特許異議申立
2017-701024
ヘルメットカバー
- 審判番号
- 2017-701024
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-501853外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年10月26日
- 審決日
- 2018年03月28日
- 公報発行日
- 2018年05月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】レイザー スポーツ エンフェー
- 【権利者代理人】窪田 英一郎
- 【権利者代理人】乾 裕介
- 【権利者代理人】今井 優仁
- 【権利者代理人】中岡 起代子
- 【権利者代理人】矢野 恵美子
- 【権利者代理人】本阿弥 友子
- 【異議申立人】マロ グループ エスアールエル
- 【異議申立人代理人】特許業務法人北青山インターナショナル
- 分類
- P1651.112-Y (A42B) / P1651.113-Y (A42B) / P1651.121-Y (A42B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第2号、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6121320号発明「ヘルメットカバー」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6121320号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許6121320号の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成23年3月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年4月2日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成29年4月7日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年10月26日にその特許について、特許異議申立人マロ グループ エスアールエル(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。さらに申立人から、平成29年12月25日に上申書が提出された。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~9に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」等という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~9に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
外縁部を有するドームを備えるヘルメットカバーであって、
前記ドームの外縁部に沿って延びる少なくとも2の係合部が設けられており、
前記係合部が、前記ドームに対して内側に延びるフランジによって構成され、ヘルメットのリム部分の周囲にスナップフィットするように構成されており、前記カバーが、単一の材料で製造されていることを特徴とするヘルメットカバー。
【請求項2】
請求項1に記載のヘルメットカバーにおいて、
前記係合部のうちの少なくとも2つが、前記ドームの対向する縁部に沿って延在することを特徴とするヘルメットカバー。
【請求項3】
請求項1または2に記載のヘルメットカバーにおいて、
前記ドームが、フロント部分とリア部分とを含み、このドームの両部分の外縁部の少なくともある領域には、係合部が設けられていないことを特徴とするヘルメットカバー。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のヘルメットカバーにおいて、
前記材料が、摩擦低減層で被覆されていることを特徴とするヘルメットカバー。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のヘルメットカバーにおいて、
前記ドームにグラフィクスが与えられていることを特徴とするヘルメットカバー。
【請求項6】
請求項5に記載のヘルメットカバーにおいて、
前記グラフィクスが、前記ドームの内側を向く面に与えられていることを特徴とするヘルメットカバー。
【請求項7】
広告をするために、請求項1乃至6の何れか一項に記載のヘルメットカバーを使用する方法。
【請求項8】
ヘルメットであって、その上に、請求項1乃至6の何れか一項に記載のヘルメットカバーを有するヘルメット。
【請求項9】
ヘルメットと、これに対応する請求項1乃至6の何れか一項に記載のヘルメットカバーとを有する部品のキット。」
第3 申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書に添付して、以下の甲第1の1~17号証を提出し、平成29年12月25日付け上申書に添付して、以下の甲第18及び19号証を提出し、本件発明1~9は、以下の【理由1】~【理由3】により特許を受けることができないから、特許発明1~9のそれぞれに係る特許は、取り消されるべきであると主張している。
なお、甲第1号証等を、以下、「甲1」等という。
そして、甲1の1及び甲1の2から認定できる発明を、以下、甲1発明という。甲3の1~甲3の3から認定できる発明を、以下、甲2発明という。甲4の1から認定できる発明を、以下、甲3発明という。そして、甲6及び甲7から、それぞれ認定できる発明を、以下、甲4発明及び甲5発明という。
【理由1】(新規性) この出願の下記の請求項に係る発明は、下記の点でその優先日前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができない。
【理由2】(新規性) この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
【理由3】(進歩性) この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、公然知られた発明、公然実施された発明、若しくは、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
<刊 行 物 等 一 覧>
甲1の1:Jared Roy、CYCLOCROSS MAGAZINE、[online]、平成22年2月20日、[平成29年10月18日検索]、インターネット
<http://cowbell.cxmagazine.com/video/lazer-helium-weather-cover-at?xg_source=activity>
甲1の2:甲1の1のインターネットページ上の動画のキャプチャ画面[平成22年2月20日作成]
甲1の3:Jared Roy、 CYCLOCROSS MAGAZINE、 [online]、平成22年2月28日、[平成29年10月18日検索]、インターネット
<https://www.cxmagazine.com/cyclocross-highlights-from-frostbike-2010>
甲1の4:Jo Wright、 QBP、 [online]、平成22年3月2日[平成29年10月24日検索]インターネット
<http://www.bicycleretailer.com/calendar/frostbike-gbp-1>
甲1の5:Quality Bicycle Products QBP、 YouTube、 平成22年3月9日[平成29年10月23日検索]、インターネット
<https://www.youtube.com/watch?v=3Cn4jp71SOk>
甲1の6:Lazer Helmets、 Facebook、 平成22年2月24日[平成29年10月23日検索]、インターネット
< https://www.facebook.com/lazerHelmets/posts/336930403888>
甲1の7: Lazer Helmets、 twitter、 平成22年2月23日[平成29年10月23日検索]、インターネット
< https://twitter.com/lazerhelmets/status/9563390644>
甲1の8: CYCLOCROSS MAGAZINE、 [online]、[平成29年10月26日検索]、インターネット
< https://www.cxmagazine.com/cyclocross-magazine-contact-info>
甲2:Lazer Sport、 平成22年2月2日[平成29年10月23日検索]、インターネット
< http://www.belgianheadcase.com/?p=168 >
甲3の1: Luke Webber、 Cyclingnews.com、 平成20年5月8日[平成29年10月23日検索]、インターネット
< http://www.cyclingnews.com/features/epic-tech-from-houffalinze/ >
甲3の2: James Huang、 Cyclingnews.com、 平成21年2月17日[平成29年10月23日検索]、インターネット
< http://www.bikeradar.com/news/article/california-tech-aero-bits-disqualified-by-new-uci-rule-20431/ >
甲3の3: Mike Norris、 Flickr、 平成21年2月16日[平成29年10月23日検索]、インターネット
< https://www.flickr.com/photos/mnorri/3286835118/in/album-72157613753918174/ >
甲3の4: Immediate Media、 [平成29年10月26日検索]、インターネット
< http://www.immediate.co.uk/contact-us>
甲4の1:CASCO社が製造している製品名 ViperRoadのモデルViper Road/203のL/XLサイズの写真
甲4の2:Bio-Racer nv宛、納品書、伝票番号204136[2002年7月12日付け]、伝票番号204144[2002年7月15日付け]、伝票番号204160[2002年7月16日付け]
甲5: CASCO社カタログ「BIKEHELME 2002/2003」
甲6:米国特許第3445860号明細書
甲7:米国特許出願公開第2008/0222782号明細書
甲8:米国特許第4599752号明細書
甲9:国際公開第2009/103690号
甲10:国際公開第97/48298号
甲11:特開2006-28662号公報
甲12:仏国特許出願公開第2680305号明細書
甲13:米国特許第4993082号明細書
甲14:国際公開第02/32245号
甲15:特開2002-339138号公報
甲16:実願平2-53588号(実開平4-13624号)のマイクロフィルム
甲17:特表2005-537034号公報
甲18:甲1の1及び甲1の5を保存したDVD
甲19:「・甲1号証の1の動画が、2010年2月20日公衆に閲覧可能となったことの証明」を表題とする書面
1.【理由1】について
(1)本件発明1~3、8、9は、本件特許に係る出願の優先日前に公然実施された甲1発明あるいは甲2発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができない(以下、「理由1-1」という)。
(2)本件発明1~3、5、7~9は、本件特許に係る出願の優先日前に公然実施された甲3発明であるから特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができない(以下、「理由1-2」という。)。
2.【理由2】について
本件発明1~3、8、9は、本件特許の優先日前に、日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1~甲5発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
3.【理由3】について
本件発明1~9は、甲1~5発明のいずれかの発明と、甲8~18事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第4 当審の判断
1.甲1発明~甲5発明
(1) 甲1発明
甲1の1の動画及び甲1の2の画像には、「QBP Frostbike 2010」において、Lazer Sport NVが出店した商品である「Lazer Helium」のウェザーカバーが写っていて、甲1の1の動画には、ウェザーカバーについて説明する音声が含まれている。そうすると、甲1の1の動画及び甲1の2の画像から、以下の甲1発明を認定できる。
「外縁部を有し、フロント部分とリア部分とを含むドーム形状を備えており、透明で薄肉の材料で形成されている、ヘルメットカバー。」
なお、申立人は、申立書6ページ最下行~9ページ下から4行において、甲1の1及び甲1の2のウェザーカバーから、甲1発明として、「係合部」を有し、当該「係合部」が、「ドームの外縁部に沿って延びる少なくとも2の係合部が設けられており、」「ドームに対して内側に伸びるフランジによって構成され、ヘルメットのリム部分の周囲にスナップフィットするように構成されて」いるものが認定し得る旨、主張している。しかし、上記動画や画像には、特にヘルメットカバーがヘルメットに対してどのように取り付けられているかの詳細な言及や描写はなく、甲1発明として、申立人が主張するような構成までも備えたものを認定することはできない。
(2) 甲2発明
甲3の1~3の3には、スペシャライズド社のリアム・キレーンが使用したヘルメットカバーの写真と記事が記載されており、当該写真と記事からは、以下の甲2発明を認定できる。
「外縁部を有し、フロント部分とリア部分とを含むドーム形状を備えており、
透明なポリカーボネートで形成されているスナップ装着式ヘルメットカバー。」
なお、申立人は、申立書10ページ6行~11ページ下から7行において、甲3の1~3の3からは、甲2発明として、「係合部」を有し、当該「係合部」が、「ドームの外縁部に沿って延びる少なくとも2の係合部が設けられており、」「ドームに対して内側に伸びるフランジによって構成され、ヘルメットのリム部分の周囲にスナップフィットするように構成されて」いるものが認定し得る旨、主張している。しかし、甲3の1~3の3には、特にヘルメットカバーがヘルメットに対してどのように取り付けられているかの詳細な描写はなく、甲2発明として、申立人が主張するような構成までも備えたものを認定することはできない。(甲3の1の1ページ目や甲3の2の1ページ目の写真には、ヘルメットに対して透明なカバーが装着されていることの図示はあるが、当該透明なカバーは、ヘルメットに形成された凹部の形状に沿って凹部が形成されており、甲2発明のカバーは、ヘルメット表面に形成された凹部に係合するものであるようにも解される。)
(3) 甲3発明
甲4の1には、CASCO社の自転車用ヘルメットの写真が記載されていて、以下の甲3発明を認定することができる。
「外縁部を有し、フロント部分とリア部分とを含むドーム形状を備え、頂部には複数の開口部を有するヘルメット本体と、当該ヘルメット本体のドーム形状側縁を全周に亘って覆う帯状リング部材と、からなる自転車用ヘルメット。」
なお、申立人は、申立書11ページ下から6行~12ページ下から2行において、甲4の1にはヘルメットカバーが記載されており、甲3発明として、当該ヘルメットカバーが「係合部」を有し、当該「係合部」が、「ドームの外縁部に沿って延びる少なくとも2の係合部が設けられており、」「ドームに対して内側に伸びるフランジによって構成され、ヘルメットのリム部分の周囲にスナップフィットするように構成されて」いるものが認定し得る旨の主張をしている。しかし、甲4の1に関連するものとして提出された甲4の2には、「カバー」との語句があるものの、甲4の1には、写真のどの部分がカバーであるかの説明はなく、上記甲3発明として認定した「ヘルメット本体のドーム形状の側縁を全周に亘って覆う帯状リング部材」のことを指すとしても、当該「帯状リング部材」が「カバー」であるとまでは、その機能、構造が明らかでない以上、直ちに認定することはできない。
(4) 甲4発明
甲6には、Fig-1~Fig-4とともに、3欄40行~4欄16行の記載があり、以下の甲4発明が認定できる。
「ヘルメットの外面にフィットするように成形された可撓性材料のキャップと、当該キャップをヘルメットに取り外し可能に固定するための手段とを備える着脱可能なヘルメットカバーにおいて、
複数の細長い個別の取付ストリップであって、各ストリップの一端に沿って、カバーが配置されるヘルメットの縁部に近い湾曲した内側面に隣接配置するためのキャップ縁部に取り付けられる取付ストリップを備え、
前記取付ストリップは、キャップがヘルメット上に配置されたときに湾曲した内側面の実質的な部分に係合すべく横方向に曲げやすくあり、その縁がヘルメットの縁部の下を巻き込み、前記ストリップはエッジ方向に比較的硬く曲がりにくく、したがってキャップの引っ張り方向に曲がりにくく、前記ストリップはヘルメットの内部曲面に適合し、前記ストリップは、ストリップの下の巻き込みに対するキャップの引っ張りによる撓み応力を受け、これにより前記ストリップが前記ヘルメットの内面から離れる動きに抵抗する、ヘルメットカバー。」
なお、申立人は、申立書12ページ最下行~14ページ2行において、甲6からは、甲4発明として、「前記ドームの外縁部に沿って延びる少なくとも2の係合部」を有し、当該「係合部」が、「ドームに対して内側に伸びるフランジによって構成され、ヘルメットのリム部分の周囲にスナップフィットするように構成され」、「単一の材料で製造されている」ヘルメットカバーが認定し得る旨、主張している。しかし、甲6には、「ドームに対して内側に伸びるフランジ」と同様な構成及び形状を有する部材は記載されていないし、ヘルメットカバーを構成するキャップは「可撓性材料」で成型されるのに対し、取付ストリップは、「横方向に曲げやすくあり、」「エッジ方向に比較的硬く曲がりにく」い材料であるから、ただちに両者が「単一の材料で製造され」たものであるとまではいえない。よって、甲4発明として、申立人が主張するような構成までも備えたものを、認定することはできない。
(5) 甲5発明
甲7には、Fig.1~5とともに、請求項1、2、5、12、17、18の記載があり、以下の甲5発明が認定できる。なお、カバーを作成する材料を列挙している中の「▼○R▲」は、甲7において記載されていた、登録商標を示す「R」を○囲みした記号を、当審が代用表記したものである。
「着脱式装飾ヘルメットカバーであって、ヘルメットをぴったりカバーする材料を備え、前記材料は前端部と後端部とを備え、
前記材料は当該材料を前記ヘルメットの下側部分にぴったり取り付けるのに用いるリム部分を備え、
前記カバーは、スエード、皮革、ポリエステル、ナイロン、わら、メッシュ、ビニル、プラスチック、夜光性材料、反射材、発光材料、エレクトロルミネセンス蛍光体含有材料、T400TM、ANTRON▼○R▲、AVANTIGE▼○R▲+LYCRA▼○R▲、CORDURA▼○R▲、DACRON▼○R▲、LYCRA▼○R▲、SOLARMAX▼○R▲、SUPPLEX▼○R▲、TACTEL▼○R▲、及び、THERMOLITE▼○R▲とからなる群から選択される材料で作成され、
前記リム部分が、弾性材でなるか、弾性材を含み、
前記材料は1つの連続ピースでなり、
前記材料を前記ヘルメットの下側部分にぴったり取り付けるよう構成された1以上の固定部を備え、
前記固定部は、引きひも、1以上のジッパー、スナップ、ボタン、フックアンドループ材料、フープ、バンド、クリップ、フック、可撓性のタブ、ハンガー、ばねからなる群から選択されるものである、
ヘルメットカバー。」
なお、申立人は、申立書14ページ3行~15ページ2行において、甲7からは、甲5発明として、「前記ドームの外縁部に沿って延びる少なくとも2の係合部が設けられており、」「前記係合部が、前記ドームに対して内側に延びるフランジによって構成され、ヘルメットのリム部分の周囲にスナップフィットするように構成され」たものが認定し得る旨、主張している。しかし、甲7には、ドームに対して内側に延びるフランジが、少なくとも2つ設けられた構成を有するものが記載されていない。また、甲7の段落[0043]に列挙されたファスナーの例示の一つである「可撓性のタブ」は、ヘルメットにヘルメットカバーと取り付けるためのものではあるものの、「可撓性タブ」の具体的な形状やヘルメットカバーやヘルメットとの相互の関係については、甲7に記載がない。よって、甲5発明として、申立人が主張するような構成までも備えたものを、認定することはできない。
2.理由1-1について
(1)本件発明1について
ア.甲1発明を主引用発明とする特許法第29条第1項第2号
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1のヘルメットカバーは、ドームの外縁部に沿って延びる係合部を少なくとも2設けられたものであり、当該係合部は、ドームに対して内側に延びるフランジによって構成され、ヘルメットのリム部分の周囲にスナップフィットするように構成されたものであるのに対し、甲1発明のヘルメットカバーがそのような係合部が設けられたものであるか、明らかではない点。
(イ)相違点1についての判断
相違点1は、ヘルメットカバーに設けられた係合部の個数、形状及び機能についての実質的な相違点である。したがって、本件発明1は、甲1発明ではない。
イ.甲2発明を主引用発明とする特許法第29条第1項第2号
(ア)対比・判断
本件発明1と甲2発明とを対比すると、上記ア.(ア)に示した相違点1において、少なくと両者は相違する。そして、上記ア.(イ)に示したように、相違点1は、実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲2発明でもない。
(2)本件発明2、3、8、9について
本件発明2、3、8、9は、いずれも本件発明1を直接あるいは間接に引用するものである。そうすると、上記(1)ア.及びイ.に示したように、本件発明1は、甲1発明あるいは甲2発明ではないから、本件発明2、3、8、9も、甲1発明あるいは甲2発明ではない。
(3)小括
上記(1)及び(2)に示したように、本件発明1~3、8、9は、甲1発明あるいは甲2発明ではないから、特許法第29条第1項第2号に該当せず、本件発明1~3、8、9に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消すことはできない。
3.理由1-2について
(1)本件発明1について
ア.対比
本件発明1と甲3発明とを対比すると、以下の相違点2において相違する。
<相違点2>
本件発明1のヘルメットカバーは、ドームの外縁部に沿って延びる係合部を少なくとも2設けられたものであり、当該係合部は、ドームに対して内側に延びるフランジによって構成され、ヘルメットのリム部分の周囲にスナップフィットするように構成されたものであるのに対し、甲3発明のヘルメットがヘルメットカバーを有するか否か、明らかではない点。
イ.判断
相違点2は、ヘルメットカバー自体の有無についての実質的な相違点である。したがって、本件発明1は、甲3発明ではない。
(2)本件発明2、3、5、7~9について
本件発明2、3、5、7~9は、いずれも本件発明1を直接あるいは間接に引用するものである。そうすると、上記(1)イ.に示したように、本件発明1は、甲3発明ではないから、本件発明2、3、5、7~9も、甲3発明ではない。
(3)小括
上記(1)及び(2)に示したように、本件発明1~3、5、7~9は、甲3発明ではないから、特許法第29条第1項第2号に該当せず、本件発明1~3、5、7~9に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消すことはできない。
4.理由2について
(1)本件発明1について
ア.甲1発明を主引用発明とする特許法第29条第1項第3号
本件発明1と甲1発明とを対比すると、上記2.(1)ア.(ア)に示した相違点1において相違する。そして、上記2.(1)ア.(イ)に示したように、相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1発明ではない。
イ.甲2発明を主引用発明とする特許法第29条第1項第3号
本件発明1と甲2発明とを対比すると、上記2.(1)イ.(ア)に示した相違点1において相違する。そして、上記2.(1)ア.(イ)に示したように、相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲2発明ではない。
ウ.甲3発明を主引用発明とする特許法第29条第1項第3号
本件発明1と甲3発明とを対比すると、上記3.(1)ア.に示した相違点2において相違する。そして、上記3.(1)イ.に示したように、相違点2は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲3発明ではない。
エ.甲4発明を主引用発明とする特許法第29条第1項第3号
(ア)対比
本件発明1と甲4発明とを対比すると、以下の<相違点3>において相違する。
<相違点3>
本件発明1のヘルメットカバーは、単一の材料で製造されていて、係合部が設けられたものであり、前記係合部は、ドームに対して内側に延びるフランジによって構成され、ヘルメットのリム部分の周囲にスナップフィットするように構成されたものであるのに対し、甲4発明のヘルメットカバーは、単一の材料で製造されているか明らかではなく、取付ストリップが、ドームに対して内側に延びるフランジではない点。
(イ)相違点3についての判断
上記相違点3は、係合部の形状や材質についての実質的な相違点である。したがって、本件発明1は、甲4発明ではない。
オ.甲5発明を主引用発明とする特許法第29条第1項第3号
(ア)対比
本件発明1と甲5発明とを対比すると、以下の<相違点4>において相違する。
<相違点4>
本件発明1のヘルメットカバーは、ドームの外縁部に沿って延びる係合部を少なくとも2設けられたものであり、前記係合部は、ドームに対して内側に延びるフランジによって構成され、ヘルメットのリム部分の周囲にスナップフィットするように構成されたものであり、前記ヘルメットカバーがいるのに対し、甲4発明のヘルメットカバーに設けられた固定部が、いくつ設けられたものであるかや、ドームの外縁部に沿って延びて、ドームに対して内側に延びるフランジによって構成されたものであるか、明らかではない点。」
(イ)相違点4についての判断
上記相違点4は、係合部の形状や、係合部のドームに対する配置及び個数に関する実質的な相違点である。したがって、本件発明1は、甲5発明ではない。
(2)本件発明2、3、8、9について
本件発明2、3、8、9は、いずれも本件発明1を直接あるいは間接に引用するものである。そうすると、上記(1)ア.~オ.に示したように、本件発明1は、甲1発明~甲5発明のいずれの発明でもないから、本件発明2、3、8、9も、甲1発明~甲5発明のいずれの発明でもない。
(3)小括
上記(1)及び(2)に示したように、本件発明1~3、8、9は、甲1発明~甲5発明のいずれの発明でもないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、本件発明1~3、8、9に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消すことはできない。
5.理由3について
(1)本件発明1について
ア.甲1発明を主引用発明とする特許法第29条第2項
(ア)対比
本件発明1と、甲1発明とを対比すると、少なくとも、上記2.(1)ア.(ア)で示した相違点1において相違する。
(イ)相違点1についての判断
甲1には、ヘルメットカバーにおいて、上記相違点1に係る本件発明1の構成を備えたものとすることの記載はないし、示唆する記載もない。また、甲2~18にもそのような記載はないし、示唆する記載もない。
そして、本件発明1は、上記相違点1に係る構成を備えたことで、本件発明1は、以下に摘記した本件特許明細書に記載の作用効果を奏するものである。
「好ましくは、ドームのフロント部分に沿う外縁部のある領域と、ドームのリア部分に沿う外縁部のある領域には、少なくとも係合部が設けられていない。それらの領域は、ユーザがヘルメットからカバーを取り外すための理想的な把持領域である。ドームのフロント部分とドームのリア部分の両方にそのような把持領域を与えることによって、人は、状況に応じて、前から後の方向に、または後から前の方向に、ヘルメットカバーを取り外すことができる。このため、高速で、または風の強い状態で走行しているときに、人は、風向と反対の方向にカバーを取り外すことができ、それにより、カバーの下に風が流れてカバーが外れる方向に大きな力が働くのを避けることができる。
一つの係合部をヘルメットの対応するリムに係合接触させるとともに、その後にカバーをヘルメットに押し付けて、反対側の係合部をヘルメットの対応するリムの裏側でスナップフィットさせることにより、カバーをヘルメットに簡単に取り付けることができる。スナップフィット動作は、ヘルメットカバーの材料とその弾力性を入念に選択することによって、可聴音を伴うことができる。」(本件特許明細書、段落【0028】及び【0029】)
よって、甲1発明について、相違点1における本件発明1に係る構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
イ.甲2発明を主引用発明とする特許法第29条第2項
(ア)対比・判断
本件発明1と、甲2発明とを対比すると、少なくとも、上記2.(1)イ.(ア)で示したとおり、上記相違点1において相違する。そして、甲2には、甲2発明を相違点1に係る本件発明1の構成を備えたものとすることの記載はないし、示唆する記載もない。また、甲1、3~18にもそのような記載はないし、示唆する記載もない。
そして、本件発明1は、上記相違点1に係る構成を備えることで、上記ア.(イ)に示したとおりの格別な作用効果を奏する。
よって、甲2発明について、相違点1における本件発明1に係る構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
ウ.甲3発明を主引用発明とする特許法第29条第2項
(ア)対比
本件発明1と甲3発明とを対比すると、少なくとも上記3.(1)アに示したおり、上記相違点2において相違する。そして、甲3には、甲3発明を相違点2に係る本件発明1の構成を備えたものとすることの記載はないし、示唆する記載もない。また、甲1、2、4~18にもそのような記載はないし、示唆する記載もない。
そして、本件発明1は、上記相違点2に係る構成を備えることで、上記ア.(イ)に示したとおりの格別な作用効果を奏する。
よって、甲3発明について、相違点2における本件発明1に係る構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たものとであるとはいえない。
エ.甲4発明を主引用発明とする特許法第29条第2項
(ア)対比
本件発明1と甲4発明とを対比すると、少なくとも上記4.(1)エ.に示した相違点3において相違する。
(イ)相違点3についての判断
甲6には、ヘルメットカバーにおいて、上記相違点3に係る本件発明1の構成を備えたものとすることの記載はないし、示唆する記載もない。また、甲1~5、7~18にも記載はないし、示唆する記載もない。
本件発明1は、上記相違点3に係る構成を備えることで、上記ア.(イ)に示したとおりの格別な作用効果を奏する。
よって、甲4発明について、相違点3における本件発明1に係る構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得た得たものとはいえない。
オ.甲5発明を主引用発明とする特許法第29条第2項
(ア)対比
本件発明1と甲5発明とを対比すると、少なくとも上記4.(1)オ.に示した相違点4において相違する。
(イ)相違点4についての判断
甲7には、ヘルメットカバーにおいて、上記相違点4に係る本件発明1の構成を備えたものとすることの記載はないし、示唆する記載もない。また、甲1~6、8~18にも記載はないし、示唆する記載もない。
本件発明1は、上記相違点4に係る構成を備えることで、上記ア.(イ)に示したとおりの格別な作用効果を奏する。
よって、甲5発明について、相違点4における本件発明1に係る構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(2)本件発明2~9について
本件発明2~9は、いずれも本件発明1を直接あるいは間接に引用するものである。そうすると、上記(1)のア.~オ.に示したように、本件発明1は、甲1発明~甲5発明のいずれかの発明と、甲8~18事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明2~9についても、甲1発明~甲5発明のいずれかの発明と、甲8~18事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)小括
上記(1)及び(2)に示したように、本件発明1~9は、甲1発明~甲5発明のいずれかの発明と、甲8事項~甲18事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではなく、本件発明1~9に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、上記申立理由によっては、本件発明1~9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-701024