特許拒絶査定不服審判
2017-012515
取得方法、脳血管障害評価装置、脳血管障害評価プログラムおよび脳血管障害評価システム
- 審判番号
- 2017-012515
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-507839外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年08月23日
- 審決日
- 2018年10月29日
- 公報発行日
- 2019年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】味の素株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人酒井国際特許事務所
- 分類
- P18 .537-WZ (G01N) / P18 .121-WZ (G01N) / P18 .65 -WZ (G01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-507839「取得方法、脳血管障害評価装置、脳血管障害評価プログラムおよび脳血管障害評価システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月 3日国際公開、WO2013/146621〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)3月22日(優先権主張 2012年3月30日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年9月5日付けで拒絶理由が通知され、平成29年1月11日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年5月19日付けで拒絶査定されたところ、同年8月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後当審において平成30年7月24日付けで拒絶理由が通知され、同年9月28日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
平成30年9月28日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1には、以下の事項が記載されている。
「 【請求項1】
評価対象の血液中の少なくともGlyの濃度値に基づいて、前記評価対象につき、脳血管障害の状態を評価する指標となる値を取得する濃度値基準取得ステップを含み、
前記濃度値基準取得ステップは、
前記評価対象の血液中の少なくともGlyの前記濃度値、および、少なくともGlyを変数として含む前記脳血管障害の状態を評価する指標となる値を取得するための式に基づいて、当該式の値を算出する算出ステップ
を含むこと、
を特徴とする取得方法。」
(以下「本願発明」という。)
第3 当審の拒絶理由通知書の概要
当審の拒絶の理由である、平成30年7月24日付け拒絶理由通知の理由1は、概略、次のとおりのものである。
本願の請求項1~23は、評価対象の脳血管障害の状態を評価するためのアミノ酸に、「前記評価対象の血液中のSer,Pro,Gly,Val,Ile,Leu,Phe,ABA,Ala,Cit,Arg,Ornのうち少なくとも1つ」を含んでいれば良いものであるところ、当該技術分野において、判別能を持つアミノ酸のうち少なくとも1つが評価対象を評価するためのアミノ酸として含まれていれば、評価対象の状態の評価について十分な精度を得ることができるといった技術常識は認められないことから、評価対象の脳血管障害の状態を評価するためのアミノ酸に、「前記評価対象の血液中のSer,Pro,Gly,Val,Ile,Leu,Phe,ABA,Ala,Cit,Arg,Ornのうち少なくとも1つ」を含む全てのアミノ酸の組み合わせにおいて、脳血管障害の評価について十分な精度を得ることができるか否かは、脳血管障害の状態に応じたデータに基づき実際に評価しなければ十分な精度を得ることができるか判断できないことは明らかである。そうすると、本願実施例に記載された指標式1~7として記載された前記脳血管障害の状態を評価する指標となる値を取得するための式を、「前記評価対象の血液中のSer,Pro,Gly,Val,Ile,Leu,Phe,ABA,Ala,Cit,Arg,Ornのうち少なくとも1つの前記濃度値、および、Ser,Pro,Gly,Val,Ile,Leu,Phe,ABA,Ala,Cit,Arg,Ornのうち少なくとも1つを変数として含む前記脳血管障害の状態を評価する指標となる値を取得するための式」まで拡張ないし一般化できるとはいえないから、本願発明は発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。
第4 本願の発明の詳細な説明の記載
本願の発明の詳細な説明の記載には、以下の記載がある。(以下、下線は当審に付与した。)
(本1)「【0011】
しかしながら、血中アミノ酸濃度を含む血液検査で、脳血管障害の状態について十分な診断性能が示されている報告はない。また、特許文献1~7に開示されている指標式群を脳血管障害の状態の診断に用いても、診断対象が異なるので、脳血管障害の状態の評価について十分な精度を得ることはできない。つまり、血中アミノ酸濃度を利用して脳血管障害の状態を評価する方法の開発は行われておらず、また実用化もされていないという問題点があった。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、血液中のアミノ酸の濃度のうち脳血管障害の状態の評価に有用なアミノ酸の濃度を利用して脳血管障害の状態を精度よく評価することができる脳血管障害の評価方法、脳血管障害評価装置、脳血管障害評価方法、脳血管障害評価プログラム、脳血管障害評価システムおよび情報通信端末装置を提供することを目的とする。」
(本2)「【実施例1】
【0230】
脳ドック受診者の血液サンプルから、前述のアミノ酸分析法(A)で血中アミノ酸濃度を測定した。医師がMRIおよびMRAの画像から各受診者について確定診断を行うことにより、受診者は、健常群83名、脳動脈硬化症(細小動脈硬化症)群62名および脳卒中(ラクナ梗塞)群15名の3群に分けられた。これら3群のアミノ酸変数の分布を図23に示す。図23において、1は健常群、2は脳動脈硬化症群、3は脳卒中群を示す。脳動脈硬化症から脳卒中の状態の評価を目的に、これら3群でKruskal Wallis検定を実施した。その結果、これら3群間でGlu、Ser、Pro、Gly、Tyr、Val、Ile、Leu、Pheが有意に変化していた。よって、当該検定により、これらアミノ酸が3群間の判別能を持つことが判明した。」
(本3)「【実施例2】
【0231】
実施例1で測定したものと同じアミノ酸濃度データを用いた。ロジスティック回帰分析手法(ROC最大基準による変数網羅法)を用いて、健常群と脳動脈硬化症群の2群判別性能を最大化する指標を鋭意探索した。
【0232】
21個のアミノ酸変数のうち2個以上6個以下のアミノ酸変数が用いられた、ROC_AUCで評価した判別能が同等に良好なロジスティック回帰式の一覧を、図24および図25に示す。また、図24および図25に示すロジスティック回帰式と同様の判別能を有するものとして、指標式1が得られた。また、ROC_AUCの上位1000式中に含まれるアミノ酸の出現頻度を、図26に示す。図24、図25および図26に基づいて、アミノ酸変数の出現頻度を多い順に10位まで列挙すると、「Glu,Lys,Gln,ABA,Ala,His,Tyr,Phe,Val,Cit」である。なお、21個のアミノ酸変数は、Ala,ABA,Arg,Asn,Cit,Glu,Gln,Gly,His,Ile,Leu,Lys,Met,Orn,Phe,Pro,Ser,Thr,Trp,Tyr,Valである(以下同様。)。
指標式1:(-4.169)+(0.08627)Glu+(0.005095)Gln+(0.07594)ABA+(-0.02154)Tyr+(0.01832)His+(-0.01808)Lys
【0233】
19個のアミノ酸変数のうち2個以上6個以下のアミノ酸変数が用いられた、ROC_AUCで評価した判別能が同等に良好なロジスティック回帰式の一覧を、図27および図28に示す。また、図27および図28に示すロジスティック回帰式と同様の判別能を有するものとして、指標式2が得られた。また、ROC_AUCの上位1000式中に含まれるアミノ酸の出現頻度を、図29に示す。図27、図28および図29に基づいて、アミノ酸変数の出現頻度を多い順に10位まで列挙すると、「Lys,Gly,Asn,Leu,Val,Gln,Ile,His,Ala,Met」である。なお、19個のアミノ酸変数は、Ala,Arg,Asn,Cit,Gln,Gly,His,Ile,Leu,Lys,Met,Orn,Phe,Pro,Ser,Thr,Trp,Tyr,Valである(以下同様。)。
指標式2:(2.836)+(-0.07461)Asn+(0.003571)Gln+(-0.008151)Gly+(0.02428)Leu+(-0.01385)Lys
【0234】
ここで、図24、図25、図27および図28には、ロジスティック回帰式に含まれる変数の組み合わせ、クロスバリデーション有りでのROC_AUC値、およびクロスバリデーション無しでのROC_AUC値が示されている。これらの式における各係数の値は、それを実数倍したもの、あるいは任意の定数項を付加したものでもよい。
【0235】
指標式1による健常群と脳動脈硬化症群の2群判別性能を図30に示すROC曲線の曲線下面積で評価し、また指標式2による健常群と脳動脈硬化症群の2群判別性能を図31に示すROC曲線の曲線下面積で評価した結果、それぞれのROC_AUC値は0.810と0.711であり、指標式1および指標式2は診断性能の高い有用な指標であることが判明した。また、指標式1については、カットオフ値が0.4257で、感度が77.42%で、特異度が76.62%であり、また指標式2については、カットオフ値が0.4452で、感度が70.97%で、特異度が67.53%であり、全て良好な値であった。なお、ここで示した感度及び特異度は、感度と特異度の平均が最も高くなる最高判別点をカットオフ値とした場合の値である。
【実施例3】
【0236】
実施例1で測定したものと同じアミノ酸濃度データを用いた。ロジスティック回帰分析手法(ROC最大基準による変数網羅法)を用いて、健常群と脳卒中群の2群判別性能を最大化する指標を鋭意探索した。
【0237】
21個のアミノ酸変数のうち2個以上6個以下のアミノ酸変数が用いられた、ROC_AUCで評価した判別能が同等に良好なロジスティック回帰式の一覧を、図32および図33に示す。また、図32および図33に示すロジスティック回帰式と同様の判別能を有するものとして、指標式3が得られた。また、ROC_AUCの上位1000式中に含まれるアミノ酸の出現頻度を、図34に示す。図32、図33および図34に基づいて、アミノ酸変数の出現頻度を多い順に10位まで列挙すると、「Gly,Glu,Cit,Tyr,Val,Arg,Leu,Trp,Ser,Ile」である。
指標式3:(-3.021)+(0.04956)Glu+(-0.02739)Gly+(0.07668)Cit+(0.05980)Tyr+(-0.02994)Orn
【0238】
19個のアミノ酸変数のうち2個以上6個以下のアミノ酸変数が用いられた、ROC_AUCで評価した判別能が同等に良好なロジスティック回帰式の一覧を、図35および図36に示す。また、図35および図36に示すロジスティック回帰式と同様の判別能を有するものとして、指標式4が得られた。また、ROC_AUCの上位1000式中に含ま
れるアミノ酸の出現頻度を、図37に示す。図35、図36および図37に基づいて、アミノ酸変数の出現頻度を多い順に10位まで列挙すると、「Gly,Tyr,Cit,Ile,Val,Arg,Trp,Lys,Leu,Asn」である。
指標式4:
(-1.688)+(-0.03192)Gly+(0.08261)Cit+(0.01413)Val+(0.07564)Tyr+(-0.05094)Arg
【0239】
ここで、図32、図33、図35および図36には、ロジスティック回帰式に含まれる変数の組み合わせ、クロスバリデーション有りでのROC_AUC値、およびクロスバリデーション無しでのROC_AUC値が示されている。これらの式における各係数の値は、それを実数倍したもの、あるいは任意の定数項を付加したものでもよい。
【0240】
指標式3による健常群と脳卒中群の2群判別性能を図38に示すROC曲線の曲線下面積で評価し、また指標式4による健常群と脳卒中群の2群判別性能を図39に示すROC曲線の曲線下面積で評価した結果、それぞれのROC_AUC値は0.864と0.854であり、指標式3および指標式4は診断性能の高い有用な指標であることが判明した。また、指標式3については、カットオフ値が0.2192で、感度が86.67%で、特異度が88.31%であり、また指標式4については、カットオフ値が0.1617で、感度が86.67%で、特異度が80.52%であり、全て良好な値であった。なお、ここで示した感度及び特異度は、感度と特異度の平均が最も高くなる最高判別点をカットオフ値とした場合の値である。
【実施例4】
【0241】
実施例1で測定したものと同じアミノ酸濃度データを用いた。ロジスティック回帰分析手法(ROC最大基準による変数網羅法)を用いて、健常群と脳血管障害群(脳動脈硬化症群と脳卒中群を包含する群)の2群判別性能を最大化する指標を鋭意探索した。
【0242】
21個のアミノ酸変数のうち2個以上6個以下のアミノ酸変数が用いられた、ROC_AUCで評価した判別能が同等に良好なロジスティック回帰式の一覧を、図40および図41に示す。また、図40および図41に示すロジスティック回帰式と同様の判別能を有するものとして、指標式5が得られた。また、ROC_AUCの上位1000式中に含まれるアミノ酸の出現頻度を、図42に示す。図40、図41および図42に基づいて、アミノ酸変数の出現頻度を多い順に10位まで列挙すると、「Glu,Gly,Phe,Ser,Gln,Ile,Ala,Tyr,Trp,Val」である。
指標式5:(3.619)+(-0.01981)Ser+(0.08047)Glu+(-0.02604)Gly+(0.005010)Ala+(0.05090)Phe+(-0.03119)His
【0243】
19個のアミノ酸変数のうち2個以上6個以下のアミノ酸変数が用いられた、ROC_AUCで評価した判別能が同等に良好なロジスティック回帰式の一覧を、図43および図44に示す。また、図43および図44に示すロジスティック回帰式と同様の判別能を有するものとして、指標式6が得られた。また、ROC_AUCの上位1000式中に含まれるアミノ酸の出現頻度を、図45に示す。図43、図44および図45に基づいて、アミノ酸変数の出現頻度を多い順に10位まで列挙すると、「Gly,Phe,Asn,Val,Ile,Trp,Ser,Met,Ala,His」である。
指標式6:(4.860)+(-0.09209)Asn+(0.003423)Gln+(-0.03204)Gly+(0.01486)Val+(0.05924)Phe+(-0.02599)His
【0244】
ここで、図40、図41、図43および図44には、ロジスティック回帰式に含まれる変数の組み合わせ、クロスバリデーション有りでのROC_AUC値、およびクロスバリデーション無しでのROC_AUC値が示されている。これらの式における各係数の値は、それを実数倍したもの、あるいは任意の定数項を付加したものでもよい。
【0245】
指標式5による健常群と脳血管障害群の2群判別性能を図46に示すROC曲線の曲線下面積で評価し、また指標式6による健常群と脳血管障害群の2群判別性能を図47に示すROC曲線の曲線下面積で評価した結果、それぞれのROC_AUC値は0.867と0.831であり、指標式5および指標式6は診断性能の高い有用な指標であることが判明した。また、指標式5については、カットオフ値が0.3728で、感度が85.71%で、特異度が73.49%であり、また指標式6については、カットオフ値が0.5233で、感度が77.92%で、特異度が78.31%であり、全て良好な値であった。なお、ここで示した感度及び特異度は、感度と特異度の平均が最も高くなる最高判別点をカットオフ値とした場合の値である。
【実施例5】
【0246】
実施例1で測定したものと同じアミノ酸濃度データを用いた。ロジスティック回帰分析手法(ROC最大基準による変数網羅法)を用いて、脳動脈硬化症群と脳卒中群の2群判別性能を最大化する指標を鋭意探索した。
【0247】
21個のアミノ酸変数のうち2個以上6個以下のアミノ酸変数が用いられた、ROC_AUCで評価した判別能が同等に良好なロジスティック回帰式の一覧を、図48および図49に示す。また、図48および図49に示すロジスティック回帰式と同様の判別能を有するものとして、指標式7が得られた。また、ROC_AUCの上位1000式中に含まれるアミノ酸の出現頻度を、図50に示す。図48、図49および図50に基づいて、アミノ酸変数の出現頻度を多い順に10位まで列挙すると、「Tyr,Gly,Phe,ABA,Glu,Lys,Ala,Pro,Asn,Leu」である。
指標式7:(-3.033)+(-0.01048)Pro+(-0.02309)Gly+(0.007427)Ala+(0.07724)Tyr+(-0.01345)Orn
【0248】
ここで、図48および図49には、ロジスティック回帰式に含まれる変数の組み合わせ、クロスバリデーション有りでのROC_AUC値、およびクロスバリデーション無しでのROC_AUC値が示されている。これらの式における各係数の値は、それを実数倍したもの、あるいは任意の定数項を付加したものでもよい。
【0249】
指標式7による脳動脈硬化症群と脳卒中群の2群判別性能を図51に示すROC曲線の曲線下面積で評価した結果、ROC_AUC値は0.867であり、指標式7は診断性能の高い有用な指標であることが判明した。また、指標式7について、カットオフ値が0.1435で、感度が93.33%で、特異度が75.81%であり、全て良好な値であった。なお、ここで示した感度及び特異度は、感度と特異度の平均が最も高くなる最高判別点をカットオフ値とした場合の値である。」
(本3)「図23
」
第5 判断
上記記載によれば、本願発明は、「血中アミノ酸濃度を利用して脳血管障害の状態の評価について十分な精度を得ることはできない」という課題を解決するために、「血液中のアミノ酸の濃度のうち脳血管障害の状態の評価に有用なアミノ酸の濃度を利用して脳血管障害の状態を精度よく評価することができる脳血管障害の評価方法、脳血管障害評価装置、脳血管障害評価方法、脳血管障害評価プログラム、脳血管障害評価システムおよび情報通信端末装置を提供する」ものである(上記(本1)参照。)。
また、発明の詳細な説明には、実施例として実施例1~5が記載され(上記(本2)参照。)、実施例1に、「Glu、Ser、Pro、Gly、Tyr、Val、Ile、Leu、Phe」が健常群、脳動脈硬化症群及び脳卒中群の3群間の判別能を持つことが、また、実施例2~5に、「ロジスティック回帰分析手法(ROC最大基準による変数網羅法)を用いて」、症状の異なる「2群判別性能を最大化する指標を鋭意探索した」結果、健常群と脳動脈硬化症群の2群判別性能においては、指標式1および2が、健常群と脳卒中群の2群判別性能においては、指標式3及び4が、健常群と脳血管障害群(脳動脈硬化症群と脳卒中群を包含する群)の2群判別性能においては、指標式5及び6が、脳動脈硬化症群と脳卒中群の2群判別性能においては、指標式7が、それぞれ診断性能の高い有用な指標であることが、それぞれ記載されている。
まず、実施例1には、請求項1に記載された「Gly」が健常群、脳動脈硬化症群及び脳卒中群の3群間の判別能を持つことが記載されているものの、「Gly」によって、前記3群をどのように判別するのか記載されていないし、「Gly」によって前記3群が判別できることが、当該技術分野において自明の事項であるともいえない。
さらに、図23の記載(上記(本3)参照。)からでは、「Gly」について、通常群と脳卒中群の2群判別は可能かもしれないが、前記3群間の判別ができるほどの優位な変化も認められない。
次に、実施例2~5には、「Gly」及び「Gly」以外の複数のアミノ酸を含む特定の指標式2~7が、特定の2群判別性能において有用であることが示されているのみである。
そして、請求項1に係る発明が、評価対象の脳血管障害の状態を評価するためのアミノ酸に、「前記評価対象の血液中の少なくともGly」を含んでいれば良いものである(当審注:アミノ酸が「Gly」のみのものも含む。)ところ、上記のとおり、「Gly」が前記3群をどの様に判別するか、発明の詳細な説明に記載されておらず、また、図23を参酌しても「Gly」について前記3群間の判別ができるほどの優位な効果も認められないこと、及び、当該技術分野において、判別能を持つアミノ酸のうち少なくとも「Gly」が評価対象を評価するためのアミノ酸として含まれていれば、評価対象の状態の評価について十分な精度を得ることができるといった技術常識は認められないことから、評価対象の脳血管障害の状態を評価するためのアミノ酸に、「前記評価対象の血液中の少なくともGly」を含む全てのアミノ酸の組み合わせ(当審注:極めて多数の組み合わせが存在し得る。)において、脳血管障害の評価について十分な精度を得ることができることは、本願の発明の詳細な説明には記載されていない。
そうすると、本願実施例に記載された指標式1~7として記載された前記脳血管障害の状態を評価する指標となる値を取得するための式を、「前記評価対象の血液中の少なくともGlyの前記濃度値、および、少なくともGlyを変数として含む前記脳血管障害の状態を評価する指標となる値を取得するための式」まで拡張ないし一般化できるとはいえないから、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のことから、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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