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特許拒絶査定不服審判

2017-018444

トップポートMEMSマイクロフォン及びその製造方法

審判番号
2017-018444
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-548218外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年12月12日
審決日
2018年09月20日
公報発行日
2018年11月30日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (H04R)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015-548218「トップポートMEMSマイクロフォン及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年6月26日国際公開、WO2014/094831、平成28年1月12日国内公表、特表2016-500501、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成24年12月18日を国際出願日とする出願であって、平成28年4月12日付けで拒絶理由が通知され、同年7月1日付けで手続補正がなされ、同年12月26日付けで拒絶理由が通知され、平成29年3月23日付けで手続補正がなされたが、同年10月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年12月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成29年10月4日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-5、7-13に係る発明は、以下の引用文献1及び2に記載された発明並びに周知技術に基づいて、本願請求項6に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に記載された発明並びに周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特開2007-028671号公報 2.国際公開2012/088688号 3.実願平05-062240号(実開平07-029946号) のCD-ROM 4.特開2009-044600号公報(周知技術を示す文献) 第3 本願発明 本願の請求項1-13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明13」という。)は、平成29年3月23日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-13に記載された事項により特定される発明であるところ、本願発明1及び8はそれぞれ以下のとおりの発明である。なお、本願発明2-7は本願発明1を引用する発明であり、本願発明9-13は本願発明8を引用する発明である。 「【請求項1】 上面(US)と下面(BS)とを有したトップポートMEMSマイクロフォン(TPMM)であって、 保護部材(PE)、バックプレート(BP)、及び振動膜(M)を有したMEMSチップ(MC)であり、前記保護部材(PE)が前記MEMSチップ(MC)の上面と一体に設けられ、前記保護部材(PE)によって内部が保護されるMEMSチップ(MC)と、 前記上面(US)に設けられた音響導入孔(SI)と、 前記下面(BS)に設けられた機械的接続手段または電気的接続手段(MC/EC)と を備えることを特徴とするトップポートMEMSマイクロフォン。」 「【請求項8】 トップポートMEMSマイクロフォン(TPMM)の製造方法であって、 上面(US)及び下面(BS)を有したモノリシックのMEMSチップ(MC)を用意する工程と、 前記MEMSチップ(MC)の前記上面(US)の側において前記MEMSチップ(MC)と一体に設けられて前記MEMSチップ(MC)の内部を保護する保護部材(PE)を構築する工程と を備えることを特徴とする製造方法。」 第4 引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2007-028671号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。) (1)「【0001】 本発明は、キャリア部材と、変換部材と、電子デバイスとからなるセンサーシステムに関する。本発明は特にフリップチップ技術を使用して組み立てられたコンデンサマイクロフォンシステムに関する。本発明はさらに、例えば印刷回路基板(PCB)に表面実装されるように適合されたコンデンサマイクロフォンシステムに関する。」 (2)「【0017】 キャリア部材と変換器要素は、Siのような半導体材料をベースにしてもよい。熱応力を緩和するために、キャリア部材、変換器要素および電子デバイスは、同一の半導体材料をベースにしてもよい。その材料はSiであってもよい。」 (3)「【0035】 センサーシステムの異なる要素を製造するのに使用されるプロセスは、超小型技術の分野で公知の技術を必要とする。」 (4)「【0041】 図3または4において、マイクロフォンに適用したシステムが示されている。これらの実施形態では、変換器要素1はマイクロフォンであり、バックチャンバ11がシリコン基板2にエッチングされている。バックチャンバは、KOHやTMAHまたはEDPのような反応物を使用するウェットエッチングプロセス、あるいは反応イオンエッチングのようなドライエッチングプロセスによりシリコンキャリアにエッチングされる。キャビティ11はフィードスルーホール20と同じ工程でエッチングすることができる。」 (5)「【0042】 図3と図4の相違は、図4のシステムはEMIシールドを設けるためにフィルタ5で被覆されていることである。EMIシールド16は、シルバーエポキシのような導電性ポリマー層、あるいは電気メッキあるいは蒸発(evaporated)されたCuまたはAuのような金属層である。さらに、図4に示す集積回路チップ3およびフィルタ5は、アンダーフィルや接着剤21のような追加手段により接続され固着されている。」 (6)「【0043】 マクロフォンの機能は以下の通りである。開口4は音入口として機能し、周囲音圧は開口4を覆うフィルタ5を介して、マイクロフォンのフロントチャンバとして機能するキャビティ10に進入する。音圧はダイヤフラム12で反射し、これによりダイヤフラム12とバックプレート13の間の空気が多孔19を通して流出する。」 (7)「【0045】 ダイヤフラム12が入射音圧に応答して偏向すると、ダイヤフラム12とバックプレート13によって形成される電気コンデンサの電気容量は入射音圧に応答して変化する。集積回路チップ3上の回路は、ダイヤフラム12とバックプレート13にはんだ凸部8を介して電気的に接続されている。この回路は、ダイヤフラム12とバックプレート13によって形成されるコンデンサの電気容量の変化を検出するように設計されている。またこの回路は、電源や聴覚器具内の他の電気回路に電気的に接続するために、はんだ凸部8と垂直フィードスルーライン23を介して、はんだ凸部22に電気的に接続されている。」 上記摘記事項及び図面の記載から以下のことがいえる。 (a)上記(1)及び(4)によれば、変換器要素1は、コンデンサマイクロフォンシステムのマイクロフォンであり、上記(3)によれば超小型技術によって製造される。そして、図4の記載からみて、マイクロフォンである変換器要素1は、上面及び下面を有している。 (b)上記(6)及び図4によれば、変換器要素1の上面に開口4が設けられており、開口4は音入口として機能する。 (c)上記(5)、(6)及び図4によれば、変換器要素1の開口4、すなわち、変換器要素1の上面は、EMIシールドを設けるためにフィルタ5で被覆されている。 (d)上記(6)及び図4によれば、マイクロフォンである変換器要素1には、ダイヤフラム12とバックプレート13が設けられ、上記(7)によれば、ダイヤフラム12とバックプレート13は電気コンデンサを形成し、はんだ凸部8を介して集積回路チップ3上の回路と電気的に接続されている。そして、図4の記載からみて、変換器要素1の下面にハンダ凸部8が設けられている。 以上を総合勘案すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「上面及び下面を有する超小型の変換器要素1からなり、前記変換器要素1にはダイヤフラム12及びバックプレート13が設けられ、前記上面には、音入口として機能する開口4が設けられるともに、EMIシールドとして機能するフィルタ5で被覆され、前記下面には、集積回路チップ3上の回路と電気的に接続されるハンダ凸部8が設けられているマイクロフォン。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2(国際公開2012/088688号)には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、仮訳は当審で作成した。また、下線は当審で付与した。) (1)「[0026] As shown in Fig. 1, the MEMS microphone 10 may include a monolithic silicon chip incorporating an acoustic sensing element 100 and conditioning CMOS integrated circuits (not shown), a silicon-based carrier chip 200, a substrate 300, and a conductive cover 400 with an acoustic port 420 formed thereon.」 「(仮訳):[0026] 図1に示すように、MEMSマイクロフォン10は、音響検出素子100とCMOS集積型調整回路(図示せず)とを組み込んだモノリシックシリコンチップ、シリコンベースのキャリアチップ200、基板300、および音響ポート420を上部に形成した導電性カバー400とを含み得る。」 (2)「[0027] The monolithic silicon chip according to the present embodiment may include an acoustic sensing element 100 and conditioning CMOS integrated circuits (not shown). The monolithic silicon chip may receive an acoustic signal and transform the received acoustic signal into an electrical signal by the acoustic sensing element 100, and process and output the electrical signal by the conditioning CMOS integrated circuits. As shown in Fig. 1, the acoustic sensing element 100 may include a compliant diaphragm 120 such as a vibrating diaphragm, a perforated backplate 140 with a plurality of through holes 143 formed in the portions thereof opposite to the diaphragm 120, and an air gap 115 between the diaphragm 120 and the backplate 140 for separating the diaphragm 120 from the microphone backplate 140. The diaphragm 120 in this embodiment serves as a vibration membrane which vibrates in response to an external acoustic wave reaching the diaphragm 120 from the outer side thereof, as well as an electrode. The backplate 140 provides another electrode of the acoustic sensing element 100, and has a plurality of through holes 143 formed thereon, which are used for air ventilation so as to reduce air damping that the diaphragm 120 will encounter when starts vibrating. An example of the acoustic sensing element 100 as above is described in details in the international application No. PCT/CN2010/075514, the contents of which are incorporated herein by reference. Further, the conditioning CMOS integrated circuits and their integration with the acoustic sensing element 100 are known in the art, and will omit the detailed description thereof.」 「(仮訳)[0027] 本実施形態によるモノリシックシリコンチップは、音響検出素子100とCMOS集積型調整回路(図示せず)とを含むことができる。モノリシックシリコンチップは、音響信号を受信し、受信した音響信号を音響検出素子100によって電気信号に変換し、CMOS集積型調整回路によって電気信号を処理して出力することができる。図1に示すように、音響検出素子100は、振動膜などの柔軟な振動板120と、振動板120とは反対側の部分に複数の貫通孔143が形成された有孔バックプレート140と、振動板120をマイクロフォンバックプレート140から分離させるための振動板120とバックプレート140との間の空隙115とを備えている。この実施形態の振動板120は、その外側から振動板120に到達する外部音波に応じて振動する振動膜として機能し、かつ電極として機能する。バックプレート140は音響検出素子100のさらなる電極となり、複数の貫通孔143がその上部に形成されるが、これらは通気のために使用されて、振動板120が振動を開始する際に受ける空気制動を低減する。上記のような音響検出素子100の例は、国際出願第PCT/CN2010/075514号に詳細に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。さらに、CMOS集積型調整回路およびその音響検出素子100との統合は、当該技術分野においては周知であり、その詳細な説明は省略する。」 (3)「[0029] The silicon-based carrier chip 200 may be provided with a cavity 220 formed in the center thereof and a plurality of via holes formed around the cavity 220, wherein the cavity 220 is extended from the upper surface to a certain depth of the silicon-based carrier chip 200 and is opposite to the backplate 140 of the acoustic sensing element 100 of themonolithic silicon chip. The plurality of via holes are extended from the upper surface to the lower surface of the silicon-based carrier chip 200 and filled with metal 240 therein. Each of the metal lead-outs 240 filled in the plurality of through-holes is electrically connected at its two ends with two metal pads which are spread on the upper surface and lower surface of the silicon-based carrier chip 200, respectively. The electrode pads (i.e. the pad 141, the pad 142 and/or other pads) on the backplate 140 side of the monolithic silicon chip are bonded onto the corresponding metal pads 250 on the upper surface of the silicon-based carrier chip by using for example metal eutectic bonding (e.g. SnAu, etc), so that the monolithic silicon chip is bonded onto and electrically connected with the silicon-based carrier chip 200. Note that the metal eutectic bonding bumps 500 forms a part of a sealing ring around the cavity 220, which means that the external acoustic wave cannot passes through the sealingring.」 「(仮訳)[0029] シリコンベースのキャリアチップ200には、中央に形成される空洞220と、空洞220の周囲に形成される複数のビアホールとを設けてもよく、空洞220は、上面から、シリコンベースのキャリアチップ200のある深さまで延びて、モノリシックシリコンチップの音響検出素子100のバックプレート140に対向している。複数のビアホールはシリコンベースのキャリアチップ200の上面から下面に延びて、金属240が内部に充填される。複数の貫通穴に充填された金属リードアウト240はそれぞれその二つの端部で二つの金属パッドに電気接続されるが、これら二つの金属パッドは、シリコンベースのキャリアチップ200の上面と下面とにそれぞれ展開される。モノリシックシリコンチップのバックプレート140側の電極パッド(すなわちパッド141、パッド142および/または他のパッド)は、例えば金属共晶接合(SnAu等)を用いることでシリコンベースのキャリアチップの上面にある対応する金属パッド250に接合され、それによりモノリシックシリコンチップは、シリコンベースのキャリアチップ200上に接合され電気接続される。金属共晶接合バンプ500は、空洞220周囲のシールリングの一部を形成するが、これは、外部音波がシールリングを通過出来ないことを意味することに注意されたい。」 (4)「[0037] In Step S201, as shown in Fig. 2A, prepare a monolithic silicon chip incorporating an acoustic sensing element 100 and conditioning CMOS integrated circuits as described above, wherein the acoustic sensing element 100 of the monolithic silicon chip includes a compliant diaphragm 120, a backplate 140 with a plurality of through holes 143 formed in the portions thereof opposite to the diaphragm 120, an air gap 115 between the diaphragm 120 and the backplate 140 for separating the diaphragm 120 from the backplate 140, and a plurality of electrode pads spread on the backplate 140 side of the monolithic silicon chip, which include an electrode pad 141 which may be extracted from the power supply or the diaphragm 120, an electrode pad 142 extracted from the signal output or the backplate 140 and other electrode pads (not shown) extracted from the conditioning CMOS integrated circuits. The method of manufacturing the monolithic silicon chip is described in details for example in the international application No. PCT/CN2010/075514, and will not be repeated herein. [0038] In Step S203, as shown in Fig. 2B, prepare a silicon-based carrier chip 200 as described above. The silicon-based carrier chip 200 may be formed by preparing a silicon based substrate first, then for example, patterning and etching the silicon based substrate by Si Deep Reactive Ion Etching (DRIE) or Wet Etching to a certain depth to form a cavity 220 therein, patterning and etching the silicon based substrate in a similar way around the cavity 220 to form a plurality of through holes, filling the through holes with metal by plating to form the electrical lead-outs 240 and evaporating metal on both surfaces of the silicon based substrate to form the metal pads 250, 260 on both sides of the electrical lead-outs 240. Note that the method of manufacturing the silicon-based carrier chip 200 is known in theart and can be modified in other ways without departing from the scope and spirit of the invention.」 「(仮訳)[0037] ステップS201においては図2Aに示すように、上記のような音響検出素子100と調整CMOS集積回路とを組み込んだモノリシックシリコンチップを準備するが、モノリシックシリコンチップの音響検出素子100は、柔軟な振動板120と、振動板120に対向する部分に形成された複数の貫通穴143を有するバックプレート140と、振動板120とバックプレート140とを隔てるための振動板120とバックプレート140の間の空隙115、およびモノリシックシリコンチップのバックプレート140側に展開された複数の電極パッドとを含み、これら複数の電極パッドは、電源または振動板120から引き出すことができる電極パッド141、信号出力或いはバックプレート140から引き出される電極パッド142、および、調節CMOS集積回路から引き出される他の電極パッド(図示せず)とを含む。モノリシックシリコンチップの製造方法は、例えば国際出願PCT/CN2010/075514に詳細に記載されており、ここでは繰り返さない。 [0038] ステップS203においては図2Bに示すように、上記のようなシリコンベースのキャリアチップ200を用意する。シリコンベースのキャリアチップ200は、まずシリコンベースの基板を準備し、次に例えば、Si深部反応性イオンエッチング(DRIE)またはウェットエッチングによって空洞220を形成するのに所定の深さまでシリコンベース基板をパターニングおよびエッチングし、空洞220の周りにシリコンベース基板を同様の方法でパターニングおよびエッチングして複数の貫通穴を形成し、貫通穴にメッキによって金属を充填して電気リードアウト240を形成し、シリコンの両面に金属を蒸着して電気リードアウト240の両面に金属パッド250、260を形成する。シリコンベースのキャリアチップ200を製造する方法は当技術分野では周知であり、本発明の範囲および精神を逸脱することなく他の方法で変更することができることに留意されたい。」 (5)「[0043] Now, an example structure of the MEMS microphone according to the second embodiment of the present invention will be described with reference to Fig. 3. Fig. 3 is a cross-sectional view showing the example structure of the MEMS microphone 10' according to the second embodiment of the present invention. Compared with Fig. 1,Fig. 3 is distinguished from Fig. 1 in that, in the second embodiment, the acoustic port 320 is formed on the PCB substrate 300'; a plurality of through-holes 280 are formed on the bottom of the cavity 220 of the silicon-based carrier chip 200'; and the silicon-based carrier chip is seal bonded and electrically connected with the substrate. For example, the soldering agents or the conductive adhesives 600 form an sealing ring between the silicon-based carrier chip 200' and the PCB substrate 300', which means that the external acoustic wave cannot passes through the sealing ring and reach the diaphragm 120 from top side thereof (from the view of Fig. 3), preventing the external wave from vibrating the diaphragm 120 from the top side thereof, and thus the external acoustic wave only vibrates the diaphragm 120 from the bottom side thereof (from the view of Fig. 3).」 「(仮訳)[0043] 続いて、本発明の第二の実施形態によるMEMSマイクロフォンの構成例を図3を参照して説明する。図3は、本発明の第二の実施形態によるMEMSマイクロフォン10'の構造例を示す断面図である。図1と比較すると図3は、第二の実施形態でPCB基板300'上に音響ポート320が形成されている点、シリコンベースのキャリアチップ200'の空洞220の底面に複数のスルーホール280が形成されている点、および、シリコンベースのキャリアチップが基板とシール接合されて電気的に接続されている点で、図1とは異なる。例えば、はんだ付け剤または導電性接着剤600は、シリコンベースのキャリアチップ200'とPCB基板300'との間にシーリングリングを形成するが、これは、外部音波がシーリングリングを通過して振動板120に上面から(図3の観点から)到達できないことを意味し、外部音波が振動板120をその上面側から振動するのを防止するので、したがって外部音波は振動板120をその下側から(図3の観点から)のみ振動させる。」 (6)「[0044] As described above, in the MEMS microphone 10 according to the first embodiment, the chamber formed by the cover 400 and the PCB substrate 300 communicates with the outside environment through the port 420 formed on the cover 400, and is divided, by the diaphragm 120, into two volumes wherein, according to the sound entrance path, the one between the diaphragm 120 and the sound port 420 is front channel and another one between the diaphragm 120 and the cavity 220 serves as back chamber (from the view of Fig. 1). In contrast, in the MEMS microphone 10’ according to the second embodiment, the chamber formed by the cover 400 and the PCB substrate 300 communicates with the outside environment through the port 420 formed on the substrate 300, and is divided, by the diaphragm 120, into two spaces wherein, according to the sound entrance path, the one between the diaphragm 120 and the sound port 420 is front channel and another one between the diaphragm 120 and the cover 400 serves as back chamber (from the view of Fig. 3).」 「(仮訳)[0044] 上述のように第一の実施形態によるMEMSマイクロフォン10では、カバー400とPCB基板300とで形成されるチャンバが、カバー400に形成されたポート420を介して外部環境と連通し、かつ、振動板120によって二つの容積に分割されて、音入口経路次第で、振動板120とサウンドポート420との間の一つの容積がフロントチャネルとなり、振動板120と空洞220との間の他の容積が(図1の観点から)バックチャンバとして機能する。対称的に、第二の実施形態によるMEMSマイクロフォン10'では、カバー400とPCB基板300とで形成されるチャンバが、基板300に形成されたポート420を介して外部環境と連通し、かつ、振動板120によって二つの空間に分割されて、音入口経路次第で、振動板120とサウンドポート420との間の一つの空間がフロントチャネルとなり、振動板120とカバー400との間の他の空間が(図3の観点から)バックチャンバとして機能する。」 上記摘記事項及び図面の記載から以下のことがいえる。 (a)上記(1)及び図1によれば、MEMSマイクロフォンは、音響検出素子100を組み込んだモノリシックシリコンチップ、シリコンベースのキャリアチップ200、基板300、および音響ポート420を上部に形成した導電性カバー400を含む。そして、上記(4)によれば、モノリシックシリコンチップとシリコンベースのキャリアチップ200は別々に用意されるものであるから、シリコンベースのキャリアチップ200はモノリシックシリコンチップと別体に形成されている。 (b)上記(2)によれば、音響検出素子100は、振動板120とバックプレート140とを備える。また、上記(3)によれば、キャリアチップ200には空洞220が形成されている。そして、上記(6)によれば、振動板120と空洞220との間の他の容積がバックチャンバとして機能する。 (c)上記(5)によれば、第二の実施形態によるMEMSマイクロフォンにおいては、PCB基板300'上に音響ポート320が形成されている。そして、図3からみて、PCB基板300'はMEMSマイクロフォンの下面に位置するから、第二の実施形態においては、MEMSマイクロフォンの下面に音響ポートが形成されている。 (d)上記(5)によれば、キャリアチップ200'の底面にスルーホール280が形成されている。 以上を総合勘案すると、引用文献2には、次の技術事項が記載されている。 「下面に音響ポート320を有するMEMSマイクロフォンにおいて、振動板120及びバックプレート140を有するモノリシックシリコンチップとは別体のシリコンベースのキャリアチップ200の底面にスルーホール280を形成する。」 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア.引用発明における「ダイヤフラム12」は、本願発明1における「振動膜(M)」に相当する。 イ.引用発明における「変換器要素1」は、ダイヤフラム12とバックプレート13により形成される電気コンデンサという電気的要素と、入射音圧により偏向するダイヤフラム12という機械的要素とを備えた(上記「第4」の「1.」の(7)参照。)超小型のものであることから、本願発明1における「MEMSチップ(MC)」であるといえる。 ウ.引用発明における「フィルタ5」は、EMIシールドとして外部の電磁波より内部を保護する機能を有することから、本願発明1における「保護部材(PE)」であるといえる。ただし、本願発明1の保護部材(PE)は、MEMSチップ(MC)の上面と一体に設けられているのに対して、引用発明のフィルタ5は、MEMSチップに相当する変換器要素1とは別体のものであり、したがって、変換器要素1の上面と一体に設けられてはいない。 エ.引用発明1における「開口4」は、音入口としての機能を有することから、本願発明1における「音響導入孔(SI)」に相当する。 オ.引用発明1における「ハンダ凸部8」は、電気的に接続する機能を有することから、本願発明1における「電気的接続手段(EC)」に相当する。 カ.引用発明1における「マイクロフォン」は、MEMSチップである変換器要素1からなり、音響導入孔に相当する開口4がその上面に設けられているから、本願発明1における「トップポートMEMSマイクロフォン(TPMM)」であるといえる。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「上面と下面とを有したトップポートMEMSマイクロフォンであって、保護部材、バックプレート、及び振動膜を有したMEMSチップであり、前記保護部材が前記MEMSチップの上面に設けられ、前記保護部材によって内部が保護されるMEMSチップと、前記上面に設けられた音響導入孔と、前記下面に設けられた電気的接続手段とを備えることを特徴とするトップポートMEMSマイクロフォン。」 (相違点) 保護部材が、本願発明1においては、MEMSチップの上面と一体に設けられるのに対し、引用発明においては、MEMSチップの上面と一体に設けられてはいない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討すると、上記「第4」の「2.」で説示したとおり、引用文献2には、下面に音響ポート320を有するMEMSマイクロフォンにおいて、振動板120及びバックプレート140を有するモノリシックシリコンチップとは別体のシリコンベースのキャリアチップ200の底面にスルーホール280を形成するという技術事項が記載されている。 しかしながら、引用文献2には、上記キャリアチップ200が、バックチャンバとして機能することは記載されているが(上記「第4」の「2.」の(b)参照。)、キャリアチップ200又はキャリアチップ200の底面に形成されたスルーホールが保護部材として機能することは記載も示唆もされていない。そうすると、引用文献2には、上記相違点にかかる保護部材は記載されていない。仮に、スルーホールが底面に形成されたキャリアチップ200が保護部材としての機能を有するとしても、当該キャリアチップ200はMEMSチップに相当するモノリシックシリコンチップとは別体のものであるから、引用文献2には、MEMSチップの上面と一体に保護部材を設けるという技術事項は記載されていない。 また、引用文献1には、フィルタ5と変換器要素1とを一体に形成することを動機付ける記載も示唆もない。加えて、引用発明のフィルタ5は、EMIシールドとして機能させるために、導電性ポリマー層又は金属層として形成されており(上記「第4」の「1.」の(3)参照。)、「Siのような半導体材料をベース」(上記「第4」の「1.」の(2)参照。)にする変換器要素1とは異なる材料を用いる必要があることから、引用発明にはフィルタ5と変換器要素1とを一体に形成することに関し阻害要因が存在するといわざるをえない。 そうすると、当業者といえども、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項から、上記相違点に係る「保護部材がMEMSチップの上面と一体に設けられる」という発明特定事項を容易に想到することはできない。 また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2009-044600号公報)は、複数の開口部を有する部材で覆うことにより内部を保護するという周知技術を示す文献であって、保護部材がMEMSチップの上面と一体に設けられるということまでは開示していない。 したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項並びに周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 2.本願発明2-5、7について 本願発明2-5、7も、本願発明1の「保護部材がMEMSチップの上面と一体に設けられる」という発明特定事項と同一の発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項並びに周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3.本願発明6について 本願発明6も、本願発明1の「保護部材がMEMSチップの上面と一体に設けられる」という発明特定事項と同一の発明特定事項を備えるものである。そして、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(実願平05-062240号(実開平07-029946号)のCD-ROM)は、マイクロホンの保護部材が外側から奥に進むほど断面積が増大する孔を有するという技術事項を示す文献であって、保護部材がMEMSチップの上面と一体に設けられるということは記載されていない。 したがって、本願発明6も本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術事項並びに周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 4.本願発明8について 本願発明8は、「トップポートMEMSマイクロフォン(TPMM)の製造方法」の発明で、「MEMSチップ(MC)と一体に設けられて前記MEMSチップ(MC)の内部を保護する保護部材(PE)を構築する」という発明特定事項を含んでいる。当該発明特定事項は、本願発明1の「保護部材がMEMSチップの上面と一体に設けられる」という発明特定事項に対応するものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項並びに周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 5.本願発明9-13 本願発明9-13も、本願発明8の「MEMSチップ(MC)と一体に設けられて前記MEMSチップ(MC)の内部を保護する保護部材(PE)を構築する」という発明特定事項と同一の発明特定事項を備えるものであるから、本願発明8と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項並びに周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1-5、7-13は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本願発明6は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された技術事項並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2017-018444

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