特許異議申立
2017-701164
車両用ホイール
- 審判番号
- 2017-701164
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-203255外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年12月07日
- 審決日
- 2018年04月09日
- 公報発行日
- 2018年06月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社レイズエンジニアリング
- 【権利者代理人】宮崎 栄二
- 【異議申立人】伴 正史
- 分類
- P1651.121-Y (B60B) / P1651.537-Y (B60B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6153437号発明「車両用ホイール」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6153437号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6153437号の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成25年9月30日に特許出願され、平成29年6月9日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年12月7日に特許異議申立人伴正史(以下、「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
特許第6153437号の請求項1~3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1~3」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
一体ないし分割構造におけるリム及び複数のスポークを有するディスクを備える軽合金製の車両用ホイールにおいて、
ホイール全体が塗装された後にスポークを含むディスク又はリムの塗装部の一部に機械加工にて塗膜及び母材金属を切削することにより金属面を露出させながら文字、図形又は記号等からなる凹形又は凸形のロゴ部を含む表示部が形成され、
表示部におけるロゴ部又はロゴ部以外の金属露出部には、機械工具の刃物目を残して凹凸筋が連続する表面となった彫刻加工部が形成され、
彫刻加工部には、凹凸筋表面の凹凸を均すように有色又は無色のクリア塗料を塗布して透明層が形成されて母材金属の凹凸筋及び透明層の層厚によって光の屈折及び反射を利用して彫刻加工部が立体感を強調して呈する構成を備える車両用ホイール。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ホイールにおいて、
前記ロゴ部は、文字、図形又は記号等の複数の構成要素から形成されており、
当該ロゴ部は、すべてに前記彫刻加工部が形成されるとともにクリア塗料が塗布されるが、当該ロゴ部の一部のみが有色クリア塗料で着色され、当該一部以外は無色クリア塗料が塗布されて有色部と無色部となる透明層が形成されて立体感を強調し呈する構成とする車両用ホイール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用ホイールにおいて、
前記彫刻加工部には、クリア塗料による前記透明層に代えて凹凸筋表面の凹凸を均すように透明樹脂を充填するか又は前記透明層の上に更に透明樹脂を充填して彫刻加工部が立体感を強調して呈する構成とする車両用ホイール。」
第3 申立理由の概要
1 申立理由1:特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
特許異議申立人は、証拠として、以下の甲第1~4号証を提出し、本件発明1~3は、甲第1又は2号証に記載された発明及び甲第3ないし4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである旨主張している。
甲第1号証:特開2007-99151号公報
甲第2号証:特開2010-158981号公報
甲第3号証:特開昭59-114101号公報
甲第4号証:特開平4-353001号公報
2 申立理由2:特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号)
特許異議申立人は、請求項1及び3には、不明確な箇所があり、本件特許の請求項1及び3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである旨主張している。
第4 各甲号証に記載された事項等
以下、「甲第1~4号証」を、それぞれ、「甲1~4」という。
1 甲1について
ア 甲1に記載された事項
甲1には、図とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様である。)。
(1a)
「【0002】
自動車(例えば乗用車)部品である軽合金ホイールでは、高質感をもった外観を呈するようにするために、基体の表面に多層からなる塗装が施される。近年、さらに高質感を高めるために、デザイン面の全てを色彩塗料で覆わず、軽合金金属の金属面を透明性塗料のみで覆った光輝品の切削仕上げが製造されている。」
(1b)
「【0006】
本発明は上記の問題を解決し、塗装による着色部と、軽合金素材が有する光輝色部をデザイン面に持つ軽合金ホイール素材を製造する際、その両者の境目が綺麗に分かれ、かつたたかれ等の外観不良を出さないようにするための塗装方法と、その塗装方法によって形成された塗膜を有する軽合金ホイールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明の軽合金ホイールの塗膜形成方法は、軽合金ホイール基体に最上層がクリアーコート層となる多層の着色部を形成する工程と、前記形成された着色部の一部を加工して軽合金ホイール基体を出す光輝面を形成する工程と、前記光輝面と着色部の両方にクリアートップコート層を設けることを特徴とするものである。・・・よって、光輝面を形成するための切削加工の前に、カラーベースコート層やメタリック層をクリアーコート層で覆うことで、クリアーコート層がカラーコート層やメタリック層の割れ、剥がれを防ぐことができる。クリアーコート層も多少割れたり剥がれたりするが、透明であるため、着色部と光輝面に再度クリアートップコート層を設ければ外観不良とならない。」
(1c)
「【0024】
(実施例1)
以下本発明の詳細を添付図面により説明する。
図1は本発明の金属調塗膜の断面を模式的に示す図である。図1(c)において、30は、Al、Mg、Fe等の金属またはそれらの合金で鋳造により形成された基体であり、図3における軽合金ホイールのスポーク部のA-A断面を示す。本発明の軽合金ホイールは、その表面に粉体樹脂によるプライマー層11、カラーベースコート層12、クリアーコート層13、及びクリアートップコート層14からなる塗膜を有する着色部15と、クリアートップコート層14のみからなる光輝面16を持つ。」
(1d)
「【0026】
・・・
その後、プライマー層11として、エポキシ・ポリエステル/ハイブリッド系粉体塗料を、軽合金ホイール基体1に静電塗装により約100μmの厚さに積層し、150~180℃の温度で、30~60分間焼付けた。その後、被覆したプライマー層の上に、アクリルハイソリッド系のシルバー系の熱硬化性樹脂(日本ペイント工業社製のアクリルメラミン樹脂系塗料)を膜厚が30μmとなるようにスプレーガンにより吹付け、100~130℃で10~30分間焼付け、カラーベースコート層を形成した。その後、アクリルハイソリッド系の透明な熱硬化性樹脂(溶剤系クリアー、日本ペイント(株)製)を膜厚が30μmとなるようにスプレーガンにより吹付け、130~160℃で焼付け、クリアーコート層13を形成した。このときの軽合金ホイール基体と塗膜の構成は、図1(a)に模式的に示すものである。
その後、光輝面を形成するために、軽合金ホイールを旋盤加工機に取付け、スポーク部の中央部デザイン面側とデザイン面の周囲を、ほぼ平坦になるように切削加工を施し、軽合金ホイール基体が表層に出した光輝面を作成した。このときの軽合金ホイール基体と塗膜の構成は、図1(b)に模式的に示すものである。この切削工程の際、プライマー層11、カラーベースコート層12の端部は、クリアーコート層13により覆われているために割れや剥がれが起きず、光輝面16と着色部15の境界は綺麗なライン状となり、外観不良の発生率は0.5%以下となった。
その後、軽合金ホイールを旋盤加工機から外し、先ほど形成した光輝面16と着色部15の両方の上面に、アクリルハイソリッド系の透明な熱硬化性樹脂(溶剤系クリアー、日本ペイント(株)製)を膜厚が30μmとなるようにスプレーガンにより吹付け、130~160℃で焼付け、クリアートップコート層14を形成した。このときの軽合金ホイール基体と塗膜の構成は、図1(c)に模式的に示すものである。」
」
(1e)
図3から、リム及び複数のスポーク部を有するディスクを備えるホイールが看取できる。
イ 甲1に記載された発明
(ア)
摘記(1d)から、切削加工を施すスポーク部は、プライマー層11、カラーベースコート層12及びクリアーコート層13を順に形成した塗膜を有する軽合金ホイールのスポーク部であることが明らかである。
(イ)
上記(ア)、摘記(1a)~(1d)、上記ア(1e)及び図1、3を踏まえると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲1発明]
「リム及び複数のスポーク部を有するディスクを備える、自動車部品である軽合金ホイールにおいて、
軽合金ホイールは、その表面に粉体樹脂によるプライマー層11、カラーベースコート層12、クリアーコート層13、及びクリアートップコート層14からなる塗膜を有する着色部15と、クリアートップコート層14のみからなる光輝面16を持ち、
プライマー層11、カラーベースコート層12及びクリアーコート層13を順に形成した塗膜を有する軽合金ホイールのスポーク部の中央部デザイン面側とデザイン面の周囲を、ほぼ平坦になるように切削加工を施し、軽合金ホイール基体が表層に出した光輝面を作成し、その後、光輝面16と着色部15の両方の上面に、クリアートップコート層14を形成した、軽合金ホイール。」
2 甲2について
ア 甲2に記載された事項
甲2には、図とともに以下の事項が記載されている。
(2a)
「【0001】
本発明は、リムとハブとこれらを連結する複数のスポークを備える車両用ホイールにおいて、簡単な処理を施すことによって見栄えのよいホイールが得られるようにしたものである。」
(2b)
「【0004】
この発明の請求項1に記載の車両用ホイールの処理方法によれば、リムとハブとこれらを連結する複数のスポークを備える金属製の車両用ホイール全体の全面を所定の色彩による塗料により塗面に形成し、前記スポークの側面のほぼ全面に凹設したサイドカッタ部分の全面を削ってホイールの金属面を露出させた後、このサイドカッタ部分を含むホイール全面に前記塗面の色彩に対抗する色彩の透明なカラークリヤーを施してなる。」
(2c)
「【0008】
図1においては、車両用ホイール本体1は金属製例えばアルミニウム合金からなり、タイヤを保持するリム2と車軸を支承するハブ3と、これらリム2とハブ3を連結する複数のスポーク4とからなる。
【0009】
これら車両用ホイール本体1には全面に亙って所定の色彩例えば黒色の塗料による塗面5を形成するものとする。また、前記複数のスポーク4にはほぼ全面にサイドカッタ部分6が凹設される。なおこのサイドカッタ部分6は予め形成されるか又は後で削りだされるかは任意である。」
(2d)
甲2の5頁に示される図1及び2から、リム2と、ハブ3と複数のスポーク4とを有するディスクとを備えるホイール1が看取できる。
イ 甲2に記載された発明
摘記(2a)~(2c)、上記ア(2d)及び図1~3を踏まえると、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲2発明]
「リム2と、ハブ3と複数のスポーク4とを有するディスクとを備える、アルミニウム合金からなる車両用ホイールにおいて、
車両用ホイール全体の全面を所定の色彩による塗料により塗面に形成し、前記スポーク4の側面のほぼ全面に凹設したサイドカッタ部分6の全面を削ってホイールの金属面を露出させた後、このサイドカッタ部分6を含むホイール全面に前記塗面の色彩に対抗する色彩の透明なカラークリヤーを施してなる、車両用ホイール。」
3 甲3について
甲3には、図とともに以下の事項が記載されている。
(3a)1頁左下欄15~16行
「本発明は、自動車の車輪に係り、特に軽合金製ホイールに関するものである。」
(3b)1頁右下欄11~20行
「本発明は上記問題点を解決すると同時に、まず重要保安部品としての要素を満し、必要に応じて文字、記号、図案等のデザインを施したデザインホイールを提供することを目的とするものである。
本発明のデザインホイールは、リム部とハブ取付孔との間のデイスク部の外表面に特定の表現を施すことが可能な無地のスペース部を有し、またこのスペース部に文字、記号、数字またはデザイン等を施し、さらにまた同スペース部に凹凸、貫通孔、窓等を設けたことを特徴とするものである。」
(3c)2頁右上欄13行~同頁左下欄9行
「実施例3.
第5図は本発明の第3実施例を示す正面図で、実施例1により得られたデイスク部5が無地の一体形のホイールについて、さらに使用者の希望によりそのデイスク部5に第5図に示すようなネーム7を設けたものである。図においてネーム7は凸形の文字、記号等であり、8は凹部である。これらネーム7や凹部8は鋳型時に設定できるが、とかく個人が使用する場合は数多くのネーム7を用意する必要があってその鋳型数も大変な数量となる。しかし本発明は要求数が少ない場合にはホイール素材のデイスク部5へ加工機によりネーム7を彫ることができるものであり、また必要によっては倣い加工機、放電加工機等を使用すれば金型へ容易にネーム7を設けるための加工ができ、ホイールに第5図のような鋳出し文字を付することも可能である。」
(3d)2頁左下欄10行~同頁右下欄5行
「実施例4.
第6図は本発明の第4実施例を示す正面図で、実施例2のような方法によシリム部1の近傍に貫通孔(または窓)6を設けた無地のデイスク部5を有する一体形のホイールについて、さらに使用者の希望によりそのデイスク部5に第6図に示すようなネーム9を設けたものである。5は無地のデイスク部であり、その表面に凹みのネーム9を彫つたものである。彫る文字、記号、数字等のネーム9のデザインは、使用者が希望するものを書いてもらい、そのデザインを基に倣い加工機によりまず1個デイスク部5のみのオリジナルを作る。このオリジナルによって削りの深さや字のバランス等を決め、次にホイール素材のデイスク部5に倣い加工機等によりネーム9を削り進めて全体を完成させ、ネーム9部の被覆処理を行う。」
4 甲4について
甲4には、図とともに以下の事項が記載されている。
(4a)
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】・・・近時、従来以上に意匠性に優れ高級感を有するアルミホイールの要求が高くなってきている。そこで本発明は、クリヤー塗装を透明保護膜として形成してある光輝塗装アルミニウムホイールの意匠性を向上することを目的とする。」
(4b)
「【0004】
【課題を解決するための手段】・・・本発明は、ディスク面に透明保護膜が形成されているアルミニウムホイールにおいて、前記デイスク面の一部又は全部に多数の溝又は連続的ピットを形成することを特徴とする。本発明によるとアルミニウムによる反射および光の回折と干渉を利用してスペクトルに分光させることができ、これにより意匠性が向上する。これを図1に示すが、1は入射光、2は干渉光、3はアルミニウムホイール平滑面、4はアルミニウムホイール、5は回折格子たる溝である。また同時に、アルミニウムの表面積が溝又は連続的ピットにより増大する事と、凸凹による投錨効果が増すことにより初期密着、並びに温水浸漬後の2次密着性が向上する。更に、耐候性の向上も確認された・・・本発明における溝又は連続的ピットは1mmあたり600~3000本の範囲で設けることが望ましい。それは、600本未満では虹色を呈するのが困難であり、一方3000本を超えると溝又はピットの形成が困難だからである。溝又は連続的ピットの形成方法は特に限定されないが、例えばダイヤモンドカッターによる切削によって形成することができる。またアルミニウム鏡面にレーザー光を照射することによっても形成することができる。更に、フォトエッチングを利用することによっても形成することができる。溝又はピットの形状(断面)は、溝等が元の散乱を目的として形成されるものであり、その目的が達成されれば十分で、半円、四角、三角等いずれかであっても良い。透明保護膜は10μm~100μmの厚さを有することが望ましい。10μm以下だとディスク面保護の意味をなさず、一方100μmを超えるとディスク面保護の効果が飽和するとともに、回折光の反射に悪影響を与え虹色が十分に呈しないからである。透明保護膜を形成するクリア塗料としては、溶剤型と粉体型の塗料がありいずれを用いても良いが、塗膜面の平滑性の観点から溶剤型の塗料を用いるのが望ましい。すなわち、塗膜面の平滑性が劣ると回折光の反射に悪影響を与えるが、粉体塗料は塗膜面がいわいるユズ肌になる傾向が強いのに比べ溶剤型は前述のように平滑性が優れるからである。
【0005】
【作用】アルミニウムホイールの鏡面に同じ太さの平行な溝を多数刻んだ場合、表面に入射した光線は、溝の部分では光が散乱するが、溝の刻まれていないところは光が回折波として反射し、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の7色に分光し、表面が虹色に光輝いて見える。本発明はこの作用を利用したものである。なお、溝又は連続的ピットは、レコード溝のようにディスク面の円周方向に設けてもよいし、また半径方向に設けてもよい。」
第5 当審の判断
特許異議の申立ての理由について、以下、検討する。
1 申立理由1(特許法第29条第2項)について
(1)本件発明1について
(1-1)本件発明1と甲1発明との対比・判断
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)
甲1発明の「自動車部品である軽合金ホイール」は、本件発明1の「軽合金製の車両用ホイール」に相当する。
(イ)
したがって、甲1発明の「リム及び複数のスポーク部を有するディスクを備える、自動車部品である軽合金ホイール」は、本件発明1の「一体ないし分割構造におけるリム及び複数のスポークを有するディスクを備える軽合金製の車両用ホイール」に相当する。
以上から、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「一体ないし分割構造におけるリム及び複数のスポークを有するディスクを備える軽合金製の車両用ホイール。」
<相違点>
本件発明1は、車両用ホイールが、
「ホイール全体が塗装された後にスポークを含むディスク又はリムの塗装部の一部に機械加工にて塗膜及び母材金属を切削することにより金属面を露出させながら文字、図形又は記号等からなる凹形又は凸形のロゴ部を含む表示部が形成され、
表示部におけるロゴ部又はロゴ部以外の金属露出部には、機械工具の刃物目を残して凹凸筋が連続する表面となった彫刻加工部が形成され、
彫刻加工部には、凹凸筋表面の凹凸を均すように有色又は無色のクリア塗料を塗布して透明層が形成されて母材金属の凹凸筋及び透明層の層厚によって光の屈折及び反射を利用して彫刻加工部が立体感を強調して呈する構成を備える」ものであるのに対して、
甲1発明は、車両用ホイールが、
「軽合金ホイールは、その表面に粉体樹脂によるプライマー層11、カラーベースコート層12、クリアーコート層13、及びクリアートップコート層14からなる塗膜を有する着色部15と、クリアートップコート層14のみからなる光輝面16を持ち、
プライマー層11、カラーベースコート層12及びクリアーコート層13を順に形成した塗膜を有する軽合金ホイールのスポーク部の中央部デザイン面側とデザイン面の周囲を、ほぼ平坦になるように切削加工を施し、軽合金ホイール基体が表層に出した光輝面を作成し、その後、光輝面16と着色部15の両方の上面に、クリアートップコート層14を形成した」ものである点。
イ 判断
以下、相違点について検討する。
(ア)
平成29年12月7日付けの特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)の7頁23行~8頁9行(特許異議申立書には頁番号が付されていないので、表紙を1頁として順に頁番号を付したものとして記載する。以下、同様である。)を参照すると、特許異議申立人は、本件発明1と甲1発明とを対比し、相違点1、2及び3で相違するとしているが、これらの相違点に係る本件発明1の構成は、それらの構成要素が互いに密接に関連しているから、本件発明1と甲1発明との相違点を、上記アで述べたとおり認定し、判断すべきである。
このことを前提として、以下、検討する。
(イ)
甲1には、「デザイン面」等に関して「外観不良を出さないようにする」という課題(摘記(1b))が記載され、甲2には、「簡単な処理を施すことによって見栄えのよいホイールが得られるように」するという課題(摘記(2a))が記載されているところ、「ホイールに一体形成するロゴ部が立体感を強調して呈することを可能とする軽合金製の車両用ホイールを提供する」(本件特許の明細書の段落【0005】)という、本件発明1の課題は、甲1~4のいずれにも、記載も示唆もされていない。
(ウ)
甲1には、課題で示されている「デザイン面」に関する記載はあるが(摘記(1a)、(1b)及び(1d)等)、ロゴ部に関する記載はない。
そして、甲1発明は、「プライマー層11、カラーベースコート層12及びクリアーコート層13を順に形成した塗膜を有する軽合金ホイールのスポーク部の中央部デザイン面側とデザイン面の周囲を、ほぼ平坦になるように切削加工を施し、軽合金ホイール基体が表層に出した光輝面を作成し」ている構成を備えるが、ロゴ部に関する構成は備えておらず、本件発明1の「ホイール全体が塗装された後に」「凹形又は凸形のロゴ部を含む表示部が形成され」るという構成を備えるものではない。
(エ)
ロゴ部に関して、甲3には、「ディスク部5が無地の一体形のホイールについて、・・・ネーム7を設けたものである。ネーム7は凸形の文字、記号等であり、8は凹部である。」(以下、甲3及び甲4において、「デイスク」と表記されている箇所は、「ディスク部5」のように、「ディスク」として表記する。)及び「ホイール素材のディスク部5へ加工機によりネーム7を彫ることができるものであ」ると記載され(摘記(3c))、ネーム9を凹みとしたものについても、同様のことが、摘記(3d)に記載されているが、本件発明1が備える「ホイール全体が塗装された後に」「凹形又は凸形のロゴ部を含む表示部が形成され」るという構成は記載されていない。
(オ)
甲3には、無地のディスク部5に凸又は凹のネーム7を彫る旨の技術事項が記載されているといえるが(上記(エ))、甲1発明も甲3に記載された技術事項も、「ホイール全体が塗装された後に」「凹形又は凸形のロゴ部を含む表示部が形成され」るという構成を備えるものではないから(上記(ウ)及び(エ))、甲1発明の、「塗膜を有」する、すなわち、塗装された後の「スポーク部」というディスク部の特定の部位において、「切削加工」という特定の加工を施すことで形成された、特定の「光輝面」に対して、あるいは、塗膜が存在したままの他の部位に対して、甲3に記載された技術事項を適用しようとする動機付けは無いといえる。
(カ)
そして、上記相違点に係る本願発明1の「ロゴ部を含む表示部」、「凹凸筋が連続する表面となった彫刻加工部」、及び、「クリア塗料を塗布し」た「透明層」の構成は、それらが互いに密接に関連し、「表示部におけるロゴ部又はロゴ部以外の金属露出部には、機械工具の刃物目を残して凹凸筋が連続する表面となった彫刻加工部が形成され、彫刻加工部には、凹凸筋表面の凹凸を均すように有色又は無色のクリア塗料を塗布して透明層が形成されて母材金属の凹凸筋及び透明層の層厚によって光の屈折及び反射を利用して彫刻加工部が立体感を強調して呈する構成」であって、「レンズ効果」(本件特許の明細書の段落【0015】)などが奏される構成であるといえるところ、単なる切削加工や塗装によって得られる構成とは、構造も技術的意味も異なっているといえる。
そうすると、仮に、甲3に記載された技術事項を甲1発明に適用することができたとしても、上記相違点に係る本願発明1の「ロゴ部を含む表示部」の金属露出部に形成される「凹凸筋が連続する表面となった彫刻加工部」の構成、及び、「クリア塗料を塗布し」た「透明層」の構成を想到することはできない。
(キ)
甲4には、「本発明は、クリヤー塗装を透明保護膜として形成してある光輝塗装アルミニウムホイールの意匠性を向上することを目的とする。」(摘記(4a))、並びに、「本発明は、ディスク面に透明保護膜が形成されているアルミニウムホイールにおいて、前記ディスク面の一部又は全部に多数の溝又は連続的ピットを形成することを特徴とする。」、「溝又は連続的ピットは1mmあたり600~3000本の範囲で設けることが望ましい。」、「溝又は連続的ピットの形成方法は特に限定されないが、例えばダイヤモンドカッターによる切削によって形成することができる。」、「透明保護膜は10μm~100μmの厚さを有することが望ましい。」及び「表面に入射した光線は、溝の部分では光が散乱するが、溝の刻まれていないところは光が回折波として反射し、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の7色に分光し、表面が虹色に光輝いて見える。」(摘記(4b))と記載されているが、ロゴ部に関する構成は記載されておらず、本件発明1が有している、「表示部におけるロゴ部又はロゴ部以外の金属露出部には」「凹凸筋が連続する表面となった彫刻加工部が形成され」、「彫刻加工部には、凹凸筋表面の凹凸を均すように有色又は無色のクリア塗料を塗布して透明層が形成されて母材金属の凹凸筋及び透明層の層厚によって光の屈折及び反射を利用して彫刻加工部が立体感を強調して呈する構成を備える」という構成は記載されておらず、本願発明1が奏する「レンズ効果」(上記(カ))などについても、記載されていない。
(ク)
本件発明1のロゴ部に関する課題は、甲1~4のいずれにも、記載も示唆もされていないところ(上記(イ))、甲1発明及び甲4には、ロゴ部に関する構成が無いから(上記(ウ)及び(キ))、ロゴ部に関する課題を解決するために、甲4に記載された技術事項を甲1発明に適用しようとする動機付けは無いといえる。
(ケ)
また、仮に、甲4に記載された技術事項を甲1発明に適用することができたとしても、甲1発明の軽合金ホイールに関しては、「ディスク面に透明保護膜が形成されている」軽合金ホイールおいて、「前記ディスク面の一部又は全部に多数の溝又は連続的ピットを形成」した、「透明保護膜は10μm~100μmの厚さを有する」ものが得られ(上記(キ))、その結果、効果として、「回折波」(上記(キ)及び摘記(4b)の段落【0005】【作用】)に係る効果が奏されるだけであり、本件発明1の「レンズ効果」(上記(カ))が奏される構成とはなり得ないし、ロゴ部自体の構成が無いのであるから、上記相違点に係る本願発明1の「ロゴ部を含む表示部」の構成を想到することはできない。
(コ)
さらに、上記(オ)、(カ)、(ク)及び(ケ)で述べたとおりであるから、甲3に記載された技術事項を甲1発明に適用することで、甲1発明の「光輝面」に、「凹形又は凸形のロゴ部を含む表示部」を設け、さらに、その「ロゴ部を含む表示部」の金属露出部に対して、甲4に記載された別の技術事項を重ねて適用することも、容易想到とはいえない。
(サ)
以上から、甲1発明及び甲3ないし4に記載された技術事項に基づいて、上記相違点に係る本件発明1の構成を想到することは、当業者が容易になし得たとはいえない。
(1-2)本件発明1と甲2発明との対比・判断
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)
甲2発明の「アルミニウム合金からなる車両用ホイール」は、本件発明1の「軽合金製の車両用ホイール」に相当する。
(イ)
したがって、甲2発明の「リム2と、ハブ3と複数のスポーク4とを有するディスクとを備える、アルミニウム合金からなる車両用ホイール」は、本件発明1の「一体ないし分割構造におけるリム及び複数のスポークを有するディスクを備える軽合金製の車両用ホイール」に相当する。
以上から、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「一体ないし分割構造におけるリム及び複数のスポークを有するディスクを備える軽合金製の車両用ホイール。」
<相違点>
本件発明1は、車両用ホイールが、
「ホイール全体が塗装された後にスポークを含むディスク又はリムの塗装部の一部に機械加工にて塗膜及び母材金属を切削することにより金属面を露出させながら文字、図形又は記号等からなる凹形又は凸形のロゴ部を含む表示部が形成され、
表示部におけるロゴ部又はロゴ部以外の金属露出部には、機械工具の刃物目を残して凹凸筋が連続する表面となった彫刻加工部が形成され、
彫刻加工部には、凹凸筋表面の凹凸を均すように有色又は無色のクリア塗料を塗布して透明層が形成されて母材金属の凹凸筋及び透明層の層厚によって光の屈折及び反射を利用して彫刻加工部が立体感を強調して呈する構成を備える」ものであるのに対して、
甲2発明は、車両用ホイールが、
「車両用ホイール全体の全面を所定の色彩による塗料により塗面に形成し、前記スポーク4の側面のほぼ全面に凹設したサイドカッタ部分6の全面を削ってホイールの金属面を露出させた後、このサイドカッタ部分6を含むホイール全面に前記塗面の色彩に対抗する色彩の透明なカラークリヤーを施してなる」ものである点。
イ 判断
以下、相違点について検討する。
(ア)
本件発明1の課題並びに甲3及び甲4については、上記(1-1)イ(イ)~(エ)及び(キ)で述べたとおりである。
(イ)
甲2には、課題で示されている「見栄え」に関する記載はあるが(摘記(2a)等)、ロゴ部に関する記載はない。
そして、甲2発明は、「車両用ホイール全体の全面を所定の色彩による塗料により塗面に形成し、前記スポーク4の側面のほぼ全面に凹設したサイドカッタ部分6の全面を削ってホイールの金属面を露出させた」構成を備えるが、ロゴ部に関する構成を備えるものではなく、本件発明1の「ホイール全体が塗装された後に」「凹形又は凸形のロゴ部を含む表示部が形成され」る構成を備えるものではない。
(ウ)
甲2発明の「塗料により」「形成し」た「塗面」及び「露出させた」「ホイールの金属面」は、それぞれ、実質的に、甲1発明の「塗膜」及び「光輝面」と同様の構成であるといえるから、これらの構成などに関連して、甲3ないし甲4に記載された技術事項を甲2発明に適用することについては、上記(1-1)イ(オ)、(カ)及び(ク)~(コ)で述べたことと同様のことがいえる。
(エ)
以上から、甲2発明及び甲3ないし4に記載された技術事項に基づいて、上記相違点に係る本件発明1の構成を想到することは、当業者が容易になし得たとはいえない。
(2)本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1を減縮した発明であるところ、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、上記(1)で述べたとおり、甲1発明又は甲2発明、及び、甲3ないし4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)小括
したがって、本件発明1~3は、甲1発明又は甲2発明、及び、甲3ないし4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものであるとはいえない。
2 申立理由2(特許法第36条第6項第2号)について
(1)本件発明1について
ア
特許異議申立人は、「本件特許発明1における『凹凸筋表面の凹凸を均す』について、本件特許発明1では、『母材金属の凹凸筋及び透明層の層厚によって光の屈折及び反射を利用して彫刻加工部が立体感を強調して呈する』という作用・効果が奏され得るように、金属露出部に凹凸面が形成され、且つ、その凹凸面がクリア塗料で均されている必要があると解される。しかしながら、本件特許発明1では、『凹凸筋表面の凹凸』の具体的な形状等、及び、『凹凸を均す』程度等について何ら限定されていないので、通常の機械加工による金属露出部に通常のクリア塗料を塗布する態様、即ち、上記作用・効果が奏され得ない態様も含まれていると解される。以上より、本件特許発明1は不明確である。」(特許異議申立書の10頁21~11頁1行)と主張する。
イ
「凹凸筋表面の凹凸」及び「凹凸を均す」ことに関して、請求項1には、「凹凸筋表面の凹凸を均すように有色又は無色のクリア塗料を塗布して透明層が形成されて母材金属の凹凸筋及び透明層の層厚によって光の屈折及び反射を利用して彫刻加工部が立体感を強調して呈する構成を備える」と記載されているから、本件発明1の「凹凸筋表面の凹凸を均す」構成は、「母材金属の凹凸筋及び透明層の層厚によって光の屈折及び反射を利用して彫刻加工部が立体感を強調して呈する」という作用効果が得られる構成として特定されているものであり、したがって、明確であり、そのような作用効果が得られない態様のものは含まれないといえる。
したがって、本件発明1は明確であり、上記アの主張は採用できない。
(2)本件発明3について
ア
特許異議申立人は、「本件特許発明3における『透明樹脂を充填』について、本件特許発明3では、本件特許明細書の段落0018及び本件特許図7(b)を参酌すると、『ロゴ部とロゴ部以外との境界における段差がなくなる程度に透明樹脂を充填』することを意図しているものと解される。しかしながら、本件特許発明3では、『透明樹脂を充填』について、『凹凸筋表面の凹凸を均すように充填』と記載されているだけで、充填の程度について何ら限定されていないので、『ロゴ部とロゴ部以外との境界における段差がなくなる程度に透明樹脂を充填』されない態様も含まれていると解される。以上より、本件特許発明3は不明確である。」(特許異議申立書の11頁2~9行)と主張する。
イ
請求項3には、「凹凸筋表面の凹凸を均すように透明樹脂を充填する」と記載されているところ、充填の程度は、この記載のとおり、「凹凸筋表面の凹凸を均す」構成として特定できる。
そうすると、請求項3において、必ずしも、上記アで主張するような「ロゴ部とロゴ部以外との境界における段差がなくなる程度に透明樹脂を充填」するという態様をとる必要はないといえる。
したがって、本件発明3は明確であり、上記アの主張は採用できない。
(3)小括
したがって、本件発明1及び3は、明確であり、本件特許の請求項1及び3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたとはいえないから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-701164