特許拒絶査定不服審判
2017-018116
プログラム可能なメディアインサートを備えた通電可能眼用レンズの製造及びプログラミングの方法
- 審判番号
- 2017-018116
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-516727外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年12月06日
- 審決日
- 2019年02月18日
- 公報発行日
- 2019年04月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】加藤 公延
- 【請求人代理人】大島 孝文
- 分類
- P18 .121-WY (G02C) / P18 .536-WY (G02C) / P18 .537-WY (G02C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-516727「プログラム可能なメディアインサートを備えた通電可能眼用レンズの製造及びプログラミングの方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月 4日国際公開、WO2014/193815、平成28年 7月28日国内公表、特表2016-522449、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)5月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年5月30日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年4月10日付けで拒絶理由が通知され、同年7月11日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年8月23日付けで拒絶査定(以下、当該拒絶査定を「原査定」といい、原査定における拒絶の理由を「原査定拒絶理由」という。)がされ、これに対し、同年12月6日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成30年10月5日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年12月20日に意見書の提出とともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされた。
第2 原査定の概要
原査定拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
理由2(サポート要件)
本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由3(実施可能要件)
本願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由4(明確性)
本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
理由6(進歩性)
本願の請求項1~4に係る発明は、その優先権主張の日前(以下、「本件優先日」という。)に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用文献A~Cに記載された発明に基づいて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献A:特表2012-504065号公報
引用文献B:特表2012-519312号公報
引用文献C:特表2012-507748号公報 (周知技術を示す文献)
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
理由1(明確性)
本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
理由2(進歩性)
本願の請求項1~7に係る発明は、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用文献1~6に記載された発明に基づいて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特表2012-507748号公報
(原査定における引用文献C)
引用文献2:特表2001-525298号公報 (周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2002-173189号公報 (周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2001-9849号公報 (周知技術を示す文献)
引用文献5:特表2004-503810号公報 (周知技術を示す文献)
引用文献6:特開平8-112566号公報 (周知技術を示す文献)
第4 本願発明
本願の請求項1~4に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
プログラム可能なメディアインサートを備えた眼用レンズをプログラムする方法であって、
前記プログラム可能なメディアインサートを前記眼用レンズに組み入れるステップであって、前記プログラム可能なメディアインサートは、前記眼用レンズの機能性を画定するため一連のプログラミングパラメータによりプログラムされるものであって、前記機能性は、装着者のためにカスタマイズされるものである、ステップと、
前記プログラム可能なメディアインサートを前記眼用レンズに組み入れた後で、前記一連のプログラミングパラメータを前記プログラム可能なメディアインサートに送信するステップと、
前記眼用レンズを密封容器内に包装するステップであって、前記眼用レンズが前記密封容器内にあり、前記一連のプログラミングパラメータを前記プログラム可能なメディアインサートに送信するプログラミング装置の凹部内に前記密封容器が収まることで、前記プログラミング装置および前記密封容器が互いに位置合わせされている際に、前記一連のプログラミングパラメータに関連する前記密封容器上のコードが前記プログラミング装置のスキャニングデバイスで読み取られて、前記一連のプログラミングパラメータが前記プログラミング装置から前記プログラム可能なメディアインサートに送信される、ステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記一連のプログラミングパラメータは、最小在庫管理単位に関連するプログラミングパラメータである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プログラム可能なメディアインサートが、
実行可能なソフトウェアを含むプロセッサと、
前記プロセッサと電気的に連通している電力源と、
前記電力源及び前記プロセッサを電気的に接続することができる導電性トレースと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記一連のプログラミングパラメータを受信するステップと、
前記一連のプログラミングパラメータに基づいて前記プロセッサをプログラムするステップと、を更に含む、請求項3に記載の方法。」(以下、請求項1~4に係る発明を、それぞれ、「本願発明1」~「本願発明4」という。)
第5 引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明
1 引用文献1の記載事項
原査定拒絶理由及び当審拒絶理由に引用され、本件優先日前に頒布された刊行物である引用文献1(特表2012-507748号公報)には、図面とともに以下の記載事項がある。なお、下線は、合議体が引用発明等の認定に用いた箇所を示す。
(1)「【0002】
(発明の分野)
本発明は、眼科用レンズ内に埋め込んだマイクロコントローラ装置を備える眼科用レンズについて、より具体的には、マイクロコントローラ及び1つ以上の構成要素を埋め込んだ媒体挿入物を備える眼科用レンズの製造方法について説明する。
【背景技術】
【0003】
従来、コンタクトレンズ又は眼内レンズのような眼科用レンズは、所定の光学品質を提供してきた。例えばコンタクトレンズなら、視力矯正機能性、美容強化、及び治療的効果の1つ以上を提供することが可能であるが、視力矯正機能については一つのセットしか提供することができなかった。それぞれの機能は、レンズの物理的特性によって提供される。基本的に、レンズに屈折性を組み込む設計によって視力矯正機能性が提供される。レンズに組み込まれる顔料は、美容強化を提供することができる。レンズに組み込まれる活性剤は、治療的機能性を提供することができる。
【0004】
これまでのところ、眼科用レンズにおける光学品質はレンズの物理的特性によっていた。一般に、光学的設計が決定され、その後、例えば注型成形又は旋盤加工によってレンズを製造する際にレンズに与えられた。レンズがいったん形成されてしまえば、このようなレンズの光学品質は変化しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、時により、目に装着される生物医学的装置が複数の機能を持つことが装用者にとって有益と考えられることもある。例えば、眼科用レンズが複数の焦能力を有することで視力の調整が可能になれば、有利である。他の機能性もまた、有用であり得る。眼鏡の装用者が眼鏡を替えることによって光学的機能性を変えることができるのと異なり、コンタクトレンズの装用者又は眼内レンズを使用する者は、簡単に視力矯正の機能的特性を変化させることはできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって本発明は、眼科用レンズ内の1つ以上の構成要素の状態を変化させるように機能するマイクロコントローラを備えた眼科用レンズを含む。構成要素の状態が変化することによって、眼科用レンズに更に機能性が付加され得る。加えて、マイクロコントローラを備える眼科用レンズを形成するための方法及び装置が提示される。実施形態によってはまた、マイクロコントローラを更に含む剛性又は整形可能な付勢された挿入物で、眼科用レンズ内に生体適合的に含まれる挿入物を備えた、注型成形シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを含むことができる。」
(2)「【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、内部に組み込んだマイクロコントローラを備える眼科用レンズを製造するための方法及び装置を含む。加えて本発明は、内部に組み込んだマイクロコントローラを備える眼科用レンズを含む。
(中略)
【0012】
用語解説
本発明を目的とする本説明及び特許請求の範囲において、以下の定義が適用される、様々な用語が使用され得る。
【0013】
マイクロコントローラ:(マイクロコントローラユニット、MCU,又はμCと称されることもある)本明細書で使用する場合、中央演算処理装置(CPU)からなる集積回路で、水晶発振器、タイマ、ウォッチドッグタイマ、直列アナログI/Oなどの支援機能回路、不揮発性NOR型フラッシュメモリ又はこれもよく含まれるワンタイムプログラマブル読み出し専用メモリ(OTP ROM)の形態をとるプログラムメモリ、及びある程度の大きさのランダムアクセスメモリ(RAM)と組み合わされたものを指す。好適なマイクロコントローラには、4kHzという低いクロック周波数で動作し得るものもあるが、これは低い電力消費(ミリマット又はマイクロワット)を可能にし、多くの典型的な用途に適したものだからである。これらのマイクロコントローラは一般に、状態変化コントローラ又はその他の割り込みのようなイベントを待つ間、機能性を維持する能力を有する。
付勢された:本明細書で使用する場合、電流を供給することができるか、又は内部に蓄積された電気的エネルギーを有することができる状態であることを指す。
エネルギー:本明細書で使用する場合、仕事をするための物理的システムのキャパシティを指す。本発明においては多くの場合、仕事をする際に電気的動作を遂行できるという、上述のキャパシティとの関連で使用され得る。
エネルギー源:本明細書で使用する場合、エネルギーを供給することができるか、又は生体医学的装置を付勢された状態に置くことができる装置を指す。
エネルギーハーベスタ:本明細書で使用する場合、環境からエネルギーを抽出することができ、それを電気的エネルギーに変換することができる装置を指す。
レンズ:眼の内部又は眼の上にある任意の眼科用装置を指す。これらの装置は光学補正をもたらすことができるか、又は美容用であっても良い。例えば、レンズという用語は以下のものを指すことができる。コンタクトレンズ、眼内レンズ、オーバーレイレンズ、眼用挿入物、光学挿入物、又は他の同様の、視力が補正若しくは変更される装置か、又は視力を妨げることなく目の生理機能が美容的に拡張される(例えば、虹彩色)装置。実施形態によっては、本発明の好ましいレンズは、シリコーンヒドロゲルを含むがこれに限定されないシリコーンエラストマー又はヒドロゲル、及びフルオロヒドロゲルから作製される、ソフトコンタクトレンズである。
レンズ形成混合物、又は「反応性混合物」又は「RMM」(反応性モノマー混合物):本明細書で使用される場合、硬化及び架橋することができるか、又は架橋して眼科用レンズを形成することができる、モノマー又はプレポリマー材料を指す。様々な実施形態において、紫外線遮断剤、染料、光開始剤又は触媒、及びコンタクト若しくは眼内レンズ等の眼科用レンズに望み得るその他の添加剤のような、1つ以上の添加剤を有する、レンズ形成混合物を含むことができる。
レンズ形成表面:レンズの成形に用いられる表面を指す。いくつかの実施形態では、任意のこのような表面103~104は、光学品質表面仕上げを有することができ、光学品質表面仕上げとは、表面が十分に滑らかで、成型表面に接触しているレンズ形成材料の重合によって作られるレンズ表面が光学的に許容可能であるように形成されていることを示す。更に、いくつかの実施形態では、レンズ形成表面103~104は、レンズ表面に所望の光学特性を付与するのに必要な幾何学形状を有することができ、所望の光学特性としては、限定することなく、球面、非球面、及び円筒屈折力、波面収差補正、角膜トポグラフィ補正などに加えて、これらの任意の組み合わせが挙げられる。
リチウムイオン電池:リチウムイオンがセルを通して動くことによって電気的エネルギーを生成する電気化学セルを指す。典型的には電池とよばれるこの電気化学セルは、その通常の状態に再付勢又は再充電され得る。
媒体挿入物:本明細書で使用される場合、眼科用レンズ内にエネルギー源を支持することができる、整形可能な、又は剛性の基材を指す。実施形態によっては、媒体挿入物はまた、1つ以上の可変光学レンズを含む。
成形型:未硬化配合物からレンズを形成するために使用可能な、剛性又は半剛性の物体を指す。いくつかの好ましい成形型は、前側湾曲部成形型部分及び後側湾曲部成形型部分を形成する、2つの成形型部分を含む。
光学ゾーン:本明細書で使用する場合、眼科用レンズの装用者がそこを通して見ることになる、眼科用レンズの領域を指す。
電力:本明細書で使用する場合、単位時間当たりになされる仕事又は移動するエネルギーを指す。
再付勢可能又は再充電可能:本明細書で使用する場合、仕事をするためのより高いキャパシティの状態へと復元可能な能力を指す。本発明においては多くの場合、特定の率で、特定の再度回復された時間の間、電流を流す能力は復元可能な能力との関連で使用され得る。
再付勢又は再充電する:仕事をするためのキャパシティがより高い状態へと復元することを指す。本発明においては多くの場合、特定の率で、特定の再度回復された時間の間、電流を流すことができるように、装置を復元することに関連して使用され得る。
成形型から取り外された:レンズが成形型から完全に分離されたか、又は軽い振動によって取り外すか若しくは綿棒を用いて押し外すことができるようにほんの軽く付着しているだけのいずれかであることを意味する。
【0014】
ここで図1を参照すると、埋め込みマイクロコントローラ111を備えた眼科用レンズ100はまた、エネルギーの蓄積手段としての電気化学セル又は電池などのエネルギー源109、並びに実施形態によっては、エネルギー源を構成する材料を眼科用レンズが配置される環境から封止及び分離する手段を含み得る。エネルギー源109は、マイクロコントローラを起動する電力を提供することができる。実施形態によっては、休止中(CPUクロック及び大部分の周辺装置がオフ)におけるマイクロコントローラの電力消費はわずかナノワットの程度であり得る」
なお、図1は、以下のとおりのものである。
(3)「【0024】
マイクロコントローラのメモリ内に格納するために、高水準言語及びアセンブラ言語コードをコンパクトな機械コードへとコンパイルすることも可能である。眼科用レンズの形成に用いる成形型部分内にマイクロコントローラ111を配置するに先立って、コンパイルしたコードをメモリに格納することが好ましいが、実施形態によっては、マイクロコントローラ111がコンタクトレンズ内に埋め込まれた状態で、実行可能なコードをマイクロコントローラ内に無線で送信することも可能である。したがって、様々な実施形態が、恒久的かつ読み出し専用で、眼科用レンズ内への配置に先立ってのみプログラムされ得る格納メモリ、又は比較的容易に改変可能なフラッシュ若しくは消去可能な読み出し専用メモリを含むプログラムメモリを備えた、マイクロコントローラを含み得る。」
(4)「【0025】
実施形態によっては、アナログディジタル変換器を備えるマイクロコントローラ111を含む。このアナログディジタル変換器は、マイクロコントローラへの入力をプロセッサが処理可能なディジタル形式へと変換するのに用いられる。別の態様では、ディジタルアナログ変換器を使用することにより、アナログ形式で制御を行う装置にプロセッサがデータを送信できるようにしてもよい。
(中略)
【0029】
マイクロコントローラにフィールドプログラマブル装置を使用することにより、レンズの形成後、患者がそのレンズを装着するに先立って、ファームウェアのプログラミングを特定の患者の必要性に適合したものとすることが可能である。プログラム可能性は様々な方法によって得ることができる。実施形態によっては、システムプログラミングは可撓性基板からマイクロコントローラへの外部接続によって得られる。付加的実施形態はワンタイムプログラマブル(OTP)装置を含む。更に別の実施形態は、マイクロコントローラの製造中におけるように、ウェハレベルでプログラムされる装置を含む。
(中略)
【0033】
マイクロコントローラ111により、眼科用レンズの範囲内からデータを操作することが可能となる。実施形態によっては、データ操作は、受信データに基づく、1つ以上の命令の生成を含み得る。実施形態によっては、受信データはレンズ付近の条件、例えば、レンズが曝露する水分量、レンズの表面温度、レンズ内に含まれる電気濡れ装置の状態、又はその他の条件を示すものであり得る。
付加的実施形態は、構成要素への電力供給のタイミングを計るのに用いられるカウンターの状況、又は構成要素によって受信される入力の状況など、レンズ内に含まれる構成要素の状態を含むことがある。受信入力としては、例えば、磁気パルス、光パターン、無線周波数信号、又はその他の形態の電気通信データを挙げることができる。
【0034】
付加的実施形態によってはまた、眼科用レンズ内の液体メニスカスレンズ部分108の状態を変化させる命令を発するマイクロコントローラを含むことができ、液体メニスカスレンズ部分の状態の変化によってレンズの光学品質が変化する。
【0035】
生成される命令としては、眼科用レンズ内に含まれる構成要素を制御する命令、又は眼科用レンズからデータを送信する命令を挙げることができる。非限定的な例の方法として、眼科用レンズ内に含まれる構成要素を制御する命令として、眼科用レンズ内に包含される1つ以上の構成要素を活性化する外部信号を受信するための、所定のポーリングサイクルを挙げることができる。活性化スイッチとして機能する磁気検知スイッチ又は光受容体のような一定の構成要素の効率を向上させるために、このような構成要素を特定の間隔でスイッチが入るように、プロセッサをプログラムすることが可能である。このような方法により、例えば磁気検知スイッチは毎分わずか10秒間(又はその他の間隔)しかエネルギーを消費しないようにすることができる。別の実施形態では、マイクロコントローラ111は、レンズの温度;レンズの表面張力;レンズ上の圧力;又は電子的に、電気機械的に、又はMEMS装置(マイクロマシン装置)によって測定可能なその他のパラメータを検知する構成要素からの入力を受信するようにすることもできる。」
(5)「【0049】
レンズ
ここで図2を参照すると、マイクロコントローラ204を含む媒体挿入物201を備えた、活性化された眼科用レンズ200の素子が示されている。図示のように、媒体挿入物201は、ヒドロゲルレンズ材料207中に埋め込まれている。活性化因子205を用いることにより、マイクロコントローラ204内の記憶装置内に含まれる1つ以上の実行可能なプログラムを実行することができる。実施形態によっては、マイクロコントローラ204を介して実行されるプログラムが、構成要素203内の状態の変化をもたらす場合もある。記憶装置には、ランダムアクセスメモリ半導体;読み出し専用メモリ半導体;スタティックメモリ;消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ;又はディジタルデータを格納し命令に応じて提供することができるその他の構成要素を含み得る。
【0050】
リチウム系電池又はキャパシタなどのエネルギー源208を充電するために、光受容体202のようなエネルギーハーベスタを備えてもよい。マイクロコントローラ204を用いて再付勢プロセスを管理することができる。例えば、プロセッサはエネルギー源208内の電荷量を示すデータを受信し、回路を開いて、エネルギーハーベスタ202、例えば光受容体からの電流がエネルギー源208へと流れるようにすることができる(他の実施例では磁気又は誘導装置を含み得る)。別の態様では、プロセッサはまた、エネルギーハーベスタ202がエネルギー源208を充電するのに十分な電流を提供できる時を監視し、そのような充電に適した回路を介する電気的経路を与えるようにプログラムされることもできる。充電のための電気回路には、例えば、スイッチとして機能するトランジスタ及び電流の適切な流れを確保するためのダイオードを含み得る。
【0051】
ここで図7を参照すると、本発明のある種の実施形態の斜視図が示されている。この図は、エネルギーハーベスタ701及びエネルギー源702の実施形態を示すが、両者はそれぞれ導電回線経路706を介してマイクロコントローラ704と電気的導通状態にある。その他の構成要素707は、媒体挿入物内に含まれる回路内で一定の役割を果たす、様々な半導体、固体、能動的又は受動的な装置であり得る。実施形態によっては、回線経路706、構成要素707、エネルギーハーベスタ701、エネルギー源702及びマイクロコントローラ704、センサー及びその他の装置を、可撓性基材705上に搭載してもよい。
【0052】
図7には更に、媒体挿入物700上の視覚ゾーン内に位置する液体メニスカスレンズ部分703が示されている。」
なお、図2及び図7は、以下のとおりのものである。
2 引用文献1に記載された発明
引用文献1には、記載事項(2)の段落【0010】に基づけば、「内部に組み込んだマイクロコントローラを備える眼科用レンズを製造するための方法」に関する発明が記載されている。そして、記載事項(3)の段落【0024】には、「眼科用レンズ」に組み込まれる「マイクロコントローラ」について、「コンタクトレンズ内に埋め込まれた状態で、実行可能なコードをマイクロコントローラ内に無線で送信する」と記載されており、記載事項(4)の段落【0029】には、「マイクロコントローラにフィールドプログラマブル装置を使用することにより、レンズの形成後、患者がそのレンズを装着するに先立って、ファームウェアのプログラミングを特定の患者の必要性に適合したものとする」と記載されている。また、記載事項(4)の段落【0034】には、さらに、「マイクロコントローラ」が、「眼科用レンズ内の液体メニスカスレンズ部分」「の状態を変化させる命令を発する」ものであって、「液体メニスカスレンズ部分の状態の変化によってレンズの光学品質が変化する」ことも記載されている。そして、記載事項(5)の段落【0049】及び図2には、「媒体挿入物」が、「ヒドロゲルレンズ材料中」「に埋め込まれて」おり、「マイクロコントローラ」「を介して実行されるプログラムが、構成要素」「内の状態の変化をもたらす」ことが記載されており、ここで、「媒体挿入物」は、記載事項(2)の段落【0013】の記載によれば、「眼科用レンズ内にエネルギー源を支持することができる」「基材を指」し、「可変光学レンズを含む」ものであることが記載され、さらに、記載事項(5)の段落【0051】及び図7には、「媒体挿入物内に含まれる回路」が、「回線経路」、「構成要素」、「エネルギーハーベスタ」、「エネルギー源」及び「マイクロコントローラ」、「センサー及びその他の装置を、可撓性基材」「上に搭載」した実施形態であることが示されている。
したがって、前記1の記載事項(2)~(5)に基づけば、引用文献1には、内部に組み込んだマイクロコントローラを備える眼科用レンズを製造するための方法の実施形態として、以下の発明が記載されていると認められる。
「内部に組み込んだマイクロコントローラを備える眼科用レンズを製造するための方法であって、
活性化された眼科用レンズの素子がマイクロコントローラを含む媒体挿入物を備えており、媒体挿入物は、眼科用レンズ内にエネルギー源を支持することができる基材であり、可変光学レンズを含み、ヒドロゲルレンズ材料中に埋め込まれており、媒体挿入物内に含まれる回路が、回線経路、構成要素、エネルギーハーベスタ、エネルギー源及びマイクロコントローラ、センサー及びその他の装置を、可撓性基材上に搭載するものであり、媒体挿入物上の視覚ゾーン内に液体メニスカスレンズ部分が位置しており、マイクロコントローラを介して実行されるプログラムが、構成要素内の状態の変化をもたらすよう構成されており、
マイクロコントローラが眼科用レンズ内に埋め込まれた状態で、実行可能なコードをマイクロコントローラ内に無線で送信し、マイクロコントローラにフィールドプログラマブル装置を使用することにより、レンズの形成後、患者がそのレンズを装着するに先立って、ファームウェアのプログラミングを特定の患者の必要性に適合したものとし、マイクロコントローラが、眼科用レンズ内の液体メニスカスレンズ部分の状態を変化させる命令を発し、液体メニスカスレンズ部分の状態の変化によってレンズの光学品質が変化するものとする方法。」(以下、「引用発明」という。)
3 引用文献Aの記載事項
原査定拒絶理由に引用され、本件優先日前に頒布された刊行物である引用文献A(特表2012-504065号公報)には、図面とともに以下の記載事項がある。
(1)「【0002】
(発明の分野)
本発明は、眼科用装置の可変焦点、及びより具体的には、いくつかの実施形態では、可変焦点挿入物を有する眼科用レンズの製作を記載する。
【背景技術】
【0003】
従来的に、眼科用レンズ、例えば、コンタクトレンズ、又は眼内レンズは、規定の光学品質を提供した。コンタクトレンズは、例えば、視力矯正機能、美容向上、及び治療効果の1つ以上を、しかしながら、1セットの視力矯正機能のみを提供し得る。それぞれの機能は、レンズの物理的特性によって提供される。基本的に、レンズに屈折特性を組み込む設計は、視力矯正機能を提供する。レンズに組み込まれる顔料は、美容強化を提供することができる。レンズに組み込まれる活性薬剤は、治療的機能を提供することができる。
【0004】
今日まで眼科用レンズの光学品質は、レンズの物理的特性に組み込まれてきた。一般的に、光学設計が決定され、次に、例えば、鋳造成形、又は旋盤などにより、レンズの製作中にレンズに付与されてきた。レンズの光学品質は、一度レンズが形成されると変化しないままであった。しかしながら、着用者らは時折、視力の調節を提供するために、着用者らが利用できる2つ以上の焦点屈折力を有することが有益であるとみなすことがある。光学補正を変更するために眼鏡を変えることができる眼鏡の着用者らとは異なり、コンタクトレンズの着用者、又は眼内レンズを有するものは、かなりの労力なくしてその視力補正の光学特性を変えることができなかった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明は、レンズの光学品質を変更することができる可変視覚部分を有する、眼科用レンズを含む。加えて、可変視覚部分を有する眼科用レンズを形成するための方法、及び装置が示される。いくつかの実施形態はまた、可変光学部品を追加的に含む、剛性の、又は形成可能な挿入物を有する鋳造成形されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを含む場合があり、挿入物は、生体適合性の方法で眼科用レンズ内に含まれる。」
(2)「【0061】
プロセス
以下の方法ステップは、本発明のいくつかの態様により実施しても良いプロセスの例として与えられる。本方法のステップが示される順番は限定を意図するものではなく、他の順番を用いて本発明を実施しても良いことを理解されるべきである。加えて、本発明を実施するためにすべてのステップを必要とするわけではなく、また本発明の種々の実施形態には付加的なステップを含んでも良い。
【0062】
図4を参照すると、フローチャートが本発明を実施するために使用され得る代表的な工程を例示している。401において、可変視覚部分が鋳型部分内に定置される。可変視覚部分はまた、1つ以上の構成要素を含んでも、含まなくてもよい。
【0063】
いくつかの好ましい実施形態では、可変視覚部分は、機械的定置を介して鋳型部分内に定置される。機械的配置には、例えば、表面実装構成要素を配置するのに業界で知られているもののような、ロボット又はその他の自動操作部が含まれ得る。可変視覚部分の人的定置もまた、本発明の範囲内である。したがって、任意の機械的定置、又はオートメーションが利用されてもよく、これは鋳型部分に収容される反応性混合物の重合が、生じる眼科用レンズの可変視覚部分を含むように鋳造成形部分内にエネルギー源を有する可変視覚部分を定置するために有用である。
【0064】
いくつかの実施形態では、可変視覚部分は鋳型部分内に定置されて、基材に取り付けられる。エネルギー源、及び1つ以上の構成要素がまた基材に取り付けられ、可変視覚部分と電気的に導通する。構成要素は、例えば、可変視覚部分に適用される出力を制御する回路を含み得る。したがって、いくつかの実施形態では、構成要素は、1つ以上の光学特性を変更するために(例えば、第1の屈折力と第2の屈折力との間の状態変化)、可変視覚部分を作動させるための制御機構を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、プロセッサ装置、MEMS、NEMS、又は他の構成要素が可変視覚部分内に定置され、エネルギー源と電気的に接触する。基材は、可撓性、及び剛性材料の一方、又は両方を含み得る。
【0066】
402では、反応性モノマー混合物が鋳型部分内に堆積され得る。
【0067】
403では、可変視覚部分は、第1の鋳型部分内で反応性混合物と接触するように位置付けられる。
【0068】
404では、第1の鋳型部分を第2の鋳型部分に隣接させて定置し、反応性モノマー混合物の少なくとも一部及び可変視覚部分をその内部に備えたレンズ形成空洞を形成する。上述のように、好ましい実施形態は、やはり空洞内にあり、可変光学部分と電気的に導通するエネルギー源、及び1つ以上の構成要素を含む。
【0069】
405では、空洞内の反応性モノマー混合物が重合される。重合は、例えば、化学線及び熱のいずれか又は両方に曝露させることによって達成することができる。406では、眼科用レンズを構成する重合した材料に接着した、又はこれに封入された可変視覚部分と共に、眼科用レンズが鋳型部分から取り除かれる。
【0070】
本発明を使用して、任意の既知のレンズ材料、又はそのようなレンズの製造に好適な材料から製造されるハード又はソフトコンタクトレンズを提供し得るが、好ましくは、本発明のレンズは、約0~約90パーセントの含水量を有する、ソフトコンタクトレンズである。更に好ましくは、レンズは、モノマー含有ヒドロキシ基、カルボキシル基、又はこれらの両方から製造される、若しくは、シロキサン、ヒドロゲル、シリコーンヒドロゲル、及びこれらの組み合わせ等のシリコーン含有ポリマーから製造される。本発明のレンズを形成するのに有用な材料は、重合開始剤等の添加剤に加えて、マクロマー、モノマー、及びこれらの組み合わせの混合物を反応させることによって、製造し得る。好適な材料は、シリコーンマクロマー及び親水性モノマーから製造されるシリコーンヒドロゲルを含むが、これらに限定されない。
【0071】
ここで図5を参照すると、501では、上記のように可変視覚部分は眼科用レンズ内に定置される。502では、可変視覚部分は、エネルギー源と電気的に導通するように定置される。電気的導通は、例えば、可変視覚部分に組み込まれた回路により、又はレンズ材料に直接インクジェット、又は他の方法で形成された通路により、達成され得る。
【0072】
503では、エネルギー源は、眼科用レンズ内に組み込まれた可変視覚部分を通じて向けられる。エネルギーは、例えば、電荷を伝導することができる電気回路によって向けることができる。504では、可変視覚部分は、レンズの少なくとも1つの光学品質を変更する。」
(3)「【0075】
図6を参照すると、本発明のいくつかの実施形態で使用し得るコントローラ600を図示する。コントローラ600は、通信装置620に結合する、1つ以上のプロセッサ構成要素を含み得るプロセッサ610を含む。いくつかの実施形態では、コントローラ600を使用して、眼科用レンズ内に定置されるエネルギー源にエネルギーを伝送することができる。
【0076】
コントローラは、通信チャネルを介してエネルギーを通信するように構成された通信装置に結合した1つ以上のプロセッサを含むことができる。通信装置は、可変視覚挿入物の眼科用レンズ内への定置、及び可変視覚装置を操作するための命令の伝送の1つ以上を電気的に制御するために使用され得る。
【0077】
また通信装置620を使用して、例えば、1つ以上のコントローラ装置又は製造機器構成要素と通信してもよい。
【0078】
プロセッサ610は、記憶装置630とも通信する。記憶装置630は、磁気記憶装置(例えば、磁気テープ及びハードディスクドライブ)、光学式記憶装置、及び/又はランダム・アクセス・メモリ(RAM)装置及びリード・オンリー・メモリ(ROM)装置等の半導体記憶装置を含む、任意の適切な情報記憶装置を備えてもよい。
【0079】
記憶装置630は、プロセッサ610を制御するためのプログラム640を記録することができる。プロセッサ610は、プログラム640の指示を実行し、それによって、本発明に従って作動する。例えば、プロセッサ610は、可変視覚挿入物の定置、処理装置の定置などを表わす情報を受信し得る。記憶装置630はまた、1つ以上のデータベース650、660内の眼科関連データを記憶することもできる。データベース650、660は、可変視覚レンズへの、又は可変視覚レンズからのエネルギーを制御するための特定の制御論理を含み得る。」
第6 対比・判断
1 本願発明1
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「媒体挿入物」は、その文言からみて、本願発明1の「メディアインサート」に相当する。
そして、引用発明は、媒体挿入物に含まれる「マイクロコントローラ」に「フィールドプログラマブル装置」を使用していることから、引用発明の「マイクロコントローラ」を含む「媒体挿入物」は、「プログラム可能」であると理解される。さらに、引用発明は、「マイクロコントローラを含む媒体挿入物」が、眼科用レンズを構成する「ヒドロゲルレンズ材料中に埋め込まれて」いることから、引用発明の「眼科用レンズ」は、本願発明1の「プログラム可能なメディアインサートを備えた眼用レンズ」に相当するといえる。
イ 引用発明は、「レンズの形成後」に、「ファームウェアのプログラミングを特定の患者の必要性に適合したもの」とする方法であるから、引用発明が「ファームウェアのプログラミングを特定の患者の必要性に適合したもの」とする工程の前に「レンズの形成」を行う工程を備えていることは、技術的にみて自明である。そして、引用発明において、患者が装着する「レンズ」は、「マイクロコントローラを含む媒体挿入物」が、「ヒドロゲルレンズ材料中に埋め込まれて」いるものであるから、「レンズの形成」を行う工程は、当然、「マイクロコントローラを含む媒体挿入物」を「ヒドロゲルレンズ材料中に埋め込」む工程を含んでいるといえる。
したがって、引用発明の「レンズの形成」を行う工程は、本願発明1の「前記プログラム可能なメディアインサートを前記眼用レンズに組み入れるステップ」を具備している。
ウ 引用発明は、「実行可能なコードをマイクロコントローラ内に無線で送信」することにより、「マイクロコントローラ」により実行される「ファームウェアのプログラミングを特定の患者の必要性に適合したもの」とするものであって、それにより、「マイクロコントローラが、眼科用レンズ内の液体メニスカスレンズ部分の状態を変化させる命令を発し、液体メニスカスレンズ部分の状態の変化によってレンズの光学品質が変化するもの」である。そうすると、引用発明は、「実行可能なコードをマイクロコントローラ内に無線で送信」することにより、「眼科用レンズ」の機能性が装着者のためにカスタマイズされるといえる。また、引用発明の「実行可能なコード」は、「マイクロコントローラ」により実行される「ファームウェアのプログラミング」を介して、引用発明の「眼科用レンズ」の機能性を画定しているといえる。そして、引用発明の「実行可能なコード」は、「マイクロコントローラ」により実行される「ファームウェアのプログラミングを特定の患者の必要性に適合したもの」とするものであるから、ファームウェアのプログラミングを特定の患者の必要性に適合したものとするためのパラメータを含むことは明らかである。
したがって、引用発明の「実行可能なコード」は、本願発明1の「前記眼用レンズの機能性を画定するため一連のプログラミングパラメータ」を含有するものであり、引用発明の「マイクロコントローラを含む媒体挿入物」は、「実行可能なコード」によって「プログラムされるもの」であり、その結果、眼科用レンズの機能性は「装着者のためにカスタマイズされるもの」といえる。
エ 引用発明の「マイクロコントローラが眼科用レンズ内に埋め込まれた状態で、実行可能なコードをマイクロコントローラ内に無線で送信」する工程は、マイクロコントローラを眼科用レンズ内に埋め込んだ後に実施される工程であるといえる。また、引用発明は、「実行可能なコードをマイクロコントローラ内に無線で送信」することにより、「マイクロコントローラ」により実行される「ファームウェアのプログラミングを特定の患者の必要性に適合したもの」とするものであるから、引用発明の「実行可能なコード」は、「マイクロコントローラ」を含む「媒体挿入物」に送信される、一連のプログラミングパラメータであるといえる。
したがって、引用発明の「マイクロコントローラが眼科用レンズ内に埋め込まれた状態で、実行可能なコードをマイクロコントローラ内に無線で送信」する工程は、本願発明1の「前記プログラム可能なメディアインサートを前記眼用レンズに組み入れた後で、前記一連のプログラミングパラメータを前記プログラム可能なメディアインサートに送信するステップ」に相当する。
オ さらに、引用発明の「内部に組み込んだマイクロコントローラを備える眼科用レンズを製造するための方法」は、「マイクロコントローラが眼科用レンズ内に埋め込まれた状態で、実行可能なコードをマイクロコントローラ内に無線で送信」する工程により、「マイクロコントローラを含む媒体挿入物」をプログラミングする方法であるといえる。
したがって、引用発明の「内部に組み込んだマイクロコントローラを備える眼科用レンズを製造するための方法」は、本願発明1の「プログラム可能なメディアインサートを備えた眼用レンズをプログラムする方法」に相当する。
カ 以上より、本願発明1と引用発明とは、
「プログラム可能なメディアインサートを備えた眼用レンズをプログラムする方法であって、
前記プログラム可能なメディアインサートを前記眼用レンズに組み入れるステップであって、前記プログラム可能なメディアインサートは、前記眼用レンズの機能性を画定するため一連のプログラミングパラメータによりプログラムされるものであって、前記機能性は、装着者のためにカスタマイズされるものである、ステップと、
前記プログラム可能なメディアインサートを前記眼用レンズに組み入れた後で、前記一連のプログラミングパラメータを前記プログラム可能なメディアインサートに送信するステップと、を含む、方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本願発明1は、「前記眼用レンズを密封容器内に包装するステップであって、前記眼用レンズが前記密封容器内にあり、前記一連のプログラミングパラメータを前記プログラム可能なメディアインサートに送信するプログラミング装置の凹部内に前記密封容器が収まることで、前記プログラミング装置および前記密封容器が互いに位置合わせされている際に、前記一連のプログラミングパラメータに関連する前記密封容器上のコードが前記プログラミング装置のスキャニングデバイスで読み取られて、前記一連のプログラミングパラメータが前記プログラミング装置から前記プログラム可能なメディアインサートに送信される、ステップ」を含むのに対し、引用発明は、そのようなステップを含まない点。
(2)判断
上記[相違点]について検討すると、一連のプログラミングパラメータをプログラミング装置からプログラム可能なメディアインサートに送信する工程を、密封容器を位置合わせする凹部及び密封容器上のコードを読み取るスキャニングデバイスを備えたプログラミング装置を用いて行うことは、引用文献1~6及び引用文献A、Bには記載されておらず、当業者にとって自明であったともいえない。
(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものということはできない。
2 本願発明2~4
本願発明2~4は、本願発明1と同じ、「前記眼用レンズを密封容器内に包装するステップであって、前記眼用レンズが前記密封容器内にあり、前記一連のプログラミングパラメータを前記プログラム可能なメディアインサートに送信するプログラミング装置の凹部内に前記密封容器が収まることで、前記プログラミング装置および前記密封容器が互いに位置合わせされている際に、前記一連のプログラミングパラメータに関連する前記密封容器上のコードが前記プログラミング装置のスキャニングデバイスで読み取られて、前記一連のプログラミングパラメータが前記プログラミング装置から前記プログラム可能なメディアインサートに送信される、ステップ」を含んでいる。そうすると、本願発明2~4も、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、容易に発明をすることができたものということはできない。
3 以上のとおり、本願発明1~4は、当業者であっても、容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないということはできない。
第7 原査定についての判断
原査定拒絶理由の理由2(サポート要件)、理由3(実施可能要件)、理由4(明確性)は、本件補正によって特許請求の範囲の記載が補正されたことにより、いずれも解消された。
また、原査定拒絶理由の理由6(進歩性)について検討すると、前記第5の3(1)~(3)に基づけば、引用文献Aには、ハード又はソフトコンタクトレンズを提供する方法が記載されているといえるものの、前記[相違点]に係る本願発明1の構成は記載されていない。そうすると、本願発明1と引用発明Aに記載された発明とを対比すると、少なくとも、前記[相違点]と同じ点で相違することとなり、当該[相違点]に係る本願発明1の構成は、前記第6の1(2)及び(3)に記載したとおり、当業者であっても容易に想到し得たものということはできない。したがって、原査定拒絶理由6(進歩性)も、解消された。
第8 当審拒絶理由について
当審拒絶理由の理由1(明確性)は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないというものであった。しかし、本件補正によって特許請求の範囲の記載が補正されたことにより、明確なものとなった。よって、当該拒絶理由は解消された。
また、当審拒絶理由の理由2(進歩性)についても、前記第6において検討したとおり、本件補正後の本願発明1~4は、いずれも、当業者であっても、引用発明及び周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたということはできないから、当該拒絶理由も解消された。
第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-018116