特許拒絶査定不服審判
2017-016522
蛍光光源装置
- 審判番号
- 2017-016522
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-559801外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年11月07日
- 審決日
- 2019年02月04日
- 公報発行日
- 2019年03月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (H01S) / P18 .537-WY (H01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-559801「蛍光光源装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年8月7日国際公開、WO2014/119783、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)2月3日(優先権主張2013年(平成25年)2月4日、日本国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年9月8日付け :拒絶理由通知書
平成28年12月21日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年3月31日付け :拒絶理由通知書(最後)
平成29年6月2日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年9月7日付け :補正の却下の決定、拒絶査定(同年同月12日送達。以下、「原査定」という。)
平成29年11月7日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成29年12月18日付け:前置報告書
平成30年3月15日 :上申書の提出
平成30年10月24日付け:当審拒絶理由通知書
平成30年12月18日 :意見書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定の概要は、特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明は、以下の引用文献AないしEに基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
引用文献等一覧
A.特開2012-109400号公報
B.特開2007-103901号公報
C.特表2011-515848号公報
D.特開2012-182376号公報
E.特開2006-024615号公報
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は、次のとおりである。
1 特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない。
2 特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていない。
3 特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明は、以下の引用文献1ないし5に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2012-109400号公報(原査定時の引用文献A)
2.特開2012-182376号公報(原査定時の引用文献D)
3.特開2007-103901号公報(原査定時の引用文献B)
4.特表2011-515848号公報(原査定時の引用文献C)
5.特開2011-154995号公報(新たに引用した文献)
第4 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、平成30年12月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される、次のとおりの発明である。
「【請求項1】
励起光によって励起される蛍光体による波長変換部材を備えてなる蛍光光源装置であって、
前記波長変換部材は、その表面が励起光受光面とされていると共に蛍光出射面とされており、当該波長変換部材の裏面に光反射膜が設けられており、
前記波長変換部材の表面に、略錐状の凸部が周期的に配列されてなる周期構造が形成されており、当該凸部の高さは300nm以上500nm以下であり、当該周期構造における周期に対する凸部の高さの比であるアスペクト比が0.5~0.8であり、
前記周期構造における周期が前記蛍光体から放射される蛍光の回折が発生する範囲の大きさであることを特徴とする蛍光光源装置。
【請求項2】
前記光反射膜が銀からなることを特徴とする請求項1に記載の蛍光光源装置。
【請求項3】
前記波長変換部材は、表面に前記周期構造を有する、蛍光体が含有されてなる蛍光部材を備えてなり、当該蛍光部材の表面が前記励起光受光面とされていると共に前記蛍光出射面とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蛍光光源装置。
【請求項4】
前記波長変換部材は、蛍光体が含有されてなる蛍光部材と、この蛍光部材上に形成された、表面に前記周期構造を有する周期構造体層とを備えてなり、当該周期構造体層の表面が前記励起光受光面とされていると共に前記蛍光出射面とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蛍光光源装置。
【請求項5】
前記周期構造体層の屈折率は、前記蛍光部材の屈折率の値以上であることを特徴とする請求項4に記載の蛍光光源装置。」
第5 引用文献
1 引用文献1について
引用文献1には、図とともに次の事項が記載されている。(下線は当審の付与による。以下同じ。)
(1)「所定波長の励起光が照射される光照射面を備え、上記励起光に対して透光性を有する透光性基板と、
上記透光性基板の上記光照射面に対向する面の側に配置され、上記透光性基板を透過した励起光が照射されることにより蛍光を発生する発光部とを備え、
上記透光性基板は、
上記発光部から発生する熱を受け取って拡散させる熱伝導性を有し、
上記光照射面の側に、複数の凸部および複数の凹部の少なくとも一方が、上記所定波長の励起光の上記光照射面における反射を低減させることが可能な間隔で配列する凹凸構造が形成されていることを特徴とする発光素子。」(【請求項1】)
(2)「上記凸部の付け根から先端までの長さである凸部高さが、3000nm以下であることを特徴とする請求項1から13までのいずれか1項に記載の発光素子。」(【請求項14】)
(3)「上記反射を低減させることが可能な間隔は、5nm以上、3000nm以下であることを特徴とする請求項1から14までのいずれか1項に記載の発光素子。」(【請求項15】)
(4)「請求項1から15までのいずれか1項に記載の発光素子を備えた発光装置であって、
上記所定波長の励起光を、上記透光性基板の光照射面に照射する励起光源を備えていることを特徴とする発光装置。」(【請求項16】)
(5)「上記励起光源は、レーザ光源であることを特徴とする請求項16に記載の発光装置。」(【請求項18】)
(6)「上記発光部から発生した蛍光を反射する光反射凹面を有する反射鏡を備え
上記発光部が、上記反射鏡に形成された挿通孔の内部に挿通され、
上記発光部に照射される励起光の一部が、上記発光部の内部を透過することを特徴とする請求項16から19までのいずれか1項に記載の発光装置。」(【請求項20】)
(7)「本実施形態では、煩雑さを避けるため、紙面に沿う方向の間隔dは、紙面に対して垂直な方向の間隔と同一であり、複数の突起PJ(または複数の微細孔PH)が、光照射面SUF1上で一定の周期性をもってドットマトリクス状に配列しているものとして説明する。しかしながら、各突起PJの配列はこれに限られず、例えば、紙面に沿う方向の間隔dが、紙面に対して垂直な方向の間隔と異なっていても良い。」(段落【0114】)
(8)「次に、各突起PJの形状について説明する。図1に示す例では、突起PJは、円錐、もしくは、角錐状の錐形状となっている。しかしながら、各突起PJの形状はこれに限られず、様々な形状が考えられる。例えば、このような形状として、釣鐘状(またはトロイデ(鐘状火山)状)、コニーデ(成層火山)状などを例示することができる。」(段落【0118】)
(9)「一方、透光性基板1として、サファイアやマグネシア、窒化ガリウム、スピネルを採用した場合の屈折率nは、凡そ1.5~2程度の範囲内にある。そこで、想定される、発光部2および透光性基板1の屈折率nが、共に1.5~2.0程度であるとすると、一方の屈折率nが1.5であるとき、屈折率差Δnが0.35(すなわち、他方の屈折率nが1.85)であればその界面での反射率Rは1%となる。」(段落【0147】)
(10)「また、上記蛍光体は、黄色の蛍光体、または、緑色の蛍光体と赤色の蛍光体との混合物である。黄色の蛍光体とは、560nm以上590nm以下の波長範囲にピーク波長を有する蛍光を発生する蛍光体である。緑色の蛍光体とは、510nm以上560nm以下の波長範囲にピーク波長を有する蛍光を発生する蛍光体である。赤色の蛍光体とは、600nm以上680nm以下の波長範囲にピーク波長を有する蛍光を発生する蛍光体である。」(段落【0156】)
(11)「半導体レーザは、1チップに1つの発光点を有するものであり、例えば、405nm(青紫色)のレーザ光を発振し、出力1.0W、動作電圧5V、電流0.6Aのものであり、直径5.6mmのパッケージに封入されているものである。半導体レーザが発振するレーザ光は、405nmに限定されず、350nm以上470nm以下の波長範囲にピーク波長を有するレーザ光であればよい。」(段落【0189】)
(12)「図4に示すように、反射型発光装置30は、上述した透光性基板1、上述した発光部2、上述したレーザ光源3、ハーフパラボラ型反射鏡4h、熱伝導部材4p、および上述した光学部材8を備える。」(段落【0213】)
(13)図4において、発光部2から発光される蛍光は、透光性部材1の光照射面から出射されることが示されている。
(14)段落【0154】の【表1】に透光性部材1の屈折率として1.785が、発光部2の屈折率として1.760が示されており、0.025程度の差で、透光性部材の屈折率の方が発光部の屈折率よりも大きくされている。
これらの記載及び図等に示された事項から、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。(以下「引用文献1発明」という。)
「350nm以上470nm以下の波長範囲にピーク波長を有する励起光が照射される光照射面の側に、高さが3000nm以下の錐形状の凸部が5nm以上3000nm以下の間隔で一定の周期性をもって配列する凹凸構造が形成されている光照射面を備え、1.5~2.0程度の屈折率を有する透光性基板、
透光性基板の光照射面に対向する面の側に配置され、透光性基板を透過した励起光が照射されることにより、560nm以上590nm以下、510nm以上560nm以下又は600nm以上680nmの波長範囲にピーク波長を有する蛍光を発生する発光部であって、蛍光を発生する発光部、
励起光を透光性基板の光照射面に照射する励起光源であるレーザ光源、
発光部から発生し、光性部材の光照射面から出射される蛍光を反射する反射鏡を備え、透光性基板の屈折率は0.025程度の差で蛍光を発生する発光部の屈折率より大きい、発光装置」
2 引用文献2について
引用文献2には、図とともに次の事項が記載されている。
(1)「図5は、本発明の実施例2に係る光源装置2の構成を示す図である。光源装置2は、波長変換部材の構成が上記した実施例1のものと異なる。波長変換部材20aは、レーザ入射面の一部と、光取り出し面の全面を除く表面に光反射膜28を有する。すなわち、光反射膜28は、波長変換部材20aの側面と、レーザ入射面である蛍光体層22の底面の一部を覆う。レーザ入射面において光反射膜28が形成されていない部分は波長変換部材20aにレーザ光を導入するためのレーザ入射口29である。光反射膜28は、光反射性を有する金属で構成され、例えば、Ag/Ti/Pt/Auを順次積層した多層膜により構成される。このように、波長変換部材20aの表面を光反射膜28で覆うことにより、波長変換部材20aの側面から出ようとする光は光反射膜28によって波長変換部材20aの内部側に反射されることにより、光取り出し面から取り出すことのできる光の量を増大させることが可能となり、光取り出し効率を向上させることが可能となる。また、波長変換部材20aの側面においては、光散乱および回折が生じにくいことから、側面から光を外部に放出することは危険である。本実施例のように波長変換部材20aの表面に光反射膜28を設けることにより、そのような危険な光放出がなくなり、目に対する安全性が確保される。」(段落【0035】)
(2)図5には、波長変換部材のレーザ入射口以外の部分である側面と底面の一部に光反射膜28が設けられることが示されている。
この記載及び図に示された事項から、引用文献2には、次の発明が記載されていると認められる。(以下「引用文献2発明」という。)
「レーザ光を導入するためのレーザ入射口以外の部分である側面と底面の一部に、Ag/Ti/Pt/Auを順次積層した多層膜により構成される光反射膜を有する波長変換部材を備えた、光源装置」
3 引用文献3について
引用文献3には、図とともに次の事項が記載されている。
(1)「LED素子1の光取り出し面1aに形成する微細凹凸構造の周期は、発光部3の発光層32にて発光する光のピーク波長λの1/4~100倍の範囲で適宜設定すればよく、例えば、微細凹凸構造の周期d(図3(b)参照)をλ/4~λの範囲で設定した場合には、発光部3におけるn形半導体層33からなる第1の媒質(ここでは、n形GaN系材料)の屈折率をn1、n形半導体層33に接する第2の媒質(ここでは、発光部3と波長変換部材5との間に介在しているシリコーン樹脂からなる接着層)の屈折率をn2とし、図3(b)の左右方向における第1の媒質の幅をa、第2の媒質の幅をb、TE波に対する微細凹凸構造付近での有効屈折率を<nE>とすれば、微細凹凸構造付近での有効屈折率<nE>は下記の式で表すことができる。」(段落【0046】)
(2)「また、微細凹凸構造の周期dを例えば2λ~4λの範囲で設定した場合には、波動光学的な効果、つまり、回折光を用いることにより臨界角以上の反射される光を取り出すことができ光の取り出し効率が向上する。」(段落【0051】)
これらの記載から、引用文献3には、次の発明が記載されていると認められる。(以下「引用文献3発明」という。)
「LED素子の光取り出し面に形成される微細凹凸構造であって、発光する光のピーク波長をλとして、周期dが2λ~4λの範囲で設定された微細凹凸構造」
4 引用文献4について
引用文献4には、図とともに次の事項が記載されている。
「青色LED18の側面には、窒化珪素からなる無機性の絶縁膜28が形成されている。
絶縁基板4と対向させ、青色LED14の出射光路を跨ぐ状態に、波長変換部材である蛍光体プレート30が配置されている。蛍光体プレート30は、セリウム(Ce)をドープしたYAGセラミックスからなる。蛍光体プレートの屈折率は1.83である。蛍光体プレート30の下面(光入射面)は、サンドブラストにより数μmの凹凸面に形成されている。」(段落【0023】)
これらの記載から、引用文献4には、次の発明が記載されていると認められる。(以下「引用文献4発明」という。)
「光入射面が凹凸面に形成された蛍光体プレート」
5 引用文献5について
引用文献5には、図とともに次の事項が記載されている。
(1)「<第7の実施形態>
次に、図13~図16を参照して、本発明の第7の実施形態を説明する。図13は第7の実施形態による照明装置の概略構成を示す側断面図である。図14は、第7の実施形態の照明装置に備えられる蛍光体ユニットを示す側断面図である。本実施の形態による照明装置において、図7~図9に示す第5の実施形態による照明装置と同一の部分には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。」(段落【0091】)
(2)「本実施の形態では、図13に示すように、蛍光体3表面に層状に形成された光散乱材4の外側から蛍光体3に向けてレーザ光を入射し、蛍光体3を励起して得られた蛍光を光散乱材4の表面から取り出すものである。よって、レーザ光と蛍光に対して光散乱材4の表面は無反射であることが理想的である。このため、図14に示すように、光散乱材4の表面全体には、表面反射を低減するための微小な凹凸4cが形成されている。」(段落【0102】)
(3)「凹凸4cのサイズについては、面内における隣接する任意の2つの凸部間の距離(隣接する2つの凹部間の距離)(以下、「凹凸の間隔」と称し、図14に符号pで示す)と、凸部の高さ(凹部の深さ)(図14に符号hで示す)の両方が、レーザ光および蛍光の波長よりも小さくなるように設定することが必要である。このような波長よりも小さなサイズの凹凸構造を光散乱材4の表面に形成することにより、光散乱材4の表面で光散乱材の内外の媒質(本実施形態では、それぞれガラスおよび空気)間の屈折率の変化を滑らかな変化とすることが可能となり、表面反射がほとんど生じなくなる。」(段落【0103】)
(4)「本実施の形態では、凹凸の間隔(p)は100nm程度であり、凸部の高さ(h)は150nm程度を採用している。一方、レーザ光は405nmに強い単一のピーク波長を持つスペクトルであり、蛍光は420nm~800nmの範囲に広がったブロードな波長のスペクトルである。従って、上記凹凸4cのサイズ例は、レーザ光および蛍光の波長よりも十分に小さいものとなる。」(段落【0104】)
これらの記載から、引用文献5には、次の発明が記載されていると認められる。(以下「引用文献5発明」という。)
「蛍光体表面に層状に形成され、凸部間の距離と凸部の高さの両方がレーザ光および蛍光の波長よりも小さくなるように設定された、表面反射を低減するための微小な凹凸が表面全体に形成された光散乱材の外側から蛍光体に向けてレーザ光を入射し、蛍光体を励起して得られた蛍光を光散乱材の表面から取り出す照明装置」
6 引用文献Eについて
引用文献Eには、図とともに次の事項が記載されている。
(1)「シミュレーション評価に使用したLEDチップ12’を図11に示す。図11(a)は、側方断面図であり、図11(b)は平面断面図である。評価用チップ12’は、ベアチップ12の上面および側面に被覆膜20’を形成したもので、被覆膜20’の上面には、凹凸21’が形成されて、図11(a)に示した構成となる。ベアチップ12は、上層から順に、基板12a、バッファ層12b、n-GaN層12c、n-AlGaN層12d、発光層12e、p-AlGaN層12f、p-GaN層12g、n型電極およびp型電極12hが積層されて形成されている。」(段落【0068】)
(2)「まず、被覆膜20’がサファイアと同じ屈折率(N=1.768)として、被覆膜20’の上面に、5個×5個、10個×10個、20個×20個のピラミッド状の凸部21’を形成した構成例について、凸部21’の角度θ(°)と全光束(lm)との関係をシミュレーションにより算出した。ここで、被覆膜20’の周囲には空気(N=1.0)が存在しているものとする。その結果を図12に示す。なお、角度θ(°)のパラメータは、図10(b)の高さxと幅Lとを変えることによって得られている。」(段落【0070】)
(3)「この結果より、被覆膜20’が樹脂(例えば、透光性樹脂で、ここでは、シリコーン)からなる場合でも、被覆膜20’の上面に凹凸(凸部21’)を形成することにより、光束を向上させることができることがわかった。図13の光束の極大値は、角度θが約45°となり、この角度θの値は、なぜか、臨界角(θc)の値と同じとなった。当業者による常識的な考えの範囲内において、角度θ(図10(b)参照)と、物質の屈折率によって定まる臨界角(θc)との間の値が一致する理由はわからないのが実情であるが、本願発明者の検討によって、断面三角の凸部を形成する場合、その凸部の角度θは、臨界角θcとほぼ一致させること(例えば、臨界角θc±5°)が好ましいことが見出された。」(段落【0076】)
これらの記載から、引用文献Eには、次の事項が記載されていると認められる。
「ベアチップの上面および側面に被覆膜を形成し、被覆膜の上面にピラミッド状の凸部を形成したLEDチップにおいて、光束の極大値は、凸部の角度θが約45°となること」
第6 当審拒絶理由
1 特許法第36条第6項第2号について
当審拒絶理由通知書において通知した特許法第36条第6項第2号についての拒絶理由の概要は、請求項1ないし5の記載について、請求項1における「ピーク波長についてブラッグの条件を満たす大きさ」という記載について、波長変換部材の蛍光のピーク波長及び屈折率が与えられたとして、その周期構造の周期についてどの範囲までブラッグ条件を満たす範囲とされるのか明確でないというものである。
平成30年12月18日付け手続補正書による補正によって、請求項1における上記記載は「回折が発生する範囲の大きさ」に補正された。
したがって、当該拒絶理由は解消された。
2 特許法第36条第6項第1号について
当審拒絶理由通知書において通知した特許法第36条第6項第1号についての拒絶理由の概要は、請求項1ないし5について、発明の詳細な説明に記載された場合以外でも、構造における凸部の高さは500nm以下、アスペクト比は0.2~0.8、周期は蛍光のピーク波長についてブラッグの条件を満たすという条件によって、波長変換部材の表面における励起光の反射が抑制されると共に、波長変換部材の内部において生成された蛍光を高い効率で外部に出射することができるか不明であり、例えば、この条件によると、周期300nmと凸部の高さ60~240nm、周期1200nmと凸部の高さ240~500nmの場合なども含まれ得るが、このような場合における波長変換部材の光の反射率及び取り出し効率は不明であるというものである。
平成30年12月18日付け手続補正書による補正によって、請求項1において、凸部の高さについて300nm以上500nm以下とされて下限の限定が加えられ、周期構造における周期に対する凸部の高さの比であるアスペクト比が0.5~0.8とされて数値範囲の限定が加えられた。このような補正により、請求項1ないし5について、周期は、実質上、375(=300/0.8)nm~1000(=500/0.5)nmの範囲に限定されることとなり、このような限定された範囲については、発明の詳細な説明に記載された周期が600nmである場合の例から、本願発明の効果が得られると当業者は理解でき、サポートされていると考えられる。
したがって、当該拒絶理由は解消された。
3 特許法第29条第2項について
(1)対比・判断
ア 本願発明1について
(ア)対比
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。請求項2ないし5に係る発明を「本願発明2」ないし「本願発明5」という。)と引用文献1発明を対比する。
引用文献1発明の「励起光」、「光照射面」、「錐形状」、「凸部」、「発光装置」は、本願発明1の「励起光」、「励起光受光面」、「略錐状」、「凸部」、「蛍光光源装置」にそれぞれ相当する。また、引用文献1発明の「透光性基板」及び「蛍光を発生する発光部」を合わせたものは、本願発明1の「蛍光体による波長変換部材」に相当する。
引用文献1発明においても、透光性基板の光照射面は、励起光が照射されるとともに、発生する蛍光を出射する蛍光出射面となっている。引用文献1発明においても、凸部は一定の周期性をもって配列されており、凸部は周期的に配列されているといえる。
したがって、本願発明1と引用文献1発明は、以下の相違点で相違し、他の点で一致している。
[相違点1]
本願発明1においては、「当該波長変換部材の裏面に光反射膜が設けられて」いるのに対し、引用文献1発明においては、発光部の裏面に光反射膜が設けられていない点。
[相違点2]
本願発明1においては、「当該凸部の高さは300nm以上500nm以下であり、当該周期構造における周期に対する凸部の高さの比であるアスペクト比が0.5~0.8であり」、「前記周期構造における周期が前記蛍光体から放射される蛍光の回折が発生する範囲の大きさである」のに対し、引用文献1発明においては、凸部の高さは3000nm以下であり、その間隔が5nm以上3000nm以下とされており、蛍光の回折が発生することも不明である点。
(イ)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2を先に検討する。
引用文献1の段落【0112】に、「図1に示すように、本実施形態の透光性基板1では、微細構造gを構成する複数の突起PJは、レーザ光Lの波長よりも小さい間隔dで光照射面SUF1に沿って密に配列されているものとして説明するが、ナノメートルオーダの間隔であれば、レーザ光Lの波長よりも大きい間隔で光照射面SUF1に沿って密に配列されていても良い。例えば、波長が400nm程度の光に対しては、500nm程度の間隔でも反射率は低下する。以上の構成によれば、光照射面SUF1に対するレーザ光Lの反射率が低下する。」と記載されており、引用文献5発明は、「蛍光体表面に層状に形成され、凸部間の距離と凸部の高さの両方がレーザ光および蛍光の波長よりも小さくなるように設定された、表面反射を低減するための微小な凹凸が表面全体に形成された光散乱材の外側から蛍光体に向けてレーザ光を入射し、蛍光体を励起して得られた蛍光を光散乱材の表面から取り出す照明装置」であり、引用文献3発明は、「LED素子の光取り出し面に形成される微細凹凸構造であって、発光する光のピーク波長をλとして、周期dが2λ~4λの範囲で設定された微細凹凸構造」であるが、これらは、蛍光体の表面に形成された凸部の高さを300nm以上500nm以下とし、周期構造における周期に対する凸部の高さの比であるアスペクト比を0.5~0.8とし、周期構造における周期が蛍光体から放射される蛍光の回折が発生する範囲の大きさであるという上記相違点2に係る構成を具体的に示すものではない。
また、他の引用文献にも、上記相違点2に係る構成が記載されたものはない。
すなわち、波長変換部材への励起光の取り込みおよび波長変換部材からの蛍光の取り出しの両方の向上を図って、上記相違点2に係る構成を備えたものとすることはいずれの引用文献にも記載されておらず、引用文献1発明においてかかる構成を備えたものとすることが当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって、当該拒絶理由は解消された。
イ 本願発明2ないし5
本願発明2ないし5は、請求項1に従属する請求項に係るものであり、本願発明1の全ての構成を含むものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献1ないし5に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
第7 原査定の理由
本願発明1と引用文献1発明(引用文献1は、原査定時の引用文献Aである。)を対比したときの相違点は、上記第6の3(1)ア(ア)に記載したとおりである。
そして、当該相違点についての判断は、上記第6の3(1)ア(イ)に記載したとおりであって、原査定時の引用文献Eも含め、上記第6の3(1)ア(ア)の相違点2に係る構成を備えたものとすることはいずれの引用文献にも記載されておらず、引用文献1発明においてかかる構成を備えたものとすることが当業者にとって容易であるとはいえない。
また、本願発明2ないし5は、請求項1に従属する請求項に係るものであり、本願発明1の全ての構成を含むものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者が容易に発明できものであるとはいえない。
したがって、本願発明1ないし5は、原査定時の引用文献AないしEに基づいて容易に発明できたものではないから、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-016522