特許無効審判
2017-800071
下肢関節手術用牽引手術台、接続マットユニット及び下肢関節手術用牽引手術台設置・収納システム
- 審判番号
- 2017-800071
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2014-154355
- 登録番号
- 5754680
- 請求日
- 2017年05月24日
- 審決日
- 2019年02月13日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】メダクタ・インターナショナル・ソシエテ・アノニム
- 【請求人代理人】深井 俊至
- 【請求人代理人】星埜 正和
- 【請求人代理人】宮前 徹
- 【被請求人】サージカルアライアンス株式会社
- 【被請求人代理人】高橋 昌義
- 【被請求人代理人】河野 敬介
- 【被請求人】国立大学法人 千葉大学
- 【被請求人代理人】高橋 昌義
- 【被請求人代理人】河野 敬介
- 審判長/審判官
- 審判長 内藤 真徳
- 審判官 関谷 一夫
- 審判官 瀬戸 康平
- 分類
- P1123.111-YAA(A61G) / P1123.112-YAA(A61G) / P1123.121-YAA(A61G) / P1123.536-YAA(A61G) / P1123.537-YAA(A61G) / P1123.152-YAA(A61G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条特許法36条4項1号特許法36条6項2号特許法126条5項特許法126条6項特許法134条の2第1項1号特許法134条の2第1項3号特許法134条の2第1項4号特許法134条の2第3項特許法134条の2第9項特許法169条2項民事訴訟法61条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第123条第1項第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第2号、特許法第29条第1項第1号、特許法第123条第1項第4号、特許法第36条第4項第1号、特許法第134条の2第1項第1号、特許法第134条の2第1項第4号、特許法第134条の2第9項、特許法第123条第1項第6号、特許法第123条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第5754680号発明「下肢関節手術用牽引手術台、接続マットユニット及び下肢関節手術用牽引手術台設置・収納システム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第5754680号の特許請求の範囲を平成30年12月25日提出の手続補正書により補正された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕、8について訂正することを認める。
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許第5754680号に係る出願(特願2014-154355号)は、平成26年7月29日の出願であって、その特許権の設定登録は平成27年6月5日にされ、その後、請求人メダクタ・インターナショナル・ソシエテ・アノニムから無効審判が請求されたものである。以下、請求以後の経緯を整理して示す。
平成29年 5月24日 審判請求書の提出
同年 8月17日 答弁書の提出
同年11月17日付け 審理事項通知
平成30年 1月19日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人より)
同年 2月23日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人より)
同年 3月12日 口頭審理の実施
同年 4月13日 上申書の提出(請求人より)
同年 4月27日 上申書の提出(被請求人より)
同年 6月 8日 審決の予告
同年 8月17日 訂正請求書、意見書の提出
同年10月19日 弁駁書の提出
同年11月21日付け 訂正拒絶理由通知、職権審理結果通知
同年12月25日 意見書、手続補正書の提出(被請求人より)
第2 被請求人の求める訂正の内容
1 平成30年12月25日提出の手続補正書による補正について
平成30年8月17日提出の訂正請求書に添付した特許請求の範囲は、平成30年12月25日提出の手続補正書により補正されたところ、その補正の内容は次の補正1~3のとおりである。
(補正1)
訂正請求書に添付した特許請求の範囲の請求項1の「前記グリップ部の握り込み量に応じて位置が変化する第一の抑え部材」、「前記グリップ部の握り込み量に応じて位置が変化する第二の抑え部材」、「前記グリップ部を握る力」、「前記グリップ部が元の位置に戻る」の各「グリップ部」を「グリップ」に補正する。
(補正2)
同請求項1の「前記移動フレーム部」を「前記移動フレーム」に補正する。
(補正3)
同請求項8の「請求項3記載の下肢関節手術用牽引手術台。」を「下肢関節手術用牽引手術台。」に補正する。
そこで、これらの補正1~3について検討する。
訂正請求書の「6.(2)」の「訂正事項」欄の記載に加え、同「6.(3)イ.(ア)a」の「訂正の目的について」欄における「訂正前の請求項1について、『前記グリップの握り込み量に応じて位置が変化する第一の抑え部材及び前記グリップの握り込み量に応じて位置が変化する第二の抑え部材を有し、前記第一の抑え部材は、前記メインフレーム部のガイド用棒状部材の溝にかみ合うことにより、前記移動フレームの前記メインフレームに沿った移動動作を固定することが可能であり、前記第二の抑え部材は、前記支持脚部の溝にかみ合うことにより、前記支持脚部の傾き調整動作を固定することが可能であり、前記移動フレームの前記メインフレームに沿った移動動作を解放するための前記グリップの握り込み量と、前記支持脚部の傾き調整動作を解放するための前記グリップの握り込み量が異なり、前記グリップ部には付勢手段が付されており、前記グリップを握る力を抜くと、前記グリップが元の位置に戻る』という発明特定事項を加えたものであり、・・・」(理解のため、下線は当審が付した。)なる記載及び同「6.(3)イ.(オ)a」の「訂正の目的について」欄における「訂正事項5は、訂正前の請求項1及び請求項3の記載を引用した訂正前の請求項8に、訂正前の請求項1及び請求項3の発明特定事項を記載して、独立請求項にしたものである。したがって、訂正事項5は、特許法第134条の2第1項第4号の『他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとする』ことを目的としており、・・・」なる記載によれば、上記補正1における補正前の「グリップ部」、上記補正2における補正前の「前記移動フレーム部」、上記補正3における補正前の「請求項3記載の下肢関節手術用牽引手術台。」が、それぞれ、「グリップ」、「前記移動フレーム」、「下肢関節手術用牽引手術台。」の誤記であることは明らかである。
してみると、上記手続補正書による補正は、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法第134条の2第9項で準用する同法第131条の2第1項の規定に適合するので、当該補正を認める。
2 訂正事項
平成30年12月25日提出の手続補正書による補正は上記のとおり認められるので、被請求人の求める訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許第5754680号の願書に添付した特許請求の範囲を、平成30年12月25日提出の手続補正書により補正された訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおりに訂正しようとするものであって、その訂正の内容は、以下の訂正事項1~5のとおりである。
(訂正事項1)
願書に添付した特許請求の範囲の請求項1のうち、
「グリップ部、を備える下肢関節手術用牽引手術台。」
とあるのを
「グリップ部、を備え、
前記グリップの握り込み量に応じて位置が変化する第一の抑え部材及び前記グリップの握り込み量に応じて位置が変化する第二の抑え部材を有し、
前記第一の抑え部材は、前記メインフレーム部のガイド用棒状部材の溝にかみ合うことにより、前記移動フレームの前記メインフレームに沿った移動動作を固定することが可能であり、
前記第二の抑え部材は、前記支持脚部の溝にかみ合うことにより、前記支持脚部の傾き調整動作を固定することが可能であり、
前記移動フレームの前記メインフレームに沿った移動動作を解放するための前記グリップの握り込み量と、前記支持脚部の傾き調整動作を解放するための前記グリップの握り込み量が異なり、
前記グリップ部には付勢手段が付されており、
前記グリップを握る力を抜くと、前記グリップが元の位置に戻る下肢関節手術用牽引手術台。」
と訂正する。
(訂正事項2)
願書に添付した特許請求の範囲の請求項3のうち、
「前記手術台本体部の短軸方向」、「前記手術台本体部の長軸方向」
とあるのをそれぞれ
「前記手術台本体の短軸方向」、「前記手術台本体の長軸方向」
と訂正する。
(訂正事項3)
願書に添付した特許請求の範囲の請求項3のうち、
「前記短軸側軸部材」
とあるのを
「前記短軸側延伸部材」
と訂正する。
(訂正事項4)
願書に添付した特許請求の範囲の請求項7のうち、
「請求項1記載の下肢関節手術用牽引手術台。」
とあるのを
「請求項2記載の下肢関節手術用牽引手術台。」
と訂正する。
(訂正事項5)
願書に添付した特許請求の範囲の請求項8を
「二本の平行な棒状部材を備えたメインフレームを有するメインフレーム部と、
前記メインフレームに沿って移動可能である移動フレーム、前記移動フレームに設置され手術対象者の足を固定するための足固定部、を備える位置調整部と、
前記位置調整部に接続され、前記メインフレーム部を支持するとともに前記メインフレーム部の傾きを調整可能な支持脚部と、を有する下肢関節手術用牽引手術台であって、
前記位置調整部は、前記メインフレームに沿った移動動作及び前記支持脚部の傾き調整動作を固定する第一のモード、前記メインフレームに沿った移動動作を解放し前記支持脚部の傾き調整動作を固定する第二のモード、前記メインフレームに沿った移動動作及び前記支持脚部の傾き調整動作を解放する第三のモード、を一つのグリップの握り動作で設定することのできるグリップ部、を備え、前記メインフレーム部は、手術台本体に接続するジョイント部を備え、
前記ジョイント部は、
手術台本体に設けられる接続マットに接続固定される接続固定部材、
前記接続固定部材から、前記手術台本体の短軸方向に延伸する短軸側延伸部材、
前記短軸側延伸部材に接続され前記手術台本体の長軸方向に延伸するとともに前記メインフレームに接続するための長軸側棒状部材を備え、
下端面が、前記長軸側棒状部材及び前記メインフレームの二本の棒状部材の断面形状いずれかに合わせて形成されてなる少なくとも三本の脚部材、前記三本の脚部材の上に配置されるマット部材、を有するトレー部と、を備えた下肢関節手術用牽引手術台。」
と訂正する。
第3 当事者の主張
1 請求人の主張
請求人は、特許第5754680号の請求項1~7に係る発明、即ち、本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1」~「本件訂正発明7」という。)についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、無効とすべき理由として次の無効理由1A~7のように主張すると共に、証拠方法として甲第1号証~甲第71号証を提出している。
なお、弁駁書の「7.弁駁の内容」に「・・・特許第5754680号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る発明(以下それぞれ「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明7」という。)が、・・・特許を受けることができないものであり・・・」とあるように、本件訂正が不適法な訂正であるとの主張はなされていない。
(無効理由1A)
本件訂正発明1~5、7は、本件特許の出願前に日本国内において公然実施された発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本件訂正発明1~5、7に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。
(無効理由1B)
本件訂正発明1~5、7は、本件特許の出願前に日本国内において公然実施された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件訂正発明1~5、7に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。
(無効理由1C)
本件訂正発明1~5、7は、本件特許の出願前に日本国内において公然実施された発明及び甲第68~71号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件訂正発明1~5、7に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。
(無効理由1D)
本件訂正発明5~7は、本件特許の出願前に日本国内において公然実施された発明及び甲第13~27号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件訂正発明5~7に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。
(無効理由1E)
本件訂正発明5~7は、本件特許の出願前に日本国内において公然実施された発明、甲第68~71号証に記載された発明ないし周知技術及び甲第13~27号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件訂正発明5~7に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。
(無効理由2A)
本件訂正発明1~5、7は、本件特許の出願前に日本国内において公然知られた発明であるから、特許法第29条第1項第1号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本件訂正発明1~5、7に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。
(無効理由2B)
本件訂正発明1~5、7は、本件特許の出願前に日本国内において公然知られた発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件訂正発明1~5、7に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。
(無効理由2C)
本件訂正発明1~5、7は、本件特許の出願前に日本国内において公然知られた発明及び甲第68~71号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件訂正発明1~5、7に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。
(無効理由2D)
本件訂正発明5~7は、本件特許の出願前に日本国内において公然知られた発明及び甲第13~27号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件訂正発明5~7に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。
(無効理由2E)
本件訂正発明5~7は、本件特許の出願前に日本国内において公然知られた発明、甲第68~71号証に記載された発明ないし周知技術及び甲第13~27号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件訂正発明5~7に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。
(無効理由3A)
本件訂正発明1~5、7は、本件特許の出願前に外国において公然実施された発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本件訂正発明1~5、7に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。
(無効理由3B)
本件訂正発明1~5、7は、本件特許の出願前に外国において公然実施された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件訂正発明1~5、7に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。
(無効理由3C)
本件訂正発明1~5、7は、本件特許の出願前に外国において公然実施された発明及び甲第68~71号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件訂正発明1~5、7に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。
(無効理由3D)
本件訂正発明5~7は、本件特許の出願前に外国において公然実施された発明及び甲第13~27号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件訂正発明5~7に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。
(無効理由3E)
本件訂正発明5~7は、本件特許の出願前に外国において公然実施された発明、甲第68~71号証に記載された発明ないし周知技術及び甲第13~27号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件訂正発明5~7に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。
(無効理由4A)
本件訂正発明1~5、7は、本件特許の出願前に外国において公然知られた発明であるから、特許法第29条第1項第1号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本件訂正発明1~5、7に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。
(無効理由4B)
本件訂正発明1~5、7は、本件特許の出願前に外国において公然知られた発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件訂正発明1~5、7に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。
(無効理由4C)
本件訂正発明1~5、7は、本件特許の出願前に外国において公然知られた発明及び甲第68~71号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件訂正発明1~5、7に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。
(無効理由4D)
本件訂正発明5~7は、本件特許の出願前に外国において公然知られた発明及び甲第13~27号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件訂正発明5~7に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。
(無効理由4E)
本件訂正発明5~7は、本件特許の出願前に外国において公然知られた発明、甲第68~71号証に記載された発明ないし周知技術及び甲第13~27号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件訂正発明5~7に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。
(無効理由5)
本件訂正発明1~7に係る特許は、その発明について特許を受ける権利を有しないものの特許出願に対して特許されたものであるから、特許法第123条第1項第6号に該当し、無効とされるべきである。
(無効理由6)
本件特許の特許請求の範囲の記載は、本件訂正発明7が明確でないことから、本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
したがって、本件訂正発明7に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とされるべきである。
(無効理由7)
本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件訂正発明7の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないことから、本件特許は、明細書の発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
したがって、本件訂正発明7に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とされるべきである。
[証拠方法]
甲第1号証:特許第5754680号公報(本件特許公報)の写し(以下、「写し」である旨の表記は省略する。)
甲第2号証:平成24年1月30日付け「医療機器製造販売届書」の控え
甲第3号証:平成29年4月13日付け「請求人製品1及び請求人製品2に関する報告書」(請求人代理人作成)
甲第4号証:動画ファイル4本(「甲4-1 赤白緑回転式のハンドル.3gp」、「甲4-2 ガイド移動.3gp」、「甲4-3 第1モード.3gp」、「甲4-4 第2モード・第3モード.3gp」)を記録したDVD
甲第5号証:動画ファイル「甲5 ビデオ 第1・第2・第3モード.mp4」を記録したDVD
甲第6号証:平成24年5月12日付け「AMISモバイルレッグポジショナー器械明細書」(請求人日本法人作成)
甲第7号証:平成24年5月17日付け配送伝票の「お客様控え」
甲第8号証:平成24年9月13日付け「AMISモバイルレッグポジショナー器械明細書」(請求人日本法人作成)
甲第9号証:「『Return Inventory valuation』から始まる文書」(請求人日本法人作成)
甲第10号証:平成29年5月19日付け「陳述書」(フランチェスコ・シッカルディ作成、翻訳文添付)
甲第11号証:平成29年4月10日付け「陳述書」(柿元伸一作成)
甲第12号証:平成24年11月23日付け「配送書」(メダクタフランス作成、抄訳文添付)
甲第13号証:特開昭59-210313号公報
甲第14号証:特開昭58-30610号公報
甲第15号証の1:国際公開第2013/034916号
甲第15号証の2:特表2014-525302号公報
甲第16号証:実願昭60-127516号(実開昭62-36714号)のマイクロフィルム
甲第17号証:実願昭60-161512号(実開昭62-70517号)のマイクロフィルム
甲第18号証:実願昭60-163615号(実開昭62-73216号)のマイクロフィルム
甲第19号証:実願平5-66707号(実開平7-31035号)のCD-ROM
甲第20号証:特開2011-78781号公報
甲第21号証:特開2011-101662号公報
甲第22号証:実願昭48-6299号(実開昭49-108696号)のマイクロフィルム
甲第23号証:特表2013-506513号公報
甲第24号証:特表2002-518068号公報
甲第25号証:特開平10-230038号公報
甲第26号証:特開平9-10373号公報
甲第27号証:特開2008-35931号公報
甲第28号証の1:平成26年5月2日付け「『佐川急便 菅原様』から始まる文書」(小松靖司作成)
甲第28号証の2:平成26年5月20日付け「納品書」(小松靖司作成)
甲第29号証の1:平成26年5月2日付け「『佐川急便 菅原様』から始まる文書」(小松靖司作成)
甲第29号証の2:平成26年5月19日付け「納品書」(小松靖司作成)
甲第29号証の3:平成26年6月13日付け「納品書」(小松靖司作成)
甲第29号証の4:平成26年6月19日付け「納品書」(小松靖司作成)
甲第30号証の1:平成26年5月8日付け「『佐川急便 菅原様』から始まる文書」(小松靖司作成)
甲第30号証の2:平成26年5月16日付け「納品書」(小松靖司作成)
甲第30号証の3:平成26年6月20日付け「納品書」(小松靖司作成)
甲第31号証の1:平成26年5月1日付け「『佐川急便 菅原様』から始まる文書」(小松靖司作成)
甲第31号証の2:平成26年5月14日付け「納品書」(小松靖司作成)
甲第31号証の3:平成26年6月20日付け「納品書」(小松靖司作成)
甲第32号証の1:平成26年5月30日付け「『佐川急便 菅原様』から始まる文書」(小松靖司作成)
甲第32号証の2:平成26年6月20日付け「納品書」(小松靖司作成)
甲第33号証の1:平成26年6月16日付け「『佐川急便 菅原様』から始まる文書」(小松靖司作成)
甲第33号証の2:平成26年6月20日付け「納品書」(小松靖司作成)
甲第34号証:平成26年2月4日付け「配送書」(メダクタイタリア作成、抄訳文添付)
甲第35号証:平成26年2月12日付け「配送書」(メダクタイタリア作成、抄訳文添付)
甲第36号証:平成26年6月20日付け「配送書」(メダクタイタリア作成、抄訳文添付)
甲第37号証:「『Order Edit #299603』から始まる文書」(メダクタオーストラリア作成、抄訳文添付)
甲第38号証:「『Order Edit #300556』から始まる文書」(メダクタオーストラリア作成、抄訳文添付)
甲第39号証:「『Order Edit #303228』から始まる文書」(メダクタオーストラリア作成、抄訳文添付)
甲第40号証:平成24年1月1日付け「取引基本契約書」
甲第41号証:平成25年1月1日付け「取引基本契約書」
甲第42号証:「Medical Note 中村順一先生(整形外科)千葉大学大学院医学研究院整形外科学助教」のウェブページを出力した文書
甲第43号証:平成24年2月17日付け「『EDUCATIONAL PROGRAM』と題する文書」(請求人作成、抄訳文添付)
甲第44号証:平成28年3月9日付け「通知書」(請求人日本法人作成)
甲第45号証:平成28年3月25日付け「解除通知書」(被請求人サージカルアライアンス株式会社作成)
甲第46号証:「『貴社より2016年3月25日付』から始まる文書」(請求人日本法人作成)
甲第47号証:知財高判平成18年1月19日(平成17年(行ケ)第10193号)
甲第48号証:平成30年1月19日付け「陳述書」(柿元伸一作成)
甲第49号証:「医療機器製品の構成及び動作等に関する事実実験公正証書」謄本
甲第50号証:平成30年1月16日付け「陳述書」(フランチェスコ・シッカルディ作成、翻訳文添付)
甲第51号証:平成23年9月19日付け「『Differences in the use of AMIS Mobile Leg Positioner 2.0』と題する文書」(請求人作成、抄訳文添付)
甲第52号証の1:平成26年6月4日付け「『Physical Inventory by Lot/Expiration date』から始まる文書」(請求人日本法人作成)
甲第52号証の2:平成26年12月1日付け「『Physical Inventory by Lot/Expiration date』から始まる文書」(請求人日本法人作成)
甲第52号証の3:平成27年5月11日付け「『Physical Inventory by Lot/Expiration date』から始まる文書」(請求人日本法人作成)
甲第52号証の4:平成27年11月30日付け「『Physical Inventory by Lot/Expiration date』から始まる文書」(請求人日本法人作成)
甲第52号証の5:平成28年6月11日付け「棚卸表」(請求人日本法人作成)
甲第52号証の6:平成28年11月25日付け「棚卸表」(請求人日本法人作成)
甲第52号証の7:平成29年6月13日付け「棚卸表」(請求人日本法人作成)
甲第53号証:「『PROCESSI DI FABBRICAZIONE E DOCUMENTAZIONE PO 07.06/Rev.17』と題する文書」(請求人作成、抄訳文添付)
甲第54号証:「CC 220 Federal Act of 30 ・・・」から始まるウェブページ(URL:https://www.admin.ch/opc/en/print.html?id=lawid-2-11-21-0-451)を出力した文書(抄訳文添付)
甲第55号証:平成30年1月16日付け「陳述書」(マッシミリアノ・ベルナルドッニ作成、翻訳文添付)
甲第56号証:知財高判平成29年1月25日(平成27年(行ケ)第10230号)
甲第57号証:「『PROCESSI DI ATTRIBUZIONE DEL NUMERO DI LOTTO PO 07.45/Rev.0』と題する文書」(請求人作成、抄訳文添付)
甲第58号証:「『PROCESSI DI FABBRICAZIONE E DOCUMENTAZIONE PO 07.06/Rev.11』と題する文書」(請求人作成、抄訳文添付)
甲第59号証の1:「『PROCESSI DI FABBRICAZIONE E DOCUMENTAZIONE PO 07.06/Rev.12』と題する文書」(請求人作成、抄訳文添付)
甲第59号証の2:「『PROCESSI DI FABBRICAZIONE E DOCUMENTAZIONE PO 07.06/Rev.13』と題する文書」(請求人作成、抄訳文添付)
甲第59号証の3:「『PROCESSI DI FABBRICAZIONE E DOCUMENTAZIONE PO 07.06/Rev.14』と題する文書」(請求人作成、抄訳文添付)
甲第59号証の4:「『PROCESSI DI FABBRICAZIONE E DOCUMENTAZIONE PO 07.06/Rev.15』と題する文書」(請求人作成、抄訳文添付)
甲第59号証の5:「『PROCESSI DI FABBRICAZIONE E DOCUMENTAZIONE PO 07.06/Rev.16』と題する文書」(請求人作成、抄訳文添付)
甲第60号証:平成30年4月11日付け「陳述書」(フランチェスコ・シッカルディ作成、抄訳文添付)
甲第61号証の1:「デザイン番号を『E04001179』とする設計図」(請求人作成、抄訳文添付)
甲第61号証の2:「デザイン番号を『E04001215』とする設計図」(請求人作成、抄訳文添付)
甲第61号証の3:「デザイン番号を『E04001180』とする設計図」(請求人作成、抄訳文添付)
甲第61号証の4:「デザイン番号を『093.000.037.0』とする設計図」(請求人作成、抄訳文添付)
甲第61号証の5:「デザイン番号を『E04001181』とする設計図」(請求人作成、抄訳文添付)
甲第61号証の6:「図面番号を『A07-0000075-1-1』とする設計図」(請求人作成、抄訳文添付)
甲第62号証:平成30年4月4日付け「陳述書」(横山徳一作成)
甲第63号証:平成30年4月11日付け「陳述書」(ルイージ・ディ・ローザ作成、翻訳文添付)
甲第64号証:平成30年10月17日付け「陳述書」(フランチェスコ・シッカルディ作成、翻訳文添付)
甲第65号証:「設計図番号として『A07-0000111-1-2』が付された部品リスト」(請求人作成、抄訳文添付)
甲第66号証:動画ファイル3本(「甲66の1.MOV」、「甲66の2.MP4」、「甲66の3.MP4」)を記録したDVD
甲第67号証:平成30年10月17日付け「甲第49号証製品の写真及び動画撮影報告書」(福井健二、岩田浩治、福井孝次作成)
甲第68号証:米国特許第7316040号明細書(抄訳文添付)
甲第69号証:英国特許出願公開第2281375号明細書(抄訳文添付)
甲第70号証:特開2014-83077号公報
甲第71号証:実願昭59-11651号(実開昭60-124341号)のマイクロフィルム
2 被請求人の主張
被請求人は、本件訂正を認める、本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、請求人の主張する無効理由にはいずれも理由が無い旨主張すると共に、証拠方法として乙第1号証~乙第7号証を提出している。
[証拠方法]
乙第1号証:平成29年8月8日付け「陳述書」(中村順一作成)
乙第2号証:「ANTERIOR MINIMALLY INVASIVE SURGERY IN TOTAL HIP REPLACEMENT」(日本語版、抜粋)
乙第3号証:「ANTERIOR MINIMALLY INVASIVE SURGERY IN TOTAL HIP REPLACEMENT」(英語版、抜粋)
乙第4号証:平成29年8月9日付け「陳述書」(川崎善之作成)
乙第5号証:「ANTERIOR MINIMALLY INVASIVE SURGERY IN TOTAL HIP REPLACEMENT」(日本語版、全体)
乙第6号証:「ANTERIOR MINIMALLY INVASIVE SURGERY IN TOTAL HIP REPLACEMENT」(英語版、全体)
乙第7号証:平成30年2月6日付け「陳述書」(中村順一作成)
乙第8号証:動画ファイル「乙8 ビデオ.MTS」を記録したDVD
第4 本件訂正の可否についての判断
1 一群の請求項について
訂正前の請求項1~8は、請求項2~8が、訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
よって、本件訂正は、一群の請求項1~8について請求されたものである。
また、被請求人から、訂正後の請求項8について、その訂正が認められるときは請求項1とは別の訂正単位として扱われることの求めがあった。
2 訂正事項1について
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の「グリップ部」を、その作用ないし構造面から「前記グリップの握り込み量に応じて位置が変化する第一の抑え部材及び前記グリップの握り込み量に応じて位置が変化する第二の抑え部材を有し、/ 前記第一の抑え部材は、前記メインフレーム部のガイド用棒状部材の溝にかみ合うことにより、前記移動フレームの前記メインフレームに沿った移動動作を固定することが可能であり、/ 前記第二の抑え部材は、前記支持脚部の溝にかみ合うことにより、前記支持脚部の傾き調整動作を固定することが可能であり、/ 前記移動フレームの前記メインフレームに沿った移動動作を解放するための前記グリップの握り込み量と、前記支持脚部の傾き調整動作を解放するための前記グリップの握り込み量が異なり、/ 前記グリップ部には付勢手段が付されており、/ 前記グリップを握る力を抜くと、前記グリップが元の位置に戻る」(審決注:「/」は改行を示す。)と技術的に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
また、この訂正は、願書に添付した明細書の段落【0032】~【0037】、図面の図7(a)~(c)等の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
3 訂正事項2、3について
訂正事項2に係る訂正は、訂正前の各「前記手術台本体部」の記載を、請求項3において当該記載に先行して記載されていた「手術台本体」なる記載と表現を整合させるためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
同様に、訂正事項3は、訂正前の「前記短軸側軸部材」の記載を、請求項3において当該記載に先行して記載されていた「短軸側延伸部材」なる記載と表現を整合させるためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
また、これらの訂正は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項3等の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
4 訂正事項4について
訂正事項4に係る訂正は、請求項1を引用する形式で記載されていた訂正前の請求項7につき、その引用元の請求項を請求項1から請求項2へと変更するものであるところ、請求項2は請求項1を引用しつつさらに限定事項を付した請求項であることから、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
また、この訂正は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1、2等の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
5 訂正事項5について
訂正事項5に係る訂正は、請求項3を引用する形式で記載されていた訂正前の請求項8を独立形式の記載に改めるとともに、訂正事項2~3に係る訂正も併せて反映させるという訂正であるから、明瞭でない記載の釈明及び引用関係の解消を目的とするものである。
また、この訂正は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1、3、8等の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
6 まとめ
したがって、本件訂正に係る訂正事項1~5は、特許法第134条の2第1項第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第3項、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、願書に添付した特許請求の範囲を、平成30年12月25日提出の手続補正書により補正された訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕、8について一群の請求項ごと又は請求項ごとに訂正することを認める。
第5 本件訂正発明
上記のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正により訂正された本件訂正発明1~7は、平成30年12月25日提出の手続補正書により補正された訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
二本の平行な棒状部材を備えたメインフレームを有するメインフレーム部と、
前記メインフレームに沿って移動可能である移動フレーム、前記移動フレームに設置され手術対象者の足を固定するための足固定部、を備える位置調整部と、
前記位置調整部に接続され、前記メインフレーム部を支持するとともに前記メインフレーム部の傾きを調整可能な支持脚部と、を有する下肢関節手術用牽引手術台であって、
前記位置調整部は、前記メインフレームに沿った移動動作及び前記支持脚部の傾き調整動作を固定する第一のモード、前記メインフレームに沿った移動動作を解放し前記支持脚部の傾き調整動作を固定する第二のモード、前記メインフレームに沿った移動動作及び前記支持脚部の傾き調整動作を解放する第三のモード、を一つのグリップの握り動作で設定することのできるグリップ部、を備え、
前記グリップの握り込み量に応じて位置が変化する第一の抑え部材及び前記グリップの握り込み量に応じて位置が変化する第二の抑え部材を有し、
前記第一の抑え部材は、前記メインフレーム部のガイド用棒状部材の溝にかみ合うことにより、前記移動フレームの前記メインフレームに沿った移動動作を固定することが可能であり、
前記第二の抑え部材は、前記支持脚部の溝にかみ合うことにより、前記支持脚部の傾き調整動作を固定することが可能であり、
前記移動フレームの前記メインフレームに沿った移動動作を解放するための前記グリップの握り込み量と、前記支持脚部の傾き調整動作を解放するための前記グリップの握り込み量が異なり、
前記グリップ部には付勢手段が付されており、
前記グリップを握る力を抜くと、前記グリップが元の位置に戻る下肢関節手術用牽引手術台。
【請求項2】
前記足固定部は、
前記移動フレームに接続される足支持フレーム、
前記足支持フレームによって支持されるとともに手術対象者の足を固定するための足固定フレーム、
前記足固定フレームを回転させる回転ハンドル、
前記回転ハンドルの回転方向を制御する回転方向制御部を備える請求項1記載の下肢関節手術用牽引手術台。
【請求項3】
前記メインフレーム部は、手術台本体に接続するジョイント部を備え、
前記ジョイント部は、
手術台本体に設けられる接続マットに接続固定される接続固定部材、
前記接続固定部材から、前記手術台本体の短軸方向に延伸する短軸側延伸部材、
前記短軸側延伸部材に接続され前記手術台本体の長軸方向に延伸するとともに前記メインフレームに接続するための長軸側棒状部材を備えた請求項1記載の下肢関節手術用牽引手術台。
【請求項4】
手術台本体に設けられる接続マットに対し、右足側及び左足側のいずれ側としても設置可能である請求項3記載の下肢関節手術用牽引手術台。
【請求項5】
前記足固定部は、
前記足支持フレームの位置を調整するための足支持フレーム位置調整部、
前記足支持フレームの位置調整量を表示する足支持フレーム位置調整量表示部、を備える請求項2記載の下肢関節手術用牽引手術台。
【請求項6】
前記メインフレームの傾き角を表示するフレーム傾き角表示部、を備える請求項1記載の下肢関節手術用牽引手術台。
【請求項7】
前記足固定フレームを挿入する挿入部材が裏面に固定されるとともに、手術対象者の足を配置する底部材、手術対象者の足両側部を覆う側部材、前記側部材を固定するバックル及びベルトを備え、前記バックルは、前記ベルトを二重に止める構造となっているブーツ、を有する請求項2記載の下肢関節手術用牽引手術台。」
第6 当審の判断1(無効理由6~7について)
事案に鑑み、まず、無効理由6、7について検討する。
1 請求人の主張
請求人は、無効理由6、7に関し、概略、次のような主張をしている。
(無効理由6)
本件訂正発明7における「バックルは、前記ベルトを二重に止める構造となっている」との事項については、いかなるバックルの構造がこれに該当するか、その技術的意味は不明確である。
そのため、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する明確性要件を満たしていない。
(無効理由7)
本件訂正発明7における「バックルは、前記ベルトを二重に止める構造となっている」との事項について、本件訂正発明の詳細な説明において説明がなく、当業者は、「前記ベルトを二重に止める構造」を有するバックルをどのように製造し、使用するのが認識できない。
よって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する実施可能要件を満たしてない。
2 無効理由6について
「二重」とは、「二つのことが重なること」という字義を踏まえると、本件特許の請求項7に記載の「バックルは、前記ベルトを二重に止める構造」とは、“バックルは、ベルトを一度止めることに加え、さらにもう一度ベルトを止めることのできる構造、即ち、ベルトを2箇所で止める構造”であると、自然に把握でき、また、ベルトを2箇所で止めるための一「構造」として、「バックル」が、2つのバックルから成る「構造」も、当業者であれば普通に認識できるところである。
そうすると、当業者は、本件訂正発明7の「バックルは、前記ベルトを二重に止める構造」を、“バックルは、1本のベルトを2箇所のバックルで固定する構造”であると理解することができるといえ、しかも、一のベルトが1箇所だけでなく、2箇所で止められる結果、当該ベルトがそれだけ緩みにくくなるという意義も、当業者にとって自明といえる程度のものであるから、上記「バックルは、前記ベルトを二重に止める構造となっている」との事項について、その技術的意味が不明確であるとはいえない。
3 無効理由7について
本件特許の明細書段落【0047】には、「また本実施形態では、足固定フレームを挿入する挿入部材が裏面に固定されるとともに、手術対象者の足を配置する底部材、手術対象者の足両側部を覆う側部材、前記側部材を固定するバックル及びベルトを備え、バックルは、ベルトを二重に止める構造となっているブーツと、を有する。このブーツの概略について、図13に示しておく。」と記載され、また、図13には、ブーツの概略を示す図と共に「金具(1つ目)」、「金具(2つ目)」と記載されている。
図13に記載の当該「金具(1つ目)」、「金具(2つ目)」が、「バックル」を指すことは明らかであるから、同図の図示内容及び明細書段落【0047】の上記記載を併せみれば、「本実施形態」において、ブーツの側部材を固定するためのベルトは、ブーツの長手方向の複数位置に配置され、当該位置のそれぞれには、ブーツの周方向に複数のバックル(「金具(1つ目)」、「金具(2つ目)」)が設けられているものと把握できる。
そうすると、当業者は、上記「2」で示したようなバックル、即ちベルトを2箇所で止める構造のバックルを用いるに当たり、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、それぞれのベルトをブーツの周方向に設けられた各バックル(「金具(1つ目)」、「金具(2つ目)」)に順次止めることにより、本件訂正発明7の「バックルは、前記ベルトを二重に止める構造となっているブーツ、を有する請求項1記載の下肢関節手術用牽引手術台」を使用できるものといえる。
同様に、当業者は、それぞれのベルトをブーツの周方向で順次止めることができるようなバックル(「金具(1つ目)」、「金具(2つ目)」)を採用することにより、本件訂正発明7の「バックルは、前記ベルトを二重に止める構造となっているブーツ、を有する請求項1記載の下肢関節手術用牽引手術台」を製造できるものといえる。
よって、本件特許の明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明7を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。
4 まとめ
したがって、本件訂正発明7についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件及び同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものではないから、無効理由6及び7によっては、本件訂正発明7についての特許を無効とすることはできない。
第7 当審の判断2(無効理由1A~1Eについて)
1 甲第49号証に示された製品
甲第49号証の「医療機器製品の構成及び動作等に関する事実実験公正証書」謄本によれば、当該「医療機器製品」(以下「甲49製品」という。)について、以下の事実が認められる。なお、各部材の名称等は、原則として甲第49号証の記載に従った。
(1)甲49製品は、手術台本体(手術マット付き)、主要部、両者を接続するヒンジ及び靴から成る。(第6頁第3~6行)
(2)主要部は、フレームを備え、該フレームは2本の平行を成す棒状部材を備える。(第10頁第14~16行、第11頁3~5行、写真(107))
(3)フレームにおける2本の棒状部材の間には、他の部材として、例えば、表面が凹凸形状である第3の棒状部材が設けられている。(写真(23))
そこで、この第3の棒状部材等の他の部材とフレームとをまとめて、以下「フレーム部」という。
(4)主要部は、2本の平行を成す棒状部材に沿って移動することのできる移動部を備える。(第6頁第10行、第8頁3~6行)
(5)移動部には、患者の足を入れて固定するための靴を取り付ける靴取付部が設置されている(以下、この靴取付部と移動部とをまとめて「移動調整部」という。)。(写真(85)~(95))
(6)主要部は、移動調整部の両側面の下部に一端が接続され、他端にローラ軸が接続される長尺状の部材(以下「脚部」という。)を有する。該脚部は、フレーム部を支えるとともに、フレーム部の傾きを調整する機能を有する。(写真(8)、(41)~(43))
(7)移動調整部は、ハンドル部を備え、ハンドル部の青色部材を握る操作により、銀色部材の上下方向の位置を変更することができる。銀色部材の位置に応じた動作は次のとおりである。(第6頁第9行~第8頁第6行)
ア)銀色部材が下がっている状態では、移動調整部を、2本の平行を成す棒状部材を備えたフレームに沿って動かすことができず、また、脚部によるフレーム部の傾きを調整する動作もできない。(写真(33)~(37))
イ-i)ハンドル部の青色部材を握ると、銀色部材が少し上がった状態となる。(第7頁第16~18行)
また、銀色部材が少し上がったこの状態は、青色部材も少し上がった状態であり、このような状態は、青色部材から手が離れても維持される。(写真(47)~(50))
イ-ii)銀色部材が少し上がっている状態では、移動調整部を、2本の平行を成す棒状部材を備えたフレームに沿って動かすことができるところ、そのように動かす際、操作者は、青色部材を握ることなく移動調整部を動かすことができる。(第8頁第3~6行、写真(53)~(56))
イ-iii)また、銀色部材が少し上がっている状態では、脚部によるフレーム部の傾きを調整する動作はできない。そして、その動作を試みる際、操作者は、青色部材を握っていない。(第7頁第19行~第8頁第2行、写真(51)~(52))
ウ)銀色部材が高く上がっている状態では、2本の平行を成す棒状部材を備えたフレームに沿って動かすことができ、また、脚部によるフレーム部の傾きを調整する動作もできる。(第7頁第8~15行、写真(39)~(46))
(8)ハンドル部は、青色部材及び銀色部材が露出する部分を除き、金属様の銀色の壁で覆われており、その内部の構造を外側から窺い知ることはできない。(写真(31)、(39)、(47))
(9)フレームの端部上面には、○の中に「R」の記号と共に、「AMIS MOBILE LEG POSITIONER」との製品名が看取できる。(写真(23))
(10)移動調整部の側面には、CEマークと共に、「01.15.10.0190」、「LOT」、「1410342」の文字が刻印されている。(写真(18))
(11)手術台本体(手術マット付き)の側面には、メダクタ社のロゴマーク、CEマークと共に、「01.15.10.0192」、「1313097」の文字が看取できる。(写真(14)~(15))
2 甲49製品に係る発明
(1)甲49発明
上記「1」の(1)~(11)によれば、甲49製品に係る発明として、次の発明(以下「甲49発明」という。)を認定できる。
「2本の平行を成す棒状部材を備えたフレームを含むフレーム部と、
前記フレームの2本の平行を成す棒状部材に沿って移動することのできる移動部、前記移動部に設置され患者の足を入れて固定するための靴を取り付ける靴取付部、を含む移動調整部と、
前記移動調整部に接続され、前記フレーム部を支えるとともに前記フレーム部の傾きを調整する脚部と、を有する医療機器の主要部であって、
前記移動調整部は、ハンドル部を備え、ハンドル部の青色部材を握る操作により、銀色部材の上下方向の位置を変更し、
銀色部材が下がっている状態では、2本の平行を成す棒状部材を備えたフレームに沿って、移動調整部を動かすことができず、また、脚部によるフレーム部の傾きを調整する動作もできず、銀色部材が少し上がっている状態では、2本の平行を成す棒状部材を備えたフレームに沿って、移動調整部を動かすことができ、また、脚部によるフレーム部の傾きを調整する動作はできず、銀色部材が高く上がっている状態では、2本の平行を成す棒状部材を備えたフレームに沿って、移動調整部を動かすことができ、また、脚部によるフレーム部の傾きを調整する動作もでき、
銀色部材が少し上がっている状態は、青色部材も少し上がった状態であって、青色部材から手が離れても維持され、そのため、銀色部材が少し上がっている状態では、青色部材を握ることなく移動調整部を動かすことができる、医療機器の主要部。」
(2)請求人の主張について
請求人は、弁駁書において、
「(オ)構成要件f
ア(エ)で述べたとおり、青色部材(「グリップ」)を手で握って持ち上げ、第2モード又は第3モードの状態にした後、手を離すと、青色部材(「グリップ」)は、元の位置(第1モード)に戻る。
したがって、甲49製品(請求人製品1、2)は、構成要件fの「前記グリップを握る力を抜くと、前記グリップが元の位置に戻る」に相当する構成を有する。」(第20頁第1~6行)
などと、甲49製品、即ち、甲49発明が、“青色部材を握る力を抜くと青色部材が元の位置に戻る”事項を具備する旨主張するので検討する。
上記「1」の(7)で述べたように、甲49製品は、青色部材から手が離れても、銀色部材及び青色部材が少し上がった状態に維持されるものである(甲第49号証の写真(47)~(50))。
この点に関し、請求人は、「なお、使用者は、青いハンドル1(青色部材)を引き上げた上、セントラルロッド(300a)の歯(凸部)がセントラルシャフトの溝(凹部)に噛み合うのではなくセントラルシャフトの歯(凸部)の上に来るようにハンドル部を位置させることもでき、その場合には、セントラルロッドの歯(凸部)は、セントラルシャフトの溝(凹部)に噛み合わず、青いハンドル1(青色部材)は、少し上げられている状態から上げられていない状態に戻らない・・・」(弁駁書第14頁第22~28行)と、青色部材が元に戻らずに少し上がった状態で留まる場合のあることについて、その機序を説明している。
甲49製品が、セントラルロッドやその歯(凸部)等の部材を有しているのか否かは明らかでないが、仮に、甲第49号証の写真(47)~(50)の状態が、セントラルロッドの歯(凸部)がセントラルシャフトの歯(凸部)の上端面と当接するようハンドル部を位置させるという特殊な状態を示すものであったとすると、その状態から、青色部材を握ることなく、移動調整部をセントラルシャフトに沿って押圧すると、セントラルロッドの歯(凸部)は、セントラルシャフトの歯(凸部)の上を滑動した直後に、セントラルシャフトの隣接する溝(凹部)に落ち込むこととなり、その結果、移動調整部の動きは直ちにロックされるのであるから、移動調整部をフレームの2本の平行を成す棒状部材に沿って続いて移動させることは不可能である。
ところが、甲49製品は、青色部材を握ることなく、写真(47)~(50)の状態を維持しつつ、写真(53)~(56)に示す移動が自在にできるというのであるから、青色部材が元に戻らないことの機序に関する上記の説明は、上記写真(53)~(56)の開示内容と整合性を欠くものである。
また、甲49製品を、青色部材から手を離すと、セントラルロッドの歯(凸部)がセントラルシャフトの溝(凹部)に陥入し、その結果、青色部材が元の位置に戻るような製品であると仮定しても、この状態では移動調整部の動きがロックされることとなるのであるから、やはり、移動調整部の移動は不可能であって、上記写真(53)~(56)の開示内容とは整合しない。
そうすると、甲49製品は、セントラルロッドの歯(凸部)とセントラルシャフトの歯(凸部)や溝(凹部)との位置関係にかかわらず、青色部材から手が離れても同部材及び銀色部材を元の位置に戻さずに少し上がった状態で維持するような製品であると解するのが相当であるから、甲49発明が、“青色部材を握る力を抜くと青色部材が元の位置に戻る”事項を具備する旨の上記主張は採用できない。
3 甲49製品に係る発明の公用性について
3-1 AMISモバイルレッグポジショナーについて
証拠(甲第2号証、甲第6~9号証、甲第29号証の1~5、甲第30号証の1~3、甲第48号証、甲第52号証の1~7、甲第62号証、乙第5号証)によれば、次の事実が認められる。
(1)販売名を「AMISモバイルレッグポジショナー」とする医療機器について、その製造販売の届出が、平成24年1月30日にメダクタジャパン株式会社より、独立行政法人医薬品医療機器総合機構へなされた(以下、この「医療機器」を「甲2届出品」という。)。(甲第2号証第1頁)
(2)甲2届出品の製造者は、「MEDACTA International SA」(請求人)である。(甲第2号証別紙5-2、別紙6-1)
請求人日本法人であるメダクタジャパン株式会社は、甲2届出品を輸入し、各医療機関への販売、貸し渡しを業とする会社である。(甲第11号証)
(3)甲2届出品は、調節可能な手術台で、人工股関節置換術の際に、患者の身体を支持し、患肢の牽引を支持・実行するための装置を備えている。甲2届出品を用いて患肢の位置の調整等を行い、正しい位置に固定することが可能である。(甲第2号証第1頁)
(4)甲2届出品に係る「AMISモバイルレッグポジショナー」には、構成品名を「AMIS mobile legpositioner」、「AMIS mobile leg positioner2.0」、「Universal Table For Leg Positioner」とする構成品が含まれる。(甲第2号証別紙1-1、別紙1-2、別紙8-3)
(5)「AMIS mobile leg positioner2.0」は、主たる構成部材である「Frame」に加え、「AMIS Shoe」、「Thigh Elevator」、「Hinge」などの他の構成部材から構成され、「AMIS mobile leg positioner2.0」及びその構成部材である「Frame」の品番は、それぞれ、「01.15S.100」、「01.15.10.0190」である。(甲第2号証別紙1-1、別紙8-3)
(6)製品名を「AMISモバイルレッグポジショナー2.0フレーム」、品番を「01.15.10.0190」とする製品を含む「『AMISモバイルレッグポジショナー』セット」は、平成24年5月頃に請求人日本法人より被請求人の病院へ貸し出され、また、平成24年9月頃に請求人日本法人より柏市立病院へ貸し出され、手術に使用された。(甲第6~9号証)
(7)「Leg Positioner」及び「Universal connector」なる製品が、平成26年5ないし6月頃に請求人日本法人より相原病院へ貸し出された。(甲第29号証の1~4)
(8)貸し出された製品により複数回の手術を行う場合、当該製品は医療機関に保管され、手術の度に返却されるわけではなかった。(甲第48号証、平成30年4月27日付け上申書第2頁下から第9~7行)
相原病院では、「AMIS mobile leg positioner2.0」(ItemNo.「01.15S.100」、LotNo.「1014342」)及び「Fully radiotransparent Universal Connector」(ItemNo.「01.15.10.0272」、LotNo.「1313097」)が、平成26年6月頃から平成29年6月頃まで保管されていた。(甲第48号証、甲第52号証の1~7)
(9)甲第2号証別紙7最下欄に記載された「取扱説明書」として、乙第5号証の冊子が製品の貸し出し先や医療機器販売代理店に配布された。(平成30年4月13日付け上申書第10~11頁)
3-2 甲49製品の貸し渡しについて
上記「3-1」の(1)~(9)を踏まえつつ、甲49製品について検討する。
(1)被請求人の病院及び柏市立病院への貸し渡しについて
上記「1」の(1)で示したように、甲49製品は、手術台本体(手術マット付き)、主要部、両者を接続するヒンジ及び靴から成る。
そして、甲49製品は、「AMIS MOBILE LEG POSITIONER」(甲第49号証写真(23))に係るものであるから、甲49製品の主要部に刻印された数字「01.15.10.0190」(甲第49号証写真(18))に着目して、上記甲第2号証別紙8-3の「品番」を参照すれば、甲49製品の上記「主要部」は、甲2届出品である「AMIS mobile leg positioner2.0」における「Frame」と同一の品番を有する機器と分かる。
製造者が機器に付す品番は、通常、当該機器の形状、構造、機能等を特定するための文字列であること踏まえると、甲49製品の「主要部」は、甲2届出品である「AMIS mobile leg positioner2.0」の「Frame」と同一構造の機器であり、また、平成24年5月頃に請求人日本法人より被請求人の病院へ貸し渡された「AMISモバイルレッグポジショナー2.0フレーム」及び平成24年9月頃に請求人日本法人より柏市立病院へ貸し渡された「AMISモバイルレッグポジショナー2.0フレーム」とも、その品番(上記「3-1」の(6))からみて同一構造の機器といえる。
そして、この貸し渡しに当たり、請求人日本法人と貸し渡し先(被請求人の病院、柏市立病院)との間に特段の秘密保持契約が締結されていたとする証拠はない。
また、この貸し渡しにおいて、甲49製品の「ハンドル部」の具体的な内部構造が公然と知られうる状態で、貸し渡しが行われていたとする証拠も見当たらない。
(2)相原病院への貸し渡しについて
請求人日本法人から医療機関へ貸し出された製品は、手術の度に返却されるのではなく、そのまま医療機関に保管されていたこと、また、相原病院には、「AMIS mobile leg positioner2.0」(Item No.「01.15S.100」、Lot No.「1014342」)及び「Fully radiotransparent Universal Connector」(Item No.「01.15.10.0272」、Lot No.「1313097」)が、平成26年6月頃には保管されていた(上記「3-1」の(8))ところ、この「Lot No.」の「1014342」及び「1313097」の各数字と、甲49製品における「LOT」の「1410342」なる数字(上記「1」の(10))及び「1313097」(上記「1」の(11))なる数字とが対応していることからすれば、甲49製品は全体として、平成26年5月に請求人から相原病院へと貸し渡されたものと同一の物といえる。
そして、この貸し渡しに当たり、請求人日本法人と貸し渡し先(相原病院)との間に特段の秘密保持契約が締結されていたとする証拠はない。
また、この貸し渡しにおいて、甲49製品の「ハンドル部」の具体的な内部構造が公然と知られうる状態で、貸し渡しが行われていたとする証拠も見当たらない。
3-3 小括
以上によれば、甲49製品に係る発明について、「ハンドル部」の具体的内部構造に係る事項が本件特許出願前に日本国内において公然実施されていたとまではいえないが、少なくとも上記「2」の「(1)」で記載された事項を発明特定事項とする甲49発明は、本件特許出願前に日本国内において公然実施された発明である。
4 本件訂正発明1について
4-1 対比
本件訂正発明1と甲49発明とを対比する。
ア)甲49発明の「2本の平行を成す棒状部材」は、文言の意味、機能又は構造等からみて本件訂正発明1の「二本の平行な棒状部材」に相当し、以下同様に、「フレーム」は「メインフレーム」に、「フレーム部」は「メインフレーム部」に、「フレームの2本の平行を成す棒状部材に沿って移動することのできる移動部」は、「メインフレームに沿って移動可能である移動フレーム」に、「患者」は「手術対象者」に、「足を入れて固定するための靴を取り付ける靴取付部」は「足を固定するための足固定部」に、「移動調整部」は「位置調整部」に、「グリップ部」は「ハンドル部」に、「青色部材」は「グリップ」に、それぞれ相当する。
イ)上記ア)の相当関係から、甲49発明の「フレームを含むフレーム部」、「移動部、・・・靴取付部、を含む移動調整部」は、それぞれ「メインフレームを有するメインフレーム部」、「移動フレーム、・・・足固定部、を備える位置調整部」に相当する。
ウ)甲49発明における「2本の平行を成す棒状部材を備えたフレームに沿って、移動調整部を動かすことができず、また、脚部によるフレーム部の傾きを調整する動作もでき」ない「銀色部材が下がっている状態」、「2本の平行を成す棒状部材を備えたフレームに沿って、移動調整部を動かすことができ、また、脚部によるフレーム部の傾きを調整する動作はでき」ない「銀色部材が少し上がっている状態」、「2本の平行を成す棒状部材を備えたフレームに沿って、移動調整部を動かすことができ、また、脚部によるフレーム部の傾きを調整する動作もできる」「銀色部材が高く上がっている状態」の3つの状態は、各状態における作用からみて、本件訂正発明1における「第一のモード」、「第二のモード」、「第三のモード」に、それぞれ相当する。
エ)上記ア)とウ)の相当関係からみて、甲49発明の「前記移動調整部は、ハンドル部を備え、ハンドル部の青色部材を握る操作により、銀色部材の位置を上下に移動させ、銀色部材が下がっている状態では、2本の平行を成す棒状部材を備えたフレームに沿って、移動調整部を動かすことができず、また、脚部によるフレーム部の傾きを調整する動作もできず、銀色部材が少し上がっている状態では、2本の平行を成す棒状部材を備えたフレームに沿って、移動調整部を動かすことができ、また、脚部によるフレーム部の傾きを調整する動作はできず、銀色部材が高く上がっている状態では、2本の平行を成す棒状部材を備えたフレームに沿って、移動調整部を動かすことができ、また、脚部によるフレーム部の傾きを調整する動作もでき」は、本件訂正発明1の「前記位置調整部は、前記メインフレームに沿った移動動作及び前記支持脚部の傾き調整動作を固定する第一のモード、前記メインフレームに沿った移動動作を解放し前記支持脚部の傾き調整動作を固定する第二のモード、前記メインフレームに沿った移動動作及び前記支持脚部の傾き調整動作を解放する第三のモード、を一つのグリップの握り動作で設定することのできるグリップ部、を備え」に相当する。
オ)上記「3-1」での検討を踏まえると、甲49発明の「医療機器の主要部」は、本件訂正発明1の「下肢関節手術用牽引手術台」に相当する。
以上によれば、本件訂正発明1と甲49発明とは、本件訂正発明1の用語を用いて表現すると、
「二本の平行な棒状部材を備えたメインフレームを有するメインフレーム部と、
前記メインフレームに沿って移動可能である移動フレーム、前記移動フレームに設置され手術対象者の足を固定するための足固定部、を備える位置調整部と、
前記位置調整部に接続され、前記メインフレーム部を支持するとともに前記メインフレーム部の傾きを調整可能な支持脚部と、を有する下肢関節手術用牽引手術台であって、
前記位置調整部は、前記メインフレームに沿った移動動作及び前記支持脚部の傾き調整動作を固定する第一のモード、前記メインフレームに沿った移動動作を解放し前記支持脚部の傾き調整動作を固定する第二のモード、前記メインフレームに沿った移動動作及び前記支持脚部の傾き調整動作を解放する第三のモード、を一つのグリップの握り動作で設定することのできるグリップ部、を備える下肢関節手術用牽引手術台。」
の点で一致し、次の点で相違する。
<相違点>
本件訂正発明1では、「グリップの握り込み量に応じて位置が変化する第一の抑え部材及び前記グリップの握り込み量に応じて位置が変化する第二の抑え部材を有し、前記第一の抑え部材は、メインフレーム部のガイド用棒状部材の溝にかみ合うことにより、移動フレームの前記メインフレームに沿った移動動作を固定することが可能であり、前記第二の抑え部材は、支持脚部の溝にかみ合うことにより、前記支持脚部の傾き調整動作を固定することが可能であり、前記移動フレームの前記メインフレームに沿った移動動作を解放するための前記グリップの握り込み量と、前記支持脚部の傾き調整動作を解放するための前記グリップの握り込み量が異なり、前記グリップ部には付勢手段が付されており、前記グリップを握る力を抜くと、前記グリップが元の位置に戻る」のに対し、甲49発明では、「グリップの握り込み量に応じて位置が変化する第一の抑え部材及び前記グリップの握り込み量に応じて位置が変化する第二の抑え部材を有し」ているのか否か、「前記第一の抑え部材は、メインフレーム部のガイド用棒状部材の溝にかみ合うことにより、移動フレームの前記メインフレームに沿った移動動作を固定することが可能であ」るのか否か、「前記第二の抑え部材は、支持脚部の溝にかみ合うことにより、前記支持脚部の傾き調整動作を固定することが可能であ」るのか否か、「前記移動フレームの前記メインフレームに沿った移動動作を解放するための前記グリップの握り込み量と、前記支持脚部の傾き調整動作を解放するための前記グリップの握り込み量が異な」るのか否か、「前記グリップ部には付勢手段が付されて」いるのか否かがいずれも不明であり、かつ、「グリップを握る力を抜くと、前記グリップが元の位置に戻る」のではなく、グリップから手が離れても、グリップが少し上がった状態で維持される点。
4-2 相違点の判断
請求人は、上記相違点における本件訂正発明1に係る特定事項について、
主張ア(新規性):甲49発明が備えている、
主張イ(進歩性):甲49製品の外観、動作及び操作から認識できる態様等から、当業者が適宜に認識し設計する事項である、
主張ウ(進歩性):甲第68~71号証に記載された発明ないし周知技術から当業者が容易に想到し得たことである、
旨の主張をしているので、以下それぞれ検討する。
4-2-1 主張ア(新規性)について
甲49発明は、上記相違点において本件訂正発明1と相違するところ、甲49発明が少なくとも「グリップを握る力を抜くと、前記グリップが元の位置に戻る」事項を具備しないことは、上記「2」の「(2)」で示したとおりである。
よって、本件訂正発明1は、甲49発明ではない。
4-2-2 主張イ(進歩性)について
甲49発明は、「銀色部材が少し上がっている状態は、青色部材も少し上がった状態であって、青色部材から手が離れても維持され、そのため、銀色部材が少し上がっている状態では、青色部材を握ることなく移動調整部を動かすことができる」事項、即ち、グリップを握る力を抜いても、グリップは元の位置に戻らずに少し上がっている状態に維持でされ、そのまま、グリップを握らずに位置調整部の移動動作が可能である、という事項を備えるものである。
そして、甲49発明が当該事項を具備することにより、医療従事者は、位置調整部の移動に当たり、グリップを握るか否か、握るのであればその握る力に不足はないか、逆に握る力が過大となり支持脚部の傾きに影響が生じないか、さらには、その力をいかに一定に保つべきかなどの諸事に注意力を奪われることなく、位置調整部の移動操作にのみ専念できること、また、その結果、単純な操作で位置調整部の移動・位置決めが期待できることは、甲49発明の奏する作用効果として、甲49製品の外観、動作及び操作の態様から、当業者が普通に認識できるところである。
そうすると、このように単純な操作で位置調整部を移動・位置決めし得る甲49発明に接した当業者が、甲49発明に対し、「グリップを握る力を抜くと、前記グリップが元の位置に戻る」ような改変を想起すべき動機付けは見当たらない。かえって、甲49発明のグリップ部を「グリップを握る力を抜くと、前記グリップが元の位置に戻る」グリップ部へ変更すると、位置調整部の移動の際は、常にグリップを適切な力加減で調整しながら握る必要性が生じるため、甲49発明の利便性が損なわれるのであるから、このような変更を、当業者が適宜に設計する程度の変更であるとすることはできない。
よって、甲49製品の外観、動作及び操作から認識できる態様等に関する事項に接した当業者といえども、甲49発明に基づいて、上記相違点における本件訂正発明1に係る特定事項を容易に想到できたものとはいえない。
そして、本件訂正発明1は、上記相違点における本件訂正発明1に係る特定事項、特に、「グリップを握る力を抜くと、前記グリップが元の位置に戻る」事項を具備することにより、「グリップを握っていた手を離すと、メインフレーム沿った移動動作は固定され、意図しないときに患者の下肢をメインフレーム沿った方向に移動してしまう事態を回避し、安全に手術を行うことができる」(平成30年8月17日提出の意見書第10頁第7~9行)という顕著な作用効果を期待できるものである。
4-2-3 主張ウ(進歩性)について
(1)甲第68号証の記載事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第68号証には図面と共に次の事項が記載されている(付記した邦訳は、甲号証添付の訳文を主に援用した。)。
甲68a:フロント頁左欄第1~3行
「SYSTEM AND METHOD FOR POSITIONING PATIENT LIMBS DURING SURGICAL PROCEDURES」
(手術中に患者の下肢を位置付けるシステム及び方法)
甲68b:第3欄48行~第4欄5行
「The sub-system (102) comprises the two bodies forming the binary track, (301) and (302) and additionally has a third tubular element (303) parallel to (301) and (302), preferably at the center of these last elements. Element (303) works substantially as a means to locate the carriage in the positions established in the pre-operative phase schematically represented by the series of holes or (even better) slits (405-408).
Sub-system (103) comprises substantially said carriage shown in the circle 202 of FIG. 2 which in its first embodiment of FIG. 4 , (representation on enlarged scale of the carriage of FIG. 2) involves a first mechanism (313) to position and fix the carriage on the track thanks to said holes or slits (405-408); in FIG. 5 said mechanism has essentially the form of a cam (502) whose lower end (501) penetrates between the teeth of toothed wheel (503). In the embodiment of FIG. 5 the number of the teeth are six, the inter-teeth empty spaces are seven and the passage from one space to the other determines a rotation (over axis X-X of FIG. 6) of 10° with a total amplitude of 50°.
The carriage mechanism translation along axis X-X (which on its turn can rotate around the fixed axis PF of a total angle of 50°) is schematically represented in FIGS. 4 and 4A which are two views according to arrows (402,403) of same device.」
(サブシステム(102)は、二つのトラック(301)及び(302)を構成する2つの部材を含み、加えて、当該(301)及び(302)に平行する位置に3つ目の管状部材(303)を有し、好ましくは、(301)及び(302)の中間に位置する。構成要素(303)は、一連の穴または(さらに良いものとして)スリット(405-408)を模式的に有し、手術前の段階で決められた位置にキヤレッジを位置付けるための手段として実質的に機能する。
サブシステム(103)は、図2の丸囲み部分202に示す前記キャリッジを備えているが、図4(図2のキャリッジの拡大表示)の第1の実施例では、前記穴またはスリット(405-408)のおかげでキャリッジをトラック上に位置決めして固定することのできる第1のメカニズム(313)を有する。図5において、前記メカニズムは、カム(502)により実現され、その下端部(501)が歯車(503)の歯の間に入り込む。図5が示す実施例において、歯の数は6、歯の間の空きスペースの数は7であり、歯の間のスペースから隣の歯の間のスペースに移動するに際し、(図6のX-X軸に対し)10°回転をし、合計で50°まで振幅する。
軸X-Xに沿ったキャリッジメカ二ズムの移動(合計50°、固定された軸PFを中心として回転することができる)は、同じ装置の矢印(402,403)に従った2つの図である図4および図4Aに模式的に示されている。)
(2)甲第69号証の記載事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第69号証には図面と共に次の事項が記載されている(付記した邦訳は、甲号証添付の訳文を主に援用した。)。
甲69a:第1頁第1行
「AN ADJUSTABLE STEERING COLUMN FOR A VEHICLE」
(調節可能な車両用操作コラム)
甲69b:第16頁第19行~第17頁第17行
「The user then draws the handle 80 outwardly away from the steering axis X against the bias of spring 82 so that the handle occupies the fully extended position shown in broken lines in Fig 1. While holding the handle 80 in its extended position and whilst simultaneously holding the rim 13a of the steering wheel 13 with the same hand, the user draws the handle 80 towards the steering wheel with the two fingers Fl, F2 so as to pivot the first and second levers 74, 90 about the pivot pin 72 until the projection 95 contacts the stop surface 97. The pivotal movement of the levers 74,90 relieve the brake shoes 28 and disengage the teeth 118, 120 thereby enabling the steering column to be adjusted for length and angular position.
By using either the same hand H or with both hands on the steering wheel 13, the necessary adjustment can be made to the steering column and the handle 80 can then be released. On releasing the handle 80, the spring 82 returns the handle to its fuil-line position, the brake 28 is re-applied and the teeth 118, 120 re-engage to lock the steering column in its newly adjusted position. Once the handle 80 re-occupies its full-line position, iies well clear of the steering wheel rim 13a so that it cannot be accidentally manipulated by the user when the user is steering the vehicle.」
(次いで、使用者は、ばね82の付勢に抗してハンドル80を操縦軸Xから外側に1つ張り、ハンドルが図1の破線で示された完をに伸張した位置をぶめるようにする。ハンドル80を伸長した位置に保持しながら、同じ手で操縦ホイール13のリム13aを操作すると、使用者は2本の指F1、F2で操縦ホイールに沿ってハンドル80を引っ張り、突出部95が止め表面97に接触するまで、第1および第2のレバー74,90を回動ピン72の周りに回転させる。レバー74,90の回転R動は、ブレーキシュー28を解放し、歯118,120を係合解除し、それによって、操縦コラムによる長さ方向調整動作Rび角度位置調を動作を可能にする。
操縦ホイール13上で同じ手Hまたは両手を使用することによって、操縦コラムに必要な調整を行うことができ、ハンドル80を解放することができる。ハンドル80を解放すると、スプリング82がハンドルを実線の位置に戻し、ブレーキ28が再びかけられ、歯118,120が再び係合して操縦コラムを新たに調整された位置に固定する。ハンドル80が実線の位置に再度戻り、操縦ホイールリム13aを十分に離すと、ユーザが車両を操縦しているときに、ユーザにより誤って操作されることはない。)
(3)甲第70号証の記載事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第70号証には図面と共に次の事項が記載されている。
甲70a:「【技術分野】
【0001】
本発明は、入力部材を往復移動させる毎に、出力部材の位置が、進出位置と後退位置とに交互に切り替えられるようにした進退装置、およびそれを用いた椅子に関する。」
甲70b:「【0079】
前部連結杆94の左右方向の中央寄りには、前後方向に長い左右1対の長孔96、96が設けられている。また、右方のガイド部93の前部右側面には、操作レバー97の係合爪が選択的に係合することにより、座7の前後位置を調節するための縦長の複数のスリット98が、前後方向に並べて設けられている。」
甲70c:「【0087】
次に、各部の操作手段について説明する。
前述した操作レバー97と、座支持部材90に設けた複数のスリット98とにより、座板91の前後位置調節手段112が形成されている。
【0088】
操作レバー97は、その上端部における前後方向に突出する軸97aを、座板91の前部右側部に枢着することにより、上下方向に回動可能に設けられている。操作レバー97の基端部には、座7の内方に向かって突出する係合爪113が設けられており、この係合爪113が、座支持部材90の複数のスリット98に選択的に係合することにより、座板91を、座支持部材90に対して、所望の前後位置で係止しうるようになっている。
なお、操作レバー97を、その係合爪113がスリット98に係合する方向に付勢する付勢手段を設けてあるが、それについては図示を省略してある。」
(4)甲第71号証の記載事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第71号証には図面と共に次の事項が記載されている。
甲71a:第1頁第4行~第2頁第5行
「2.実用新案登録請求の範囲
座席を取付ける基枠を床上の固定枠からこれと平行にかつ上下動可能に支持するリンク機構を備える座席上下装置において、下端が前記固定枠に枢着され上端が前記基枠に設けた案内溝に係合する操作把手軸に固着されている高さ調節腕と、一端が前記操作把手軸に固着され他端に止め軸を具えて操作把手軸によりこの軸を中心として枢動可能な位置変えレバーと、前記操作把手軸が貫通する案内溝と前記止め軸が掛合する複数個の止め部とを有して前記基枠に固着された位置決め板と、前記操作把手軸に固着されたばね腕と前記基枠との間に張設され前記位置変えレバーをその止め軸が位置決め板の止め部に掛止されるように付勢する引張りばねとを備えることを特徴とする座席上下装置。
3.考案の詳細な説明
この考案は座席上下装置に関するもので、特に、自動車並びに産業用車輛の運転者座席の高さ調節に適する座席上下装置に関するものである。」
甲71b:第5頁第15~19行
「操作把手軸11は第4図に明示しているように、一端が基枠外に延長し、略直角に前方に曲がつて、高さを変える操作のための把手11aを形成している。」
(5)判断
甲第68号証には、「手術中に患者の下肢を位置付けるシステム」に関し、穴(405-408)に係合する適宜の部材及びカム下端部(501)を備えるキャリッジが記載されているが、一のグリップの握り込み量に応じて当該部材及びカム下端部(501)の位置が変化するものではなく、異なる握り込み量に基づいて、キャリッジの移動動作及び傾き調整動作が選択されるものではなく、また、そのグリップに付勢手段が付されているものでもない。
甲69号証には、ハンドル80が記載されているが、そのハンドル80は車両用操作コラムのためのものであって、ハンドル80により、手術台における移動フレームの移動動作や支持脚部の傾き調整動作行うものではない。
甲70号証には、操作レバー97が記載されているが、その操作レバー97は椅子のためのものであって、操作レバー97により、手術台における移動フレームの移動動作や支持脚部の傾き調整動作行うものではない。
甲71号証には、把手11aが記載されているが、その把手11aは自動車の運転者座席のためのものであって、把手11aにより、手術台における移動フレームの移動動作や支持脚部の傾き調整動作行うものではない。
そうすると、上記相違点における本件訂正発明1に係る特定事項は、甲第68~71号証に記載された事項であるとも、甲第68~71号証に基づく周知技術であるともいえないのであるから、甲49発明及び甲第68~71号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
加えて、上記「4-2-2」で示したように、甲49発明においては、「グリップを握る力を抜くと、前記グリップが元の位置に戻る」事項を採用すべき動機付けはないところ、甲68~71号証にも、甲49発明のグリップ部を「グリップを握る力を抜くと、前記グリップが元の位置に戻る」グリップ部へと変更すべきであるとの記載や示唆はないのであるから、甲49発明及び甲第68~71号証に記載の発明ないし周知技術に接した当業者が、上記相違点における本件訂正発明1に係る特定事項を容易に想到することができたものとは、やはりいえない。
そして、本件訂正発明1は、上記相違点における本件訂正発明1に係る特定事項、特に、「グリップを握る力を抜くと、前記グリップが元の位置に戻る」事項を具備することにより、「グリップを握っていた手を離すと、メインフレーム沿った移動動作は固定され、意図しないときに患者の下肢をメインフレーム沿った方向に移動してしまう事態を回避し、安全に手術を行うことができる」(平成30年8月17日提出の意見書第10頁第7~9行)という顕著な作用効果を期待できるものである。
4-3 小括
したがって、本件訂正発明1は、本件特許の出願前に日本国内において公然実施された甲49発明ではなく、また、本件訂正発明1を、甲49発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとすることも、甲49発明及び甲第68~71号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとすることもできない。
5 本件訂正発明2~7について
(1) 無効理由1A、1B、1Cについて
本件訂正発明2~5、7は、本件訂正発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明である。
よって、本件訂正発明1について示した理由と同様の理由により、本件訂正発明2~5、7は、甲49発明ではなく、また、甲49発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものでも、甲49発明及び甲第68~71号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものでもない。
(2) 無効理由1D、1Eについて
請求人は、本件訂正発明5~7に関し、本件訂正発明5の「足支持フレームの位置調整量を表示する足支持フレーム位置調整量表示部」については甲第13~18号証に開示され、本件訂正発明6の「傾き角表示」については甲第19~22号証に開示され、本件訂正発明7の「バックル」については甲第23~27号証に記載されている旨の主張をしている。
甲第13~27号証を検討するに、甲第13号証には、「デイジタル測定表示装置」における「ハンドル32」、「カウンタ14」が、甲第14号証には、「工作機械等の送り量ディジタル計測装置」における「ハンドル36」、「カウンタ18」が、甲第15号証の1には、「手術台および付属品」における「スケール270」が、甲第16号証には、「床部の昇降用駆動機構」における「表示8」が、甲第17号証には、「床部の昇降用駆動機構」における「表示窓9」が、甲第18号証には、「床部の昇降量表示機構」における「表示窓12」がそれぞれ記載され、また、甲第19号証には、「速度制御式ギャッジベッド」における「背角度センサ38」、「脚角度センサ41」、「表示器16」が、甲第20号証には、「ベッドヘッド角度のセンサー取付け、較正、および監視システム」における「角度センサ66」、「ディスプレイ54」が、甲第21号証には、「膝関節撮像用架台」における「角度目盛板26」が、甲第22号証には、「医療用寝台」における「傾斜角度指示計23」がそれぞれ記載され、さらに、甲第23号証には、「スキートレーニング装置」における「アジャスタ142」が、甲第24号証には、「改良型締めストラップを備えたスキーブーツ」における「ファスナ4」が、甲第25号証には、「滑走部品の流れ止め機構」における「締結具8a,8b」が、甲第26号証には、「スノーボード用ブーツ」における「バックル7」が、甲第27号証には、「靴用装着具」における「固定バンド30」がそれぞれ記載されてはいる。
しかしながら、甲第13~27号証には、上記相違点における本件訂正発明1に係る特定事項については、記載も示唆もない。
そうすると、本件訂正発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明である本件訂正発明5~7を、甲49発明、甲第68~71号証に記載された発明ないし周知技術及び甲第13~27号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとすることはできない。
6 まとめ
したがって、無効理由1A~1Eによっては、本件訂正発明1~7を無効とすることはできない。
第8 当審の判断3(無効理由2A~無効理由5について)
1 無効理由2A~2Eについて
上記「第7」の「3」での検討を踏まえると、甲49製品に係る発明である甲49発明は、本件特許出願前に日本国内において公然知られた発明であるともいえる。
そうすると、上記「第7」の「4」、「5」で示し理由と同様の理由により、本件訂正発明1~5、7は、本件特許の出願前に日本国内において公然知られた甲49発明ではなく、また、甲49発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものでも、甲49発明及び甲第68~71号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものでもない。
同様に、本件訂正発明5~7は、甲49発明、甲第68~71号証に記載された発明ないし周知技術及び甲第13~27号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
したがって、無効理由2A~2Eによっては、本件訂正発明1~7を無効とすることはできない。
2 無効理由3A~3Eについて
本件特許の出願前に外国においてどのような発明が公然実施されていたのか定かではないが、仮に、請求人が主張するように、当該発明が、「AMIS mobile leg positioner」(品番 01.15S.100)に係る発明であったとすれば、その発明は甲49発明となる。
しかしながら、本件訂正発明1~5、7は、甲49発明ではないこと、また、本件訂正発明1~7が、甲49発明及び甲第13~27、68~71号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものではないことは、上記「第7」において示したとおりである。
そうすると、甲49発明が本件特許の出願前に外国において公然実施された発明であったとしても、無効理由3A~3Eによっては、本件訂正発明1~7を無効とすることはできない。
3 無効理由4A~4Eについて
本件特許の出願前に外国においてどのような発明が公然知られていたのか定かではないが、仮に、請求人が主張するように、当該発明が、「AMIS mobile leg positioner」(品番 01.15S.100)に係る発明であったとすれば、その発明は甲49発明となる。
しかしながら、本件訂正発明1~5、7は、甲49発明ではないこと、また、本件訂正発明1~7が、甲49発明及び甲第13~27、68~71号証に記載された発明ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものではないことは、上記「第7」において示したとおりである。
そうすると、甲49発明が本件特許の出願前に外国において公然知られた発明であったとしても、無効理由4A~4Eによっては、本件訂正発明1~7を無効とすることはできない。
4 無効理由5について
請求人は、本件訂正発明1~7に係る特許について、予備的に無効理由5も主張しているので、以下に検討する。
(1)請求人適格について
上記「第7」で示したとおり、本件訂正発明1は、本件訂正発明1を特定するための事項、特に、「グリップを握る力を抜くと、前記グリップが元の位置に戻る」事項を具備することにより、「グリップを握っていた手を離すと、メインフレーム沿った移動動作は固定され、意図しないときに患者の下肢をメインフレーム沿った方向に移動してしまう事態を回避し、安全に手術を行うことができる」(平成30年8月17日提出の意見書第10頁第7~9行)という顕著な作用効果を期待できるものである。
他方、甲49発明は、「銀色部材が少し上がっている状態は、青色部材も少し上がった状態であって、青色部材から手が離れても維持され、そのため、銀色部材が少し上がっている状態では、青色部材を握ることなく移動調整部を動かすことができる」発明、即ち、グリップから手を離しても、グリップは少し上がっている状態に維持されて、位置調整部(移動フレーム)は固定されることなく、意図しない移動ができてしまうという発明である。
よって、安全な手術のため、意図しないときに患者の下肢をメインフレームに沿った方向に移動してしまう事態を確実に回避するという特徴的な技術思想を具現化した本件訂正発明1~7と甲49発明とでは、下肢関節手術用牽引手術台を特徴付けるための手段、即ち、患者の下肢を牽引し、また、牽引位置に保持するための具体的手段として、グリップの操作態様、移動フレームの移動操作態様、移動フレームの固定保持態様等の点において大きく異なるのであるから、両者は同一内容の発明とはいえない。
そして、本件特許の願書には、発明者として「中村順一」ら5名が記載されている(甲第1号証第1頁及び最終頁参照)ことに加え、乙第1号証及び乙第4号証の陳述書の内容からみて、本件訂正発明1~7が「中村順一」ら5名により発明され、また、被請求人はこの5名の発明者より特許を受ける権利を承継した者であるといえるところ、請求人が、「中村順一」ら5名から本件訂正発明1~7について特許を受ける権利を承継したことを裏付ける証拠はなく、また、請求人が、本件訂正発明1~7と同内容の発明をした他の発明者から、当該同内容の発明について特許を受ける権利を承継したことを裏付ける証拠もない。
そうすると、仮に、請求人が、甲49発明の特許を受ける権利を有していたととしても、甲49発明とは別異の特徴点を具備する本件訂正発明1~7の特許を受ける権利又は本件訂正発明1~7と同内容の他の発明の特許を受ける権利までをも有しているとはいえないのであるから、請求人は、特許法第123条第2項にいう「同項第六号に該当することを理由として特許無効審判を請求する場合にあつては、特許を受ける権利を有する者」ではなく、本件特許無効審判の請求における無効理由5を理由とする部分については、請求人適格を有するとはいえない。
(2)請求人の主張について
上記のとおり、請求人は、本件特許無効審判の請求における無効理由5を理由とする部分について、請求人適格を有するとはいえないが、念のため、無効理由5に関する請求人の主張について検討する。
弁駁書によれば、請求人の主張は、概略、「・・・甲49製品に被請求人が接し、操作したことは争いない。一般に、依拠性は、対象物に対するアクセス可能性と、対象物との類似性から判断されるところ、甲49製品に被請求人が接し、操作したことは争いなく、さらに、甲49製品と本件明細書の実施例は酷似しているのであるから、本件訂正発明は、甲49製品に依拠してなされたものであると推認することが合理的認定である。・・・以上によると、本件発明ないし本件訂正発明は、被請求人が、甲49製品に係る発明に依拠し、冒認によってなされたと認定するのが合理的認定である。」(第39頁第15~24行)というものである。
しかしながら、上記(1)で検討したように、本件訂正発明1~7と甲49製品に係る発明である甲49発明とは、患者の下肢を牽引し、また、牽引位置に保持するための手段において相違し、両者が類似しているとはいえないのであるから、仮に、甲49製品に被請求人が接し、また操作したことがあったとしても、請求人の上記主張は、その前提において失当であって採用できない。
そして、本件訂正発明1~7が「中村順一」ら5名により発明されたといい得ることは上記(1)で示したとおりであって、本件訂正発明1~7が冒認によってなされた発明であるとはいえない。
(3)まとめ
したがって、無効理由5によっては、本件訂正発明1~7を無効とすることはできない。
第9 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第3項、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-7〕、8について訂正することを認める。
そして、本件訂正発明1~7についての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものではなく、その発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してされたものでもなく、また、同法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでもなく、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件訂正発明1~7についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-800071