特許拒絶査定不服審判
2017-012802
手荷物入れ用内部確認ミラーおよびその製造方法
- 審判番号
- 2017-012802
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-538827外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年08月30日
- 審決日
- 2018年07月23日
- 公報発行日
- 2018年09月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】コミー株式会社
- 【請求人代理人】清流国際特許業務法人
- 【請求人代理人】昼間 孝良
- 【請求人代理人】境澤 正夫
- 分類
- P18 .121-WY (G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-538827「手荷物入れ用内部確認ミラーおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月17日国際公開、WO2017/138135、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
平成28年 2月12日 出願
平成29年 3月29日 拒絶理由通知
平成29年 5月23日 意見書、手続補正書
平成29年 5月31日 拒絶査定(以下、「原査定」という。)
平成29年 8月30日 審判請求書、手続補正書
第2 本願発明
この出願の請求項1-8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は、平成29年8月30日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
透明樹脂製の基板と、この基板の背面側に配列されたV字状断面の多数の微小溝と、この多数の微小溝の表面を被覆する反射膜と、この反射膜を被覆する保護層とを備えた凸面鏡機能を有するフレネルミラーからなる旅客航空機の手荷物入れ用内部確認ミラーであって、前記フレネルミラーの厚さが0.1mm以上1.0mm以下の極薄である一方、前記フレネルミラーの面積が幅方向寸法が200mm以上800mm以下で、縦方向寸法が150mm以上600mm以下である拡大した大きさを有し、前記多数の微小溝の傾斜面に基づく仮想円弧が単一の曲率半径からなり、その曲率半径が200mm以上1000mm以下である手荷物入れ用内部確認ミラー。
【請求項2】
前記曲率半径が200mm以上500mm以下である請求項1に記載の手荷物入れ用内部確認ミラー。
【請求項3】
前記フレネルミラーの背面に剛性板が接合されている請求項1または2に記載の手荷物入れ用内部確認ミラー。
【請求項4】
前記剛性板の厚さが0.1mm以上1.0mm以下であり、かつ前記フレネルミラーと前記剛性板とこれらの間に介在する接着層との合計厚さが0.2mm以上1.0mm以下である請求項3に記載の手荷物入れ用内部確認ミラー。
【請求項5】
前記剛性板の厚さが0.1mm以上0.5mm以下である請求項3または4に記載の手荷物入れ用内部確認ミラー。
【請求項6】
前記剛性板が繊維強化樹脂複合材である請求項3~5のいずれかに記載の手荷物入れ用内部確認ミラー。
【請求項7】
前記繊維強化樹脂複合材が炭素繊維強化樹脂複合材である請求項6に記載の手荷物入れ用内部確認ミラー。
【請求項8】
透明樹脂の溶融押出成形により透明樹脂フィルムを成形し、この透明樹脂フィルムをプレス成形により片面に多数のV字状断面の微小溝を配列した基板を成形し、この基板から請求項1~7のいずれかに記載の構成を有する手荷物入れ用内部確認ミラーを製造する手荷物入れ用内部確認ミラーの製造方法。」
第3 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、次のとおりである。
この出願の請求項1-10に係る発明は、引用文献1に記載された発明に、引用文献2に記載された発明及び引用文献3-6に示される周知技術を適用することにより、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.国際公開第2011/086740号
2.特開2008-292665号公報
3.特許第5511041号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2013-212605号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2008-260295号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2008-134290号公報(周知技術を示す文献)
第4 当審の判断
1 引用文献の記載
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1(国際公開第2011/086740号)には、次の事項が記載されている(下線は当審にて付した。以下同じ。)。
ア 「[請求項1] 平面状の透明な樹脂板からなるフレネルミラーの裏面に、基材シートの両面に粘着剤を塗布した両面接着テープを1枚だけ張り付け、前記基材シートを難燃剤を配合した樹脂により形成した死角確認用ミラー。」
イ 「技術分野
[0001] 本発明は死角確認用ミラーに関し、さらに詳しくは、ミラーに防炎性を具備させる場合に一層の薄肉化を可能にした死角確認用ミラーに関する。
背景技術
[0002] 旅客航空機などの旅客乗物には座席上方などに手荷物入れが設置されている。この手荷物入れの内部には下方からは視野の届かない死角域がある。そのため、往々にして乗客が手荷物入れに入れた荷物を置き忘れてしまうことがある。このような置き忘れ荷物を発見しやすくする手段として、特許文献1は、手荷物入れの内壁に死角確認用ミラーとして凸面鏡の機能を有するフレネルミラーを設置することを提案している。このフレネルミラーは、平面形状であるためスペースをとらずに広い視野を確保し、死角をなくすという特長を有している。
[0003] 一方、上述のように旅客乗物などに取り付けられるミラーには火災防止上から防炎性を具備することが義務付けられている。特許文献2は、防炎性を具備させるため、図5に示すような死角確認用ミラーを提案している。
[0004] すなわち、従来の防炎性の死角確認用ミラーは、図5に示すように、防炎性付与手段としてフレネルミラー21の背面に金属薄板22を張り付けた構成になっている。詳しくは、フレネルミラー21の背面に両面接着テープ23により金属薄板22を張り付け、更に金属薄板22の背面に第2の両面接着テープ24を張り付けて、この第2の両面接着テープ24により手荷物入れの内壁などの被接着面に張り付けるようになっている。なお、図5では、理解を容易にするため構成部品が分離状態で示されているが、実際には各部品は相互に積層接着状態になっている。
[0005] このように従来の死角確認用ミラーは、金属薄板22のほかに2枚の両面接着テープ23、24が使用されている。そのため死角確認用ミラー全体が厚肉になっていて、被接着面からは突出状態になる。これが外観を損ねるだけでなく、手荷物入れに荷物を出し入れする際に引っ掛かりを生じて損傷するなどの問題があった。また、旅客航空機用の場合には、軽量化の障害にもなっていた。
・・・(中略)・・・
発明が解決しようとする課題
[0007] 本発明の目的は、上述した従来の問題を解消し、ミラーに防炎性を具備させる場合に一層の薄肉化を可能にした死角確認用ミラーを提供することにある。」
ウ 「発明の効果
[0012] 本発明の死角確認用ミラーは、透明な樹脂板からなるフレネルミラーの裏面に両面接着テープを1枚だけ張り付けた構成であり、その両面接着テープの基材シートを難燃剤を配合した樹脂で形成した。これにより、従来の金属薄板に代替する防炎性を具備すると共に、3枚の積層構造体を張り付けていた従来の旅客航空機用ミラーに比べて著しく薄肉化することができる。また、この死角確認用ミラーの薄肉化は軽量化を可能にし、かつ可撓性を向上するため曲面を有する被接着面にも良く追従して張付け性を向上することができる。」
エ 「発明を実施するための形態
[0014] 図1及び図2は本発明の実施形態からなる死角確認用ミラーを示す。このうち図2は部品を分離状態にして示したものである。
[0015] 図1及び図2において、Mは死角確認用ミラー、1は凸面鏡機能を有する平面状のフレネルミラー、2は両面接着テープである。死角確認用ミラーMは、フレネルミラー1の裏面に両面接着テープ2が1枚だけ張り付けられた状態に形成されている。
[0016] フレネルミラー1は、透明な樹脂板3の裏面側にV字状断面を有する多数の環状溝4を形成している。環状溝4は、傾斜面4aと、隣り合う傾斜面4aどうしを連結する段差面4bとで構成されている。これら多数の環状溝4は、中心Oに対して径の大きさの順に同心状に配列されている。環状溝4の表面にはアルミニウムなどの金属の反射膜5が蒸着又はメッキにより被覆され、さらに反射膜5の表面に塗料などの樹脂からなる保護層6が被覆されている。
[0017] 多数の径が異なる環状溝4は、その溝底(傾斜面4a)が樹脂板3の面方向に対してなす傾斜角度が、中心Oから遠い位置の環状溝4の溝底(傾斜面4a)ほど大きくなるように順次変化している。つまり、溝底(傾斜面4a)を被覆する反射膜5の傾斜角度が中心Oから遠い位置の反射膜5ほど順次大きくなるように変化している。このように環状溝4の溝底(傾斜面4a)の反射膜5の傾斜角が変化しているため、フレネルミラー1は表面側から入射する光Lに対して凸面鏡として機能するようになっている。
[0018] 両面接着テープ2は、基材シート7の両面に粘着剤8、9を膜状に塗布した構成からなる。そのうち基材シート7は難燃剤を配合した樹脂になっている。基材シート7は発泡樹脂、非発泡樹脂のいずれも使用できる。このように基材シート7が難燃剤を配合していることにより、死角確認用ミラーMに防炎性が具備されるようになっている。両面の粘着剤8、9のうち、一方の粘着剤8は基材シート7をフレネルミラー1に張り付けるための手段であり、他方の粘着剤9は、死角確認用ミラーMを手荷物入れの内壁などの被接着面に張り付けるための手段である。粘着剤9の外表面には離型紙10が被覆されていて、この離型紙10を剥離して壁などの被接着面に張り付ける。
[0019] 上述した死角確認用ミラーMは、フレネルミラー1の裏面に両面接着テープ2を1枚だけ張り付けた構成からなり、かつその基材シート7が難燃剤を配合した樹脂から構成されている。この難燃性の基材シート7が従来の金属薄板に代って死角確認用ミラーMに防炎性を付えることができる。また、両面接着テープ2が1枚だけであるので、3枚の積層構造物を張り付けた従来の死角確認用ミラーに比べて、ミラー全体の厚さを50%以上も薄肉化することができる。また、この薄肉化により死角確認用ミラーM全体を一層軽量化することもできる。離型紙10を除いた両面接着テープ2の厚さは、例えば0.01mm~1.50mm程度、より好ましくは0.1mm~1.0mm程度にする。また、フレネルミラー1も薄肉化するようにすれば、死角確認用ミラーM全体が更に薄肉化されて可撓性になるので、曲面を有する壁面に対しても容易に追従して張付け性を向上することができる。
[0020] 本発明において、フレネルミラー1を構成する透明な樹脂板3の材料には、ポリカーボネート、ポリアクリル、ポリスチレンなどの樹脂を好ましく使用することができる。特にポリカーボネートは耐衝撃性が高いため、優れた耐久性を有する。透明な樹脂板3は環状溝4が形成可能な範囲で可及的に薄くするとよく、0.1mm~2.0mm程度の厚みにする。その厚みは、好ましくは0.5mm以下、さらに好ましくは0.4mm以下のフィルム状にするとよい。この透明樹脂板の薄肉化により、両面接着テープ2を1枚だけにしたことと相まって、死角確認用ミラーM全体の一層の薄肉化を図ることができる。
[0021] 透明な樹脂板3の厚さを0.1mm~0.5mm以下にすると、仮に、フレネルミラー1が燃焼したとしても、すぐに燃え尽きて消失するので、周囲の部材に燃え移り難くなり、延焼を抑えるは有利になる。それ故、フレネルミラー1と離型紙10を除いた両面接着テープ2との総厚を0.2mm~1.5mm程度にすると、死角確認用ミラーMが荷物等に一段と引っ掛かり難くなるとともに、防炎性も大きく向上する。
[0022] 壁などの被接着面が粗い場合は、両面接着テープ2(基材シート7)を薄肉化していると基材シート7自体の厚さ方向の変形を期待できないので、基材シート7を被接着面に追従させることが難しくなる。この場合、被接着面側の粘着剤9の層厚を大きくして、粘着剤9の層によって被接着面の粗さを吸収させるようにすると安定した接着力を確保し易くなる。ただし、粘着剤9の層厚の増大は両面接着テープ2の厚さの増大につながる。一方、フレネルミラー1の裏面はある程度平滑にすることができる。そのため、フレネルミラー1の裏面に張り付ける粘着剤8の層厚はそれ程大きくしなくても安定した接着力を確保することが可能である。そこで、剥離紙10を除いた両面接着テープ2の厚さを0.1mm~1.0mmの薄肉にした場合には、フレネルミラー1の裏面に張り付ける粘着剤8の層厚よりも、被接着面側(離型紙10側)の粘着剤9の層厚を大きくするとよい。
[0023] 透明な樹脂板3に形成する多数の環状溝4の配列ピッチは、0.01~0.2mmにすることができる。より好ましくは、0.01~0.1mmにするとよい。このように微小な配列ピッチにすることにより、フレネルミラー1の映像を一層鮮明にすることができる。環状溝4を被覆する反射膜の金属としてはアルミニウムが好ましく、蒸着又はメッキにより膜状にすることができる。
[0024] 本発明において、フレネルミラー1に張り付ける両面接着テープ2は1枚だけである。両面接着テープ2の基材シート7は難燃剤を配合した樹脂により形成されている。このように難燃剤を配合していることにより、金属薄板を使用することなく死角確認用ミラーMに防炎性を具備させることができる。
・・・(中略)・・・
[0031] 本発明の死角確認用ミラーMは、旅客航空機、旅客列車、旅客バスなどの乗物に対して客室の壁面や手荷物入れの内壁面などに死角確認用として利用することができる。特に手荷物入れの内壁面に対して好適である。また、乗物に限らず、ホテルなどの客室に設けられる手荷物入れなどにも、置き忘れ防止用に使用することができる。」
オ 「
」
カ 上記アないしオ(特にアとエ)によると、引用文献1には、死角確認用ミラーとして、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明」という。)。
「平面状の透明な樹脂板3と、透明な樹脂板3の裏面側に形成されたV字状断面を有する多数の環状溝4と、環状溝4の表面を被覆する反射膜5と、反射膜5を被覆する保護層6とを備えた凸面鏡として機能するフレネルミラーの裏面に、基材シートの両面に粘着剤を塗布した両面接着テープ2を1枚だけ張り付け、前記基材シートを難燃剤を配合した樹脂により形成した死角確認用ミラーであって、離型紙10を除いた両面接着テープ2の厚さは、0.1mm~1.0mm程度であり、透明な樹脂板3の厚さは、0.4mm以下であり、フレネルミラー1と離型紙10を除いた両面接着テープ2との総厚は、0.2mm~1.5mm程度であり、旅客航空機の手荷物入れの内壁面などに死角確認用として利用することができる死角確認用ミラー。」
(2)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2(特開2008-292665号公報)には、次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
凸面鏡を球心を通る中心軸を中心に半径が異なる多数の環状鏡面に分離し、これら環状鏡面を前記中心軸を共軸にして平面状に並べ変えるように構成したフレネル型ミラーにおいて、前記中心軸側の中央領域に位置する環状鏡面に対して外側領域に位置する環状鏡面の球面半径を小さくするようにしたフレネル型ミラー。
【請求項2】
前記環状鏡面の球面半径を、前記中心軸から外側の環状鏡面の順に1個又は複数個の単位で段階的に小さくするようにした請求項1に記載のフレネル型ミラー。
【請求項3】
前記環状鏡面を前記中心軸を含む断面において直線状にした請求項1又は2に記載のフレネル型ミラー。
【請求項4】
前記環状鏡面の球面半径の大きさを150~190mmの範囲にした請求項1、2又は3に記載のフレネル型ミラー。」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明はフレネル型ミラーに関し、さらに詳しくは、1枚だけでも拡大された広い視野をカバーすることができるフレネル型ミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
旅客航空機等の客室の上部に備えられた荷棚に対して、その天井面に凸面鏡機能を有しながら平面形状をもつフレネル型ミラーを貼り付けることにより、下方から覗き見たときそのフレネル型ミラーに荷棚内の全域を映し出せるようにし、それによって荷物の置き忘れを防止するようにすることが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載される従来のフレネル型ミラーは、図3(B)に示すような単一の球面半径Rを有する凸面鏡30から、球心を通る中心軸O(回転軸)からの半径が異なる多数の環状鏡面33に分離形成し、これら環状鏡面33を、図3(A)に示すように中心軸Oに沿って平行移動させ、平面34上に並べ変えることで平面状のフレネル型ミラー31にした構成からなっている。(但し、図3のフレネル型ミラーでは、環状鏡面33が大きなピッチで分離されるように図示されているが、実際には1mm前後又はそれ以下の微細なピッチで分離された構成からなる。)
【0004】
しかし、近年、旅客列車などにおいて、荷棚の横幅寸法を非常に大きくした車両が製作されるようになってきているが、このように横幅の大きい荷棚に対して上記従来の構造のままのフレネル型ミラーを設置したのであっては、横幅方向の全視野をカバーすることが出来なくなるという問題がある。すなわち、1枚のフレネル型ミラーで全視野をカバーするためには、ミラー寸法を大型化したり、或いは、2枚以上を組み合わせて使用したりしなければならなくなる問題がある。
【特許文献1】特開平9-267800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、1枚だけでも拡大された広い視野をカバーすることができるフレネル型ミラーを提供することにある。
・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0010】
本発明のフレネル型ミラーは、中央領域に位置する環状鏡面に対して外側領域に位置する環状鏡面の球面半径を小さくするようにしたので、1枚のミラーで視認可能な映像の視野を周辺方向に大きく拡大することができる。また、中央領域の環状鏡面の球面半径が外周領域の環状鏡面の球面半径よりも大きいので、中央領域の映像の見え方を大きく鮮明な状態にすることができる。」
ウ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明の実施形態からなるフレネル型ミラーを例示したもので、(A)はフレネル型ミラーを中心軸Oを含む断面で示した概略縦断面図、(B)はこのフレネル型ミラーに対応する凸面鏡の縦断面図である。
【0012】
図1(A)に示すように、フレネル型ミラー1は透明樹脂からなる平面板2を本体として、その平面板2の裏面に中心軸Oを中心に半径の異なる多数の環状鏡面3が同心状に段差状に配列した構成からなっている。これら環状鏡面3はアルミニウム等の金属膜を反射層として被覆しており、かつその環状鏡面3の裏面側表面には塗料が保護層(図示せず)として塗布されている。フレネル型ミラー1は、このような構成によりフラットでありながら凸面鏡の機能を有するため、広範囲の視野を視点Eに入力させることができる。
【0013】
上記フレネル型ミラー1を形成する環状鏡面3は、凸面鏡10を、その中心軸Oからの半径が異なる多数の環状体(リング)に分離したものに相当している。その凸面鏡10は、図1(B)に示すように球面半径Rが180mmである中央領域側の凸面鏡部分11と、球面半径Rが凸面鏡部分11よりも小さい160mmである外側領域側の凸面鏡部分12とを境界Pで接合した構成になっている。このような構成の凸面鏡10が多数の環状鏡面3に分離されることにより、図1(A)に示すように球面半径Rが180mmの凸面鏡部分11から分離された環状鏡面3がフレネル型ミラー1の中央領域の3個として配置され、また球面半径Rが160mmの凸面鏡部分12から分離された環状鏡面3がフレネル型ミラー1の外側領域2個として配置されている。
【0014】
図では理解を容易にするため、環状鏡面3を大きなピッチで5個に分離したものとして図示しているが、実際のフレネル型ミラーでは、環状鏡面3のピッチ(環状鏡面3の幅)は0.01~1.0mmの微細な範囲に設定される。また、図1(A)に示した環状鏡面3は、中心軸Oを含む断面において球面半径Rの円弧ではなく、直線状にしている。この環状鏡面の断面における形状は、球面半径Rの円弧であっても、その接線に相当する直線状のいずれであってもよい。直線状であっても、環状鏡面3のピッチが1mm以下と微細になっているため、映像の見え方には殆ど影響することはないからである。
【0015】
本発明のフレネル型ミラーは、上述のように外側領域に位置する環状鏡面3の球面半径Rを中央域に位置する環状鏡面3の球面半径Rよりも小さくしてあるので、外側領域の環状鏡面3で視認できる視野が周辺方向に大きく拡大することになる。そのため1枚のミラーであっても、ミラー寸法をいたずらに大型化したり、或いは複数枚を組合せたりしなくても、より広い視野を確保することができる。また、中央領域に球面半径の小さい環状鏡面が配置されていると、中央領域の映像が小さくなってしますが、本発明のフレネル型ミラーでは、中央領域の環状鏡面の球面半径が外周領域の環状鏡面の球面半径よりも大きくなっているので、中央領域における見え方を大きく鮮明にすることができる。
【0016】
図1の実施形態では、環状鏡面3を形成する球面半径Rの組合せが、中央領域の環状鏡面の球面半径と外側領域の環状鏡面の球面半径との2区分で異ならせるようにしたが、これを図2に示す実施形態のように、中心軸Oに隣接する環状鏡面3から外側の環状鏡面3に向けて、順次1個ずつ球面半径Rが小さくなるように漸減させるようにしてもよい。図2の実施形態では、中心軸Oに隣接する環状鏡面3の球面半径Rが最も大きい180mmであり、その外側に隣接する環状鏡面3の順に、球面半径Rが175mm、170mm、165mm、160mmと小さく漸減している。また、このような球面半径の漸減を、1個ずつの単位でなく、連続する複数個の単位で変化させるようにしてもよい。
【0017】
環状鏡面3に適用する球面半径Rとしては、フレネル型ミラーの用途によって異なるが、航空機、列車、バスなどの乗物に設けられる荷物棚における内部確認用や、銀行などに設置されるATMの後方確認用などの用途では、ミラーからの視点の距離を約500mmとすればよいので、150~190mmの範囲がが好ましく、さらに好ましくは160~180mmの範囲にするとよい。また、フレネル型ミラーに形成する球面半径の最大値と最小値との差としては15~25mm程度にするとよい。
【0018】
本発明のフレネル型ミラーは、航空機、列車、バスなどの乗物の荷物棚の内部確認用、銀行のATMの後方確認用などの他、通路のコーナーにおける衝突防止用、店舗の防犯用など種々の用途に適用することができる。」
エ 上記アないしウ(特にア)によると、引用文献2には、フレネル型ミラーとして、以下の発明が記載されていると認められる。
「凸面鏡を球心を通る中心軸を中心に半径が異なる多数の環状鏡面に分離し、これら環状鏡面を前記中心軸を共軸にして平面状に並べ変えるように構成したフレネル型ミラーにおいて、前記中心軸側の中央領域に位置する環状鏡面に対して外側領域に位置する環状鏡面の球面半径を小さくするようにし、前記環状鏡面の球面半径の大きさを150~190mmの範囲にしたフレネル型ミラー。」
2 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「旅客航空機の手荷物入れの内壁面などに死角確認用として利用することができる死角確認用ミラー」は、「平面状の透明な樹脂板3と、透明な樹脂板3の裏面側に形成されたV字状断面を有する多数の環状溝4と、環状溝4の表面を被覆する反射膜5と、反射膜5を被覆する保護層6とを備えた凸面鏡として機能するフレネルミラー」を有している。
そうすると、引用発明の「平面状の透明な樹脂板3と、透明な樹脂板3の裏面側に形成されたV字状断面を有する多数の環状溝4と、環状溝4の表面を被覆する反射膜5と、反射膜5を被覆する保護層6とを備えた凸面鏡として機能するフレネルミラー」からなる「旅客航空機の手荷物入れの内壁面などに死角確認用として利用することができる死角確認用ミラー」は、本願発明1の「透明樹脂製の基板と、この基板の背面側に配列されたV字状断面の多数の微小溝と、この多数の微小溝の表面を被覆する反射膜と、この反射膜を被覆する保護層とを備えた凸面鏡機能を有するフレネルミラーからなる旅客航空機の手荷物入れ用内部確認ミラー」に相当する。
イ 引用発明において、「離型紙10を除いた両面接着テープ2の厚さは、0.1mm~1.0mm程度であり」、また、「フレネルミラー1と離型紙10を除いた両面接着テープ2との総厚は、0.2mm~1.5mm程度であ」るから、引用発明には、「フレネルミラー1」の厚さが0.1mm以上1.0mm以下である態様のものが含まれているといえる。
そうすると、引用発明の「フレネルミラー1」と本願発明1の「フレネルミラー」は、その「厚さが0.1mm以上1.0mm以下の極薄である」点で共通する。
ウ 以上によれば、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
「透明樹脂製の基板と、この基板の背面側に配列されたV字状断面の多数の微小溝と、この多数の微小溝の表面を被覆する反射膜と、この反射膜を被覆する保護層とを備えた凸面鏡機能を有するフレネルミラーからなる旅客航空機の手荷物入れ用内部確認ミラーであって、前記フレネルミラーの厚さが0.1mm以上1.0mm以下の極薄である、手荷物入れ用内部確認ミラー。」
エ 他方、両者は以下の点で相違する。
<相違点>
本願発明1においては、「前記フレネルミラーの面積が幅方向寸法が200mm以上800mm以下で、縦方向寸法が150mm以上600mm以下である拡大した大きさを有し、前記多数の微小溝の傾斜面に基づく仮想円弧が単一の曲率半径からなり、その曲率半径が200mm以上1000mmである」のに対し、引用発明においては、そのような特定がなされていない点。
(2)判断
上記相違点について検討する。
確かに、引用文献1には、「死角確認用ミラーの薄肉化は軽量化を可能にし」([0012])、「薄肉化により死角確認用ミラーM全体を一層軽量化することもできる」([0019])、「死角確認用ミラーMが荷物等に一段と引っ掛かり難くなる」([0021])等と記載されているが、軽量化に伴いフレネルミラー1の面積を拡大し、その多数の微小溝の傾斜面に基づく仮想円弧の単一の曲率半径を大きくすることについては記載されていないし、引用発明において、軽量化に伴いフレネルミラー1の面積を拡大し、その多数の微小溝の傾斜面に基づく仮想円弧の単一の曲率半径を大きくすることが想定されているともいえない。
また、上記相違点に係る構成は、引用文献2、上記引用文献3-6には記載されていない。
そして、本願発明1は、上記相違点に係る構成を有することにより、「上記面積の拡大との相乗作用により、ミラーに映る映像を従来の内部確認ミラーよりも大型化することができ」、「手荷物が小さい場合であっても、容易に視認することができる」(本願明細書【0014】)という効果を奏するものである。
そうすると、引用発明、引用文献2に記載された発明、及び引用文献3-6に示される周知技術に基づいて、上記相違点に係る本願発明1の構成を得ることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
したがって、本願発明1は、引用発明、引用文献2に記載された発明、及び引用文献3-6に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 本願発明2ないし8について
請求項2ないし8は、請求項1を直接又は間接的に引用するから、本願発明2ないし8は、上記本願発明1についての判断と同様の理由により、引用発明、引用文献2に記載された発明、及び引用文献3-6に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-012802