特許拒絶査定不服審判
2017-011060
ミキサドラム駆動装置
- 審判番号
- 2017-011060
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-007287外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年07月25日
- 審決日
- 2018年06月18日
- 公報発行日
- 2018年08月31日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】KYB株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人後藤特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (B60P)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-7287号「ミキサドラム駆動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年5月26日出願公開、特開2016-94198号、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年1月25日を出願日とする特願2012-12949号の一部を平成28年1月18日に新たな特許出願としたものであって、同日付けで上申書が提出され、同年11月1日付けで拒絶理由が通知され、同年12月20日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成29年3月3日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年7月25日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。
第2 原査定(平成29年3月3日付け拒絶査定)の概要
この出願については、平成28年11月1日付け拒絶理由通知書に記載した以下の理由によって、拒絶をすべきものである。
この出願の請求項1-4に係る発明は、引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開昭61-2904号公報
2.特開平10-54057号公報
第3 本願発明
本願の請求項1-4に係る発明(以下「本願発明1-4」という。)は、平成28年12月20日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ミキサドラムが容積式の流体圧モータによって回転駆動されるミキサドラム駆動装置であって、
前記流体圧モータに作動流体圧源の作動流体を給排する第一、第二給排通路と、
前記第一、第二給排通路どうしを結ぶモータ負荷圧逃がし通路と、
前記モータ負荷圧逃がし通路を開閉する開閉弁と、
前記ミキサドラムの駆動を停止する指令が出されて前記流体圧モータの駆動が停止された後に、前記指令によって前記ミキサドラムが停止する前の回転方向と逆方向に回転する間は前記開閉弁を開弁させて、前記流体圧モータの容積室に生じる作動流体の負荷圧を前記モータ負荷圧逃がし通路を通じて前記第一、第二給排通路の一方から他方へ逃がすモータ負荷圧逃がし手段と、を備えることを特徴とするミキサドラム駆動装置。
【請求項2】
ミキサドラムが容積式の流体圧モータによって回転駆動されるミキサドラム駆動装置であって、
前記流体圧モータに作動流体圧源の作動流体を給排する第一、第二給排通路と、
前記第一、第二給排通路の高圧側を前記作動流体圧源の低圧側に連通するモータ負荷圧逃がし通路と、
前記モータ負荷圧逃がし通路を開閉する開閉弁と、
前記ミキサドラムの駆動を停止する指令が出されて前記流体圧モータの駆動が停止された後に、前記指令によって前記ミキサドラムが停止する前の回転方向と逆方向に回転する間は前記開閉弁を開弁させて、前記流体圧モータの容積室に生じる作動流体の負荷圧を前記モータ負荷圧逃がし通路を通じて前記作動流体圧源の低圧側へ逃がすモータ負荷圧逃がし手段と、を備えることを特徴とするミキサドラム駆動装置。
【請求項3】
前記開閉弁は、前記モータ負荷圧逃がし通路を閉じる閉ポジションと、前記モータ負荷圧逃がし通路を開通させる開ポジションと、に切換えられることを特徴とする請求項1または2に記載のミキサドラム駆動装置。
【請求項4】
前記モータ負荷圧逃がし通路を流れる作動流体に抵抗を付与する絞りを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のミキサドラム駆動装置。」
第4 当審の判断
1 原査定について
(1)引用文献の記載
ア 引用文献1の記載
引用文献1には、以下の記載がある(下線は当審で付加した)。
(1a)(第1頁右下欄第6行-第2頁右上欄第15行)
「3.発明の詳細な説明
(産業上の利用分野)
この発明は液圧装置に関するもので、例えばトラックミキサーの駆動用等に好適な液圧装置に係る。
(従来の技術)
従来のトラックミキサ-用の液圧装置の一例を第3図に示す。この液圧装置は図のように、ポンプ101とモータ102を結ぶ吐出ライン103と、モータ102からの返流ライン104とに流量方向制御弁105を介設し、流量方向制御弁105を作動して、上記吐出ライン103と返流ライン104とを開閉することによって、モータ102の駆動、停止等の制御を行うものである。なお、106は減速機、107はミキサードラムをそれぞれ示している。そして上記装置においてミキサードラム107の回転を停止する場合には、流量方向制御弁105を中立位置に位置させ、吐出ライン103と返流ライン104との流路を共に閉じる訳であるが、この際、ミキサードラム107の慣性によってモータ102がポンプとして作用し、返流ライン104に高圧が発生し、ドラム107が急停止してショックを生ずる。この現象を防止するため、上記吐出ライン103と返流ライン104との間には、クロスオーバー形のリリーフ弁108、109が介設されている。すなわち返流ライン104で発生する高圧を、リリーフ弁108で吐出ライン103側にリリーフするような構造が採用されている。なお、上記のように互いに逆向きの一対のリリーフ弁108、109を設けてあるのは、ミキサードラム107の正転時と逆転時とに、吐出ライン103と返流ライン104とが反転するためである。
(発明が解決しようとする問題点)
ところで上記のような液圧装置におけるリリーフ弁108においては、ミキサードラム107の駆動時に、リリーフ弁108、109からは流体がリリーフしてはならないために、その設定圧力を回路作動圧力よりも高く設定する必要がある。したがって、ミキサードラム107の停止時には、返流ライン104内の圧力が上記設定圧力以上の高圧にまで達しないとリリーフ弁108が作動し得ず、またこの際リリーフ弁108にはサージ圧が発生することから、上記装置においてはミキサードラム107の急停止と、その際のショックの発生とを完全に防止し得るとはいい難いのが実情である。
この発明は上記に鑑みなされたもので、その目的は、ミキサードラム等の被駆動体の駆動を停止する際に、上記のような急停止及びショックの発生を防止でき、スムーズな停止の行える液圧装置を提供することにある。」
(1b)(第3頁左上欄第10行-右上欄第6行)
「(実施例)
次ぎにこの発明の液圧装置をトラックミキサー用の駆動回路に適用した場合の具体的な実施例につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。
第1図において、1は可変容量形の液圧ポンプ、2は液圧モータであって、両者1、2間は吐出ライン3と返流ライン4とによって接続され、両ライン3、4間には流量方向制御弁5が介設されている。この場合、モータ2側の一対のライン3a、4aは、いずれか一方が吐出ライン3に接続している場合には、他方は返流ライン4に接続するというように、流量方向制御弁5の切換位置に応じてその接続状態が切換わる訳であるが、いま便宜上、図のように一方を吐出ライン3、他方を返流ライン4と呼ぶことにする。なお、6はモータ2に接続された減速機、7はミキサードラムをそれぞれ示している。」
(1c)(第3頁右上欄第19行-第4頁左上欄第13行)
「 上記可変容量形液圧ポンプ1は、その吐出量を制御する斜板制御シリンダ11と、このシリンダ11への流体の供給を制御するロードセンシング弁12とを有している。上記斜板制御シリンダ11は、このシリンダll内へ流体が導かれた際に斜板を中立位置方向に移動させて、吐出量を減じ、他方このシリンダll内の流体が排出された際に、そのバネ13の力によって斜板を傾斜方向に移動させて吐出量を増大させるような作動をなすものである。上記ロードセンシング弁12は、上記斜板制御シリンダ11に接続されたライン14を、吐出ライン3とタンク15とに切換連通させるものであって、そのパイロット室16には吐出ライン3の流体が、またそのバネ室17には上記流量方向制御弁5の負荷圧力検出ポートdでの検出圧力がそれぞれ導かれ、相対向している。・・・
なお、上記ライン14にはさらに安全用の切換弁41が介設されているが、これは吐出ライン3の流体圧力が所定圧力以上に達した際に作動し、吐出ライン3の流体を斜板制御シリンダ11に導き、ポンプ1からのそれ以上の流体の供給を停止するためのものである。また上記ポンプ1にはチャージポンプ18が付加されており、このチャージポンプ18からライン19及びチェック弁20を介して返流ライン4へと、流体を補給し得るようなされている。なお、21はリリーフ弁であって、このリリーフ弁21によって上記ライン19内の流体圧力を規制している。」
(1d)(第4頁左上欄第14行-右上欄第13行)
「 一方、上記流量方向制御弁5よりもモータ2側の吐出ライン3と返流ライン4との間には、一方のライン3の流体を他方のライン4にリリーフするためのリリーフ弁22と、これとは逆にライン4の流体を他のライン3にリリーフするためのリリーフ弁23とが介設されており、各リリーフ弁22、23の各パイロット室24、25にはその1次側の流体圧力がそれぞれ導かれている。また各リリーフ弁22、23の各バネ室26、27は一対のパイロットライン28、29によってシャトル弁30に導かれると共に、このシャトル弁30によって選択される最高圧力が、パイロットリリーフ弁31の1次側に導かれている。このパイロットリリーフ弁31においては、そのパイロット室32にその1次側の流体圧力が導かれると共に、そのバネ室33にはその2次側の流体圧力が導かれている。そしてこのパイロットリリーフ弁31の2次側はライン34を介して、上記流量方向制御弁5の負荷圧力検出ポートdへと接続されている。」
(1e)(第5頁左上欄第4行-右上欄第6行)
「 次いで上記モータ2の駆動を停止する場合には、上記流量方向制御弁5を中立位置に復帰させる。そうすると、上記吐出ライン3と返流ライン4とは共に閉じられることになるが、これと同時に負荷圧力検出ポートdもタンク10へと連通する。この結果、上記パイロットリリーフ弁31の2次側、すなわちそのバネ室33もタンク10へと開放される。したがって、上記パイロットライン28、29の流体は上記バネ室33のバネ力に相当する流体圧力でリリーフされ、上記リリーフ弁23のバネ室27に作用する流体圧力は低くなり、返流ライン4の流体は上記パイロットリリーフ弁31とリリーフ弁23との両バネ力に相当する流体圧力でもって吐出ライン3へとリリーフされることになる。
上記の結果、ミキサードラム7の慣性等に応じて、上記パイロットリリーフ弁31とリリーフ弁22、23とのバネ力を調整すれば、最適の減速特性を得ることができ、ミキサードラム7の急停止及びショックの発生を防止し得る。また上記の結果、流量方向制御弁5のレバーの切換からミキサードラム7の停止に至る間の時間の調整を行うことも可能となる。」
上記(1a)-(1e)の記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「ミキサードラム7の駆動に適用される液圧装置であって、
可変容量形の液圧ポンプ1、液圧モータ2を備え、液圧ポンプ1、液圧モータ2間は吐出ライン3と返流ライン4とによって接続され、両ライン3、4間には流量方向制御弁5が介設され、
上記可変容量形液圧ポンプ1は、その吐出量を制御する斜板制御シリンダ11と、このシリンダ11への流体の供給を制御するロードセンシング弁12とを有し、
上記ロードセンシング弁12は、上記斜板制御シリンダ11に接続されたライン14を、吐出ライン3とタンク15とに切換連通させるものであって、
上記ライン14にはさらに安全用の切換弁41が介設されており、
上記ポンプ1にはチャージポンプ18が付加されており、このチャージポンプ18からライン19及びチェック弁20を介して返流ライン4へと、流体を補給し得るようなされており、リリーフ弁21によって上記ライン19内の流体圧力を規制し、
上記流量方向制御弁5よりもモータ2側の吐出ライン3と返流ライン4との間には、一方のライン3の流体を他方のライン4にリリーフするためのリリーフ弁22と、これとは逆にライン4の流体を他のライン3にリリーフするためのリリーフ弁23とが介設され、各リリーフ弁22、23の各パイロット室24、25にはその1次側の流体圧力がそれぞれ導かれ、
各リリーフ弁22、23の各バネ室26、27は一対のパイロットライン28、29によってシャトル弁30に導かれると共に、このシャトル弁30によって選択される最高圧力が、パイロットリリーフ弁31の1次側に導かれ、
このパイロットリリーフ弁31においては、そのパイロット室32にその1次側の流体圧力が導かれると共に、そのバネ室33にはその2次側の流体圧力が導かれ、
このパイロットリリーフ弁31の2次側はライン34を介して、上記流量方向制御弁5の負荷圧力検出ポートdへと接続され、
上記モータ2の駆動を停止する場合には、上記流量方向制御弁5を中立位置に復帰させ、上記吐出ライン3と返流ライン4とは共に閉じられ、これと同時に負荷圧力検出ボートdもタンク10へと連通し、バネ室33がタンク10へと開放され、上記パイロットライン28、29の流体が上記バネ室33のバネ力に相当する流体圧力でリリーフされ、上記リリーフ弁23のバネ室27に作用する流体圧力は低くなり、返流ライン4の流体は上記パイロットリリーフ弁31とリリーフ弁23との両バネカに相当する流体圧力でもって吐出ライン3へとリリーフされることになる液圧装置。」
イ 引用文献2の記載
引用文献2には、以下の記載がある。
(2a)
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】図3に示す構成において、例えば操作レバー41により旋回操作弁19を右旋回位置19R又は左旋回位置19Lから、急に中立停止位置19Nに操作したとすると、旋回操作弁19の中立停止位置19Nにおいて、油圧モータ8への作動油が急に遮断され、旋回台が急停止する状態となって、ショックの生じることがある。このような状態は旋回台(作業部)の重量が大きいほど、顕著なものとなる。本発明は作業車の油圧回路構造において、簡素な構成により作業部(油圧アクチュエータ)の駆動停止時でのショックを抑えることができるようにすることを目的としている。」
2 対比・判断
(1) 本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(ア) 引用発明の「ミキサードラム7」は、本願発明1の「ミキサドラム」に相当し、引用発明の「液圧モータ2」は、本願発明1の「容積式の流体圧モータ」と、「流体圧モータ」の限度で共通する。そして、引用発明の「液圧装置」も「ミキサードラム7の駆動に適用される」ことから、「ミキサドラム駆動装置」といえるとともに、「ミキサードラム」の「駆動」が、「回転駆動」であることは技術常識である。
そうすると、引用発明の「ミキサードラム7の駆動に適用される液圧装置であって、」「液圧モータ2を備え」た構成と、本願発明1の「ミキサドラムが容積式の流体圧モータによって回転駆動されるミキサドラム駆動装置」とは、「ミキサドラムが流体圧モータによって回転駆動されるミキサドラム駆動装置」の限度で共通する。
(イ) 本願発明1の「作動流体圧源」に関し、本願明細書には、以下の記載がある。
「【0018】
ミキサドラム駆動装置は、生コンクリート等の収容物を攪拌するミキサドラム1と、このミキサドラム1を駆動するモータユニット80と、作動油圧源(作動流体圧源)となるポンプユニット50と、作動油を貯留するタンク90と、これらを結ぶ油圧配管等によって構成される。」
「【0024】
ポンプユニット50は、エンジン60に回転駆動される油圧ポンプ10とチャージポンプ11、リリーフ弁59、方向切換弁20、ロードセンシング弁40、カットオフ弁70、高圧選択弁16等を備える。」
本願明細書の当該記載を総合すると、本願発明1の「作動流体源」は「油圧ポンプ10とチャージポンプ11、リリーフ弁59、方向切換弁20、ロードセンシング弁40、カットオフ弁70、高圧選択弁16等」を備えた構成であると認められる。
そして、引用発明の「チャージポンプ18」、「リリーフ弁21」、「流量方向制御弁5」及び「安全用の切換弁41」は、その機能・構成から、本願明細書に記載された「チャージポンプ11」、「リリーフ弁59」、「方向切換弁20」及び「カットオフ弁70」にそれぞれ相当し、引用発明の「可変容量形液圧ポンプ1」は、「ロードセンシング弁12」を有することから、本願発明1の「油圧ポンプ10」及び「ロードセンシング弁40」に相当する。
そうすると、引用発明の、少なくとも「ロードセンシング弁12」を有する「可変容量形液圧ポンプ1」、「チャージポンプ18」、「リリーフ弁21」、「流量方向制御弁5」及び「安全用の切換弁41」を備えた構成は、本願発明1の「作動流体源」に相当する。
(ウ) 本願発明1の「第一、第二給排通路」は、「流体圧モータ」に「作動流体源の作動流体」を給排する構成であり、「作動流体源」から「流体圧モータ」までの「給排通路」であると認められる。
そして、上記(ア)及び(イ)によれば、引用発明の「流量方向制御弁5よりもモータ2側の吐出ライン3と返流ライン4」は、「流体圧モータ(液圧モータ2)」に「作動流体源(「ロードセンシング弁12」「を有」する「可変容量形液圧ポンプ1」、「チャージポンプ18」、「リリーフ弁21」、「流量方向制御弁5」及び「安全用の切換弁41」を備えた構成)の作動流体」を給排する構成であるから、引用発明の「流量方向制御弁5よりもモータ2側の吐出ライン3と返流ライン4」は、本願発明の「流体圧モータに作動流体圧源の作動流体を給排する第一、第二給排通路」に相当する。
上記(ア)-(ウ)の検討を総合すると、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「ミキサドラムが流体圧モータによって回転駆動されるミキサドラム駆動装置であって、
前記流体圧モータに作動流体圧源の作動流体を給排する第一、第二給排通路を備えるミキサドラム駆動装置。」
<相違点1>
本願発明1の「流体圧モータ」は「容積式」と特定されているのに対し、引用発明の「流体圧モータ」はそのような特定がされていない点。
<相違点2>
本願発明1の「ミキサドラム駆動装置」は、
「第一、第二給排通路どうしを結ぶモータ負荷圧逃がし通路と、
前記モータ負荷圧逃がし通路を開閉する開閉弁と、
前記ミキサドラムの駆動を停止する指令が出されて前記流体圧モータの駆動が停止された後に、前記指令によって前記ミキサドラムが停止する前の回転方向と逆方向に回転する間は前記開閉弁を開弁させて、前記流体圧モータの容積室に生じる作動流体の負荷圧を前記モータ負荷圧逃がし通路を通じて前記第一、第二給排通路の一方から他方へ逃がすモータ負荷圧逃がし手段と」
を備えているのに対し、引用発明は、そのような「モータ負荷圧逃がし通路」、「開閉弁」及び「モータ負荷圧逃がし手段」を備えていない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点2から検討する。
(ア) 本願明細書には、発明が解決しようとする課題として、以下の記載がある。
「 【0007】
ところで、ミキサドラムに生コンクリートを入れてミキサドラムを一方向(図5の矢印B参照)に回転作動させているときに、ミキサドラムの回転作動を一時的に停止する場合に、攪拌されていた生コンクリートがミキサドラムの内壁の一方に偏り、ミキサドラムに偏荷重が働く状況が生じる。
【0008】
この状況が続くと、生コンクリートの偏荷重によってミキサドラムが油圧モータを駆動してしまい、油圧モータが作動油の内部洩れによって停止前の駆動時と逆方向(図5の矢印A参照)に不連続的に回転した後に停止する。このため、ミキサドラムが不連続的に回転作動して、ミキサドラムがミキサ車を揺らすという問題が生じる。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、流体圧モータが円滑にミキサドラムを停止するミキサドラム駆動装置を提供することを目的とする。」
本願発明1は、上記課題を解決するために、少なくとも
「第一、第二給排通路どうしを結ぶモータ負荷圧逃がし通路と、
前記モータ負荷圧逃がし通路を開閉する開閉弁と、
前記ミキサドラムの駆動を停止する指令が出されて前記流体圧モータの駆動が停止された後に、前記指令によって前記ミキサドラムが停止する前の回転方向と逆方向に回転する間は前記開閉弁を開弁させて、前記流体圧モータの容積室に生じる作動流体の負荷圧を前記モータ負荷圧逃がし通路を通じて前記第一、第二給排通路の一方から他方へ逃がすモータ負荷圧逃がし手段」を課題解決手段として採用したものといえる。
以上を踏まえて検討する。
(イ) 引用文献1には、
「・・・そして上記装置においてミキサードラム107の回転を停止する場合には、流量方向制御弁105を中立位置に位置させ、吐出ライン103と返流ライン104との流路を共に閉じる訳であるが、この際、ミキサードラム107の慣性によってモータ102がポンプとして作用し、返流ライン104に高圧が発生し、ドラム107が急停止してショックを生ずる。この現象を防止するため、上記吐出ライン103と返流ライン104との間には、クロスオーバー形のリリーフ弁108、109が介設されている。・・・」(摘示(1a)(従来の技術))、及び
「・・・上記装置においてはミキサードラム107の急停止と、その際のショックの発生とを完全に防止し得るとはいい難いのが実情である。
この発明は上記に鑑みなされたもので、その目的は、ミキサードラム等の被駆動体の駆動を停止する際に、上記のような急停止及びショックの発生を防止でき、スムーズな停止の行える液圧装置を提供することにある。」(摘示(1a)(発明が解決しようとする問題点))
と記載されている。
引用文献1の当該記載を総合すると、引用文献1には、ミキサードラムの慣性によってモータがポンプとして作用し、返流ラインに高圧が発生し、ドラムが急停止してショックを生ずるという課題は記載されているものの、本願発明1の上記課題は記載も示唆もされていない。
補足すれば、引用発明は、あくまでもミキサードラム等の被駆動体の駆動を停止する際の急停止及びショックの発生を防止する技術であって、ミキサードラム等が停止された後に、停止前の駆動時と逆方向に不連続に回転作動することを防止する技術ではない。
そして、引用文献2には、その解決しようとする課題として、「操作レバー41により旋回操作弁19を右旋回位置19R又は左旋回位置19Lから、急に中立停止位置19Nに操作したとすると、旋回操作弁19の中立停止位置19Nにおいて、油圧モータ8への作動油が急に遮断され、旋回台が急停止する状態となって、ショックの生じることがある。このような状態は旋回台(作業部)の重量が大きいほど、顕著なものとなる。本発明は作業車の油圧回路構造において、簡素な構成により作業部(油圧アクチュエータ)の駆動停止時でのショックを抑えることができるようにすること」(摘示(2a))が記載されているものの、「生コンクリートの偏荷重によってミキサドラムが油圧モータを駆動してしまい、油圧モータが作動油の内部洩れによって停止前の駆動時と逆方向(図5の矢印A参照)に不連続的に回転した後に停止する。このため、ミキサドラムが不連続的に回転作動して、ミキサドラムがミキサ車を揺らすという問題」(本願明細書【0008】)は記載も示唆もされておらず、その課題を解決する手段も同様に記載も示唆もされていない。
してみれば、当業者といえども、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項から、相違点2に係る本願発明1の「ミキサドラム駆動装置」が、
「前記第一、第二給排通路どうしを結ぶモータ負荷圧逃がし通路と、
前記モータ負荷圧逃がし通路を開閉する開閉弁と、
前記ミキサドラムの駆動を停止する指令が出されて前記流体圧モータの駆動が停止された後に、前記指令によって前記ミキサドラムが停止する前の回転方向と逆方向に回転する間は前記開閉弁を開弁させて、前記流体圧モータの容積室に生じる作動流体の負荷圧を前記モータ負荷圧逃がし通路を通じて前記第一、第二給排通路の一方から他方へ逃がすモータ負荷圧逃がし手段と」
を備えるという構成を容易に想到することはできない。
そして、本願発明1は、少なくとも上記相違点2に係る本願発明1の構成により、「ミキサドラム1の駆動が停止される場合に、ミキサドラム1の偏荷重によるトルクがミキサドラム1に働く状況では、流体圧モータ81の負荷圧が給排通路51、52を通じて低圧側へ逃がされることにより、流体圧モータ81が停止前の駆動時と逆方向に連続して回転作動し、ミキサドラム1が円滑に停止」(本願明細書【0083】)し、
「これにより、ミキサドラム1の駆動が停止された後に、流体圧モータ81が作動流体の内部洩れによって不連続的に回転作動することが防止され、ミキサドラム1を揺らすことを抑えられる。」(【0084】)という格別の効果を奏するものである。
(ウ) したがって、相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。
(2) 本願発明2について
ア 対比
上記(1)アにおける検討を踏まえて、本願発明2と引用発明とを対比すると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「ミキサドラムが流体圧モータによって回転駆動されるミキサドラム駆動装置であって、
前記流体圧モータに作動流体圧源の作動流体を給排する第一、第二給排通路を備えるミキサドラム駆動装置。」
<相違点3>
本願発明2の「流体圧モータ」は「容積式」と特定されているのに対し、引用発明の「流体圧モータ」はそのような特定がされていない点。
<相違点4>
本願発明2の「ミキサドラム駆動装置」は、
「第一、第二給排通路の高圧側を前記作動流体圧源の低圧側に連通するモータ負荷圧逃がし通路と、
前記モータ負荷圧逃がし通路を開閉する開閉弁と、
前記ミキサドラムの駆動を停止する指令が出されて前記流体圧モータの駆動が停止された後に、前記指令によって前記ミキサドラムが停止する前の回転方向と逆方向に回転する間は前記開閉弁を開弁させて、前記流体圧モータの容積室に生じる作動流体の負荷圧を前記モータ負荷圧逃がし通路を通じて前記作動流体圧源の低圧側へ逃がすモータ負荷圧逃がし手段と」
を備えているのに対し、引用発明は、そのような「モータ負荷圧逃がし通路」、「開閉弁」及び「モータ負荷圧逃がし手段」を備えていない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点4から検討する。
(ア) 上記1(1)において摘示した引用文献1及び2の記載事項によれば、引用文献1及び2には、本願発明2の課題である、「生コンクリートの偏荷重によってミキサドラムが油圧モータを駆動してしまい、油圧モータが作動油の内部洩れによって停止前の駆動時と逆方向(図5の矢印A参照)に不連続的に回転した後に停止する。このため、ミキサドラムが不連続的に回転作動して、ミキサドラムがミキサ車を揺らすという問題」(本願明細書【0008】)は記載も示唆もされていない。
してみれば、当業者といえども、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項から、相違点4に係る本願発明2の「ミキサドラム駆動装置」が、
「第一、第二給排通路の高圧側を前記作動流体圧源の低圧側に連通するモータ負荷圧逃がし通路と、
前記モータ負荷圧逃がし通路を開閉する開閉弁と、
前記ミキサドラムの駆動を停止する指令が出されて前記流体圧モータの駆動が停止された後に、前記指令によって前記ミキサドラムが停止する前の回転方向と逆方向に回転する間は前記開閉弁を開弁させて、前記流体圧モータの容積室に生じる作動流体の負荷圧を前記モータ負荷圧逃がし通路を通じて前記作動流体圧源の低圧側へ逃がすモータ負荷圧逃がし手段と、」
を備えているのに対し、引用発明は、そのような「モータ負荷圧逃がし通路」、「開閉弁」及び「モータ負荷圧逃がし手段と」
を備えるいう構成を容易に想到することはできない。
そして、本願発明2は、少なくとも上記相違点4に係る本願発明2の構成により、「ミキサドラム1の駆動が停止される場合に、ミキサドラム1の偏荷重によるトルクがミキサドラム1に働く状況では、流体圧モータ81の負荷圧が給排通路51、52を通じて低圧側へ逃がされることにより、流体圧モータ81が停止前の駆動時と逆方向に連続して回転作動し、ミキサドラム1が円滑に停止」(本願明細書【0083】)し、
「これにより、ミキサドラム1の駆動が停止された後に、流体圧モータ81が作動流体の内部洩れによって不連続的に回転作動することが防止され、ミキサドラム1を揺らすことを抑えられる。」(【0084】)という格別の効果を奏するものである。
(イ) したがって、相違点3について判断するまでもなく、本願発明2は、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。
(3) 本願発明3及び4について
本願発明3は、本願発明1または2の構成を、また、本願発明4は、本願発明1-3のいずれかの構成を更に限定して発明を特定するものであって、上記(1)及び(2)のとおり、本願発明1及び2が当業者にとって容易に発明することができたものとはいえないのであるから、同様に、本願発明3及び4は、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-011060