見たときの反射光によるぎらつきや虹彩状色彩等を抑えるため、ハードコート層の上層に、高屈折率層と低屈折率層を相互に積層した多層構造の反射防止層を設けることが一般的に行われている。
【0004】
しかしながら、ディスプレイや装飾材などの用途では、近年、さらなる大画面化(大面積化)及び高級性が求められ、それにともなって特に蛍光灯下での虹彩状色彩(干渉斑)の抑制に対する要求レベルが高くなってきている。また、蛍光灯は昼光色の再現性のため3波長形が主流となってきており、より干渉斑が出やすくなっている。さらに、反射防止層の簡素化によるコストダウン要求も高くなってきている。そのため、反射防止層を付加しないハードコートフィルムのみでも干渉斑をできるだけ抑制するものが求められている。
【0005】
ハードコートフィルムの虹彩状色彩(干渉斑)は、基材のポリエステルフィルムの屈折率(例えば1.62)とアクリル樹脂からなるハードコート層の屈折率(例えば1.49)との差が大きいため発生するといわれている。積層間の屈折率差を小さくして干渉斑の発生を防止するため、基材のポリエステルフィルム上に塗布層を設け、ポリエステルフィルムと塗布層との屈折率差、塗布層とハードコート層の屈折率差を小さくするように、塗布層を構成する樹脂と高屈折添加剤の含有量で塗布層の屈折率を制御する方法が開示されている。このような方法として、例えば、(1)水溶性ポリエステル樹脂と水溶性金属キレート化合物または金属アシレート化合物を含むもの(特許文献1)、(2)高分子バインダーと高屈折率の金属酸化物を含むもの(特許文献2)等が提案されている。
・・・(省略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年の生産効率の向上の点から、ハードコート層形成用塗布液の溶剤として速乾性やレベリングに優れた各種の溶剤が用いられるようになってきており、そのようなものの中には、ポリエステルフィルムに設けた塗布層を溶解するものも使用されるようになってきた。そのため、上記方法で特定の厚みを有する塗布層を設けても、ハードコート層形成用塗布液の溶剤によって塗布層厚みが変動し、干渉斑が抑制できない場合が生じてきた。そのため、各種の溶剤でも広範囲に適用可能な干渉斑の効果を有する塗布層の組成が切望された。
【0009】
すなわち、本発明は、蛍光灯下での虹彩状色彩を抑制し、かつ、ハードコート層との密着性、高温高湿下での密着性に優れる光学易接着性ポリエステルフィルム及び該フィルムにハードコート層を積層してなる光学用積層ポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題に対し、本発明者は塗布層組成に関して鋭意検討を行った結果、所定の屈折率を有する塗布層に平均粒径200nm以上700nm以下という大きな粒子を加えた結果、厚み変動に対しても安定的に干渉斑を抑制できるという驚くべき効果を見いだし、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂と、屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)と、平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)を含有する塗布層を設けた光学用易接着性ポリエステルフィルムである。
また、本発明は前記塗布層に架橋剤を含むことを特徴とした光学用易接着性ポリエステルフィルムである。
また、本発明は、前記架橋剤が尿素系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤から選ばれた少なくとも1種の架橋剤であることを特徴とする光学用易接着性ポリエステルフィルムである。
また、本発明は、前記光学用易接着性ポリエステルフィルムの塗布層の少なくとも片面に、電子線または紫外線硬化型アクリル樹脂、またはシロキサン系熱硬化性樹脂からなるハードコート層を積層してなる光学用積層ポリエステルフィルムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光学用易接着ポリエステルフィルムは、該フィルムの易接着層にハードコート層を積層した際に、干渉斑抑制に優れ、かつハードコート層との密着性及び高温高湿下での密着性(耐湿熱性)に優れる。」
(イ)「【0019】
(塗布層)
本発明の光学用易接着性フィルムには、酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂と、屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)と、平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)を含有する塗布層に設けることが重要である。すなわち、本発明の以下のような達成手段による。
【0020】
(1)塗布層の屈折率制御
本願発明の光学易接着性フィルムは、塗布層の屈折率をハードコート層と基材ポリエステルフィルムとの中間付近に調整する必要がある。ハードコート層に使用する樹脂の組成によって、ハードコート層の屈折率は変動するため、塗布層の屈折率はそれに対応して調整することが望ましく、具体的には塗布層の屈折率を1.6~1.7の範囲に調整する必要がある。このようにすることで各界面屈折率差を小さくし、干渉斑を抑制する。一般に易接着性を有する塗布層では屈折率が低いため(1.50前後)、塗布層の屈折率を上記範囲に制御する為に本願では、塗布層の用いる樹脂を酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂を用い、さらに屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)を添加する。係る構成により密着性を有しながら、屈折率の高い塗布層にすることができる。これらの組成の詳細については後述する。
【0021】
(2)平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)
本願発明者は塗布層組成を鋭意検討した結果、平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)を塗布層に添加することで干渉斑抑制効果を見いだし本願発明に至った。粒子Bがこのような効果を奏する理由はとして、本願発明者は以下のように考えている。塗布層に平均粒径の比較的大きい粒子を添加することで、塗布層とハードコート層との界面に凹凸が形成される。このような凹凸構造によって、塗布層とハードコート層との界面で光の散乱が生じる。このようなランダムな光散乱により塗布層と基材ポリエステルフィルムとの界面で生じる反射光との位相の乱れが生じ、その結果、干渉斑の抑制効果が生じると考えられる。本願の光学易接着性フィルムの塗布層はかかる構成を有するため、従来技術のように塗布厚みを高度に制御する必要もなく、各種の溶剤からなるハードコート層形成用塗布液でも広範囲に適用可能となった。
【0022】
また、粒子Bを塗布層に添加した効果として、ハードコート層との密着性が向上することを見いだした。これは、塗布層とハードコート層との界面に凹凸が形成されることによって、塗布層とハードコート層との界面面積が増加し、密着性に有利に作用したものと考えている。
【0023】
粒子Bが上記の効果を奏するために、塗布層の厚みは粒子Bの平均粒径より小さいことが好ましく、塗布層の厚みは粒子Bの平均粒径の1/1未満が好ましく、1/2以下がより好ましい。また、塗布層の厚みは粒子Bの平均粒径の1/15以上が好ましく、1/10以上がより好ましく、1/7以上がさらに好ましい。塗布層の厚みが粒子Bの平均粒径の1/15未満であると、透明性が低下する場合がある。
【0024】
本発明は、上記態様により、ハードコート層との密着性、及び高温高湿下での密着性(耐湿熱性)を維持しながら、蛍光灯下での虹彩状色彩を制御できる。さらに、本発明の構成を以下に詳細する。
【0025】
本発明において、易接着層中にポリエステル樹脂を含有させる必要があり、前記ポリエステル樹脂の酸性分として、ナフタレンジカルボン酸を含有させる必要がある。ナフタレンジカルボン酸を含有させることで、屈折率が増加し、蛍光灯下での虹彩状色彩を制御しやすくなる。また、耐湿熱性を向上させることができる。
・・・(省略)・・・
【0031】
本発明において、塗布層中に屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)を含有させる必要がある。このような金属酸化物としては、TiO2(屈折率2.7)、ZnO(屈折率2.0)、Sb2O3(屈折率1.9)、SnO2(屈折率2.1)、ZrO2(屈折率2.4)、Nb2O5(屈折率2.3)、CeO2(屈折率2.2)、Ta2O5(屈折率2.1)、Y2O3(屈折率1.8)、La2O3(屈折率1.9)、In2O3(屈折率2.0)、Cr2O3(屈折率2.5)等、及びこれらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。本発明の塗布層には、これらの金属酸化物を少なくとも1種または2種以上を含有する。金属酸化物粒子の屈折率が1.7以上であれば、塗布層の屈折率を前記範囲で調整する点で好ましい。また、金属酸化物粒子の屈折率が3.0以下であればフィルムの透明性を維持する点で好ましい。
・・・(省略)・・・
【0033】
本発明において、塗布層中に平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)を含有させる必要がある。粒子Bは(1)シリカ、カオリナイト、タルク、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、二酸化チタン、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、等の無機粒子、(2)アクリルあるいはメタアクリル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ナイロン、スチレン/アクリル系、スチレン/ブタジエン系、ポリスチレン/アクリル系、ポリスチレン/イソプレン系、ポリスチレン/イソプレン系、メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレート系、メラミン系、ポリカーボネート系、尿素系、エポキシ系、ウレタン系、フェノール系、ジアリルフタレート系、ポリエステル系等の有機粒子が挙げられる。
【0034】
前記粒子(粒子B)は、平均粒径が200~700nmのものが好適である。粒径が小さい場合は塗布層とハードコート層の界面の凹凸形成が小さく、散乱効果が減少し、蛍光灯下での虹彩状色彩の抑制効果が不十分となりやすくなる。大きい場合は、塗布層の透明性が悪くなる場合がある。
・・・(省略)・・・
【0040】
本発明において、ポリエステルフィルム上に塗布層を設ける方法としては、溶媒、粒子、樹脂を含有する塗布液をポリエステルフィルムに塗布、乾燥する方法が挙げられる。溶媒として、トルエン等の有機溶剤、水、あるいは水と水溶性の有機溶剤の混合系が挙げられるが、好ましくは、環境問題の点から水単独あるいは水に水溶性の有機溶剤を混合したものが好ましい。」
(ウ)「【0056】
次に、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は当然以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた評価方法は以下の通りである。
・・・(省略)・・・
【0061】
(5)干渉斑改善性(虹彩状色彩)
光学用積層ポリエステルフィルムを10cm(フィルム幅方向)×15cm(フィルム長手方向)の面積に切り出し、試料フィルムを作成した。得られた試料フィルムのハードコート層とは反対面に、黒色光沢テープ(日東電工製、ビニルテープNo21;黒)を張り合わせた。この試料フィルムのハードコート面を上面にして3波長形昼白色(ナショナル パルック、F.L 15EX-N 15W)を光源として斜め上から目視でもっとも反射が強く見える位置関係(光源からの距離40~60cm、フィルム面の垂線に対して15~45°の角度)で観察した。
【0062】
目視で観察した結果を、下記の基準でランク分けをする。なお、観察は該評価に精通した5名で行ない、最も多いランクを評価ランクとする。仮に、2つのランクで同数となった場合には、3つに分かれたランクの中心を採用した。例えば、◎と○が各2名で△が1名の場合は○を、◎が1名で○と△が各2名の場合には○を、◎と△が各2名で○が1名の場合には○を、それぞれ採用する。
◎:あらゆる角度からの観察でも虹彩状色彩が見られない
○:ある角度によっては僅かに虹彩状色彩が見られる
△:僅かに虹彩状色彩が観察される
×:はっきりとした虹彩状色彩が観察される
【0063】
(6)接着性
光学用積層ポリエステルフィルムに、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、ハードコート層を貫通して基材フィルムに達する100個のマス目状の切り傷をハードコート層面につける。次たで、セロハン粘着テープ(ニチバン社製、405番;24mm幅)をマス目状の切り傷面に貼り付け、消しゴムでこすって完全に密着させた。その後、垂直にセロハン粘着テープを光学用積層ポリエステルフィルムのハードコート層面から引き剥がして、光学用積層ポリエステルフィルムのハードコート層面から剥がれたマス目の数を目視で数え、下記の式からハードコート層と基材フィルムとの密着性を求めた。なお、マス目の中で部分的に剥離しているものも剥がれたマス目として数え、下記の基準でランク分けをした。
密着性(%)=(1-剥がれたマス目の数/100)×100
◎:100%
○:99~90%
△:90~70%
×:69~0%
【0064】
(7)耐湿熱性
光学用積層ポリエステルフィルムを、高温高湿槽中で60℃、95RH%の環境下500時間放置し、次いで、光学用積層ポリエステルフィルムを取りだし、室温常湿で12時間放置した。その後、前記(5)と同様の方法でハードコート層と基材フィルムの接密着性を求め、下記の基準でランク分けをした。
◎:100%
○:99~90%
△:90~70%
×:69~0%
・・・(省略)・・・
【0066】
(ポリエステル樹脂の重合)
攪拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備するステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルナフタレート381質量部、ジメチルテレフタレート58.3質量部、ジメチルー5-ナトリウムスルホイソフタレート41.5質量部、ジエチレングリコール46.7質量部、エチレングリコール245.8質量部、およびテトラーnーブチルチタネート0.5質量部を仕込み、160℃から220℃まで4時間かけてエステル交換反応を行なった。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、30Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂(A-1)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂は、淡黄色透明であった。
【0067】
同様の方法で、別の組成の共重合ポリエステル樹脂(A-2)を得た。これらの共重合ポリエステル樹脂に対し、1H-NMRで測定した組成及び重量平均分子量の結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
(ポリエステルの水分散液の調整)
攪拌機、温度計と還流装置を備えた反応器に、ポリエステル樹脂(A-1)20質量部、エチレングリコールt-ブチルエーテル15質量部を入れ、110℃で加熱、攪拌し樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、水65質量部を上記ポリエステル溶液に攪拌しつつ徐々に添加した。添加後、液を攪拌しつつ室温まで冷却して、固形分20質量%の乳白色のポリエステルの水分散液(B-1)を作製した。同様にポリエステル樹脂(A-1)の代わりにポリエステル樹脂(A-2)を使用して、水分散液を作製し、水分散液(B-2)とした。
【0070】
(ブロックポリイソシアネート架橋剤の重合)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HMDIを600部、3価アルコールであるポリカプロラクトン系ポリエステルポリオール(ダイセル化学社製、プラクセル303、分子量300)30部を仕込み、撹拌下反応器内温度を90℃1時間保持しウレタン化反応を行った。その後反応器内温度を60℃に保持し、イソシアヌレート化触媒テトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が48%になった時点で燐酸を添加し反応を停止し、ポリイソシアネート組成物(D-1)を得た。
【0071】
次いで、撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、ポリイソシアネート組成物(D-1)100部、分子量400のメトキシポリエチレングリコール(日本油脂社製、ユニオックスM400)19部(ポリイソシアネートの全イソシアネート基の10%と反応する)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート37部を仕込み、80℃で7時間保持した。その後反応液温度を50℃に保持し、メチルエチルケトオキシム38部を滴下した。反応液の赤外スペクトルを測定した結果、イソシアネート基が消失し、固形分濃度80質量%の水性ブロックポリイソシアネート樹脂(D-2)が得た。
【0072】
(オキサゾリン基を有する架橋剤の重合)
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、滴下ロート、および攪拌機を備えたフラスコに水性媒体としてのイオン交換水58質量部とイソプロパノール58質量部との混合物、および、重合開始剤(2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)・二塩酸塩)4質量部を投入した。一方、滴下ロートに、オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体としての2-イソプロペニル-2-オキサゾリン16質量部、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(エチレングリコールの平均付加モル数・9モル、新中村化学株式会社製)32質量部、およびメタクリル酸メチル32質量部の混合物を投入し、窒素雰囲気下、70℃において1時間にわたり滴下した。滴下終了後、反応溶液を9時間攪拌し、冷却することで固形分濃度40質量%のオキサゾリン基を有する水溶性樹脂(E)を得た。
【0073】
実施例1
(1)塗布液の調整
下記の塗剤を混合し、塗布液を作成した。粒子Aは屈折率2.1のSnO2、粒子Bは平均1次粒径 約500nmのシリカ粒子である。
水 43.26質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散液(B-1) 20.07質量%
メラミン樹脂 0.74質量%
(大日本インキ製ベッカミンM-3、固形分濃度60質量%)
粒子A 5.58質量%
(多木化学製セラメースS-8、固形分濃度8質量%)
粒子B 0.30質量%
(日本触媒製シーホスターKEW50、固形分濃度15質量%)
界面活性剤 0.05質量%
(日信化学工業製ダイノール604、固形分濃度100質量%)
【0074】
(2)光学用易接着性ポリエステルフィルムの製造
フィルム原料ポリマーとして、固有粘度が0.62dl/gで、かつ粒子を実質上含有していないPET樹脂ペレットを、133Paの減圧下、135℃で6時間乾燥した。その後、押し出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出しして、表面温度20℃に保った回転冷却金属ロール上で静電印加法により急冷密着固化させ、未延伸PETシートを得た。
【0075】
この未延伸PETシートを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して、一軸延伸PETフィルムを得た。
【0076】
次いで、前記塗布液をロールコート法でPETフィルムの片面に塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。なお、最終(二軸延伸後)の乾燥後の塗布量が0.15g/m2になるように調整した。引続いてテンターで、120℃で幅方向に4.0倍に延伸し、フィルムの幅方向の長さを固定した状態で、230℃で0.5秒間加熱し、さらに230℃で10秒間3%の幅方向の弛緩処理を行ない、厚さ100μmの光学用易接着性ポリエステルフィルムを得た。電顕で観察したところ、塗布層の厚みは120nmであった。評価結果を表2に示す。
【0077】
(3)光学用積層ポリエステルフィルムの製造
前記の光学用易接着性ポリエステルフィルムの塗布層面に、下記組成のハードコート層形成用塗布液(C-1)を#10ワイヤーバーを用いて塗布し、70℃で1分間乾燥し、溶剤を除去した。次いで、ハードコート層を塗布したフィルムに高圧水銀灯を用いて300mJ/cm2の紫外線を照射し、厚み5μmのハードコート層を有する光学用積層ポリエステルフィルムを得た。ハードコート層の屈折率は1.55であった。
ハードコート層形成用塗布液(C-1)
イソプロパノール 48.47質量%
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 21.25質量%
(新中村化学製A-DPH)
ポリエチレンジアクリレート 5.67質量%
(新中村化学製A-400)
ZrO2ゾル 23.61質量%
(日産化学工業製OZ-30M、固形分濃度30質量%)
光重合開始剤 1.00質量%
(チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュア184)
・・・(省略)・・・
【0112】
【表2】
」
エ 引用文献9の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本件優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2011-5854号公報(平成23年1月13日公開。以下「引用文献9」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用易接着性ポリエステルフィルムに関する。例えば、タッチパネル、液晶表示板(LCD)、テレビやコンピューターのブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)等の表示画面の前面に装着して、外光の写り込み、ぎらつき、虹彩状色彩等を抑制する反射防止性を付与し、ハードコート層との密着性及び高温高湿処理後の密着性に優れる光学用易接着性ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル、コンピューター、テレビ、液晶表示装置等のディスプレイ、装飾材等の前面には、透明なハードコート層を積層させたハードコートフィルムが使用されている。また、基材の透明プラスティックフィルムとしては、透明な二軸配向ポリエステルフィルムが一般的に用いられ、基材のポリエステルフィルムとハードコート層との密着性を向上させるために、これらの中間層として易接性を有する塗布層を設ける場合が多い。
【0003】
前記のハードコートフィルムには、温度、湿度、光に対する耐久性、透明性、耐薬品性、耐擦傷性、防汚性等が求められている。また、ハードコートフィルムにはディスプレイや装飾材などの表面に用いられることが多いため、視認性や意匠性が要求されている。そのため、任意の角度から見たときの反射光によるぎらつきや虹彩状色彩等を抑えるため、ハードコート層の上層に、高屈折率層と低屈折率層を相互に積層した多層構造の反射防止層を設けることが一般的に行われている。
【0004】
しかしながら、ディスプレイや装飾材などの用途では、近年、さらなる大画面化(大面積化)及び高級性が求められ、それにともなって特に蛍光灯下での虹彩状色彩(干渉斑)の抑制に対する要求レベルが高くなってきている。また、蛍光灯は昼光色の再現性のため3波長形が主流となってきており、より干渉斑が出やすくなっている。さらに、反射防止層の簡素化によるコストダウン要求も高くなってきている。そのため、反射防止層を付加しないハードコートフィルムのみでも干渉斑をできるだけ抑制するものが求められている。
【0005】
ハードコートフィルムの虹彩状色彩(干渉斑)は、基材のポリエステルフィルムの屈折率(例えば1.62~1.65)とアクリル樹脂からなるハードコート層の屈折率(例えば1.49)との差が大きいため発生するといわれている。積層間の屈折率差を小さくして干渉斑の発生を防止するため、基材のポリエステルフィルム上に塗布層を設け、ポリエステルフィルムと塗布層との屈折率差、塗布層とハードコート層の屈折率差を小さくするように、塗布層を構成する樹脂と高屈折添加剤の含有量で塗布層の屈折率を制御する方法が開示されている。このような方法として、例えば、(1)水溶性ポリエステル樹脂と水溶性金属キレート化合物または金属アシレート化合物を含むもの(特許文献1)、(2)高分子バインダーと高屈折率の金属酸化物を含むもの(特許文献2)等が提案されている。
【0006】
上記(1)、(2)の方法で干渉斑の発生を抑制する場合、塗布層の厚みを制御することが重要となる。塗布層を設けることで、ハードコート層-塗布層界面で生じる反射光と、塗布層-ポリエステルフィルム界面で生じる反射光とが生じるが、この2つの波長が打ち消しあって逆位相となる為には、光学設計上、特定の範囲内で塗布層厚みを制御する必要があるためである。そのため、塗布層の厚みが所定の範囲を超える場合は、これら反射光による干渉斑が発生することとなる。よって、上記(1)、(2)の方法では、生産管理上、極めて厳密に塗布層厚みを制御する必要があった。
・・・(省略)・・・
【0009】
しかしながら、近年の生産効率の向上の点から、ハードコート層形成用塗布液の溶剤として速乾性やレベリングに優れた各種の溶剤が用いられるようになってきており、そのようなものの中には、ポリエステルフィルムに設けた塗布層を溶解するものも使用されるようになってきた。そのため、上記方法で特定の厚みを有する塗布層を設けても、ハードコート層形成用塗布液の溶剤によって塗布層厚みが変動し、干渉斑が抑制できない場合が生じてきた。
【0010】
また、上記(2)の方法では、屈折率を制御するために使用しているポリエステル樹脂の主成分がナフタレンジカルボン酸成分や短鎖のジオール成分であるため、樹脂組成の硬度が比較的高く、堅い塗布層となっている。そのため、フィルム断裁時に塗布層中の粒子が脱落(粉落ち)し、異物として付着する状況があった。
【0011】
さらに、近年の生産性の向上のため、ハードコート層の積層やスリット加工等、後加工処理の高速化が進むにつれて塗布層へ強い摩擦が加わり、従来問題とならなかった塗布層の削れによる厚み変動、品質変動が課題となりつつある。特に、屈折率を高めるために用いる樹脂は比較的硬度が高く、脆いため、干渉斑を抑制した塗布層ほどこの塗布層の削れは大きくなる傾向にある。
【0012】
よって、各種の溶剤でも広範囲に適用可能な干渉斑の抑制効果を有し、さらに高速加工においても塗布層の削れが少なく、安定した干渉斑低減効果を有する光学易接着性ポリエステルフィルムが切望されつつある。すなわち、本発明は、蛍光灯下での虹彩状色彩を抑制し、かつ、ハードコート層との密着性、高温高湿下での密着性に優れ、かつ、高速後加工においても塗布層の耐削れ性を有する光学易接着性ポリエステルフィルム及び該フィルムにハードコート層を積層してなる光学用積層ポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題に対し、本発明者は塗布層組成に関して鋭意検討を行った結果、所定の屈折率を有する塗布層に平均粒径200nm以上700nm以下という大きな粒子を加えた結果、厚み変動に対しても安定的に干渉斑を抑制できるという驚くべき効果を見いだし、かつ、特定の炭素数を有する長鎖のジカルボン酸成分および/または長鎖のジオール成分を含むポリエステル樹脂を使用することで塗布層の削れを顕著に抑制しうることを見いだし、本発明の光学用積層ポリエステルフィルムを得るに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリエステル樹脂と粒子Aと粒子Bを含有する塗布層を有する光学用易接着性ポリエステルフィルムであって、前記ポリエステル樹脂が、酸成分としてナフタレンジカルボン酸と、下記式(1)で表されるジカルボン酸成分および/または下記式(2)で表されるジオール成分とを含み、前記粒子Aが、屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子であり、前記粒子Bが、平均粒径200nm以上700nm以下の粒子である、光学用易接着性ポリエステルフィルムである。
(1)HOOC-(CH2)n-COOH (式中、nは4≦n≦10の整数)
(2)HO-(CH2)n-OH (式中、nは4≦n≦10の整数)
・・・(省略)・・・
【発明の効果】
【0015】
本発明の光学用易接着ポリエステルフィルムは、該フィルムの易接着層にハードコート層を積層した際に、干渉斑抑制に優れ、かつハードコート層との密着性及び高温高湿下での密着性(耐湿熱性)に優れるとともに、塗布層の削れ性を顕著に抑制しうる。そのため、ハードコート層を積層した光学積層ポリエステルフィルムのベースフィルムとして好適である。」
(イ)「【0023】
(塗布層)
本発明の光学用易接着性フィルムには、酸成分としてナフタレンジカルボン酸と、下記式(1)で表されるジカルボン酸成分および/または下記式(2)で表されるジオール成分とを含むポリエステル樹脂と、屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)と、平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)を含有する塗布層に設けることが重要である。すなわち、本発明の以下のような達成手段による。
(1)HOOC-(CH2)n-COOH (式中、nは4≦n≦10の整数)
(2)HO-(CH2)n-OH (式中、nは4≦n≦10の整数)
【0024】
(1)塗布層の屈折率制御
本発明の光学易接着性フィルムは、塗布層の屈折率をハードコート層と基材ポリエステルフィルムとの中間付近に調整する必要がある。ハードコート層に使用する樹脂の組成によって、ハードコート層の屈折率は変動するため、塗布層の屈折率はそれに対応して調整することが望ましく、具体的には塗布層の屈折率を1.6~1.7の範囲に調整する必要がある。このようにすることで各界面屈折率差を小さくし、干渉斑を抑制する。一般に易接着性を有する塗布層では屈折率が低いため(1.50前後)、塗布層の屈折率を上記範囲に制御する為に本願では、塗布層の用いる樹脂を酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂を用い、さらに屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)を添加する。係る構成により密着性を有しながら、屈折率の高い塗布層にすることができる。これらの組成の詳細については後述する。
【0025】
(2)平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)
本発明者は塗布層組成を鋭意検討した結果、平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)を塗布層に添加することで干渉斑抑制効果を見いだし本発明に至った。粒子Bがこのような効果を奏する理由として、本発明者は以下のように考えている。塗布層に平均粒径の比較的大きい粒子を添加することで、塗布層とハードコート層との界面に凹凸が形成される。このような凹凸構造によって、塗布層とハードコート層との界面で光の散乱が生じる。このようなランダムな光散乱により塗布層と基材ポリエステルフィルムとの界面で生じる反射光との位相の乱れが生じ、その結果、干渉斑の抑制効果が生じると考えられる。本願の光学易接着性フィルムの塗布層はかかる構成を有するため、従来技術のように塗布厚みを高度に制御する必要もなく、各種の溶剤からなるハードコート層形成用塗布液でも広範囲に適用可能となった。
【0026】
また、粒子Bを塗布層に添加した効果として、ハードコート層との密着性が向上することを見いだした。これは、塗布層とハードコート層との界面に凹凸が形成されることによって、塗布層とハードコート層との界面面積が増加し、密着性に有利に作用したものと考えている。
【0027】
粒子Bが上記の効果を奏するために、塗布層の厚みは粒子Bの平均粒径より小さいことが好ましく、塗布層の厚みは粒子Bの平均粒径の1/1未満が好ましく、1/2以下がより好ましい。また、塗布層の厚みは粒子Bの平均粒径の1/15以上が好ましく、1/10以上がより好ましく、1/7以上がさらに好ましい。塗布層の厚みが粒子Bの平均粒径の1/15未満であると、透明性が低下する場合がある。
・・・(省略)・・・
【0032】
本発明は、上記態様により、ハードコート層との密着性、及び高温高湿下での密着性(耐湿熱性)を維持しながら、蛍光灯下での虹彩状色彩を制御し、かつ、優れた塗布層の耐削れ性を有する。さらに、本発明の構成を以下に詳細する。
【0033】
本発明において、塗布層中にポリエステル樹脂を含有させる必要があり、前記ポリエステル樹脂の酸成分として、ナフタレンジカルボン酸を含有させる必要がある。ナフタレンジカルボン酸を含有させることで、屈折率が増加し、蛍光灯下での虹彩状色彩を制御しやすくなる。また、耐湿熱性を向上させることができる。
【0034】
このようなナフタレンジカルボン酸としては、2,6-ナフタレンジカルボン酸が好ましい。ポリエステル樹脂中の上記ナフタレンジカルボン酸の割合は酸成分として20モル%以上が好ましく、30モル%以上がより好ましく、50モル%以上がさらに好ましく、60モル%以上がよりさらに好ましい。また、ポリエステル樹脂中の上記ナフタレンジカルボン酸の割合は酸成分として90モル%以下が好ましく、85モル%以下がより好ましく、80モル%以下がさらに好ましい。ポリエステル樹脂中の上記ナフタレンジカルボン酸の割合は、粒子Aとともに塗布層の屈折率が前述の範囲になるよう適宜調整するが、20モル%未満であれば粒子Aの添加量が多くなり、密着性が低下する場合がある。また、90モル%を超える場合は、樹脂の密着性が低下する場合がある。
・・・(省略)・・・
【0043】
本発明において、塗布層中に屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)を含有させる必要がある。このような金属酸化物としては、TiO2(屈折率2.7)、ZnO(屈折率2.0)、Sb2O3(屈折率1.9)、SnO2(屈折率2.1)、ZrO2(屈折率2.4)、Nb2O5(屈折率2.3)、CeO2(屈折率2.2)、Ta2O5(屈折率2.1)、Y2O3(屈折率1.8)、La2O3(屈折率1.9)、In2O3(屈折率2.0)、Cr2O3(屈折率2.5)等、及びこれらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。本発明の塗布層には、これらの金属酸化物を少なくとも1種または2種以上を含有する。金属酸化物粒子の屈折率が1.7以上であれば、塗布層の屈折率を前記範囲で調整する点で好ましい。また、金属酸化物粒子の屈折率が3.0以下であればフィルムの透明性を維持する点で好ましい。
【0044】
金属酸化物粒子の塗布層中の含有量としては、用いる金属酸化物粒子の屈折率と適用するハードコート層の屈折率との関係で制御することが好ましく、具体的には全固形成分中、2質量%以上より好ましくは5質量%以上70質量%以下が好ましい。金属酸化物粒子の含有量の下限としては、7質量%以上がより好ましく、8質量%以上がさらに好ましい。また、金属酸化物粒子の含有量の上限としては、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下がよりさらに好ましく、15質量%以下が特に好ましい。ハードコート層の屈折率によって、前記範囲内で金属酸化物粒子を添加し、塗布層の屈折率を、1.5~1.7の範囲、好ましくは1.6~1.7の範囲で調整する。金属酸化物粒子の含有量が2質量%未満、あるいは5質量%未満であれば塗布層の屈折率を上記範囲に調整することが困難になる場合がある。また、金属酸化物粒子の含有量が70質量%を越えると塗布層の密着性が低下する場合があるので好ましくない。金属酸化物粒子の平均粒子径は特に限定されないが、フィルムの透明性を維持する点から1~100nmであれば好ましい。
【0045】
本発明において、塗布層中に平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)を含有させる必要がある。粒子Bは(1)シリカ、カオリナイト、タルク、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、二酸化チタン、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、等の無機粒子、(2)アクリルあるいはメタアクリル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ナイロン、スチレン/アクリル系、スチレン/ブタジエン系、ポリスチレン/アクリル系、ポリスチレン/イソプレン系、ポリスチレン/イソプレン系、メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレート系、メラミン系、ポリカーボネート系、尿素系、エポキシ系、ウレタン系、フェノール系、ジアリルフタレート系、ポリエステル系等の有機粒子が挙げられる。
【0046】
前記粒子(粒子B)は、平均粒径が200~700nmのものが好適である。粒径が小さい場合は塗布層とハードコート層の界面の凹凸形成が小さく、散乱効果が減少し、蛍光灯下での虹彩状色彩の抑制効果が不十分となりやすくなる。大きい場合は、塗布層の透明性が悪くなる場合がある。
・・・(省略)・・・
【0052】
本発明において、ポリエステルフィルム上に塗布層を設ける方法としては、溶媒、粒子、樹脂を含有する塗布液をポリエステルフィルムに塗布、乾燥する方法が挙げられる。溶媒として、トルエン等の有機溶剤、水、あるいは水と水溶性の有機溶剤の混合系が挙げられるが、好ましくは、環境問題の点から水単独あるいは水に水溶性の有機溶剤を混合したものが好ましい。」
(ウ)「【実施例】
【0069】
次に、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は当然以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた評価方法は以下の通りである。
・・・(省略)・・・
【0073】
(4)干渉斑改善性(虹彩状色彩)
光学用積層ポリエステルフィルムを10cm(フィルム幅方向)×15cm(フィルム長手方向)の面積に切り出し、試料フィルムを作成した。得られた試料フィルムのハードコート層とは反対面に、黒色光沢テープ(日東電工製、ビニルテープNo21;黒)を張り合わせた。この試料フィルムのハードコート面を上面にして3波長形昼白色(ナショナル パルック、F.L 15EX-N 15W)を光源として斜め上から目視でもっとも反射が強く見える位置関係(光源からの距離40~60cm、フィルム面の垂線に対して15~45°の角度)で観察した。
【0074】
目視で観察した結果を、下記の基準でランク分けをする。なお、観察は該評価に精通した5名で行ない、最も多いランクを評価ランクとする。仮に、2つのランクで同数となった場合には、3つに分かれたランクの中心を採用した。例えば、◎と○が各2名で△が1名の場合は○を、◎が1名で○と△が各2名の場合には○を、◎と△が各2名で○が1名の場合には○を、それぞれ採用する。
◎:あらゆる角度からの観察でも虹彩状色彩が見られない
○:ある角度によっては僅かに虹彩状色彩が見られる
△:僅かに虹彩状色彩が観察される
×:はっきりとした虹彩状色彩が観察される
【0075】
(5)接着性
光学用積層ポリエステルフィルムに、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、ハードコート層を貫通して基材フィルムに達する100個のマス目状の切り傷をハードコート層面につける。次たで、セロハン粘着テープ(ニチバン社製、405番;24mm幅)をマス目状の切り傷面に貼り付け、消しゴムでこすって完全に密着させた。その後、垂直にセロハン粘着テープを光学用積層ポリエステルフィルムのハードコート層面から引き剥がして、光学用積層ポリエステルフィルムのハードコート層面から剥がれたマス目の数を目視で数え、下記の式からハードコート層と基材フィルムとの密着性を求めた。なお、マス目の中で部分的に剥離しているものも剥がれたマス目として数え、下記の基準でランク分けをした。
密着性(%)=(1-剥がれたマス目の数/100)×100
◎:100%
○:99~90%
△:90~70%
×:69~0%
【0076】
(6)耐湿熱性
光学用積層ポリエステルフィルムを、高温高湿槽中で60℃、95RH%の環境下500時間放置し、次いで、光学用積層ポリエステルフィルムを取りだし、室温常湿で12時間放置した。その後、前記(5)と同様の方法でハードコート層と基材フィルムの接密着性を求め、下記の基準でランク分けをした。
◎:100%
○:99~90%
△:90~70%
×:69~0%
【0077】
(7)塗布層の耐削れ性
摩擦堅牢度試験機(大栄科学精器製作所製、RT-200)に光学用易接着性ポリエステルフィルムを3cm(フィルム幅方向)×20cm(フィルム長手方向)を取り付け、おもり(300g)を付けた荷重ヘッド部(2cmx2cm、200g)と試料フィルムの接触部にアルミ箔(厚さ80μm、算術的平均表面粗さ0.03μm)を用い、10cmの距離を1往復20秒の速度で10往復させた。黒台紙の上に得られた試料フィルムをのせ、粉落ちしているか目視で確認した。
◎:黒台紙上で粉落ちが確認できない。
○:黒台紙上で場所によってわずかな粉落ちが確認できる。
△:黒台紙上で全体的にわずかな粉落ちが確認できる。
×:黒台紙上で粉落ちがはっきりと確認できる。
・・・(省略)・・・
【0080】
(ポリエステル樹脂の重合)
攪拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備するステンレススチール製オートクレーブに、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル302.9質量部、ジメチルー5-ナトリウムスルホイソフタレート47.4質量部、エチレングリコール198.6質量部、1,6-ヘキサンジオール118.2質量部、およびテトラーnーブチルチタネート0.4質量部を仕込み、160℃から220℃まで4時間かけてエステル交換反応を行なった。さらに、セバシン酸121.4重量部を加え、エステル化反応を行なった.次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、30Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂(A-1)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂は、淡黄色透明であった。
【0081】
同様の方法で、別の組成の共重合ポリエステル樹脂(A-2)~(A-11)を得た。これらの共重合ポリエステル樹脂に対し、1H-NMRで測定した組成及び重量平均分子量の結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
・・・(省略)・・・
【0087】
実施例1
(1)塗布液の調整
下記の塗剤を混合し、塗布液を作成した。粒子Aは屈折率2.1のSnO2、粒子Bは平均1次粒径 約500nmのシリカ粒子である。
水 40.16質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散液(B-1) 18.19質量%
ブロックポリイソシアネート水分散液(C) 2.08質量%
粒子A 9.37質量%
(多木化学製セラメースS-8、固形分濃度8質量%)
粒子B 0.17質量%
(日本触媒製シーホスターKEW50、固形分濃度15質量%)
シリコン系界面活性剤 0.03質量%
(固形分濃度100%)
【0088】
(2)光学用易接着性ポリエステルフィルムの製造
フィルム原料ポリマーとして、固有粘度が0.62dl/gで、かつ粒子を実質上含有していないPET樹脂ペレットを、133Paの減圧下、135℃で6時間乾燥した。その後、押し出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出しして、表面温度20℃に保った回転冷却金属ロール上で静電印加法により急冷密着固化させ、未延伸PETシートを得た。
【0089】
この未延伸PETシートを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して、一軸延伸PETフィルムを得た。
【0090】
次いで、前記塗布液をロールコート法でPETフィルムの片面に塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。なお、最終(二軸延伸後)の乾燥後の塗布量が0.15g/m2になるように調整した。引続いてテンターで、120℃で幅方向に4.0倍に延伸し、フィルムの幅方向の長さを固定した状態で、230℃で0.5秒間加熱し、さらに230℃で10秒間3%の幅方向の弛緩処理を行ない、厚さ100μmの光学用易接着性ポリエステルフィルムを得た。電顕で観察したところ、塗布層の厚みは120nmであった。評価結果を表2に示す。
【0091】
(3)光学用積層ポリエステルフィルムの製造
前記の光学用易接着性ポリエステルフィルムの塗布層面に、下記組成のハードコート層形成用塗布液(C-1)を#10ワイヤーバーを用いて塗布し、70℃で1分間乾燥し、溶剤を除去した。次いで、ハードコート層を塗布したフィルムに高圧水銀灯を用いて300mJ/cm2の紫外線を照射し、厚み5μmのハードコート層を有する光学用積層ポリエステルフィルムを得た。ハードコート層の屈折率は1.55であった。
ハードコート層形成用塗布液(C-1)
イソプロパノール 48.47質量%
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 21.25質量%
(新中村化学製A-DPH)
ポリエチレンジアクリレート 5.67質量%
(新中村化学製A-400)
ZrO2ゾル 23.61質量%
(日産化学工業製OZ-30M、固形分濃度30質量%)
光重合開始剤 1.00質量%
(チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュア184)
・・・(省略)・・・
【0140】
【表2】
」
オ 引用文献8及び9の記載事項の小括
前記ウ及びエによれば、引用文献8及び9には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
(ア) 「表示画面の前面に装着」する「光学用易接着性ポリエステルフィルム」において(引用文献8の段落【0001】等、引用文献9の段落【0001】等参照。)、
(イ) ポリエステルフィルム上にハードコート層を設けた際の「干渉斑を抑制」するとともに、ポリエステルフィルムとハードコート層との「密着性」を向上させるために(引用文献8の段落【0002】、【0005】、【0009】等、引用文献9の段落【0002】、【0005】~【0006】、【0012】等)、
(ウ) ポリエステルフィルムとハードコート層との間に、「酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂」及び「屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)と、平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)」を含有する「塗布層」(引用文献8の段落【0019】等、引用文献9の段落【0023】等)を設けること。
(エ) 上記「光学用易接着ポリエステルフィルム」は、該フィルムの易接着層にハードコート層を積層した際に、干渉斑抑制に優れ、かつハードコート層との密着性及び高温高湿下での密着性(耐湿熱性)に優れ(引用文献8の段落【0012】、引用文献9の段落【0015】)、「塗布層の削れ性を顕著に抑制しうる」(引用文献9の段落【0015】)ものであるから、「ハードコート層を積層した光学積層ポリエステルフィルムのベースフィルムとして好適である」(引用文献9の段落【0015】)こと。
カ 引用文献Aの記載事項
本件優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開昭59-77401号公報(昭和59年5月2日公開。以下「引用文献A」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「本発明は偏光板、詳しく言えば、反射光または透過光により着色干渉縞を発生しない透明保護層で保護された偏光板に関する。」(第1頁左下欄第18~20行)
(イ)「本発明の目的は、PETその他のポリエステル系フィルムの上記のような欠点を排除し、色むらの生じないポリエステルフィルムで保護された偏光板を提供することにある。」(第2頁左上欄第4~7行)
(ウ)「第1図に示すように、互いに光軸が直交するよう配置された2個の偏光子P1,P2から成る直交ニコル光学系の、両偏光子P1,P2の間に複屈折性を有するサンプルをおく・・・(以下省略)」(第2頁左上欄第15~18行)
(エ)「第4図は、本実施例の断面図、第5図は本実施例の部分切欠斜視図である。両図において、偏光フィルム2は、沃素を吸着させたポリビニルアルコール系フィルムを約4倍の長さに伸延することによって沃素分子に配向を与えて偏光性を持たせた偏光フィルムで、両面にポリイソシアネート化合物による表面処理が施されている。保護膜1および3は、厚さ100μm,表面に平行な面内での主屈折率の差が0.14,厚さ方向の主屈折津が1.51となるよう伸延加工されたポリエチレンテレフタレートのフィルムで、伸延方向を偏光フィルムの偏光軸と直交するようポリエステル系の接着剤を用いて偏光フィルム2の両面にそれぞれ接着されている。図には接着剤の層は示されていない。図において実線の矢印は偏光フィルム2の偏光軸の方向を、点線の矢印は保護膜1および3の伸延の方向を示す。
・・・(省略)・・・
以上に示した両実施例とも、理論的考察から期待される通り、これら偏光板を白色光の照射のもとに如何なる方向から観察しても着色干渉縞は観測されず、また、液晶表示器に用いる場合のように、これら両実施例による偏光板を互いに平行、かつ、各々の偏光軸が互いに直交するように保持して観察を行っても、着色干渉縞は全く観測されなかった。」(第4頁左上欄第14行~同頁左下欄第8行)
(オ)「
・・・(省略)・・・
」
キ 引用文献Bの記載事項
本件優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開昭60-26304号公報(昭和60年2月9日公開。以下「引用文献B」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「本発明は偏光板、詳しく言えばどの視野角度からの反射光または透過光でも着色干渉縞を発生しない透明保護層で保護された偏光板に関する。」(第1頁右下欄第7~9行)
(イ)「本発明の目的は、PETその他のポリエステル系フィルムの上記のような欠点を排除し、色むらの生じないポリエステルフィルムで保護された偏光板を提供することにある。」(第2頁左上欄第13~16行)
(ウ)「第1図に示すように、互いに光軸が直交するよう配置された2個の偏光子P1,P2から成る直交ニコル光学系の、両偏光子P1,P2の間に複屈折性を有するサンプルをおく・・・(以下省略)」(第2頁右上欄第9~12行)
(エ)「第5図は、本実施例の断面図、第6図は本実施例の部分切欠斜視図である。両図において、偏光フィルム2は、沃素を吸着させたポリビニルアルコール系フィルムを約4倍の長さに伸延することによって沃素分子に配向を与えて偏光性を持たせた偏光フィルムで、両面にポリイソシアネート化合物による表面処理が施されている。保護膜1および3は、厚さ100μm、表面に平行な面内での主屈折率の差が0.14,厚さ方向の主屈折率が1.51となるよう伸延加工されたポリエチレンテレフタレートのフィルムで、伸延方向を偏光フィルムの偏光軸と直交するようポリエステル系の接着剤を用いて偏光フィルム2の両面にそれぞれ接着されている。図には接着剤の層は示されていない。図において実線の矢印は偏光フィルム2の偏光軸の方向を、点線の矢印は保護膜1および3の伸延の方向を示す。
・・・(省略)・・・
以上に示した両実施例とも、理論的考察から期待される通り、これら偏光板を白色光の照射のもとに如何なる方向から観察しても着色干渉縞は観測されず、また、液晶表示器に用いる場合のように、これら両実施例による偏光板を互いに平行、かつ、各々の偏光軸が互いに直交するように保持して観察を行っても、着色干渉縞は全く観測されなかった。」(第4頁左下欄第14行~第5頁左上欄第8行)
(オ)「
・・・(省略)・・・
」
ク 引用文献Cの記載事項
本件優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2007-248795号公報(平成19年9月27日公開。以下「引用文献C」という。)には、以下の記載がある。
「【0121】
(光学補償機能付偏光板の作製)
実施例9
(観察者側偏光板の作製)
偏光子Pの両面にポリビニルアルコール系接着剤を塗布し、偏光子Pの一面に、セル側保護膜1の一面をセル側保護膜1の遅相軸と偏光子の吸収軸が垂直になるように貼り合わせ、偏光子Pのもう一方の面に保護フィルム1Aの反射防止層が形成されていない面を向けて重ね、ロールトゥロール法により貼り合わせ観察者側偏光板FP1を得た。
【0122】
(バックライト側偏光板の作製)
偏光子Pの両面にポリビニルアルコール系接着剤を塗布し、偏光子Pの一面に、セル側保護膜1の一面をセル側保護膜1の遅相軸と偏光子の吸収軸が垂直になるように貼り合わせ、偏光子Pのもう一方の面に保護フィルム1の一面を向けて重ね、ロールトゥロール法により貼り合わせバックライト側偏光板BP1を得た。
【0123】
(液晶表示装置の作製)
厚さ2.74μm、誘電異方性が正、波長550nmの複屈折率Δn=0.09884、プレチルト角90°のバーチカルアラインメントモードの液晶セルの一面に観察者側偏光板FP1を、セル側保護膜1が液晶パネル側になるように貼り合わせ、もう一方の面にはバックライト側偏光板BP1を、セル側保護膜1が液晶パネル側になるように貼り合わせ液晶表示装置1を得た。」
ケ 引用文献Dの記載事項
本件優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2009-237534号公報(平成21年10月15日公開。以下「引用文献D」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【0024】
固有複屈折が正の樹脂
本発明において、固有複屈折が正の樹脂としては、・・・(省略)・・・ポリエチレンテレフタレート樹脂、・・・(省略)・・・が挙げられる。」
(イ)「【0133】
[樹脂の固有複屈折]
樹脂を熱プレスによりフィルム状成形品とし、このフィルムを切って短冊状の試験片とした。この短冊状試験片をインストロン社製の加熱オーブン付き引張試験機にて、Tg+10℃の温度、200%/分の速度にて延伸し、フィルムを急冷した。この延伸試験片を自動複屈折計(王子計測機器(株)製、KOBRA-21ADH)を用いて面内遅相軸の方向および位相差を測定した。延伸方向と面内遅相軸の方向が一致するものを固有複屈折が正の樹脂、延伸方向と面内遅相軸が直交するものを固有複屈折が負の樹脂と判定した。」
コ 引用文献Eの記載事項
本件優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2011-215646号公報(平成23年10月27日公開。以下「引用文献E」という。)には、以下の記載がある。
「【0017】
本発明では、液晶表示装置(LCD)のバックライト光源として白色発光ダイオード(白色LED)を用いることが必要である。白色LEDとは、蛍光体方式、すなわち化合物半導体を使用した青色光、もしくは紫外光を発する発光ダイオードと蛍光体を組み合わせることにより白色を発する素子のことである。その中でも特に、化合物半導体を使用した青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた発光素子からなる白色発光ダイオードは、連続的で幅広い発光スペクトルを有しているとともに発光効率にも優れるため、本発明のバックライト光源として好適である。また、本発明の方法により消費電力の小さい白色LEDを広汎に利用可能になるので、省エネルギー化の効果も奏することが可能となる。
・・・(省略)・・・
【0020】
本発明では、前記偏光板の視認側に特定範囲のリタデーションを有する高分子フィルムを配することを特徴とする。本発明者は複屈折体を透過した透過光による干渉色スペクトルの包絡線形状に着目し、本発明の着想を得たものである。すなわち、光源の発光スペクトルと複屈折体を透過した透過光による干渉色スペクトルの包絡線形状とが相似形となることで視認性が顕著に改善することを見出し、本発明に至ったものである。具体的に、本発明の構成により視認性が改善するという効果は以下の技術思想による。
【0021】
直交する2つの偏光板の間に複屈折性を有する高分子フィルムを配した場合、偏光板から出射した直線偏光が高分子フィルムを通過する際に乱れが生じ、光が透過する。透過した光は高分子フィルムの複屈折と厚さの積であるリタデーションに特有の干渉色を示す。本発明では、連続的な発光スペクトルを有する白色LEDを光源とする。このため、高分子フィルムによっても達成可能な特定のリタデーション範囲に制御することにより、干渉色を示す透過光のスペクトルの包絡線形状が光源の発光スペクトルに近似させることが可能となる。本発明はこれにより視認性の向上を図るに至ったものである。(図3参照)
・・・(省略)・・・
【0025】
本発明は幅広い発光スペクトルを有する白色LEDを光源に用いるため、高分子フィルムのリタデーションを上記範囲に設定することで、比較的簡便な構成のみで透過光のスペクトルの包絡線形状を光源の発光スペクトルに近似させることが可能となる。すなわち、従来技術では不連続な発光スペクトルを有する光源を用いるがために、極めて高いリタデーション(100000nm超)を有する複屈折体を用いなければ、視認性の改善ができなかったところ、連続的な発光スペクトルを有するという白色LED光源の性質を利用して上記のように比較的簡便な構成で視認性を向上させるという特異な効果を奏する。」
(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明との対比
(ア) 射出光側用偏光板
引用発明の「偏光板」は、「液晶表示装置において、光出射側(視認側)に配置される」ものである。そして、「光出射側(視認側)」とは、その文言どおり、「射出光側」である。
そうしてみると、引用発明の「光出射側(視認側)に配置される偏光板」は、本件補正発明の「液晶表示装置の射出光側に配置される射出光側用偏光板」に相当する。
(イ) ポリエステルフィルム
引用発明の「偏光板」は、「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」を有する。そして、本願明細書【0025】の記載からみて、引用発明の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、本件補正発明でいう「ポリエステルフィルム」に相当する。
また、引用発明の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、「面内位相差値R0が3360nm」または「3950nm」である。そして、本願明細書の段落【0097】の記載からみて、引用発明の「面内位相差値R0」は、本件補正発明でいう「リタデーション」に相当する。
そうしてみると、引用発明の「延伸ポリエチレンテレフタレート」は、本件補正発明でいう「リタデーションが3000~30000であり」という要件を満たす。
(ウ) ポリエステルフィルムが易接着層を有すること
引用発明の「易接着層」は、「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の「片面または両面に積層」される「機能層」である。
そして、引用発明の「易接着層」は、「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」と「偏光フィルム」を「積層」させるための「機能層」と解することができるから、引用発明の「易接着層」は、「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の「偏光フィルムが積層されている面」に設けられるものと認められる。
加えて、引用発明の「易接着層」は、「構成する成分は、ポリエステル系樹脂」であるから、本件補正発明でいう「ポリエステルを主成分とする」という要件を満たす。
そして、本願明細書の記載からみて、本件補正発明でいう「他方の面」とは、ポリエステルフィルムにおいて「偏光子」が設けられる側の面である。
そうしてみると、引用発明の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、本件補正発明でいう「前記ポリエステルフィルムは他方の面にポリエステル樹脂を主成分とする易接着層を有し」という要件を満たす。
(エ) 易接着層上に接着剤を介して偏光子が積層されること
引用発明の「易接着層」は、「機能層」である。そして、引用発明の「機能層」は、「塗工など・・・(省略)・・・の方法で直接延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上に設け」られるものであるから、引用発明の「易接着層」は、「直接延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上に設け」られるものである。
引用発明の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、「偏光フィルムと接着剤層を介して積層されることから易接着層が積層され」るものであることからみて、引用発明の「偏光板」は、「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上」に直接設けられた「易接着層」上に、「偏光フィルム」を「接着剤層を介して積層」して形成されるものと認められる。
また、引用発明の「第一の接着剤層」は、「活性エネルギー線硬化性組成物」から構成される。そして、技術常識からみて、「活性エネルギー線硬化性組成物」は、紫外線硬化型の組成物あるいは電子線硬化型の組成物を意味することは明らかである。
加えて、引用発明の「偏光フィルム」は、その名のとおり、「偏光子」である。
そうしてみると、引用発明の「偏光フィルム」は、本件補正発明でいう「前記易接着層上に紫外線硬化型、電子線硬化型、及び/又は熱硬化型の接着剤を介して偏光子が積層されており」という要件を満たす。
イ 一致点
以上のことから、本件補正発明と引用発明は、以下の構成において一致する。
「 リタデーションが3000~30000nmであるポリエステルフィルムを有し、
前記ポリエステルフィルムは他方の面にポリエステル樹脂を主成分とする易接着層を有し、
前記易接着層上に紫外線硬化型、電子線硬化型、及び/又は熱硬化型の接着剤を介して偏光子が積層されており、
液晶表示装置の射出光側に配置される射出光側用偏光板。」
ウ 相違点
本件補正発明と引用発明は、以下の点で相違、又は一応相違する。
(ア) 相違点1
「ポリエステルフィルムのリタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)」が、本件補正発明は、「0.2以上」であるのに対して、引用発明は、これが、一応、明らかではない点。
(イ) 相違点2
「射出光側用偏光板」が、本件補正発明は、「酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂及び粒子を含有する塗布層を有し、該粒子は、屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物である粒子A及び平均粒径が200~700nmである粒子Bを含」むのに対して、引用発明は、これを有していない点。
(ウ) 相違点3
「ポリエステルフィルムの配向主軸」が、本件補正発明は、「偏光子の吸収軸に対して垂直」であるのに対して、引用発明は、これが特定されていない点。
(エ) 相違点4
「射出光側用偏光板」が、本件補正発明は、「連続的な発光スペクトルを有する白色光源をバックライト光源とする液晶表示装置の射出光側に配置される」のに対して、引用発明は、これが特定されていない点。
(オ) 相違点5
「射出光側用偏光板」に関し、本件補正発明では、「但し、前記塗布層又は易接着層にオキサゾリン基及びポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂を含む偏光板を除く」と特定されているのに対し、引用発明では、この条件を満たすかが明らかでない点。
(4)判断
ア 相違点1
本願明細書の段落【0097】~【0098】に記載された「リタデーション(Re)」及び「厚さ方向リタデーション(Rth)」の定義、引用文献10の段落【0011】及び段落【0073】に記載された「Nz係数」及び「面内位相差値R0」の定義に基づいて計算すると、Re/Rth=2/(2Nz-1)なる関係が成立する。
(合議体注:ポリエステルフィルムの面内遅相軸方向の屈折率をnx、遅相軸と直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnz、ポリエステルフィルムの厚みをdとすると、
Nz=(nx-nz)/(nx-ny)
Re=R0=(nx-ny)×d
Rth={(nx+ny)/2-nz}×d
と定義されるから、
Rth/Re={(nx+ny)/2-nz}/(nx-ny)
={(nx-nz)+(ny-nz)}/2(nx-ny)
=Nz/2+(ny-nz)/2(nx-ny)
=Nz/2+{(nx-nz)-(nx-ny)}/2(nx-ny)
=Nz/2+Nz/2-1/2
=Nz-1/2
となる。
したがって、Re/Rthの値は、その逆数である2/(2Nz-1)となる。)
したがって、引用発明の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、Nzが1.4又は1.8であるから、Re/Rthの値は、それぞれ、1.1又は0.77となる。そうしてみると、引用発明の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、本願発明の「リタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)が0.2以上」という要件を満たす。
以上より、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。
イ 相違点2
引用文献10の段落【0081】には、引用発明の「偏光板」において、「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の「偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面」に、「機能層」として「ハードコート層」を設けることが示唆されている(前記(2)ア(エ)を参照。)。
また、引用文献8又は9には、「表示画面の前面に装着」する「光学用易接着性ポリエステルフィルム」において、ポリエステルフィルム上にハードコート層を設けた際の「干渉斑を抑制」するとともに、ポリエステルフィルムとハードコート層との「密着性」を向上させるために、ポリエステルフィルムとハードコート層との間に、「酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂」及び「屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)と、平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)」を含有する「塗布層」を設けることが記載されている。
引用発明の「偏光板」は、引用文献8又は9に記載の「光学用易接着性ポリエステルフィルム」と同様に、ポリエステルフィルム上にハードコート層を具備する構成を有するものである。そして、ポリエステルフィルム上に直接ハードコート層を設けた際の「干渉斑を抑制」するとともに、ポリエステルフィルムとハードコート層との「密着性」を向上させることは、引用発明の「偏光板」が視認側で使用される以上、引用発明の「偏光板」に当然求められる課題である。
そうしてみると、引用発明の「偏光板」において、上記課題を認識した、本件補正発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が、引用文献8及び9に記載された課題解決手段(前記「オ 引用文献8及び9の記載事項の小括」の(ウ))を参照して、ポリエステルフィルム上に「酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂」及び「屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物である粒子A及び平均粒径が200~700nmである粒子B」を含有する「塗布層」、及び当該「塗布層」上にハードコート層を具備する構成とし、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、通常の創意工夫の範囲内の事項である。
ウ 相違点3
引用文献Aには、「ポリエチレンテレフタレートのフィルムで、伸延方向を偏光フィルムの偏光軸と直交するようポリエステル系の接着剤を用いて偏光フィルム2の両面にそれぞれ接着」して得られた「偏光板」を、「液晶表示器に用いる場合のように」、「互いに平行、かつ、各々の偏光軸が互いに直交するように保持して観察を行っても、着色干渉縞は全く観測されなかった」ことが記載されている。(前記(2)カを参照。)
引用文献Bにも、引用文献Aと同様のことが記載されている。(前記(2)キを参照。)
引用文献Cには、「偏光子Pの一面に、セル側保護膜1の一面をセル側保護膜1の遅相軸と偏光子の吸収軸が垂直になるように貼り合わせ」て得られる「観察者側偏光板」が記載されている。(前記(2)クを参照。)
引用文献Dには、「ポリエチレンテレフタレート樹脂」の「固有複屈折が正」であること、「固有複屈折が正の樹脂」は、「延伸方向と面内遅相軸の方向が一致する」ことが記載されている。(前記(2)ケを参照。)
引用文献10の段落【0069】には、「配向主軸とは、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上の任意の点における分子配向方向をいい、ここでは遅相軸のことを指す。」と記載されている。また、引用文献10の段落【0074】には、「偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸の軸ズレ角度は目的や生産上の制約等に応じて任意に選択することができる。本発明の偏光板を、偏光性の強いバックライト光源を備える液晶表示装置のバックライト光源側(入射側)偏光板として適用する場合、・・・(省略)・・・偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度は、0度以上15度以下の範囲とすることが好ましい。」と記載され、段落【0076】には、「上記以外の場合には、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度が大きいものも好ましく用いることができる。中でも、20度以上50度以下のズレ角度であるものがより好ましい。」と記載されている。
引用文献A又はBに記載の「伸延」は、「延伸」と同じ意味であることは明らかである。そして、引用文献A又はBに記載の「ポリエチレンテレフタレートのフィルム」で、「伸延方向」が「偏光フィルムの偏光軸と直交する」ものであるから、引用文献Dの記載からみて、引用文献A又はBの「ポリエチレンテレフタレートのフィルム」の配向主軸が、偏光フィルムの吸収軸に対して垂直であることは明らかである。
また、引用文献10の段落【0069】の記載からみて、引用文献Cの「セル側保護膜1」の配向主軸が、「偏光子の吸収軸」に対して垂直であることも明らかである。加えて、技術常識からみて、引用文献10の「偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度」が「0度」となるとき、「偏光フィルムの吸収軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの配向主軸」が垂直となるのは、明らかである。
引用文献A~Dに記載のとおり、視認者側に配置される液晶表示装置の偏光板において、保護膜の配向主軸と偏光子の吸収軸を垂直にすることは、当該技術分野において周知の技術事項にすぎない。
そして、引用文献10には、「偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸の軸ズレ角度」について、「偏光性の強いバックライト光源を備える液晶表示装置のバックライト光源側(入射側)偏光板として適用する場合」において、「0度以上15度以下の範囲とすること」が記載されるのみであり、偏光板を射出光側に配置した場合における「偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸の軸ズレ角度」について、上記相違点3に係る構成を採用することを阻害する記載はない。
したがって、引用発明の「偏光板」において、着色干渉縞の発生の抑制を勘案した当業者が、引用文献10及び引用文献A~Dの記載を参照して、延伸ポリエチレンテレフタレートの配向主軸が偏光フィルムの吸収軸と垂直になるようにすることは、通常の創意工夫の範囲内の事項である。
エ 相違点4
引用発明の「射出光側用偏光板」は、「偏光板」である以上、「連続的な発光スペクトルを有する白色光源をバックライト光源とする液晶表示装置の射出光側に配置」できることは明らかであって、本件補正発明の「連続的な発光スペクトルを有する白色光源をバックライト光源とする液晶表示装置の射出光側に配置される」なる記載は、「射出光側用偏光板」なる物の構成を特定するものとは解されない。
そうしてみると、上記相違点4は、実質的な相違点ではない。
上記記載を用途と解したとしても、引用文献Eに記載のとおり、液晶表示装置の視認性を向上させるために、「バックライト光源」として「連続的な発光スペクトルを有する白色光源」を使用することは、当該技術分野において、周知の技術事項である。そうしてみると、引用発明の「射出光側用偏光板」を、「連続的な発光スペクトルを有する白色光源をバックライト光源とする液晶表示装置の射出光側に配置される」ものとすることは、当業者の通常の創意工夫の範囲内のものにすぎない。
オ 相違点5
引用文献10には、機能層に「紫外線硬化型樹脂」を含有させること(段落【0083】を参照。)、易接着層に「ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、またはアクリル系樹脂」を含有させること(段落【0085】を参照)が記載されている。
そうしてみると、引用発明の「偏光板」において、「オキサゾリン基及びポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂」以外の樹脂を、易接着層に含有させることは、当業者の通常の創意工夫の範囲内のものにすぎない。
カ 本願補正発明の効果について
本願明細書の段落【0009】によると、本願補正発明の効果は、「本発明の液晶表示装置、偏光板および偏光子保護フィルムは、いずれの観察角度においても、顕著な虹状の色斑が見られない良好な視認性を有する。また、本発明の偏光子保護フィルムは、その塗布層上にハードコート層を積層した際の干渉斑抑制に優れ、かつハードコート層との密着性及び高温高湿下での密着性(耐湿熱性)に優れる。そのため、ハードコート層を積層した偏光子保護フィルムとして好適である。好適な一実施形態において、本発明の偏光子保護フィルムは、薄膜化に適した機械的強度を備えている。別の好適な実施形態において、本発明の偏光子保護フィルムは、耐削れ性に優れる」ものであることと認める。
しかしながら、引用文献10の段落【0008】には、「色ムラ」は「干渉ムラ、虹ムラとも言う」ことが記載されており、段落【0010】には、引用発明の「偏光板」は、「液晶表示装置に搭載した際の色ムラが少なく視認性に優れ」ることが記載されている。
また、引用文献8及び9には、「光学用易接着ポリエステルフィルム」は、該フィルムの易接着層にハードコート層を積層した際に、干渉斑抑制に優れ、かつハードコート層との密着性及び高温高湿下での密着性(耐湿熱性)に優れ、「塗布層の削れ性を顕著に抑制しうる」ものであるから、「ハードコート層を積層した光学積層ポリエステルフィルムのベースフィルムとして好適である」ことが記載されている(前記「オ 引用文献8及び9の記載事項の小括」の(エ)を参照。)。
そうしてみると、上記相違点を総合的に勘案しても、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献8及び9に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年9月21日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年6月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(2)に記載されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~6に係る発明は、本件優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1~10に記載された事項に基づいて、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
1.特開2011-8169号公報
2.国際公開第2011/114884号
3.特開2011-181875号公報
4.特開2008-208223号公報
5.特開2008-266392号公報
6.特開2008-132768号公報
7.特開2011-107198号公報
8.特開2009-143226号公報
9.特開2011-5854号公報
10.特開2011-59488号公報
3 引用文献の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献10、8及び9の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比及び判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、ポリエステルフィルムの「リタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)」を「0.2以上」とする限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明、引用文献8及び9に記載された技術、及び引用文献A~Dに記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献8及び9に記載された技術、及び引用文献A~Dに記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 上申書について
1 出願人は平成31年1月8日提出の上申書において、以下のとおり主張する。
「引用文献10には、光出射側偏光板については、偏光子の透過軸に対するポリエステルフィルムの遅相軸(配向主軸)の角度が、20度以上50度以下であることが好ましいと記載されており(段落0076)、偏光子の吸収軸をポリエステルフィルムの配向主軸と垂直にすることについて記載も示唆もされていません。よって、補正後の請求項1~5に係る発明は、引用文献10、2~9、11及び12に対して進歩性を有します。」
しかしながら、前記第2の2(4)ウで述べたとおり、保護膜の配向主軸と偏光子の吸収軸を垂直にすることは、当該技術分野において周知の技術事項である。そして、引用文献10の記載を総合的に勘案しても、引用発明の「偏光板」において、「ポリエチレンテレフタレートフィルムの配向主軸」を、「偏光フィルムの吸収軸に対して垂直」とすることについて、格別の困難があったと認める特段の事情もない。
2 また、出願人は、上申書において以下のとおり主張する。
「これに対し、「射出光側用偏光板」の「射出光側用」は用途として考慮されるべきであると思料いたしますが、用途として考慮されないのであれば、明細書の段落0067に基づいて、請求項1において「塗布層上に、ハードコート層、防眩層、反射防止層、低反射層、低反射防眩層、反射防止防眩層、及び帯電防止層から選択される少なくとも一種が設けられている」ことを特定する用意があります。これらの層は液晶表示装置の表面に配置される層であり、これらの層が設けられた偏光板は、射出光側用偏光板であることがより明確になると思料いたします。このような補正が必要と判断された場合、補正の機会を与えてくださいますようお願い申し上げます。」
しかしながら、「塗布層上に、ハードコート層、防眩層、反射防止層、低反射層、低反射防眩層、反射防止防眩層、及び帯電防止層から選択される少なくとも一種が設けられている」ことは、引用発明の「偏光板」が具備する構成であるから、上記主張は採用しない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2018-012616