特許拒絶査定不服審判
2018-009725
刺激剤を含む組成物
- 審判番号
- 2018-009725
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-554735外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年07月13日
- 審決日
- 2020年06月09日
- 公報発行日
- 2020年12月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .537-WZ (C11D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-554735「刺激剤を含む組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月11日国際公開、WO2015/134829、平成29年 3月30日国内公表、特表2017-508844〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は2015年(平成27年)3月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年3月7日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は以下の通りである。
平成28年 8月31日:手続補正書
平成29年 8月 3日:拒絶理由通知書
平成29年11月 8日:手続補正書、意見書
平成29年11月29日:拒絶理由通知書
平成30年 2月28日:手続補正書、意見書
平成30年 4月 2日:拒絶査定
平成30年 7月13日:手続補正書
平成30年 7月13日:審判請求
令和 1年 5月23日:拒絶理由通知書
令和 1年10月21日:手続補正書、意見書
令和 1年12年17日:拒絶理由通知書
令和 2年 3月16日:手続補正書、意見書
第2 本願発明
本願発明は、令和2年3月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
第1組成物及び刺激剤を含む洗剤組成物であって、
前記第1組成物は液体洗剤であり、前記刺激剤および可塑化溶媒を含み、かつ前記洗剤組成物が、単位用量形態であり、前記洗剤組成物が、前記液体洗剤を封入する水溶性フィルムを含み、
前記水溶性フィルムが、前記刺激剤および可塑剤を含み、
前記刺激剤が、前記水溶性フィルムの外面に存在し、
前記刺激剤のフィルム表面上の濃度が、10ppm~250ppmであり、かつ前記刺激剤が、カプサイシノイドであり、前記洗剤組成物の重量に対して、0.1重量%~0.5重量%存在する、
洗剤組成物。
「【請求項2】
前記液体洗剤が、50%未満の水を含む、請求項1に記載の洗剤組成物。」
第3 当審における拒絶理由の概要
当審において、令和1年12年17日付けで通知した拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
「理由1.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」
本願発明の課題は、「単位用量形態の洗剤組成物において、経口摂取の抑止剤として機能し誤飲を防止できる程度まで、刺激剤を送達する効果的な方法を提供する」こと(以下、「本願発明の課題」という)であると認められる。
そして、上記課題を解決するための手段として、発明の詳細な説明の記載等からみて、「第1組成物は液体洗剤であり、前記刺激剤および可塑化溶媒を含み、かつ前記洗剤組成物が、単位用量形態であり、前記洗剤組成物が、前記液体洗剤を封入する水溶性フィルムを含み、前記水溶性フィルムが、前記刺激剤および可塑剤を含」むことにより、「刺激剤のフィルム表面への移動を誘発」していると認められる。また、本願発明1には「水溶性フィルムが、前記刺激剤および可塑剤を含み、前記刺激剤が、前記水溶性フィルムの外面に存在し」とも規定されている。
しかし、「経口摂取の抑止剤として機能し誤飲を防止できる」ためには、口に含んだ瞬間に刺激を感じ吐き出させる必要があると認められ、そのためには水溶性フィルムの表面に刺激を感じるのに十分な量の刺激剤が存在する必要があると認められるが、本願発明1には、水溶性フィルムの外面に存在する刺激剤の量が規定されていないから、少量のため刺激が十分でなく、経口摂取の抑止剤として機能せず誤飲を防止できない態様が含まれている。
なお、水溶性フィルムの外面の刺激剤の量を規定した上で本願発明の課題が解決できると主張するならば、当該量とすれば課題が解決できることについて十分に説明ないし技術常識を裏付ける文献を提示されたい。
加えて、刺激剤が液体組成物から水溶性フィルムに移動するという作用機序についても、本願の発明の詳細な説明の実施例(本願発明の規定を満たす実施例2等の洗剤組成物)において、刺激剤が水溶性フィルムの外面に存在し、経口摂取の抑止剤として機能し誤飲を防止できることが実施例で具体的に確認されていないから、「液体洗剤」が「刺激剤および可塑化溶媒」を含み「液体洗剤を封入する水溶性フィルム」が「刺激剤および可塑剤を含」むことにより、「経口摂取の抑止剤として機能し誤飲を防止できる程度」の量の刺激剤が水溶性フィルムの外面に移動すると認めることはできないし、本願出願時の技術常識を参酌しても認めることはできない。
したがって、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、本願請求項1に係る発明の全体において、本願発明の課題が解決できるとはいえない。
請求項2に係る発明についても同様である。
第4 当審の判断
1.サポート要件の判断手法
一般に『特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,明細書のサポート要件の存在は,特許出願人(…)が証明責任を負うと解するのが相当である。・・・』とされている〔平成17年(行ケ)10042号判決参照。〕。
2.発明の詳細な説明の記載の摘記
摘記1a:「【背景技術】
【0002】今日の洗剤は、粉末、顆粒、液体及びゲル等の多種多様の形態にて入手可能である。単位用量及び濃縮(又は小型の)洗剤形態は、それらが消費者に低重量、かつ単位用量の場合、簡略化した投与をもたらす利便性のために、ますます人気となってきている。これらの形態の、非常に濃縮された性質は、低減した輸送費及び環境への影響(例えば二酸化炭素排出量)といった、更なる持続可能性の利点をもたらす。」
摘記1b:「【0003】このような形態の誤飲の可能性を低下させるために苦味物質を使用することは、当該技術分野において既知である。例えば、誤飲を防止するために、単位用量物品をBitrex(登録商標)(安息香酸デナトニウム)でコーティングすることが知られている。苦味剤をフィルム内に組み込むこと、又はフィルム上にスプレー、プリント、若しくは粉化することのいずれかにより、このような物品に苦味剤を添加することもまた、知られている。」
摘記1c:「【0004】苦味剤は、経口摂取を抑止するのに効果的な方法を提供することができるが、新規の代替手段は、刺激剤を使用することである。刺激剤は、幼児による経口摂取の、更により効果的な抑止剤としての可能性を提供する。理論に束縛されるものではないが、刺激剤に対する幼児の生理学的応答は、苦味剤に対する幼児の応答よりも一層著しい場合があると考えられている。したがって、刺激剤は経口摂取の更に強力な抑止剤を提供し得る。」
摘記1d:「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】したがって、種々の洗剤形態において刺激剤を送達する効果的な方法を提供する必要がある。」
摘記1e:「【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、刺激剤を含む洗剤組成物に関する。刺激剤は、経口摂取の抑止剤として機能することを目的としている。刺激剤は、Bitrex(登録商標)(安息香酸デナトニウム)等の苦味剤の代替物として、又はそれと組み合わせることで特に有用である。」
摘記1f:「【0056】幾つかの態様では、フィルムの表面上の刺激剤の濃度は、約10ppb~約10,000ppm、又は好ましくは約50ppb~約200ppm、又はより好ましくは約10ppm~約250ppmである。幾つかの態様では、刺激剤の濃度は、単位用量物品を25℃かつ60%の相対湿度にて1ヶ月間保管した後に測定される。」
摘記1g:「【実施例】
【0133】
以下の非限定的実施例において、別段の定めがある場合を除き、全ての量は組成物の重量%である。
【0134】
実施例1カプサイシンを含むフィルム
サンプルの調製:Sigma Aldrichから入手した天然のカプサイシン(カプサイシン65%とジヒドロカプサイシン35%)を、1%エタノール溶液として希釈した。1%のカプサイシン溶液2mLを、約10cmの作業距離、及び約172kPa(25psi(約1.7バールに相当))の作業圧力にて、エアブラシ(IWATA(登録商標)NEO)を使用して、MonoSolから供給されている水溶性ポリビニルアルコールフィルムの表面にスプレーした(スプレーした表面=11cm×30cm)。このフィルムは、単位用量洗剤パウチの作製に好適である。
【0135】
被験者群:25人の成人被験者に、コーティングしたフィルムの2cm×5cm片を与えた。被験者には、フィルムを舐め、不快味を感知したらすぐに合図を送るように求めた。タイマーは、消費者がフィルムを舐めた時に開始し、消費者が合図を送った時に停止した。この時間は、応答時間として記録した。次いで、被験体に(不快)味の強さを、1~5の規模(1は口当たりがよく、5は我慢できない)で表現するように求めた。試験の強さを3、4、又は5として評価した被験体は「テイスター」としてカウントした。結果を表1にまとめている。」
【0136】【表3】
*比較すると、他の調査は、嫌悪剤で処理していない(例えば、カプサイシンなし)水溶性フィルムをテイスティングした被験体は実質的に、嫌悪味反応を示さない(例えば、20秒以内に不快な反応がない)ことを示している。」
摘記1h:「【0137】
実施例2一区画パウチ
一区画パウチを、表2に示す組成物2.1の液体洗剤で充填する。パウチはMonosolから入手可能なM8779フィルムを使用して作製し、標準的な熱成形技術を使用して形成する。具体的には、76μm厚のフィルムM8779 0.7gを熱成形し、41mm×43mmのサイズの単一区画のパウチにする。パウチは組成物2.1 23.7mL(25.4g)で充填する。
【0138】【表4】
【0139】
実施例3複数区画パウチ
複数区画パウチの例には、表3に表す配合を含むことができる。パウチは、米国特許出願公開第2011/0188784(A1)号に開示されている配合に従い、水溶性フィルムにより作製する。刺激剤は、刺激剤と溶媒との溶液でパウチをスプレーすることにより、実施例3.1の外面に適用する。スプレーしたパウチは、約0.2%の刺激剤を含む。実施例3.1、3.2、及び/又は3.3のパウチ材料又は内容物は、BITREX(登録商標)(安息香酸デナトニウム)等の苦味剤を更に含んでよい。」
【0140】【表5】
* 刺激剤は、刺激剤と溶媒との溶液でパウチをスプレーすることにより、実施例2.1の外面に適用する。スプレーしたパウチは、パウチの重量に対して約0.2重量%の刺激剤を含む。
1 米国特許第7169744号に記載のもののような硫酸モノ-[2-(3,4-ジヒドロ-イソキノリン-2-イル)-1-(2-エチル-ヘキシルオキシメチル)-エチル]エステル
2 PAP=フタロイル-アミノ-ペルオキシカプロン酸、70%活性湿潤ケーキとして
3 NH 1個当たり20個のエトキシレート基を有するポリエチレンイミン(MW=600)。
4 エトキシル化チオフェン、EO(R1+R2)=5
5 RA=アルカリ保存性(NaOHのg/用量)
6 PEI600 EO20、BASFから入手可能
【0141】
実施例4液体洗剤組成物
液体洗剤組成物の実施例は、表4に示す配合を包含することができる。実施例4.1は典型的な強力液体洗剤であり、実施例4.2は典型的な小型液体洗剤である。
【0142】
【表6】
1.-NHあたり20個のエトキシレート基を有するポリエチレンイミン(MW=600)。
2.Stepan,Northfield,Illinois,USAにより供給される、平均脂肪族炭素鎖長C11~C12を有する直鎖アルキルベンゼンスルホネート
3.AE9は、Huntsman,Salt Lake City,Utah,USAにより供給される、平均エトキシル化度が9の、C12~C13アルコールエトキシレートである。
4.好適なキレート剤は例えば、Dow Chemical,Midland,Michigan,USAにより供給されるジエチレンテトラアミンペンタ酢酸(DTPA)、又はSolutia,St Louis,Missouri,USA Bagsvaerd,Denmarkにより供給されるヒドロキシエタンジホスホネート(HEDP)である。
5.Natalase(登録商標)、Mannaway(登録商標)は全て、Novozymes,Bagsvaerd,Denmarkの製品である。
6.プロテアーゼは、Genencor International,Palo Alto,California,USA(例えば、Purafect Prime(登録商標))により、又はNovozymes,Bagsvaerd,Denmark(例えば、Liquanase(登録商標),Coronase(登録商標))により供給されてよい。
10.好適な蛍光増白剤としては例えば、Tinopal(登録商標)AMS、Tinopal(登録商標)CBS-X、スルホン酸化亜鉛フタロシアニン(Ciba Specialty Chemicals,Basel,Switzerland)がある。」
摘記1i:「【0025】
液体洗剤組成物は水を含んでよい。しかし、液体組成物が水溶性フィルムと、例えば単位用量物品内で接触する場合、フィルムの完全性を保ち、パウチへの粘着感を防止するために、水の量を制限するのが通常望ましい。したがって、幾つかの実施形態では、液体洗剤組成物は、液体組成物の重量に対して約50重量%未満の水、若しくは液体組成物の重量に対して約40重量%未満の水、又は、液体組成物の重量に対して約1重量%~約30重量%、若しくは好ましくは約2重量%~約20重量%、若しくは約5重量%~約13重量%の水を含む。」
3.本願発明が解決しようとする課題
本願の発明の詳細な説明の【0005】(摘記1d)には、本願発明の背景技術の説明に続けて、発明が解決しようとする課題として、「種々の洗剤形態において刺激剤を送達する効果的な方法を提供する」と記載されている。
また、上記の種々の洗剤形態について、【0002】(摘記1a)に「粉末、顆粒、液体及びゲル等の多種多様の形態」や「単位用量及び濃縮(又は小型の)洗剤形態」が例示されているが、本件発明においては、液体洗剤を含む「単位用量形態の洗剤組成物」に限定されている。
さらに、「刺激剤を送達する」について、【0003】(摘記1b)の「誤飲を防止するために、単位用量物品をBitrex(登録商標)(安息香酸デナトニウム)でコーティングすることが知られている。…このような物品に苦味剤を添加することもまた、知られている。」との記載、【0004】(摘記1c)の「苦味剤は、経口摂取を抑止するのに効果的な方法を提供することができるが、新規の代替手段は、刺激剤を使用することである。…刺激剤は経口摂取の更に強力な抑止剤を提供し得る。」との記載、および【0012】(摘記1e)の「本開示は、刺激剤を含む洗剤組成物に関する。刺激剤は、経口摂取の抑止剤として機能することを目的としている。」との記載からみて、「経口摂取の抑止剤として機能」し、「誤飲を防止」できる程度まで「刺激剤を送達する」ことを意味していると認められる。
そうすると、本件発明の課題は、「単位用量形態の洗剤組成物において、経口摂取の抑止剤として機能し誤飲を防止できる程度まで、刺激剤を送達する効果的な方法を提供する」ことであると認められる。
4.検討
(1)請求項1に係る発明について
ア.サポート要件についての検討
請求項1に係る発明では、「刺激剤のフィルム表面上の濃度が、10ppm~250ppmであ」ることが特定されているが、発明の詳細な説明に記載の「洗剤組成物」の実施例においては、刺激剤がどの程度フィルム表面に存在するかは測定されていないし、単位用量形態の洗剤組成物において経口摂取の抑止剤として機能し誤飲を防止する課題を解決できたことも具体的には記載されていない。
この点について、摘記1gから、実施例1にはポリビニルアルコールフィルム表面(外面)にカプサイシンが一定量以上存在することにより、不快味が検知されることについては記載されていると認められる。
しかしながら、単位用量形態の液体洗剤として誤飲を防止するためには、食べようとして口に入れてから飲み込むまでの数秒間で、食べることを思いとどまらせ、吐き出すことを決意させるほどの強い不快味(我慢できない不快味)を感じさせることが必要である(単に不快味を感じる者が多いというだけでは不十分である)と認められるところ、実施例1のカプサイシンをコーティングしたフィルムの2cm×5cm片を与えた試験においては、試験片表面上のカプサイシンの濃度が不明であるし、「テイスター」(試験の強さを3、4、5として評価した被験体の合計)の割合が76%である結果のみをもって、単位用量形態の液体洗剤の誤飲を防止できるのも不明であって、誤飲を防止できるといえる技術常識もみあたらない。
また、実施例2には、一区画パウチにカプサイシンなどの刺激剤を含む液体洗剤を充填するものが、実施例3の3.1には、刺激剤と溶媒でスプレーした米国特許出願公開第2011/0188784(A1)号に開示されている配合の水溶性フィルムにより作成される複数区画パウチに液体洗剤を充填するものが、3.2、3.3には、米国特許出願公開第2011/0188784(A1)号に開示されている配合の水溶性フィルムにより作成される複数区画パウチに、カプサイシンなどの刺激剤を含む液体洗剤を充填するものが、実施例4には、カプサイシンなどの刺激剤を含むパウチ化されていない液体洗剤がそれぞれ記載されているが(摘記1h)、これらはいずれも、単にカプサイシン等の刺激剤を含む配合例を例示するものにとどまり、フィルム表面上の刺激剤の濃度は記載されていないし、不快味評価の結果も記載されていない。
したがって、実施例はいずれも、刺激剤のフィルム表面上の濃度を「10ppm~250ppm」とすることによって「経口摂取の抑止剤として機能し誤飲を防止できる」ことを示すものではない。
なお、発明の詳細な説明の、【0056】(摘記1f)には「幾つかの態様では、フィルムの表面上の刺激剤の濃度は、約10ppb~約10,000ppm、又は好ましくは約50ppb~約200ppm、又はより好ましくは約10ppm~約250ppmである。幾つかの態様では、刺激剤の濃度は、単位用量物品を25℃かつ60%の相対湿度にて1ヶ月間保管した後に測定される。」と記載され、フィルム表面上の刺激剤の濃度が「約10ppm~約250ppm」であることが好ましいことについては記載されていると認められる。
しかしながら、上記のとおり、実施例1は、フィルム表面上のカプサイシンの濃度が10ppm~250ppmの範囲で「経口摂取の抑止剤として機能し誤飲を防止できる」ことを示すものではないし、その余の実施例は、いずれも、単にカプサイシン等の刺激剤を含む配合例を例示するものにとどまり、そもそも、不快味評価の結果などが記載されていない。
また、発明の詳細な説明には、その他にフィルム表面上のカプサイシノイドの濃度を「10ppm~250ppm」とすることにより、実施例で具体的に確認するまでもなく、「経口摂取の抑止剤として機能し誤飲を防止できる」という効果が奏されることを裏付ける作用機序の説明や技術常識の存在を示す記載は存在しない。
したがって、発明の詳細の説明のこれらの記載をもとに、本願発明の課題を解決できるとは、当業者といえども認識できないというほかない。
次に、刺激剤が液体組成物から水溶性フィルムに移動するという本願発明の課題を解決するための手段について検討するに、発明の詳細な説明では、単位用量物品製造時に刺激剤が水溶性フィルムの外面に存在しない実施例2、実施例3.2、実施例3.3において、保存後に刺激剤が前記水溶性フィルムの外面に存在することが明記されていない(摘記1g~1h)。
また、これらの実施例において前記水溶性フィルムの外面に存在する刺激剤の量を算出することができる技術常識、及び、当該算出した刺激剤の存在量に基づいて経口摂取の抑止剤として機能して誤飲を防止できるか否かを判定する技術常識なども見当たらない。
したがって、これらの実施例に関して技術常識を参酌しても、刺激剤が水溶性フィルムの外面に移動して存在し、経口摂取の抑止剤として機能して誤飲を防止できることを実施例で具体的に認識できない。また、実施例で具体的に認識することができなくても、刺激剤が液体組成物から水溶性フィルムに移動するという本願発明の課題を解決するための手段によって、「経口摂取の抑止剤として機能し誤飲を防止できる」といえる技術常識もない。
そうすると、明細書の発明の詳細な説明には、「液体洗剤」が「刺激剤および可塑化溶媒」を含み「液体洗剤を封入する水溶性フィルム」が「刺激剤および可塑剤を含」むことにより、「経口摂取の抑止剤として機能し誤飲を防止できる程度」の量の刺激剤が水溶性フィルムの外面に移動するといった発明の課題を解決手段が具体的に記載されていると認めることはできないし、本願出願時の技術常識を参酌しても、当業者が当該手段を認識することはできない。
してみれば、特許請求の範囲に記載の発明が、発明の詳細な説明の記載から、当業者において、本件発明の課題が解決できると認識できる範囲のものであるとは認められない。
イ.審判請求人の主張について
令和 1年12年17日:拒絶理由通知書の<< 備考 >>の「2 上記サポート要件の拒絶理由への対応について」において、「例えば、水溶性フィルムの外面の刺激剤の量を規定した上で本願発明の課題が解決できると主張するならば、当該量とすれば本願発明の課題が解決できることについて、意見書において十分に説明されたい。
また、本願出願時の技術常識の存在を主張するならば、当該技術常識を裏付ける文献を提示されたい。」と指摘をしたところ、本件補正により、水溶性フィルムの外面の刺激剤の量を規定10ppm~250ppmに規定するとともに、令和2年 3月16日付の意見書で「特開2012-43086号公報には、苦味剤の一種の安息香酸デナトニウムは、苦味検知閾値10ppbであること、苦味剤に準ずるものとして、カプサイシンが挙げられている(特開2012-43086号公報 段落[0027][0028]。)ことから明らかように、経口摂取の抑止剤としては、ごく微量の濃度で機能することは、当該技術常識」である旨主張する。
しかしながら、上記公報の【0028】「各種の苦味剤の中でも、安息香酸デナトニウムは、苦味検知閾値10ppbという最も苦味の強い物質」及び【0027】「苦味剤に準ずるものとして、カプサイシン・・・等の辛みを感じさせるもの・・・も同様の催吐効果を得られる」などの記載から理解できるのは、苦味剤として最も苦味の強い物質である安息香酸デナトニウムの苦味検知閾値が10ppbであること、カプサイシンが苦味剤に準ずるものとして同様の催吐効果があることのみであり、カプサイシンの辛味の検知閾値、あるいは「経口摂取の抑止剤として機能し誤飲を防止できる」ようなフィルム表面上のカプサイシノイドの最低限度の濃度(閾値)についての何らの技術常識を開示するものとも認められない。
また、他に、当技術分野において、フィルム表面上のカプサイシノイドの濃度が「約10ppm~約250ppm」であることによって、「経口摂取の抑止剤として機能し誤飲を防止できる」ことについての技術常識が存在することを裏付ける証拠を提示していない。
ウ.まとめ
以上検討のとおり、特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえないものであるので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(2)請求項2について
ア.サポート要件についての検討
特許請求の範囲の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の洗剤組成物を「前記液体洗剤が、50%未満の水を含む」ものに限定したものである。
しかしながら、実施例2~4には水を50%未満含む液体洗剤が記載されている(摘記1h)ものの、これらはいずれも、単に水を50%未満含む配合例を例示するものにとどまり、不快味評価の結果などは記載されていないため、上記(1)同様、これらの結果を基に本願発明の課題を解決できるとは、当業者といえども認識できないというほかない。
また、その余の点は、第4 4.(1)ア.で検討したとおりである。
イ.審判請求人の主張について
審判請求人の主張については、第4 4.(1)イ.で検討したとおりである。
ウ.まとめ
以上検討のとおり、特許請求の範囲の請求項2の記載は、特許を受けようとする発明が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえないものであるので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
5 小括
上記1~4によれば、本願の特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、この出願の特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていないので、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-009725