特許拒絶査定不服審判
2018-002420
接着剤滴下装置
- 審判番号
- 2018-002420
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-565544外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年02月21日
- 審決日
- 2018年11月14日
- 公報発行日
- 2019年05月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】シャオミ・インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】廣田 浩一
- 【請求人代理人】流 良広
- 【請求人代理人】松田 奈緒子
- 【請求人代理人】山下 武志
- 分類
- P18 .121-Z (B05C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-565544「接着剤滴下装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月30日国際公開、WO2016/101483、平成29年 3月16日国内公表、特表2017-507022〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 主な手続の経緯
本願は,国際出願日である平成27年4月30日(パリ条約に基づく優先権主張 2014年12月26日 中華人民共和国)にされたとみなされる特許出願であって,平成29年2月23日付けで拒絶理由が通知され,同年5月30日に意見書及び手続補正書が提出され,同年10月19日付けで拒絶査定がされ,これに対して,平成30年2月21日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
第2 本願発明について
本願の請求項1~6に係る発明は,平成29年5月30日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載されている事項により特定されるとおりのものであると認められ,そのうち,請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりである。
「第二の物体の第二の接着面と相互に接着するための表面である第一の物体の第一の接着面の位置を固定するための位置規制空間が設けられる装置本体を備える接着剤滴下装置であって,
前記位置規制空間の,前記第二の接着面に向かう開口周縁の上面及び前記開口周縁の内側壁に離型層が設けられ,前記離型層が,離型コーティング又は離型めっき層であることを特徴とする接着剤滴下装置。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,要するに,本願発明は,本願の優先日前に頒布された刊行物である下記引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
引用文献1: 特開平7-290630号公報
第4 合議体の認定,判断
1 引用発明
(1) 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には,次の記載がある。(下線は審決で付記。以下同じ。)
ア 「【請求項1】 防振ゴムと金属を接着する方法において,接着剤として無溶剤系の接着剤を使用するとともに,上記防振ゴムの接着面の周囲を保持部材にて位置保持し,上記防振ゴムの変位または変形を規制しつつ接着を行なうことを特徴とする防振ゴムと金属の接着方法。
【請求項2】 上記防振ゴムと上記金属とを接着剤を介して接合した後,接着面に所定の面圧を加えた状態で接着を行なうことを特徴とする請求項1記載の防振ゴムと金属の接着方法。
【請求項3】 防振ゴムと金属を接着してなる防振ゴム体であって,上記金属に,上記防振ゴムの接着面の周囲を位置保持する保持部を設けて,接着時に上記防振ゴムの接着端面の変位または変形を規制するようになしたことを特徴とする防振ゴム体。」(【特許請求の範囲】)
イ 「【0011】上記防振ゴム1と支持板2,3との接着に使用される接着剤としては,無溶剤系の接着剤が用いられ,具体的には,エポキシ系,ウレタン系,アクリル系樹脂等の接着成分を主体とする接着剤が好適に使用できる。これを上記支持板2,3の接着面21,31に塗布し,これらの間に上記防振ゴム1を配する。上記支持板2,3は,通常,図示しない治具にて固定され,上下より接着面に所定の面圧が加えられる。また,上記防振ゴム1の周囲を取り囲むように環状の保持部材5を配する。
【0012】上記保持部材5は,内周壁の上下端部に上記防振ゴム1形状に沿う段差51を有する。この段差51は,上記防振ゴム1の接着面11,12の周囲に当接してこれを保持し,両接着面11,12が圧縮されて周方向に広がることを防止する。また上記保持部材5は上方の上記支持板2,3との間に間隙aを有しており,上記防振ゴム1の上下方向の圧縮を妨げないようにしてある。なお,上記保持部材5内周壁の中間部には凹部52が設けてある。上記防振ゴム1が上下方向に圧縮された時に,両端の接着面11,12が保持されているため,防振ゴムの中間部が膨らむことになるが,上記凹部52はこれを妨げないためのものである。
【0013】次いで,使用する無溶剤系接着剤の熱硬化温度まで加熱し,所定時間保持することにより接着がなされる。硬化温度は使用する接着剤の種類によって異なるが,例えばウレタン系接着剤で120℃程度であり,約60分保持することにより,良好な接着強度が得られる。このように熱硬化温度が比較的低い無溶剤系接着剤を用いれば,加硫ゴムを用いても,加熱により再加硫等が生じることがなく,ゴム特性の低下が防止できる。
【0014】かくして,防振ゴム1は上記保持部材5により容易に位置決めされるので,接着面のずれ等が生ずることがない。また,接着面に一定の面圧を加えることにより接着力が高まる。しかも接着面が広がることがないので,防振ゴム1内に縮み方向の応力が残留することがなく,接着性をより向上させる。なお,接着面に面圧を加える場合,圧縮により接着面の接着剤が周方向にはみ出すおそれがあるが,上記保持部材5の上下端面は離型剤を塗布するか,シリコン樹脂等で処理することにより,保持部材5の取り外しを容易にできる。」
ウ 「【0018】図3は,本発明の第3の実施例である。本実施例では金属製支持部材2,3を固定する上治具6,下治具7が保持部材として機能する。図3(A)において,上治具6は中央が陥没して上記支持部材2に沿う形状としてあり,外周端部はさらに下方に延びて防振ゴム1端面の外周を保持する保持部61となしてある。下治具7にも同様の保持部71が形成してある。これら保持部61,71の端部は外方に逃げるように滑らかな曲面となり,上治具6を上方向から圧縮した時に,防振ゴム1の端部を除く部分が周方向に膨らむための空間を形成している(図3(B))。接着時には,上記保持部61,71が,防振ゴム1の接着面を保持し,接着面のずれや変形を防止するとともに,圧縮により接着剤がはみ出すことを防止する。なお,上治具6,下治具7は少なくとも保持部61,71の内周面,あるいは全体をシリコン樹脂等の非接着性材料で構成してある。また両治具6,7の中心部には貫通孔が形成してあって,製品取出し用のピンを挿入するようになしてある。」
エ 「【図1】
」(図1)
オ 「【図3】
」(図3)
(2) 上記(1)の摘記,特に摘記イ及びエの記載から,引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「防振ゴム1と支持板2,3とを接着する接着装置であって,支持板2,3を固定する治具と,上下端面と内周壁を備えるとともに内周壁の上下端部に防振ゴムの形状に沿う段差51を備える環状の保持部材5とを有し,当該環状の保持部材5の上下端面は離型剤を塗布するかシリコン樹脂等で処理したものであり,
防振ゴム1の周囲を取り囲むように環状の保持部材5が配され,防振ゴムは保持部材により位置決めされ,支持板2,3の接着面21,31に無溶剤系接着剤が塗布され,支持板2,3は治具により固定され,上下より接着面21,31に所定の面圧が加えられ,無溶剤系接着剤を使用する無溶剤系接着剤の熱硬化温度まで加熱し,所定時間保持することにより接着がなされるものである,
防振ゴムと支持板の接着装置。」
2 対比
本願発明と引用発明を対比すると,引用発明の「防振ゴム1」,「支持板2,3」は,それぞれ,本願発明の「第一の物体」,「第二の物体」に相当し,引用発明の支持板2,3の接着面21に対向する防振ゴム側の接着面は,「第一の接着面」に,支持板2,3の接着面21は,「第2の接着面」に相当する。
引用発明は,「環状の保持部材5」により防振ゴム(第一の物体)が位置決めされるものであるから,引用発明の環状の保持部材により位置決めされた時の防振ゴムが存在している空間部分が,本願発明の「第一の物体の第一の接着面の位置を固定するための位置規制空間」といえ,位置決めに利用される「環状の保持部材5」が,本願発明の「第一の物体の第一の接着面の位置を固定するための位置規制空間が設けられる装置本体」に相当する。そうすると,引用発明の環状の保持部材の上下端面は,本願発明の「位置規制空間の,第二の接着面に向かう開口周縁の上面」に相当する。
引用発明は,「環状の保持部材5の上下端面」に「離型剤を塗布」したものであり,塗布された離型剤が離型層を形成することは明らかであって,「離型剤の塗布」は離型コーティングを行っているといえるから,引用発明は,本願発明と同様に,「位置規制空間の,前記第二の接着面に向かう開口周縁の上面に離型層が設けられ,前記離型層が,離型コーティング」であるとの構成を備えているといえる。
引用発明の「防振ゴムと支持板の接着装置」は,接着剤が塗布される装置であるから,本願発明の「接着剤滴下装置」といえる。
そうすると,両発明の一致点,相違点はそれぞれ次のとおりと認めることができる。
・ 一致点
「第二の物体の第二の接着面と相互に接着するための表面である第一の物体の第一の接着面の位置を固定するための位置規制空間が設けられる装置本体を備える接着剤滴下装置であって,
前記位置規制空間の,前記第二の接着面に向かう開口周縁の上面に離型層が設けられ,前記離型層が,離型コーティング又は離型めっき層である,接着剤滴下装置。」である点。
・ 相違点
離型層(保持部材に塗布される離型剤によって形成される層)が設けられる部位について,本願発明は,「第二の接着面に向かう開口周縁の上面」とともに「開口周縁の内側壁」にも設けられると特定するのに対し,引用発明では「開口周縁の内側壁」に設けられる点を特定しない点。
3 相違点についての判断
引用発明の保持部材には,その内周壁の上下端部に上記防振ゴム1の形状に沿う段差51が設けられており,引用文献1の段落【0012】(上記(1)イ)の記載によれば,当該段差51は,防振ゴム1の接着面11,12の周囲に当接してこれを保持し,両接着面11,12が圧縮されて周囲に広がることを防止するためのものであるから,当該段差部分は,本願発明の「開口周縁の内側壁」に相当するものである。
ここで,上記引用発明は図1に係る実施例に基づいて認定したものであるが,この引用発明とは異なる実施の態様である引用文献1の図3に記載されている第3の実施例をみると,接着時に防振ゴム1が膨らむための空間部分も含めた上治具6及び下治具7(引用発明の保持部材に相当)の内周面をシリコン樹脂等の非接着性材料で構成することが記載されているから,引用文献1には,保持部材において防振ゴムが膨らむための空間部分も非接着性材料で構成することについての示唆があるといえる。
そうすると,上記第3の実施例を参酌した当業者は,引用発明において,防振ゴムが膨らむための空間部分にあたる段差部分も非接着性材料で構成できるように,離型剤を塗布する範囲(離型層が設けられる部位)について,保持部材5の上下端面(開口周縁の上面)とともに段差部分(開口周縁の内側壁)にも塗布して離型層を形成するようにすることは,容易に想到し得たことといえる。
請求人は,審判請求書において,本願発明と引用発明の課題は相違し,本願発明の「装置本体1には,第一の物体2の第一の接着面20の位置を固定するための位置規制空間3が設けられ」る構成が引用文献1とは異なることになり,当該相違点に係る構成を採用する動機づけがなく,容易に想到し得たとはいえない旨主張する。
しかし,上記2の対比において記載のとおり,引用発明においても「第一の物体の第一の接着面の位置を固定するための位置規制空間が設けられる装置本体」を有しており、これは請求人が主張するところの本願発明の「装置本体1には,第一の物体2の第一の接着面20の位置を固定するための位置規制空間3が設けられ」との構成に相当する。
そうすると,請求人の主張は,その前提において失当であって,採用できない。
4 小括
以上のとおり,本願発明は,引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。
第5 むすび
したがって,本願発明は,本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明を主たる引用発明として,この引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると,本願の他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2018-002420