特許拒絶査定不服審判
2018-000740
二重急冷を伴う二段階ガス化
- 審判番号
- 2018-000740
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-158467外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年01月19日
- 審決日
- 2018年06月05日
- 公報発行日
- 2018年07月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ルムス テクノロジー インク.
- 【請求人代理人】特許業務法人平和国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (C10J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-158467「二重急冷を伴う二段階ガス化」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月26日出願公開、特開2017- 20038、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、平成25年6月26日を国際出願日とする特願2015-520430号(パリ条約による優先権主張 2012年6月26日、米(US))の一部を、平成28年8月12日に新たな特許出願としたものであって、平成28年9月7日に手続補正がされ、平成29年5月24日付けで拒絶理由通知がされ、同年8月30日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がされ、同年9月11日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、平成30年1月19日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
2.原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願請求項1~18に係る発明は、以下の引用文献1~5に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特表2012-512318号公報
2.特表2012-500297号公報
3.特表2008-540717号公報
4.特開2010-132902号公報
5.特表2009-511692号公報
3.本願発明
本願請求項1~18に係る発明(以下、項番号に応じて、「本願発明1」などという。)は、平成29年8月30日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~18に記載されたとおりの次のものと認める。
「【請求項1】
二段階無触媒ガス化プロセスであって、
(a)含微粒子炭素質原料を二段階ガス化反応器の反応器低部セクションへと導入し、その中で、酸素含有ガス、蒸気、及びそれらの混合物からなる群より選択される、酸素供給を含むガス流により部分的に燃焼し、それにより、熱を発生させ、合成ガスと融解スラグとを含む第一の生成物流れを形成し;
(b)工程(a)の前記合成ガスを、前記二段階ガス化反応器の反応器上部セクションへと通過させ、その中で、液体担体中の含微粒子炭素質原料のスラリーを含む流れと接触させ、合成ガスと、灰分及びチャーを含む固体とを含む第二の生成物流れを回収し;
(c)前記反応器上部セクションから回収された前記第二の生成物流れを、816℃(1500°F)より高い温度に維持された反応器へと通過させ、その際、前記合成ガス中に存在する揮発性タールを熱的に分解するのに十分な時間、前記合成ガスが前記反応器中に存在し、それにより、タールがほぼゼロである合成ガスを含む生成物を生成し;
(d)前記タールがほぼゼロである合成ガスを、直接、前記反応器から、導管を通して粒子濾過装置へと運び、その中で、水の流れを導入し、前記タールがほぼゼロである合成ガスと接触させ、それにより、蒸気と、冷却され湿気を与えられた合成ガスとを生成し、その際、前記冷却され湿気を与えられた合成ガスの温度は、前記蒸気の凝縮温度より高いが649℃(1200°F)未満に維持され;
(e)前記微粒子濾過装置において、前記冷却され湿気を与えられた合成ガスから、残留固体、微粉、及び微粒子を除去し、それにより、微粒子を含まない合成ガスを生成することを含む前記プロセス。
【請求項2】
前記微粒子の少ない合成ガスを、少なくとも一つの触媒を含有するシフト反応器へと送り、工程(e)の前記微粒子を含まない合成ガス中に存在する一酸化炭素の少なくとも一部を、工程(d)において生成された蒸気、及び、前記シフト反応器中又はそのすぐ上流に水を注入することにより生成される追加の蒸気と反応させ、それにより、追加の二酸化炭素と水素とを含むシフトされた合成ガスを生成することを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記冷却され湿気を与えられた合成ガスの温度が、当該冷却され湿気を与えられた合成ガスの一又はそれより多い成分の凝縮を防ぐのに充分であり、一又はそれより多い成分の凝縮により、工程(e)の前記微粒子濾過装置上にそれら成分が堆積する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記一又はそれより多い成分が、水、灰分構成物質、及び残留する揮発性タールからなる群より選択される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
工程(d)の前記水の流れが、ボイラー供給水より低い品質のものである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
工程(e)の前記残留固体、微粉、及び微粒子を、前記反応器低部セクションに戻す、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
工程(e)の前記冷却され湿気を与えられた合成ガスの温度が、288℃(550°F)~649℃(1200°F)である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
工程(e)の前記冷却され湿気を与えられた合成ガスの温度が、316℃(600°F)~593℃(1100°F)である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
工程(e)の前記冷却され湿気を与えられた合成ガスの温度が、232℃(450°F)~538℃(1000°F)である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
工程(e)の前記冷却され湿気を与えられた合成ガスの温度が、288℃(550°F)~510℃(950°F)である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
工程(e)の前記冷却され湿気を与えられた合成ガスの温度が、316℃(600°F)~510℃(950°F)である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記微粒子を含まない合成ガスから二酸化炭素を回収することを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
前記シフトされた合成ガスの少なくとも一部を、化学製造プロセス又は燃料製造プロセスのための原料として使用する、請求項2に記載のプロセス。
【請求項14】
前記シフトされた合成ガスから二酸化炭素を回収することを更に含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項15】
含微粒子炭素質原料の二段階ガス化のためのシステムであって、
(a)689kPaG(100psig)より高い圧力及び1093℃(2000°F)より高い温度での運転に適合された、反応器上部セクションと反応器下部セクションとを含むガス化反応器であって、前記反応器下部セクションは、前記含微粒子炭素質原料と酸素含有ガス又は蒸気とを導入し、かつ、その中で部分的に燃焼させて混合物生成物を形成するように適合され、前記ガス化反応器は、前記反応器下部セクションからの前記混合物生成物を前記反応器上部セクションへと導入するように適合され、前記反応器上部セクションは、追加の含微粒子炭素質原料を液体担体中へと導入し、かつ、前記混合物反応物と組み合わせて、合成ガス、チャー、灰分、及び揮発性タールを含む生成物流れを吸熱反応により生成するように適合されている、前記ガス化反応器と;
(b)前記ガス化反応器から下流に設置された滞留容器であって、前記生成物流れを受け入れ、かつ、689kPaG(100psig)より高い圧力及び816℃(1500°F)より高い温度にて運転するように適合され、その中を運ばれる前記生成物流れが、前記微粒子が低減された合成ガス中に存在する揮発性タールの大部分を熱分解させるのに充分な滞留時間を提供して、それによりタールがほぼゼロである合成ガスを生成するように適合された、前記滞留容器と;
(c)前記滞留容器からすぐ下流に設置され前記滞留容器に接続された少なくとも一つの入口を含む導管であって、前記すくなくとも一つの入口は、前記タールがほぼゼロである合成ガスを受容し、水を含む急冷媒体を導入し、その中を運ばれる前記タールがほぼゼロである合成ガスと混合するように適合されている、前記導管と;
(d)前記導管のすぐ下流に設置され前記導管に接続された微粒子濾過装置であって、
288℃(550°F)~649℃(1200°F)である冷却され湿気を与えられた合成ガスを受容し、かつ、その中を通過する前記冷却され湿気を与えられた合成ガスから、残留固体、微粉、及び微粒子を除去し、それにより微粒子を含まない合成ガスを生成するように適合されている、前記微粒子濾過装置と、
を含む前記システム。
【請求項16】
前記微粒子濾過装置の下流に設置され前記微粒子濾過装置に接続されたシフト反応器をさらに含み、前記シフト反応器は、触媒を含み、かつ、204℃(400°F)~482℃(900°F)の温度にて運転するように適合され、その中を通過する前記微粒子を含まない合成ガス中に存在する二酸化炭素と蒸気を反応させて、それにより、シフトされた合成ガスを生成するように適合されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記微粒子を含まない合成ガスから二酸化炭素を回収するための装置をさらに含み、前記装置は、前記シフト反応器から下流に設置されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
(d)の前記微粒子濾過装置は、649℃(1200°F)までの温度にて運転するように適合された要素を含むキャンドルフィルターである、請求項15に記載のシステム。」
4.引用文献の記載
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0002】
本発明は、一般に、ガス化系および炭素質材料などの概ね固体のフィード原料を合成ガスなどの望ましいガス状生成物に変換するための方法に関する。このガス化系および方法は、単純であるが、最大の転化効率をもたらすように設計されなければならない。」
「【0008】
本発明の特定の態様は、a)再循環チャーと、粒子状炭素質材料を含む固体流を含んだ乾燥フィード原料を反応器下部区分の中に導入し、酸素含有ガス、水蒸気、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸素供給体を含むガス流と共にその中で部分燃焼させて、それにより熱を発生させ、合成ガスと溶融スラグを含む生成物を形成する段階;b)前記反応器下部区分からの合成ガスを反応器上部区分の中に上向きに通し、その中で液体キャリア中の粒子状炭素質材料のスラリーを含む第1のスラリー流と共に熱分解し、それにより合成ガスとチャーを含むガス状生成物流を含む混合物生成物を形成する段階;c)段階(b)の混合物生成物を熱回収域に通す段階;d)液体キャリア中に粒子状炭素質材料を含む第2のスラリーと、前記熱回収域を出る混合物生成物を乾燥ユニットの中に導入し、そこで、第2のスラリー流中の水を蒸発させ、粒子状炭素質材料を含む固体流を形成させる段階;e)前記混合物生成物および段階(d)の固体流を分離装置に通し、それにより、前記チャーおよび固体流を前記ガス状生成物流から分離する段階;場合によってはf)段階(e)の前記ガス状生成物流を粒子濾過装置に通し、それにより、残存固体微粉および粒子状物質を前記ガス状生成物流から分離する段階;およびg)段階(e)からのチャーおよび乾燥した粒子状炭素質材料を含む前記乾燥原料、および段階f)からの残存固体微粉および粒子状物質を前記反応器下部区分に再循環により戻す段階を含む、炭素質材料をガス化するための方法に関する。このような工程の間、前記段階(a)で発生する熱は、段階(b)の粒子状炭素質材料およびキャリア液体を含む第1のスラリー流を段階(b)のガス状生成物流に変換することにより回収される。この方法は、熱回収域に入る前に第2段階反応の混合物生成物をタール除去滞留容器の中に導入する段階を更に含み得る。」
「【0018】
図1-2に示す本発明の態様では、反応器10の非燃焼反応器上部区分40は、反応器10の燃焼反応器下部区分30の頂部に直接に接続され、高温の反応生成物が反応器下部区分30から反応器上部区分40に直接に搬送されて、ガス状反応生成物および同伴固体における熱損失を最少化する。
【0019】
図1-2に図示するように、ガス化反応により生成するチャーは、炭素転化を増加させるように、除去および再循環され得る。例えば、チャーは、分散装置60および/または60a(または他の装置)から反応器下部区分、または上述の第1の反応域の中に再循環され得る。
【0020】
分散装置60および/または60aは、チャーなどの粒子状固体の微細化されたフィードを提供する。分散装置は、固体用の中心管および共通の混合域に内部的または外部的に開いた、微細化ガスを含有する中心管を取り囲む環状空間を有する形式のものであってもよい。更に、非燃焼反応器上部区分40のフィード装置80および/または80aは、本明細書で述べられている分散装置に類似してもよく、または単純にスラリーフィード用の管を含んでもよい。分散装置60および/または60a、またはフィード装置80および/または80aは、当業者に公知のように設計可能である。
【0021】
図1で更に示すように、反応器上部区分40中で起こる第2段階の反応の混合物生成物は、上部区分40の頂部から生じ、熱回収域90の中に導入され、それによって混合物生成物の温度が低下する。
【0022】
特定の態様では、熱回収域90は、輻射熱型ボイラーまたは水管ボイラーまたは火管ボイラーを含む。特定の他の態様では、熱回収域90は、低温の再循環合成ガスを急冷ガスとして含む。
【0023】
図1-2で示す態様では、第2段階の反応の混合物生成物は、熱回収域90を出、そこで液体キャリア中に粒子状炭素質材料を含む第2のスラリー流を、乾燥ユニット120の中にフィード装置130および/または130aから導入し、第2のスラリー流中の水を蒸発させる。このような工程により、粒子状炭素質材料を含む固体流が形成される。
【0024】
図1-2で更に図示するように、第2段階の混合物生成物および粒子状炭素質材料を含む固体流の合体された流れは、両方とも乾燥ユニット120から出、分離装置50の中に更に導入され、固体流およびガス流に分割され、ガス流中に少量の残存固体微粉のみが残る。
【0025】
分離装置50から出るガス流は、水素、一酸化炭素、少量のメタン、硫化水素、アンモニア、窒素、二酸化炭素および少量の残存固体微粉を含む。ガス流は、粒子状濾過装置110の中に更に導入されてもよく、そこで、残存固体微粉および粒子状物質を除去する。
【0026】
分離装置50を出る固体流は、乾燥した粒子状炭素質材料と共に非燃焼反応器の上部区分反応器40中で形成される固化したアッシュおよびチャーを含む。
【0027】
分離装置50から出る固体流および濾過装置110から出る残存固体微粉は、酸素含有ガスおよび/または水蒸気と混合され、第1段階の反応に対するフィード原料として分散装置60および/または60から燃焼反応器下部区分30に再循環により戻される。
【0028】
次いで、固体流は、スラグ化条件下で酸素および水蒸気との反応によりガス化されて、合成ガスを含む混合物生成物および上方反応器区分40内で第2段階の反応に必要とされる熱を生じる。
【0029】
図2に図示する別の態様では、第2段階の反応の混合物生成物は、反応器10の上部区分40の頂部から引き出され、限定ではないが、滞留容器100などのタール除去容器の中に熱回収域90に入る前に導入される。滞留容器の主要な機能は、混合物生成物中に存在するいかなるタール成分も破壊することである。
【0030】・・・(略)・・・
【0031】・・・(略)・・・
【0032】
第2段階の混合物生成物の温度は、通常、熱回収域90に入る前は約1700゜F~約1900゜Fである。熱回収域の運転パラメーターは、炭素質粒子の型および液体キャリア中の粒子状炭素質材料の濃度によって調整される。特に、乾燥ユニット120から出る、第2段階の混合物生成物および粒子状炭素質材料を含む固体流の合体流の最終温度が300と900゜Fとの間、好ましくは400と700゜Fとの間、および最も好ましくは500゜F近傍となるように、熱回収工程を運転する温度は、調整および制御されなければならない。このような温度においては、重い分子量のタール種は、通常、排出されない。結果として、分離装置50および粒子濾過装置110を出る合成ガスは、タールおよび粒子を含まず、更に酸ガス除去およびイオウ回収などを含む慣用の精製法により容易に処理可能である。」
「【図2】
」
(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の記載がある。
「【0018】
分離装置50から出て来た合成ガス、残存チャー微粒子および残存タールを含有して成る気体流れを反応ゾーン90に導入することで残存タールを除去する。反応ゾーン90に触媒床100を1床以上含有させる図1に示す如き1つの態様では、分離装置50から出て来た合成ガスと残存タールを含有して成る気体流れを触媒床100に入らせる前に熱交換器150に通すことで1800度Fに加熱しておく。触媒床100は、残存タールを分解させる1種以上のタール分解用触媒を含有して成る接触流動もしくはバブル床であってもよい。合成ガスを反応温度にするに必要な熱は外部で行う交換でか或は酸素と蒸気の混合物を合成ガス流れに注入することで供給可能である。炭素微粒子を一酸化炭素に変化させるか或は粒子状にして上方に移行させることで合成ガスを含有して成る流出気体状生成物と一緒に前記接触流動床100の中に通す。触媒床100は、また、残存タールを分解させる1種以上のタール分解用触媒を含有して成る接触固定床であってもよい。そのような場合には、触媒床の前方に位置させた粒子濾過装置を用いて炭素微粒子を除去する。接触流動床または接触固定床のいずれを用いる場合にも、冷流入気体流れ(または装置50から出て来る気体流れ)を用いた熱交換器150で反応ゾーン90から出て来た熱合成ガスを冷却することで熱を回収する。1つの態様に従い、その後、熱交換器150から出て来た冷気体流れ(この時点でタールが除去されている)を粒子濾過装置110に通すことで粒子を除去する。タール分解用触媒はゼオライト、担持ニッケル、石灰石またはこれらの任意混合物であってもよい。」
(3)引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、次の記載がある。
「【背景技術】
【0002】
合成ガスの製造方法は従来より周知である。合成ガス製造方法の一例は、EP-A-0400740に記載されている。一般に、石炭、褐炭、ピート、木材、コークス、煤、又はその他、ガス状、液体又は固体燃料又はその混合物のような炭素質流を、ほぼ純粋な酸素、(任意に酸素富化した)空気等の酸素含有ガスを用いてガス化反応器中で部分燃焼させ、これにより合成ガス(CO及びH2)、CO及びスラグ、その他を得ている。部分酸化中生成するスラグは降下し、反応器底部又はその近くに配置された出口から排出される。
【0003】
熱生成物ガス、即ち、粗合成ガスは、通常、粘着な粒子を含み、この粘着性は冷却によりなくなる。粗合成ガス中の粘着粒子は、更に処理する場合、ガス化反応器の下流で問題を起こす恐れがある。これは、例えば粘着粒子が壁、バルブ又は出口に堆積して、プロセスに悪影響を与える可能性があり、望ましくないからである。しかもこのような堆積は除去困難である。
【0004】
したがって、粗合成ガスはガス化反応器の下流に配置された急冷部で急冷される。急冷部では粗合成ガスの冷却のため、水蒸気のような好適な急冷媒体が粗合成ガス中に導入される。」
5.引用発明の認定
引用文献1には、【0008】の記載から、「熱回収域に入る前に第2段階反応の混合物生成物をタール除去滞留容器の中に導入する段階」を「段階b)」と「段階c)」との間に記載し、各「段階」について、A)等の記号を用いて表せば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「A)再循環チャーと、粒子状炭素質材料を含む固体流を含んだ乾燥フィード原料を反応器下部区分の中に導入し、酸素含有ガス、水蒸気、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸素供給体を含むガス流と共にその中で部分燃焼させて、それにより熱を発生させ、合成ガスと溶融スラグを含む生成物を形成する段階;
B)前記反応器下部区分からの合成ガスを反応器上部区分の中に上向きに通し、その中で液体キャリア中の粒子状炭素質材料のスラリーを含む第1のスラリー流と共に熱分解し、それにより合成ガスとチャーを含むガス状生成物流を含む混合物生成物を形成する段階;
C)第2段階反応の混合物生成物をタール除去滞留容器の中に導入する段階
D)段階(C)の混合物生成物を熱回収域に通す段階;
E)液体キャリア中に粒子状炭素質材料を含む第2のスラリーと、前記熱回収域を出る混合物生成物を乾燥ユニットの中に導入し、そこで、第2のスラリー流中の水を蒸発させ、粒子状炭素質材料を含む固体流を形成させる段階;
F)前記混合物生成物および段階(E)の固体流を分離装置に通し、それにより、前記チャーおよび固体流を前記ガス状生成物流から分離する段階;
G)段階(E)の前記ガス状生成物流を粒子濾過装置に通し、それにより、残存固体微粉および粒子状物質を前記ガス状生成物流から分離する段階;および
H)段階(F)からのチャーおよび乾燥した粒子状炭素質材料を含む前記乾燥原料、および段階G)からの残存固体微粉および粒子状物質を前記反応器下部区分に再循環により戻す段階を含む、炭素質材料をガス化するための方法。」
6.対比・判断
(1)本願発明1について
本願発明1と引用発明1とを対比する。本願発明について、本願の請求項1に「(b)工程(a)の・・・」という記載があるので、「(a)」~「(e)」の工程について、それぞれ「工程(a)」などと記載する。
ア 本願発明1の「工程(a)」と引用発明1の「段階A)」とについて
(ア)引用発明1の「粒子状炭素質材料」、「酸素含有ガス、水蒸気、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸素供給体」、「合成ガス」、「溶融スラグ」及び「合成ガスと溶融スラグを含む生成物生成物」は、本願発明1の「含微粒子炭素質原料」、「酸素含有ガス、蒸気、及びそれらの混合物からなる群より選択される、酸素供給を含むガス流」、「合成ガス」、「融解スラグ」及び「合成ガスと融解スラグとを含む第一の生成物流れ」に、それぞれ相当する。
(イ)引用発明1の「反応器下部区分」と「反応器上部区分」とを有する「反応器」は、本願発明1の「二段階ガス化反応器」に相当する。
(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用発明1の「段階A)」は、本願発明1の「工程(a)」に相当する。
イ 本願発明1の「工程(b)」と引用発明1の「段階B)」とについて
(ア)引用発明1の「反応器上部区分」、「上向きに通し」、「液体キャリア」、「第1のスラリー流」、「合成ガス」、「チャー」及び「合成ガスとチャーを含むガス状生成物流」は、本願発明1の「反応器上部セクション」、「通過させ」、「液体担体」、「含微粒子炭素質原料のスラリーを含む流れ」、「合成ガス」、「チャー」及び「灰分及びチャーを含む固体とを含む第二の生成物流れ」にそれぞれ相当する。
(イ)上記(ア)から、引用発明1の「段階B)」は、本願発明1の「工程(b)」に相当する。
ウ 本願発明1の「工程(c)」と引用発明1の「段階C)」とについて
引用発明1の「第2段階反応の混合物生成物」は、本願発明1の「反応器上部セクションから回収された第二の生成物流れ」に相当し、本願発明1の「反応器」と引用発明1の「タール除去滞留容器」とは、タールを除去する反応器である点で共通する。
エ 本願発明1の「工程(d)」と引用発明1の「段階D)」とについて
本願発明1の「前記タールがほぼゼロである合成ガス」と、引用発明1の「段階(C)の混合物生成物」とは、前の段階で生成された「合成ガス」である点で共通し、また、本願発明1の「工程(d)」と引用発明1の「段階D)」とは、冷却された合成ガスを生成する点で共通する。
オ 本願発明1の「工程(e)」と引用発明1の「段階E)」とについて
引用発明1の「粒子濾過装置」は、本願発明1の「微粒濾過装置」に相当し、本願発明1の「工程(e)」と引用発明1の「段階E)」とは、「微粒子濾過装置において、冷却された合成ガスから、残留固体、微粉、及び微粒子を除去し、それにより、微粒子を含まない合成ガスを生成すること」で共通する。
カ 引用発明1の「方法」は、触媒を用いてないプロセスであるから、本願発明1の「二段階無触媒ガス化プロセス」に相当する。
キ 上記ア~カから、本願発明1と引用発明1とは、
「二段階無触媒ガス化プロセスであって、
(a)含微粒子炭素質原料を二段階ガス化反応器の反応器低部セクションへと導入し、その中で、酸素含有ガス、蒸気、及びそれらの混合物からなる群より選択される、酸素供給を含むガス流により部分的に燃焼し、それにより、熱を発生させ、合成ガスと融解スラグとを含む第一の生成物流れを形成し;
(b)工程(a)の前記合成ガスを、前記二段階ガス化反応器の反応器上部セクションへと通過させ、その中で、液体担体中の含微粒子炭素質原料のスラリーを含む流れと接触させ、合成ガスと、灰分及びチャーを含む固体とを含む第二の生成物流れを回収し;
(c)前記反応器上部セクションから回収された前記第二の生成物流れを、反応器へと通過させ、タールが除去された合成ガスを含む生成物を生成し;
(d)前記タールが除去された合成ガスから冷却された合成ガスを生成し;
(e)前記微粒子濾過装置において、前記冷却され合成ガスから、残留固体、微粉、及び微粒子を除去し、それにより、微粒子を含まない合成ガスを生成することを含む前記プロセス。」で一致し、本願発明1は、他の工程を含むことを排除するものではないから、次の点で相違が認められる。
(相違点1)
「工程(c)」における生成物の処理について、本願発明1では、816℃(1500°F)より高い温度に維持された反応器へと通過させ、その際、合成ガス中に存在する揮発性タールを熱的に分解するのに十分な時間、前記合成ガスが前記反応器中に存在し、それにより、タールがほぼゼロである合成ガスを含む生成物が生成するものであるのに対し、引用発明1では、このような処理であるか不明な点。
(相違点2)
「工程(d)」における「冷却」について、本願発明1では、「直接、前記反応器から、導管を通して粒子濾過装置へと運び、その中で、水の流れを導入し」、「合成ガスと接触させ、それにより、蒸気と、冷却され湿気を与えられた合成ガスとを生成し、その際、前記冷却され湿気を与えられた合成ガスの温度は、前記蒸気の凝縮温度より高いが649℃(1200°F)未満に維持され」ているのに対し、引用発明1では、段階(C)の混合物生成物を「熱回収域に通す」ものであって、導管の中で水の流れを導入するものではなく、熱回収域を通った混合物生成物の温度は不明である点。
ここで、相違点について検討する。
(相違点1について)
引用発明1の「第2段階反応の混合物生成物」の、「タール除去滞留容器」における温度、「タール除去滞留容器」中の存在時間は不明であって、「段階(C)の混合物生成物」のタールの量は不明であるところ、上記「(相違点2)」において摘示した引用文献1の【0032】には、さらに、「・・・熱回収工程を運転する温度は、調整および制御されなければならない。このような温度においては、重い分子量のタール種は、通常、排出されない。結果として、分離装置50および粒子濾過装置110を出る合成ガスは、タールおよび粒子を含まず、更に酸ガス除去およびイオウ回収などを含む慣用の精製法により容易に処理可能である。」と記載されているように、引用発明1においては、重い分子量のタール種は、熱回収工程を運転する温度を調整及び制御することで排出されないようにするものであるから、引用発明1において、「熱回収域に通」される「段階(C)の混合物生成物」、すなわち、合成ガスのタールの量をほぼゼロとすることまでは想定していない。
一方、引用文献2には、「合成ガス、残存チャー微粒子および残存タールを含有して成る気体流れを反応ゾーン90に導入することで残存タールを除去する」(【0018】)ことが記載されていることから、仮に、上記「反応ゾーン90」によって、所定温度の合成ガスのタールをほぼゼロとすることが記載されているといえる。しかしながら、引用発明1には、合成ガスのタールの量をほぼゼロにすることが想定されていない以上、引用文献2の当該工程を、引用発明1に採用する動機付けは見出せない。
したがって、上記相違点1を、引用発明1及び引用文献2の記載に基いて、当業者が容易に想到し得るものである、とすることはできない。
(相違点2について)
引用発明1において、熱回収域を通った混合物生成物の温度(本願発明1における、「水の流れを導入」し、「粒子濾過装置へと運」ばれる「合成ガス」の温度に対応する。)について、引用文献1の【0032】には、「第2段階の混合物生成物の温度は、通常、熱回収域90に入る前は約1700゜F~約1900゜Fである。・・・乾燥ユニット120から出る、第2段階の混合物生成物および粒子状炭素質材料を含む固体流の合体流の最終温度が300と900゜Fとの間、好ましくは400と700゜Fとの間、および最も好ましくは500゜F近傍となるように、熱回収工程を運転する温度は、調整および制御されなければならない。」と記載されていることから、第2段階の混合物生成物の温度は、熱回収域に入る前は、約1700゜F~約1900゜Fであって、乾燥ユニット120から出た際は、300と900゜Fであることはいえたとしても、乾燥ユニット120では、「液体キャリア中に粒子状炭素質材料を含む第2のスラリー」が導入され、「第2のスラリー流中の水を蒸発させ」ているのであるから、熱回収域を通った混合物生成物の温度は明確には特定できない。
また、上記「(相違点1について)」で述べたように、引用発明1は、重い分子量のタール種は、熱回収工程を運転する温度を調整及び制御することで排出されないようにするものである。
そして、引用文献3等から、「冷却」について、「直接、反応器から、導管を通して粒子濾過装置へと運び、その中で、水の流れを導入し」、「合成ガスと接触させ、それにより、蒸気と、冷却され湿気を与えられた合成ガスとを生成」する段階(以下、単に「水の流れを導入する段階」という。)自体は、本願の優先日前において周知技術であると認定できたとしても、引用発明1の「D)段階(C)の混合物生成物を熱回収域に通す段階」に替えて、上記「水の流れを導入する段階」を採用した場合においては、段階(C)の混合物生成物の温度がどのようになるか明らかではなく、重い分子量のタール種が排出されないことが維持されるのかも明らかではないし、重い分子量のタール種が排出されるようになる場合には、タール種の付着等によって、引用発明1に係る炭素質材料をガス化するための方法が実施し得なくなる場合も生じるのであるから、引用発明1に、上記「水の流れを導入する段階」を採用する動機付けがあるとはいえない。
(まとめ)
以上のとおり、上記相違点1、2は、引用発明1及び引用文献2、3の記載に基いて当業者が容易に想到するものである、とすることはできない。
また、引用文献4、5には、相違点1、2に関する記載は見出せない。
そして、本願発明1は、「1)効率を維持しながら、当該システムを建造し、設置するために必要なコストを低減し、それにより運転経費を低減すること、2)生成されるシンガス中においてタールをほぼゼロレベルに維持すること、3)プロセス蒸気、費用のかかるボイラー供給水、又は完全な浸漬急冷を用いることなく、水性ガスシフトに備えてシンガスを湿らせること、及び4)全体のシステム信頼性を高め、それにより休止時間を減らすことを同時に可能な、二段階ガス化システム及びプロセス」(【0007】)を提供するものであって、引用発明1からは予測し得ない作用効果を奏するものであるといえ、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2~5の記載に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
(2)本願発明2~14について
本願発明2~14は、本願発明1を直接的又は間接的に引用し、さらに限定するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2~5の記載に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
(3)本願発明15~18について
本願発明15は、本願発明1に対応するシステムの発明であり、本願発明1と同様な構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2~5の記載基づいて容易に発明できたものとはいえない。
また、本願発明16~18は、本願発明15を直接的又は間接的に引用し、さらに限定するものであるから、本願発明15と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2~5の記載に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
7.むすび
以上のとおり、本願発明1~18は、当業者が引用発明1及び引用文献2~5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-000740