特許拒絶査定不服審判
2018-011384
空調設備
- 審判番号
- 2018-011384
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-219667外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年08月22日
- 審決日
- 2019年07月08日
- 公報発行日
- 2019年08月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】エア・ウォーター防災株式会社
- 【請求人代理人】西教 圭一郎
- 分類
- P18 .121-WY (A61G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-219667号「空調設備」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月27日出願公開、特開2015- 80590号、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年10月22日に出願されたものであって、平成29年10月23日付けで拒絶理由が通知され、同年12月13日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年5月11日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年8月22日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成30年5月11日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
・請求項1、2
・引用文献1、2
・請求項3、4
・引用文献1~3
・請求項5
・引用文献1、2、4
<引用文献等一覧>
1.特開2013-148241号公報
2.特開2000-104968号公報
3.特開2013-76493号公報
4.特開2005-47331号公報
第3 審判請求時の補正
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
請求項1、2に対し、「境界部」が「天井の各辺と壁」(下線は補正箇所。以下同様。)におけるものであること、「フィルタユニット」が「天井の中央」に設置されること、「空調ユニット」が「手術室の壁の各入隅部」に設置されることを追加する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、それら補正に係る事項は、願書に最初に添付された明細書の段落【0051】及び同図面の【図2】に記載されているから、当該補正は新規事項を追加するものではない。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1~5に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願の請求項1~5に係る発明(以下「本願発明1」~「本願発明5」という。また、まとめて「本願発明」ということもある。)は、平成30年8月22日付けの手続補正により補正された請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
壁と天井と床とによって規定され、天井の各辺と壁との境界部に沿って天井における壁の近傍に貫通孔が設けられ、床に手術台が設置される手術室の空調設備であって、
天井の中央に設置されるフィルタユニットであって、
第1吸込口と、手術台に臨んで配設される第1吹出口とを有する、天井に取り付けられる第1筐体と、
第1筐体内に設けられ、第1吸込口から空気を吸引し、かつ吸引した空気を第1吹出口へ排出する第1送風機と、
第1吹出口を覆うフィルタとを備えるフィルタユニットと、
手術室の壁の各入隅部に設置される空調ユニットであって、
手術台に臨んで配設される第2吸込口と、第2吹出口とを有する、床上に設置される第2筐体と、
第2筐体内に設けられ、第2吸込口から空気を吸引し、かつ吸引した空気を第2吹出口へ排出する第2送風機と、
第2筐体内に設けられ、第2吸込口から第2吹出口へ流れる空気を昇温または冷却して、該空気の温度を予め定める温度に調節する温度調節手段とを備える空調ユニットと、
一端部が前記空調ユニットの第2吹出口に接続され、他端部が前記フィルタユニットの第1吸込口に接続される第1ダクトと、
手術室の室外に配置される中空の吸気部材であって、前記貫通孔に臨んで配設され、前記境界部に沿って延びる吸気口と、該吸気口から吸引した空気を排出するための排気口とを有する吸気部材と、
一端部が吸気部材の排気口に接続され、他端部が第1筐体に接続され、該他端部に、第1筐体内の空気の流れによって、前記空気の流れの方向に内部の空気を引き出す吸引力が生じる第2ダクトとを含むことを特徴とする空調設備。
【請求項2】
壁と天井と床とによって規定され、天井の各辺と壁との境界部に沿って壁における天井の近傍に貫通孔が設けられ、床に手術台が設置される手術室の空調設備であって、
天井の中央に設置されるフィルタユニットであって、
第1吸込口と、手術台に臨んで配設される第1吹出口とを有する、天井に取り付けられる第1筐体と、
第1筐体内に設けられ、第1吸込口から空気を吸引し、かつ吸引した空気を第1吹出口へ排出する第1送風機と、
第1吹出口を覆うフィルタとを備えるフィルタユニットと、
手術室の壁の各入隅部に設置される空調ユニットであって、
手術台に臨んで配設される第2吸込口と、第2吹出口とを有する、床上に設置される第2筐体と、
第2筐体内に設けられ、第2吸込口から空気を吸引し、かつ吸引した空気を第2吹出口へ排出する第2送風機と、
第2筐体内に設けられ、第2吸込口から第2吹出口へ流れる空気を昇温または冷却して、該空気の温度を予め定める温度に調節する温度調節手段とを備える空調ユニットと、
一端部が前記空調ユニットの第2吹出口に接続され、他端部が前記フィルタユニットの第1吸込口に接続される第1ダクトと、
手術室の室外に配置される中空の吸気部材であって、前記貫通孔に臨んで配設され、前記境界部に沿って延びる吸気口と、該吸気口から吸引した空気を排出するための排気口とを有する吸気部材と、
一端部が吸気部材の排気口に接続され、他端部が第1筐体に接続され、該他端部に、第1筐体内の空気の流れによって、前記空気の流れの方向に内部の空気を引き出す吸引力が生じる第2ダクトとを含むことを特徴とする空調設備。
【請求項3】
前記フィルタユニットおよび前記空調ユニットの少なくとも起動および停止を含む予め定める動作を制御する制御手段をさらに含み、
前記制御手段は、接触によって前記予め定める動作に対する指令を入力するためのタッチパネル入力部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の空調設備。
【請求項4】
前記フィルタユニットおよび前記空調ユニットの予め定める動作を制御する制御手段をさらに備え、
前記制御手段は、音声によって前記予め定める動作に対する指令を入力するための音声認識入力部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の空調設備。
【請求項5】
前記フィルタユニットおよび前記空調ユニットの少なくとも起動および停止を含む予め定める動作を制御する制御手段と、前記手術室内を撮像する撮像手段とをさらに含み、
前記制御手段は、前記撮像手段によって撮像された画像に基づいて、前記予め定める動作に対する指令を入力するための画像認識入力部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の空調設備。」
第5 引用文献の記載事項等
1 引用文献1について
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付加した。以下同様。)。
(1a)「【請求項1】
手術室を空調する手術室空調システムであって、
手術台の直上に設けられた第1吹出口と、
当該第1吹出口の周囲に設けられた第2吹出口と、を備え、
前記第1吹出口は、室温よりも高温の空気を、前記手術台に向かって吹き出し、
前記第2吹出口は、室温よりも低温の空気を、前記手術台の周囲に向かって吹き出すことを特徴とする手術室空調システム。」
(1b)「【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る手術室空調システム10が適用された手術室1の断面図である。
【0025】
手術室空調システム10は、手術室1を空調して、この手術室1を周囲の空間に対して陽圧に保つものである。手術室1は、床面2、天井面3、壁面4で囲まれた空間であり、床面2の略中央には、手術台5が設けられている。
手術台5上には、患者Aが仰向けに配置されており、手術台5の周囲には、術者B~Dが配置されている。この手術台5では、術者B~Dにより、腹腔鏡を用いて患者Aの腹腔内で手術が行われている。
【0026】
手術室空調システム10は、天井面3から手術台5に向かって空気を吹き出す第1空調系統20と、天井面3から手術台5の周囲に向かって空気を吹き出す2つの第2空調系統30と、を備える。
【0027】
第1空調系統20は、天井面3の略中央に設けられて第1吹出口21を有する第1フィルタボックス22と、天井面3の第1吹出口21から離れた位置に設けられた第1吸込口23と、この第1吸込口23から第1フィルタボックス22に至るダクト24と、このダクト24の途中に設けられた循環ファン25、電熱ヒータ(あるいは温水コイル)26、可変定風量装置27と、を備える。
【0028】
第1フィルタボックス22の第1吹出口21側には、空気浄化フィルタ221が設けられている。また、第1吹出口21は、例えばパンチングメタルで構成されている。
【0029】
この第1空調系統20では、循環ファン25を駆動して、第1吸込口23から空気を吸い込み、この吸い込んだ空気の温度を電熱ヒータ26で上昇させて、第1吹出口21から吹き出す。
このとき、可変定風量装置27内のダンパを制御することにより、第1吹出口21からの吹出し空気の風量を調整する。なお、これに限らず、循環ファン25をインバータ制御やサイリスタ制御することにより、第1吹出口21からの吹出し空気の風量を調整してもよい。
【0030】
第2空調系統30は、天井面3の第1吹出口21の周囲に設けられて第2吹出口31を有する第2フィルタボックス32と、壁面4の下部に設けられて第2吸込口33を有する空調機34と、この空調機34から第2フィルタボックス32に至るダクト35と、を備える。
【0031】
ここで、第2吹出口31を、第1吹出口21の全周に亘って囲むように配置してもよい。つまり、第2吹出口31で囲まれた中心に第1吹出口21を配置してもよい。
あるいは、第2吹出口31を一対とし、この一対の第2吹出口31を、第1吹出口21を挟んで配置してもよい。
【0032】
第2フィルタボックス32の第2吹出口31側には、空気浄化フィルタ321が設けられている。また、第2吹出口31は、例えばパンチングメタルで構成されている。
2つの空調機34のうち、図1中左側に位置する空調機34は、送風機341、冷却コイル342、および加熱コイル343を備えている。一方、図1中右側の空調機34は、送風機341および冷却コイル342を備えているが、加熱コイルを備えていない。
【0033】
なお、これに限らず、図1中右側の空調機34にも加熱コイルを設けて、図1中左右両方の空調機に加熱コイルを設けてもよい。また、図1中左側の空調機34から加熱コイルを除いて、図1中左右両方の空調機に加熱コイルを設けなくてもよい。
【0034】
この第2空調系統30では、空調機34の送風機341を駆動して第2吸込口33から
空気を吸い込み、この吸い込んだ空気を冷却コイル342で冷却し、冷却後に加熱コイル343で加熱(再熱)して、第2吹出口31から吹き出す。」
(1c)「【0051】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
なお、上述の各実施形態では、天井面3に第1吸込口23を設けたが、これに限らず、壁面4の下部に設けてもよい。」
(1d)「【0052】
また、上述の各実施形態では、可変定風量装置27を設けたが、この可変定風量装置27を設けなくてもよい。
また、上述の各実施形態では、第1吸込口23側から、循環ファン25、電熱ヒータ26の順に設けたが、これに限らず、第1吸込口23側から、電熱ヒータ26、循環ファン25の順に設けてもよいし、循環ファン25と電熱ヒータ26とを一体化して空調機としたり、第1フィルタボックス22に循環ファン25および電熱ヒータ26の機能を組み込んだりしてもよい。」
(1e)【図1】は次のとおりである。
(2)引用発明
上記(1)の各記載事項からみて、引用文献1には次の発明(【図1】に係る第1実施形態に対し、記載事項(1b)の段落【0033】の下線部の変形及び記載事項(1d)の下線部の変形を加えたものに対応。以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「床面2、天井面3、壁面4で囲まれた空間であり、床面2の略中央には、手術台5が設けられている手術室1を空調する手術室空調システム10であって、
手術室空調システム10は、天井面3から手術台5に向かって空気を吹き出す第1空調系統20と、天井面3から手術台5の周囲に向かって空気を吹き出す2つの第2空調系統30と、を備え、
第1空調系統20は、天井面3の略中央に設けられて、手術台5の直上に設けられた第1吹出口21を有する第1フィルタボックス22と、天井面3の第1吹出口21から離れた位置に設けられた第1吸込口23と、この第1吸込口23から第1フィルタボックス22に至るダクト24と、を備え、
第1フィルタボックス22に循環ファン25および電熱ヒータ26の機能を組み込み、
第1フィルタボックス22の第1吹出口21側には、空気浄化フィルタ221が設けられ、
第2空調系統30は、天井面3の第1吹出口21の周囲に設けられて第2吹出口31を有する第2フィルタボックス32と、壁面4の下部に設けられて第2吸込口33を有する空調機34と、この空調機34から第2フィルタボックス32に至るダクト35と、を備え、
空調機34は、送風機341、冷却コイル342、および加熱コイル343を備え、
第2フィルタボックス32の第2吹出口31側には、空気浄化フィルタ321が設けられており、
前記第1吹出口21は、室温よりも高温の空気を、前記手術台5に向かって吹き出し、
前記第2吹出口31は、室温よりも低温の空気を、前記手術台5の周囲に向かって吹き出す手術室空調システム10。」
2 引用文献2について
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、以下の事項が記載されている。
(2a)「【請求項1】 クリーンルーム内に設置される空気調和機と、
前記クリーンルーム内に設けられると共に、前記空気調和機の吹出口に連通するダクト室と、
前記クリーンルーム天井部に設けられてクリーンルーム内に清浄化された空気を供給する給気用ファンフィルタユニットと、
前記ダクト室と前記給気用ファンフィルタユニットの吸込口間を連結するダクトとを備えたことを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項2】 前記ダクト室は、クリーンルームに開口する吸込口を備えたことを特徴とする請求項1記載のクリーンルームシステム。」
(2b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、薬品調剤や食品製造等に用いられるクリーンルームシステムに係わり、特に既存の建物の内部に、必要とする空気清浄度及び適切な室温を有しなければならないクリーンルームを短期間に且つ簡単な施工によって作り出せるようにしたクリーンルームシステムに関するものである。」
(2c)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来のこの種のクリーンルームシステムは上記のように構成されており、クリーンルーム1の外に床置型エアコン3が設置されているために、クリーンルーム1の下部に還気口を形成してエアコン3の吸込口との間を還気ダクト7で連結しなければならず、これに関する材料費、施設工事費が高価になり、工期も長くなるという不都合があり、経済的ではない。
【0007】そこで、本願発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、床置型エアコン等の空気調和機をクリーンルーム内に設置するという発想の転換により、材料費や施設工事費の低減、工期の短縮を図ることができる経済的なクリーンルームシステムを提供することを目的とするものである。」
(2d)「【0012】本実施形態においても、既存の建物の内部にプレハブ等によりクリーンルーム1を形成し、このクリーンルーム1の天井面に高性能エアフィルタ(HEPAフィルタ)2a及びファン2bを内蔵した給気用ファンフィルタユニット2が設置される。
【0013】本実施形態で最も特徴的な点は、従来の慣行には捕らわれずに、クリーンルーム1内側壁に、ファン30aや冷暖房用の熱交換器等(図示せず)を内蔵した空気調和機として、例えば床置型エアコン30が設置されている点である。このエアコン30は下部側に吸込口30bを有し上部側に吹出口30cを有する一般的なものであり、吸込口30b及び吹出口30cはルーバーが形成された状態のままで使用される。なお、本実施形態で用いられるエアコン30のファン30aは吸込口30bが形成された下部側に配置されている。
【0014】また、エアコン30の上面とクリーンルーム1の天井間にはダクト室40が形成され、エアコン30の上面に開口30dが形成されて、エアコン30の吹出口30c等と連通するように構成されている。さらに、このダクト室40には、クリーンルーム1内に面して開口する吸込口40aが形成されている。
【0015】このようにエアコン30をクリーンルーム1内に設置して、エアコン30上面とクリーンルーム1天井面との間にダクト室40を形成する構成とすることにより、還流ダクトをクリーンルーム1の天井高さに応じてエアコン30の上部に簡単に設置できるので、工期の短縮、工事費の低減が実現でき、システムの低コスト化を図ることができる。
【0016】また、上記ダクト室40が形成された天井面には開口40bが形成され、クリーンルーム1天井裏には、上記ダクト室40と前記給気用ファンフィルタユニット2の吸込口とを連結するダクト41が敷設される。
【0017】上記ダクト室40とファンフィルタユニット2を連結するダクト41には、従来と同様に、通常のフィルタ5a及びファン5bを内蔵して外気を取り入れる外気処理ユニット5が接続され、クリーンルーム1の上部壁には陽圧ダンパー6が設けられており、クリーンルーム1内を若干陽圧に保って汚れた外気の侵入を防ぐように構成されている。」
(2e)【図1】は次のとおりである。
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 後者の「壁面4」は前者の「壁」に相当し、以下同様に、「天井面3」は「天井」に、「床面2」は「床」に、「手術台5」は「手術台」に、「手術室1」は「手術室」に、「手術室空調システム10」は「空調設備」にそれぞれ相当する。
また、後者の「第1吸込口23」は「天井面3」を貫通することは明らかであるから(記載事項(1e)参照。)、前者の「貫通孔」に相当する。
イ 後者の「第1吹出口21」及び「第2吹出口31」は前者の「第1吹出口」に相当し、以下同様に、「第1フィルタボックス22」及び「第2フィルタボックス32」は「第1筐体」に、「循環ファン25」は「第1送風機」に、「空気浄化フィルタ221」及び「空気浄化フィルタ321」は「フィルタ」に、「ダクト24」は「第2ダクト」にそれぞれ相当する。
ウ 上記イを踏まえると、後者の「第1吹出口21」、「第2吹出口31」、「第1フィルタボックス22」、「第2フィルタボックス32」、「循環ファン25」、「電熱ヒータ26」、「空気浄化フィルタ221」及び「空気浄化フィルタ321」からなるものは、前者の「フィルタユニット」に相当するといえる。
また、後者の「第2フィルタボックス32」は、「空調機34から第2フィルタボックス32に至るダクト35」を備えるという事項及び記載事項(1e)からみて、「吸込口」といえるものを有することは明らかであり、それは前者の「第1吸込口」に相当するといえる。
エ 後者の「空調機34」は前者の「空調ユニット」に相当し、以下同様に、「第2吸込口33」は「第2吸込口」に、「送風機341」は「第2送風機」に、「冷却コイル342、および加熱コイル343」は「温度調節手段」に、「ダクト35」は「第1ダクト」にそれぞれ相当する。
オ 後者の「空調機34」は、記載事項(1e)からみて、「筐体」といえるものを有することは明らかであり、それは前者の「第2筐体」に相当するといえる。
また、後者の「空調機34」は、「空調機34から第2フィルタボックス32に至るダクト35」を備えるという事項及び記載事項(1e)からみて、「吹出口」といえるものを有することは明らかであり、それは前者の「第2吹出口」に相当するといえる。
カ 「空調機34から第2フィルタボックス32に至るダクト35」を備えるという事項及び記載事項(1e)からみて、後者の「ダクト35」は、その一端部が上記オの「吹出口」といえるものに接続され、他端部が上記ウの「吸込口」といえるものに接続されることも明らかである。
また、「第1吸込口23から第1フィルタボックス22に至るダクト24」を備えるという事項及び記載事項(1e)からみて、後者の「ダクト24」は、その他端部が「第1フィルタボックス22」に接続されることは明らかであり、当該他端部は、「第1フィルタボックス22」内の空気の流れによって、空気の流れの方向に内部の空気を引き出す吸引力が生じることも明らかである。
キ 上記ア~カを踏まえると、後者の
「床面2、天井面3、壁面4で囲まれた空間であり、床面2の略中央には、手術台5が設けられている手術室1を空調する手術室空調システム10であって、
手術室空調システム10は、天井面3から手術台5に向かって空気を吹き出す第1空調系統20と、天井面3から手術台5の周囲に向かって空気を吹き出す2つの第2空調系統30と、を備え、
第1空調系統20は、天井面3の略中央に設けられて、手術台5の直上に設けられた第1吹出口21を有する第1フィルタボックス22と、天井面3の第1吹出口21から離れた位置に設けられた第1吸込口23と、この第1吸込口23から第1フィルタボックス22に至るダクト24と、を備え、
第1フィルタボックス22に循環ファン25および電熱ヒータ26の機能を組み込み、
第1フィルタボックス22の第1吹出口21側には、空気浄化フィルタ221が設けられ、
第2空調系統30は、天井面3の第1吹出口21の周囲に設けられて第2吹出口31を有する第2フィルタボックス32と、壁面4の下部に設けられて第2吸込口33を有する空調機34と、この空調機34から第2フィルタボックス32に至るダクト35と、を備え、
空調機34は、送風機341、冷却コイル342、および加熱コイル343を備え、
第2フィルタボックス32の第2吹出口31側には、空気浄化フィルタ321が設けられて」いることと、前者の
「壁と天井と床とによって規定され、天井の各辺と壁との境界部に沿って天井における壁の近傍に貫通孔が設けられ、床に手術台が設置される手術室の空調設備であって、
天井の中央に設置されるフィルタユニットであって、
第1吸込口と、手術台に臨んで配設される第1吹出口とを有する、天井に取り付けられる第1筐体と、
第1筐体内に設けられ、第1吸込口から空気を吸引し、かつ吸引した空気を第1吹出口へ排出する第1送風機と、
第1吹出口を覆うフィルタとを備えるフィルタユニットと、
手術室の壁の各入隅部に設置される空調ユニットであって、
手術台に臨んで配設される第2吸込口と、第2吹出口とを有する、床上に設置される第2筐体と、
第2筐体内に設けられ、第2吸込口から空気を吸引し、かつ吸引した空気を第2吹出口へ排出する第2送風機と、
第2筐体内に設けられ、第2吸込口から第2吹出口へ流れる空気を昇温または冷却して、該空気の温度を予め定める温度に調節する温度調節手段とを備える空調ユニットと、
一端部が前記空調ユニットの第2吹出口に接続され、他端部が前記フィルタユニットの第1吸込口に接続される第1ダクトと、
手術室の室外に配置される中空の吸気部材であって、前記貫通孔に臨んで配設され、前記境界部に沿って延びる吸気口と、該吸気口から吸引した空気を排出するための排気口とを有する吸気部材と、
一端部が吸気部材の排気口に接続され、他端部が第1筐体に接続され、該他端部に、第1筐体内の空気の流れによって、前記空気の流れの方向に内部の空気を引き出す吸引力が生じる第2ダクトとを含む」こととは、
「壁と天井と床とによって規定され、天井に貫通孔が設けられ、床に手術台が設置される手術室の空調設備であって、
天井の中央に設置されるフィルタユニットであって、
第1吸込口と、手術台に臨んで配設される第1吹出口とを有する、天井に取り付けられる第1筐体と、
第1筐体内に設けられ、第1吸込口から空気を吸引し、かつ吸引した空気を第1吹出口へ排出する第1送風機と、
第1吹出口を覆うフィルタとを備えるフィルタユニットと、
手術室の壁に設置される空調ユニットであって、
手術台に臨んで配設される第2吸込口と、第2吹出口とを有する、第2筐体と、
第2筐体内に設けられ、第2吸込口から空気を吸引し、かつ吸引した空気を第2吹出口へ排出する第2送風機と、
第2筐体内に設けられ、第2吸込口から第2吹出口へ流れる空気を昇温または冷却して、該空気の温度を予め定める温度に調節する温度調節手段とを備える空調ユニットと、
一端部が前記空調ユニットの第2吹出口に接続され、他端部が前記フィルタユニットの第1吸込口に接続される第1ダクトと、」
「一端部が貫通孔側に接続され、他端部が第1筐体に接続され、該他端部に、第1筐体内の空気の流れによって、前記空気の流れの方向に内部の空気を引き出す吸引力が生じる第2ダクトとを含む」ことの限度で一致するといえる。
ク 以上のことより、本願発明1と引用発明の一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点1〕
「壁と天井と床とによって規定され、天井に貫通孔が設けられ、床に手術台が設置される手術室の空調設備であって、
天井の中央に設置されるフィルタユニットであって、
第1吸込口と、手術台に臨んで配設される第1吹出口とを有する、天井に取り付けられる第1筐体と、
第1筐体内に設けられ、第1吸込口から空気を吸引し、かつ吸引した空気を第1吹出口へ排出する第1送風機と、
第1吹出口を覆うフィルタとを備えるフィルタユニットと、
手術室の壁に設置される空調ユニットであって、
手術台に臨んで配設される第2吸込口と、第2吹出口とを有する、第2筐体と、
第2筐体内に設けられ、第2吸込口から空気を吸引し、かつ吸引した空気を第2吹出口へ排出する第2送風機と、
第2筐体内に設けられ、第2吸込口から第2吹出口へ流れる空気を昇温または冷却して、該空気の温度を予め定める温度に調節する温度調節手段とを備える空調ユニットと、
一端部が前記空調ユニットの第2吹出口に接続され、他端部が前記フィルタユニットの第1吸込口に接続される第1ダクトと、
一端部が貫通孔側に接続され、他端部が第1筐体に接続され、該他端部に、第1筐体内の空気の流れによって、前記空気の流れの方向に内部の空気を引き出す吸引力が生じる第2ダクトとを含む空調設備。」
〔相違点1〕
「貫通孔」に関し、本願発明1が、「天井の各辺と壁との境界部に沿って天井における壁の近傍」に設けられているのに対し、引用発明の「第1吸込口23」(「貫通孔」に相当。)は、「天井面3の第1吹出口21から離れた位置に設けられた」ものであり、天井面3の各辺と壁面4との境界部に沿って天井面3における壁面4の近傍に設けられたものではない点。
〔相違点2〕
「空調ユニット」に関し、本願発明1が、「壁の各入隅部」に設置されるのに対し、引用発明の「空調機34」(「空調ユニット」に相当。)は、そのような特定がない点。
〔相違点3〕
「第2筐体」に関し、本願発明1が「床上に設置される」のに対し、引用発明の「筐体」といえるもの(上記オ参照)は、そのような特定がない点。
〔相違点4〕
本願発明1が「手術室の室外に配置される中空の吸気部材であって、前記貫通孔に臨んで配設され、前記境界部に沿って延びる吸気口と、該吸気口から吸引した空気を排出するための排気口とを有する吸気部材」を有するものであり、「第2ダクト」の「一端部」が「吸気部材の排気口に接続され」るものであるのに対し、引用発明は、当該「吸気部材」に相当する事項を有していない点。
(2)判断
上記相違点1、4について検討する。
本願発明は「前記従来の空調設備110は、天井103に設置されたフィルタボックス132から空気を手術台105およびその周囲へ向かって吹き出し、空調機134が、壁104の下部に配設した吸込口133から空気を吸い込む構成であるから、手術室101における空気の主な流れは、天井103から、床102へ向かい、床102に沿って壁104に至るものである。このため、天井103と壁104との境界部140の近傍領域は、空気があまり流動しない停滞領域となる。停滞領域の空気中に含まれる塵埃や細菌などの微粒子は、除去されずに手術室101内に長期間留まる可能性がある。したがって、前記従来の空調設備110は、手術室101内に空気の停滞領域が存在するから、手術室1の清浄度を高めるのが難しいという問題がある。」(本願明細書の段落【0010】)という従来技術の問題点を解決することを課題として発明されたものと認める。
そして、当該課題を解決するため、上記相違点1、4に係る本願発明1の発明特定事項を備えることにより、「従来の空調設備では清浄化するのが困難であった手術室の天井と壁との境界部近傍の空気を、確実に清浄化することができるので、手術室の清浄度を高めることができる。」(同段落【0018】)、「天井3と壁4との境界部8近傍の空気を吸気部材41で吸引して、これをフィルタユニット20を通過させて清浄化するから、手術室1内に空気の停滞領域が形成されるのが解消されるので、手術室1の清浄度を高めることができる効果が発揮される。」(同段落【0050】)という作用効果を得ているものと認める。
しかしながら、引用発明の「第1吸込口23」の設置位置や、「第1吸込口23」の変形例を説明する「なお、上述の各実施形態では、天井面3に第1吸込口23を設けたが、これに限らず、壁面4の下部に設けてもよい。」(記載事項(1c))との記載からみて、引用発明は、天井面3の各辺と壁面4との境界部近傍の空気の流れを意識しているものとはいえないことから、引用文献1には、引用発明において、上記相違点1、4に係る本願発明1の発明特定事項を有するものとすることの示唆があるとはいえない。
また、引用文献2の記載事項(上記第5 2(1))を検討しても、上記相違点1、4に係る本願発明1の発明特定事項に関連するような技術的事項は開示されていない。
したがって、引用発明において、上記相違点1、4に係る本願発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たこととはいえない。
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
2 本願発明2について
(1)対比
上記1(1)を参酌すると、本願発明2と引用発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点2〕
「壁と天井と床とによって規定され、貫通孔が設けられ、床に手術台が設置される手術室の空調設備であって、
天井の中央に設置されるフィルタユニットであって、
第1吸込口と、手術台に臨んで配設される第1吹出口とを有する、天井に取り付けられる第1筐体と、
第1筐体内に設けられ、第1吸込口から空気を吸引し、かつ吸引した空気を第1吹出口へ排出する第1送風機と、
第1吹出口を覆うフィルタとを備えるフィルタユニットと、
手術室の壁に設置される空調ユニットであって、
手術台に臨んで配設される第2吸込口と、第2吹出口とを有する、第2筐体と、
第2筐体内に設けられ、第2吸込口から空気を吸引し、かつ吸引した空気を第2吹出口へ排出する第2送風機と、
第2筐体内に設けられ、第2吸込口から第2吹出口へ流れる空気を昇温または冷却して、該空気の温度を予め定める温度に調節する温度調節手段とを備える空調ユニットと、
一端部が前記空調ユニットの第2吹出口に接続され、他端部が前記フィルタユニットの第1吸込口に接続される第1ダクトと、
一端部が貫通孔側に接続され、他端部が第1筐体に接続され、該他端部に、第1筐体内の空気の流れによって、前記空気の流れの方向に内部の空気を引き出す吸引力が生じる第2ダクトとを含む空調設備。」
〔相違点5〕
「貫通孔」に関し、本願発明2が、「天井の各辺と壁との境界部に沿って壁における天井の近傍」に設けられているのに対し、引用発明の「第1吸込口23」(「貫通孔」に相当。)は、「天井面3の第1吹出口21から離れた位置に設けられた」ものであり、天井面3の各辺と壁面4との境界部に沿って壁面4における天井面3の近傍に設けられたものではない点。
〔相違点6〕
「空調ユニット」に関し、本願発明2が、「壁の各入隅部」に設置されるのに対し、引用発明の「空調機34」(「空調ユニット」に相当。)は、そのような特定がない点。
〔相違点7〕
「第2筐体」に関し、本願発明2が「床上に設置される」のに対し、引用発明の「筐体」といえるもの(上記1(1)オ参照)は、そのような特定がない点。
〔相違点8〕
本願発明2が「手術室の室外に配置される中空の吸気部材であって、前記貫通孔に臨んで配設され、前記境界部に沿って延びる吸気口と、該吸気口から吸引した空気を排出するための排気口とを有する吸気部材」を有するものであり、「第2ダクト」の「一端部」が「吸気部材の排気口に接続され」るものであるのに対し、引用発明は、当該「吸気部材」に相当する事項を有していない点。
(2)判断
上記相違点5、8について検討する。
上記1(2)の相違点1、4に対する検討と同様の理由により、引用発明において上記相違点5、8に係る本願発明2の発明特定事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明2は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
3 本願発明3~5について
本願発明3~5は、本願発明1または2の発明特定事項を全て含みさらに限定したものであるので、本願発明1または2と同様の理由により、当業者が引用発明及び引用文献2~4に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
第7 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1~5は「天井の各辺と壁との境界部に沿って天井における壁の近傍に貫通孔が設けられ」たという事項(請求項1)、または、「天井の各辺と壁との境界部に沿って壁における天井の近傍に貫通孔が設けられた」という事項(請求項2)、及び、「手術室の室外に配置される中空の吸気部材であって、前記貫通孔に臨んで配設され、前記境界部に沿って延びる吸気口と、該吸気口から吸引した空気を排出するための排気口とを有する吸気部材」(請求項1、2)という事項を少なくとも有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1に記載された発明及び引用文献2~4に記載された技術的事項に基いて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-011384