特許拒絶査定不服審判
2018-010193
消毒装置
- 審判番号
- 2018-010193
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-519407外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年07月26日
- 審決日
- 2019年07月17日
- 公報発行日
- 2020年01月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
- 【請求人代理人】笛田 秀仙
- 【請求人代理人】五十嵐 貴裕
- 【請求人代理人】矢ヶ部 喜行
- 分類
- P18 .121-Z (A61L) / P18 .575-Z (A61L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-519407「消毒装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月 3日国際公開、WO2014/001960、平成27年 8月 6日国内公表、特表2015-522338〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 主な手続の経緯
本願は、国際出願日である2013年6月18日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2012年6月27日 アメリカ合衆国(US))にされたとみなされる特許出願であって、平成29年7月19日付けで拒絶理由が通知され、同年12月26日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲が補正されたが、平成30年4月6日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年7月26日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲が補正されたものである。
第2 補正の却下の決定
[結論]
平成30年7月26日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 平成30年7月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の内容
本件補正は、特許請求の範囲についての補正であって、本件補正の前後における特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ以下のとおりである。
なお、下線については、補正された部分に当審において付与した。
・ 本件補正前
「 【請求項1】
皮膚領域の消毒のための装置であって、
消毒チャンバと、
前記消毒チャンバ内の皮膚領域を赤外光の少なくとも1つのパルスにさらすための赤外線源と
を有し、前記パルスは、5秒よりも短い継続時間を持ち、前記消毒チャンバは更に、物体の存在及び/又は所在を検出するためのセンサを有する装置。」
・ 本件補正後
「 【請求項1】
皮膚領域の消毒のための装置であって、
消毒チャンバと、
前記消毒チャンバ内の皮膚領域を赤外光の連続するパルスにさらすための赤外線源とを有し、前記パルスは、5秒よりも短い継続時間を持ち、前記消毒チャンバは更に、物体の存在及び/又は所在を検出するためのセンサを有し、前記赤外光の波長が、1.5μmより長く、且つ30μmより短く、前記赤外光の連続するパルス間の休止期間が、1ミリ秒より長く、且つ5秒より短く、前記装置は更に、
前記センサによる前記消毒チャンバにおける物体の存在及び/又は所在の検出に応じて前記赤外光の連続するパルスを生成するよう前記赤外線源を制御するよう構成された制御ユニットと、
を有する、装置。」
本件補正は、上記本件補正後の請求項1に係る補正(以後、当該請求項1に係る補正を、「補正事項ア」という。)を含むものである。
2 補正事項アの目的
補正事項アは、補正前の請求項1に記載された「赤外光の少なくとも1つのパルス」を、「赤外光の連続するパルス」とし、さらに、「赤外光のパルス」について、補正前の請求項1に記載された「パルスは、5秒よりも短い継続時間を持ち」との特定のみであったものを、より具体的に「前記赤外光の波長が、1.5μmより長く、且つ30μmより短く、前記赤外光の連続するパルス間の休止期間が、1ミリ秒より長く、且つ5秒より短く、」と波長及び休止期間をさらに特定し、加えて、「前記センサによる前記消毒チャンバにおける物体の存在及び/又は所在の検出に応じて前記赤外光の連続するパルスを生成するよう前記赤外線源を制御するよう構成された制御ユニット」を更に有する点を特定している。
これらの補正は、補正前の請求項1の「赤外線パルス」が「少なくとも1つ」であったものを「連続する」、すなわち2つ以上のものに限定するものであり、加えて、「赤外線源」及び「センサ」に関する具体的な装置構造を、さらに特定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野は同一であって、「ユーザーの皮膚領域、とりわけ、手の楽で効率的な消毒を可能とする」という解決しようとする課題も同一であるから、当該補正事項アは、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
3 独立特許要件違反の有無について
上記2のとおりであるから、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(補正事項アが、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するか。いわゆる独立特許要件違反の有無)について検討する。
当合議体は、本願補正発明は、下記引用文献1に記載された発明及び引用文献1に記載の技術事項並びに引用文献5及び6に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと判断する。
引用文献1: 特開平7-308369号公報(原査定の理由とされた拒絶理由通知書に記載の引用文献1)
引用文献5: 特開2002-177368号公報(原査定の理由とされた拒絶理由通知書に記載の引用文献5)
引用文献6: 特開2000-342662号公報(原査定の理由とされた拒絶理由通知書に記載の引用文献6)
以下、特許を受けることができない理由を、下記5において詳述する。
4 本願補正発明
本願補正発明は、平成30年7月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「皮膚領域の消毒のための装置であって、
消毒チャンバと、
前記消毒チャンバ内の皮膚領域を赤外光の連続するパルスにさらすための赤外線源とを有し、前記パルスは、5秒よりも短い継続時間を持ち、前記消毒チャンバは更に、物体の存在及び/又は所在を検出するためのセンサを有し、前記赤外光の波長が、1.5μmより長く、且つ30μmより短く、前記赤外光の連続するパルス間の休止期間が、1ミリ秒より長く、且つ5秒より短く、前記装置は更に、
前記センサによる前記消毒チャンバにおける物体の存在及び/又は所在の検出に応じて前記赤外光の連続するパルスを生成するよう前記赤外線源を制御するよう構成された制御ユニットと、
を有する、装置。」
5 本願補正発明が特許を受けることができない理由
(1) 引用文献の記載事項
<引用文献1>
本願の優先日前に頒布された刊行物であることが明らかな引用文献1には、以下の事項が記載されている。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 被殺菌物に遠赤外線吸収率の高い液体を塗布する液体塗布手段と、
前記液体塗布手段により前記液体を塗布後、被殺菌物に遠赤外線を照射する遠赤外線照射手段とを有することを特徴とする遠赤外線殺菌装置。」
イ 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、床表面や履き物の裏、手指、紙等を簡単に殺菌する殺菌装置に関する。 」
ウ 「【0012】本発明の目的は、消毒剤や紫外線を用いることなく、高温に加熱することができない対象物に対しても遠赤外線照射による殺菌を可能とすることにある。
【0013】また、食品工場などの施設や設備を殺菌するに当り、消毒剤を用いることなく、遠赤外線照射によって、金属を腐食させることなく、かつ効果的に殺菌することを可能とすることにある。また、食品自体の味を変えることなく効果的に殺菌することを可能とすることにある。
・・・
【0015】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の遠赤外線殺菌装置は、被殺菌物に、例えば水のような遠赤外線吸収率の高い液体を塗布する液体塗布手段と被殺菌物に遠赤外線を照射する遠赤外線照射手段とを有することを特徴とする。」
エ 「【0025】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。尚、各実施例において実施例相互で同一部分又は相当部分には同一の符号を付してある。
【0026】図1は本発明の第1実施例である手指殺菌装置の断面図である。1は手指殺菌装置本体で、以下説明する各部材はこの手指殺菌装置本体1に設けられている。
・・・
【0028】10は第1手指挿入室14内に手指が挿入されたことを検知するための光学センサーからなる第1手指検知部であり、11は第2手指挿入室15内に手指が挿入されたことを検知するための光学センサーからなる第2手指検知部である。
【0029】5は第2手指挿入室15内に挿入された手指に遠赤外線を照射するための遠赤外線ヒータ。8は遠赤外線照射量を遮蔽するためのシャッターであり、シャッター開閉駆動部9により開閉駆動される。遠赤外線ヒータ5、シャッター8、シャッター開閉駆動部9で遠赤外線照射手段を構成する。
・・・
【0033】手指が第2手指挿入室15に挿入されると第2手指検知部11がそれを検知し、出力をONにする。制御部6は第2手指検知部11の出力がOFFからONに変化すると、シャッター開閉駆動部9を制御してシャッター8を開き、手指への遠赤外線の照射を開始させ、所定時間後にシャッター8を閉じ、遠赤外線照射を遮断する。遠赤外線は前記液体を通して効率的に手指表面の細菌に吸収され、細菌を死滅させる。手指が第2手指挿入室15から出されると、第2手指検出部11の出力がOFFになり、初期状態に戻る。」
オ 「
」
<引用文献5>
本願の優先日前に頒布された刊行物であることが明らかな引用文献5には、以下の事項が記載されている。
カ 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 殺菌対象物に光パルスを照射することにより殺菌対象物の殺菌を行う光パルス殺菌方法において、
280nm以上の波長の紫外線および赤外線を少なくとも含む光パルスを用いることを特徴とする光パルス殺菌方法。
【請求項2】 請求項1に記載の光パルス殺菌方法において、
前記赤外線は、波長3μm以上の赤外線であることを特徴とする光パルス殺菌方法。
【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の光パルス殺菌方法において、
殺菌対象物と光パルス照射源との距離を20cmとし、前記光パルスの照射エネルギーを234.4J/回とするとき、
1回の照射時間を190μ秒とし、
照射間隔を1回/秒とし、
照射回数を5回とすることを特徴とする光パルス殺菌方法。
【請求項4】 請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の光パルス殺菌方法において、
前記光パルスは、キセノンランプから発生させたものであり、
放射ピーク波長が486nmであり、
含まれる波長の25%が波長200nm~400nmの範囲内の波長であることを特徴とする光パルス殺菌方法。」
キ 「【0007】また、光パルスに含まれる殺菌に有効な赤外線として、より好ましくは、波長3μm以上の中赤外線以上の赤外線とするのがよい。
【0008】また、このような波長帯の光を含む光パルスを用いた殺菌方法において、殺菌対象物と光パルス照射源との距離(照射距離とも称する。)を20cmとし、1回あたりの光パルスの照射エネルギーを234.4Jとする場合、好ましくは、1回の照射時間を190μ秒とし、照射間隔を1回/秒とし、照射回数を5回とするのがよい。
【0009】このように光パルスの照射条件を設定することによって、殺菌対象物に対して効率よくかつ充分に殺菌処理を行うことができる。
【0010】また、上記のような波長帯の光を含む光パルスは、キセノンランプから発生させることができ、その放射ピーク波長は486nmであり、含まれる波長の25%が波長200~400nmの範囲内の波長である。そして、この光パルス中の波長280nm以上の紫外線および/または赤外線に対する反射率の高い反射板を用いて、殺菌処理を行えば、従来よりも殺菌効果を向上させることができる。」
ク 「【0017】表1には、各フィルタにおける波長帯の透過および遮断特性が示されている。波長帯の区分は、紫外線を280~315nmの波長帯UV-Bおよび315~400nmの波長帯UV-Aの2種類とし、波長帯400~750nmの可視光線、波長帯0.75μm~2μmの近赤外線、波長帯2~4μmの中赤外線、波長帯4μm~1000μmの遠赤外線とする。また、ほとんど透過する場合を○で示し、波長帯のうち一部の波長を透過あるいは透過率が30~70%のものを△で示し、遮断あるいは透過率が30%未満のものを×で示す。」
<引用文献6>
本願の優先日前に頒布された刊行物であることが明らかな引用文献6には、以下の事項が記載されている。
ケ 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定空間内に赤外線を含むパルス状の光を照射して、前記所定空間内の殺菌対象物に混在する微生物や細菌等を急峻な温度上昇によって、殺菌することを特徴とする閃光照射による殺菌方法。
【請求項2】 前記殺菌対象物が空気等の気体または落下菌等が付着した菌付着物であることを特徴とする請求項1に記載の閃光照射による殺菌方法。
【請求項3】 前記赤外線を含むパルス状の光が放電管による閃光であることを特徴とする請求項1または2に記載の閃光照射による殺菌方法。
【請求項4】 赤外線を含むパルス状の光を閃光する発光手段と、
前記発光手段の閃光時間間隔を設定する制御手段と、
前記発光手段からのパルス状の光が前記制御手段で設定した閃光時間間隔で照射され、殺菌対象物に浮遊または付着する微生物や細菌を急峻に温度上昇させて殺菌するための所定空間と、
を有することを特徴とする閃光照射による殺菌装置。
【請求項5】 請求項4に記載の閃光殺菌装置において、その外周部から前記殺菌対象物を吸い込んで、前記殺菌対象物を前記発光手段である放電管からパルス状の光が照射される前記所定空間を通過させて、外周部に放出するための送風手段を備え、前記制御手段が、前記送風手段による殺菌対象物の流量調整に応じて、閃光時間間隔を設定する手段を備えることを特徴とする閃光照射による殺菌装置。」
コ 「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、紫外線殺菌灯による殺菌方法において、波長が253.7nmの紫外線では、生理作用が強いので、直接裸眼で見たりすると、急性結膜炎等、人体に悪影響を及ぼすおそれがあり、好ましいのもではない。
【0005】また、浮遊するゴミや塵等に細菌が包含されている場合には、強力な紫外線を照射しても死滅させることができない欠点がある。このような場合には、オゾンを組み合わせた殺菌装置が使用されているが、周知のように、オゾンは毒性が強く、オゾンを吸入すると呼吸器が冒されたり、微量でも長時間吸入すると中毒を起こすおそれがある。例えば1ppmであっても6時間吸引すると頭痛や気管支炎等を起こすことが知られている。
【0006】さらに、オゾンの発生装置は高価であるので、広く一般に使用することは困難であるとともに、作業場等のオゾンの廃ガスの処理を十分に行わねばならないために扱い難く、廃ガスの処理コストが高騰する等の問題がある。
【0007】また、紫外線殺菌では、紫外線照射によって、食品を照射して殺菌した場合には、タンパク質の変質による味覚の変化や油性物質にあっては酸化等が問題となり、さらには、食肉等の食品や調理器具等に付着する細菌等の遺伝子の変化が起こり得る可能性があり、全ての殺菌対象物に対して、紫外線照射装置を適応するのは、必ずしも好ましいものではない。
【0008】本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、閃光照射による熱線を利用した、取り扱いが容易な閃光照射による殺菌方法およびその装置を提供することを目的とするものである。」
サ 「【0013】上記請求項1,2,3または4の発明によれば、赤外線を含むパルス状の光(パルス光)を殺菌対象菌に照射されると、殺菌対象菌がパルス状の光を吸収して、温度が瞬時に上昇することによって、殺菌することができるようにしたものである。しかし、パルス光を利用した殺菌方法であるために、パルス光の照射回数は、電気的に制御し易いことから、殺菌対象物に対して熱線による影響を与えないか、悪影響の発生を最小限に止めるように制御することができる。すなわち、パルス光を殺菌対象物に照射したとしても、殺菌対象物の熱容量によって、殺菌対象物の温度上昇が抑制され、細菌のみを殺することができる。」
シ 「【0022】上記実施形態において、閃光殺菌装置1には、ブロードバンドのスペクトル分布を持つ放電管3として、キセノン放電管が用いられている。このキセノン放電管は、極めて立ち上がりの早い赤外線を含む光を放射し、このパルス状の光(閃光)Lを熱線として利用したものである。すなわち、所定空間内に赤外線を含むパルス状の光を照射して、所定空間内の殺菌対象物に混在する微生物や細菌等を急峻な温度上昇によって、殺菌する閃光照射による殺菌方法である。殊に、空気中に浮遊するか、または物に付着する枯草菌や薬剤耐性菌等に赤外線を含むパルス状の光を照射することによって、立ち上がりの急峻な熱線(パルス熱)で殺菌することができる閃光照射による殺菌装置である。このキセノン放電管である放電管3のスペクトル分布は、図3に図示され、赤外線、可視光領域の波長が示されている。また、このキセノン放電管の閃光波形は、図2に示されており、閃光時間を半値幅とすると、約2.3msecである。
【0023】上記実施形態では、キセノン放電管による放電管3が用いられ、出力は、例えば2400Wsのものが用いられている。閃光殺菌装置は、室内に設置され、送風機4を運転することによって、室内から空気が、F1,F2に示したように、空気取入口2aから遮光壁2cを越えて放電管3の上部を通って筐体内に流入する。放電管3は、例えば8秒間隔で閃光している。閃光が照射された空気は、F3で示したように、例えば空気排出口2bから1.7m3 /秒の流量で室内に放出される。閃光殺菌装置は、連続運転されることによって、室内の空気中に浮遊する細菌が徐々に死滅して、室内を殺菌することができる。制御装置5によって、空気排出口2bから放出される空気量を一定として、放電管3の閃光間隔を短くすることによって、殺菌効果は向上する。または、光照射装置2の空気排出口2bから放出される空気量を抑制して、放電管3の閃光回数を増大させることも効果的である。無論、放電管3の出力は、2400Wsに限定するものではなく、それ以下の出力であってもよく、また、閃光間隔は、8秒間隔に限定するものではなく、8秒間隔以下の時間間隔で閃光させてもよいことは明らかである。さらに、光照射装置2の設置台数を増加することによっても室内の殺菌効果が向上することは明らかである。なお、放電管3の一回の閃光照射で所定空間内の殺菌対象菌を殺菌できるように、放電管3の出力、閃光間隔、印加電圧等を設定するとよい。」
ス 「【0042】
【発明の効果】上述のように、本発明によれば、放電管からの閃光であるパルス状の光を殺菌対象菌が吸収して熱に変換されることによって、殺菌する方法であって、芽胞を形成して、熱・放射線・化学薬品に対して強い耐性を示す枯草菌を所定の条件で殺菌することができる優れたものである。
【0043】また、本発明によれば、熱線で殺菌する方法であるので、紫外線照射に見られる殺菌対象菌の遺伝子の変化を生じるおそれがないので、殺菌対象物を殺菌することが可能であり、薬剤耐性菌等を生成するおそれがない利点がある。
【0044】また、本発明によれば、殺菌対象物に加えられるらパルス状の光の照射回数を制御することによって、殺菌対象物に損傷を与えることなく、殺菌することができる利点があり、例えば、殺菌対象物が食品であれば、食品に変質を与えることなく、その表面を殺菌することが可能である。」
セ 「
」
(2)引用文献1に記載された発明と引用文献1に記載の技術事項
引用文献1には、産業上の利用分野として手指等の殺菌装置が挙げられた上で、特許請求の範囲の請求項1の殺菌装置の記載があるから、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「手指に遠赤外線吸収率の高い液体を塗布する液体塗布手段と、
前記液体塗布手段により前記液体を塗布後、被殺菌物に遠赤外線を照射する遠赤外線照射手段とを有する、手指を簡単に殺菌する遠赤外線殺菌装置。」
また、引用文献1には、上記(1)エ及びオの記載から、その第1実施例として、手指殺菌装置が記載されていて、当該手指殺菌装置には、手指が挿入される第2手指挿入室(本願発明の「消毒チャンバ」に相当)が設けられるとともに、当該第2手指挿入室(消毒チャンバ)には、手指が挿入されたことを検知する第2手指検知部11(本願発明の「物体の存在及び/又は所在を検出するためのセンサ」に相当)を有し、当該第2手指検知部11の出力に応じて遠赤外線の照射を開始させ、所定時間後に遠赤外線照射を遮断する装置が記載されているから、当業者は、当該手指殺菌装置において、第2手指検知部11に応じて赤外線源を制御するように構成された制御ユニットを有していると理解する。
そうすると、引用文献1の第1実施例には、以下の技術事項(以下、「引用文献1に記載の技術事項」という。)が記載されているといえる。
物体の存在及び/又は所在を検出するためのセンサを有する消毒チャンバを有し、前記センサによる前記消毒チャンバにおける物体の存在及び/又は所在の検出に応じて赤外光を生成するように遠赤外線源を制御するように構成された制御ユニットを有する遠赤外線殺菌装置。
(3)引用文献5に記載の技術事項
上記(1)カ~クの記載から、引用文献5には、下記の技術事項が記載されているといえる。
赤外線を含む光パルス殺菌方法の光パルス発生源としてのキセノンランプからの光には、中赤外線(波長帯2~4μm)及び遠赤外線(波長帯4~1000μm)が含まれていること。
(4)引用文献6に記載の技術事項
引用文献6には、紫外線による殺菌とオゾンによる殺菌の問題点を指摘しつつ、「閃光照射による熱線を利用した、取り扱いが容易な閃光照射による殺菌方法およびその装置を提供することを目的」(上記(1)コ)として、「所定空間内に赤外線を含むパルス状の光を照射して、前記所定空間内の殺菌対象物に混在する微生物や細菌等を急峻な温度上昇によって、殺菌することを特徴とする閃光照射による殺菌方法」(上記(1)ケ)が記載されていて、「パルス光を利用した殺菌方法であるために、パルス光の照射回数は、電気的に制御し易いことから、殺菌対象物に対して熱線による影響を与えないか、悪影響の発生を最小限に止めるように制御することができる」(上記(1)サ)こと、また、「熱・放射線・化学薬品に対して強い耐性を示す枯草菌を所定の条件で殺菌することができる優れたものであ」って、「殺菌対象物に加えられるらパルス状の光の照射回数を制御することによって、殺菌対象物に損傷を与えることなく、殺菌することができる利点があ」ることが記載されている。(上記(1)ス)
さらに、具体的な実施形態の記載において、キセノン放電管が用いられており、その閃光波形が図2に示されていて、閃光時間を半値幅とすると、約2.3msecとされ、8秒間隔で閃光されていて、閃光間隔は8秒間隔に限定するものでなく、8秒間隔以下の時間間隔で閃光させてもよいとされ、放電管の出力、閃光間隔、印加電圧等が調整可能である旨の記載がある。(上記(1)シ)
以上の記載からみて、引用文献6の赤外線の発生装置にはキセノン放電管が用いられており、キセノン放電管からの赤外線には、中赤外線や遠赤外線が含まれていることは技術常識(必要ならば、引用文献5を参照)であることから、引用文献6には、以下の技術事項が記載されているといえる。
熱・放射線・化学薬品に対して強い耐性を示す枯草菌を所定の条件で殺菌することができる優れた殺菌方法として、中赤外線(2~4μm)及び遠赤外線(4~1000μm)を含む連続するパルス状の光を照射する方法において、殺菌対象物に対して熱線による悪影響を最小限にするために、赤外線のパルスの出力、閃光間隔、印加電圧等を調整し、さらに、パルスの閃光時間は2.3msecであるものを利用すること。
(5)本願補正発明と引用発明との対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「手指」、「簡単に殺菌する遠赤外線殺菌装置」は、それぞれ、本願補正発明の「皮膚領域」、「消毒のための装置」に相当する。
引用発明の「遠赤外線」は、「2.5μm~25μmの波長範囲」(段落【0021】)であるから、本願補正発明の「1.5μmより長く、且つ30μmより短」い波長の「赤外光」に相当する。
引用発明の「被殺菌物に遠赤外線を照射する遠赤外線照射手段」には、遠赤外線の赤外線源を有しているのは自明である。
そうすると、両者は、
「皮膚領域の消毒のための装置であって、赤外光の波長が、1.5μmより長く、且つ30μmより短い赤外光の赤外線源を有する装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
・相違点1
本願補正発明の装置は、「物体の存在及び/又は所在を検出するためのセンサを有」する「消毒チャンバ」を有するとともに、「前記センサによる前記消毒チャンバにおける物体の存在及び/又は所在の検出に応じて前記赤外光を」「生成するように」「赤外線源を制御するように構成された制御ユニットを有する」と特定するのに対し、引用発明は、この点を特定しない点。
・相違点2
赤外光による消毒に関し、本願補正発明は、「連続するパルスに」よるものであって、「前記パルスは、5秒よりも短い継続時間を持ち、前記赤外光の連続するパルス間の休止期間が、1ミリ秒より長く、且つ5秒より短く」と特定するのに対し、引用発明は、遠赤外線を用いるものの、遠赤外線が連続するパルスであること、及びパルスの継続時間、休止時間が特定されていない点。
以下、相違点について検討する。
相違点1について
引用文献1の具体的な第1実施例には、上記(2)の技術事項、すなわち、「物体の存在及び/又は所在を検出するためのセンサを有する消毒チャンバを有し、前記センサによる前記消毒チャンバにおける物体の存在及び/又は所在の検出に応じて赤外光を生成するように赤外線源を制御するように構成された制御ユニットを有する遠赤外線殺菌装置。」が記載されているから、引用発明に、相違点1に係る発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことである。
相違点2について
引用発明と同様の紫外線を用いることなく赤外線照射による殺菌を行うことを課題とする引用文献6に記載の上記(4)の技術事項に接した当業者は、より優れた殺菌を行うべく、引用発明における赤外光の殺菌手段である、液体塗布手段と遠赤外線照射手段とからなる遠赤外線による殺菌手段に代えて、引用文献6に記載の「中赤外線(2~4μm)及び遠赤外線(4~1000μm)を含む連続するパルス状の光を照射する方法」を採用することは想到容易といえる。
ここで、引用文献6には、上記(4)のとおり、パルス光を利用することで殺菌対象物に対して熱線による影響を与えないか、悪影響を最小限に止めるように制御できることが記載されている。
そうすると、引用発明において、遠赤外線のパルス光を利用するにあたり、殺菌対象物に対しての熱線による影響を最小限に止めるよう、パルスの継続時間、停止時間を調整することは、当業者が引用文献6に記載の技術事項を適用するにあたり、適宜設定し得た設計的事項といえる。
具体的なパルス継続時間、停止時間を特定したことによる効果について検討する。
本願補正発明においては、これらの数値を特定することにより「より深い皮膚層の損傷及び傷みの知覚を防止する」(本願明細書の段落【0015】)ものといえるが、引用文献6においても、「殺菌対象物に対して熱線による影響を与えないか、悪影響を最小限に止める」ようにパルスについて制御するものであることから、その数値範囲の調整により得られる効果は同等であって、格別な効果とはいえない。
よって、相違点2に係る発明特定事項は、当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用文献1に記載の技術事項並びに引用文献5及び6に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6) 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「引用文献1乃至13にはいずれも、本願発明におけるように、「1.5μmより長く、且つ30μmより短い」波長の赤外光の連続パルスを、「1ミリ秒より長く、且つ5秒より短」いパルス間の休止時間をもって、照射する着想を何ら開示していない。」旨、及び「引用文献1・・には、課題の共通性、作用・機能の共通性、本願発明の技術的思想の開示がないので、本願発明の進歩性を否定する根拠となる動機づけとなり得るものが存在せず、従って本願発明はこれら引用文献から当業者が容易に想到し得るものではないと思料する。」旨主張する。
しかし、上記(4)のとおり、引用文献6には、赤外線(スペクトルが赤色の外側に現れる電磁波。波長は可視光線より長く、約800ナノメートル~1ミリメートルくらいまで。空気中の透過力が大きいので赤外線写真・赤外線通信などに用い、熱作用が大きいので熱線ともいう。IRと略記。[株式会社岩波書店 広辞苑第六版])を含む連続パルスの閃光間隔を任意に調整し照射することが記載されている。そして、赤外線を含むパルス状の光は、放電管による閃光であって、具体的にはキセノン放電管を利用したものであるが、引用文献5に記載の技術事項(上記(3))からみて、当該キセノン放電管からの赤外光には、波長2~4μmの中赤外線及び4~1000μmの遠赤外線の赤外線も含まれているといえる。してみれば、引用文献6には、1.5μmより長く、30μmよりも短い波長の赤外光の連続パルスを適宜の休止時間をもって、照射することが記載されているといえるから、請求人の前者の主張は失当であって採用できない。
また、上記(5)における相違点2での検討のとおり、引用発明(引用文献1に記載された発明)と引用文献6は、赤外線を利用した殺菌方法という同じ技術分野についてのものであって、紫外線を用いることなく殺菌するという共通の課題を有するものであって、より優れた殺菌処理を行うという動機が存在するから、請求人の後者の主張も失当であって、採用できない。
(7)まとめ
本願補正発明は、引用発明及び引用文献1に記載の技術事項並びに引用文献5及び6に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
6 補正の却下の決定のむすび
以上のとおりであるから、上記補正事項アを含む本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年7月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし12に係る発明は、平成29年12月26日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載されたとおりのものであって、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「皮膚領域の消毒のための装置であって、
消毒チャンバと、
前記消毒チャンバ内の皮膚領域を赤外光の少なくとも1つのパルスにさらすための赤外線源と
を有し、前記パルスは、5秒よりも短い継続時間を持ち、前記消毒チャンバは更に、物体の存在及び/又は所在を検出するためのセンサを有する装置。」
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1及び4ないし7に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
3 引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布されたことが明らかな引用文献1(特開平7-308369号公報)、引用文献5(特開2002-177368号公報)及び引用文献6(特開2000-342662号公報)の記載事項及び引用発明は、上記第2 5(1)ないし(4)に記載したとおりである。
4 対比・判断
上記第2 2で検討したように、本願補正発明は本願発明の発明特定事項に限定を加えたものである。そして、本願発明の発明特定事項に限定を加えた本願補正発明が上記第2 5のとおり、引用発明及び引用文献1に記載の技術事項並びに引用文献5及び6に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に引用発明及び引用文献1に記載の技術事項並びに引用文献5及び6に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明、すなわち請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-010193