特許拒絶査定不服審判
2018-009729
地図データ構造、地図データ記憶媒体、ナビゲーション装置及びナビゲーション方法
- 審判番号
- 2018-009729
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-029604外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年07月13日
- 審決日
- 2019年11月15日
- 公報発行日
- 2020年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社トヨタマップマスター
- 【請求人代理人】小西 富雅
- 【請求人代理人】中村 知公
- 分類
- P18 .121-WZ (G08G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015- 29604「地図データ構造、地図データ記憶媒体、ナビゲーション装置及びナビゲーション方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月22日出願公開、特開2016-151931〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年2月18日の出願であって、平成29年9月20日付けの拒絶理由の通知に対し、同年11月28日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成30年4月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、その後、令和元年5月31日付けで当審が通知した拒絶理由に対し、同年7月23日に意見書が提出されるとともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
第2 本願発明
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「交差点に進入する進入路の終端から所定距離にある位置に関連付けられた第1の切替フラグであって、自動運転車両に対して、自動走行モードを通常モードから交差点モードに切り替えるための第1の切替フラグが格納された地図データベースと、
前記自動運転車両の現在位置が、前記第1の切替フラグが関連付けられた位置に到達したとき、前記自動走行モードを前記通常モードから前記交差点モードへ切り替えるモード切替部と、
を備える、ナビゲーション装置。」
第3 拒絶の理由
令和元年5月31日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由2は、次の理由を含むものである。
本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2009-219031号公報
引用文献2:特開2010-152554号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1.引用文献1の記載及び引用発明について
(1)引用文献1の記載事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
ア.「【請求項1】
送信対象情報を含むフレームを生成するフレーム生成部と、
前記フレームを送信する送信部と、
を備える車載通信装置であって、
搭載車両の走行状況情報を取得する状況取得部と、
前記状況取得部による取得情報に基づいてフレーム使用範囲を指定するフレーム範囲指定部と、
を備え、
前記フレーム生成部は、
前記フレーム範囲指定部によって指定されたフレーム使用範囲に、前記送信対象情報を含むフレームを生成することを特徴とする車載通信装置。」
イ.「【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のフレームに区切られた信号によって搭載車両の走行情報を送信する車載通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路を走行する各車両に車載通信装置を搭載し、各車両が自らの位置情報、自らの速度情報等を報知する車載通信システムが広く知られている。各車両の車載通信装置は、他車両から送信された情報を受信し、他車両との接触が回避されるよう、受信情報に基づいて自車両の走行制御を行う。」
ウ.「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載通信システムでは、他車両から送信されるブロードキャスト信号に基づいて、各車両の車載通信装置がキャリアセンスを行う。ここで、キャリアセンスとは、他車両が通信に使用している時間帯を検出する処理をいう。各車両の車載通信装置は、キャリアセンスに基づいて、他車両から走行情報が送信される時間帯と重ならない時間帯に、自車両の走行情報を送信する。
【0005】
しかし、無線信号の伝搬状況が良好でない車両間では、キャリアセンスを行うことが困難である。この場合、互いにキャリアセンスが行われなかった複数の車両からは、重なる時間帯にそれぞれの走行情報が送信されることがある。この場合、その複数の車両とは異なる車両の車載通信装置では、複数の走行情報が重ねて受信される。このとき、複数の走行情報を重ねて受信した車載通信装置は、いずれの情報も取得しないこととする。そのため、無線信号の伝搬状況が良好でない場合には、車両間の情報伝送量が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に対してなされたものである。すなわち、搭載車両の走行情報を送信する車載通信装置において、他の車載通信装置が搭載車両の走行情報を送信する時間帯と重なる時間帯に、自らの搭載車両の走行情報を送信する頻度を低減することを目的とする。」
エ.「【0011】
(1)基本処理
図1に本発明の第1の実施形態に係る車載通信装置の構成を示す。複数の車両のそれぞれに搭載された車載通信装置は車載通信システムを構成する。各車載通信装置は、搭載車両の位置情報および速度ベクトルを含む走行情報を報知送信する。他車両から送信された走行情報を受信した車載通信装置は、その走行情報に基づいて、送信元の車両と自車両との接触が回避されるよう、自車両の走行制御を行う。
【0012】
搭載車両の走行情報は次のようにして情報処理部10に与えられる。測位装置20は、測位アンテナ18を介して衛星信号を受信し、搭載車両の位置情報を求め速度ベクトル算出部22および情報処理部10に出力する。速度ベクトル算出部22は、測位装置20から出力される位置情報の時間変化に基づいて速度ベクトルを算出し、情報処理部10に出力する。情報処理部10は、測位装置20から出力された位置情報および速度ベクトル算出部22から出力された速度ベクトルの組を搭載車両の走行情報とする。
【0013】
情報処理部10は、搭載車両の走行情報を報知送信するためのブロードキャスト信号を生成し、送信部12に出力する。送信部12は、ブロードキャスト信号を通信アンテナ14を介して送信する。受信部16は、他車両から送信されたブロードキャスト信号を、通信アンテナ14を介して受信し、情報処理部10に出力する。
【0014】
情報処理部10は、受信部16から出力されたブロードキャスト信号から他車両の走行情報を抽出し、車両制御部24に出力する。また、情報処理部10は、自車両の走行情報を車両制御部24に出力する。車両制御部24は、自車両と他車両との接触が回避されるよう、他車両の走行情報および自車両の走行情報に基づいて、自車両のステアリング、ブレーキ、トランスミッションギアの切り換え、アクセル等の制御を行う。
【0015】
図2にブロードキャスト信号30の構成を示す。ブロードキャスト信号30は、複数のフレーム32に区切られる。情報処理部10は、1つのフレーム32の全範囲のうち、走行情報を送信するために使用する範囲をフレーム32内の時間位置によって決定する。そして、決定した使用範囲に搭載車両の走行情報を記録して送信する。
【0016】
車載通信システムを構成する各車載通信装置は、衛星信号が示すタイミングに基づき、所定の時間間隔でブロードキャスト信号を送信する。また、各車載通信装置は、衛星信号が示すタイミングに基づき、ブロードキャスト信号を送信するときの同期をとる。これによって、各車載通信装置が送信するブロードキャスト信号のフレーム先端時刻およびフレーム後端時刻は同時となる。このような同期処理を行うため、測位装置20は、受信した衛星信号を情報処理部10に出力する。情報処理部10は、衛星信号が示すタイミングに基づいてブロードキャスト信号の各フレームを送信部12に出力する。
【0017】
(2)フレームの使用範囲の決定
本実施形態に係る車載通信装置は、搭載車両の走行方位に基づいてフレームの割り当て範囲を特定する。そして、キャリアセンスに基づいて他車使用範囲を検出し、特定したフレーム割り当て範囲から他車使用範囲を除外したフレーム使用範囲に走行情報を記録して送信する。
【0018】
まず、搭載車両の走行方位に基づくフレーム割り当て範囲の特定について説明する。走行方位は、例えば、北方向を0°とし、搭載車両を中心に北西南東の向きに回る方向を正回転方向として定義する。
【0019】
フレーム割り当て範囲を特定するため、情報処理部10は、フレーム内の時間位置と方位角スケールとを対応付ける処理を行う。例えば、図2に示すように、フレーム先端時刻の方位角スケール34のスケール値を0°とし、フレーム後端時刻の方位角スケール34のスケール値を180°とする。この対応付けは、送信前のフレームを記憶するために情報処理部10に備えられたメモリのアドレスと、方位角スケール34のスケール値とを対応付けたメモリーアドレステーブルを情報処理部10が備えることで実行することができる。」
オ.「【0024】
従来の車載通信装置では、各車載通信装置は、フレームの全範囲をフレーム割り当て範囲としていた。そして、キャリアセンスに基づいて他車使用範囲を決定し、フレーム全範囲のうち他車使用範囲を除外した範囲に走行情報を記録したブロードキャスト信号を送信していた。しかし、キャリアセンスは、ブロードキャスト信号の搬送波を互いに感知できる車両間で実行することが可能である。したがって、無線信号の伝搬環境が良好でない車両間では、キャリアセンスを行うことが困難となる。互いにキャリアセンスが行われなかった複数の車両からは、重なる時間帯にそれぞれの走行情報が送信されることがある。この場合、その複数の車両とは異なる車両の車載通信装置では、複数の送信情報が重ねて受信される。このとき、複数の走行情報を重ねて受信した車載通信装置は、いずれの情報も取得することができないという問題が生じていた。
【0025】
例えば、図3に示すように、道路36と道路38とが交差する交差点において、道路36、道路38、および交差点内に、それぞれ、車両42A,42B、および42Cが存在する例について採り上げる。車両42Aと車両42Bとの間には建物40があり、車両42Aと車両42Bとの間ではブロードキャスト信号が遮られる。これによって、車両42Aおよび42Bの各車載通信装置は、キャリアセンスを行うことが困難となる。このとき、車両42Aおよび車両42Bからは、重なる時間帯にそれぞれの走行情報が送信される可能性がある。この場合、車両42Cの車載通信装置は、車両42Aおよび42Bのいずれからも走行情報を取得することができない。
【0026】
本実施形態に係る車載通信装置によれば、車載通信装置は、搭載車両の走行方位に基づいてフレーム割り当て範囲を特定する。そして、キャリアセンスに基づき使用除外範囲を決定し、フレーム割り当て範囲から他車使用範囲を除外したフレーム使用範囲に走行情報を記録して送信する。したがって、走行方位が異なる複数の車両の各車載通信装置のフレーム使用範囲をずらすことができる。そのため、複数の車両からそれぞれの走行情報が時間帯を重ねて送信される頻度を低下させることができる。これによって、走行情報が重ねて受信されたことに基づき情報取得を行わないこととする頻度を低下させることができ、車両間の情報伝送量を向上させることができる。
【0027】
例えば、図3に示される状況では、車両42Aは東方向(270°方向)に道路36を走行し、車両42Bは北方向(0°方向)に道路38を走行している。車両42Aと車両42Bとの走行方位の相違は90°である。したがって、α=0.5とすれば、車両42Aは、方位角スケール90°以上180°未満のフレーム割り当て範囲内に走行情報を記録し、車両42Bは、方位角スケール0°以上90°未満のフレーム割り当て範囲内に走行情報を記録する。したがって、車両42Cの車載通信装置は車両42Aおよび42Bのいずれからも走行情報を取得することができる。」
カ.「【0032】
(4)交差点からの距離に基づく処理の切り換え
第1の実施形態に係る車載通信装置は、搭載車両の走行方位に基づいてフレーム割り当て範囲を特定する。そして、キャリアセンスに基づいて他車使用範囲を検出し、フレーム割り当て範囲から他車使用範囲を除外したフレーム使用範囲に走行情報を記録して送信する。このようなフレーム分割方式では、フレームの全範囲のうち使用率αで定まる範囲がフレーム割り当て範囲となる。したがって、フレーム全範囲が割り当てられる場合に比して、単位時間当たりの情報伝送量が制限される。
【0033】
そこで、第2の実施形態に係る車載通信装置では、搭載車両が交差点から十分離れた位置を走行しているときには、フレーム分割方式に基づく処理は行わず、フレーム全範囲を割り当てフレーム範囲とする通常キャリアセンス方式によってフレーム使用範囲を決定する。そして、搭載車両が交差点に接近したときには、フレーム分割方式に基づきフレーム使用範囲を決定する。
【0034】
図5に第2の実施形態に係る車載通信装置の構成を示す。図1の車載通信装置と同一の構成部については同一の符号を付してその説明を省略する。この車載通信装置は、地図情報記憶部26を備える。地図情報記憶部26に記憶される地図情報には、交差点の位置情報が含まれる。情報処理部10は、測位装置20から搭載車両の位置情報を取得する。また、地図情報記憶部26から地図情報を読み込む。そして、搭載車両の位置情報と地図情報とに基づいて、搭載車両に最も近い位置にある交差点からの距離を算出する。
【0035】
情報処理部10は、交差点からの距離が所定の接近閾値以上であるときは、通常キャリアセンス方式に基づいてフレーム使用範囲を決定する。一方、交差点からの距離が所定の接近閾値未満であるときは、フレーム分割方式に基づきフレーム使用範囲を決定する。情報処理部10は、決定したフレーム使用範囲に走行情報を記録したブロードキャスト信号を送信部12に出力する。送信部12は、通信アンテナ14を介してブロードキャスト信号を送信する。
【0036】
交差点から離れた道路上では、交差道路を走行する車両との間でキャリアセンスを行う必要性に乏しい。したがって、キャリアセンスは、自車両と同一方向に走行する車両または対向車両との間で行われていれば十分である。同一方向車両または対向車両との間では無線信号の伝搬状況が良好な場合が多く、キャリアセンスを良好に行うことができる。したがって、通常キャリアセンス方式によってフレーム使用範囲を決定しても、複数の車両からそれぞれの走行情報が時間帯を重ねて送信される頻度は低い。第2の実施形態に係る車載通信装置によれば、搭載車両が交差点から離れているときは、通常キャリアセンス方式に基づく処理を実行し、単位時間当たりの情報伝送量を多くすることができる。
【0037】
一方、交差点近傍では、交差道路を走行する車両の走行情報を取得する必要性が高い。ところが、曲がり角にある建物等の存在により、交差道路を走行する車両との間でキャリアセンスを行うことが困難なことが多い。これによって、複数の車両からそれぞれの走行情報が時間帯を重ねて送信される頻度が高くなる。第2の実施形態に係る車載通信装置によれば、搭載車両が交差点に接近した場合には、フレーム分割方式に基づく処理を実行し、交差道路にある複数の車両からそれぞれの走行情報が時間帯を重ねて送信される頻度を低下させることができる。」
キ.上記カより、車載通信装置が備える地図情報記憶部26は、交差点の位置情報を含み、車載通信装置は、車両が交差点からの距離が所定の接近閾値以上であるときは、通常キャリアセンス方式に基づいてフレーム使用範囲を決定し、交差点からの距離が所定の接近閾値未満であるときは、フレーム分割方式に基づきフレーム使用範囲を決定することがわかるから、交差点の位置情報は、フレームの使用範囲を通常キャリアセンス方式に基づき決定することからフレーム分割方式に基づき決定することに切り替えるためのものであるといえる。
このフレーム使用範囲は、上記エ及びオより、走行情報を記録して他車両に送信するものであるから、引用文献1には、フレームに走行情報を記録して他車両に送信する処理を行うことが記載されているといえる。また、上記エより、車載通信装置の車両制御部24は、自車両と他車両との接触が回避されるよう、他車両の走行情報および自車両の走行情報に基づいて、自車両のステアリング、ブレーキ、トランスミッションギアの切り換え、アクセル等の制御、すなわち、自車両と他車両との接触を回避する走行制御を行っており、上記、走行情報を記録して他車両に送信する処理は、この自車両と他車両との接触を回避する走行制御を行っている車両に対して行うことがわかるから、引用文献1には、自車両と他車両との接触を回避する走行制御を行っている車載通信装置の搭載車両に対して、フレームに走行情報を記録して他車両に送信する処理を行っていることが記載されているといえる。
よって、引用文献1には、交差点の位置情報であって、自車両と他車両との接触を回避する走行制御を行っている車載通信装置の搭載車両に対して、フレームに走行情報を記録して他車両に送信する処理を通常キャリアセンス方式に基づき決定されたフレームの使用範囲に走行情報を記録して他車両に送信することからフレーム分割方式に基づき決定されたフレームの使用範囲に走行情報を記録して他車両に送信することに切り替えるための交差点の位置情報が含まれる地図情報記憶部26が記載されている。
ク.上記カより、車載通信装置では、搭載車両が交差点から十分離れた位置を走行しているときには、通常キャリアセンス方式に基づき決定されたフレームの使用範囲に走行情報を記録して他車両に送信し、搭載車両が交差点に接近したときには、フレーム分割方式に基づき決定されたフレーム使用範囲に走行情報を記録して他車両に送信している。これは、情報処理部10が交差点からの距離が所定の接近閾値以上であるときは、通常キャリアセンス方式に基づいてフレーム使用範囲を決定し、交差点からの距離が所定の接近閾値未満であるときは、フレーム分割方式に基づきフレーム使用範囲を決定することにより行われると解されるから、引用文献1には、車載通信装置の搭載車両の位置が、交差点からの距離が接近閾値未満となる位置に到達したとき、フレームに走行情報を記録して他車両に送信する処理を通常キャリアセンス方式に基づき決定されたフレームの使用範囲に走行情報を記録して他車両に送信することからフレーム分割方式に基づき決定されたフレームの使用範囲に走行情報を記録して他車両に送信することへ切り替える情報処理部10が記載されている。
(2)引用文献1に記載された発明について
上記(1)からみて、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「交差点の位置情報であって、自車両と他車両との接触を回避する走行制御を行っている車載通信装置の搭載車両に対して、フレームに走行情報を記録して他車両に送信する処理を通常キャリアセンス方式に基づき決定されたフレームの使用範囲に走行情報を記録して他車両に送信することからフレーム分割方式に基づき決定されたフレームの使用範囲に走行情報を記録して他車両に送信することに切り替えるための交差点の位置情報が含まれる地図情報記憶部26と、
前記車載通信装置の搭載車両の位置が、交差点からの距離が接近閾値未満となる位置に到達したとき、前記フレームに走行情報を記録して他車両に送信する処理を前記通常キャリアセンス方式に基づき決定されたフレームの使用範囲に走行情報を記録して他車両に送信することから前記フレーム分割方式に基づき決定されたフレームの使用範囲に走行情報を記録して他車両に送信することへ切り替える情報処理部10と、
を備える、車載通信装置。」
2.引用文献2の記載
(1)引用文献2の記載事項
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
ア.「【請求項1】
交差点毎に、車両の速度及び加速度を含む車両状態情報と、無線通信の伝送媒体の属性を特定する属性情報とを、相互に対応付けて格納する属性情報格納手段と、
自車が前記交差点に接近した場合、当該自車の速度及び加速度を含む自車状態情報を取得する自車状態情報取得手段と、
前記自車状態情報取得手段が取得した前記自車状態情報に対応し、且つ接近した前記交差点に対応する前記属性情報を、前記属性情報格納手段から取得する属性情報取得手段と、
前記属性情報取得手段が取得した前記属性情報に基づいて特定される属性の前記伝送媒体の出力を行う出力手段と、
を備えることを特徴とする車載用通信装置。」
イ.「【0001】
本発明は、車載用通信装置、車載用通信方法、及び車載用通信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両間で各種の情報の通信を行なうための車車間通信システムが提案されており、例えば、交差点での車両同士の衝突回避のために、車車間通信システムを用いて自車の位置情報等を通知するシステムも知られている。ところが、この車車間通信システムにおいては、近接する複数車両が同一の通信チャンネルを用いて同時に送信を行った場合、混信が発生する可能性があった。」
ウ.「【0005】
ところで、車車間通信によって送受信された情報に基づいて衝突回避を行うためには、情報の処理速度を高速化し、衝突回避のための動作を行う時間を確保することが重要である。しかし、上述の如き従来の移動体用情報通信装置では、複数の車両から送信された信号の混信は防げるものの、信号に含まれる情報量が多いため、送信や受信における情報処理に要する時間が長くなってしまう可能性があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な処理によって衝突回避に必要な情報を他車に伝達することができる、車載用通信装置、車載用通信方法、及び車載用通信プログラムを提供することを目的とする。」
エ.「【0013】
以下、本発明に係る車載用通信装置、車載用通信方法、及び車載用通信プログラムの実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
(構成)
まず、車載用通信装置の構成を説明する。図1は、実施の形態に係る車載用通信システムを例示するブロック図である。図1に示すように、この車載用通信システム1は、車速センサ10、加速度センサ20、現在位置検出処理部30、スピーカ40、ディスプレイ50、及び車載用通信装置60を備えている。また、車載用通信装置60には、車載用通信システム1が搭載されている車両(以下、必要に応じて「自車」)のブレーキ70が接続されている。
【0015】
(構成-車速センサ)
車速センサ10は、車輪の回転速度等を車載用通信装置60に出力するものであり、公知の車速センサを用いることができる。
【0016】
(構成-加速度センサ)
加速度センサ20は、車両の加速度を車載用通信装置60に出力するものであり、ピエゾ抵抗型や静電容量型等、各種の加速度センサを用いることができる。
【0017】
(構成-現在位置検出処理部)
現在位置検出処理部30は、車載用通信装置60が搭載された車両の現在位置を検出する現在位置検出手段である。具体的には、現在位置検出処理部30は、GPS、地磁気センサ、距離センサ、又はジャイロセンサ(いずれも図示省略)の少なくとも一つを有し、現在の車両の位置(座標)及び方位等を公知の方法にて検出する。
【0018】
(構成-スピーカ及びディスプレイ)
スピーカ40及びディスプレイ50は、車載用通信装置60の制御に基づいて各種の情報を出力する。なお、スピーカ40より出力される音声の具体的な態様は任意であり、必要に応じて生成された合成音声や、予め録音された音声を出力することができる。また、ディスプレイ50の具体的な構成は任意であり、公知の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの如きフラットパネルディスプレイを使用することができる。
【0019】
(構成-車載用通信装置)
車載用通信装置60は、通信部61、制御部62、及びデータ記録部63を備えている。
【0020】
(構成-車載用通信装置-通信部)
通信部61は、制御部62によって特定される属性の伝送媒体の出力を行う出力手段であり、伝送媒体の入力を受け付ける受付手段である。ここで、「伝送媒体」とは、電波、光、音波等、情報の伝送に用いることのできる媒体を含む概念である。また、「属性」とは、これらの各種伝送媒体の属性であり、例えば、電波の周波数、変調方式、偏波方向等が挙げられる。以下では、伝送媒体として電波を使用し、電波の属性として周波数を取り扱う場合を例に挙げて説明する。なお、この場合の通信部61としては、電波の出力及び入力機能を有する公知の無線通信装置を用いることができる。」
オ.「【0023】
(構成-車載用通信装置-データ記録部)
データ記録部63は、車載用通信装置60の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記録する記録手段であり、例えば、外部記憶装置としてのハードディスク(図示省略)を用いて構成されている。ただし、ハードディスクに代えてあるいはハードディスクと共に、磁気ディスクの如き磁気的記録媒体、又はDVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体を含む、その他の任意の記録媒体を用いることができる。
【0024】
このデータ記録部63は、地図情報データベース(以下、データベースを「DB」と称する)63a、属性DB63c、及び制御テーブル63dを備えている。地図情報DB63aは、地図情報を格納する地図情報格納手段である。「地図情報」は、交差点や車線等の位置の特定に必要な情報であり、例えば、交差点データ(交差点座標等)、道路データ(道路種別、車線数、制限速度、道路座標、道路番号等)、地図をディスプレイ50に表示するための地図表示データ等を含んで構成されている。また、地図情報DB63aはノード情報63bを格納している。ノード情報63bは、交差点の位置、及び交差点の接続道路の位置を特定するために必要な情報であり、各交差点に対応する交差点ノードの座標や接続道路に対応する接続道路ノードの座標、及びこれらのノードを一意に識別するノード番号を含んで構成される。図2は、交差点及び交差点の接続道路に対応するノードを例示した図である。図2の例では、交差点AAには交差点ノードNAAが対応し、交差点AAに接続する各接続道路には、交差点AAの手前に設定された接続道路ノード(N1、N2、N3、N4)が対応する。各接続道路ノードは、各接続道路の制限速度に基づいて決定された距離だけ交差点ノードから離れた位置に設定される。例えば、制限速度から一定の加速度で減速して停止するまでに必要となる距離を、交差点ノードから接続道路ノードまでの距離とすることができる。具体的には、速度60km/hから加速度-2.0m/s2で減速して停止するまでに必要な距離は69.4m、速度40km/hから加速度-2.0m/s2で減速して停止するまでに必要な距離は30.9mであるので、図2の例では、制限速度が60km/hの道路Rにおける接続道路ノードN2及びN4は交差点ノードNAAから69.4m離れた位置に設定され、制限速度が40km/hの道路Sにおける接続道路ノードN1及びN3は交差点ノードNAAから30.9m離れた位置に設定される。」
カ.「【0027】
(処理)
次に、このように構成される車載用通信システム1によって実行される処理について、出力処理と受付処理とに大別して説明する。
【0028】
(処理-出力処理)
図5は出力処理を示したフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。この出力処理は、車両が電波を出力する際に実行される処理であり、例えば、車載用通信システム1への電源投入後に自動的に起動される。
【0029】
出力処理が起動されると、自車状態情報取得部62aは、現在位置検出処理部30を介して自車の現在位置を取得する(SA1)。そして、取得した現在位置に基づいて地図情報DB63aのノード情報63bを参照し、自車が交差点に接近したか否かを判定する(SA2)。具体的には、自車が何れかの接続道路ノードに到達したか否かを判定し、接続道路ノードに到達したと判定した場合、当該接続道路ノードに対応する接続道路が接続する交差点に接近したと判定する。
【0030】
その結果、交差点に接近していないと判定した場合(SA2、No)、自車状態情報取得部62aはSA1に戻り、自車の現在位置を取得する(SA1)。一方、交差点に接近したと判定した場合(SA2、Yes)、自車状態情報取得部62aは、車速センサ10及び加速度センサ20を介して、車速及び加速度を含む自車状態情報を取得する(SA3)。
【0031】
続いて、属性情報取得部62bは属性DB63cを参照し(SA4)、SA3で自車状態情報取得部62aが取得した自車状態情報に対応し、且つ接近した交差点に対応する属性情報を、属性DB63cから取得する(SA5)。例えば、図2における車両Pの自車状態情報取得部62aが、SA2において当該車両Pが交差点AAの接続道路ノードN4に到達したと判定し、SA3において車両Pの速度Vとして85km/h、加速度aとして2m/s2を取得した場合、属性情報取得部62bは、図3の属性DB63cにおける項目「交差点ノード」における「NAA」、項目「接続道路ノード」における「N4」、項目「速度V[km/h]」における「V≧80」、及び項目「加速度a[m/s2]」における「a≧0」に対応付けて格納されている属性情報「F19」を取得する。
【0032】
図5に戻り、通信部61は、SA5で属性情報取得部62bが取得した属性情報に基づいて特定される周波数の電波の出力を行う(SA6)。例えば、図2における車両Pが接続道路ノードN4に到達した場合、当該車両Pの通信部61は、属性情報取得部62bがSA5で取得した属性情報「F19」に基づいて特定される周波数の電波の出力を行う。SA6において電波の出力を行った後、出力処理を終了する。
【0033】
(処理-受付処理)
図6は受付処理を示したフローチャートである。この受付処理は、車両が電波の入力を受け付ける際に実行される処理であり、例えば、出力処理と同様に車載用通信システム1への電源投入後に自動的に起動される。
【0034】
受付処理が起動されると、通信部61は、電波の入力を受け付けたか否かを判定する(SB1)。その結果、電波の入力を受け付けたと判定した場合(SB1、Yes)、自車制御部62cは、現在位置検出処理部30を介して自車の現在位置を取得し、取得した現在位置に基づいて地図情報DB63aのノード情報63bを参照し、自車の前方所定距離内(例えば500m以内)に交差点があるか否かを判定する(SB2)。その結果、交差点がないと判定した場合(SB2、No)、自車は当該電波の対象外であるものとし、自車制御部62cは受付処理を終了する。
【0035】
一方、交差点があると判定した場合(SB2、Yes)、自車制御部62cは、通信部61が入力を受け付けた電波の周波数を特定する(SB3)。続いて、自車制御部62cは属性DB63cを参照し、SB2で特定した電波の周波数に対応する接続道路ノードを特定する(SB4)。そして、SB2で取得した自車の現在位置に基づき、SB4で特定した接続道路ノードに対応する接続道路と自車が走行している道路とが一致するか否かを判定する(SB5)。その結果、SB4で特定した接続道路ノードに対応する接続道路と自車が走行している道路とが一致すると判定した場合(SB5、Yes)、通信部61が入力を受け付けた電波は自車の前方を自車と同方向に走行する他車から出力された電波であり、自車は当該電波の対象外であるものとし、自車制御部62cは受付処理を終了する。
【0036】
一方、SB4で特定した接続道路ノードに対応する接続道路と自車が走行している道路とが一致しないと判定した場合(SB5、No)、通信部61が入力を受け付けた電波は自車の前方の交差点に他の接続道路から進入する他車から出力された電波であり、自車は当該電波の対象であるものとし、自車状態情報取得部62aは、車速センサ10、加速度センサ20、及び現在位置検出処理部30を介して、自車状態情報を取得する(SB6)。
【0037】
続いて、自車制御部62cは制御テーブル63dを参照し(SB7)、SB2で自車の前方所定距離内にあると判定した交差点に対応する交差点ノードと、SB3で特定した電波の周波数に対応する属性情報とに対応付けて格納されている制御条件及び制御内容を取得する。そして、SB6で取得した自車状態情報に基づいて特定される自車状態が制御条件を満たす場合、取得した制御内容に対応する制御を実行する(SB8)。」
第5 対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「車載通信装置」は、上記第4・1(1)・イ及びエに示したように、他車両の走行情報および自車両の走行情報に基づいて、自車両のステアリング、ブレーキ、トランスミッションギアの切り換え、アクセル等の制御を行い、自車両の走行制御を行うものであり、また本願発明の「ナビゲーション装置」も「車両の自動運転を制御するため」(本願明細書【0004】)に用いられる装置であるから、両者は、自動運転制御用装置である点で共通する。
また、引用発明の「交差点の位置情報」と本願発明の「第1の切替フラグ」は、交差点の位置に関する情報である点で共通する。
引用発明の「自車両と他車両との接触を回避する走行制御を行っている車載通信装置の搭載車両」は、接触を回避する走行制御が行われる車両であるから、本願発明の「自動運転車両」に相当する。
本願発明の「自動走行モード」は、「例えば、通信モード」(本願明細書【0006】)であって、「この通信モードの切替制御の例としては、進入路の走行環境に応じて最適な周波数を選択するための切替制御が挙げられ」(本願明細書【0006】)、「通常モード『5.8GHz帯通信モード』に対して、交差点モード『700MHz帯通信モード』とすることができる」(本願明細書【0006】)と記載されているように、本願発明の「自動走行モードを」「切り替える」ことには、自動運転車両が自動運転のために行う通信の方式(例えば、周波数等のパラメータ)を切り替えることが含まれていると解される。そして、引用発明の「フレームに走行情報を記録して他車両に送信する処理を」「切り替える」ことも走行制御が行われる車両が送信を行うときのフレームの使用範囲を通常キャリアセンス方式に基づき決定することと、フレーム分割方式に基づき決定することのいずれかを選択して切り替えるものであるから、引用発明の「フレームに走行情報を記録して他車両に送信する処理を」「切り替える」ことは、本願発明の「自動走行モードを」「切り替える」ことに相当し、前者の「通常キャリアセンス方式に基づき決定されたフレームの使用範囲に走行情報を記録して他車両に送信すること」、「フレーム分割方式に基づき決定されたフレームの使用範囲に走行情報を記録して他車両に送信すること」は、それぞれ後者の「通常モード」、「交差点モード」に相当する。さらに、引用発明の「含まれる」、「地図情報記憶部26」は、それぞれ本願発明の「格納された」、「地図データベース」に相当する。
引用発明の「車載通信装置の搭載車両の位置」は、本願発明の「自動運転車両の現在位置」に相当する。
引用発明の「交差点からの距離が接近閾値未満となる位置」は、本願発明の「第1の切替フラグが関連付けられた位置」と、交差点から所定距離にある位置である点で共通する。
引用発明の「情報処理部10」は、本願発明の「モード切替部」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、以下の[一致点]で一致し、[相違点1]及び[相違点2]で相違する。
[一致点]
「交差点の位置に関する情報であって、自動運転車両に対して、自動走行モードを通常モードから交差点モードに切り替えるための交差点の位置に関する情報が格納された地図データベースと、
前記自動運転車両の現在位置が、交差点から所定距離にある位置に到達したとき、前記自動走行モードを前記通常モードから前記交差点モードへ切り替えるモード切替部と、
を備える、自動運転制御用装置。」
[相違点1]
自動運転制御用装置に関して、本願発明は、「ナビゲーション装置」であるのに対し、引用発明は、「車載通信装置」である点。
[相違点2]
交差点の位置に関する情報に関して、本願発明は、「交差点に進入する進入路の終端から所定距離にある位置に関連付けられた第1の切替フラグであ」るのに対し、引用発明は、「交差点の位置情報」であり、通常モードから交差点モードに切り替える位置に関して、本願発明では「第1の切替フラグが関連付けられた位置」であるのに対し、引用発明では「交差点からの距離が接近閾値未満となる位置」である点。
第6 判断
上記相違点について、判断する。
1.[相違点1]について
本願発明のナビゲーション装置は、地図データベースと、自動運転車両の自動走行モードを通常モードから交差点モードへ切り替えるモード切替部とを備え、この自動走行モードを切り替えることは、例えば、通信モードを切り替えることを含む(上記第5参照。)から、自動運転車両の走行情報を通信し、車両を走行させるための制御を行う装置を含むといえる。これに対し、引用発明の車両通信装置も、地図情報記憶部を備え、第4・1(1)・イ及びエに示したように、他車両に走行情報を送信する処理、すなわち通信処理を行い、自車両と他車両との接触を回避する走行制御を行っている装置であるといえるから、本願発明の「ナビゲーション装置」と引用発明の「車載通信装置」とは、実質的に相違するものではなく、相違点1は実質的な相違点とはいえない。
また、仮に本願発明の「ナビゲーション装置」が経路等の案内をする装置を意味し、相違点1が実質的な相違点であるとしても、本願の出願前において、地図情報等を備え、経路等の案内をする「ナビゲーション装置」は、周知技術であり、この周知技術を引用発明の地図情報記憶部を備えた車載通信装置に適用し、経路等の案内をするようにし、「ナビゲーション装置」とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。
2.[相違点2]について
上記第4・2に示したように、引用文献2には、自車と他車との間で通信を行う車両の車載用通信装置において(【0005】、【0006】)、交差点に接続される接続道路に対応し、交差点ノードから所定距離手前に設定された接続道路ノードが格納された地図情報DBを備え(【0024】)、自車の現在位置が、前記接続道路ノードに到達したときに交差点に接近したと判定し(【0029】)、交差点ノード、接続道路ノード、速度、加速度に対応する属性情報に基づいて特定される周波数の電波を出力する(【0031】、【0032】)ことが記載されている。引用文献2に記載された、この「接続道路ノードが格納された地図情報DB」は、交差点に進入する進入路の終端から所定距離にある位置に関連付けられた「第1の切替フラグが格納された地図データベース」であって、現在位置が接続道路ノード(第1の切替フラグが関連付けられた位置)に到達したときに交差点に接近したと判定するためのものである。
ところで、引用文献1には、交差点からの距離が接近閾値未満となる位置に到達したとき、フレーム分割方式に基づきフレーム使用範囲を決定することに関して、交差点近傍では、「曲がり角にある建物等の存在により、交差道路を走行する車両との間でキャリアセンスを行うことが困難なことが多い」(【0037】)ことから、「フレーム分割方式に基づく処理を実行し、交差道路にある複数の車両からそれぞれの走行情報が時間帯を重ねて送信される頻度を低下させることができる」(【0037】)旨記載されている。ここで、キャリアセンスを行うことが困難となる建物等は、全ての交差点に存在するというものではなく、また、このような建物が存在する交差点であっても、キャリアセンスが困難となる交差点からの距離は、当該建物の位置や大きさによって変わることは、引用文献1に接した当業者にとって自明な事項である。
そうすると、交差点からの距離が接近閾値未満となる位置に到達したときフレームの使用範囲を通常キャリアセンス方式に基づき決定することからフレーム分割方式に基づき決定することへ切り替える引用発明は、この接近閾値が一律に設定されているために、交差点毎に当該切り替えを行う位置を設定できないという当業者にとって自明な課題を内在しているといえる。
そして、引用発明と引用文献2に記載された事項とは、自車及び他車情報について車車間通信を行う点で共通し、引用発明の車両の交差点からの距離が所定の接近閾値未満であることを判定する手段と、引用文献2に記載された車両の現在位置が接続道路ノードに到達したと判定する事項はいずれも、制御処理の切り替えが必要な交差点付近に車両が到達したことを判定するためのものという点でその機能が共通し、さらに、引用文献2に記載された事項は、車両の現在位置が接続道路ノードに到達したと判定することから、接続道路ノードの位置を交差点に接続する道路毎に設定できるものであり、これにより、引用発明の交差点毎に当該切り替えを行う位置を設定できないという前述した内在する課題を解決できるものであるといえる。
したがって、引用発明におけるフレームの使用範囲を通常キャリアセンス方式に基づき決定することから、フレーム分割方式に基づき決定することへの切り替えにおいて、切り替えが必要な交差点付近に車両が到達したことを判定する手段として、引用文献2に記載された事項を適用し、本願発明の前記相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
3.効果について
上記[相違点1]及び[相違点2]に係る本願発明の作用、効果をみても、引用発明及び引用文献2に記載された事項から予測できる範囲のものであって、格別なものとはいえない。
4.請求人の主張について
請求人は、令和元年7月23日に提出した意見書において、次のように主張している。
「引用発明1(当審注:審決の「引用発明」)の内容を把握した当業者が、位置情報を自ら演算する機能をあえて放棄して、切替フラッグを備えた地図データベースを採用する契機があるでしょうか?もしくは、位置情報を自ら演算する機能を維持しつつも、これに加えて切替フラッグを備えた地図データベースを採用することがあるでしょうか?少なくとも、後者は求める機能に対してオーバースペックとなるので、当業者が採用するとは考えられません。
請求項1に記載の発明と引用発明1とを比較すれば、審判官がご指摘の相違点が浮かびあがり、その相違点から従来技術を眺めれば、当該相違点を開示する引用文献2が挙げられるべきことには何ら異論はございません。しかしながら、本件発明出願前の、引用発明1しか存在しない状態において、当業者が引用発明1にもとづき引用文献2に目を向けるには、技術分野が同一という以外に、何かしら強い契機が必要ではないかと思料します。
繰り返しになりますが、引用発明1では自らの位置情報は自らの演算により得ていますので、引用発明1を把握した当業者が、引用文献2に開示のノード情報、すなわち切替フラグを備えた地図データベースの使用にその目を向けるには、よほどの契機が必要ではないかと考えます。」
しかしながら、上記のように引用発明と引用文献2に記載された事項とは、技術分野が共通するだけでなく、制御処理の切り替えが必要な交差点付近に車両が到達したことを判定する手段を備える点で機能が共通し、また、引用発明は、交差点毎に当該切り替えを行う位置を設定できないという当業者にとって自明な課題を内在しており、引用文献2に記載された事項を適用することにより、この自明な課題を解決することができることから、引用発明に引用文献2に記載された事項を適用することは、上記のように当業者にとって容易になし得たことであり、請求人の主張は採用することができない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。また、このような特許を受けることができない発明を包含するこの出願は、この出願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-009729