特許拒絶査定不服審判
2017-014038
火花点火機関及び、その運転方法
- 審判番号
- 2017-014038
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-237287
- 請求日
- 2017年09月22日
- 審決日
- 2018年09月03日
- 公報発行日
- 2019年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ゲーエー ジェンバッハー ゲーエムベーハー アンド コー オーゲー
- 【請求人代理人】荒川 聡志
- 【請求人代理人】小倉 博
- 【請求人代理人】黒川 俊久
- 【請求人代理人】田中 拓人
- 審判長/審判官
- 審判長 冨岡 和人
- 審判官 水野 治彦
- 審判官 金澤 俊郎
- 分類
- P18 .121-WZ (F02D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-237287「火花点火機関及び、その運転方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年8月4日出願公開、特開2016-138546〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年12月4日(パリ条約による優先権主張2014年12月19日(AT)オーストリア国)の出願であって、その手続は以下の通りである。
平成28年10月4日(発送日):拒絶理由通知書
平成28年12月1日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年6月6日(発送日) :拒絶査定
平成29年9月22日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成30年5月8日(発送日) :拒絶理由通知書(以下、「当審拒絶理由」という。)
平成30年7月18日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明は、平成30年7月18日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「火花点火機関の運転方法であって、前記機関は、少なくとも一つのシリンダと、前記少なくとも一つのシリンダ内で可動なピストンと、前記少なくとも一つのシリンダに接続された少なくとも一つの予燃チャンバとを有しており、前記方法が、
第1の燃料と空気とを略均質に混合することによって可燃性混合物を1.6から2.9の間のラムダ値で形成し、前記可燃性混合物を吸気行程中に前記少なくとも一つのシリンダ内へ導入するステップと、
前記可燃性混合物を前記ピストンによって圧縮行程中に圧縮することで、前記可燃性混合物の一部を前記予燃チャンバ内に導入するステップと、
前記吸気行程中および/または前記圧縮行程中に、燃焼の開始前の導入時期に第2の燃料を前記予燃チャンバ内に導入するステップであって、前記第2の燃料は、前記第1の燃料と同じまたは異なる化学組成および/または濃度であるステップと、
前記予燃チャンバ内で火花点火させるステップと、
前記少なくとも一つのシリンダ内の燃焼期間を測定するステップと、
を含む方法において、
前記燃焼期間が前記ピストンのクランク角度として測定され、
測定された前記燃焼期間に基づいて、前記予燃チャンバの点火時期が、高い燃焼効率が提供される所望の燃焼期間が達成できるように選択されることを特徴とする火花点火機関の運転方法。」
第3 当審における拒絶の理由
当審が通知した拒絶理由のうちの理由3は、次のとおりのものである。
(進歩性)本願の下記の請求項1ないし9、12及び13に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1 特開2002-276519号公報
2 特開平7-180645号公報
3 特開2005-307789号公報
4 特開2008-25374号公報
5 特開2000-220484号公報
6 特開2004-332659号公報
第4 引用文献の記載事項
1 引用文献1
平成30年5月7日付け(発送日:平成30年5月8日)の当審拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された引用文献1(特開2002-276519号公報)には、「エンジン及びその運転方法」に関して、図面(特に図1及び図2を参照。)とともに以下の事項が記載されている(なお、下線部は当審が付した。以下同様。)。
ア 「【0002】
【従来の技術】上記のエンジンは、吸気路又は燃焼室に燃料を供給して、燃焼室に燃料と空気(酸素含有ガスの一例)との混合気を形成し、その混合気を圧縮して点火プラグ(点火手段の一例)により点火する火花点火式エンジンである。そして、このような火花点火式エンジンに、上記コントロールガス供給手段と上記燃焼速度調整手段とを設けることで、混合気と混合されて混合気の燃焼速度を変化させることができるコントロールガスを混合気に供給すると共に、例えば燃焼負荷等に基づいて上記コントロールガスの供給量を調整して、燃焼室における混合気の燃焼速度を調整することができ、このようなエンジンは、燃焼速度を燃焼負荷等に適した好ましいものに調整して、NOxの生成量等を抑制しながら、高効率を保つように構成されている。」
イ 「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このようなエンジンにおいて、燃焼室における混合気の燃焼速度が大幅に変化すると、燃焼室における圧力上昇過程、即ち最高圧力とその時期、圧力上昇率等が変化し、高効率運転の障害となるだけでなく、変化が著しい場合には、円滑な運転を行うことができなくなる。従って、本発明は、上記の事情に鑑みて、燃焼室に形成される混合気に、混合気の燃焼速度を変化させるコントロールガスを、供給量調整を伴って供給するエンジンにおいて、効率低下等を抑制し、好ましい運転状態を維持することができる技術を実現することを目的とする。」
ウ 「【0017】また、これまで説明してきた本発明に係るエンジンは、シリンダ内に形成された主室と前記主室に連通する副室とを上記燃焼室として備え、上記点火プラグを副室に設けて、副室に形成された混合気を点火して、主室に火炎トーチ等を噴出させるエンジンとして構成することができる。そして、このように構成したエンジンにおいては、副室に上記コントロールガスを供給するように上記コントロールガス供給手段を構成して、燃焼速度調整手段により副室における混合気の燃焼速度を、燃焼負荷等に適した好ましいものに調整して、副室におけるNOxの生成量等を抑制することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】〔第1実施形態〕本発明に係るエンジン及びその運転方法の第1の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1に示すエンジン100は、シリンダ4、シリンダ4に内挿されるピストン3、及びリンダヘッド1を備え、ピストン3の上面とシリンダ4の内面とシリンダヘッド1の下面により燃焼室としての主室2が区画形成されている。この主室2には天然ガス系都市ガス13Aである燃料ガスと空気の希薄混合気が吸気路15及び吸気弁5を介して導入されるようになっている。
【0019】さらに、シリンダヘッド1の概略中央部には、シリンダ軸線方向に軸方向を有する筒状である燃焼室としての副室7が形成されている。該副室7の上部には副室上部金物8が、下部には副室口金9が夫々設けられている。該副室口金9の先端部には、1個又は複数の噴孔10が穿孔されている。
【0020】前記副室上部金物8内には、ガスチャンバ11が形成されており、該ガスチャンバ11は燃料供給路12を介して天然ガス系都市ガス13Aである副室用の燃料ガスGが供給され、燃料供給路12の上流側はガス圧を制御するガス圧制御装置(図示省略)に接続されている。副室上部金物8内には、往復摺動可能な副室弁13(燃料供給手段の一例)が設けられており、副室弁13は、ガスチャンバ11と副室7との間を開閉する。副室7には、副室7内の混合気を点火するための点火プラグ14(点火手段の一例)が設けられている。
【0021】このような副室燃焼式のエンジン100の運転時においては、副室用の燃料ガスGは、ガス圧制御装置で圧力を吸気路15上流側の圧力よりも高めの設定圧力になるように調整された後、副室上部金物8内の燃料供給路12を経てガスチャンバ11に流入する。そして、該副室用の燃料ガスGは、副室弁13が開かれると副室7内に流入し、主室2から副室7に流入した希薄混合気と混合される。よって、副室7には、燃焼可能範囲内の当量比の混合気が形成されることになる。
【0022】一方、高効率且つ低NOxの燃焼を実現するため、燃料ガスが希薄状態の燃料と空気との混合気が新気として吸気路15から吸気弁5を経て主室2に吸入される。そして、制御装置50により、クランク軸(図示省略)の回転運動に連動して、点火プラグ14に高電圧が付与すると、点火プラグ14からの火花放電により副室7内の混合気が着火、燃焼する。この着火がなされた混合気は火炎トーチとして噴孔10から主室2内に噴出され、該主室2内の希薄混合気を燃焼させる。」
エ 「【0025】さらに、エンジン100には、燃焼室としての副室7に形成される混合気に、上記混合気の燃焼速度を変化させるコントロールガスとしての水蒸気を供給する水蒸気供給手段20(コントロールガス供給手段の一例)が設けられている。この水蒸気供給手段20は、後に副室7に供給される燃料供給路12の燃料ガスGに、主室2及び副室7である燃焼室において不活性である不活性ガスとしての水蒸気を供給するように構成されている。詳しくは、水蒸気供給手段20は、上記壁部30を介して排ガスEにより加熱されている燃料供給路12に、流量調整弁25を介して供給される水を供給することで、その水を蒸発させて、燃料供給路12に流通する燃料ガスGに水蒸気を供給するように構成されている。さらに、水蒸気供給手段20は、燃料供給路12にスチール又はガラス製のウール部材22を充填して備え、そのウール部材22に水を染み込ませるように供給し、水が良好に燃料供給路12において蒸発するように構成されている。さらに、燃料供給手段20には、供給される水の不純物を取り除くフィルタ部材21が設けられている。
【0026】このように構成された水蒸気供給手段20により、燃料供給路12の燃料ガスGに水蒸気を供給し、その水蒸気が供給された燃料ガスGを副室7に供給して、副室7に形成された混合気を燃焼させると、その燃焼による発熱の一部が水蒸気を加熱することに消費されるので、混合気のみを燃焼させるときよりも燃焼速度が低下することになる。よって、特に高出力運転時等において副室7の温度の過剰上昇を抑制して、NOxの生成量を抑制することができ、さらに、主室2の希薄混合気を着火する時点において、主室2へは水蒸気があまり供給されないので、主室2における点火性能を好ましいものに維持することができる。
【0027】また、制御装置50には、流量調整弁25を調整して上記水蒸気供給手段20に供給される水の供給量を調整し、副室7に形成される混合気への水蒸気の供給量を調整することで、副室7における混合気の燃焼速度を調整する燃焼速度調整手段51が設けられている。
【0028】即ち、制御装置50は、吸気路15に形成する混合気の当量比を増加させて出力を増加させるときなどのように、主室2又は副室7の混合気の燃焼速度が増加する場合に、燃焼速度増加に起因するNOxの生成を抑制するために、燃焼速度調整手段51により上記水蒸気供給手段20に供給する水の供給量を増加させて、副室7における混合気の燃焼速度の増加を抑制する。逆に、吸気路15に形成する混合気の当量比を減少させて出力を低下させるときなどのように、主室2又は副室7の混合気の燃焼速度が低下する場合に、燃焼速度調整手段51により、上記水蒸気供給手段20に供給する水の供給量を減少させて、副室7における混合気の燃焼速度の低下を抑制して、効率向上を重視した運転を行うのである。
【0029】さらに、制御装置50には、燃焼速度調整手段51による副室7に形成される混合気の燃焼速度調整に伴って、副室7の点火プラグ14の点火時期(火花発生時期)を調整する点火時期調整手段52が設けられている。点火時期調整手段52は、燃焼速度調整手段51により副室7に形成される混合気の燃焼速度を増加させるときは、点火プラグ14の点火時期を遅角させ、逆に、燃焼速度調整手段51により副室7に形成される混合気の燃焼速度を低下させるときは、点火プラグ14の点火時期を進角させるように構成されている。
【0030】詳しくは、燃焼速度調整手段51が、燃料供給路12への水蒸気の供給量を増加又は減少させて、副室7の混合気の燃焼速度を低下又は増加させるときに、点火時期調整手段52は、図2に示すように、この水蒸気の供給量の増加に対しては、上記点火時期を早い側に調整し、逆に、水蒸気の供給量の減少に対しては、上記点火時期を遅い側に調整するのである。結果、例えば、燃焼速度を低下させることで、NOxの生成量を低く抑えつつ、燃焼速度低下に対して点火時期を早い側に調整して、燃焼速度低下による効率低下を回避でき、例えば、効率を33%程度に保つことができる。
【0031】尚、ここで使用したエンジンの使用は、以下の通りである。
出力:4.7kW
ボア径:110mm
ストローク:106mm
気筒数:1
圧縮比:10
副室用の燃料ガス流量:5.0L/min
主室用の燃料ガス流量:15.6L/min
回転数:1200rpm
【0032】上記第1実施の形態において、燃焼室において燃料等と反応せず不活性であるコントロールガスとして水蒸気を利用したが、このようなコントロールガスとしては、排ガス、炭酸ガス、窒素ガス、アルゴンガス、又はヘリウムガス等も利用できる。」
オ 「【0034】〔第2実施形態〕次に、本発明に係るエンジン及びその運転方法の第2実施形態について、図面に基づいて説明する。尚、図3に示すエンジン200は、燃料供給路12及び排気路16等の構成以外、上記第1実施形態のエンジン100とほぼ同様であるので、詳細の説明については省略する。
【0035】エンジン200は、燃料供給路12に流通する燃料ガスGを水蒸気改質して、燃料ガスGよりも着火性が良い助燃ガスとしての水素ガス(水素リッチガス)を生成することができる改質装置60(コントロールガス供給手段としての改質手段の一例)を備えており、改質装置60は、ニッケル等の触媒を用いて、反応温度500~900℃程度で燃料ガス中の炭化水素と水蒸気Sとを反応させる水蒸気改質方法によって水素を得るように構成されている。そして、その水素を、バイパス路62を介して供給される燃料ガスGと混合し、その水素が供給された燃料ガスGを副室7に供給することができる。
【0036】このように構成された改質装置60により、副室7に形成される混合気に水素ガスを供給し、水素ガス供給された混合気を副室7にて燃焼させると、水素ガスの燃焼速度が燃料ガスGよりも速いので、燃料ガスGのみの混合気を燃焼させるときよりも燃焼速度が増加し、特に低出力運転時において、水素ガスの供給量を増加させて、高効率化を図ることができる。」
カ 「【0039】さらに、制御装置50の燃焼速度調整手段51は、切換弁73により、改質装置60に供給する熱源としての排ガスEの供給量を変化させることによって、改質装置50における燃料ガス中の炭化水素と水蒸気Sとの反応温度を変化させて、水素を生成する能力が変化させる。そして、燃焼速度調整手段51は、このように反応温度を変化させることで、燃料供給路12の燃料ガスGに供給する水素ガスの供給量を変化させ、結果、副室7における混合気の燃焼速度を調整するように構成されている。
【0040】そして、燃焼速度調整手段51が、燃料供給路12への水素ガスの供給量を減少又は増加させて、副室7の混合気の燃焼速度を低下又は増加させるときに、点火時期調整手段52は、図4に示すように、この水素ガスの供給量の減少に対しては、上記点火時期を早い側に調整し、逆に、水素ガスの供給量の増加に対しては、上記点火時期を遅い側に調整するのである。結果、例えば、燃焼速度を低下させることで、NOxの生成量を低く抑えつつ、燃焼速度低下に対して点火時期を早い側に調整して、燃焼速度低下による効率低下を回避でき、例えば、効率を33%程度に保つことができる。
【0041】上記第2の実施の形態において、混合気の燃焼速度を増加させる助燃ガスを、副室7に形成される混合気に供給するコントロールガス供給手段として、燃料供給路12の燃料ガスGを改質して燃料ガスGに水素ガスを供給する改質装置60を設けたが、別に、燃料ガスGとしての天然ガス系都市ガスとは別系統でエンジンに供給される助燃ガスとしての水素、ブタン、プロパン、ジメチルエーテル(DME)、又は一酸化炭素等を、燃料供給路12又は副室7等に供給するコントロールガス供給手段を設けても構わない。
【0042】上記夫々の実施の形態において、燃焼速度調整手段51及び点火時期調整手段52を、吸気路15を流通する新気の温度又は湿度等に基づいて、混合気の燃焼速度及び点火プラグ14の点火時期を調整するように構成することもできる。即ち、吸気路15に温度センサ又は湿度センサを設け、夫々のセンサの検出結果により、吸気路15に供給される空気等の新気の温度上昇又は湿度低下を確認したときには、副室7等の燃焼室に形成される混合気の燃焼速度が増加するので、混合気の燃焼速度の増加を抑制するべく、燃焼速度調整手段51は、例えば、燃料供給路12に供給する水蒸気Sの供給量を増加させたり、燃料供給路12に供給する水素ガスの供給量を減少させ、さらに、この燃焼速度低下に起因する効率低下を抑制するために、点火時期調整手段52は、点火時期を早い側に調整する。逆に、新気の温度低下又は湿度上昇を確認したときは、燃焼速度調整手段51は、燃料供給路12に供給する水蒸気Sの供給量を減少させたり、燃料供給路12に供給する水素ガスの供給量を増加させ、さらに、この燃焼速度増加に起因するノッキング発生等を回避するために、点火時期調整手段52は、点火時期を遅い側に調整する。
【0043】また、本発明のエンジンに使用できる燃料としては、天然ガス以外に、プロパン、水素等、任意の炭化水素系気体燃料、又はガソリン、軽油、重油、アルコール等の液体燃料等を使用することができる。」
キ 上記カの段落【0042】の記載からみて、温度センサ又は湿度センサの検出結果により、燃焼速度調整手段51が燃焼速度を調整して所望の燃焼速度としていることがわかる。
ク 上記カの段落【0040】及び【0042】の記載及び上記キからみて、温度センサ又は湿度センサの検出結果により、燃焼速度調整手段51が所望の燃焼速度とするときに、点火時期調整手段52は、燃焼効率低下を抑制し燃焼効率33%に保つため、点火時期を選択していることがわかる。
ケ 上記エの段落【0028】ないし【0030】の記載及び上記カの段落【0040】の記載からみて、効率向上を重視した運転を行うときに保つ効率である効率33%は、高い燃焼効率といえる。
以上から、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「火花点火式エンジンの運転方法であって、前記エンジンは、シリンダ4と、前記シリンダ4に内挿されるピストン3と、前記シリンダ4に接続された副室7とを有しており、前記方法が、
天然ガス系都市ガス13Aである燃料ガスと空気の希薄混合気を形成し、前記希薄混合気を前記シリンダ4内へ導入するステップと、
前記希薄混合気の一部を前記副室7内に導入するステップと、
前記副室7用の燃料ガスを前記副室7内に導入するステップであって、前記副室7用の燃料ガスは、助燃ガスが供給される天然ガス系都市ガス13Aであるステップと、
前記副室7内で点火プラグ14を火花放電するステップと、
温度センサ又は湿度センサにより新気の温度又は湿度を検出するステップと、
を含む方法において、
検出された前記新気の温度又は湿度に基づいて、前記副室7内の点火時期が、高い燃焼効率が提供される所望の燃焼速度が達成できるように選択される火花点火式エンジンの運転方法。」
2 引用文献2
平成30年5月7日付け(発送日:平成30年5月8日)の当審拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された引用文献2(特開平7-180645号公報)には、図面(特に、図1ないし図3を参照。)とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0006】従来の火花点火機関の最適点火時期制御手段のかかる問題点に鑑み、本発明の目的は、使用燃料の種類にかかわらず、火花点火機関の点火時期を最適化する手段を備えた火花点火機関を提供し、またその点火時期最適制御方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、これら従来技術を踏まえて更に研究と実験を重ねた結果、火花点火機関が最大熱効率を示す点火時期、即ち最適点火時期は、燃料の種類、空燃比、吸入空気量、或いはエンジンの回転数とは独立した、ある特定因子の一次関数であることを見出した。」
イ 「【0022】上記目的を達成するために、本発明に係る火花点火機関は、かかる着眼点に基づき、シリンダと、シリンダ内のピストンに連結されたクランクを備え、クランクを介してピストンの往復運動を回転運動に変換している火花点火機関において、クランクのクランク角度を測定する角度センサと、シリンダ燃焼室での燃料の質量燃焼割合を測定する燃焼センサと、角度センサで測定したクランク角度と、燃焼センサで測定した質量燃焼割合に基づき、次の式
Y=aX+b
〔ここで、Yは上死点前のクランク角度で表示した点火時期、Xはシリンダに注入された燃料の任意の基準質量燃焼割合でのクランク角度と燃焼が進行した段階での任意の質量燃焼割合でのクランク角度との差、a及びbは火花点火機関の特性により定まる定数〕により、火花点火機関の点火時期を算出する演算装置と、演算装置により算出された点火時期に基づいて火花点火機関の点火時期を制御する制御装置とを備えたことを特徴としている。
【0023】また、本発明は、シリンダと、シリンダ内のピストンに連結されたクランクを備え、クランクを介してピストンの往復運動を回転運動に変換している火花点火機関の点火時期最適制御方法において、クランクのクランク角度を測定する角度センサにより測定したクランク角度と、シリンダ燃焼室での燃料の質量燃焼割合を測定する燃焼センサにより測定した質量燃焼割合に基づき、次の式
Y=aX+b
〔ここで、Yは上死点前のクランク角度で表示した点火時期、Xはシリンダに注入された燃料の任意の基準質量燃焼割合でのクランク角度と燃焼が進行した段階での任意の質量燃焼割合でのクランク角度との差、a及びbは火花点火機関の特性により定まる定数〕で、火花点火機関の点火時期を算出し、算出された点火時期に基づいて火花点火機関の点火時期を制御するようにしたことを特徴としている。
【0024】上記式において、基準質量燃焼割合を何%にするかは、任意であり、また燃焼が進行した段階での質量燃焼割合を何%にするかも、任意である。好適には、基準質量燃焼割合を0%(点火)とし、燃焼が進行した段階での質量燃焼割合を10%とする。尚、質量燃焼割合とは、燃料の燃焼した割合を燃料の質量で示したものである。係数a及びbは、エンジンの特性によって定まる定数であり、例えばエンジンの圧縮比及びスワール比の大小或いは過給機の有無により異なり、また質量燃焼割合の範囲を変化させた場合にも、異なることもある。係数a及びbの決定は、各実験例が示すように、燃料、空燃比、エンジンの回転数及び吸気圧力を変化させて、エンジンの燃焼試験を行い、図4或いは図5のようなグラフを作図して、実験的に求めることができる。
【0025】また、上記式は、燃料の種類、空燃比、吸気圧力及びエンジン回転数のいずれとも無関係であり、同じ型式の火花点火機関であれば、同一の定数a、bの式を運転条件の如何にかかわず適用できる。本発明は、高オクタン価ガソリン、レギュラーガソリンの別なく、常時クランク角度と、エンジン燃焼室内の燃料の質量燃焼割合を計測し、上記式に基づいて最適点火時期を算出し、点火時期をフィードバック制御している。本発明は、燃料の種類に無関係であるから、従来のエンジンをガソリンエンジンから他の特定燃料を燃料とするエンジン、例えばLPGエンジン、CNGエンジン、メタノールエンジン等に改造する場合にも、或いはガソリンとメタノールの双方を使用して走行できるフレキシブル・フューエル・ビークル(FFV)等にも好適に適用できる。
【0026】本発明で使用する燃焼センサは、シリンダ燃焼室での燃料の質量燃焼割合を速やかに計測することができる限り、特に限定はなく、市販のセンサ、例えば光ファイバーでラジカル発光強度を求める方法によるもの、イオンプローブで火炎の位置を計測する方法によるもの、温度センサーで燃焼温度を計測する方法によるもの等を使用できる。また、後述する実施例で説明するように、燃焼センサとしてシリンダの燃焼室の圧力を測定する圧力センサ、例えばピエゾ式圧電変換器(点火プラグ一体型、点火プラグ用座金型(ワッシャー型)等)を使用し、燃焼室の圧力と燃料の質量燃焼割合との既知の関係から、計測した燃焼室圧力に応じた燃料の質量燃焼割合を算出するようにしても良い。また、多気筒エンジンにおいては、全ての気筒に燃焼センサを設けることは、必ずしも必要で無く、代表する気筒のみに設ければよい。燃焼センサの取り付け位置は、質量燃焼割合が検出できれば、取り付け場所は問わない。例えば、シリンダヘッド、シリンダライナ、ピストン上面等で良い。」
ウ 「【0028】
【実施例】以下、添付図面を参照し、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。図1は、本発明に係る火花点火機関の一実施例の要部の模式図である。図1に示す火花点火機関10は、4サイクルの往復動内燃機関であって、シリンダ12と、シリンダ12内を往復動するピストン14に連結されたクランク軸16を備えている。尚、図1中、空気注入口、燃料注入口等の本発明に直接関係のない部品は、省略されている。
【0029】更に、火花点火機関10は、点火時期制御機構として、燃焼室内の圧力を計測するために燃焼室18に取り付けられた圧力センサ20と、クランク軸16の角度を計測する角度センサ22と、演算装置24と、制御装置28とを備えている。演算装置24は、予め作製された図2及び図3に示すような関係に従って、圧力センサ20の信号からその圧力での燃料の質量燃焼割合を算出すると共に予め設定した燃焼期間(シリンダに注入された燃料の設定基準質量燃焼割合でのクランク角度と燃焼が進行した段階での設定質量燃焼割合でのクランク角度との差)での点火時期(MBT)を式Y=aX+bで算出する。この点火時期Yが、火花点火機関10の最適点火時期である。制御装置28は、演算装置24が算出した点火時期に基づき点火プラグ26の点火時期を制御する。図1中、30は圧力センサ20からの信号を増幅する増幅器である。圧力センサ20及び角度センサ22は、市販のセンサである。
【0030】次に、火花点火機関10の点火時期制御機構の動作を使用する。圧力センサ20と角度センサ22は、連続的に又は任意の一定間隔で断続的に燃焼室18の圧力及びクランク軸16のクランク角度を測定していて、その測定値を直ちに演算装置24に入力する。演算装置24は、予め作製された図2及び図3に示すような関係に従って圧力測定値に対応する燃料の質量燃焼割合を入力された圧力測定値から算出する。次いで、演算装置24は、基準質量燃焼割合でのクランク角度、例えば質量燃焼割合が0%、即ち点火時点でクランク角度K0 °CAと、予め定めた質量燃焼割合でのクランク角度、例えば質量燃焼割合が10%でのクランク角度K10°CAとの差、即ち両質量燃焼割合でのクランク角度の角変位K°CAを算出する。この角変位K°CAは、次の式におけるXである。
【0031】続いて、演算装置24は、次の式
Y=aX+b
〔ここで、a及びBは火花点火機関の特性により定まる定数〕により、火花点火機関10の最適な点火時期Yをその時期のクランク角度KM °CAで算出する。実験例1、2及び3で確認されている通り、このクランク角度KM °CAは、最小点火進角(MBT)に相当する。制御装置28は、クランク角度がKM °CAに到達した時点で点火プラグ26が点火するように制御する。」
エ 「【0035】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、クランクのクランク角度を測定する角度センサと、シリンダに注入した燃料の質量燃焼割合を測定する燃焼センサと、センサで得たクランク角度と質量燃焼割合に基づき特定の式に従い火花点火機関の最適点火時期を算出する演算装置と、演算装置により算出された点火時期に基づいて火花点火機関の点火時期を制御する制御装置とを備えることにより、エンジン回転数、燃料の種類、空燃比、吸入圧力等の運転条件とは無関係に、点火時期がMBTになるように制御している。点火時期をMBTになるように制御することにより、燃料の種類にかかわらず、火花点火機関の出力が増大し、熱効率及び燃費が改善される。しかも、この制御方法は、燃料の種類とは無関係であるから、ガソリンの組成に関係なく常に燃費を最高の状態に保ち、更にガソリンとメタノールの両方で走行可能なフレキシブル・フュエル・ビークル(FFV)等でも好適に使用できる。また、本発明は、エンジン回転数、燃料の種類、空燃比、吸気圧力等の運転条件とは無関係であるから、極めて汎用的であって、各種火花点火機関に広く適用できる。
【0036】請求項3の発明によれば、上述の構成によって点火時期をMBTに制御することにより、燃料の種類にかかわらず、火花点火機関の出力を増強させ、燃費を向上する、点火時期最適制御方法を実現している。」
以上から、上記引用文献2には次の技術(以下「引用文献2の記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「燃焼センサとしての圧力センサ20が測定した燃焼室18の測定値から燃料の質量燃焼割合を算出するとともに角度センサ22により測定したクランク軸16のクランク角からクランク角度の角変位である燃焼期間を求め、これに基づき最適点火時期を算出する火花点火機関およびその点火時期最適制御方法。」
3 引用文献3
平成30年5月7日付け(発送日:平成30年5月8日)の当審拒絶理由に引用された、本願の優先日に頒布された引用文献3(特開2005-307789号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0009】
同じ運転状態でもサイクルばらつきによって点火時期設定に必要な基本特性値(燃焼速度(燃焼期間)、点火むだ時間)は変動する。そこで本発明では、基本特性値(燃焼速度(燃焼期間)、点火むだ時間)のサイクルばらつきを考慮してノックを発生しやすい基本特性値(燃焼速度(燃焼期間)、点火むだ時間)であるノック指標算出用特性値を演算し、そのノック指標算出用特性値と基本点火時期とからノックを発生しない限界の点火時期を算出するようにした。このようにすることで、より正確にノック指標を算出することができ、精緻に点火時期を制御することができるようになったのである。」
イ 「【0044】
なお図12(A)(B)は、燃焼速度のヒストグラムに基づいて以下のようにして決めたものである。すなわち一定条件であっても燃焼速度は例えば図12(C)に例示したように発生頻度にバラツキが生じる。そしてそのような燃焼速度のうちで実際にノックが発生するのは燃焼速度の速い方から或る頻度(例えば1%頻度)のものだけであることが発明者によって見いだされた。したがって単に燃焼速度の平均値に基づいてノック診断を行っても正確にはノック診断を行うことができないのである。そこで本件発明者は実際にノックのおきているサイクルの燃焼速度に基づいてノック診断するようにしたのである。なお当然のことであるが燃焼速度と燃焼期間とは互いに逆の関係にあり、すなわち燃焼速度が速ければ燃焼期間は短く、燃焼速度が遅ければ燃焼期間は長いので、図11等では燃焼期間BURNに基づき制御を行っている。」
以上から、上記引用文献3には次の事項が記載されていると認められる。
「同じ運転状態でもサイクルばらつきによって点火時期設定に必要な基本特性値(燃焼速度(燃焼期間)、点火むだ時間)は変動すること。」
「燃焼速度と燃焼期間とは互いに逆の関係にあり、すなわち燃焼速度が速ければ燃焼期間は短く、燃焼速度が遅ければ燃焼期間は長いこと。」
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「火花点火式エンジン」は、その機能、構成および技術的意義からみて前者の「火花点火機関」に相当し、以下同様に、「シリンダ4」は「少なくとも一つのシリンダ」に、「ピストン3」は「ピストン」に、「副室7」は「少なくとも一つの予燃チャンバ」に、「副室7用の燃料ガス」は「第2の燃料」に、「点火プラグ14を火花放電する」は「火花点火させる」にそれぞれ相当する。
次に、後者の「天然ガス系都市ガス13Aである燃料ガスと空気の希薄混合気」が「天然ガス系都市ガス13Aである燃料ガス」と「空気」を略均質に混合することによって得られるもの、すなわち前者の「第1の燃料と空気とを略均質に混合することによって可燃性混合物を形成し」に相当する構成を備えていることは明らかである。
そして、後者において、「天然ガス系都市ガス13Aである燃料ガスと空気の希薄混合気」が「シリンダ4内に導入される」のは、前者の如く「吸気行程中」であることは明らかであるので、後者の「前記希薄混合気を前記シリンダ4内へ導入するステップ」は、前者の「可燃性混合物を吸気行程中に前記少なくとも一つのシリンダ内へ導入するステップ」に相当する。
また、後者の「希薄混合気の一部を前記副室7内に導入するステップ」は、この導入が圧縮行程中に希薄混合気を圧縮することにより行われることは明らかであるので、前者の「前記可燃性混合物を前記ピストンによって圧縮行程中に圧縮することで、前記可燃性混合物の一部を前記予燃チャンバ内に導入するステップ」に相当する。
さらに、後者の「副室7用の燃料ガスを前記副室7内に導入する」は、吸気行程中および/または圧縮行程中であることも明らかであり、かつ「副室7用の燃料ガスは、助燃ガスが供給される天然ガス系都市ガス13A」であり、「天然ガス系都市ガス13Aである燃料ガスと空気からなる混合希薄気」とは、少なくとも化学組成又は濃度が異なること明らかであって、「同じまたは異なる化学組成および/または濃度である」ことに鑑みれば、後者の「前記副室7用の燃料ガスを前記副室7内に導入するステップであって、前記副室7用の燃料ガスは、助燃ガスが供給される天然ガス系都市ガス13Aであるステップ」は前者の「吸気行程中および/または前記圧縮行程中に、燃焼の開始前の導入時期に第2の燃料を前記予燃チャンバ内に導入するステップであって、前記第2の燃料は、前記第1の燃料と同じまたは異なる化学組成および/または濃度であるステップ」に相当する。
加えて、後者の「温度センサ又は湿度センサにより新気の温度又は湿度を検出するステップ」及び「検出された前記新気の温度又は湿度に基づいて、前記副室7内の点火時期が、高い燃焼効率が提供される所望の燃焼速度が達成できるように選択されること」と前者の「少なくとも一つのシリンダ内の燃焼期間を測定するステップ」、「前記燃焼期間が前記ピストンのクランク角度として測定され」及び「測定された前記燃焼期間に基づいて、前記予燃チャンバの点火時期が、高い燃焼効率が提供される所望の燃焼期間が達成できるように選択される」とは、火花点火機関の「情報を測定するステップ」及び「測定された前記情報に基づいて、予熱チャンバの点火時期が、高い燃焼効率が提供される所望の状態が達成できるように選択されること」である点で一致する。
そして、後者の「天然ガス系都市ガス13Aである燃料ガスと空気の希薄混合気を形成し」と前者の「第1の燃料と空気とを略均質に混合することによって可燃性混合物を1.6から2.9の間のラムダ値で形成し」とは、「第1の燃料と空気とを略均質に混合することによって可燃性混合物を希薄混合気で形成し」である点で一致する。
したがって、両者は、
「火花点火機関の運転方法であって、前記機関は、少なくとも一つのシリンダと、前記少なくとも一つのシリンダ内で可動なピストンと、前記少なくとも一つのシリンダに接続された少なくとも一つの予燃チャンバとを有しており、前記方法が、
第1の燃料と空気とを略均質に混合することによって可燃性混合物を希薄混合気で形成し、前記可燃性混合物を吸気行程中に前記少なくとも一つのシリンダ内へ導入するステップと、
前記可燃性混合物を前記ピストンによって圧縮行程中に圧縮することで、前記可燃性混合物の一部を前記予燃チャンバ内に導入するステップと、
前記吸気行程中および/または前記圧縮行程中に、燃焼の開始前の導入時期に第2の燃料を前記予燃チャンバ内に導入するステップであって、前記第2の燃料は、前記第1の燃料と同じまたは異なる化学組成および/または濃度であるステップと、
前記予燃チャンバ内で火花点火させるステップと、
情報を測定するステップと、
を含む方法において、
測定された前記情報に基づいて、前記予燃チャンバの点火時期が、高い燃焼効率が提供される所望の状態が達成できるように選択される火花点火機関の運転方法。」である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
「希薄混合気」について、前者は「1.6から2.9の間のラムダ値」で形成するものであるが、後者は希薄混合気であるからラムダ値が1より大きいものの、かかる事項を備えるか不明な点。
[相違点2]
前者は「ピストンのクランク角度として測定」される「少なくとも一つのシリンダ内の燃焼期間」を測定し、「前記燃焼期間」に基づいて高い燃焼効率が提供される「所望の燃焼期間」が達成できるように予燃チャンバの点火時期を選択するのに対し、後者が「新気の温度又は湿度」を検出し、「前記新気の温度又は湿度に基づいて、前記副室7内の点火時期が、高い燃焼効率が提供される所望の燃焼速度が達成できるよう」に選択される点。
第6 判断
上記相違点について検討する。
相違点1について検討する。
引用発明は希薄混合気をシリンダ内に導入するものであるから、引用発明の希薄混合気もラムダ値が1より大きい可燃性混合物であることは、当業者であれば自明である。そして、所望の火花点火機関における所望の性能、効率を満たすためにラムダ値を所定の範囲の値とする自体は、当業者の通常の創作能力の範囲で適宜なし得ることである。そして、本願明細書の段落【0034】、【0036】及び【0042】をみても、「1.6から2.9の間のラムダ値」とすることにより、本願発明が引用発明と比べ格別顕著な作用効果或いは特異な作用効果を奏しているともいえない。
そうすると、引用発明において、当業者の通常の創作能力の範囲内で、相違点1に係る本願発明の事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
なお、希薄混合気を「1.6から2.9の間のラムダ値」のものとすることは、例えば、特開平7-127529号公報(段落【0028】を参照。)及び特開平6-229318号公報(段落【0013】を参照。)にも記載されているように、当業者においては本願の優先日前に周知の事項である。
相違点2について検討する。
引用文献2の記載事項は、
「燃焼センサとしての圧力センサ20が測定した燃焼室18の測定値から燃料の質量燃焼割合を算出するとともに角度センサ22により測定したクランク軸16のクランク角からクランク角度の角変位である燃焼期間を求め、これに基づき最適点火時期を算出する火花点火機関およびその点火時期最適制御方法。」である。
ここで、本願発明と引用文献2の記載事項を対比すると、後者の「角度センサ22により測定したクランク軸16のクランク角からクランク角度の角変位である燃焼期間を求め」はその機能、構成および技術的意義からみて前者の「少なくとも一つのシリンダ内の燃焼期間を測定するステップ」及び「燃焼期間がピストンのクランク角度として測定され」に相当し、同様に「これに基づき最適点火時期を算出する」は「点火時期が、所望の燃焼期間が達成できるように選択される」に相当する。
そして、引用文献2の記載事項は、本願発明の用語を用いて整理すると、以下の事項を開示しているということができる。
「燃焼期間が前記ピストンのクランク角度として測定され、
少なくとも一つのシリンダ内の燃焼期間を測定するステップと、測定された燃焼期間に基づいて、点火時期が、所望の燃焼期間が達成できるように選択されること。」
引用発明と引用文献2の記載事項とは火花点火機関である点で共通し、機関の効率を向上させるための制御である点も共通する。
また、引用文献3には、前記
「同じ運転状態でもサイクルばらつきによって点火時期設定に必要な基本特性値(燃焼速度(燃焼期間)、点火むだ時間)は変動すること。」
「燃焼速度と燃焼期間とは互いに逆の関係にあり、すなわち燃焼速度が速ければ燃焼期間は短く、燃焼速度が遅ければ燃焼期間は長いこと。」
という事項が記載されており、内燃機関の点火時期制御装置において、点火時期の制御を燃焼速度又は燃焼期間に基づき行うこと、及び燃焼速度と燃焼期間は互いに逆の関係にあることは、本願の優先日前に知られた事項といえるから、引用文献3の記載事項に照らせば、引用発明の「所望の燃焼速度を達成できる」ことは「所望の燃焼期間を達成できる」ことであることが理解できる。
そうすると、引用発明において、引用文献2の記載事項及び引用文献3の記載事項から、相違点2に係る本願発明の事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
また、本願発明は、全体としてみても、引用発明、引用文献2の記載事項及び引用文献3の記載事項から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2の記載事項及び引用文献3の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-014038