特許拒絶査定不服審判
2017-013374
蒸気を使用する髪の処理方法
- 審判番号
- 2017-013374
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-188560
- 請求日
- 2017年09月08日
- 審決日
- 2019年04月19日
- 公報発行日
- 2019年11月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ロレアル
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 審判長/審判官
- 審判長 佐々木 芳枝
- 審判官 堀川 一郎
- 審判官 長馬 望
- 分類
- P18 .55 -WZ (A45D) / P18 .536-WZ (A45D) / P18 .537-WZ (A45D) / P18 .121-WZ (A45D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-188560「蒸気を使用する髪の処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月12日出願公開、特開2016- 25937〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、平成22年4月2日(パリ条約による優先権主張2009年4月3日、仏国)に出願した特願2010-85876号の一部を平成27年9月25日に新たな出願としたものであって、平成28年8月1日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成28年8月8日)、これに対し、平成29年1月10日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年4月27日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成29年5月8日)、これに対し、平成29年9月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ、当審により平成30年8月23日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成30年8月27日)、これに対し、平成30年11月16日付で意見書及び誤訳訂正書が提出されたものである。
2.特許請求の範囲
平成30年11月16日付の手続補正で特許請求の範囲は以下のように補正された(なお、本願請求項1に係る発明を、以下、「本願発明」という。)。
「【請求項1】
以下の工程:
髪繊維に、5g/分以下の量で蒸気を適用する工程、
これら髪繊維を90℃より高い温度で成形する工程、
を含み、
蒸気を適用する工程と成形の工程とは、髪繊維の同一部分に同時には行われず、
成形が、蒸気を適用する工程の後に、アイロンを使用して、髪繊維の処理しようとする毛房毎に行われ、
使用される蒸気の量が、1乃至4g/分である、髪繊維の処理方法。
【請求項2】
成形温度が、90乃至230℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
処理しようとする毛房毎に一回の蒸気適用を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
蒸気が、1つもしくは複数の化粧品有効成分を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
成形が、蒸気の適用工程の後に行われる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
1つもしくは複数の化粧品有効成分を含む組成物を使用する、髪繊維の美容処理工程を更に含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
美容処理工程、これに次ぐ蒸気の適用工程、及び、その後の髪繊維を成形する工程を順に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
蒸気の適用工程、これに次ぐ髪繊維を成形する工程、及び、その後の美容処理工程を順に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
蒸気の適用工程、これに次ぐ美容処理工程、及び、その後の髪繊維を成形する工程を順に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
美容処理工程が、髪繊維のケア工程、これら繊維の洗浄工程、成形の工程、パーマネント処理、セミパーマパーマネント処理もしくは一時的染色の工程、還元剤及び任意の固定剤を使用するパーマネント変形工程、並びに水酸化ナトリウムまたは炭酸グアニジンを用いるアルカリ性ストレートパーマ処理工程から選択される、請求項6または7に記載の方法。」
3.原査定の拒絶の理由
請求項1に対する原査定の拒絶の理由1の概要は以下のとおりである。
「この出願の請求項1に係る発明は、その出願(優先日)前に日本国内又は外国において、頒布された特開平7-51119号公報(以下、「引用例1」という。)に記載された発明及び特表2005-530583号公報(以下、「引用例2」という。)に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
a「この発明は、パーマネントトリートメントとアイロンパーマネントウェーブの施術方法及び毛髪保護剤として用いられるトリートメント剤に関する。」(【0001】)
b「即ち、この発明に係わる請求項1のパーマネントトリートメントの施術方法は、先ず、毛髪に従来の施術法と同時にスチーマーで加温する。この場合のスチーマーの設定温度は、例えば、50℃前後の加温であり、その加温時間は15~20分程度が良好である。このようにすれば、毛皮質内の間充物質は10~15%流失する。そして、流出しなくなる蛋白質を入れたトリートメント剤を毛髪の表面に塗布することによって、間充物質に代わって、流失しなくなる蛋白質を溶解状態として浸透させることができる。
次に、ヘアーアイロン保護用のトリートメント剤を毛髪の表面に塗布し、ヘアーアイロンの熱によって施術するのであるが、この場合のヘアーアイロンの温度設定は180℃~200℃の高温が良好である。このようにして、毛皮質内に浸透した前記蛋白質に対して、ヘアーアイロンの高熱による化学的変化を付与し、熱凝固させることができると共に溶け出しを防止する。」(【0018】-【0019】)
上記記載を参照すると、スチーマーでの加温の次にアイロンパーマネントウェーブの施術は行われているので、施術は毛髪の同一部分には同時には行われていない。
上記記載を参照すると、スチーマーで加温してから、ヘアーアイロンを使用して毛髪にアイロンパーマネントウェーブの施術が行われている。
上記記載事項からみて、引用例1には、
「毛髪にスチーマーで加温し、
毛髪に180℃~200℃の高温でアイロンパーマネントウェーブを施術し、
スチーマーでの加温とアイロンパーマネントウェーブの施術は毛髪の同一部分には同時には行われず、
スチーマーで加温してから、ヘアーアイロンを使用して毛髪にアイロンパーマネントウェーブの施術が行われる施術方法。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
原査定の拒絶の理由に引用された引用例2には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
c「約0.02~約4g/分の水が前記毛髪に送達される請求項2に記載のヘアスタイリング装置。」(【請求項3】)
d「毛髪をセット又はスタイリングするために蒸気を使用することが周知であり、熱の補助による毛髪のカール付け、ストレート化、及びセットをする際に得られる結果を改善するため、蒸気を放出する構造を有するヘアローラ、カール用アイロン、及びフラットアイロンなどの装置を提供する多くの試みがなされてきた。」(【0002】)
e「本発明により送達されてもよい水は、両側全部に対して約0.02~約4g/分のスタイリング装置送達に等しい、スタイリング装置の一方側当り約0.01~2g/分、好ましくは、両側全部に対して約0.2~約2g/分のスタイリング装置送達に等しい、一方側当り約0.1~1g/分、より好ましくは、両側全部に対して約0.3~約0.8g/分のスタイリング装置送達に等しい、一方側当り約0.15~0.4g/分であってもよい。」(【0056】)
5.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「毛髪」、「ヘアーアイロン」、「施術方法」は、本願発明の「髪繊維」、「アイロン」、「髪繊維の処理方法」に相当する。
スチーマーでの加温は毛髪に蒸気を適用しているので、引用発明の「毛髪にスチーマーで加温し」と、本願発明の「髪繊維に、5g/分以下の量で蒸気を適用する工程」は、「髪繊維に、蒸気を適用する工程」の点で一致する。
引用発明の「毛髪に180℃~200℃の高温でアイロンパーマネントウェーブを施術し」は、本願発明の「これら髪繊維を90℃より高い温度で成形する工程」に相当する。
そうすると、引用発明の「毛髪にスチーマーで加温し、毛髪に180℃~200℃の高温でアイロンパーマネントウェーブを施術し」と、本願発明の「以下の工程:髪繊維に、5g/分以下の量で蒸気を適用する工程、これら髪繊維を90℃より高い温度で成形する工程、を含み」は、「以下の工程:髪繊維に、蒸気を適用する工程、これら髪繊維を90℃より高い温度で成形する工程、を含み」の点で一致する。
引用発明の「スチーマーでの加温とアイロンパーマネントウェーブの施術は毛髪の同一部分には同時には行われず」は、本願発明の「蒸気を適用する工程と成形の工程とは、髪繊維の同一部分に同時には行われず」に相当する。
引用発明において、毛髪に対する施術は、一度に毛髪全体に行うことはなく、毛髪の一部に対して行われるから、引用発明の「スチーマーで加温してから、ヘアーアイロンを使用して毛髪にアイロンパーマネントウェーブの施術が行われる」は、本願発明の「成形が、蒸気を適用する工程の後に、アイロンを使用して、髪繊維の処理しようとする毛房毎に行われ」に相当する。
したがって、両者は、
「以下の工程:
髪繊維に、蒸気を適用する工程、
これら髪繊維を90℃より高い温度で成形する工程、
を含み、
蒸気を適用する工程と成形の工程とは、髪繊維の同一部分に同時には行われず、
成形が、蒸気を適用する工程の後に、アイロンを使用して、髪繊維の処理しようとする毛房毎に行われる、髪繊維の処理方法。」
の点で一致し、以下の点で一応相違している。
〔相違点〕
蒸気に関し、本願発明は、5g/分以下の量で蒸気を適用し、使用される蒸気の量が、1乃至4g/分であるのに対し、引用発明は、蒸気は適用するが、使用される時間当たりの蒸気の量が特定されていない点。
6.判断
髪に蒸気を与えてヘアーアイロンで成形することは周知の事項(4.d参照)である。また、ヘアーアイロン使用時の髪のパサつきはキューティクルが剥がれ髪の水分が減ることに起因する。更に、髪が濡れたままでヘアーアイロンを使用すると髪が傷むことも周知の事項である。
そうすると、ヘアーアイロンを髪を傷めずに使用するには、髪に対して濡らす程度には水分を与えずに適度の水分を与えることが良いこととなる。
請求人は、平成30年11月16日付意見書で、「しかるに、例えば髪繊維に蒸気の適用を行った直後(すなわち、蒸気の適用を停止した直後)に成形を行う場合には、蒸気の適用と成形とは相次いで行われ、しかも蒸気の適用と成形とは髪繊維の同一部分に同時に施されないため、これは本願発明の実施態様に該当するということになります。このように、本願発明の方法によれば、処理しようとする髪繊維には、まず蒸気が適用され、かくして湿った状態で成形処理を施されることから、例えば乾燥した髪に直接加熱成形を施す場合などのように、髪繊維が高熱で傷むことがないといった利点がございます。」と主張し、蒸気の適用と成形が同時と直後で髪繊維に対する処理の効果に差異があるとの主張と解せるが、髪繊維に対して同じ蒸気量を適用し、蒸気の適用と成形とが髪繊維の同一部分に同時に施された場合と髪繊維に蒸気の適用を行った直後に成形を行う場合では、両者に成形時の髪繊維の湿度に差異があるとは考え難い。
そうであれば、引用発明においても、髪に対する水分が多すぎても少なすぎても生じるヘアーアイロン使用時の問題は避けなければならず、その際適切な水分を与えるための蒸気の量は適宜最適化、好適化すべきものであるところ、引用例2において、スタイリング装置使用時に水を約0.02~約4g/分の量とするのはヘアーアイロン使用時に髪が傷むことを防ぐためであるから、引用発明において髪に与える水蒸気を引用例2記載のもののように約0.02~約4g/分とすることは当業者が容易に考えられることと認められ、その際蒸気の量を、約0.02~約4g/分の範囲内である1乃至4g/分とすることは当業者が適宜なし得ることと認められる。
そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び引用例2記載の事項から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
7.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2017-013374