特許拒絶査定不服審判
2018-002959
金属ナノ粒子水分散液
- 審判番号
- 2018-002959
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-545434外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年03月01日
- 審決日
- 2018年10月15日
- 公報発行日
- 2018年11月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (B22F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2017-545434「金属ナノ粒子水分散液」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月23日国際公開、WO2017/199832、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年) 5月11日(優先権主張 平成28年 5月16日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年 8月25日受付で手続補正書が提出され、同年 9月28日付けで拒絶理由が通知され、同年10月16日受付で意見書が提出され、同年12月 5日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成30年 3月 1日受付で拒絶査定不服審判の請求がされ、同年 3月 5日受付で手続補足書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願請求項1~5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明5」という。)は、平成29年12月 5日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
金属ナノ粒子(X)及び有機化合物(Y)の複合体と、ノニオン性界面活性剤(Z)とを含有する金属ナノ粒子水分散液であって、前記有機化合物(Y)が、アニオン性官能基を有する有機化合物(Y1)であり、前記アニオン性官能基を有する有機化合物(Y1)が、カルボキシ基、リン酸基、亜リン酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基及びスルフェン酸基からなる群から選ばれる1種以上のアニオン性官能基を有する(メタ)アクリル酸系単量体を含有する単量体混合物(I)の重合物(Y2)であることを特徴とする金属ナノ粒子水分散液。
【請求項2】
前記単量体混合物(I)中に、エチレングリコールの平均ユニット数が20以上のポリエチレングリコール鎖を有する(メタ)アクリル酸系単量体を含有する請求項1記載の金属ナノ粒子水分散液。
【請求項3】
前記重合物(Y2)の重量平均分子量が、3,000~20,000の範囲である請求項1又は2記載の金属ナノ粒子水分散液。
【請求項4】
前記金属ナノ粒子(X)の金属種が、銀、銅又はパラジウムである請求項1~3のいずれか1項記載の金属ナノ粒子水分散液。
【請求項5】
前記金属ナノ粒子(X)の透過型電子顕微鏡写真から求められる平均粒子径が0.5~100nmの範囲である請求項1~4のいずれか1項記載の金属ナノ粒子水分散液。」
第3 原査定の概要
原査定(平成29年12月 5日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1~5に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1~3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2013-40374号公報
2.特開昭61-4524号公報
3.特開2014-29752号公報
第4 引用文献、引用発明
1.引用文献1について
1-1.引用文献1の記載事項
本願の優先日前に日本国内において頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1(特開2013-40374号公報)には、「金属ナノ粒子分散液、金属ナノ粒子凝集体、金属ナノ粒子分散体及びそれらの製造方法」(発明の名称)に関して、図面とともに次の事項が記載されている。(「・・・」によって記載の省略を表す。以下同様。)
1ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤及び金属ナノ粒子を含む水溶液からなる金属ナノ粒子分散液。
【請求項2】
層状剥離した粘土鉱物を含む請求項1記載の金属ナノ粒子分散液。
【請求項3】
前記アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤がウオーム状ミセルを形成している請求項1又は2記載の金属ナノ粒子分散液。」
1イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ナノ粒子の分散液および金属ナノ粒子凝集体および金属ナノ粒子分散体およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属ナノ粒子は、その微小粒径に起因してバルク態と異なる多くの特性を示すことから、導電材料を始めとした各種分野で幅広い利用が検討されている。しかし、金属ナノ粒子の粒径をnmレベルの小粒径でできるだけ均質に且つ安価に合成すること、及び、金属ナノ粒子は活性が非常に高く粒子同士の不均一な凝集が生じやすいことから、安定した金属ナノ粒子分散液を調製することが広く求められてきた。
・・・
【0005】
これらに加えて、金属ナノ粒子の性能を効果的に活かすための方法として、金属ナノ粒子を系全体に均一分散させるのではなく、制御された形態にミクロなレベルで凝集させることが有効と考えられる。しかし、一般に、nmレベルの微小粒径からなる金属ナノ粒子を分散液中または塗布した基板上において、ミクロに制御された形態で凝集させることや、その他の箇所には金属ナノ粒子が存在せず目的とする箇所のみに金属ナノ粒子を凝集させることなどは困難であった。…」
1ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、nmレベルの金属ナノ粒子を作成すると共に、粒子の分散安定性に優れた金属ナノ粒子分散液、およびミクロ形態が制御された金属ナノ粒子凝集体および金属ナノ粒子分散体、およびそれらの製造方法を提供することにある。」
1エ 「【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究に取り組んだ結果、特定のノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤からなる水溶液中で硝酸銀などの金属化合物が水膨潤性粘土鉱物の添加により還元され、粒径のそろった金属ナノ粒子が得られること、また、特定のノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤からなるウオーム状ミセル構造の周囲に金属ナノ粒子が選択的に配置した凝集構造を形成していることを発見したことによる。更に、本発明は、ウオーム状ミセルを有する金属ナノ粒子分散液のゾル-ゲル転移が可逆的に生じると共に、金属ナノ粒子の凝集がゲル状態で生じること、加えて、該分散液を基材上に塗布し乾燥または熱処理することにより、基材上にウオーム状ミセル構造をテンプレートとした金属ナノ粒子の凝集体およびそれらの二次元ネットワークが形成できることなどを発見したことに基づき、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤及び金属ナノ粒子を含む水溶液からなる金属ナノ粒子分散液を提供する。」
1オ 「【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明でのアニオン界面活性剤としては、水溶液中でミセル構造を形成するアニオン界面活性剤が用いられる。具体的には、ソジウムドデシルサルフェイト(SDS)、ソジウムトリオキシエチレンサルフェイト(SDES)、ソジウムドデシルベンゼンサルフェイト(SDBS)、ジソジウム2,3-ジドデシル-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレイト(GB)、ソジウムオレエイト(NaOA)、ソジウム4-(8-メタクリロイルオキシオクチル)オキシベンゼンサルフェイト(MOBS)、ソジウムコレート、ソジウムジオキシコレートなどがあげられ、より好ましくは、ノニオン界面活性剤と合わせることでウオーム状ミセルを形成するものが、特に好ましくはSDS、GB、SDESが用いられる。なお、本発明においてウオーム状ミセルとは、界面活性剤により形成される紐状のミセルであって長さ/幅の比が1以上のものであり、紐状ミセルの幅は一般に10~200nmのものである。より好ましくは長さ/幅が5以上であり、特に好ましくは長さ/幅が10以上であり、ウオーム状ミセル同士が絡み合って系(分散液)がゲル化するものである。
【0019】
本発明で用いるノニオン界面活性剤としては、アニオン界面活性剤と共に用いることでミセル構造、特にウオーム状ミセルを形成するものが好ましく用いられる。より好ましくは、水に単独では溶解できず、アニオン界面活性剤と共に用いることで水中に分散できるノニオン界面活性剤である。具体的にはポリオキシエチレンアルキルエーテル(式1)やポリオキシエチレンコレステリルエーテル(式2:m=10,15,20)があげられる。
【0020】
(式1)
【0021】
(式2)
【0022】
更に好ましくは、式1で表されるノニオン界面活性剤であって、且つ、n=5~20およびm=2~6、且つ、n/m=2~5のものであり、特に好ましくは、n=12~14、且つ、n/m=3のものである。
【0023】
本発明の金属ナノ粒子は、分散液中で金属化合物を還元して得られたもので、金属ナノ粒子全般に対して適用され、その種類は特に限定されない。例えば、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、アルミニウム、亜鉛、クロム、鉄、コバルト、モリブデン、ジルコニウム、ルテニウム、イリジウム、タンタル、水銀、インジウム、スズ、鉛、タングステンから選ばれた一種または二種以上からなる合金、あるいは混合物からなる金属ナノ粒子が用いられる。より好ましくは、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、銅、コバルトである。特に好ましくは、高機能性、還元反応の容易さ、取り扱い易さ等の面から、銀、金、白金、銅である。
【0024】
金属ナノ粒子分散液を構成する金属ナノ粒子の粒子径としては、ナノ粒子としての特徴を有するのであれば特に限定されるものではないが、金属ナノ粒子分散液が良好な分散安定性を有するためには、本発明の金属ナノ粒子の平均粒子径は0.5~50nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは1~30nm、特に好ましくは1~10nmの範囲である。
…
【0029】
本発明における金属ナノ粒子分散液は、金属ナノ粒子を分散または凝集した状態で安定的に含むものである。例えば、本発明における金属ナノ粒子分散液は、数日以上、好ましくは数ヶ月以上にわたって安定であり不均一な凝集や沈殿を生じることがない。これは、金属ナノ粒子分散液を構成しているアニオン及びノニオン界面活性剤および/または層状剥離した粘土鉱物の効果によるものである。また、金属ナノ粒子分散液は、ゲル状態において、金属ナノ粒子が安定したミクロな凝集構造を形成できるものが好ましく用いられ、より好ましくは、界面活性剤の作るミセルの表面に沿って凝集構造を形成するもの、特に好ましくは、ウオーム状ミセルの表面に沿って凝集構造を形成するものである。
…
【0034】
本発明に用いるアニオン界面活性剤およびノニオン界面活性剤の濃度は、それらがミセル構造を形成する濃度、特に好ましくはウオーム状ミセルを形成する濃度から任意に選択できる。例えば、SDS(アニオン界面活性剤)の場合、水に対して3~15質量%が好ましく用いられ、特に好ましくは4~14質量%である。一方、トリオキシエチレンドデシルエーテル(ノニオン界面活性剤)の場合、SDSと共に用いられる場合、水に対して2~8質量%が好ましく用いられ、より好ましくは3~7質量%、特に好ましくは5~7質量%である。」
1カ 「【0040】
(実施例1)
ソジウムドデシルサルフェイト(SDS)の水溶液(SDS濃度=4.5質量%)5gを調製し、次いで、水に対して7質量%のトリオキシエチレンモノドデシルエーテル(C12EO3)0.35gを加えて均一無色透明水溶液を調製した。得られた水溶液はゲルであり、撹拌状態ではゾル、静置状態でゲル状態であった。上記水溶液に1Mの硝酸銀(AgNO3)水溶液20μlを撹拌して添加して、SDS-C12EO3-AgNO3からなる均一水溶液を得た。この状態では透明性や粘度に大きな変化はなく、無色透明のゲル(静置)およびゾル(撹拌)であった。次いで、水膨潤性粘土鉱物であるスメクタイト類の一種である合成ヘクトライト(ラポナイトXLG:Rockwood社)を2質量%含む均一透明な粘土鉱物水分散液を調製し、得られた粘土鉱物水分散液を系全体に対する粘土鉱物の含有率が0.15質量%となるように、前記SDS-C12EO3-AgNO3からなる均一透明水溶液に撹拌して添加した。その結果、透明で黄土色をした静置状態ではゲル、撹拌時ゾルとなる均一透明分散液が得られた(図1の挿入写真)。得られた分散液は3ヶ月室温で保持しても不均一凝集や沈殿は一切見られず安定していた。得られた分散液の粘弾性特性を図1に示す。得られた分散液の紫外可視スペクトルを図2に示す。405nm近傍に極大ピークが観測され、Agナノ粒子が形成していることが示された。得られた銀ナノ粒子分散液を透過型電子顕微鏡(TEM)用のカーボン膜の上に垂らし、溶媒(水)を乾燥により除いてから、TEM測定を行った。結果を図3に示す。この結果、水溶液中で銀イオンが還元され、3~5nm程度の粒径を持つ銀ナノ粒子が形成されていること、且つ、銀ナノ粒子が、基材上において、SDSとC12EO3から形成されるウオーム状ミセル構造を反映したリボン状の形状に凝集した銀ナノ粒子凝集体であること、更に、基材上でそれらのリボン状に凝集した銀ナノ粒子凝集体が二次元ネットワークをつくって広がっていることが明らかとなった。一方、銀ナノ粒子が形成されていることは、STEM-EDS測定によるマッピングでも確認された(図4)。」
1キ 「
」
1-2.引用文献1に記載された発明
ア 上記1ウによれば、引用文献1において解決しようとする課題は、金属ナノ粒子分散液について、nmレベルの金属ナノ粒子を作成すると共に、粒子の分散安定性に優れた金属ナノ粒子分散液を提供することである(以下、単に「課題」という。)。
イ 上記アの課題を解決するための手段は、上記1アによれば、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤及び金属ナノ粒子を含む水溶液からなる金属ナノ粒子分散液とすることであり、上記1エによれば、このような金属ナノ粒子分散液とすることにより課題が解決できるのは、特定のノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤からなる水溶液中で硝酸銀などの金属化合物が水膨潤性粘土鉱物の添加により還元され、粒径のそろった金属ナノ粒子が得られるためであり、また、特定のノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤からなるウオーム状ミセル構造の周囲に金属ナノ粒子が選択的に配置した凝集構造を形成するので、粒子の分散安定性に優れた金属ナノ粒子分散液が得られるためである。
ウ 上記1カによれば、実施例1として、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤及び金属ナノ粒子を含む水溶液からなる金属ナノ粒子分散液の製造について、以下のものが記載されている。
すなわち、ソジウムドデシルサルフェイト(SDS)の水溶液に、トリオキシエチレンモノドデシルエーテル(C12EO3)を加えて均一無色透明水溶液を調製し、上記水溶液に1Mの硝酸銀(AgNO3)水溶液20μlを撹拌して添加して、SDS-C12EO3-AgNO3からなる均一水溶液を得、粘土鉱物水分散液を添加することにより、静置状態ではゲル、撹拌時ゾルとなる均一透明分散液を得ることができる。
このようにして形成された分散液を透過型電子顕微鏡(TEM)で観測すると、3~5nm程度の粒径を持つ銀ナノ粒子が形成されていることが確認されたから、この水分散液は、銀ナノ粒子水分散液であり、また、当該銀ナノ粒子が、SDSとC12EO3から形成されるウオーム状ミセル構造を反映したリボン状の形状に凝集した銀ナノ粒子凝集体であることが確認された。
ここで、ウオーム状ミセル構造とは、上記1キの図3に示されるような、2種の界面活性剤であるSDSとC12EO3から形成されたウオーム状、すなわち、長い紐形状もしくはミミズ形状ともいうことのできるミセルのことであり、3~5nm程度の粒径を持つ銀ナノ粒子が、当該ウオーム状ミセルの表面にリボン状に凝集している。また、上記1オの段落【0034】によれば、上記ソジウムドデシルサルフェイト(SDS)はアニオン界面活性剤であり、上記トリオキシエチレンモノドデシルエーテル(C12EO3)はノニオン界面活性剤である。
エ そこで、上記実施例1として製造された銀ナノ粒子分散液に注目すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤から形成されるウオーム状ミセルと、3~5nm程度の粒径を持つ銀ナノ粒子が当該ウオーム状ミセルの表面に凝集した銀ナノ粒子凝集体を含有する銀ナノ粒子水分散液であって、上記アニオン界面活性剤がソジウムドデシルサルフェイト(SDS)であり、上記ノニオン界面活性剤がトリオキシエチレンモノドデシルエーテル(C12EO3)である銀ナノ粒子水分散液。」
2.引用文献2について
本願の優先日前に日本国内において頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2(特開昭61-4524号公報)には、「アニオン系高分子界面活性剤」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
2ア 「2.特許請求の範囲
1)(a)アクリル酸および/またはメタクリル酸20~70モル%、(b)アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリル20~60モル%、ならびに(c)アクリルアミドアルキルスルホン酸および/またはスルホアルキルアクリレート1~60モル%の構造単位および組成で、かつ20%水溶液のpH4.0、25℃における粘度が5~100,000cpsの多元共重合体またはその塩からなるアニオン系高分子界面活性剤。」(第1頁左下欄4~13行)
2イ 「3.発明の詳細な説明
本発明は、アニオン性高分子界面活性剤に関する。
更に詳細には、従来にない優れた界面活性能力を有する新規なアニオン性水溶性共重合体組成物に関する。
具体的には、(A)アクリル酸またはメタクリル酸、(B)アクリロニトリルまたはメタクリロニトリルおよび(C)アクリルアミドアルキルスルホン酸またはスルホアルキルアクリレートの少なくとも3種以上のビニル性モノマーの多元共重合体よりなる従来にない特殊な機能を有するアニオン性高分子界面活性剤に関する。」(第1頁左下欄14行~右下欄7行)
2ウ 「近年、In-Situ重合法によるアミノプラスト重縮合物膜を用いて疎水性材料を被覆するマイクロカプセル化法が用いられはじめた。これらは、特開昭51-9079号公報、同じく、53-84881号公報などで知られるようにアニオン性の高分子界面活性剤の存在下に、疎水性高沸点溶剤を微小油滴にまで乳化し、その場で尿素ホルムアルデヒド樹脂またはメラミンアルデヒド樹脂の重縮合を行なわせてアミノアルデヒド樹脂の被膜で、疎水性物質を被覆する方法である。
この方法によれば、コンプレックスコアセルベーション法に比較して高固型分のマイクロカプセルスラリーが得られ、かつ膜のち密性にすぐれ、かつ腐敗する傾向がないなど、従来にないすぐれた特徴を有する。
このようなIn-Situ重合法マイクロカプセルの製造に用いられる。
アニオン性高分子界面活性剤(以下、系変性剤と称する)は次の様な性能が要求される。アニオン性高分子界面活性剤(以下、系変性剤と称する)は次の様な性能が要求される。すなわち、
(1)疎水性液体をO/Wで乳化する能力、安定した乳化系を形成でき、かつこの乳化系が低粘度であること、
(2)酸性条件下で、形成されるアミノアルデヒド樹脂を選択的に疎水性物質の囲りにのみかつち密に推積させる能力を有すること、
(3)アミノアルデヒド樹脂で被覆された疎水性物質を水中で高濃度かつ低粘度に分散しうること、等である。
しかしながら、実際に上記のような性能を完全に満足するものは知られていない。」(第2頁左下欄5~15行)
2エ 「本発明者らは、上記のような問題点をふまえ、アニオン性高分子界面活性剤について各種検討した結果、下記の新規な多元共重合体該共重合体が、特殊な機能をあわせそなえ、In-Situ重合法による、アミノ-アルデヒド樹脂壁膜による疎水性物質のマイクロカプセル化用に著しくすぐれた作用を有することを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の新規アニオン性高分子界面活性剤は(A)アクリル酸および/またはメタクリル酸、(B)アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリル、(C)アクリルアミドアルキルスルホン酸および/またはスルホアルキルアクリレートの少なくとも(A)、(B)、(C)から1種以上で合計3種以上のビニル性モノマーの多元共重合体またはその塩よりなるアニオン性高分子界面活性剤である。
本発明の新規な多元共重合体およびその塩は、前記の三種の成分から選ばれる3成分以上のビニル性モノマーを共重合させることにより製造される。
すなわち、(a)アクリル酸および/またはメタクリル酸、(b)アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリルならびに(c)アクリルアミドアルキルスルホン酸および/またはスルホアルキルアクリレートの3種の成分からそれぞれ選ばれた成分からなる多元性共重合体である。
原料の入手の容易性、共重合性、特殊界面活性剤としての効果などから、好ましくは(A)アクリル酸、(B)アクリロニトリル、(C)アクリルアミドアルキルスルホン酸の三成分を必須モノマー成分とする多元共重合体である。
上記のアクリルアミドアルキルスルホン酸は一般式(I)
(I)
(Rは低級アルキレン基を示す)で表わされる化合物であって、具体的には、アクリルアミドメタンスルホン酸、アクリルアミドエタンスルホン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-n-ブタンスルホン酸などがあげられる。
またスルホアルキルアクリレートは一般式(II)
(II)
(R′は低級アルキレン基を示す)で表わされる化合物であって具体的にはスルホメチルアクリレート、スルホエチルアクリレート、スルホプロピルアクリレート、スルホブチルアクリレートなどがあげられる。」(第2頁右下欄11行~第3頁左下欄3行)
3.引用文献3について
本願の優先日前に日本国内において頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3(特開2014-29752号公報)には、「磁気ディスク基板の製造方法」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
3ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)~(5)の工程を有し、下記工程(1)~(3)を同一の研磨機で行い、下記工程(5)を前記研磨機とは別の研磨機で行う、磁気ディスク基板の製造方法。
(1)アルミナ粒子及び水、並びに、(i)有機ホスホン酸キレート性化合物、(ii)分子量が300~300000の高分子陰イオン界面活性剤、及び、(iii)下記一般式(I)で表される有機リン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する研磨液組成物Aを被研磨基板の研磨対象面に供給し、前記研磨対象面に研磨パッドを接触させ、前記研磨パッド及び/又は前記被研磨基板を動かして前記研磨対象面を研磨する工程、
(2)工程(1)で得られた基板をリンス処理する工程、
(3)シリカ粒子及び水を含有する研磨液組成物Bを工程(2)で得られた基板の研磨対象面に供給し、前記研磨対象面に研磨パッドを接触させ、前記研磨パッド及び/又は前記被研磨基板を動かして前記研磨対象面を研磨する工程、
(4)工程(3)で得られた基板を洗浄する工程、
(5)シリカ粒子及び水を含有する研磨液組成物Cを工程(4)で得られた基板の研磨対象面に供給し、前記研磨対象面に研磨パッドを接触させ、前記研磨パッド及び/又は前記被研磨基板を動かして前記研磨対象面を研磨する工程。
[前記式Iにおいて、R1は炭素数3~20の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、フェニル基、又は、炭素数3~20の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基で置換されたフェニル基を表し、mは1~20の整数を表し、Xは-OM又は下記一般式(II)を表し、Mは水素、無機アルカリイオン又は有機アルカリイオンを表す。]
[前記式IIにおいて、R2は炭素数3~20の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、フェニル基、又は、炭素数3~20の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基で置換されたフェニル基を表し、nは1~20の整数を表す。]
【請求項2】
前記(i)の有機ホスホン酸キレート性化合物が、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、ホスホノブタントリカルボン酸、ホスホノヒドロキシ酢酸、ヒドロキシエチルジメチレンホスホン酸、アミノトリスメチレンホスホン酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1記載の磁気ディスクの製造方法。
【請求項3】
前記(ii)の高分子陰イオン界面活性剤が、ポリアクリル酸及びその塩である、請求項1又は2記載の磁気ディスク基板の製造方法。」
3イ 「【0053】
[研磨液組成物A:(ii)高分子陰イオン界面活性剤]
研磨液組成物Aは、粗研磨工程後の基板上のスクラッチ、並びに、仕上げ研磨工程後の基板上のスクラッチ及び突起欠陥を低減する観点から、高分子陰イオン界面活性剤を有することが好ましい。高分子陰イオン界面活性剤の重量平均分子量は、300~300000が好ましく、1000~150000がより好ましく、3000~50000がさらに好ましく、5000~20000がさらにより好ましい。本明細書において、高分子陰イオン界面活性剤の重量平均分子量は、実施例に記載のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されるものをいう。
【0054】
前記高分子陰イオン界面活性剤としては、カルボン酸(塩)基を有する界面活性剤、スルホン酸(塩)基を有する界面活性剤、硫酸エステル(塩)基を有する界面活性剤、リン酸エステル(塩)基を有する界面活性剤、ホスホン酸(塩)基を有する界面活性剤等が挙げられる。本明細書において、例えば、「カルボン酸(塩)基」は「カルボン酸基およびカルボン酸塩基」を表す。これらの高分子陰イオン界面活性剤の中では、粗研磨工程後の基板上のスクラッチ、並びに、仕上げ研磨工程後の基板上のスクラッチ及び突起欠陥を低減する観点から、カルボン酸(塩)基を有する界面活性剤の使用が好ましく、より好ましくは、ポリアクリル酸及び/又はその塩である。」
第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明1との対比について
本願発明1と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「3~5nm程度の粒径を持つ銀ナノ粒子」、「ノニオン界面活性剤」、「銀ナノ粒子水分散液」は、それぞれ、本願発明1の「金属ナノ粒子(X)」、「ノニオン性界面活性剤(Z)」、「金属ナノ粒子水分散液」に相当する。
イ 引用発明1の「アニオン界面活性剤」は、具体的には「ソジウムドデシルサルフェイト(SDS)」であり、技術常識によれば、「ソジウムドデシルサルフェイト(SDS)」とは「ラウリル硫酸ナトリウム」とも呼ばれるアニオン性(陰イオン性)界面活性剤であり、その化学式は、CH3(CH2)11SO4Naで表されるものであるから、引用発明1の「アニオン界面活性剤」は、水に溶けた場合にその端部が「SO3-」となる有機化合物、すなわち「スルホン酸基」を有する有機化合物であるといえる。
一方、本願発明1の「有機化合物(Y)」は、「アニオン性官能基を有する有機化合物(Y1)」であり、「前記アニオン性官能基を有する有機化合物(Y1)が、カルボキシ基、リン酸基、亜リン酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基及びスルフェン酸基からなる群から選ばれる1種以上のアニオン性官能基を有する(メタ)アクリル酸系単量体を含有する単量体混合物(I)の重合物(Y2)」である。
したがって、引用発明1の「アニオン界面活性剤」と本願発明1の「有機化合物(Y)」は、「アニオン性官能基」として「スルホン酸基」を有する、「アニオン性官能基を有する有機化合物」である点で共通するが、引用発明1の「有機化合物」は、本願発明1のような「1種以上のアニオン性官能基を有する(メタ)アクリル酸系単量体を含有する単量体混合物(I)の重合物(Y2)」であるものではない。
ウ したがって、本願発明1と引用発明1は、次の点で一致し、また、相違する。
(一致点)
「金属ナノ粒子(X)及び有機化合物(Y)と、ノニオン性界面活性剤(Z)とを含有する金属ナノ粒子水分散液であって、前記有機化合物(Y)が、アニオン性官能基を有する有機化合物(Y1)であり、前記アニオン性官能基を有する有機化合物(Y1)が、スルホン酸基であるアニオン性官能基を有することを特徴とする金属ナノ粒子水分散液。」
(相違点1)
本願発明1は「金属ナノ粒子(X)及び有機化合物(Y)」が「複合体」を形成しているのに対して、引用発明1は「アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤から形成されるウオーム状ミセル」の表面に「銀ナノ粒子が」「凝集した銀ナノ粒子凝集体」を形成している点。
(相違点2)
「アニオン性官能基を有する有機化合物(Y1)」が、本願発明1では「(メタ)アクリル酸系単量体を含有する単量体混合物(I)の重合物(Y2)」であるのに対して、引用発明1ではそのような有機化合物ではない点。
(2)相違点についての判断
(2-1) 相違点1について
ア 相違点1について検討するにあたり、本願発明1における「複合体」がどのようなものであるか本願明細書の記載に基づいて確認する。本願明細書には「複合体」について次の記載がある。
「【0015】
前記金属ナノ粒子(X)を構成する金属は、水性の分散媒中で、長期間安定に均一な分散状態を保つために、金属ナノ粒子(X)の表面に、分散剤として有機化合物(Y)が吸着した金属ナノ粒子(X)及び有機化合物(Y)の複合体として用いる。前記有機化合物(Y)は、目的に応じて、適宜選択して用いればよいが、保存安定性の観点から、アニオン性官能基を有する化合物(Y1)が好ましい。」
「【0019】
前記重合物(Y2)は、カルボキシ基、リン酸基、亜リン酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、スルフェン酸基からなる群から選ばれる1種以上のアニオン性官能基を有するため、ヘテロ原子が有する非共有電子対を介して金属ナノ粒子(X)に吸着する機能を有すると同時に、金属ナノ粒子(X)表面に負の電荷を付与するので、粒子間の電荷反発によりコロイド粒子の凝集を防ぐことができ、水中で重合物(Y2)及び金属ナノ粒子(X)の複合体を安定的に分散できる。」
「【0031】
本発明の金属ナノ粒子水分散液に用いる複合体としては、前記の重合物(Y2)をコロイド保護剤として製造した、銀、銅、パラジウム等の金属ナノ粒子(X)との複合体を用いることができる。
【0032】
また、本発明の金属ナノ粒子水分散液に用いる複合体の調製方法としては、例えば、前記重合物(Y2)を水性媒体に溶解又は分散させた後、ここに、硝酸銀、酢酸銅、硝酸パラジウム等の金属化合物を添加し、必要に応じて錯化剤を添加し均一な分散体とした後、還元剤を混合することによって、前記金属化合物を還元し、還元された金属がナノサイズ粒子(ナノメートルオーダーの大きさを有する微粒子)となると同時に前記重合物(Y2)と複合した金属ナノ粒子(X)の水性分散体として得る方法が挙げられる。なお、錯化剤を用いる場合、還元剤と同時に混合してもよい。」
「【0037】
特に、前記金属ナノ粒子(X)が前記重合体(X-2)(審決注:「重合物(Y2)」の誤記と認められる。)で保護された複合体は、水性媒体、即ち水や水と相溶可能な有機溶剤との混合溶剤中において、0.01~70質量%程度の範囲で分散することが可能であり、不純物の混入が無い条件下で、室温(~25℃)において、数ヶ月程度は凝集することが無く、安定に保存できる。」
「【0055】
(合成例1:アニオン性官能基を有する重合物(Y2-1)の合成)
温度計、攪拌機及び還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、メチルエチルケトン(以下、「MEK」と略記する。)32質量部及びエタノール32質量部を仕込んで、窒素気流下で攪拌しながら80℃に昇温した。次に、ホスホオキシエチルメタクリレート(共栄社化学株式会社製「ライトエステル P-1M」)20質量部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマー PME-1000」、分子量1,000)80質量部、3-メルカプトプロピオン酸メチル4.1質量部及びMEK80質量部の混合物と、重合開始剤(和光純薬株式会社「V-65」、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル))0.5質量部及びMEK5質量部の混合物とをそれぞれ2時間かけて滴下した。滴下終了後、4時間ごとに重合開始剤(日油株式会社製「パーブチルO」)0.3質量部を2回添加し、80℃で12時間攪拌した。得られた樹脂溶液に水を加え転相乳化し、減圧脱溶剤した後、水を加えて濃度を調整することで、不揮発分76.8質量%の重合物(Y2-1)の水溶液が得られた。この重合物(Y2-1)は、メトキシカルボニルエチルチオ基、リン酸基及びポリエチレングリコール鎖を有するものであり、その重量平均分子量(ゲルパーミエーション・クロマトグラフィーにより測定されたポリスチレン換算値)は4,300、酸価は97.5mgKOH/gであった。
【0056】
(調製例1:銀ナノ粒子水分散液の調製)
N,N-ジエチルヒドロキシルアミンの85質量%水溶液463g(4.41mol)、合成例1で得られた重合物(Y2-1)の水溶液30g((Y2-1)として23g)及び水1,250gを混合し還元剤溶液を調製した。
【0057】
また、合成例1で得られた重合物(Y2-1)の水溶液15g(重合物(Y2-1)として11.5g)を水333gに溶解し、これに硝酸銀500g(2.94mol)を水833gに溶解した溶液を加えて、よく攪拌した。この混合物に上記で得られた還元剤溶液を室温(25℃)で2時間かけて滴下した。得られた反応混合物をメンブレンフィルター(細孔径0.45マイクロメートル)で濾過し、濾液を中空糸型限外濾過モジュール(ダイセンメンブレンシステムズ社製「MOLSEPモジュールFB-02型」、分画分子量15万)中を循環させ、流出する濾液の量に対応する量の水を随時添加して精製した。濾液の電導度が100μS/cm以下になったことを確認した後、注水を中止して濃縮した。濃縮物を回収することで、不揮発分36.7質量%の銀ナノ粒子含有複合体の水分散液が得られた。動的光散乱法による複合体の平均粒子径は39nmであり、透過型電子顕微鏡(TEM)像からは10~40nmと見積もられた。
【0058】
次いで、上記で得られた不揮発分36.7質量%の銀ナノ粒子含有複合体の水分散液にイオン交換水を加え、水分散液中の銀ナノ粒子含有複合体の含有量が10質量%になるように調製し、銀ナノ粒子水分散液を得た。
・・・
【0060】
(実施例1)
1Lビーカーに1質量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート水溶液を5.0g、及び調製例1で得られた10質量%銀ナノ粒子水分散液5.0gを加え、イオン交換水990gで希釈した。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、及びガラスの各基材を浸漬したところ、基材は着色せず、銀ナノ粒子は、ほとんど付着しなかった。界面活性剤添加によって、基材への銀ナノ粒子の吸着を抑止できることが確認できた。」
イ 本願明細書の段落【0015】、【0019】によれば、複合体は、金属ナノ粒子(X)の表面に、分散剤として有機化合物(Y)が吸着したものであり、当該吸着は、当該有機化合物である重合物(Y2)のヘテロ原子が有する非共有電子対を介してなされているものである。
また、同段落【0032】によれば、複合体は、重合物(Y2)を水性媒体に溶解又は分散させた後、ここに、硝酸銀、酢酸銅、硝酸パラジウム等の金属化合物を添加し、還元剤を混合することによって、前記金属化合物を還元して、還元された金属をナノサイズ粒子とすると同時に、重合物(Y2)と金属ナノ粒子(X)とを複合することによって得ることができるものである。
また、同段落【0055】~【0057】によれば、銀ナノ粒子含有複合体の水分散液のより詳細な製法が記載されており、具体的には、「1種以上のアニオン性官能基を有する(メタ)アクリル酸系単量体」である、ホスホオキシエチルメタクリレートとメトキシポリエチレングリコールメタクリレートを重合させて重合物(Y2-1)の水溶液を得、当該水溶液に、硝酸銀水溶液と還元剤溶液を加えて攪拌することにより、銀ナノ粒子含有複合体の水分散液を得ることができる。そして、同段落【0060】によれば、得られた上記銀ナノ粒子含有複合体の水分散液に、「ノニオン性界面活性剤」であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート水溶液を加えている。
ウ 上記イの検討によれば、本願発明1の「複合体」は、金属ナノ粒子(X)の表面に有機化合物(Y)が吸着することにより形成されたものであり、ノニオン性界面活性剤(Z)は複合体の水分散液に後から追加で添加されるものである。したがって、「複合体」は「金属ナノ粒子(X)及び有機化合物(Y)」からなるものであって、「複合体」中に「ノニオン性界面活性剤(Z)」は含まれないものといえる。
エ 一方、引用発明1において、「ウオーム状ミセル」の表面に「銀ナノ粒子が」「凝集した銀ナノ粒子凝集体」は、「ウオーム状ミセル」が「アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤から形成される」ものであるから、少なくとも「銀ナノ粒子」と「アニオン界面活性剤」を含む「複合体」であるとはいえるが、当該「ウオーム状ミセル」の表面に「銀ナノ粒子が」「凝集した銀ナノ粒子凝集体」は、「銀ナノ粒子」と「アニオン界面活性剤」のみならず「ノニオン性界面活性剤」も含むものである点で、本願発明1の「複合体」と相違するものである。
オ そこで、引用発明1において、「ウオーム状ミセル」の表面に「銀ナノ粒子が」「凝集した銀ナノ粒子凝集体」から、「ノニオン性界面活性剤」を除去することにより、本願発明1と同様の「金属ナノ粒子(X)及び有機化合物(Y)の複合体」とすることが可能であるかについて、検討する。
上記第4 1. 1-2.のアで検討したように、引用文献1における課題は、nmレベルの金属ナノ粒子を作成すると共に、粒子の分散安定性に優れた金属ナノ粒子分散液を提供することであり、特に後者の分散安定性については、上記1イの段落【0005】に記載されているように、「金属ナノ粒子を系全体に均一分散させるのではなく、制御された形態にミクロなレベルで凝集させる」ことを目標としており、具体的には、制御された形態を備えていると認められる「ウオーム状ミセル」を用いて分散安定性を実現しようとするものである。
つまり、引用発明1において「ウオーム状ミセル」は分散安定性を実現するために必須の構成であるといえる。
そして、「ウオーム状ミセル」は「アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤から形成される」ものであって、ノニオン界面活性剤を使用せずアニオン界面活性剤のみを使用することによっても形成できるかについては、引用文献1の記載からは不明であるし、当業者にとって自明の事項であるともいえない。
カ したがって、引用発明1において、「ウオーム状ミセル」の表面に「銀ナノ粒子が」「凝集した銀ナノ粒子凝集体」を形成するにあたり、「ノニオン性界面活性剤」を「ウオーム状ミセル」の形成に使用しないことによって、引用発明1における必須の構成である「ウオーム状ミセル」の形成が維持できるとはいえないから、引用発明1において、「ウオーム状ミセル」の表面に「銀ナノ粒子が」「凝集した銀ナノ粒子凝集体」から、「ノニオン性界面活性剤」を除去することにより、本願発明1の「金属ナノ粒子(X)及び有機化合物(Y)の複合体」とすることが容易であるとはいえない。
よって、引用発明1において、相違点1に係る本願発明1の構成とすることが、当業者にとって容易になし得ることであるとはいえない。
(2-2) 相違点2について
ア 上記(2-1)のイの検討によれば、本願発明1の「複合体」を製造するために、「1種以上のアニオン性官能基を有する(メタ)アクリル酸系単量体」を重合させて重合物の水溶液を得、当該水溶液に、硝酸銀水溶液と還元剤溶液を加えて攪拌することにより、銀ナノ粒子に重合物が吸着した銀ナノ粒子含有複合体の水分散液を得ているのに対して、上記第4 1. 1-2.のウの検討によれば、引用発明1では、アニオン界面活性剤であるソジウムドデシルサルフェイト(SDS)の水溶液に、ノニオン界面活性剤であるトリオキシエチレンモノドデシルエーテル(C12EO3)を加えて均一無色透明水溶液を調製し、上記水溶液に硝酸銀(AgNO3)水溶液と還元剤溶液を添加することにより、銀ナノ粒子が当該ウオーム状ミセルの表面に凝集した銀ナノ粒子凝集体を得ている。
つまり、「アニオン性官能基を有する有機化合物(Y1)」について、本願発明1では、「1種以上のアニオン性官能基を有する(メタ)アクリル酸系単量体を含有する単量体混合物(I)」を重合させた「重合物(Y2)」としているのに対して、引用発明では、「アニオン性官能基を有する有機化合物」である「ソジウムドデシルサルフェイト(SDS)」を重合させることなく、「ノニオン界面活性剤」である「トリオキシエチレンモノドデシルエーテル(C12EO3)」とともに、「ウオーム状ミセル」を形成している。
イ そして、引用発明1において「ウオーム状ミセル」は、「ソジウムドデシルサルフェイト(SDS)」と「トリオキシエチレンモノドデシルエーテル(C12EO3)」が集合することによって形成されているものであって、「ソジウムドデシルサルフェイト(SDS)」自体は、その化学式がCH3(CH2)11SO4Naで表され、二重結合を有していないことから重合可能な単量体であるとはいえないし、仮に何らかの方法で「ソジウムドデシルサルフェイト(SDS)」を重合させることが可能であるとしても、そのような重合した「ソジウムドデシルサルフェイト(SDS)」を用いて「ウオーム状ミセル」が形成できることについては、引用文献1に記載されていないし、当業者にとって自明の事項ともいえない。
ウ また、引用文献2には、In-Situ重合法マイクロカプセルの製造に用いられるアニオン系高分子界面活性剤として、(c)アクリルアミドアルキルスルホン酸および/またはスルホアルキルアクリレートを含む、3成分以上のビニル性モノマーを共重合させることにより得られる多元共重合体が記載されており、引用文献3には、磁気ディスク基板の製造方法に用いられる研磨液組成物Aに含まれる界面活性剤であって、分子量が300~300000の高分子陰イオン界面活性剤であって、当該高分子陰イオン界面活性剤が、ポリアクリル酸及びその塩である界面活性剤が記載されている。
つまり、界面活性剤の用途については差し置くとしても、引用文献2、3には、少なくとも、本願発明1の「1種以上のアニオン性官能基を有する(メタ)アクリル酸系単量体を含有する単量体混合物(I)の重合物(Y2)」が記載されているといえる。
しかしながら、引用発明1において、使用可能な「アニオン界面活性剤」は「ソジウムドデシルサルフェイト(SDS)」であるし、引用文献1において「アニオン界面活性剤」として「ソジウムドデシルサルフェイト(SDS)」以外に例示されているのは、「ソジウムトリオキシエチレンサルフェイト(SDES)、ソジウムドデシルベンゼンサルフェイト(SDBS)、ジソジウム2,3-ジドデシル-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレイト(GB)、ソジウムオレエイト(NaOA)、ソジウム4-(8-メタクリロイルオキシオクチル)オキシベンゼンサルフェイト(MOBS)、ソジウムコレート、ソジウムジオキシコレート」であって、いずれも単量体が重合した重合物は示されておらず、これら重合物ではない「アニオン界面活性剤」に代えて、引用文献2や引用文献3に記載のアニオン系高分子界面活性剤を採用した場合に、「ウオーム状ミセル」が形成できるかは引用文献1の記載からは不明であるし、「ウオーム状ミセル」が形成できることが当業者にとって自明の事項であるともいえない。
エ したがって、引用発明1において、「アニオン性官能基を有する有機化合物(Y1)」として、「ソジウムドデシルサルフェイト(SDS)」に代えて、「1種以上のアニオン性官能基を有する(メタ)アクリル酸系単量体を含有する単量体混合物(I)の重合物(Y2)」を採用すること、すなわち、相違点2に係る本願発明1の構成とすることが、当業者にとって容易になし得ることであるとはいえない。
(2-3) 小括
以上の検討から、引用発明1において、引用文献2及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて、上記相違点1及び上記相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者にとって容易になし得ることであるとはいえない。
したがって、本願発明1は、当業者が、引用発明1並びに引用文献2及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
2.本願発明2~5について
本願発明2~5はいずれも、請求項1を引用することによって、本願発明1の「金属ナノ粒子(X)及び有機化合物(Y)の複合体」及び「前記アニオン性官能基を有する有機化合物(Y1)が、カルボキシ基、リン酸基、亜リン酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基及びスルフェン酸基からなる群から選ばれる1種以上のアニオン性官能基を有する(メタ)アクリル酸系単量体を含有する単量体混合物(I)の重合物(Y2)」という特定事項を有するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者が、引用発明1並びに引用文献2及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1~5はいずれも、当業者が引用発明1並びに引用文献2及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2018-002959