特許拒絶査定不服審判
2018-010143
抗張力線材を用いた篩
- 審判番号
- 2018-010143
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-167606外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年07月24日
- 審決日
- 2019年02月25日
- 公報発行日
- 2019年04月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (B07B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2017-167606「抗張力線材を用いた篩」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月22日出願公開、特開2018-183765、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成29年 8月31日(優先権主張 平成29年 4月26日)を出願日とする出願であって、同年12月12日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年 2月28日(受付日)に意見書及び手続補正書が提出され、同年 4月 5日付けで拒絶査定(原査定)がされ、同年 7月24日(受付日)に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 原査定の理由の概要
引用文献1:実公昭40-3088号公報
引用文献2:実願昭60-93011号(実開昭62-1790号)のマイクロフィルム
引用文献3:特開平6-114336号公報
引用文献4:実願昭51-13377号(実開昭52-105167号)のマイクロフィルム
引用文献5:素木洋一,セラミック外論(13),窯協,1961年,第69巻第6号,p.57-65
引用文献6:Zhao Yaomin et al.,The development and application of the QGS2020 type piano-wire probability screen,Powder Technology,1998年,Vol.100,p.80
引用文献7:特開2002-192077号公報
引用文献8:実公昭35-3259号公報
引用文献9:実願平5-53436号(実開平7-17372号)のCD-ROM
引用文献10:米国特許出願公開第2017/0100747号明細書
引用文献11:実願昭50-58028号(実開昭51-137158号)のマイクロフィルム
原査定の理由の概要は、審判請求時の補正により補正される前の本願請求項1~6に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献9に記載される事項及び引用文献2~8、10に示された周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
なお、原査定においては、付記として、審判請求時の補正により補正される前の本願請求項7に係る発明は、引用文献1~11に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである、とされている。
第3 本願発明
本願請求項1~4に係る発明は、審判請求時に補正された本願特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認める(以下、「本願発明1」~「本願発明4」といい、まとめて「本願発明」という。)。
「【請求項1】
網(10)と、
枠体(20)と、
から構成される振動篩機に用いられる篩であって、
前記網(10)は抗張力線材(13)を織らずに接触状態で交差させて形成され、
前記抗張力線材(13)はJIS規格(JIS G3522)で定めるピアノ線(14)を素材とする下線材(11)と上線材(12)とによって構成され、
前記下線材(11)と前記上線材(12)はそれぞれ張力(C)を生じさせた状態で前記枠体(20)に取り付けられ、
前記網(10)と前記枠体(20)は前記振動篩機に傾斜(K)を有して備えられ、
篩として規格化されている目開きの許容寸法の範囲内で下線材(11)と上線材(12)とを微少に滑らせて意図的に撓み(T)を前記網(10)の面方向に発生させ、前記張力(C)を調整することで前記撓み(T)の量を規制するとともに、
前記撓み(T)と該撓み(T)からの復帰による微少な摺動動作によって分別目的物(B)の目詰まり防止と落下性の向上を可能としたことを特徴とする抗張力線材を用いた篩(1)。
【請求項2】
前記抗張力線材(13)毎に前記張力(C)を生じさせる個別張力調整機構(31)を設けていることを特徴とする請求項1に記載の抗張力線材を用いた篩(1)。
【請求項3】
前記下線材(11)又は前記上線材(12)毎に片側端部を集合して前記張力(C)を生じさせる集合張力調整機構(34)を設け、
該集合張力調整機構(34)を前記枠体(20)に対して移動、若しくは回転させることにより前記張力(C)を調整可能とすることを特徴とする請求項1に記載の抗張力線材を用いた篩(1)。
【請求項4】
前記上線材(12)前記分別目的物(B)の流れ方向(N)に対し垂直方向に配置し、前記分別目的物(B)と前記上線材(12)との衝撃を強めて目詰まり防止性と落下性を高めたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の抗張力線材を用いた篩(1)。」
第4 当審の判断
1 引用文献1の記載事項
原査定で引用される引用文献1には、以下の記載がある。
(1a)「次に本考案の実施例を図面について説明すると1は前部1’のみが下半部だけとなるように形成されている枠体、2は枠体1の内部に構成されている網状体で、枠体1の内部へ別々にかつ上下に重ねて張設せしめた多数の縦線aと横線bとからなり、上下面から見ると両線a,bがあたかも織成網のごとく交叉しているようにしてある。」(1頁左欄下から3行~右欄4行)
(1b)「しかるに本考案の選別網は枠体の内部に縦線と横線とを別々にかつ上下に重ねて張設することにより、織成によらない網状体を構成せしめたもので縦線と横線とが織成した場合のように互に干渉しないから、各糸が一時的に一方へ偏せられても直ぐに復元して、常に規則正しい網目を保ち、良好な選別を行うことができると共に、縦線と横線とが別々に張設されているから、各糸の間隙を適当に変えれば網目の大きさを容易に調整する事ができる等の効果がある。」(1頁右欄11行~20行)
(1c)「実用新案登録請求の範囲
枠体1の内部に多数の縦線aと横線bを別々にかつ互に交叉するごとく上下に重ねて接触させ、しかして端縁を枠体に止着張設せしめて成る籾摺機万石における選別網。」
(1d)「
」
(ア)前記(1a)~(1d)によれば、引用文献1には、「選別網」が記載されており、前記「選別網」は、「枠体」の内部に多数の縦線と横線を別々にかつ互に交叉するごとく上下に重ねて接触させて「網状体」とし、しかして端縁を「枠体」に止着張設せしめて成る、「籾摺機万石」における「選別網」であって、前記「網状体」及び「枠体」は、併せて、「籾摺機万石」に用いられる「選別網」といえるものである。
また、前記「選別網」は、枠体の内部に縦線と横線とを別々にかつ上下に重ねて張設することにより、織成によらない「網状体」を構成せしめたもので、各糸が一時的に一方へ偏せられても直ぐに復元して、常に規則正しい網目を保ち、良好な選別を行うことができると共に、縦線と横線とが別々に張設されているから、各糸の間隙を適当に変えれば網目の大きさを容易に調整することができるものである。
(イ)そうすると、引用文献1には、以下の発明が記載されているといえる。
「枠体と、該枠体の内部に多数の縦線と横線を別々にかつ互に交叉するごとく上下に重ねて接触させ、しかして端縁を枠体に止着張設せしめて成る網状体とからなる、籾摺機万石に用いられる選別網であって、
前記網状体は、各糸が一時的に一方へ偏せられても直ぐに復元して、常に規則正しい網目を保ち、良好な選別を行うことができると共に、各糸の間隙を適当に変えれば網目の大きさを容易に調整することができる、選別網。」(以下、「引用発明1」という。)
2 対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
(ア)本願発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1における「網状体」は、本願発明1における「網」に相当し、引用発明1における「枠体」は、本願発明1における「枠体」に相当し、引用発明1における「選別網」は、本願発明1における「網と、枠体と、から構成される篩」に相当するものである。
(イ)また、引用発明1における「網状体」は、「枠体」の内部に多数の縦線と横線を別々にかつ互に交叉するごとく上下に重ねて接触させ、しかして端縁を「枠体」に止着張設せしめて成るものであるから、「線材を織らずに接触状態で交差させて形成」され、前記「線材」は「下線材と上線材とによって構成され、前記下線材と前記上線材はそれぞれ張力を生じさせた状態で前記枠体に取り付けられ」るものといえる。
更に、引用発明1における「選別網」は、「籾摺機万石」に用いられるものであるから、「傾斜を有して備えられ」るものである。
(ウ)そうすると、本願発明1と引用発明1とは
「網と、
枠体と、
から構成される篩であって、
前記網は線材を織らずに接触状態で交差させて形成され、
前記線材は下線材と上線材とによって構成され、
前記下線材と前記上線材はそれぞれ張力を生じさせた状態で前記枠体に取り付けられ、
前記網と前記枠体は傾斜を有して備えられる、
篩。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
相違点1:本願発明1は、「篩」が、「振動篩機」に用いられる「篩」であって、「篩」として規格化されている目開きの許容寸法の範囲内で「下線材」と「上線材」とを微少に滑らせて意図的に撓みを「網」の面方向に発生させ、「張力」を調整することで前記撓みの量を規制するとともに、前記撓みと該撓みからの復帰による微少な摺動動作によって分別目的物の目詰まり防止と落下性の向上を可能としたものであるのに対して、引用発明1は、「篩」が、「籾摺機万石」に用いられる「篩」であって、「網」の「各糸」が一時的に一方へ偏せられても直ぐに復元して、常に規則正しい網目を保ち、良好な選別を行うことができると共に、各糸の間隙を適当に変えれば網目の大きさを容易に調整することができるものである点。
相違点2:本願発明1は、「篩」が、「抗張力線材を用いた篩」であって、「網」が「抗張力線材」で形成され、「前記抗張力線材はJIS規格(JIS G3522)で定めるピアノ線を素材とする」ものであるのに対して、引用発明1は、「篩」の「網」を構成する「線材」の素材が不明である点。
イ 判断
(ア)前記相違点1について検討すると、引用発明1は、「籾摺機万石」に用いられる「篩」において、「網」の「各糸」が一時的に一方へ偏せられても直ぐに復元して、常に規則正しい網目を保ち、良好な選別を行うことができると共に、各糸の間隙を適当に変えれば網目の大きさを容易に調整することができるものであるが、「籾摺機万石」が、振動が加えられない、静置されたものであることは技術常識であるから、引用発明1における「籾摺機万石」は、「振動篩機」とはいえない。
したがって、前記相違点1は実質的な相違点である。
(イ)ここで、「振動篩機」自体は本願優先日の前に周知のものであるが、静置されたものである「籾摺機万石」の「篩」に用いられる「網」と、「振動篩機」に用いられる「網」とでは、通常、「網」を構成する線材に要求される強度等の物性が異なるものであるので、「籾摺機万石」に用いられる「篩」を「振動篩機」に用いるべき合理的な理由は見いだせないし、仮に、「籾摺機万石」に用いられる「篩」を「振動篩機」に適用したとしても、「篩」として規格化されている目開きの許容寸法の範囲内で「下線材」と「上線材」とを微少に滑らせて意図的に撓みを「網」の面方向に発生させ、「張力」を調整することで前記撓みの量を規制するとともに、前記撓みと該撓みからの復帰による微少な摺動動作によって分別目的物の目詰まり防止と落下性の向上が可能となる、と直ちにいえるものではない。
(ウ)また、引用文献2~8、10には、「振動篩機」において、「篩」として規格化されている目開きの許容寸法の範囲内で「下線材」と「上線材」とを微少に滑らせて意図的に撓みを「網」の面方向に発生させ、「張力」を調整することで前記撓みの量を規制するとともに、前記撓みと該撓みからの復帰による微少な摺動動作によって分別目的物の目詰まり防止と落下性の向上を可能とすることが、記載も示唆もされるものでもない。
更に、引用文献9は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項3~4において特定される、「張力調整機構」の構成に対して引用されたものであり、引用文献11は、審判請求時の補正により補正される前の特許請求の範囲の請求項7において特定される、「前記枠体(20)を上下に二分割して、前記上線材(12)と前記下線材(11)をそれぞれ別個に前記張力(C)を与えて保持し、これを組み合せて前記網(10)を形成する」、との構成に対して引用されたものであって、何れにも、「振動篩機」において、「篩」として規格化されている目開きの許容寸法の範囲内で「下線材」と「上線材」とを微少に滑らせて意図的に撓みを「網」の面方向に発生させ、「張力」を調整することで前記撓みの量を規制するとともに、前記撓みと該撓みからの復帰による微少な摺動動作によって分別目的物の目詰まり防止と落下性の向上を可能とすることが、記載も示唆もされるものでもない。
(エ)そうすると、「振動篩機」自体は本願優先日の前に周知のものであるとしても、引用発明1において、「篩」を、「振動篩機」に用いられるものとして、「篩」として規格化されている目開きの許容寸法の範囲内で「下線材」と「上線材」とを微少に滑らせて意図的に撓みを「網」の面方向に発生させ、「張力」を調整することで前記撓みの量を規制するとともに、前記撓みと該撓みからの復帰による微少な摺動動作によって分別目的物の目詰まり防止と落下性の向上を可能とし、前記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることを、引用文献2~11の記載事項に基づいて当業者が容易になし得るとはいえない。
したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本願発明1を、引用発明1及び引用文献2~11の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(2)本願発明2~4について
ア 対比・判断
(ア)本願発明2は請求項1を引用するものであって、本願発明2と引用発明1とを対比した場合、本願発明2と引用発明1とは、少なくとも前記相違点1を有するものである。
(イ)そして、引用発明1において、前記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることを、引用文献2~11の記載事項に基づいて当業者が容易になし得るとはいえないから、本願発明1を、引用発明1及び引用文献2~11の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないことは、上記(1)イ(エ)に記載のとおりである。
(ウ)したがって、同様の理由により、本願発明2も、引用発明1及び引用文献2~11の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
そしてこのことは、請求項1を引用する本願発明3~4についても同様である。
(3) まとめ
以上のとおりであるので、本願発明1~4は、引用発明1及び引用文献2~11の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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