特許拒絶査定不服審判
2017-019492
ラック製造装置及びラック製造方法
- 審判番号
- 2017-019492
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-286148外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年12月28日
- 審決日
- 2019年04月08日
- 公報発行日
- 2019年05月31日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (B23F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-286148「ラック製造装置及びラック製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年7月7日出願公開、特開2014-124767、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成24年12月27日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成28年12月 2日付け:拒絶理由通知
平成29年 2月13日 :意見書及び手続補正書の提出
平成29年 5月 1日付け:拒絶理由通知
平成29年 6月20日 :意見書及び手続補正書の提出
平成29年 9月28日付け:拒絶査定(原査定)
平成29年12月28日 :審判請求と同時に手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定(平成29年9月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1~6に係る発明は、本願の出願前に頒布された引用文献1に記載された発明及び引用文献2~5に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.国際公開第2009/052552号
2.特開2000-84680号公報
3.特開2000-247244号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2012-136070号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2010-149573号公報(周知技術を示す文献)
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正(以下、「本件補正」という。)は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
本件補正によって、補正前の請求項1~3は削除されるとともに、補正前の、平成29年6月20日にされた手続補正により補正された請求項4~6は請求項1~3に繰り上がるとともに、当該繰り上がった請求項1~3に「前記第2歯部を所定の位相差となる角度位置で停止させる」という事項を追加する補正がなされた(下線は請求人が付与)
当該補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるか、また、当該補正事項は当該補正は新規事項を追加するものではないかについて検討する。
本件補正は、本件補正前の請求項4~6に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記第1歯部の前記軸部の軸心線廻りの角度位置に対し、前記第2歯部を異なる角度位置で停止させる」構成について、当該「異なる角度位置」を「所定の位相差となる角度位置」と限定を付加するものであって、補正前の請求項4~6に記載された発明と補正後の請求項1~3に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、当該補正事項は、当初明細書の段落【0030】に記載されているから、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-3に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願請求項1~3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明3」という。)は、平成29年12月28日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1~3は以下のとおりの発明である(下線は請求人が付与)。
「【請求項1】
中空の軸部に第1歯部が形成された第1のラックバーを支持する第1支持部と、
中実の軸部に第2歯部が形成された第2のラックバーをその軸心線を前記第1のラックバーの軸心線と一致させて支持する第2支持部と、
前記第1支持部に対し、前記第2支持部を近接させるテーブル機構と、
前記第1支持部に対し、前記第2支持部を前記軸心線廻りに相対的に回動させる回転駆動部とを備え、
前記回転駆動部は、前記第1歯部の前記軸部の軸心線廻りの角度位置に対し、前記第2歯部を所定の位相差となる角度位置で停止させることを特徴とするラック製造装置。
【請求項2】
中空の軸部に第1歯部が形成された第1のラックバーを支持し、
中実の軸部に第2歯部が形成された第2のラックバーをその軸心線を前記第1のラックバーの軸心線と一致させて支持し、
前記第1のラックバーの端部と前記第2のラックバーの端部とを圧接させ、
前記第1のラックバーに対し、前記第2のラックバーを前記軸心線廻りに相対的に回動させ、前記第1歯部の前記軸部の軸心線廻りの角度位置に対し、前記第2歯部を所定の位相差となる角度位置で停止させることを特徴とするラック製造方法。
【請求項3】
中空の軸部に第1歯部が形成された第1のラックバーを支持し、
中実の軸部に第2歯部が形成された第2のラックバーをその軸心線を前記第1のラックバーの軸心線と一致させて支持し、
前記第1のラックバーに対し、前記第2のラックバーを前記軸心線廻りに相対的に回動させ、
前記第1のラックバーの端部と前記第2のラックバーの端部とを圧接させ、
前記第2のラックバーの回転を前記第1歯部の前記軸部の軸心線廻りの角度位置に対し、前記第2歯部を所定の位相差となる角度位置で停止し、
前記第2のラックバーの支持を解除することを特徴とするラック製造方法。」
第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は理解の便のため当審にて付与)。なお、括弧内に当審での翻訳文を併記する。
ア.第1頁第4~8行
「TECHNICAL FIELD
The present invention relates to steering racks for vehicle rack and pinion steering gears, and more particularly to such racks manufactured by welding a tubular member to a toothed member.」(技術分野 本発明は、車両のラック及びピニオンステアリングギア用のステアリングラックに関するものであり、より詳細には、管状部材を歯付き部材に溶接することによって製造されたそのようなラックに関するものである。)
イ.第6頁第31行~第7頁第4行
「Figs. 1 , 2 and 3 show a finished steering rack 1 manufactured in accordance with the present invention. Steering rack 1 is D-rack comprising a toothed member 2 and a tubular member 3. A welded joint 8 rigidly joins an end of the toothed member 2 to an end of the tubular member 3, such that the tubular member 3 forms the shank 18 of the finished rack 1. The end of the toothed member 2 that is welded to the tubular member 3 has a short tubular portion 17 that has the same inside and outside diameters as the tubular member 3.」(図1、図2及び図3は、本発明に従って製造された最終的なステアリングラック1を示す。ステアリングラック1は、歯付き部材2と管状部材3とを有するDラックである。溶接された接合部8が歯付き部材2の端部を接合して管状部材3の端部と堅固に、管状部材3は、完成ラック1のシャンク部18を形成する。管状部材3に溶接された歯付き部材2の端部は、管状部材3と同じ内径及び外径を有する短筒状部17を有する。)
ウ.第7頁第10行
「The toothed member 2 has a toothed region 6 comprising a plurality of gear teeth 7.」
(歯付き部材2には、複数の歯7を有する歯付き領域6を有する。)
エ.第8頁第30~31行
「The welding operation is performed by a friction welding machine 20, as shown in Fig. 8.」(溶接作業は、図8に示されるような、摩擦溶接機20によって実行される。)
オ.第9頁第8~10行
「Referring to Fig. 9, the tubular member 3 is loaded into and held by the rotating chuck 21 such that the axis 5 of the tubular member 3 and the chuck axis 23 are co-linear. The toothed member 2 is loaded into and held by the clamping device 25.」(図9に示されるように、管状部材3は、管状部材3の軸5とチャックの軸線23が同一直線上にあるように、回転チャック21によって装填され保持されている。歯付き部材2は、クランプ装置25によって装填され保持されている。)
カ.第10頁第6~8行
「Referring to Fig. 10, the friction welding operation is performed by rotating the tubular member 3 in the chuck 21 whilst the toothed member 2 is pushed towards the tubular member 3 by moving the table 22.」(図10に示されるように、テーブル22を移動させることによって歯付き部材2が管状部材3に近接される間に、チャック21内の管状部材3を回転させることにより、摩擦圧接動作が実施される。)
キ 図1
ク 図2
ケ 図9
コ 図10
(2)上記(1)での記載から,引用文献1には,次の技術的事項が記載されている。
ア.上記(1)ク(図2)から、管状部材3が中空の軸部を有すること、歯付き部材2が中実の軸部を有することが見て取れる。
イ.上記(1)コ(図10)から、歯付き部材2の軸心線が管状部材3の軸心線と一致されること、管状部材3はその軸心線廻りに回動されること、管状部材3の端部と歯付き部材2の端部とを圧接させることが見て取れる。
ウ.上記(1)オ、カ及びクから、中空の軸部を有する管状部材3を支持するチャック21が記載されている。
エ.上記(1)オ、カ、ク及びコから、中実の軸部に歯付き領域6が形成された歯付き部材2をその軸心線を前記管状部材3の軸心線と一致させて支持するクランプ装置25が記載されている。
オ.上記(1)カから、管状部材3に対し、歯付き部材2を近接させるテーブル22が記載されている。
カ.上記(1)カ及びコから、歯付き部材2に対し、管状部材3はその軸心線廻りに回動されると認められる。
キ.上記(1)イ、エ、カ及びコから、管状部材3の端部と歯付き部材2の端部とを圧接させる摩擦溶接機20が記載されている。
(3)上記(2)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「中空の軸部を有する管状部材3を支持するチャック21と、
中実の軸部に歯付き領域6が形成された歯付き部材2をその軸心線を前記管状部材3の軸心線と一致させて支持するクランプ装置25と、
管状部材3に対し、歯付き部材2を近接させるテーブル22を有する摩擦溶接機20において、
歯付き部材2に対し、管状部材3はその軸心線廻りに回動されること。」
2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の段落【0031】-段落【0032】、段落【0037】及び第2図等の記載からみて、当該引用文献2には、2つのワークを相対的に回転近接させて摩擦推力を付与することにより、2つのワークを圧接させる摩擦圧接機において、2つのワークの位相が目標位相となるように正確な位相決めを行うことが記載されていると認められる。
3.その他の文献について
原査定の拒絶の理由において周知技術を示す文献として引用された引用文献3の段落【0005】、引用文献4の段落【0018】及び引用文献5の段落【0019】には、ステアリングラック軸の両端にラック歯を有し、一端のラック歯の軸部の軸心線廻りの角度位置に対し、異なる角度位置に他端のラック歯を形成したものが記載されている。
第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明における「管状部材3」、「チャック21」、「歯付き領域6」、「歯付き部材2」、「クランプ装置25」、「管状部材3に対し、歯付き部材2を近接させるテーブル22」、「摩擦溶接機20」は、それぞれ、本願発明1における「第1のラックバー」、「第1支持部」、「第2歯部」、「第2のラックバー」、「第2支持部」、「前記第1支持部に対し、前記第2支持部を近接させるテーブル機構」、「ラック製造装置」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「中空の軸部を有する第1のラックバーを支持する第1支持部と、
中実の軸部に第2歯部が形成された第2のラックバーをその軸心線を前記第1のラックバーの軸心線と一致させて支持する第2支持部と、
前記第1支持部に対し、前記第2支持部を近接させるテーブル機構とを有するラック製造装置」
(相違点)
本願発明1の第1のラックバーには第1歯部が形成されており、第1支持部に対し第2支持部を前記軸心線廻りに相対的に回動させる回転駆動部は、第1歯部の軸部の軸心線廻りの角度位置に対し、第2歯部を所定の位相差となる角度位置で停止させるのに対して、引用発明では、歯付き部材2(「第2のラックバー」に相当)には歯付き領域6(「第2歯部」に相当)が形成されているものの、管状部材3(「第1のラックバー」に相当)には歯部が形成されておらず、歯付き部材2(「第2のラックバー」に相当)に対し、管状部材3(「第1のラックバー」に相当)はその軸心線廻りに回動されるものの、歯付き部材2と管状部材3とが所定の位相差となる角度位置で停止されるものでない点。
(2)相違点についての判断
上記相違点について検討すると、ステアリングラック軸の両端にラック歯を有し、一端のラック歯の軸部の軸心線廻りの角度位置に対し、異なる角度位置に他端のラック歯を形成したものは、上記「第5」3.の引用文献3~5に記載されているとおり、本願出願日前において周知技術であったといえる。
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、2つのワークを相対的に回転近接させて摩擦推力を付与することにより、2つのワークを圧接させる摩擦圧接機において、2つのワークの位相が目標位相となるように正確な位相決めを行うことが記載されている。
しかしながら、引用文献1及び引用文献2のいずれにおいても、軸心線廻りの角度位置が所定の位相差となる2つの歯を有するものを加工対象とする記載は無く、また、引用文献1の管状部材3を所定の角度位置に停止させる旨やそのような機構を有する旨の記載も無いこと、さらに、引用文献3~5のラックバーは、元々別部材であった2つのバーを接合したものとは認められないことに鑑みれば、引用文献1に接した当業者が、軸心線廻りの角度位置が所定の位相差となる2つの歯を有するラックを製造対象として、第1歯部の軸部の軸心線廻りの角度位置に対し、第2歯部を所定の位相差となる角度位置で停止させるように構成することの動機付けを認めることはできない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2~3について
本願発明2~3も、本願発明1の「前記第1歯部の前記軸部の軸心線廻りの角度位置に対し、前記第2歯部を所定の位相差となる角度位置で停止させる」構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2~5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定についての判断
審判請求時の補正により、補正後の請求項1は、「前記第1歯部の前記軸部の軸心線廻りの角度位置に対し、前記第2歯部を所定の位相差となる角度位置で停止させる」という事項を有するものとなり、また、請求項2~3も同じ事項を有するものとなった。そして、当該「前記第1歯部の前記軸部の軸心線廻りの角度位置に対し、前記第2歯部を所定の位相差となる角度位置で停止させる」事項は、原査定の拒絶の理由における引用文献1~5には記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1~3は、当業者であっても、原査定における引用文献1~5に基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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