特許拒絶査定不服審判
2017-008603
計測システム、及びその計測方法
- 審判番号
- 2017-008603
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-285548外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年06月13日
- 審決日
- 2018年03月05日
- 公報発行日
- 2018年04月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】川崎重工業株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人 有古特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (G01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-285548「計測システム、及びその計測方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年7月7日出願公開、特開2014-126531、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
この審判事件に関する特許出願(以下、「本願」という。)は、平成24年12月27日にされたものである。その後、平成28年10月12日に特許請求の範囲についての補正がされ、平成29年3月15日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、同21日に査定の謄本が送達された。
これに対して、同年6月13日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)がされた。
第2 本願に係る発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項11に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明11」という。)は、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項11に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
寸法を計測するための計測部を有し、前記計測部を移動可能な計測用ロボットと、
前記計測用ロボットの動きを制御して前記計測部を移動させ、基準寸法通りに成形されているマスターワークの寸法及び前記基準寸法に基づいて成形されている実ワークの寸法を前記計測部を用いて順番に計測し、計測された前記マスターワークにおける2つの計測基点間の寸法であるマスターワーク計測寸法と計測された前記実ワークにおける2つの計測基点間の寸法である実ワーク計測寸法との差分に基づいて前記実ワークの実寸法を算出する制御装置とを備える、計測システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記計測用ロボットを動かして前記マスターワークの寸法を計測した後、複数の前記実ワークの寸法を連続的に計測して各々の前記実ワークの実寸法を算出するように構成されている、請求項1に記載の計測システム。
【請求項3】
前記制御装置は、複数の前記実ワークの寸法を順次計測して各々の前記実ワークの実寸法を算出する際に、前記実ワーク毎に前記マスターワークの寸法を計測して各々の前記実ワークの実寸法を算出するように構成されている、請求項1に記載の計測システム。
【請求項4】
前記マスターワークは、前記実ワークの寸法を計測する際に前記実ワークの近辺エリアに配置されている、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の計測システム。
【請求項5】
前記マスターワーク及び前記実ワークを動かすための搬送装置を備え、
前記制御装置は、前記マスターワークの寸法を計測した後に前記マスターワークを動かし、前記マスターワークが置かれていた位置に前記実ワークを置くように前記搬送装置の動きを制御するように構成されている、請求項1に記載の計測システム。
【請求項6】
前記制御装置は、2つの計測基点間の前記マスターワーク及び前記実ワークの寸法を計測する際、計測基点の側方に位置する起点位置から前記計測基点まで前記計測部を移動させて前記計測基点に関する位置座標を取得し、取得した前記位置座標に基づいて前記マスターワーク及び前記実ワークの寸法を計測するように構成されている、請求項1乃至5のいずれか1つに記載の計測システム。
【請求項7】
前記制御装置は、2つの計測基点間の前記マスターワーク及び前記実ワークの寸法を計測する際、計測基点の側方に位置する起点位置から前記計測基点まで前記計測部を移動させて起点位置から前記計測基点までの移動距離を取得し、取得した移動距離に基づいて前記マスターワーク及び前記実ワークの寸法を計測するように構成されている、請求項1乃至5のいずれか1つに記載の計測システム。
【請求項8】
寸法を計測するための計測部を有し、前記計測部を移動可能な計測用ロボットと、前記計測用ロボットの動きを制御して前記計測部を移動させる制御装置とを備える計測システムの計測方法であって、
前記制御装置が前記計測用ロボットの動きを制御して前記計測部を移動させ、基準寸法通りに成形されているマスターワークの寸法を前記計測部を用いて計測するマスターワーク計測工程と、
前記制御装置が前記計測用ロボットの動きを制御して前記計測部を移動させ、前記基準寸法に基づいて成形されている実ワークの寸法を前記計測部を用いて計測する実ワーク計測工程と、
計測された前記マスターワークにおける2つの計測基点間の寸法であるマスターワーク計測寸法と計測された前記実ワークにおける2つの計測基点間の寸法である実ワーク計測寸法との差分に基づいて前記実ワークの実寸法を算出する実寸法算出工程とを有し、
前記マスターワーク計測工程及び前記実ワーク計測工程を順番に遂行する、計測システムの計測方法。
【請求項9】
前記実ワーク計測工程では、複数の前記実ワークの寸法を連続的に計測する、請求項8に記載の計測システムの計測方法。
【請求項10】
前記マスターワーク計測工程では、前記実ワーク計測工程で前記実ワークの寸法を計測する度に前記マスターワークの寸法を計測する、請求項8に記載の計測システムの計測方法。
【請求項11】
前記マスターワーク計測工程の後に前記マスターワークを動かして前記マスターワークが置かれていた位置に前記実ワークを置くマスターワーク搬送工程を有する、請求項8に記載の計測システムの計測方法。」
なお、本願発明2ないし本願発明7は、いずれも本願発明1の構成を全て含む。また、本願発明8は、本願発明1に係る計測システムの動作を方法の発明として表現したものであり、本願発明9ないし本願発明11は、いずれも本願発明8の構成を全て含む。
第3 原査定の概要
本願発明1ないし本願発明11は、いずれも、後記の引用文献1に記載された発明と、例えば後記の引用文献2ないし引用文献5に記載された周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2003-65742号公報
引用文献2:特開平6-3138号公報
引用文献3:特開2012-198241号公報
引用文献4:特開平5-272903号公報
引用文献5:特開平2-100858号公報
第4 引用文献に記載された発明等
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
引用文献1には、以下の記載がある。下線は、当審が付した。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内径測定方法及び装置に係り、特にフェルールやインジェクション等の微小円筒形ワークの内径寸法を測定する内径測定方法及び装置に関する。」
「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記目的を達成するために、円筒状に形成されたワークの一端から圧縮エアを供給し、その背圧を検出することにより、ワークの内径を測定する内径測定方法において、ワークの長さの変化に対する内径測定値の変化を求めることにより、ワークの長さに応じた内径測定値の修正量を予め取得し、ワークの長さに応じて内径測定値を修正することを特徴とする内径測定方法を提供する。
【0007】本発明によれば、ワークの長さに応じた内径測定値の修正量を予め取得し、ワークの長さに応じて内径測定値を修正する。これにより、長さにバラツキがある複数のワークを測定する場合であっても正確な測定を行うことができる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、添付図面に従って本発明に係る内径測定方法及び装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0009】図1は、本発明に係る内径測定装置の一実施形態を示す全体構成図である。同図に示すように、本実施の形態の内径測定装置10は、供給部12、搬送部14、測定部16、回収部18、マスタ格納部20及び制御部(不図示)で構成されている。」
「【0019】測定部16は、ワークWの長さ測定と内径測定を行う。この測定部16は、図1に示すように、長さ測定部16A、内径測定部16B及び管制部16Cで構成されている。
【0020】長さ測定部16Aは、ワークWの長さを測定する。この長さ測定部16Aは、ワークホルダ100と長さ測定機102とで構成されている。
【0021】ワークホルダ100は、トランスファーロボット44のハンド54の移動軌跡上に配設され、ワークWを垂直に保持する。このワークホルダ100は、円柱状に形成されており、その上面に所定の深さのワーク受け穴104が垂直に形成されている。ワークWは、このワーク受け穴104に挿入されることにより垂直に保持される。
【0022】長さ測定機102は、垂直に上下動する測定アーム106をワークWの頂部に当接させ、その時の測定アーム106の移動量を検出することにより、ワークWの長さを測定する。
【0023】測定アーム106は水平に配設されており、その基端部が昇降体114に支持されている。測定アーム106の先端部には接触子108が固着されており、この接触子108がワークWの頂部に当接される。なお、この接触子108には圧力センサが内蔵されており、この圧力センサによってワークWの頂部への接触が検出される。
【0024】昇降体114は支柱110に配設されたガイドレール112に摺動自在に支持されている。この昇降体114にはネジ穴が形成されており、ネジ穴にはネジ棒118が螺合されている。
【0025】ネジ棒118はガイドレール118と平行に配設されており、その両端部が支柱116の両端部に形成された軸受部120、120に軸支されている。また、このネジ棒118にはモータ122が連結されており、このモータ122を駆動することにより、ネジ棒118が回転する。そして、このネジ棒118が回転することにより、昇降体114が垂直に上下動し、測定アーム106が垂直に上下動する。なお、このモータ122にはエンコーダが内蔵されており、このエンコーダで検出されたモータ122の回転数が管制部16Cに出力される。
【0026】管制部16Cは、エンコーダによって検出されたモータ122の回転数から測定アーム106の移動量を算出し、その移動量に基づいてワークWの長さを演算する。より詳しくは、次のようにワークWの長さを測定する。
【0027】まず、長さが既知のマスタをワークホルダ100にセットする。次に、モータ122を駆動し、所定の測定待機位置に位置していた測定アーム106を下降させる。測定アーム106が下降すると、ある高さの位置で接触子108がマスタの頂部に当接するので、このマスタへの当接を接触子108が検出すると、測定アーム106の下降が停止する。この位置を基準位置とする。管制部16Cは、測定待機位置から基準位置までの測定アーム106の移動量SOを演算し、内蔵するメモリに記憶する。
【0028】次に、再びモータ122を駆動し、測定アーム106を測定待機位置まで上昇させる。そして、ワークホルダ100からマスタを回収し、測定対象のワークWをセットする。
【0029】ワークWをセットしたのち、モータ122を駆動し、再び測定待機位置から測定アーム106を下降させる。測定アーム106は、ある高さの位置で接触子108がワークWの頂部に当接するので、このワークWへの当接を接触子108が検出すると、測定アーム106の下降が停止する。管制部16Cは、待機位置から測定アーム106が停止するまでの移動量Sを演算する。そして、基準位置からの変位量x(x=S-SO)を演算する。
【0030】この基準位置からの変位量xがマスタの長さLOとの差に当たるので、管制部16Cは、既知のマスタの長さLOと、求めた変位量xとから、ワークWの長さL(L=LO+x)を算出する。」
「【0106】なお、本実施の形態では、垂直に上下動する測定アーム106をワークWの頂部に当接させ、その時の測定アーム106の移動量を検出することにより、ワークWの長さを測定するようにしているが、ワークの長さを測定する手段は、これに限定されるものではない。
【0107】たとえば、図6や図7に示すように、ワークWを一対の測定アーム130、130で挟持し、その測定アーム130、130の変位を検出することにより、ワークWの長さを測定するようにしてもよい。また、図8に示すように、一対のCCDカメラ132、132の間にワークWをセットし、そのワークWの端面をCCDカメラ132、132で撮影して、その合焦情報からワークWの長さを測定するようにしてもよい。
【0108】このように、ワークWの長さを測定する手段は、公知の種々の手段を用いることができる。」
【図1】
【図6】
【図7】
(2)引用文献1に記載された発明
引用文献1の前記(1)の記載(特に下線を付した部分及び図1)によれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「長さ測定部16Aと管制部16Cとを備える測定部16であって、
長さ測定部16Aは、ワークホルダ100と長さ測定機102とで構成され、
ワークホルダ100は、円柱状に形成され、その上面に所定の深さのワーク受け穴104が垂直に形成され、ワーク受け穴104に挿入されるワークWを垂直に保持し、
長さ測定機102は、垂直に上下動する測定アーム106を有し、測定アーム106は、水平に配設され、その先端部に接触子108が固着されており、
管制部16Cは、まず、長さが既知のマスタをワークホルダ100にセットすると、所定の測定待機位置に位置していた測定アーム106を下降させ、マスタへの当接を接触子108が検出すると、測定アーム106の下降を停止させ、この位置を基準位置とし、測定待機位置から基準位置までの測定アーム106の移動量SOを演算し、内蔵するメモリに記憶し、次に、測定アーム106を測定待機位置まで上昇させ、ワークホルダ100からマスタを回収して測定対象のワークWをセットすると、再び測定待機位置から測定アーム106を下降させ、ワークWへの当接を接触子108が検出すると、測定アーム106の下降を停止させ、測定待機位置から測定アーム106が停止するまでの移動量Sを演算し、基準位置からの変位量x(x=S-SO)を演算し、既知のマスタの長さLOと、求めた変位量xとから、ワークWの長さL(L=LO+x)を算出する、測定部16。」
2 引用文献2
引用文献2(特に【0004】ないし【0006】、【0010】、【0012】ないし【0015】及び図1ないし図3)には、計測部(プローブ16)をロボット(多関節形駆動機構A)で移動させるという技術事項と、座標値に基づいて計測を行うという技術事項とが記載されている。
3 引用文献3
引用文献3(特に【0019】、【0021】ないし【0025】、図1及び図2)には、較正済みのマスタ又は加工品を座標測定機械で測定又はスキャンした後、一連のワークピースを測定又はスキャンするという技術事項と、一連のワークピースを較正済みのマスタ又は加工品と実質的に同じ位置に置いてスキャン又は測定するという技術事項とが記載されている。
4 引用文献4
引用文献4(特に【0004】、【0020】ないし【0022】及び【0025】)には、較正済みのアーティファクト及びワークピースを座標測定機で検査する際、両者をできるだけ同じ環境に置くために、両者を同じ位置に置くという技術事項と、ワークピースを検査するたびに、較正済みのアーティファクトを測定し直すという技術事項とが記載されている。
5 引用文献5
引用文献5(特に第1ページ左下欄第5行ないし第16行)には、加工ワークの寸法を連続してインプロセスゲージで測定する際、加工ワークの加工位置近傍にマスター品を設置するという技術事項が記載されている。
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。
ア 引用発明の「測定アーム106」は、「その先端部に接触子108が固着されて」いる部材であり、「マスタへの当接を接触子108が検出すると」又は「ワークWへの当接を接触子108が検出すると」「下降を停止させ」、「測定待機位置から基準位置までの測定アーム106の移動量SOを演算し」、また、「測定待機位置から測定アーム106が停止するまでの移動量Sを演算し」、最終的に「ワークWの長さL(L=LO+x)を算出する」ための部材である。そして、「ワークWの長さL」が「ワークW」の寸法であることは、明らかである。
そうすると、引用発明の「測定アーム106」は、寸法を計測するための部材であるということができるから、本願発明1の「寸法を計測するための計測部」に相当する。
イ 引用発明の「長さ測定機102」は、「垂直に上下動する測定アーム106を有」するから、「測定アーム106」を「垂直に上下動」可能な機構であるということができる。
そうすると、前記アを踏まえると、引用発明の「長さ測定機102」と本願発明1の「前記計測部を移動可能な計測用ロボット」とは、「寸法を計測するための計測部を有し、前記計測部を移動可能な計測用機構」である点で共通する。
ウ 引用発明の「長さが既知のマスタ」及び「測定対象のワークW」は、それぞれ本願発明1の「基準寸法通りに成形されているマスターワーク」及び「前記基準寸法に基づいて成形されている実ワーク」に相当する。
エ 引用発明の「管制部16C」は、本願発明1の「制御装置」に相当する。
オ 引用発明の「管制部16C」は、「まず、長さが既知のマスタをワークホルダ100にセットすると、所定の測定待機位置に位置していた測定アーム106を下降させ、マスタへの当接を接触子108が検出すると、測定アーム106の下降を停止させ、この位置を基準位置とし、測定待機位置から基準位置までの測定アーム106の移動量SOを演算」する。ここで、「ワークホルダ100」は、「円柱状に形成され、その上面に所定の深さのワーク受け穴104が垂直に形成され、ワーク受け穴104に挿入されるワークWを垂直に保持」するものであるから、「ワークホルダ100にセット」した「長さが既知のマスタ」の下端の位置は、「ワーク受け穴104」の底面の位置と同じである。そして、「移動量SO」と「長さが既知のマスタ」の寸法とは、「所定の測定待機位置」と「ワーク受け穴104」の底面の位置との間の距離から「移動量SO」を引いたものがが「長さが既知のマスタ」の上端と下端との間の距離、すなわち、「長さが既知のマスタ」の寸法になるという関係にあることが明らかである。
そうすると、引用発明の「移動量SO」は、「長さが既知のマスタ」の寸法に関連する量である。
同様に、引用発明の「移動量S」は、「測定対象のワークW」の寸法に関連する量である。
したがって、引用発明の「管制部16C」は、「長さが既知のマスタ」の寸法に関連する量と、「測定対象のワークW」の寸法に関連する量とを順番に計測しているということができる。
以上に述べたことに加えて、前記アないしウを踏まえると、引用発明の「管制部16C」が「まず、長さが既知のマスタをワークホルダ100にセットすると、所定の測定待機位置に位置していた測定アーム106を下降させ、マスタへの当接を接触子108が検出すると、測定アーム106の下降を停止させ、この位置を基準位置とし、測定待機位置から基準位置までの測定アーム106の移動量SOを演算し、内蔵するメモリに記憶し、次に、測定アーム106を測定待機位置まで上昇させ、ワークホルダ100からマスタを回収して測定対象のワークWをセットすると、再び測定待機位置から測定アーム106を下降させ、ワークWへの当接を接触子108が検出すると、測定アーム106の下降を停止させ、測定待機位置から測定アーム106が停止するまでの移動量Sを演算」することと、本願発明1の「制御装置」が「前記計測用ロボットの動きを制御して前記計測部を移動させ、基準寸法通りに成形されているマスターワークの寸法及び前記基準寸法に基づいて成形されている実ワークの寸法を前記計測部を用いて順番に計測」することとは、「前記計測用機構の動きを制御して前記計測部を移動させ、基準寸法通りに成形されているマスターワークの寸法に関連する量及び前記基準寸法に基づいて成形されている実ワークの寸法に関連する量を前記計測部を用いて順番に計測する」という点で共通する。
カ 前記オを踏まえると、引用発明の「基準位置からの変位量x(x=S-SO)」と、本願発明1の「計測された前記マスターワークにおける2つの計測基点間の寸法であるマスターワーク計測寸法と計測された前記実ワークにおける2つの計測基点間の寸法である実ワーク計測寸法との差分」とは、「計測された前記マスターワークの寸法に関する量と計測された前記実ワークの寸法に関する量との差分」である点で共通する。
キ 前記アないしカを踏まえると、引用発明の「管制部16C」が「基準位置からの変位量x(x=S-SO)を演算し、既知のマスタの長さLOと、求めた変位量xとから、ワークWの長さL(L=LO+x)を算出する」ことと、本願発明1の「制御装置」が「計測された前記マスターワークにおける2つの計測基点間の寸法であるマスターワーク計測寸法と計測された前記実ワークにおける2つの計測基点間の寸法である実ワーク計測寸法との差分に基づいて前記実ワークの実寸法を算出する」こととは、「計測された前記マスターワークの寸法に関する量と計測された前記実ワークの寸法に関する量との差分に基づいて前記実ワークの実寸法を算出する」という点で共通する。
ク 引用発明の「測定部16」は、本願発明1の「計測システム」に相当する。
(2)一致点及び相違点
前記(1)の対比の結果をまとめると、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
ア 一致点
「寸法を計測するための計測部を有し、前記計測部を移動可能な計測用機構と、
前記計測用機構の動きを制御して前記計測部を移動させ、基準寸法通りに成形されているマスターワークの寸法に関連する量及び前記基準寸法に基づいて成形されている実ワークの寸法に関連する量を前記計測部を用いて順番に計測し、計測された前記マスターワークの寸法に関する量と計測された前記実ワークの寸法に関する量との差分に基づいて前記実ワークの実寸法を算出する制御装置とを備える、計測システム。」
イ 相違点
(ア)相違点1
本願発明1は、「計測用機構」が「計測用ロボット」であるのに対し、
引用発明は、「計測用機構」が「長さ測定機102」であり、「水平に配設され、」「垂直に上下動する測定アーム106を有」するものの、計測用ロボットであるかは不明な点。
(イ)相違点2
本願発明1は、「計測された前記マスターワークの寸法に関する量」及び「計測された前記実ワークの寸法に関する量」が、それぞれ、「計測された前記マスターワークにおける2つの計測基点間の寸法であるマスターワーク計測寸法」及び「計測された前記実ワークにおける2つの計測基点間の寸法である実ワーク計測寸法」であるのに対し、
引用発明は、「計測された前記マスターワークの寸法に関する量」及び「計測された前記実ワークの寸法に関する量」が、それぞれ、「測定待機位置から基準位置までの測定アーム106の移動量SO」及び「測定待機位置から測定アーム106が停止するまでの移動量S」である点。
(3)相違点2についての判断
事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。
ア 引用文献1には、「垂直に上下動する測定アーム106をワークWの頂部に当接させ、その時の測定アーム106の移動量を検出することにより、ワークWの長さを測定する」ことに代えて、「ワークWを一対の測定アーム130、130で挟持し、その測定アーム130、130の変位を検出することにより、ワークWの長さを測定するようにしてもよい」旨の記載がある(【0106】、【0107】)。
したがって、引用発明におけるワークWの長さの測定方法として、垂直に上下動する測定アーム106をワークWの頂部に当接させたときの測定アーム106の移動量を検出する方法に代えて、ワークWを挟持した一対の測定アーム130、130の変位を検出する方法を採用することは、引用文献1に記載された事項に基づき、当業者が容易に思い付くことである。その結果、引用発明は、ワークWにおける2つの計測基点間(すなわち、ワークWの一方の端部と他方の端部との間)の寸法を計測する構成を備えることになると認められる。
ところで、ワークWの長さを知るためには、一般に、ワークWの両端の位置(の差)を知る必要があるが、引用発明のように、ワークWの長さの測定方法として、垂直に上下動する測定アーム106をワークWの頂部に当接させたときの測定アーム106の移動量を検出する方法を採用した場合、測定できるのはワークWの頂部(上端)の位置だけであり、ワークWの下端の位置(ワーク受け穴104の底面の位置)は測定することができない。引用発明において、長さが既知のマスタについて同じ方法で測定を行う理由は、この点にあると認められる。長さが既知のマスタの頂部(上端)の位置が分かれば、マスタの長さが既知である以上、長さが既知のマスタの下端の位置(ワーク受け穴104の底面の位置)も必然的に判明するからである。
これに対して、ワークWの長さの測定方法として、ワークWを挟持した一対の測定アーム130、130の変位を検出する方法を採用した場合、一対の測定アーム130、130の変位を検出すれば、ワークWの両端の位置が判明するから、それだけでワークWの長さを知ることができる。すなわち、長さが既知のマスタについて同じ方法で測定を行う必要はない。
そうすると、当業者にとって、そのような場合にまで、長さが既知のマスタの長さを同じ方法で測定し、ワークWの長さとの差分に基づいてワークWの長さを算出するという引用発明の構成を維持する動機付けがあると認めることはできない。
すなわち、引用発明において、ワークWの長さの測定方法として、ワークWを挟持した一対の測定アーム130、130の変位を検出する方法を採用したものは、長さが既知のマスタの長さを同じ方法で測定し、ワークWの長さとの差分に基づいてワークWの長さを算出するという構成を備えるとは限らないから、相違点1を措くとしても、本願発明1の構成を備えるものであるということはできない。
したがって、相違点2に係る本願発明1の構成は、引用文献1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に思い付くことができたものであるということはできない。
イ また、引用文献2ないし引用文献5には、相違点2に係る本願発明1の構成は記載されていないし、示唆されてもいない。
ウ 以上のとおりであるから、相違点2に係る本願発明1の構成は、引用発明及び引用文献1ないし引用文献5に記載された事項に基づいて当業者が容易に思い付くことであるということはできない。
(4)本願発明1についてのまとめ
前記(3)のとおり、相違点2に係る本願発明1の構成は、引用発明及び引用文献1ないし引用文献5に記載された事項に基づいて当業者が容易に思い付くことであるということはできないから、相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1に記載された発明と例えば引用文献2ないし引用文献5に記載された周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
2 本願発明2ないし本願発明7について
本願発明2ないし本願発明7は、いずれも本願発明1の構成を全て含むから、少なくとも本願発明1と引用発明との相違点1及び相違点2(前記1(2)イ(ア)及び(イ))で引用発明と相違する。そして、前記1(3)のとおり、相違点2に係る本願発明1の構成は、引用発明及び引用文献1ないし引用文献5に記載された事項に基づいて当業者が容易に思い付くことであるということはできないから、相違点2に係る本願発明2ないし本願発明7の構成も同様である。
したがって、本願発明2ないし本願発明7は、いずれも、引用文献1に記載された発明と例えば引用文献2ないし引用文献5に記載された周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
3 本願発明8ないし本願発明11について
本願発明8は、本願発明1に係る計測システムの動作を方法の発明として表現したものであり、相違点2に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものである。また、本願発明9ないし本願発明11は、いずれも本願発明8の構成を全て含むから、本願発明8と同様に、相違点2に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものである。
そして、前記1(3)のとおり、相違点2に係る本願発明1の構成は、引用発明及び引用文献1ないし引用文献5に記載された事項に基づいて当業者が容易に思い付くことであるということはできないから、これに対応する本願発明8ないし本願発明11の構成も同様である。
したがって、本願発明8ないし本願発明11は、いずれも、引用文献1に記載された発明と例えば引用文献2ないし引用文献5に記載された周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
第6 原査定について
本願発明1ないし本願発明11は、いずれも本件補正によって、「計測された前記マスターワークにおける2つの計測基点間の寸法であるマスターワーク計測寸法と計測された前記実ワークにおける2つの計測基点間の寸法である実ワーク計測寸法との差分に基づいて前記実ワークの実寸法を算出する」という構成を備えるものとなった。その結果、本願発明1ないし本願発明7は、いずれも相違点2(前記第5の1(2)イ(イ))で引用発明と相違するものとなり、本願発明8ないし本願発明11は、相違点2に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものとなった。そして、既に述べたとおり、相違点2に係る本願発明1ないし本願発明7の構成及びこれに対応する本願発明8ないし本願発明11の構成は、引用発明及び引用文献1ないし引用文献5に記載された事項に基づいて当業者が容易に思い付くことであるということはできない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願は拒絶をするべきものであるということはできない。
また、他に、本願を拒絶するべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-008603