特許拒絶査定不服審判
2017-008964
皮膚用組成物
- 審判番号
- 2017-008964
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-171992外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年06月20日
- 審決日
- 2018年04月10日
- 公報発行日
- 2018年05月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-171992「皮膚用組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月 4日出願公開、特開2016- 44168、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 主な手続の経緯
本願は、平成26年8月26日の出願であって、主な経緯は以下のとおりである。
平成28年 9月26日付け:拒絶理由の通知
同年12月12日 :意見書の提出
平成29年 4月 7日 :拒絶査定(以下、「原査定」という。)
同年 6月20日 :拒絶査定不服審判の請求
第2 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は次のとおりである。
本願請求項1~3に係る発明は、以下の引用文献1~6及び周知技術(引用文献7~10)に基づいて、引用文献1に記載の発明を主たる引用発明として、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2014-152170号公報
2.特開2011-116676号公報
3.特開2009-161440号公報
4.SACRAN From Japanese Pure Water,大東化成工業株式会社,2011年 1月,No.3,8頁,http://www.daitokasei.com/news/img/SACRAN.pdf
5.特開2010-43018号公報
6.特開2005-306760号公報
7.特開2003-12475号公報
8.特開2010-95497号公報
9.特開2009-235051号公報
10.特開2009-132652号公報
第3 本願発明について
本願請求項1~3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明3」という。また、これらをまとめて「本願発明」という。)は、出願時の特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
水、糖誘導体、グリセリン及びリン脂質ポリマーを含有する皮膚用組成物であって、
前記糖誘導体は、淡水性藍藻類スイゼンジノリAphanothece sacrum由来で、平均分子量が2,000,000以上であり、ヘキソース構造を持つ糖構造体及びペントース構造を持つ糖構造体がα-グリコシド結合又はβ-グリコシド結合により直鎖状又は分岐鎖状に連結した糖鎖ユニットの繰り返し構造を持ち、前記糖鎖ユニットが糖構造体として乳酸化された硫酸化糖を含み、かつ、前記糖鎖ユニットにおいて、水酸基100個当たり2.7個以上の水酸基が硫酸化され、あるいは全元素中で硫黄元素が1.5重量%以上を占めることを特徴とし、
前記糖誘導体の濃度が0.15質量%以下であり、
前記リン脂質ポリマーは、ポリクオタニウム-61、ポリクオタニウム-64、ポリクオタニウム-65及びポリクオタニウム-51からなる群から選択される少なくとも1つである、
皮膚用組成物。
【請求項2】
前記糖誘導体の濃度が0.075質量%以下である、請求項1記載の皮膚用組成物。
【請求項3】
前記リン脂質ポリマーがポリクオタニウム-61である、請求項1又は2記載の皮膚用組成物。」
第4 当合議体の認定・判断
1.引用文献の記載事項
引用文献1には、以下の事項(1-1)~(1-5)が記載されている。(下線は当合議体による。以下同じ。)
(1-1)「【請求項1】
(a)淡水性藍藻類であるスイゼンジノリを由来とするスイゼンジノリ多糖体水溶液と、(b)油剤を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項2】
界面活性剤を含有しないことを特徴とする請求項1記載の化粧料。」
(1-2)「【0004】
しかしながら淡水性藍藻類スイゼンジノリを由来とする多糖体は、超高分子量であるため水溶液のみを化粧水などの水性化粧料などに配合すると、乾燥後、肌上で皮膜を形成し、つっぱり感を感じるなどの問題があった。そして、そのつっぱり感を解消するために、界面活性剤を用いて油剤を配合した場合、その界面活性剤によるべたつきが生じるなどの問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明人は鋭意検討した結果、(a)淡水性藍藻類であるスイゼンジノリを由来とするスイゼンジノリ多糖体の超高分子糖構造体が、界面活性剤を配合しなくても、(b)油剤を安定に含有することができることを見出し、本発明を完成するに至った。」
(1-3)「【0007】
以上説明するように、(a)淡水性藍藻類であるスイゼンジノリを由来とするスイゼンジノリ多糖体は超高分子糖構造体を持つため、界面活性剤を配合しなくても、(b)油剤を安定に含有することができる。さらに得られた化粧料は、界面活性剤による肌へのベタつき、刺激性が最低限に抑えられ、さらに、(a)淡水性藍藻類であるスイゼンジノリを由来とするスイゼンジノリ多糖体水溶液による保湿性に加え、(b)油剤による保湿性も得る事ができることは明らかである。」
(1-4)「【0008】
以下、上記本発明を詳細に説明する。
本発明の化粧料で用いる(a)淡水性藍藻類であるスイゼンジノリを由来とするスイゼンジノリ多糖体は、前記特許文献1に記載の方法にて抽出されたものであって、ヘキソース構造をもつ糖構造体およびペントース構造を持つ糖構造体がα-グリコシド結合またはβ-グリコシド結合により直鎖状または分岐鎖状に連結した糖鎖ユニットの繰り返し構造を持ち、前記糖鎖ユニットが糖構造体として乳酸化された硫酸化糖を含み、かつ、前記糖鎖ユニットにおいては、水酸基100個あたり2.7個以上の水酸基が硫酸化され、あるいは全元素中で硫黄元素が1.5質量%以上を占めることを特徴としている。
【0009】
前記スイゼンジノリ多糖体は水溶液中で棒状(棒状らせん状)の構造をとると考えられている。それは、重量平均分子量が約16,000,000のスイゼンジノリ多糖体水溶液の濃度が、0.2%以上で液晶構造をとるためである。・・・」
(1-5)「【実施例】
【0014】
〔実施例1~2、比較例1~2〕
表1の処方と製造方法に従って美容液を試作した。尚、配合量の単位は質量%である。
【0015】
【表1】
【0016】
製造方法
成分Bを均一に混合したあと、成分Aを成分Bに添加し、よく混合した。成分Cを成分AとBの混合物に攪拌しながら添加し、よく混合した。容器に充填し、製品を得た。
【0017】
表1の結果より、本発明の実施例1、2は乳液状を呈し、つっぱり感のなさ、べたつき感のなさ、保湿効果の全ての項目において優れていた。特に、実施例2では、油剤を5%配合しているため、特につっぱり感のなさ、保湿効果に優れていた。これに対して比較例1は油剤を配合していないため、外観は透明で、つっぱり感のなさ、保湿効果という点で実施例より劣っていた。比較例2は、界面活性剤を配合しているため、べたつき感のなさという点で、実施例より劣っていた。」
また、引用文献2、5、6には、以下の事項(2-1)~(2-3)、(5-1)~(5-4)及び(6-1)~(6-3)が記載されている。
(2-1)「【請求項1】
グルコマンナンを主成分とする粒子を配合することを特徴とするメイク落とし用化粧料。
【請求項2】
ポリオクタニウム-51を配合することを特徴とする請求項1に記載のメイク落とし用化粧料。」
(2-2)「【0005】
また、本発明者らは肌に負担の少ないメイク落とし用化粧料を提供するという課題も解決すべく、保湿剤としてポリクオタニウム-51を配合することにより、従来のスクラブ剤を含有して優れたクレンジング効果を有するメイク落とし用化粧料は、使用後につっぱり感を与え、肌を乾燥させているという問題点も解決しようと試みた。このことにより、使用後に肌を乾燥させずに優れたクレンジング効果とマッサージ効果をもたらすメイク落とし用化粧料が提供できることを見いだした。」
(2-3)「【0009】
本発明のもう1つの必須成分であるポリクオタニウム-51に関して説明する。ポリオクタニウム-51は高い保湿機能を有する。ポリクオタニウム-51の働きにより、利用者は使用後のツッパリ感や肌の乾燥を防ぐことが可能となる。」
(5-1)「【請求項1】
平均分子量が10万~100万のメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを構成モノマーとする重合体若しくは共重合体と、平均分子量が10万~500万のポリエチレングリコールおよび/またはポリオキシエチレンメチルグルコシドを配合することを特徴とするスキンケア組成物。」
(5-2)「【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを構成モノマーとして有する分子量が10万~100万の重合体若しくは共重合体と、平均分子量10万~500万のポリエチレングリコールおよび/またはポリオキシエチレンメチルグルコシドを配合することによって、皮膚への塗布時の滑り性に優れ、かつ組成物の塗布時や塗布後における使用感が良好な皮膚外用組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。」
(5-3)「【0011】
本発明に使用できる平均分子量が10万~100万の2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを構成モノマーとする重合体若しくは共重合体は、公知の方法で合成し入手が可能である。(例えば、Polym. J.,22,35,355(1990)、特開平9-3132公報)・・・。中でも2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸イソステアリル共重合体が好ましく、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体が最も好ましい。2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを構成モノマーとする重合体若しくは共重合体の分子量は平均10万~100万が好ましく、50万~70万がより好ましい。・・・」
(5-4)「【0023】
[実験例1:摩擦係数の測定による平滑性評価]
表面試験機を用い、20℃、65RH%の環境で調湿した人工皮膚の上に試料0.2mlを塗布後、樹脂製の接触子を置き、25gの荷重条件にて人工皮膚上を一定速度で動かした。測定は、接触子の変位とこれを動かすのに必要な力を0.1秒間隔で検出し、その値を平均摩擦係数(MIU)として求めた。得られたMIU値は、下記に従って評価した。結果を表1に示す。
◎ MIU値が0.660未満
○ MIU値が0.660以上0.700未満
× MIU値が0.700以上
【0024】
なお、表1中、A、B、C1、C2、C3については、下記の物質を示す。
A:2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体(平均分子量60万)
B:ポリオキシエチレンメチルグルコシド(酸化エチレン平均付加モル数 10)
C1:ポリオキシエチレングリコール (平均分子量 200万)
C2:ポリオキシエチレングリコール (平均分子量 30万)
C3:ポリオキシエチレングリコール (平均分子量 4万)
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
」
(6-1)「【請求項1】
重量平均分子量5,000~1,000,000である一般式(1)の共重合体:
【化1】
・・・・・・・・・・(1)
{式中R1およびR2は、水素原子またはメチル基を示し、R3は炭素数12~22の炭化水素基を示し、X/(X+Y)の値が0.2~0.4である。}
を0.1~30重量%、油相成分を1~90重量%、水を0.1~30重量%含有し、ならびに多価アルコールおよび糖類水溶液からなる群から選ばれる1種以上の親水性基剤を、当該多価アルコールおよび/または当該糖類が1~80重量%となるように含有する親水性基剤中油型乳化組成物。」
(6-2)「【0003】
乳化剤として、通常の合成乳化剤(アニオン型、ノニオン型、そしてカチオン型の合成界面活性剤)を使用した乳化型化粧料(例えばクリーム、乳液等)では、一般に皮膚や毛髪等に刺激を起こさせやすいという難点があった。一方、皮膚や毛髪に対し刺激性がなく比較的安全性が高い天然由来の界面活性剤としてレシチンやその誘導体が知られるが、乳化型化粧料を調製する場合、外観や経日安定性に優れた化粧料を得るのは容易でなく、レシチンやその誘導体以外に含まれるホスホリルコリン以外の不純物が異臭の発生や着色など問題を生じやすい。また、保湿作用や肌荒れ改善作用などのスキンケア効果も十分得られない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記現状に鑑み、本発明は、皮膚、毛髪等に対して安全性が高く、乳化性、保湿作用、保存安定性に優れた乳化型化粧料を提供することを目的とする。」
(6-3)「【0005】
本発明者は、特定のホスホリルコリン基を有する高分子を含有する親水性基剤中油型乳化組成物が、低刺激で高い安全性を有し、保湿作用、保存安定性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、一般式(1)
【化1】
・・・・・・・・・・(1)
{式中R1およびR2は、水素原子またはメチル基を示し、R3は炭素数12~22の炭化水素基を示し、X/(X+Y)の値が0.2~0.4である。}
で示され重量平均分子量5,000~1,000,000である2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに由来する構成単位を含む共重合体(以下、MPC共重合体とする)を0.1~30重量%、油相成分を1~90重量%、水を0.1~30重量%含有し、ならびに多価アルコールおよび糖類水溶液からなる群から選ばれる1種以上の親水性基剤を、当該多価アルコールおよび/または当該糖類が1~80重量%となるように含有する親水性基剤中油型乳化組成物、または該親水性基剤中油型乳化組成物を水中に分散させて得られる水中油型エマルションの形の該組成物を提供する。・・・
・・・
【0009】
本発明に用いられるMPC共重合体において、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに由来する構成単位(A)と炭素数が12~22のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位(B)の関係は、その合計モル数においてAの割合xとBの割合yが、X/(X+Y)の値が0.2~0.4の関係になるように、さらに好ましくは、0.25~0.35の関係になるように選択される。なお、X/(X+Y)の値が0.2未満の場合および0.4を超える場合は、乳化性が低くなるため好ましくない。
・・・
【0011】
本発明に用いられるMPC共重合体は、日本油脂(株)からLipidure-Sの名称で市販されている共重合体が特に好適に用いられる。Lipidure-Sは、重量平均分子量が1,000,000、X=7、Y=3、R=メチル基、R2=メチル基、R3=ステアリル基を有するMPC共重合体である。」
2.引用発明の認定
引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(上記記載事項(1-5)、特に実施例1、2)。
「以下の組成を有する美容液
スイゼンジノリ多糖体0.5%水溶液 30.0 質量%
グリセリン 3.0
1,3-ブチレングリコール 6.0
精製水 残部
防腐剤 適量
スクワラン 2.0又は5.0 」
3.本願発明1について
(1)対比
以下、本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 上記両発明はいずれも「グリセリン」を含有している。また、引用発明における「精製水」及び「美容液」は、それぞれ、本願発明1における「水」及び「皮膚用組成物」に相当する。
イ 引用発明における「スイゼンジノリ多糖体」は、上記記載事項(1-4)によると、「ヘキソース構造をもつ糖構造体およびペントース構造を持つ糖構造体がα-グリコシド結合またはβ-グリコシド結合により直鎖状または分岐鎖状に連結した糖鎖ユニットの繰り返し構造を持ち、前記糖鎖ユニットが糖構造体として乳酸化された硫酸化糖を含み、かつ、前記糖鎖ユニットにおいては、水酸基100個あたり2.7個以上の水酸基が硫酸化され、あるいは全元素中で硫黄元素が1.5質量%以上を占める」ものであり(段落【0008】)、かつ、「平均分子量が約16,000,000」であるから(段落【0009】)、本願発明1における「淡水性藍藻類スイゼンジノリAphanothece sacrum由来で、平均分子量が2,000,000以上であり、ヘキソース構造を持つ糖構造体及びペントース構造を持つ糖構造体がα-グリコシド結合又はβ-グリコシド結合により直鎖状又は分岐鎖状に連結した糖鎖ユニットの繰り返し構造を持ち、前記糖鎖ユニットが糖構造体として乳酸化された硫酸化糖を含み、かつ、前記糖鎖ユニットにおいて、水酸基100個当たり2.7個以上の水酸基が硫酸化され、あるいは全元素中で硫黄元素が1.5重量%以上を占める」ことを特徴とするとされる「糖誘導体」に相当する。
ウ 引用発明における美容液には「スイゼンジノリ多糖体0.5%水溶液」が「30.0質量%」、すなわち、「スイゼンジノリ多糖体」が0.15質量%配合されているから、引用発明の美容液に含まれる「スイゼンジノリ多糖体」の濃度は、本願発明1における「糖誘導体の濃度が0.15質量%以下」との条件を満たす。
そうすると、上記両発明は次の点で一致し、次の点で相違すると認められる。
<一致点>
「水、糖誘導体及びグリセリンを含有する皮膚用組成物であって、
前記糖誘導体は、淡水性藍藻類スイゼンジノリAphanothece sacrum由来で、平均分子量が2,000,000以上であり、ヘキソース構造を持つ糖構造体及びペントース構造を持つ糖構造体がα-グリコシド結合又はβ-グリコシド結合により直鎖状又は分岐鎖状に連結した糖鎖ユニットの繰り返し構造を持ち、前記糖鎖ユニットが糖構造体として乳酸化された硫酸化糖を含み、かつ、前記糖鎖ユニットにおいて、水酸基100個当たり2.7個以上の水酸基が硫酸化され、あるいは全元素中で硫黄元素が1.5重量%以上を占めることを特徴とし、
前記糖誘導体の濃度が0.15質量%以下である、
皮膚用組成物。」
<相違点>
本願発明1においては、「ポリクオタニウム-61、ポリクオタニウム-64、ポリクオタニウム-65及びポリクオタニウム-51からなる群から選択される少なくとも1つである」とされる「リン脂質ポリマー」を含有することが特定されているのに対し、引用発明においては、そのことが特定されていない点。
(2)相違点についての判断
ア 上記記載事項(1-2)によると、引用発明において解決しようとする課題は、(A)「乾燥後、(スイゼンジノリ多糖体が)肌上で皮膜を形成し、つっぱり感を感じるなどの問題」及び(B)「界面活性剤によるべたつきが生じるなどの問題」であり(段落【0004】)、上記記載事項(1-1)~(1-3)及び(1-5)の記載によると、引用発明は、界面活性剤を配合せずに、スイゼンジノリ多糖体と油剤(スクワラン)を併用することにより、これらの課題を同時に解決するものである。
イ そして、上記課題(A)に関し、引用文献2~6の記載を考慮しても、引用発明において、スイゼンジノリ多糖体が形成する皮膜による「ツッパリ感」を抑制するために、上記「リン脂質ポリマー」を配合することが、当業者にとって容易であったということはできない。
すなわち、そもそも引用文献3~6には、上記「リン脂質ポリマー」を配合することにより、「つっぱり感」を抑制し得ることは、記載も示唆もされていない。
また、引用文献2には、ポリクオタニウム-51が高い保湿機能を有しており、使用後のツッパリ感や肌の乾燥を防ぎ得ることが記載されているが(上記記載事項(2-1)~(2-3))、引用文献2は「メイク落とし用化粧料」の発明に関するものであって、引用文献2でいう「使用後のツッパリ感」が、化粧料に配合された他の成分が形成する皮膜に起因する「ツッパリ感」を意味するのではなく、メイク落とし後の肌の乾燥に起因する「ツッパリ感」を意味することは明らかである。したがって、引用文献2の記載から、保湿成分である ポリクオタニウム-51が、肌の乾燥に起因する「ツッパリ感」を抑制し得ることは理解できるとしても、他の成分が形成する皮膜に起因する「ツッパリ感」を抑制し得ることは理解できない。
そして、引用文献1には、「油剤」を配合することにより、「油剤による保湿性も得る事ができる」ことが記載されているものの(上記記載事項(1-3))、当該「油剤」の保湿性に基づいて、スイゼンジノリ多糖体が形成する皮膜による「ツッパリ感」を抑制できるとは記載されておらず、また、保湿性を有する成分を配合すれば、他の成分が形成する皮膜に起因する「ツッパリ感」を抑制し得ることが、本願出願時の技術常識であったともいえない。
ウ また仮に、引用発明に保湿成分を配合しようとする動機が当業者にあったとしても、ポリクオタニウム-51やポリクオタニウム-61などの上記「リン脂質ポリマー」が界面活性作用(乳化作用)を有することは本願出願時に公知の事項であるところ(必要であれば、上記記載事項(6-1)~(6-3)、下記参考文献参照)、上述のとおり、引用発明は、界面活性剤によるべたつき防止を課題の一つとするものであるから(上記課題(B))、数多く存在する保湿成分の中から、あえてそのような界面活性作用を有する保湿成分を選択する動機はなく、むしろ、そのような保湿成分を選択しないことが動機付けられるといえる。
参考文献:FRAGRANCE JOURNAL,1998,Vol.26,No.7,p.97-104(特に第99頁左欄第7~17行)
エ さらに、本願発明による効果に関し、本願明細書においては、上記「リン脂質ポリマー」を配合することにより、「ツッパリ感のなさ」に加え、「のび易さ及びなじみ易さ」の面でも優れた効果が奏されることが、具体的な実施例によって示されている(段落【0039】~【0040】)。
この点に関し、引用文献5には、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体(ポリクオタニウム-51)や2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体(ポリクオタニウム-61)が、「平均分子量が10万~500万のポリエチレングリコールおよび/またはポリオキシエチレンメチルグルコシド」と併用した場合に、皮膚への塗布時の滑り性に優れ、かつ組成物の塗布時や塗布後における使用感が良好な皮膚外用組成物が得られることが記載されている(上記記載事項(5-1)~(5-4))。しかしながら、かかる効果は、ポリクオタニウム-51等を「平均分子量が10万~500万のポリエチレングリコールおよび/またはポリオキシエチレンメチルグルコシド」と併用した場合にのみ奏され、併用しなかった場合には、そのような効果が確認されなかったことが示されている(上記記載事項(5-4)、特に【表2】)。
そうすると、本願発明で確認されている「のび易さ及びなじみ易さ」の面での優れた効果は、単にポリクオタニウム-51等の「リン脂質ポリマー」を配合するだけで奏されるものではないといえるから、本願発明における上記効果は、引用文献から予測し難い優れた効果であるといえる。
オ したがって、本願発明1は、引用文献1~6及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。
4.本願発明2、3について
請求項2、3の記載は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用するものである。そして、本願発明1が引用文献1~6及び周知技術に基づいて想到容易であるということができないことは上述のとおりであるから、本件発明2、3も同様の理由により、想到容易であるということはできない。
第5 むすび
以上のとおり、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-008964