特許拒絶査定不服審判
2017-013126
電流センサ
- 審判番号
- 2017-013126
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-096606外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年09月05日
- 審決日
- 2018年05月09日
- 公報発行日
- 2018年06月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】富士通コンポーネント株式会社
- 【請求人代理人】片山 修平
- 分類
- P18 .121-WY (G01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013- 96606「電流センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月20日出願公開、特開2014-219221、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年5月1日の出願であって、平成29年1月16日付けで拒絶理由通知がされ、同年3月27日付けで手続補正がされ、同年5月30日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年9月5日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成29年5月30日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。
平成29年3月27日付けの手続補正により補正された請求項1-6に係る発明は、以下の引用文献1-10に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開平5-72233号公報
2.特開平5-99953号公報
3.特開2013-54016号公報
4.特開昭63-61170号公報
5.特開2009-300196号公報
6.特開2008-145352号公報(周知技術を示す文献)
7.特開平2-307068号公報(周知技術を示す文献)
8.特開2006-46922号公報(原査定における備考欄で引用された、周知技術を示す文献)
9.登録実用新案第3037663号公報(原査定における備考欄で引用された、周知技術を示す文献)
10.特開2001-307934号公報(原査定における備考欄で引用された、周知技術を示す文献)
第3 本願発明
本願請求項1-2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明2」という。)は、平成29年9月5日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
電流が流れる導体を囲む、第1コア及び第2コアに分割された環状の磁性体コアと、
前記第1コアに形成された第1ギャップに配置され、前記電流により形成される磁界を測定する第1磁界測定素子と、
前記第1磁界測定素子が実装される基板と、
前記第1コアを収容する第1筐体と、前記第2コアを収容し、前記第1筐体に対して開閉可能に係合する第2筐体とを有する筐体と、を備え、
前記第1筐体は、軸受を有し、前記軸受に挿入される軸によって前記第2筐体に開閉可能に係合される中部筐体と、前記中部筐体に係合され、前記基板の一部を露出させる開口部を有する下部筐体と、を備え、
前記第1コア及び前記基板は、互いに係合した前記中部筐体と前記下部筐体とに収容され、
前記第1ギャップにおける前記第1コアの端部の断面積は、前記磁性体コアのうち前記第1ギャップ以外の領域における前記磁性体コアの断面積より小さいことを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
前記第1コアには、前記第1ギャップに向かう段差部が形成され、
前記基板は前記段差部に配置されることを特徴とする請求項1に記載の電流センサ。」
第4 引用文献、引用発明等
1 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献8(原査定における備考欄で引用された文献)には、図とともに次の事項が記載されている(下線は、当審による。)。
ア 「【0001】
本発明は閉磁路を構成する環状の磁気コア内に被測定電線を挿通してその電流値を非接触で測定するゼロフラックス法による電流センサに関し、さらに詳しく言えば、磁気コアの周りに配置される磁気シールドケースの構成に関するものである。」
イ 「【0024】
ここで説明するクランプ式電流センサも上記従来例と同じく片開き式で、磁気コア10はほぼコ字形に形成された固定側の第1磁気コア11と、第1磁気コア11の開放面に対して開閉可能な第2磁気コア12とに分割されている。磁気コア10の材料は任意に選択されてよいがフェライト材が好適である。
【0025】
磁気シールドケース20も同様に固定側の第1磁気シールドケース部21と、開閉側の第2磁気シールドケース部22とに分割されている。この例においても、磁気シールドケース20にはパーマロイなどの高透磁率材料が用いられてよい。
【0026】
第1磁気シールドケース部21内に第1磁気コア11が合成樹脂製の台座211にて支持された状態で収納される。なお、第1磁気シールドケース部21の一方の側面にはターミナル基板23を有する側板24が装着されている。ターミナル基板23には複数の端子ピン231が貫設されており、ターミナル基板23は適当な配線を介して図示しない測定器本体と接続される。
【0027】
ゼロフラックス法であるため第1磁気コア11には磁電変換素子としてのホール素子31と負帰還コイル32とが設けられる。実際の製品に即して説明すると、第1磁気コア11はその底辺部で2つに分割されていて、ホール素子31はその分割面間の空隙内に回路基板311に実装された状態で配置される。ホール素子31に代えてフラックスゲートが用いられてもよい。
【0028】
負帰還コイル32は一対として用いられ、その各々はあらかじめボビンに巻き取られた状態で第1磁気コア11の対向する2辺に装着される。負帰還コイル32は第1磁気コア11の一方の辺のみに設けられてもよく、また、第1磁気コア11に対するホール素子31と負帰還コイル32の取り付け位置は任意に決められてよい。
【0029】
なお、図1には先の図5で説明した増幅器(電圧-電流変換器)33と検出抵抗34は示されていないが、この例においてもホール素子31と負帰還コイル32との間には増幅器33が接続され、負帰還コイル32には検出抵抗34が接続される。また、第1磁気コア11内には被測定電線Lに対する保護カバー25が配置される。
【0030】
図3を参照して、第2磁気コア12は第2磁気シールドケース部22内に合成樹脂製のホルダ221を介して固定される。第2磁気コア12は第2磁気シールドケース部22とともに図示しないコア開閉機構により第1磁気コア11の開放面に対して開閉可能(接触・離反可能)に支持されるが、第1磁気コア11に対してスライド可能としてもよい。」
以上によれば、引用文献8には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「閉磁路を構成する環状の磁気コア内に被測定電線を挿通してその電流値を非接触で測定するゼロフラックス法による電流センサであって、
片開き式であり、
磁気コア10は、固定側の第1磁気コア11と、第1磁気コア11の開放面に対して開閉可能な第2磁気コア12とに分割されており、
磁気シールドケース20も同様に固定側の第1磁気シールドケース部21と、開閉側の第2磁気シールドケース部22とに分割されており、
第1磁気シールドケース部21内に第1磁気コア11が合成樹脂製の台座211にて支持された状態で収納されており、
第1磁気コア11はその底辺部で2つに分割されていて、ホール素子31がその分割面間の空隙内に回路基板311に実装された状態で配置されており、
第2磁気コア12は、第2磁気シールドケース部22内に合成樹脂製のホルダ221を介して固定され、第2磁気シールドケース部22とともに図示しないコア開閉機構により第1磁気コア11の開放面に対して開閉可能に支持されている電流センサ。」
2 引用文献1-5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1-5には、引用文献1の段落【0014】及び【図4】(a)の記載、引用文献2の段落【0029】-【0037】及び【図6】-【図10】の記載、引用文献3の段落【0012】-【0013】及び【図2】-【図3】の記載、引用文献4の第2頁左下欄第6-14行及び第2図の記載並びに引用文献5の段落【0007】及び【図1】-【図5】の記載からみて、電流が流れる導体を囲む環状の磁性体コアと、前記磁性体コアに形成された第1ギャップに配置され、前記電流により形成される磁界を測定する第1磁界測定素子を備える電流センサにおいて、前記第1ギャップにおける前記磁性体コアの端部の断面積を前記磁性体コアのうち前記第1ギャップ以外の領域における前記磁性体コアの断面積より小さくするという技術事項が記載されていると認められる。
また、引用文献4には、第2頁右下欄第12-18行及び第1図の記載からみて、磁性材に形成した段差部に回路基板を取着するという技術事項が記載されていると認められる。
3 引用文献6-7について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献6-7には、引用文献6の【図2】、引用文献7の第7図からみて、磁性体コアの第1ギャップから見て、導体を挟んだ反対側に第2ギャップ及び第2磁界測定素子を設けるという技術事項が記載されていると認められる。
4 引用文献9-10について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献9-10(原査定における備考欄で引用された文献)には、引用文献9の【図1】-【図3】のハウジング1(ハウジング部10、ハウジング部20)、コア3A、3B、3C、開閉連結部2、引用文献10の【図1】、【図3】-【図4】、【図7】の第1ケース5、第2ケース6、第1鉄心1、第2鉄心2、連結部10からみて、第1コアを収容する第1筐体と第2コアを収容する第2筐体を連結部を回転中心として開閉可能に係合するという技術事項が記載されていると認められる。
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「環状の磁気コア」、「被測定電線」、「第1磁気コア11」及び「第2磁気コア12」がそれぞれ、本願発明1の「環状の磁性体コア」、「電流が流れる導体」、「第1コア」及び「第2コア」に相当するところであり、本願発明1と引用発明は、「電流が流れる導体を囲む、第1コア及び第2コアに分割された環状の磁性体コアを備える電流センサ」の点で一致する。
イ 引用発明の「(底辺部で2つに分割されている第1磁気コア11の)分割面間の空隙」及び「ホール素子31」がそれぞれ、本願発明1の「第1ギャップ」及び「第1磁界測定素子」に相当するところであり、本願発明1と引用発明は、「前記第1コアに形成された第1ギャップに配置され、前記電流により形成される磁界を測定する第1磁界測定素子を備える電流センサ」の点で一致する。
ウ 引用発明の「(ホール素子31が実装された)回路基板311」は、本願発明1の「前記第1磁界測定素子が実装される基板」に相当する。
エ 引用発明の「第1磁気シールドケース部21」及び「第2磁気シールドケース部22」がそれぞれ、本願発明1の「第1筐体」及び「第2筐体」に相当するところであり、引用発明の「第2磁気シールドケース部22」は、「第2磁気コア12」を「(第1磁気シールドケース部21に収納された)第1磁気コア11の開放面に対して開閉可能に支持」するから、引用発明の「第2磁気シールドケース部22」は、引用発明の「第1磁気シールドケース部21」に対して開閉可能に係合するものと認められ、本願発明1と引用発明は、「前記第1コアを収容する第1筐体と、前記第2コアを収容し、前記第1筐体に対して開閉可能に係合する第2筐体とを有する筐体を備える」点で一致する。
以上のことから、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「電流が流れる導体を囲む、第1コア及び第2コアに分割された環状の磁性体コアと、
前記第1コアに形成された第1ギャップに配置され、前記電流により形成される磁界を測定する第1磁界測定素子と、
前記第1磁界測定素子が実装される基板と、
前記第1コアを収容する第1筐体と、前記第2コアを収容し、前記第1筐体に対して開閉可能に係合する第2筐体とを有する筐体と、を備える電流センサ。」
(相違点)
(相違点1)本願発明1は、「前記第1筐体は、軸受を有し、前記軸受に挿入される軸によって前記第2筐体に開閉可能に係合される中部筐体と、前記中部筐体に係合され、前記基板の一部を露出させる開口部を有する下部筐体と、を備え、
前記第1コア及び前記基板は、互いに係合した前記中部筐体と前記下部筐体とに収容され」るというものであるのに対し、引用発明は、このような「中部筐体」と「下部筐体」を備えるものでない点。
(相違点2)本願発明1は、「前記第1ギャップにおける前記第1コアの端部の断面積は、前記磁性体コアのうち前記第1ギャップ以外の領域における前記磁性体コアの断面積より小さい」というものであるのに対し、引用発明において、第1磁気コア11の分割面における断面積が磁気コアの他の部分の断面積より小さいか不明な点。
(2)相違点についての判断
ア 上記相違点1について検討する。
(ア)引用発明の「電流センサ」におけるコア開閉機構は「片開き式」であって、しかも「第2磁気シールドケース部21内」に「固定され」た「第2磁気コア12」が、「第1磁気シールドケース部21内」に「収納され」た「第1磁気コア11」の「開放面に対して開閉可能に支持」されていることからみて、引用発明の「第1磁気シールドケース部21」と「第2磁気シールドケース部22」は、「片開き式」に開閉可能になっていると認められる。
(イ)しかし、引用発明において、「第1磁気シールドケース部21」は本願発明1のごとく、「中部筐体」と「前記中部筐体に係合され、前記基板の一部を露出させる開口部を有する下部筐体」で構成されるものではなく、またそのように構成することの動機付けも認められない。
(ウ)また、上記引用文献1-7、9-10にも、このような構成は記載も示唆もされていない。
(エ)したがって、当業者といえども、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることは容易に想到し得たことであるとはいえない。
イ よって、上記相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、上記引用文献1-10に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
2 本願発明2について
本願発明2は、本願発明1を限定したものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1-10に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第6 原査定について
以上のとおりであって、本願発明1-2は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-10に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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