意匠拒絶査定不服審判
2017-014488
自動車用タイヤ
- 審判番号
- 2017-014488
- 法域
- 意匠
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 意願2016-026250
- 登録番号
- 意匠登録第1606545号(D1606545)
- 請求日
- 2017年09月30日
- 審決日
- 2018年03月29日
- 公報発行日
- 2018年06月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】東洋ゴム工業株式会社
- 【請求人代理人】藤本 昇
- 【請求人代理人】野村 慎一
- 【請求人代理人】石井 隆明
- 審判長/審判官
- 審判長 斉藤 孝恵
- 審判官 江塚 尚弘
- 審判官 竹下 寛
- 分類
- D18 .113-WY (G2-9)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 意匠法3条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 意匠法第3条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
意願2016- 26250「自動車用タイヤ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,平成28年(2016年)12月2日の意匠登録出願であって,平成29年3月10日に斜視図を変更する手続補正書が提出され,平成29年4月6日付けの拒絶理由の通知に対し,平成29年5月24日に意見書が提出されたが,平成29年6月26日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,平成29年9月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
第2 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり,その意匠は,意匠に係る物品を「自動車用タイヤ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を,「実線であらわした部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。
第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は,本願意匠は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する,というものである。
引用意匠は,欧州連合知的財産庁が2016年9月29日に発行した欧州共同体意匠公報(2016/185)に記載された登録番号003336551-0001の「自動車用タイヤ(英語表記:Tyres for automobiles)」の意匠(URL:https://euipo.europa.eu/eSearch/#details/designs/003336551-0001)であり,その形態は,同公報に記載されたとおりのものであり,引用意匠において本願部分と対比,判断する部分を,本願部分に相当する引用意匠の部分(以下「引用部分」という。)としたものである(別紙第2参照)。
第4 対比
1.意匠に係る物品の対比
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも「自動車用タイヤ」であるといえるから,一致するものである。
2.本願部分と引用部分の用途及び機能の対比
本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は,いずれも自動車の重量を支え,路面からの衝撃を吸収するために用いられるタイヤの接地面部分であり,自動車の発進,加速,減速及び制動時に駆動力や制動力を路面に伝える部分であるから,用途及び機能が一致するものである。
3.両部分の位置,大きさ及び範囲の対比
両部分は,いずれも全体が環状体をなすタイヤの,トレッド部及びその左右に設けられたショルダー部であるから,位置,大きさ及び範囲が一致するものである。
4.両部分の形態の対比
両部分の形態を対比するにあたり,引用意匠の図面における図の表示を本願意匠の図面に合わせることとし,引用意匠の図「0001.1」を「正面図」とし,引用意匠の図「0001.3」を「右側面図」とし,その他の図面もこれに準じて表されているものとする。
また,両部分におけるトレッド部は,周方向に施した3本の断面視略凹状の縦溝(以下「凹溝」という。)で4つの区画に分割されているものであるが,この分割されている各区画について,トレッド部の左右両端の区画を「左右ショルダー区画」,その内側の左右の区画を「左右内側区画」として以下表記することとする。
以上を踏まえ,両部分の形態を対比すると,両部分の形態には,主として以下の共通点及び相違点が認められる。
(1)両部分の形態の共通点
(共通点1)両部分は,部分全体の態様が,トレッド部の中央部分を平面状の外周部となるように形成し,その平面状の外周部の左右縁部分から左右ショルダー部にかけて正面視略円弧状に湾曲した形状の外周部としている点で共通する。
(共通点2)両部分は,トレッド部表面部分の態様が,3本の凹溝により,正面左から左ショルダー区画,左内側区画,右内側区画,右ショルダー区画の4つの区画に分割している点で共通する。
(共通点3-1)両部分は,左ショルダー区画の態様について,該区画の右辺に断面視略円弧状の面取りを周方向に施し,正面視略平行四辺形状のブロック(以下「左ショルダーブロック」という。)を,タイヤ周方向に上下に連続して並設した構成とし,右ショルダー区画の態様について,左ショルダー区画部とほぼ点対称の形態である点で共通する。
(共通点3-2)両部分は,左ショルダーブロックの形態について,上辺を区画の左端部から右端部に向かって僅かに下方に湾曲した形状とし,下辺を上辺と同様に湾曲させその右側端部付近をさらに下方に折曲させた形状とし,左辺及び右辺を垂直な直線状としたものであって,該ブロックの右辺中央付近から左辺に向かって,ショルダーブロックの上辺と同様な形状の細いサイピングを,ショルダーブロック横幅の約7/8の位置まで形成している点,及び右ショルダー区画における右ショルダーブロックの形態について,左ショルダーブロックとほぼ点対称の形態である点で共通する。
(共通点3-3)両部分は,左ショルダー区画を構成する上下に配した2個一組の左ショルダーブロック(以下「左ショルダーブロック群」という。)における角部の形態について,上部ショルダーブロックの左上角部及び下部ショルダーブロックの左下角部に,正面視略小三角形状のC面取りを施している点,及び右ショルダー区画を構成する右ショルダーブロック群の形態について,左ショルダーブロック群とほぼ点対称の形態である点で共通する。
(共通点4)両部分は,左内側区画の態様について,該区画の左右辺に断面視略円弧状の面取りを周方向に施し,左ショルダーブロック群における下部ショルダーブロックの上辺を右方向に延長した位置に,右下がりで先細りの略円弧状のサイピングと,そのサイピングの左辺から約半分の位置にまでサイピングの上方側に形成された,正面視略細幅三角形状の切り欠き部からなる下方に湾曲した細溝(以下「左内側区画傾斜溝」という。)を,左ショルダーブロック群分の間隔で,左内側区画左辺端部から右辺近傍にかけて形成している点,及び右内側区画の形態について,左内側区画とほぼ点対称の形態である点で共通する。
(2)両部分の形態の相違点
本願部分の内側区画傾斜溝の上下中間部分に形成された溝部の形態が,左内側区画においては,左辺に略小三角形状の切り欠き部を形成し,この切り欠き部内側から右辺にかけて,略逆「へ」の字状のサイピングを形成し,右内側区画においても,左内側区画とほぼ点対称の形態のサイピングを形成しているのに対し,引用部分の左内側区画傾斜溝の上下中間部分に形成された溝部の形態が,左内側区画においては,左辺から右辺にかけて,略逆「へ」の字状の細溝を漸次溝幅が先細りとなるように形成し,右内側区画においても,左内側区画とほぼ点対称の形態の細溝を形成している点で,両意匠は相違する。
第5 判断
1.意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は,一致するものであるから同一である。
2.両部分の用途及び機能の類否判断
両部分の用途及び機能は,一致するものであるから同一である。
3.両部分の位置,大きさ及び範囲の評価
両部分の位置,大きさ及び範囲は,物品全体の形態の中における位置,大きさ及び範囲が一致するものであるから,同一である。
4.両部分の形態の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品の需要者は,主な使用者である一般ドライバーに加え,自動車メーカーのタイヤ購入担当者やタイヤ販売業者等の取引者もその需要者となるため,タイヤ全体のデザイン面の美しさに加えて,タイヤの駆動力,制動力,操縦性,安定性等に大きく影響するタイヤ表面に形成された縦溝及び横溝の形態を特に注視して観察するといえる。
(1)両部分の形態の共通点
(共通点1)は,部分全体の態様に係るものではあるが,両部分の機能から通常取り得る形態であるから,部分全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点2)のトレッド部を3本の凹溝部で分割した構成については,トレッド部に複数の凹溝部を設けることは,濡れた路面を走行する際の排水に必要であり,タイヤの形態にとってみれば不可避なものであるから,この(共通点2)が部分全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点3-1)及び(共通点3-2)の左右ショルダーブロックからなる左右ショルダー区画の態様については,この自動車用タイヤの分野において正面視略平行四辺形状のショルダーブロックからなるショルダー区画の態様は既に見られるもの(例えば,意匠登録第1527618号の「自動車用タイヤ」の意匠)であって特段特徴のないものであるから,これらの共通点が部分全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点3-3)の左右ショルダーブロック群の角部における面取りについては,この物品全体の大きさに照らすと,ごく小さい部分におけるありふれた形状の面取りにすぎないものであるから,この(共通点3-3)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点4)の内側区画傾斜溝を形成した左右内側区画の態様については,この種物品分野において左右内側区画に,サイピングと正面視略細幅三角形状の切り欠き部からなる内側区画傾斜溝を形成した形態は既に見られるもの(例えば,意匠登録第1468641号の「自動車用タイヤ」の意匠)であって,特段特徴のないものであるから,この(共通点4)が部分全体の美感に与える影響は小さい。
(2)両部分の形態の相違点
内側区画傾斜溝の上下中間部分に形成された溝部の形態については,本願部分の内側区画が,サイピングを施した帯状のリブ列からなるのに対して,引用部分の内側区画は,細溝を形成しているため上下に連続するブロック列の構成となっており,タイヤ表面に形成された縦溝及び横溝の形態を特に注視して観察する自動車用タイヤの需要者にとって,接地面に残った水を拭い取るためのサイピングと,タイヤの回転による遠心力を利用して横方向に排水するための細溝では,全く別異の印象を与えるものであるから,帯状のリブ列からなる本願部分と,ブロック列からなる引用部分の構成態様の相違と相俟って,該部位の形態の相違は需要者に異なる美感を与えるものである。
5.両意匠の類否判断
両部分の形態における各共通点及び相違点についての個別評価に基づき,部分意匠全体として両部分の全ての共通点及び相違点を総合的に観察した場合,両部分は,左右内側区画の態様において,その美感に大きな差異があり,部分全体及び左右内側区画以外の形態が共通することを考慮しても,意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。
したがって,両意匠は,意匠に係る物品,両部分の用途及び機能,並びに両部分の位置,大きさ及び範囲が同一であるが,両部分の形態において,相違点が共通点を凌駕し,部分意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものである。
第6 むすび
以上のとおり,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
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