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特許拒絶査定不服審判

2018-003211

半導体基板を通過する中赤外レーザ光の透過による熱処理

審判番号
2018-003211
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-552883
請求日
2018年03月06日
審決日
2019年07月05日
公報発行日
2020年01月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】アイピージー フォトニクス コーポレーション
  • 【請求人代理人】村山 靖彦
  • 【請求人代理人】実広 信哉
  • 【請求人代理人】阿部 達彦
審判長/審判官
  • 審判長 加藤 浩一
  • 審判官 恩田 春香
  • 審判官 小田 浩
分類
P18 .121-WZ (H01L) / P18 .536-WZ (H01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015-552883「半導体基板を通過する中赤外レーザ光の透過による熱処理」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月17日国際公開、WO2014/110556、平成28年 5月12日国内公表、特表2016-513359〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 1 手続の経緯 本願は、2014年1月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年1月14日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成29年8月9日付けで拒絶理由が通知され、それに対して、同年10月25日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成30年3月6日に拒絶査定不服審判が請求された。その後当審において、平成31年2月6日付けで拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、請求人からは何の応答もない。 2 当審の拒絶理由 当審において平成31年2月6日付けで通知した拒絶の理由の概要は、 「●理由1(進歩性) (1)本件出願の請求項1、4~18に係る発明は、その優先日前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、「国際公開第2012/006736号」(以下「引用文献1」という。)に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (2)本件出願の請求項1~20に係る発明は、その優先日前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、「特開2007-136554号公報」(以下「引用文献2」という。)、「特開2007-208124号公報」(以下「引用文献3」という。)、「特開2007-214271号公報」(以下「引用文献4」という。)、または「特開昭55-165640号公報」(以下「引用文献5」という。)に記載された発明、並びに、引用文献1~5、下記の周知例1~8に記載された事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というもの、 引用文献等一覧 1.周知例1:国際公開第2012/150935号(本願明細書に開示の【特許文献1】、ファミリ文献:特表2014-517510号公報) 2.周知例2:特開2010-105046号公報(原査定で引用された引用文献2) 3.周知例3:特開2000-340867号公報 4.周知例4:特開2010-82645号公報 5.周知例5:特開2005-166728号公報 6.周知例6:国際公開第2009/069509号 7.周知例7:特開2008-225380号公報 8.周知例8:特開2012-4344号公報 「●理由2(実施可能要件) 本願の発明の詳細な説明は、当業者が、請求項16に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に説明されておらず、本件出願は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。」というものである。 3 本願発明 本願の請求項1~20に係る発明は、平成29年10月25日に提出された手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1~20に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載されている事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 中赤外レーザ透過による熱処理方法であって、 1300から5000nmのスペクトル域において希土類元素がドープされたファイバーレーザからレーザ光を生成する段階と、 半導体基板を通過してレーザ光を向ける段階であって、半導体基板を通過して透過されるレーザ光が半導体基板の背面領域においてターゲット材料に変化を与えることができる透過されたパワーを有するように、1300から5000nmのスペクトル域において半導体基板がレーザ光に対して十分に透過性である段階と、を含む方法。」 4 引用例の記載と引用発明 (1)引用文献1 ア 引用文献1の記載 引用文献1には、FIG. 1~18とともに、以下の事項が記載されている(下線は当審で付加した。以下同じ。)。 (ア)「The substrate may be a glass or a semiconductor and may be selected from the group consisting of transparent ceramics, polymers, transparent conductors, wide bandgap glasses, crystals, crystal quartz, diamond, and sapphire. The substrate may comprise two or more layers, and wherein a location of a beam focus of the focused laser beam is selected to generate filaments within at least one of the two or more layers. The multilayer substrate may comprise multi-layer flat panel display glass, such as a liquid crystal display (LCD), flat panel display (FPD), and organic light emitting display (OLED). The substrate may also be selected from the group consisting of autoglass, tubing, windows, biochips, optical sensors, planar lightwave circuits, optical fibers, drinking glass ware, art glass, silicon, lll-V semiconductors, microelectronic chips, memory chips, sensor chips, light emitting diodes (LED), laser diodes (LD), and vertical cavity surface emitting laser (VCSEL). 」(6ページ14行~7ページ4行) (「【0013】 基板は、ガラス又は半導体であってもよく、透明セラミックス、ポリマー、透明導体、広バンドギャップガラス、水晶、結晶石英、ダイヤモンド、及びサファイアから成る群から選択されてもよい。 【0014】 基板は、二つ以上の層を備えてもよく、その際、収束レーザービームのビーム焦点の場所は、二つ以上の層の少なくとも一つの中にフィラメントを生成するように選択される。多層基板は、液晶ディスプレイ(LCD)、フラットパネルディスプレイ(FPD)、及び有機発光ディスプレイ(OLED)など、多層フラットパネルディスプレイガラスを含んでもよい。基板はまた、自動車ガラス、管材料、窓、バイオチップ、光センサ、平面光波回路、光ファイバー、飲用ガラス製品、工芸ガラス、シリコン、III-V半導体、超小型電子チップ、メモリチップ、センサチップ、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)、及び垂直共振器表面発光レーザー(VCSEL)から成る群から選択されてもよい。」)(審決注:翻訳文は対応ファミリ文献「特表2013-536081号公報」より。以下同じ。) (イ)「Figure 1 presents a schematic arrangement shown in (a) front and (b) side views for forming laser filaments in a transparent substrate. Short duration laser pulses 10 are focused with objective lens 12 inside transparent substrate 14. At appropriate laser pulse energy, the laser pulse, or sequence of pulses, or burst- train of pulses, a laser filament 18 is generated within the substrate, producing internal microstructural modification with a shape defined by the laser filament volume. By moving the sample relative to the laser beam during pulsed laser exposure, a continuous trace of filament tracks 20 are permanently inscribed into the glass volume as defined by the curvilinear or straight path followed by the laser in the sample. 」(11ページ23行~12ページ9行) (「【0025】 図1は、透明基板にレーザーフィラメントを形成する、(a)正面図及び(b)側面図で示される概略配置を示す。持続時間の短いレーザーパルス10は、対物レンズ12によって透明基板14内部で収束される。適切なレーザーパルスエネルギー、レーザーパルス、又はパルスのシーケンス、或いはパルスのバースト列では、レーザーフィラメント18が基板内に生成されて、レーザーフィラメントの体積によって規定される形状を有する内部微小構造の変性が作り出される。パルスレーザー露光中にレーザービームに対してサンプルを移動させることによって、サンプル中のレーザーが追随する曲線又は直線経路によって規定されるような、フィラメントトラック20の連続的なトレースがガラス体積内に恒久的に刻み付けられる。」) (ウ)「In contrast, laser filamentation offers a new direction for internal laser processing of transparent materials that can avoid ablation or surface damage, dramatically reduce kerf width, avoid crack generation, and speed processing times for such scribing applications. Further, high repetition rate lasers defines a new direction to enhance the formation of laser beam filaments with heat accumulation and other transient responses of the material on time scales faster than thermal diffusion out of the focal volume (typically <10 microseconds). 」(14ページ3~9行) (「【0030】 対照的に、レーザーフィラメント形成は、かかるスクライビング用途のアブレーション又は表面損傷を回避し、切溝幅を劇的に低減させ、割れの生成を回避し、且つ加工時間を速めることができる、透明材料の内部レーザー加工の新しい方向性を提示する。更に、高繰返し数レーザーは、焦点体積外への熱拡散(一般的に、10マイクロ秒未満)よりも速い時間スケールにおける、材料の熱蓄積及び他の過渡応答を用いたレーザービームフィラメントの形成を向上させる新しい方向性を規定する。」) (エ)「The application of high repetition rate bursts of short-pulse lasers offers the advantage of heat accumulation and other transient effects such that thermal transport and other related mechanisms are not fully relaxed prior to the arrival of subsequent laser pulses [US 6,552,301 B2 Burst-UF laser Machining]. In this way, heat accumulation, for example, can present a thin heated sheath of ductile glass to subsequent laser pulses that prevents the seeding of microcracks while also retaining the advantages (i.e. nonlinear absorption, reduced collateral damage) of short pulse ablative machining in an otherwise brittle material. In all the above laser ablation methods, the cutting, scribing, or dicing of transparent materials will generate ablation debris contamination and consume a kerf width to accommodate the removed material, while also generating collateral laser damage. Therefore, a non-ablative method of laser processing would be desirable」(15ページ23行~16ページ12行) (「【0034】 短パルスレーザーの高繰返し数のバーストを適用することで、熱蓄積及び他の過渡効果という利点が提供されるので、熱輸送及び他の関連するメカニズムは、後続のレーザーパルスが到達する前に完全には緩和されない(米国特許第6,552,301号B2 Burst-UF laser Machining)。このように、熱蓄積は、例えば、微小割れのシーディングを防ぐとともに、別の方法では脆性である材料の短パルスアブレーティブ機械加工の利点(即ち、非線形吸収、付随的な損傷の低減)も保持する、後続のレーザーパルスに対して延性ガラスの薄い加熱シースを示すことができる。上述の全てのレーザーアブレーション方法では、透明材料の切断、スクライビング、又はダイシングは、アブレーション屑による汚染を発生させ、除去された材料を受け入れる切溝幅を消費するとともに付随的なレーザー損傷も発生させることになる。従って、レーザー加工の非アブレーティブ方法が望ましいこととなる。」) (オ)「As shown below, the laser filamentation method can be tuned by various methods to generate multi-filament tracks broken with non-filamenting zones through repeated cycles of Kerr-lens focusing and plasma defocusing. Such multi-level tracks can be formed in a thick transparent sample, across several layers of glasses separated by transparent gas or other transparent materials, or in multiple layers of different transparent materials. By controlling the laser exposure to only form filaments in the solid transparent layers, one can avoid ablation and debris generation on each of the surfaces in the single or multi-layer plates. This offers significant advantages in manufacturing, for example, where thick glasses or delicate multilayer transparent plates must be cleaved with smooth and crack free facets. The filamentation method applies to a wide range of materials that are transparent to the incident laser beam, including glasses, crystals, selected ceramics, polymers, liquid-encapsulated devices, multi-layer materials or devices, and assemblies of composite materials. In the present disclosure, it is further to be understood that the spectral range of the incident laser beam is not limited to the visible spectrum, but represents any material that is transparent to a laser wavelength also in the vacuum ultraviolet, ultraviolet, visible, near- infrared, or infrared spectra. For example, silicon is transparent to 1500 nm light but opaque to visible light. Thus, laser filaments may be formed in silicon with short pulse laser light generated at this 1500 nm wavelength either directly (i.e. Erbium-doped glass lasers) or by nonlinear mixing (i.e. optical parametric amplification) in crystals or other nonlinear medium.」(17ページ14行~18ページ13行) (「【0036】 後述するように、レーザーフィラメント形成方法は、様々な方法によって、カーレンズ収束及びプラズマ発散の繰返しサイクルを通してフィラメント非形成域を備えた多重フィラメントトラックを生成するように調整することができる。かかる多重レベルトラックは、厚い透明なサンプルに、透明ガス又は他の透明材料によって分離された複数層のガラスにわたって、或いは異なる透明材料の多層に形成することができる。固体透明層のみにフィラメントを形成するようにレーザー露光を制御することによって、単層又は多層のプレートの表面それぞれにおけるアブレーション及び屑の生成を回避することができる。これによって、例えば、厚いガラス又は繊細な多層透明プレートを平滑で割れがないファセットで劈開しなければならない場合の製造に著しい利点が提供される。 【0037】 フィラメント形成方法は、ガラス、水晶、選択されたセラミックス、ポリマー、液体封入デバイス、多層材料又はデバイス、及び複合材料のアセンブリを含む、入射レーザービームに対して透明な広範囲の材料に適用される。本開示では、入射レーザービームのスペクトル範囲は可視スペクトルに限定されず、真空紫外、紫外、可視、近赤外、又は赤外スペクトルのレーザー波長に対しても透明である任意の材料を表すことを更に理解されたい。例えば、シリコンは1500nm光に対して透明であるが、可視光に対しては不透明である。従って、レーザーフィラメントは、この1500nm波長で発生する短パルスレーザー光を用いてシリコンに直接(即ち、エルビウムドープガラスレーザー)、或いは非線形混合(即ち、光パラメトリック増幅)によって結晶又は他の非線形媒体に形成されてもよい。」) (カ)「Figure 7 presents a schematic arrangement for two different focusing conditions for laser filamentation writing that confines the array 38 of modification tracks 40 solely in a top transparent substrate 42 (Figure 7(a)) as a first laser exposure step, and followed sequentially by filamentation writing that solely confines the array 44 of modification tracks 46 inside a lower transparent plate 48 (Figure 7(b)) in a second laser pass. The laser exposure is tuned to avoid ablation or other laser damage and generation of ablation debris on any of the four surfaces during each laser pass. During scribing of the top plate, no damage occurs in the bottom layer, and visa versa. One advantage of this one-sided processing is that the assembly of transparent plates does not need to be flipped over to access the second plate 48 due to the transparency of the first plate to the converging laser beam 50. For example, by position the 12 lens closer to the top glass plate 42 in the second pass (Figure 7b), the filamentation is not initiated in the first plate and near full laser energy enters the second plate where filamentation is then initiated. A second advantage of this approach is that the two plates can be separated along similar lines during the same scribing step which is attractive particularly for assembled transparent plates in flat panel display. This method is extensible to multiple transparent plates.」(21ページ17行~22ページ12行) (「【0046】 図7は、第一のレーザー露光ステップとして、変性トラック40の配列38を上側透明基板42のみに制限するレーザーフィラメント形成書込み(図7(a))と、それに続く、第二のレーザーパスにおける変性トラック46の配列44を下側透明基板48内部のみに制限するフィラメント形成書込み(図7(b))との二つの異なる収束条件に対する概略配置を示す。レーザー露光は、各レーザーパスの間、四つの表面のいずれにおいてもアブレーション又は他のレーザー損傷及びアブレーション屑の生成を回避するように調整される。上側プレートのスクライビング中、下層には損傷は起こらず、その逆も起こらない。 【0047】 この片面加工の一つの利点は、第一のプレートが集中するレーザービーム50に対して透明であるので、第二のプレート48にアクセスするために透明プレートのアセンブリを裏返す必要がないことである。例えば、第二のパスにおいてレンズ12を上側ガラスプレート42に近付けることによって(図7b)、フィラメント形成は第一のプレート内では始まらず、完全に近いレーザーエネルギーが第二のプレートに入り、そこで次にフィラメント形成が始まる。この方策の第二の利点は、同じスクライビングステップ中に類似したラインに沿って二つのプレートを分離できることであり、これはフラットパネルディスプレイの組み立てられた透明プレートの場合に特に魅力的である。この方法は複数の透明プレートに拡張可能である。」) (キ)「EXAMPLES To demonstrate selected embodiments, a glass plate was laser processed using a pulsed laser system with an effective wavelength of about 800 nm, producing 100 fs pulses at a repetition rate of 38 MHz. The laser wavelength was selected to be within the infrared spectral region, where the glass plate is transparent. Focusing optics were selected to provide a beam focus of approximately 10 μm. Initially, the laser system was configured to apply a pulse train of 8 pulses, where the burst of pulses forming the pulse train occurred at a repetition rate of 500 Hz. Various configurations of aforementioned embodiments were employed, as described further below. 」(26ページ10~19行) (【実施例】 【0057】 選択された実施形態を実証するため、38MHzの繰返し数で100fsのパルスを生成する有効波長約800nmのパルスレーザー系を使用して、ガラスプレートをレーザー加工した。レーザー波長は、ガラスプレートが透明である赤外線スペクトル領域内にあるように選択した。収束光学系は、およそ10μmのビーム焦点を提供するように選択した。最初に、8パルスのパルス列を適用し、パルスのバーストが繰返し数500Hzで生じるパルス列を形成するようにレーザー系を構成した。更に後述するように、上述の実施形態の様々な構成を用いた。」) (ク)「Referring again to Figure 12, since the array pitch is 10 μm and the observed filament diameter is approximately 3 microns, only a narrow region is heat affected compared with theoretical laser spot size of 10 μm. In other laser material processing methods, obtaining a small heat affected zone is a challenge. One specific advantage of the present method, as evidenced by the results shown in Figure 12, is that the width of the heat affected zone on the top and bottom surfaces look the approximately the same. This is an important characteristic of the present method, since the filamentation properties remain substantially confined during formation, which is desirable for accurately cleaving a plate. …(略)… The width of the filamentation modification zone was observed to be about 10 μm when the microscope was focused internally within the glass. This width exceeds the 3-μm modification diameter seen in Figure 12 for isolated laser filaments and is ascribed to differing zones of narrow high contrast filament tracks (visible in Figure 12) that have been shrouded in a lower contrast modification zone (not visible in Figure 12). Without intending to be limited by theory, this low contrast zone that is ascribed to an accumulative modification process (i.e. heat affected zone) is induced by the multiple pulses in the burst. The filamentation modification zone maintains a near constant 10 μm width through its full depth range of hundred's of microns in the present glass sample that clearly demonstrates the self-focusing phenomenon. Thus, the filamentation modification presents a 10 μm 'internal' kerf width or heat affected zone for such processing. However, the absence of damage or physical changes at the surface indicate that a much smaller or near-zero kerf width is practically available at the surface where one typically only finds other components mounted (paint, electronics, electrodes, packaging, electro-optics, MEMS, sensors, actuators, microfluidics, etc.). Hence, a near-zero kerf width at the surface of transparent substrates or wafers is a significant processing advantage to avoid damage or modification to such components during laser processing. This is one of the important properties of the present disclosure for laser filamentation scribing as the physical modification may be confined inside the bulk transparent medium and away from sensitive components or coatings. 」 (28ページ19行~30ページ12行) (「【0063】 再び図12を参照すると、配列ピッチは10μmであり、観察されたフィラメント径はおよそ3ミクロンなので、理論上のレーザースポット径10μmと比べて狭い領域のみが熱に影響される。他のレーザー材料加工方法では、小さな熱影響部を得ることは困難である。本発明の方法の一つの特定の利点は、図12に示される結果によって証明されるように、上面及び下面の熱影響部の幅がほぼ同じに見えることである。これは本発明の方法の重要な特性であるが、それは、フィラメント形成の特性が形成の間実質的に制限され続け、そのことがプレートを正確に劈開するのに望ましいためである。 …(略)… 【0065】 フィラメント形成変性域の幅は、顕微鏡の焦点をガラスの内部に当てたとき、約10μmであることが観察された。この幅は、隔離されたレーザーフィラメントの場合、図12に見られる3μmの変性直径を上回り、コントラストがより低い変性域(図12では見えない)に覆われている狭い高コントラストのフィラメントトラック(図12に見える)の異なる領域によるものとされる。理論によって限定されることを意図しないが、蓄積的な変性プロセスによるものとされるこの低コントラスト域(即ち、熱影響部)は、バーストの複数のパルスによって引き起こされる。 【0066】 フィラメント形成変性域は、本発明のガラスサンプルにおける数百ミクロンの深さ範囲全体にわたって、近見コントラスト10μmの幅を維持し、そのことが自己収束現象を明白に実証している。従って、フィラメント形成変性は、かかる加工に関して10μmの「内部」切溝幅又は熱影響部を示す。しかし、表面に損傷又は物理的変化がないことは、一般的に実装された他の構成要素(塗料、電子部品、電極、パッケージ、電気光学部品、MEMS、センサ、アクチュエータ、微小流体など)のみが見られる表面において、はるかに小さい又はほぼゼロの切溝幅が事実上利用可能であることを示している。従って、透明基板又はウェハの表面におけるほぼゼロの切溝幅は、レーザー加工中のかかる構成要素に対する損傷又は変性を回避するための加工上の重要な利点である。これは、レーザーフィラメント化スクライビングに関して本開示の重要な性質の一つであるが、それは、物理的な変性が、高感度の構成要素又はコーティングから離れてバルク透明媒体の内部に制限されることがあるためである。」) (ケ)「The present method of low and high (burst) repetition rate filamentation was found to be effective in glass for pulse durations tested in the range of about 30 fs to 10 ps. However, those skilled in the art will appreciate that the preferably pulse duration range for other materials may be different. Those skilled in the art may determine a suitable pulse duration for other materials by varying the pulse duration and examining the characteristics of the filaments produced.」(36ページ11~16行) (「【0081】 低繰返し数及び高(バースト)繰返し数のフィラメント形成の本発明による方法は、約30fs~10psの範囲で試験したパルス持続時間に関して、ガラスに有効であることが見出された。しかし、当業者であれば、他の材料に好ましいパルス持続時間範囲は異なってもよいことを認識するであろう。当業者であれば、パルス持続時間を変動させ、作成されたフィラメントの特性を検査することによって、他の材料に適したパルス持続時間を判断してもよい。」) (コ)「The filamentation modification of transparent media enables rapid and low-damage singulation, dicing, scribing, cleaving, cutting, and facet treatment of transparent materials that are typically in the form of a flat or curved plate, and thus serve in numerous manufacturing applications. The method generally applies to any transparent medium in which a filament may form. For glass materials, this includes dicing or cleaving of liquid crystal display (LCD), flat panel display (FPD), organic display (OLED), glass plates, multilayer thin glass plates, autoglass, tubing, windows, biochips, optical sensors, planar lightwave circuits, optical fibers, drinking glass ware, and art work. For crystals such as silicon, lll-V, and other semiconductor materials, particularly, those in thin wafer form, applications include singulation of microelectronic chips, memory chips, sensor chips, light emitting diodes (LED), laser diodes (LD), vertical cavity surface emitting laser (VCSEL) and other optoelectronic devices. This filament process will also apply to dicing, cutting, drilling or scribing of transparent ceramics, polymers, transparent conductors (i.e. ITO), wide bandgap glasses and crystals (such as crystal quartz, diamond, sapphire). The applications also extend to all composite materials and assemblies were at least one material component is transparent to the laser wavelength to facilitate such filamentation processing. Examples include silica on silicon, silicon on glass, metal-coated glass panel display, printed circuit boards, microelectronic chips, optical circuits, multi-layer FPD or LCD, biochips, sensors, actuators, MEMs, micro Total Analysis Systems (μTAS), and multi-layered polymer packaging.」(37ページ7行~38ページ5行) (「【0084】 透明媒体のフィラメント形成変性によって、一般的には平坦な又は湾曲したプレートの形態である透明材料の、迅速で損傷の少ない個片化、ダイシング、スクライビング、劈開、切断、及びファセット処理が可能になり、従って多数の製造用途に役立つ。方法は、一般に、フィラメントが生じてもよいあらゆる透明媒体に適用される。ガラス材料の場合、これは、液晶ディスプレイ(LCD)、フラットパネルディスプレイ(FPD)、有機ディスプレイ(OLED)、ガラスプレート、多層薄型ガラスプレート、自動車ガラス、管材料、窓、バイオチップ、光センサ、平面光波回路、光ファイバー、飲用ガラス製品、及び工芸品のダイシング又は劈開を含む。シリコン、III-V、及び他の半導体材料などの結晶、特に薄型ウェハ状のものの場合、用途は、超小型電子チップ、メモリチップ、センサチップ、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)、垂直共振器表面発光レーザー(VCSEL)、及び他の光電子デバイスの個片化を含む。このフィラメントプロセスは、透明セラミックス、ポリマー、透明導体(即ち、ITO)、広バンドギャップガラス及び水晶(石英、ダイヤモンド、サファイアなど)のダイシング、切断、穿孔、又はスクライビングにも適用されるであろう。用途は、かかるフィラメント形成加工が容易になるように少なくとも一つの材料成分がレーザー波長に対して透明である、全ての複合材料及びアセンブリにまで及ぶ。例としては、シリカオンシリコン、シリコンオンガラス、金属コートガラスパネルディスプレイ、プリント回路基板、超小型電子チップ、光回路、多層FPD又はLCD、バイオチップ、センサ、アクチュエータ、MEM、微小総合分析システム(μTAS)、及び多層ポリマーパッケージングが挙げられる。」) (サ)「THEREFORE WHAT IS CLAIMED IS: A method of preparing a substrate for cleavage, the method comprising the steps of: irradiating the substrate with one or more pulses of a focused laser beam, wherein the substrate is transparent to the focused laser beam, and wherein the one or more of pulses have an energy and pulse duration selected to produce a filament within the substrate; translating the substrate relative to the focused laser beam to irradiate the substrate and produce an additional filament at one or more additional locations; wherein the filaments form an array defining an internally scribed path for cleaving the substrate. …(略)… 11. The method according to any one of claims 1 to 9 wherein the substrate includes a semiconductor. …(略)… 13. The method according to any one of claims 1 to 12 wherein the substrate includes two or more layers, and wherein a location of a beam focus of the focused laser beam is selected to generate filaments within at least one of the two or more layers. …(略)… 16. The method according to claim 13 wherein the substrate is selected from the group consisting of auto glass, tubing, windows, biochips, optical sensors, planar lightwave circuits, optical fibers, drinking glass ware, art glass, silicon, lll-V semiconductors, microelectronic chips, memory chips, sensor chips, light emitting diodes (LED), laser diodes (LD), and vertical cavity surface emitting laser (VCSEL). 」(39ページ1行~42ページ6行) (「【請求項1】 基板内にフィラメントを作り出すように選択されたエネルギー及びパルス持続時間を有する、収束レーザービームの一つ又は複数のパルスを、前記収束レーザービームに対して透明な前記基板に照射するステップと、 一つ又は複数の更なる場所で前記基板を照射し、追加のフィラメントを作り出すため、前記収束レーザービームに対して前記基板を並進させるステップと、を含み、 前記フィラメントが、前記基板を劈開するための内部でスクライブされた経路を規定する配列を形成する、劈開向けに基板を準備する方法。 …(略)… 【請求項11】 前記基板が半導体を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。 …(略)… 【請求項13】 前記基板が二つ以上の層を含み、前記二つ以上の層の少なくとも一つの中にフィラメントを生成するように、前記収束レーザービームのビーム焦点の場所が選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。 …(略)… 【請求項16】 前記基板が、自動車ガラス、管材料、窓、バイオチップ、光センサ、平面光波回路、光ファイバー、飲用ガラス製品、工芸ガラス、シリコン、III-V半導体、超小型電子チップ、メモリチップ、センサチップ、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)、及び垂直共振器表面発光レーザー(VCSEL)から成る群から選択される、請求項13に記載の方法。」) (シ)Figure 7(a)、Figure 7(b)は、以下のとおりである。 イ 引用発明1 (ア)上記ア(サ)に摘記の引用文献1の請求項13及びFigure 7(b)から、下側透明基板48は上側透明基板42の背面に設けられていることが見てとれる。 (イ)上記ア(カ)に摘記の引用文献1の記載及びFigure 7(a)、Figure 7(b)から、第一のプレートは上側透明基板42であり、第二のプレートは下側透明基板48であるといえる。 (ウ)上記ア(カ)に摘記の引用文献1には、Figure 7(a)、(b)に示された収束配置に関し、上記ア(サ)の請求項1、13、16の記載も参照すると、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「基板内にフィラメントを作り出すように選択されたエネルギー及びパルス持続時間を有する、収束レーザービームの一つ又は複数のパルスを、前記収束レーザービームに対して透明な前記基板に照射するステップと、一つ又は複数の更なる場所で前記基板を照射し、追加のフィラメントを作り出すため、前記収束レーザービームに対して前記基板を並進させるステップと、を含み、 前記フィラメントが、前記基板を劈開するための内部でスクライブされた経路を規定する配列を形成する、劈開向けに基板を準備する方法であって、 前記基板が二つ以上の層を含み、前記二つ以上の層の少なくとも一つの中にフィラメントを生成するように、前記収束レーザービームのビーム焦点の場所が選択され、 前記基板が、シリコン、III-V半導体などから成る群から選択され、 第一のレーザー露光ステップとして、変性トラック40の配列38を上側透明基板42のみに制限するレーザーフィラメント形成書込みをするステップと、 それに続く、第二のレーザーパスにおける変性トラック46の配列44を下側透明基板48内部のみに制限するフィラメント形成書込みをするステップとを含み、 下側透明基板48は上側透明基板42の背面に設けられており、 第一のプレートである上側透明基板42は前記第二のレーザーパスにおけるレーザビーム50に対して透明であり、完全に近いレーザーエネルギーが第二のプレートである下側透明基板48に入り、そこで次にフィラメントの形成が始まる、劈開向けに基板を準備する方法。」 (2)引用文献2~引用文献5 ア 引用文献2の記載 「【請求項1】 間隙が設けられるように貼り合わされた複数の基板を有する加工対象物において、前記基板のうち一の基板の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射することにより当該一の基板の内部に改質領域を形成すると共に、前記基板のうち他の基板の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射することにより当該他の基板の内部に改質領域を形成し、これらの改質領域によって、前記加工対象物の切断予定ラインに沿って前記加工対象物のレーザ光入射面から所定距離内側に切断起点領域を形成する工程と、 前記加工対象物に対して応力を印加することにより前記切断起点領域を切断の起点として前記切断予定ラインに沿って前記加工対象物を切断し、間隙が設けられるように貼り合わされた複数の基板を有する機能素子を複数得る工程と、を備え、 前記基板のうち少なくとも1つは、シリコン基板であることを特徴とするレーザ加工方法。 【請求項2】 前記他の基板の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射することにより当該他の基板の内部に改質領域を形成する際には、前記一の基板側からレーザ光を照射することを特徴とする請求項1記載のレーザ加工方法。」 「【0040】 レーザ光源101はパルスレーザ光を発生するNd:YAGレーザである。レーザ光源101に用いることができるレーザとして、この他、Nd:YVO4レーザ、Nd:YLFレーザやチタンサファイアレーザがある。本実施形態では、加工対象物1の加工にパルスレーザ光を用いているが、多光子吸収を起こさせることができるなら連続波レーザ光でもよい。」 「【0064】 [実施例5] 図20(a)~図21(b)は、実施例5に係る加工対象物1を示す図である。図20(a)は、実施例5に係る加工対象物1において基板15の表面近傍と積層部17の表面近傍とに改質領域7を形成した場合を示す図であり、図20(b)は、実施例5に係る加工対象物1において基板15の裏面近傍と積層部17の裏面近傍とに改質領域7を形成した場合を示す図である。また、図21(a)は、実施例5に係る加工対象物1において基板15の表面近傍と積層部17の裏面近傍とに改質領域7を形成した場合を示す図であり、図21(b)は、実施例5に係る加工対象物1において基板15の裏面近傍と積層部17の表面近傍とに改質領域7を形成した場合を示す図である。 【0065】 図20(a)~図21(b)に示す加工対象物1は反射型の液晶表示装置用のものである。基板15は、共通電極が形成されたガラス基板(厚さ1.8mm、外径8インチ)であり、積層部17は、TFTが形成されたSi基板(厚さ500μm、外径8インチ)である。基板15と積層部17とは、液晶が入る間隙を設けて接着剤25により互いに貼り付けられている。 【0066】 図20(a)及び図20(b)の場合は、加工対象物1の裏面21側からレーザ光を照射して、積層部17の内部に改質領域7を形成し、その後、加工対象物1の裏面21側からレーザ光を照射して、基板15の内部に改質領域7を形成している。これは、レーザ光が基板15及び積層部17の両者に対して透明な波長又は吸収の少ない波長を有しているからである。そして、実施例1に係る加工対象物1の場合と同様の理由から、図20(a)の場合には、加工対象物1の裏面21にナイフエッジ23を押し当てて加工対象物1を割って切断する。一方、図20(b)の場合には、加工対象物1の表面3にナイフエッジ23を押し当てて加工対象物1を割って切断する。 【0067】 このように、基板15及び積層部17の両者に対して透明な波長又は吸収の少ない波長を有するレーザ光を用いて基板15と積層部17とに切断起点領域を形成すれば、従来のダイヤモンドスクライブ法で行われる加工対象物1の反転作業を省くことができ、反転作業時の加工対象物1の破壊等を防止することができる。また、基板15と積層部17とに形成される切断起点領域に位置ずれが生じることも防止することができ、これにより精度の高い加工対象物1の切断が可能となる。さらに、従来のブレードダイシング法では必須である潤滑洗浄水が不要であるため、基板15と積層部17と間の間隙に潤滑洗浄水が入り込んでしまうというような問題もない。」 図20(b)は、以下のとおりである。 イ 引用文献3の記載 「【請求項1】 シリコン基板の一側面側に半導体回路を形成した表面実装型の半導体装置のトリミング方法であって、 前記半導体装置の一側面側に配置される電極と、実装基板面に形成された電極とを接続することにより、実装基板上にベアチップ状態で実装された半導体装置に対して、 該半導体素子の他側面側から一側面側へ向けて赤外線レーザを照射し、 該赤外線レーザにより、半導体装置の一側面側に形成される半導体回路の配線パターンのトリミングを行う、 ことを特徴とする半導体装置のトリミング方法。」 「【0023】 なお、赤外線とは、可視光の赤の領域に隣接し、波長が1000nm~0.1mm程度の領域に相当する電磁波のことをいい、本例の場合は、例えばYAGレーザを用いて波長が1064nmの赤外線レーザを照射して、トリミングを行っている。」 「【0031】 つまり、図6に示すように、照射する赤外線レーザの焦点を、例えば第1配線パターン層12等のトリミングしたい配線パターンに合わせて、該トリミングしたい配線パターンを部分発熱させて切断することで、トリミングすることもできる。 ただし、この場合は、赤外線レーザにより配線パターンを完全に切断することが必要であり、切断されずに残っている部分が一部にあると、電流リーク発生の原因となることに注意を要する。」 ウ 引用文献4の記載 「【請求項1】 2枚の基板の間においてこれらの基板を接合する予定部位の箇所に接合部材層を設ける設置ステップと、 前記2枚の基板の少なくとも一方の外側から前記基板を透過する光線を照射し、前記光線で前記接合部材層を加熱する加熱ステップと、 加熱した前記接合部材層で前記2枚の基板を接合する接合ステップと、 を有することを特徴とする基板の接合方法。 …(略)… 【請求項9】 前記光線はレーザ光であり、スポット照射によって局所的に加熱することを特徴とする請求項1記載の基板の接合方法。 …(略)… 【請求項12】 前記2つの基板のうちの一方の基板はガラス基板であり、他方の基板は半導体基板であることを特徴とする請求項1記載の基板の接合方法。」 「【0030】 図1で、下側部材11は円板形状の半導体基板(または半導体ウェハ)であり、上側部材12は円板形状の透明なガラス基板である。半導体基板11はシリコン基板等である。半導体基板11とガラス基板12は、好ましくは水平であってかつ平行な位置関係で対向させた関係に保持される。通常、半導体基板11は基板ステージ等の上に搭載されている。図1中、半導体基板11とガラス基板12は、図示しない仮固定材またはジグ等により仮固定または仮付けされている。仮固定材としては例えば樹脂や金属等である。なお、上側部材はガラス基板12に限定されず、必要な周波数の光線を透過させる光透過基板であればよい。 「【0033】 レーザ光源13としては、例えばYAGレーザ、キセノンレーザ、または半導体レーザが使用される。YAGレーザの周対数は1.6μm、キセノンレーザの周波数帯域は790~830nm、半導体レーザの周波数は例えば810nmである。通常の使用では、YAGレーザがレーザ光源13として好ましい。」 「【0053】 さらに上側基板がガラス基板12でなく、シリコン基板であってもよい。レーザ光線14の波長を適宜に調整すれば、当該レーザ光線はシリコン基板を透過し、第2の膜24、金属層22の内部、第1の膜23のいずれかに焦点を合せることができる。」 「【0073】 半導体基板11はシリコン基板とし、上側基板はガラス基板12として説明したが、接合される2つの基板はこれらに限定されない。ガリウム・ヒ素基板や化合物半導体基板であっても適用することができる。」 エ 引用文献5の記載 「2.特許請求の範囲 (1)半導体基板の一表面上に金属材料で形成された電極、配線等を具備した半導体装置において、前記半導体基板の一表面とは逆の表面から、前記半導体基板を透過する光を照射し、前記金属膜を熱処理することを特徴とする半導体装置の製造方法。 (2)透過する光はレーザビームであることを特徴とする特許請求の範囲第(1)項記載の半導体装置の製造方法。」(1ページ左下欄第4~13行) 「上述した説明では基板材料としてシリコンを用いてきたが、本発明が他の材料-例えばゲルマニウム、化合物半導体(ガリウム、アーセナイド等)あるいはアモルファス半導体-を用いた場合でも有効であることは言うまでもない。」(2ページ右下欄5~10行) オ 引用発明2~5 (ア)引用文献2に記載された発明(引用発明2)の「一の基板」が「シリコン基板」である場合には、引用発明2の「一の基板」及び「他の基板」は、それぞれ、本願発明の「半導体基板」及び「ターゲット材料」に相当する。 なお、上記アに摘記の引用文献2の【0040】には、「連続波レーザ光」でもよいことが記載されている。 (イ)引用文献3に記載された発明(引用発明3)の「シリコン基板」及び「配線パターン」は、それぞれ、本願発明の「半導体基板」及び「ターゲット材料」に相当する。 なお、上記イに摘記の引用文献3の【0023】には、「赤外線とは、可視光の赤の領域に隣接し、波長が1000nm~0.1mm程度の領域に相当する電磁波のこと」と記載されており、【0031】には、赤外線レーザの焦点位置において、配線パターンが「発熱」することが記載されている。 (ウ)引用文献4に記載された発明(引用発明4)の「シリコン基板」または「ガリウム・ヒ素基板」である「上側基板」及び「接合部材層」は、それぞれ、本願発明の「半導体基板」及び「ターゲット材料」に相当する。 (エ)引用文献5に記載された発明(引用発明5)の「半導体基板」及び「金属膜」は、それぞれ、本願発明の「半導体基板」及び「ターゲット材料」に相当する。 また、上記エに摘記の引用文献5の「基板材料としてシリコンを用いてきた」との記載を参照されたい。 (オ)そうすると、引用文献2~引用文献5には、いずれも以下の発明(以下「引用発明2~5」という。)が記載されていると認められる。 「レーザ透過による熱処理方法であって、レーザ光を生成する段階と、シリコン基板(またはGaAs基板)である半導体基板を通過してレーザ光を向ける段階であって、半導体基板を通過して透過されるレーザ光が半導体基板の背面領域においてターゲット材料に変化を与えることができる透過されたパワーを有するように、半導体基板がレーザ光に対して十分に透過性である段階と、を含む方法。」 5 本願発明と引用発明1との対比・判断 (1)本願発明と引用発明1との対比 本願発明と引用発明1とを対比すると次のことがいえる。 ア 引用発明1は、「基板内にフィラメントを作り出すように選択されたエネルギー及びパルス持続時間を有する、収束レーザービームの一つ又は複数のパルスを、前記収束レーザービームに対して透明な前記基板に照射するステップと、一つ又は複数の更なる場所で前記基板を照射し、追加のフィラメントを作り出すため、前記収束レーザービームに対して前記基板を並進させるステップと、を含」むものであるから、本願発明と引用発明1とは、「レーザ光を生成する段階」を含む点で一致する。 イ 引用発明1は、「基板内にフィラメントを作り出すように選択されたエネルギー及びパルス持続時間を有する、収束レーザービームの一つ又は複数のパルスを、前記収束レーザービームに対して透明な前記基板に照射するステップと、一つ又は複数の更なる場所で前記基板を照射し、追加のフィラメントを作り出すため、前記収束レーザービームに対して前記基板を並進させるステップと、を含み」、「前記基板が二つ以上の層を含み、前記二つ以上の層の少なくとも一つの中にフィラメントを生成するように、前記収束レーザービームのビーム焦点の場所が選択され」、「第一のレーザー露光ステップとして、変性トラック40の配列38を上側透明基板42のみに制限するレーザーフィラメント形成書込みをするステップと、それに続く、第二のレーザーパスにおける変性トラック46の配列44を下側透明基板48内部のみに制限するフィラメント形成書込みをするステップとを含」むものであるから、「上側透明基板42」と「下型透明基板48」は「前記基板」が含む「二つ以上の層」に対応するといえる。 また、引用発明1は、「前記基板が、シリコン、III-V半導体などから成る群から選択され」るものであるから、「上側透明基板42」は半導体基板であるといえる。 したがって、引用発明1の「上側透明基板42」は、本願発明の「半導体基板」に相当する。 さらに、引用発明1は、「第一のプレートである上側透明基板42は前記第二のレーザーパスにおけるレーザビーム50に対して透明であり、完全に近いレーザーエネルギーが第二のプレートである下側透明基板48に入」るものである。 したがって、引用発明1において、「第一のレーザー露光ステップ」としての「レーザーフィラメント形成書き込みをするステップ」は、「前記収束レーザービームに対して透明な前記基板に照射するステップ」に対応すると解されるから、当該ステップにおいて、レーザ光は上側透明基板42を「通過」するといえる。 ウ さらに、引用発明1は、「下側透明基板48は上側透明基板42の背面に設けられており、第一のプレートである上側透明基板42は前記第二のレーザーパスにおけるレーザビーム50に対して透明であり、完全に近いレーザーエネルギーが第二のプレートである下側透明基板48に入り、そこで次にフィラメントの形成が始まる」ものである。 したがって、引用発明1において、「上側透明基板42を通過して透過されるレーザビーム50が上側透明基板42の背面領域において下側透明基板48にフィラメントの形成を行うことができる透過されたパワーを有するように、上側透明基板42がレーザ光に対して十分に透過性である」ものであるといえるところ、当該「下側透明基板48にフィラメントの形成を行うこと」は、本願発明の「レーザ透過による処理方法」における、「ターゲット材料に変化を与えること」に相当するといえる。 したがって、引用発明1の「下側透明基板48」は、本願発明の「ターゲット材料」に相当する。 エ 上記イ、ウから、本願発明と引用発明1とは、「半導体基板を通過してレーザ光を向ける段階であって、半導体基板を通過して透過されるレーザ光が半導体基板の背面においてターゲット材料に変化を与えることができる透過されたパワーを有するように、半導体基板がレーザ光に対して十分に透過性である段階」を含む点で共通する。 オ したがって、本願発明と引用発明1との間には、次の一致点、相違点がある。 <一致点> 「レーザ透過による処理方法であって、 レーザ光を生成する段階と、 半導体基板を通過してレーザ光を向ける段階であって、半導体基板を通過して透過されるレーザ光が半導体基板の背面においてターゲット材料に変化を与えることができる透過されたパワーを有するように、半導体基板がレーザ光に対して十分に透過性である段階と、を含む方法。」 <相違点> <相違点1> レーザあるいはレーザ光について、本願発明では、「中赤外レーザ」であり、「1300から5000nmのスペクトル領域において希土類元素がドープされたファイバレーザからレーザ光を生成する」のに対し、引用発明1では、一つ又は複数のパルスを照射する収束レーザビームについて、そのような特定はなされていない点。 <相違点2> 本願発明は、「熱処理方法」に係る発明であるのに対し、引用発明1ではそのような特定はなされていない点。 (2)相違点1、2についての判断 ア 相違点1について 引用発明1において、「前記基板が、シリコン、III-V半導体などから成る群から選択され」るものであるところ、引用文献1には、以下のように記載されている。 ・「基板は、二つ以上の層を備えてもよく、その際、収束レーザービームのビーム焦点の場所は、二つ以上の層の少なくとも一つの中にフィラメントを生成するように選択される。多層基板は、液晶ディスプレイ(LCD)、フラットパネルディスプレイ(FPD)、及び有機発光ディスプレイ(OLED)など、多層フラットパネルディスプレイガラスを含んでもよい。基板はまた、自動車ガラス、管材料、窓、バイオチップ、光センサ、平面光波回路、光ファイバー、飲用ガラス製品、工芸ガラス、シリコン、III-V半導体、超小型電子チップ、メモリチップ、センサチップ、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)、及び垂直共振器表面発光レーザー(VCSEL)から成る群から選択されてもよい。」(上記4(1)ア(ア)ファミリ文献の段落【0014】を参照。) ・「フィラメントの形成方法は、…入射レーザービームに対して透明な広範囲の材料に適用される。本開示では、入射ビームのスペクトル範囲は可視スペクトルに限定されず、…近赤外、又は、…のレーザ波長に対しても透明である任意の材料を表すことを更に理解されたい。例えば、シリコンは1500nm光に対して透明であるが、可視光に対しては不透明である。従って、レーザーフィラメントは、この1500nm波長で発生する短パルスレーザー光を用いてシリコンに直接(即ち、エルビウムドープガラスレーザー)、或いは…によって結晶又は他の非線形媒体に形成されてもよい。」(上記4(1)ア(オ)ファミリ文献の段落【0037】を参照。) ・「【実施例】 …有効波長約800nmのパルスレーザー系を使用して、ガラスプレートをレーザー加工した。レーザー波長は、ガラスプレートが透明である赤外線スペクトル領域内にあるように選択した。」(上記4(1)ア(キ)ファミリ文献の段落【0057】を参照。) そうすると、引用文献1(上記4(1)ア(オ)上記ファミリ文献の段落【0037】の記載を参照。)には、「基板」が「シリコン」の場合において、レーザー光として、「1500nm波長で発生する短パルスレーザー光」である「エルビウムドープガラスレーザー」、すなわち、希土類元素であるエルビウムがドープされたガラスレーザを用いることが明示されていると認められる。 一方、「シリコン」の吸収端波長λgは1.1μm程度であり、また、典型的な発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)、及び垂直共振器表面発光レーザー(VCSEL)において用いられる「III-V半導体」(GaAs系半導体、GaN系半導体)の吸収端波長λgは、1.1μmより短く(GaAsはλg=0.87μm)、この吸収端波長より長波長の波長の光に対する吸収係数αは零に近く、ほぼ透明となることは技術常識である。 そして、スペクトル域が1100nm以上のレーザとして、希土類元素がドープされたファイバーレーザを用いることは慣用手段であり、例えば、下記の周知例1には、Tm系ファイバーレーザーが開示されており、周知例2、周知例3、周知例4には、希土類元素がドープされたファイバーレーザが記載されている。 また、これらのレーザについて、周知例2の段落【0084】には、レーザパルスを用いる旨が開示されており、周知例3の段落【0040】には、レーザファイバからパルスレーザ発振可能である旨が開示されており、さらに、周知例3の段落【0027】には、ドープコアの材質に対応する発振レーザ波長について、「Ce3+を用いた場合、…レーザの波長は5μmであり、…、/Tm3+:5.5μm、4μm、2μm、1.2μm/…のようになる。」と記載されている。 そして、引用発明1は、「上側透明基板42は前記第二のレーザーパスにおけるレーザビーム50に対して透明」であるところ、「中赤外」のスペクトル範囲が、1.3~4.5μmや2.5μm~4ないし8μm程度であることは技術常識であるから、引用発明1において、「収束レーザービームの一つ又は複数のパルスを、前記収束レーザービームに対して透明な前記基板に照射する」レーザーとして、上記慣用手段及び/又は周知例1~4に記載された技術的事項に基づき、そのレーザー波長のスペクトル域が、「シリコン、III-V半導体などから成る群から選択され」る「上側透明基板42」が「透明」であるスペクトル領域内にあるように、「1300から5000nmのスペクトル領域」のレーザー光を生成する「希土類元素がドープされたファイバレーザ」である「中赤外レーザ」を採用することは、当業者であれば容易になし得たことである。 よって、引用発明1において、上記慣用手段及び/又は周知例1~4に記載された技術的事項に基づき、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは当業者であれば容易になし得たことである。 ・周知例1:国際公開第2012/150935号(本願明細書に開示の【特許文献1】、ファミリ文献:特表2014-517510号公報) 「[017] FIG. 2 illustrates a disclosed fiber laser system 25 includes, among others, with a pump configured with a single mode ("SM") Er-based lasers 16 which is coupled to a multimode ("MM") Er fiber amplifier 20. Although only one Er amplifier 20 is illustrated, the scope of the disclosure includes the use of a plurality of such fiber amplifiers which have respective outputs optically combined. The Er MM amplifier or amplifiers 20 radiate a pump light coupled into a Tm laser 22 which emits an output light at about 2 μm wavelength. As can be seen, system 25 is very compact.」 (「【0012】 図2は、特にマルチモード(MM)Erファイバー増幅器20に結合された単一モード(SM)Er系レーザー16を有して構成されるポンプを有して含む開示されたファイバーレーザーシステム25を示している。ただ1つのEr増幅器20が示されているが、本開示の範囲はそれぞれ光学的に結合された出力を有する複数のそのようなファイバー増幅器の使用を含む。Er MM増幅器20(1つまたは複数)は、約2μmの波長で出力光を放出するTmレーザー22内に結合されたポンプライトを放射する。図に見られるように、システム25は非常に小型である。」) ・周知例2:特開2010-105046号公報 「【0045】 一実施形態では、ツリウムドープされたファイバレーザが用いられ、そのファイバレーザの典型的な動作波長は、約2μm周辺の範囲にあり、特に約1.75μm~約2.1μmの範囲にある。さらに、例えば、エルビウムドープされたファイバレーザ、またはホルミウムドープされたファイバレーザを用いることが可能である。眼鏡レンズ、コンタクトレンズまたは眼内レンズのために使用される多数の材料、例えばポリカーボネート(PC)またはPMMAまたは他のアクリル材料が、これらのレーザのスペクトル領域において、例えば約60%~約98%の透過率で、レーザマーキングに有利な部分吸収を行うことが明らかになっている。 【0046】 本方法は、以下のレーザ照射源を一般的に用いることによって実施することができる。例えば: 約2.1μmの動作波長または放射波長を有するHo-YAGレーザ(ホルミウムYAGレーザ)、 約2.05μm~2.1μmの動作波長を有するHoレーザ、 Tmレーザ(ツリウムレーザ)、例えば、約2.01μmの動作波長を有するTm-YAGレーザ、 約2.94μmの動作波長を有するEr-YAGレーザ(エルビウムYAGレーザ)、 約1.61μmの動作波長を有するEr3+:CaWO4レーザ、 約1.64μm~約2.94μmの動作波長を有するEr3+:YAGレーザ、 約2.06μmの動作波長を有するHo3+:YLFレーザ、 約2.09μmの動作波長を有するHo3+:CaWO4レーザ、 約1.91μmの動作波長を有するTm3+:CaWO4レーザ、 約2.01μmの動作波長を有するTm3+:YAGレーザ、 約1.53μm~1.6μmの動作波長を有するEr3+ファイバレーザ、 約1.75μm~2.1μmの動作波長を有するTm3+ファイバレーザ、 あるいは、 例えば、放射波長λ=1.1μm~約λ=4.0μmで動作することができる光学パラメトリック発振器(OPO)。」 「【0084】 本明細書で一例として提供された試験は、マイクロ秒(ms)の範囲の典型的なパルス時間のレーザパルスを用いて行われた。さらに、ピコ秒(ps)の範囲のまたはフェムト秒(fs)の範囲の典型的なパルス長を有するレーザパルスを放射することができる超短波パルスレーザを用いることが可能である。この場合、必要に応じて、レーザ照射と基板材料との他の相互作用メカニズムを活性化することが可能である。」 ・周知例3:特開2000-340867号公報 「【0027】レーザファイバ10としてフッ化物ガラスやカルコゲナイドガラス、テルライトガラス等を用いた非石英系ファイバを用いる場合、その低いマルチフォノン吸収によって、石英系ファイバでは実現し得ない主に中赤外域の波長を含むレーザ発振が可能になる。例えば、ドープコア11の材質としてCe3+を用いた場合、発信されるレーザの波長は5μmであり、Pr3+を用いた場合には、5μm、1.3μm及び2.3μmの波長のレーザ光を発信することができる。その他、非石英系ファイバにおけるドープコア2aの材質と、それらに対応する発信レーザの波長を羅列すると、Nd3+:5μm、2.5μm/Tb3+:5μm/Dy3+:3μm、1.34μm、1.7μm/Ho3+:5μm、4μm、3μm、2μm/Er3+:3μm、3.5μm、4μm/Tm3+:5.5μm、4μm、2μm、1.2μm/Eu2+:0.4~0.5μmのようになる。」 「【0040】ここで、レーザファイバ10としてEr3+イオンをコアにドープしたフッ化物ガラスを用い、励起光導入部30より波長780nmのLD励起光をパルス的に導入すると、レーザファイバ10から波長3μm付近のパルスレーザが発振される。ここで励起光を連続導入することによってレーザの連続発振も可能である。この波長のレーザは生体内部での水に対する吸収が大きいため、主に医療用として用いられる。」 ・周知例4:特開2010-82645号公報 「【0063】 レーザ発生器22は、波長が1μm以上2μm以下、パルス幅が10フェムト秒以上20ピコ秒以下、繰り返し周波数が100kHz以上10MHz以下のレーザ光Lを発生するエルビウム(Er)または イットリビウム(Yb)をドープしたファイバレーザである。 集光レンズ24は、レーザ発生器22が発生したレーザ光Lを集光し、載置台26は、該集光されたレーザ光Lが加工対象物1にZ軸方向から入射するように、加工対象物1を支持する。載置台26は、X軸ステージ28、Y軸ステージ30、及びZ軸ステージ32によって各軸方向に移動可能になっている。制御部40は、レーザ発生器22から発生するレーザ光Lの出力やパルス幅を制御するとともに、三つのステージ28、30、32の移動を制御する。」 イ 相違点2について 引用文献1の記載(上記4(1)ア(ウ)、(エ)、(ク)に摘記のファミリ文献の段落【0030】、【0034】、【0063】、【0065】、【0066】を参照。)から、引用文献1には、高繰返し数レーザーは、材料の熱拡散及び他の過渡応答を用いたレーザービームフィラメントの形成を向上させる新しい方向性を規定すること、短パルスレーザーの高繰り返し数のバーストを適用すると、熱蓄積及び他の過渡効果という利点が提供されること、図12に示された光学顕微鏡画像には、バーストの複数のパルスによって引き起こされた「熱影響部」が示されていること、及び、図13の光学顕微鏡画像に示されたフィラメント形成変性域は「熱影響部」を示すことが、開示されているといえる。 したがって、引用発明1は、「第二のレーザーパス」における「フィラメント形成書込みをするステップ」を含むものであるから、本願発明の「レーザ透過による熱処理方法」という構成を実質的に備えているといえる。 したがって、相違点2は実質的なものではない。 次に、仮に、相違点2は実質的なものではないとまではいえないとした場合について、以下において検討する。 引用発明1は、「前記フィラメントが、前記基板を劈開するための内部でスクライブされた経路を規定する配列を形成する、劈開向けに基板を準備する方法」であって、「レーザーエネルギ-」が、「下側透明基板48に入り、そこで次にフィラメントの形成が始まる、劈開向けに基板を準備する方法」であるところ、劈開向けの基板を準備する方法として、レーザ光を用いて、当該基板の内部に、局所的な加熱による改質領域を形成することによる方法は慣用手段であり、例えば、下記の周知例4、周知例5に記載されている。また、下記の周知例6にも、所定の条件でレーザ光をシリコンウェハ内部に集光することでレーザ光が吸収されて、加工対象物が局所的に加熱され、溶融処理領域が半導体基板の内部に形成される旨が記載されている。 したがって、仮に、相違点2は実質的なものではないとまではいえないとした場合であっても、引用発明1において、周知例4~6に記載された技術的事項に基づき、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは当業者であれば容易になし得たことである。 ・周知例4:特開2010-82645号公報(再掲) 「【0058】 また、本実施形態にかかるレーザスクライブ方法では、加工対象物1として、ガラス、サファイア、水晶、及びシリコンのうちいずれかが選定される。これにより、パルス幅が700フェムト秒以上4.5ピコ秒以下のレーザ光Lを照射した場合に、集光点Pで確実に多光子吸収を生じさせることが出来る。」 「【0063】 レーザ発生器22は、波長が1μm以上2μm以下、パルス幅が10フェムト秒以上20ピコ秒以下、繰り返し周波数が100kHz以上10MHz以下のレーザ光Lを発生するエルビウム(Er)または イットリビウム(Yb)をドープしたファイバレーザである。 集光レンズ24は、レーザ発生器22が発生したレーザ光Lを集光し、載置台26は、該集光されたレーザ光Lが加工対象物1にZ軸方向から入射するように、加工対象物1を支持する。載置台26は、X軸ステージ28、Y軸ステージ30、及びZ軸ステージ32によって各軸方向に移動可能になっている。制御部40は、レーザ発生器22から発生するレーザ光Lの出力やパルス幅を制御するとともに、三つのステージ28、30、32の移動を制御する。」 ・周知例5:特開2005-166728号公報 「【0025】 上記(B)の工程において用いるレーザ加工方法は、ウエハー基板の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し、分断予定ラインに沿って該内部に分断に利用可能な改質領域を形成し得るものであり、特許文献3、特許文献4に記載の方法、その他従来公知の方法を参照することができる。 例えば、特許文献4に記載の方法では、ウエハー基板の内部に集光点を合わせて、集光点におけるピークパワー密度が1×108(W/cm2)以上となる条件でレーザ光を照射する。これによって、ウエハー基板内部の集光点において多光子吸収現象が起こり、熱ひずみが誘起されたり、あるいは局所的加熱による溶融が生じる結果、分断に利用可能な改質領域が形成される。このときパルス幅を1μm以下とすると、多光子吸収を生じさせつつ対象物表面に余計なダメージを与えずに、内部のみに改質領域を形成することができる。この方法で用い得るレーザ光源としては、Nd:YAGレーザ、Nd:YVO4レーザ、Nd:YLFレーザやチタンサファイアレーザが好適であり、多光子吸収を起こさせることができるならパルスレーザでも連続波レーザでもよい。多光子吸収現象は、被照射材料のバンドギャップよりも照射レーザ光の光子エネルギー(振動数とプランク定数の積で表される)が小さい場合、即ち被照射材料が照射するレーザ光に対して透明であっても、上記のピークパワー密度条件が満たされれば発生する。例えば、波長:1064nm、レーザ光スポット断面積:3.14×10-8cm2、発振形態:Qスイッチパルス、繰り返し周波数:100kHz、パルス幅:30ns、出力:約1mJ/パルス、レーザ光品質:TEM00、偏光特性:直線偏光のNd:YAGレーザを用い、レーザ光波長に対する透過率:60%の集光用レンズで集光することにより、多光子吸収現象を起こさせることが可能である。 特許文献4の方法は、基板によるバンドギャップ吸収が生じない波長のレーザ光を利用できることから、特に内部集光法に適している。基板によるバンドギャップ吸収が起こる波長のレーザ光であると、基板表面でその殆どが吸収される傾向がある。」 ・周知例6:国際公開第2009/069509号 「[0018] ちなみに、ここでは、レーザ光Lが、加工対象物1を透過すると共に加工対象物1の内部の集光点近傍にて特に吸収され、これにより、加工対象物1に改質領域7が形成される(すなわち、内部吸収型レーザ加工)。よって、加工対象物1の表面3ではレーザ光Lが殆ど吸収されないので、加工対象物1の表面3が溶融することはない。一般的に、表面3から溶融され除去されて穴や溝等の除去部が形成される(表面吸収型レーザ加工)場合、加工領域は表面3側から徐々に裏面側に進行する。 [0019] ところで、本実施形態にて形成される改質領域は、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲とは異なる状態になった領域をいう。例えば、(1)溶融処理領域、(2)クラック領域、絶縁破壊領域、(3)屈折率変化領域等があり、これらが混在した領域もある。 [0020] 本実施形態での改質領域は、レーザ光の局所的な吸収や多光子吸収という現象により形成される。多光子吸収とは、材料の吸収のバンドギャップEG よりも光子のエネルギーhνが小さいと光学的に透明となるため、材料に吸収が生じる条件はhν>EG であるが、光学的に透明でも、レーザ光Lの強度を非常に大きくするとnhν>EG の条件(n=2,3,4,・・・)で材料に吸収が生じる現象をいう。多光子吸収による溶融処理領域の形成は、例えば、溶接学会全国大会講演概要第66集(2000年4月)の第72頁~第73頁の「ピコ秒パルスレーザによるシリコンの加工特性評価」に記載されている。 [0021] また、D.Du,X.Liu,G.Korn,J.Squier,and G.Mourou,” Laser Induced Breakdown by Impact Ionization in SiO2  with Pulse Widths from 7ns to 150fs”, Appl Phys Lett64(23),Jun.6,1994に記載されているようにパルス幅が数ピコ秒からフェムト秒の超短パルスレーザ光を利用することにより形成される改質領域を利用してもよい。 [0022] (1)改質領域が溶融処理領域を含む場合 加工対象物(例えばシリコンのような半導体材料)の内部に集光点を合わせて、集光点における電界強度が1×108 (W/cm2 )以上で且つパルス幅が1μs以下の条件でレーザ光Lを照射する。これにより、集光点近傍にてレーザ光Lが吸収されて加工対象物の内部が局所的に加熱され、この加熱により加工対象物の内部に溶融処理領域が形成される。 [0023] 溶融処理領域とは、一旦溶融後再固化した領域や、まさに溶融状態の領域や、溶融状態から再固化する状態の領域であり、相変化した領域や結晶構造が変化した領域ということもできる。また、溶融処理領域とは単結晶構造、非晶質構造、多結晶構造において、ある構造が別の構造に変化した領域ということもできる。つまり、例えば、単結晶構造から非晶質構造に変化した領域、単結晶構造から多結晶構造に変化した領域、単結晶構造から非晶質構造及び多結晶構造を含む構造に変化した領域を意味する。加工対象物がシリコン単結晶構造の場合、溶融処理領域は例えば非晶質シリコン構造である。 [0024] 図7は、レーザ光が照射されたシリコンウェハ(半導体基板)の一部における断面の写真を表した図である。図7に示すように、半導体基板11の内部に溶融処理領域13が形成されている。 [0025] 入射するレーザ光の波長に対して透過性の材料の内部に溶融処理領域13が形成されたことを説明する。図8は、レーザ光の波長とシリコン基板の内部の透過率との関係を示す線図である。ただし、シリコン基板の表面側と裏面側それぞれの反射成分を除去し、内部のみの透過率を示している。シリコン基板の厚さtが50μm、100μm、200μm、500μm、1000μmの各々について上記関係を示した。 [0026] 例えば、Nd:YAGレーザの波長である1064nmにおいて、シリコン基板の厚さが500μm以下の場合、シリコン基板の内部ではレーザ光Lが80%以上透過することが分かる。図7に示す半導体基板11の厚さは350μmであるので、溶融処理領域13は半導体基板11の中心付近、つまり表面から175μmの部分に形成される。この場合の透過率は、厚さ200μmのシリコンウェハを参考にすると、90%以上なので、レーザ光Lが半導体基板11の内部で吸収されるのは僅かであり、殆どが透過する。しかし、1×108 (W/cm2 )以上で且つパルス幅が1μs以下の条件でレーザ光Lをシリコンウェハ内部に集光することで集光点とその近傍で局所的にレーザ光が吸収され溶融処理領域13が半導体基板11の内部に形成される。」 ウ 相違点1、2についての判断のまとめ したがって、本願発明は、引用発明1、上記慣用手段及び/又は周知例1~6に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)本願発明と引用発明2~5との対比・判断 シリコンやGaAsはスペクトル域1500nmのレーザ光に対して透明であることは技術常識(必要であれば、シリコンについては、上記4(1)ア(オ)に摘記の引用文献1ファミリ文献の段落【0037】を参照。)であるところ、このスペクトル域のレーザとして、「1300から5000nmのスペクトル域において希土類元素がドープされたファイバーレーザ」を用いることは慣用手段であり、例えば、上記(2)アで検討したように、上記の周知例1には、Tm系ファイバーレーザーが開示されており、上記の周知例2、周知例3、周知例4、及び下記の周知例7(段落【0035】などを参照。)には、希土類元素がドープされたファイバーレーザが記載されている。 したがって、引用発明2~5において、レーザとして、上記慣用手段に基づき、「1300から5000nmのスペクトル域において希土類元素がドープされたファイバーレーザ」を採用することは、当業者が容易になし得たことである。 なお、「ファイバーレーザ」を、引用発明2ないし5に係る技術分野において使用することは、下記の周知例7の「【0035】図3において、レーザ光源31は、所定のタイミングで所定の強さのレーザビームを出力する。なお、レーザ光源としては、例えば、Nd:YAG、Nd:YVO4、Nd:YLF、Nd:Glass、Yb:YAG、Yb:Glass、Ti:Sapphire等の固体レーザ、イッテリビウムファイバーレーザ、エルビウムファイバーレーザ等のファイバーレーザ、エキシマレーザやCO2レーザ等の気体レーザ等を用いることができ、本発明におけるレーザ光については特に限定されるものではない。」及び「【0075】また、本発明におけるレーザビームの照射によるレーザ加工は、液晶用基板や半導体用基板、ウェハ等の加工対象物に対するアニール処理や、穴あけ、溶接、切断等のレーザ加工全般や、露光装置等に広く適用することができる。」との記載、及び、下記の周知例8の「【0028】レーザ光40として、YAGレーザ光、チタンサファイアレーザ光、ファイバーレーザ等を使用することができる。これらのレーザ光は、半導体基板20及び半導体膜4に吸収されない。また、パルス幅が10ピコ秒以下のレーザ光40は、通常のパルス幅(1ナノ秒~1ミリ秒)のレーザ光よりも高いエネルギーを出力することができる。このため、半導体基板20から半導体膜4を瞬間的に剥離することができる。通常のパルス幅のレーザ光を使用する場合と比較して、半導体膜4が高温に晒される時間を短くすることができる。すなわち、パルス幅が10ピコ秒以下のレーザ光40を使用すれば、半導体膜4の温度が上昇する前に半導体基板20から半導体膜4を瞬間的に剥離することができるので、半導体装置10の特性が低下することを抑制することができる。」等の記載に照らして、当業者が適宜なし得たことである。 よって、本願発明は、引用発明2~5、上記慣用手段及び/又は周知例1~8に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・周知例7:特開2008-225380号公報 「【0035】 図3において、レーザ光源31は、所定のタイミングで所定の強さのレーザビームを出力する。なお、レーザ光源としては、例えば、Nd:YAG、Nd:YVO4、Nd:YLF、Nd:Glass、Yb:YAG、Yb:Glass、Ti:Sapphire等の固体レーザ、イッテリビウムファイバーレーザ、エルビウムファイバーレーザ等のファイバーレーザ、エキシマレーザやCO2レーザ等の気体レーザ等を用いることができ、本発明におけるレーザ光については特に限定されるものではない。」 「【0075】 また、本発明におけるレーザビームの照射によるレーザ加工は、液晶用基板や半導体用基板、ウェハ等の加工対象物に対するアニール処理や、穴あけ、溶接、切断等のレーザ加工全般や、露光装置等に広く適用することができる。」 ・周知例8:特開2012-4344号公報 「【0028】 レーザ光40として、YAGレーザ光、チタンサファイアレーザ光、ファイバーレーザ等を使用することができる。これらのレーザ光は、半導体基板20及び半導体膜4に吸収されない。また、パルス幅が10ピコ秒以下のレーザ光40は、通常のパルス幅(1ナノ秒~1ミリ秒)のレーザ光よりも高いエネルギーを出力することができる。このため、半導体基板20から半導体膜4を瞬間的に剥離することができる。通常のパルス幅のレーザ光を使用する場合と比較して、半導体膜4が高温に晒される時間を短くすることができる。すなわち、パルス幅が10ピコ秒以下のレーザ光40を使用すれば、半導体膜4の温度が上昇する前に半導体基板20から半導体膜4を瞬間的に剥離することができるので、半導体装置10の特性が低下することを抑制することができる。」 (4)まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用発明1、上記慣用手段及び/又は周知例1~6に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 また、本願発明は、引用発明2~5、上記慣用手段及び/又は周知例1~8に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 6 実施可能要件について (1)発明の詳細な説明の記載内容 発明の詳細な説明の段落【0029】には、「1940nmのCWレーザビームが、GaAsウェハを通過して透過され、GaAsウェハの背面領域上のゲルマニウム(Ge)ウェハをスクライブするために走査される。図3は、100mmfθスキャンレンズを用いて1940nmのCWレーザ光の40Wビームの焦点を合わせ、集束ビームの焦点面においてGaAsウェハを1m/sで走査することによってGeウェハに形成されたスクライブラインを説明する画像を示す。」と記載されている。 (2)判断 一方、波長1940nmに対するGeの吸収係数αは101(cm-1)以下であることが技術常識であるから、一般的な手法を用いるならば、1940nmのCWレーザ光はGeウェハを透過してしまうはずと認められる。したがって、Geウェハにどのようにしてスクライブラインを形成することができるのか明確かつ十分に説明されているものとは認められない。 よって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が、請求項16に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に説明されていない。 以上のとおりであるから、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 7 むすび 以上のとおりであるから、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2018-003211

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