特許拒絶査定不服審判
2017-007441
アイドルストップシステムを採用した車両のエンジン始動装置
- 審判番号
- 2017-007441
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-116587外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年05月24日
- 審決日
- 2018年01月22日
- 公報発行日
- 2018年03月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (F02N) / P18 .537-WY (F02N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-116587号「アイドルストップシステムを採用した車両のエンジン始動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月15日出願公開、特開2014-234762号、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年6月3日の出願であって、平成28年3月11日に手続補正書が提出され、平成28年11月22日付けで拒絶理由が通知され、平成28年12月28日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年2月23日付けで拒絶査定がされ、それに対して平成29年5月24日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 原査定の理由の概要
原査定(平成29年2月23日付け拒絶査定)の理由の概要は次のとおりである。
●理由1(特許法第29条第2項)について
・請求項1ないし4
・引用例1ないし4
引用例1には、エンジンの出力を必要としなくなった場合にエンジンを自動的に停止させ、エンジンの出力が必要になりエンジン再始動要求があれば、エンジンの惰性回転中であっても、エンジン始動装置を作動させてエンジンを再始動させるアイドルストップシステムを採用したものであって、エンジンに連結されたリングギヤ(リングギア23)に噛み合うピニオンギヤ(ピニオンギア244)、ピニオンギヤを回転駆動するモータ(スタータモータ245)、ピニオンギヤをリングギヤと噛み合う位置に移動させる押し出し機構(レバー243)、及びエンジン再始動要求に基づいて通電されると、プランジャー(プランジャ242)を駆動して押し出し機構にピニオンギヤをリングギヤと噛み合う位置に移動させる動作をさせると共に、電磁スイッチを作動させてモータにピニオンギヤを回転駆動する動作をさせるプランジャーの駆動および電磁スイッチの作動に共用のプランジャー駆動コイル(ソレノイド241)を設け、モータの駆動力をオーバランニングクラッチ(ワンウェイクラッチ246)を介してピニオンギヤに伝達させるアイドルストップシステムを採用した車両のエンジン始動装置が記載されている。(段落【0022】及び【0023】,段落【0043】及び【0044】,図1,図2参照。)加えて、この引用例1には、ピニオンギヤをリングギヤに噛み合わせるタイミングを、両者の回転数が所定の回転数差Nengage以下であるか否かに基づいて決定することが記載されており(段落【0049】,段落【0085】参照。)、当該タイミングにおいては、通常、ピニオンギヤは停止している(この点について、もし必要であれば、引用例4の図5も参照されたい。)ことから、引用例1には、アイドルストップによるエンジンの停止中におけるリングギヤの惰性回転の回転数がモータからオーバランニングクラッチを介して駆動されたピニオンギヤの回転数より高い状態下で、エンジン再始動要求に基づいてピニオンギヤをリングギヤに噛み合わせることも記載されていると認められる。
また、引用例4には、トルク伝達用ピニオンギヤ(トルク伝達用ピニオンギア54)と歯厚の薄い同期専用ピニオンギヤ(同期専用ピニオンギア55)とで構成された噛み合い時間の短いピニオンギヤを用いることが記載されている。(段落【0040】ないし【0047】参照。)
さらに、エンジン始動装置の技術分野において、ピニオンギヤを駆動するモータとして直巻巻線界磁式直流電動機を用いたものは、周知である。(例えば、引用例2の段落【0016】や引用例3の段落【0014】参照。)
以上のことから、引用例1記載のピニオンギヤに代えて、引用例4記載のピニオンギヤを採用することは、当業者が容易になし得たことである。また、引用例1記載のモータとして、上述した周知の直巻巻線界磁式直流電動機を採用することは、当業者が適宜なし得たことといえる。
・請求項5及び6
・引用例1ないし5
引用例5には、ピニオンギヤのリングギア側端面に一乃至複数の面取加工が施されたものが記載されている。(図2,図10参照。)
よって、請求項5及び6に係る発明については、引用例1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
<引用例一覧>
1.特開2013-96334号公報
2.特開2012-237218号公報
3.特開2013-79597号公報
4.国際公開第2012/132120号
5.特開2002-250428号公報
●理由2(特許法第36条第6項第2号)について
・請求項5及び6について
請求項5記載の「噛み合い時間を短縮する面取」について、当該記載は、補正前の請求項6に記載された「ピニオンギヤの歯面と平行な形状の面取」との記載の指す構成を明瞭にするためになされたものと認められるが、この補正は補正前の記載を単に機能的に表現したに過ぎず、ここでいう「噛み合い時間を短縮する面取」なる面取構造がどのようなものであるのかは、依然として本願出願当初の明細書等を参酌しても不明である。
したがって、請求項5に係る発明は依然として明確に理解できない。また、請求項6についても上述した理由と同様の理由で、発明を明確に理解できない。
第3 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成28年3月11日提出の手続補正書及び平成29年5月24日提出の手続補正書により補正された明細書及び平成29年5月24日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに平成28年3月11日提出の手続補正書により補正された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)
「【請求項1】
エンジンの出力を必要としなくなった場合に前記エンジンを自動的に停止させ、前記エンジンの出力が必要になりエンジン再始動要求があれば、前記エンジンの惰性回転中であっても、エンジン始動装置を作動させて前記エンジンを再始動させるアイドルストップシステムを採用した車両のエンジン始動装置において、
前記エンジンに連結されたリングギヤに噛み合うピニオンギヤ、
前記ピニオンギヤを回転駆動するモータ、
前記ピニオンギヤを前記リングギヤと噛み合う位置に移動させる押し出し機構、および 前記エンジン再始動要求に基づいて通電されると、プランジャーを駆動して前記押し出し機構に前記ピニオンギヤを前記リングギヤと噛み合う位置に移動させる動作をさせると共に、電磁スイッチを作動させて前記モータに前記ピニオンギヤを回転駆動する動作をさせる前記プランジャーの駆動および前記電磁スイッチの作動に共用のプランジャー駆動コイルを設けたアイドルストップシステムを採用した車両のエンジン始動装置であって、
前記モータを直巻巻線界磁式直流電動機とすると共に、前記ピニオンギヤを噛み合い時間短縮タイプのピニオンギヤとし、
前記エンジン再始動要求に基づいて、前記電磁スイッチの接点をバイパスして前記直巻巻線界磁式直流電動機に直列接続された前記プランジャー駆動コイルおよび前記直巻巻線界磁式直流電動機の直巻巻線界磁に通電され、
前記エンジン再始動要求に基づく前記プランジャー駆動コイルの通電による前記電磁スイッチの作動によって前記電磁スイッチの前記接点を介して前記直巻巻線界磁式直流電動機の直巻巻線界磁および回転子に通電され、
前記エンジン再始動要求に基づく前記プランジャー駆動コイルの通電による前記電磁スイッチの作動によって動作した前記直巻巻線界磁式直流電動機の回転駆動力がオーバランニングクラッチを介して前記ピニオンギヤに伝達され、
アイドルストップによる前記エンジンの停止中における前記リングギヤの惰性回転の回転数が前記直巻巻線界磁式直流電動機から前記オーバランニングクラッチを介して駆動された前記ピニオンギヤの回転数より高い状態下で、前記エンジン再始動要求に基づく前記プランジャー駆動コイルの通電によって作動した前記電磁スイッチの前記接点を介して通電された前記直巻巻線界磁式直流電動機による前記噛み合い時間短縮タイプのピニオンギヤの回転駆動と、前記エンジン再始動要求に基づく前記プランジャー駆動コイルの通電によって作動した前記押し出し機構による前記噛み合い時間短縮タイプのピニオンギヤの前記リングギヤとの噛み合い位置への移動とが行われることにより、前記エンジン再始動要求からエンジン再始動までの時間の短縮化が行われる
ことを特徴とするアイドルストップシステムを採用した車両のエンジン始動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアイドルストップシステムを採用した車両のエンジン始動装置において、
前記噛み合い時間短縮タイプのピニオンギヤが、前記リングギヤとの噛み合い後のトルク伝達用ピニオンギヤと、前記リングギヤとの回転同期を司る同期専用ピニオンギヤとで構成された噛み合い時間短縮タイプのピニオンギヤである
ことを特徴とするアイドルストップシステムを採用した車両のエンジン始動装置。
【請求項3】
請求項1に記載のアイドルストップシステムを採用した車両のエンジン始動装置において、
前記噛み合い時間短縮タイプのピニオンギヤが、トルクを伝達するギヤ面よりも歯厚が細くなった同期専用のギヤ面を有した噛み合い時間短縮タイプのピニオンギヤである
ことを特徴とするアイドルストップシステムを採用した車両のエンジン始動装置。
【請求項4】
請求項1に記載のアイドルストップシステムを採用した車両のエンジン始動装置において、
前記噛み合い時間短縮タイプのピニオンギヤが、前記ピニオンギヤの前記リングギヤの側の先端に同期専用突起部を有した噛み合い時間短縮タイプのピニオンギヤである
ことを特徴とするアイドルストップシステムを採用した車両のエンジン始動装置。
【請求項5】
請求項1に記載のアイドルストップシステムを採用した車両のエンジン始動装置において、
前記噛み合い時間短縮タイプのピニオンギヤが、前記ピニオンギヤの歯面と前記ピニオンギヤの前記移動の方向の先端側の面との交わる角部分に形成され前記歯面に対いて所定角度傾斜した面取を有する噛み合い時間短縮タイプのピニオンギヤである
ことを特徴とするアイドルストップシステムを採用した車両のエンジン始動装置。
【請求項6】
請求項5に記載のアイドルストップシステムを採用した車両のエンジン始動装置において、
前記面取が、前記歯面に沿って少なくとも2面以上の多段面取である
ことを特徴とするアイドルストップシステムを採用した車両のエンジン始動装置。」
第4 引用例
1.引用例1(特開2013-96334号公報)について
原査定の理由に引用され、本願の出願前に頒布された上記引用例1には、「エンジン制御装置およびエンジンの制御装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)。
(1)引用例1の記載事項
1a)「【0012】
この発明に係るエンジン制御装置は、エンジン自動停止条件の成立によりエンジンを自動停止させ、その後再始動条件の成立によりエンジンを再始動させるエンジン自動停止再始動装置を備えたエンジン制御装置であって、エンジンのクランク軸のクランク角を検出するクランク角センサと、クランク角に基づいて、エンジン回転数を演算するエンジン回転数演算部と、クランク角に基づいて、クランク角変化量を演算するクランク角変化量演算部と、再始動条件の成立後、エンジン回転数が、あらかじめ設定された所定回転数よりも高くなった場合に、エンジンが完爆したと判定するエンジン完爆判定部と、再始動条件の成立後におけるエンジンの初回点火によるエンジン回転数の上昇量を演算するエンジン回転数上昇量演算部と、エンジン回転数の上昇量に基づいて、再始動失敗判定閾値を設定する始動失敗判定クランク角変化量判定値設定部と、再始動条件の成立後におけるエンジンの初回点火タイミングからのクランク角変化量が、エンジンが完爆したと判定されていないにも関わらず、再始動失敗判定閾値よりも大きくなった場合に、再始動失敗と判定し、エンジンの再始動を中止して、所定時間経過後にエンジンの再始動を再開する再始動失敗判定部と、を備えたものである。」(段落【0012】)
1b)「【0022】
続いて、図1とともに、図2を参照しながら、エンジン自動停止再始動装置20の構成および動作について説明する。図1、2において、エンジン自動停止再始動装置20は、クランク角センサ21と、コントローラ22と、リングギア23と、スタータ24とを備えている。リングギア23は、エンジンのクランク軸(図示せず)に連結されている。コントローラ22は、エンジンECU10からの駆動指令を受けてスタータ24の駆動、具体的には、ソレノイド241への通電を制御する。
【0023】
ソレノイド241への通電により、プランジャ242が吸引され、レバー243を介してピニオンギア244が移動されることで、ピニオンギア244がリングギア23と噛み合わされる。また、プランジャ242の移動により接点が閉じられ、スタータモータ245へと通電され、ピニオンギア244が回転されて、リングギア23がピニオンギア244と噛み合った状態で、駆動力がエンジンに伝達される。また、ワンウェイクラッチ246は、スタータモータ245の出力軸に連結され、リングギア23からトルクが入力された場合には空転する。」(段落【0022】及び【0023】)
1c)「【0048】
図5は、この発明の実施の形態1に係るエンジン制御装置におけるエンジン再始動制御ルーチンの流れを示すフローチャートである。
まず、エンジン再始動判定部32は、エンジン回転数Nrが、ピニオンギア244とリングギア23とを噛合可能な所定回転数Nengage(例えば、80rpm)よりも小さいか否かを判定する(ステップS201)。
【0049】
ステップS201において、エンジン回転数Nrが、ピニオンギア244とリングギア23とを噛合可能な所定回転数Nengageよりも小さい(すなわち、Yes)と判定された場合には、エンジン再始動判定部32は、ピニオンギア244とリングギア23との噛合が可能であると判断し、後述する燃料噴射&点火中止フラグが0であるか否かを判定する(ステップS202)。
【0050】
一方、ステップS201において、エンジン回転数Nrが、ピニオンギア244とリングギア23とを噛合可能な所定回転数Nengage以上である(すなわち、No)と判定された場合には、ピニオンギア244とリングギア23との噛合が不可能であると判断し、図5の処理を終了して燃料カット制御ルーチンへと戻る。
【0051】
ステップS202において、燃料噴射&点火中止フラグが0である(すなわち、Yes)と判定された場合には、エンジン再始動判定部32は、ソレノイド241への通電をオンにする(ステップS203)。
【0052】
このとき、ソレノイド241とプランジャ242との間には、吸引力が発生するので、プランジャ242が軸方向に移動し、これによりレバー243を介してピニオンギア244が軸方向に移動し、ピニオンギア244とリングギア23とが噛合を開始し、さらにプランジャ242の移動によって接点が閉じ、スタータモータ245に通電される。」(段落【0048】ないし【0052】)
1d)「【0085】
次に、エンジン回転数Nrが、ピニオンギア244とリングギア23とが噛合可能な所定回転数差Nengageよりも小さくなる時刻t3において、ソレノイド241への通電が開始され、ピニオンギア244とリングギア23とが噛合され、スタータモータ245が駆動を開始する。ここで、ソレノイド241への通電が開始されると同時に、所定の複数気筒に初回の燃料噴射が再開され、続いて、爆発行程中のクランク角B05℃A毎に燃料噴射が実施される。」(段落【0085】)
(2)上記(1)及び図面から分かること
1e)図12ないし図14の記載から、エンジンの再始動は、エンジン自動停止後のエンジンの慣性回転中に行われることが分かる。
1f)上記1c)段落【0052】の記載から、ソレノイド241は、プランジャ242を移動してレバー243にピニオンギア244をリングギア23と噛合う位置に移動させるように動作させると共に、接点を閉じてスタータモータ245にピニオンギア244を回転させる、プランジャ242の移動及び接点を閉じるのに共用のソレノイド241であることが分かる。
1g)上記1b)及び図2の記載から、スタータモータ245の駆動力がワンウェイクラッチ246を介してピニオンギア244に伝達されることが分かる。
(3)引用発明
上記(1)、(2)及び図面からみて、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「エンジン自動停止条件の成立によりエンジンを自動停止させ、再始動条件の成立により、エンジンの慣性回転中であっても、エンジンを再始動させるエンジン自動停止再始動装置において、
エンジンのクランク軸に連結されているリングギア23に噛み合わされるピニオンギア244、
ピニオンギア244を回転するスタータモータ245、
ピニオンギア244をリングギア23と噛み合う位置に移動させるレバー243、
およびエンジン再始動判定部32の判定により通電されると、プランジャ242を移動してレバー243にピニオンギア244をリングギア23と噛み合う位置に移動させるように動作させると共に、接点を閉じてスタータモータ245にピニオンギア244を回転させる、プランジャ242の移動及び接点を閉じるのに共用のソレノイド241を設けたエンジン自動停止再始動装置であって、
エンジン再始動判定部32の判定によるソレノイド241の通電によって接点が閉じられることにより、接点を介してスタータモータ245に通電され、
エンジン再始動判定部32の判定によるソレノイド241の通電によって接点が閉じられることにより動作したスタータモータ245の駆動力がワンウェイクラッチ246を介してピニオンギア244に伝達され、
エンジン再始動判定部32は、エンジン回転数Nrが、ピニオンギア244とリングギア23とを噛合可能な所定回転数Nengageよりも小さいか否かを判定し、エンジン回転数Nrが、ピニオンギア244とリングギア23とを噛合可能な所定回転数Nengageよりも小さいと判定された場合には、エンジン再始動判定部32は、ピニオンギア244とリングギア23との噛合が可能であると判断して、ソレノイド241への通電をオンにする、エンジン自動停止再始動装置。」
2.引用例2(特開2012-237218号公報)について
原査定の理由に引用され、本願の出願前に頒布された上記引用例2には、「内燃機関の自動停止再始動装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)。
(1)引用例2の記載事項
2a)「【0016】
更に、エンジン1には、図示しないキーオンでの始動や再始動のために、エンジン1の図示しないクランク軸に連結されているリングギア16を回転駆動させるスタータ15が設けられている。また、エンジン1には、クランク軸には図示しないクラッチが接続されており、このクラッチは、後述するECU22からの駆動信号を受けて係合、開放動作を行い、さらに図示しない変速機と接続される。エンジン1の運転時の出力は、クラッチが係合状態で変速機を介して図示しない車輪に伝達される。また、このスタータ15は、リングギア16と噛み合い、リングギア16を回転駆動させるピニオンギア17と、そのピニオンギア17をリングギア16に噛み合せるためのピニオン押し出し装置18と、スタータモータ19を駆動させピニオンギア17を回転駆動させる直巻きコイル式のスタータモータ駆動装置20とを備えている。このスタータモータ駆動装置20とピニオン押し出し装置18は、ECU22からの駆動信号によって個々で駆動される。スタータ15の動作に関しては後述する。また、バッテリ21は、スタータ15及びECU22や上述の各種センサに電力を供給する。」(段落【0016】)
(2)引用例2技術
上記(1)及び図面からみて、引用例2には以下の技術(以下、「引用例2技術」という。)が記載されている。
「ピニオンギア17を回転駆動させるエンジンのスタータモータ19を直巻きコイル式のモータとする技術。」
3.引用例3(特開2013-79597号公報)について
原査定の理由に引用され、本願の出願前に頒布された上記引用例3には、「エンジン始動装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)。
(1)引用例3の記載事項
3a)「【0013】
図1及び図2において、エンジン始動装置1は、回転力を発生させるモータ2と、このモータ2の回転力が減速装置3を介して伝達されて回転する出力軸4と、この出力軸4の外周に設けられたヘリカルスプライン4aを介して結合されるクラッチ5と、このクラッチ5と一体に出力軸4の外周を軸方向(図示左右方向)に移動可能に設けられたピニオン6と、レバー7を介してクラッチ5とピニオン6を反モータ方向(図示右方向)へ押し出すピニオン押出用ソレノイド8と、図示しないバッテリからモータ2に作動電流を流すためのモータ回路に設けられるモータ接点(後述する)を開閉するモータ通電用スイッチ9等により構成される。
【0014】
モータ2は、磁気回路を構成するヨーク10の内周に複数の永久磁石11(界磁コイルでもよい)を配置して構成される界磁と、電機子軸12aに固定された電機子鉄心12bに電機子コイル12cを巻線して構成され、電機子コイル12cに作用する電磁力によって電機子軸12aに回転力を発生させる電機子12と、整流子13を介して電機子コイル12cにバッテリ電流を供給するブラシ14等を備える周知の直流電動機である。
この電機子12は、電機子軸12aの一端側を出力軸4に相対回転可能に支持され、電機子軸12aの他端側を軸受15を介してリヤブラケット16に回転可能に支持されている。」(段落【0014】)
(2)引用例3技術
上記(1)及び図面からみて、引用例3には以下の技術(以下、「引用例3技術」という。)が記載されている。
「エンジン始動装置1における回転力を発生させるモータ2を磁気回路を構成するヨーク10の内周に複数の界磁コイルを配置して構成される界磁と、電機子軸12aに固定された電機子鉄心12bに電機子コイル12cを巻線して構成する技術。」
4.引用例4(国際公開第2012/132120号)について
原査定の理由に引用され、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記引用例4には、「エンジン始動装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)。
(1)引用例4の記載事項
4a)「[0034]図5は、本発明の実施の形態1に係るエンジン始動装置において、停止動作後にエンジン回転数が減少した後、再始動により噛み合いを実施した場合のエンジン回転数の様子を示した図である。エンジン回転数は、C10に示すように、脈動しながら減速する。その後、C20において、エンジンの再始動要求があったときに、自己復帰回転数以下であるため、コイル4aに通電してピニオンを押し出すことで、ピニオンとリングギアがC30において当接する。
[0035]C30で当接した後のタイミングで、スタータモータ1が回り始めるような寸法関係で構成されたスイッチによって、例えば、ピニオン押し出しタイミング後から40msec後に、スタータモータ1が回転し始めるように設定されている。そして、エンジン回転数とモータ回転数が一致したC40において、スタータモータ1がトルクを伝達してエンジンを始動させる。なお、C50は、ピニオンギアの回転数(エンジン回転数に相当)の挙動を示している。
[0036]これらの動きの中で、スタータモータ1を回さないことにより、C30-C40間の時間の立ち上がりロスは発生するが、間隔的に短く、問題ないレベルである。そして、このように構成されたエンジン始動装置は、低コストで、再始動時間や騒音による違和感を与えない動作が可能となる。
[0037]以上のように、実施の形態1によれば、エンジン停止要求後に再始動要求があった場合に、始動スイッチをオン状態とすることで、ピニオンギアを押し出すとともに、ピニオンギアがリングギアに当接するかまたは噛み込むまで、スタータモータが動作しないように、押し出し機構の動作、およびスタータモータを回すためのプランジャーコイルのコイル動作が設定されている。この結果、スタータのピニオンギアとリングギアの特別な制御が不要であり、ピニオンギアの押し出しとスタータモータの回転を別々に実施するようなリレーや制御をなくし低コスト化を図った上で、リングギア回転中の再始動もできるエンジン始動装置を得ることができる。」(段落[0034]ないし[0037])
4b)「[0040]図6は、本発明の実施の形態2に係るピニオン部5の構成図である。本実施の形態2における図6に示したピニオン部5は、ワンウェイクラッチ51、軸芯52、バネ53、トルク伝達用ピニオンギア54、同期専用ピニオンギア55、およびストッパー56を備えて構成されている。
[0041]ピニオン部5におけるピニオンギアは、図6に示すような噛み合い同期用の同期専用ピニオンギア55と、噛み合い後のトルク伝達用ピニオンギア54を有し、バネで軸方向に移動することができる。さらに、ピニオン部5は、ワンウェイクラッチ51を有しており、リングギアが早い回転方向へは空回りする機構となっている。」(段落[0040]及び[0041])
4c)「[0045]以上のように、実施の形態2によれば、噛み合い同期用の同期専用ピニオンギアを有するピニオン部を用いることで、先の実施の形態1の効果に加え、噛み合い時間の短縮化が可能となり、さらなる低騒音化を実現できる。」(段落[0045])
4d)「[0046]なお、本同期用のギアについては、上述した方式に限ったものではない。図9は、本発明の実施の形態2に係るピニオン部5の別の構成図である。この図9に示すように、ピニオンギア自体は、符号54として一体のものである。ただし、ピニオンギア54の先端部に関して、その形状を工夫することで、同期用ギアの役割を果たすことができる。
[0047]その具体例として、図10、図11を用いて説明する。図10、図11は、本発明の実施の形態2に係る先の図9のピニオンギア54の先端部の具体的な形状に関する説明図である。例えば、図10に示すように、トルク伝達するギア面54aより歯厚が細くなっている同期専用のギア面54bをピニオンギア54の先端部に有する形状、あるいは、図11に示すように、同期専用の突起として突起部54cをピニオンギア54の先端部に有する形状であってもよい。
[0048]ここで、図10、図11に示したそれぞれのピニオンギア54は、リングギア6が回転中にも噛み合えるように、同期専用部分を有している場合を例示したが、ピニオンギアに限らず、リングギア6にも、同様の構造があってもよい。」(段落[0046]ないし[0048])
4e)図6の記載から、噛み合い同期用の同期専用ピニオンギア55は歯厚が薄く、噛み合い後のトルク伝達用ピニオンギア54は歯厚が厚いことが看取できる。
(2)引用例4技術
上記(1)及び図面からみて、引用例4には以下の技術(以下、「引用例4技術」という。)が記載されている。
「スタータモータ1のピニオンギアを、歯厚の薄い噛み合い同期用の同期専用ピニオンギア55及び歯厚の厚い噛み合い後のトルク伝達用ピニオンギア54で構成する技術。」
5.引用例5(特開2002-250428号公報)について
原査定の理由に引用され、本願の出願前に頒布された上記引用例5には、「インボリュート歯車装置、エンジンの始動機構、およびスタータ」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)。
5a)「【0011】・・・図11は、自動車等のスタータのピニオンと、エンジンに装着されたリングギヤからなる始動機構の構成を示す側面図である。電動機7を有するスタータ6には、電動機7で回転駆動されるピニオンである駆動歯車1が設けられ、駆動歯車1が軸方向に移動して、図示しないエンジンのクランクシャフトに連結した軸5に取り付けられたリングギヤである従動歯車2と噛合ってクランクシャフトが回転し、エンジンが始動する。
【0012】図1は図11に示した始動機構の歯車装置の構成例を示す側面図である。駆動歯車1は軸4を中心として軸4の回転方向に係合されて回転するとともに軸4上で軸方向に移動できるようになっている。従動歯車2は軸5を中心として回転し軸5も回転する。駆動歯車1と従動歯車2は中心距離Laを隔てて相対しており、駆動歯車1が軸4の軸方向に摺動、回転して従動歯車2との噛合い、離脱を行う。その結果、軸4の回転駆動力が駆動歯車1から従動歯車2に伝わり、軸5に伝わる。
【0013】このインボリュート歯車装置を自動車等のエンジンのスタータに用いた場合は、軸4がスタータの電動機に、軸5がエンジンのクランクシャフトに接続されているので、電動機の回転駆動力がエンジンのクランクシャフトを回転させて、エンジンが始動する。
【0014】図2から図6に本発明の第1の実施例を示す。
【0015】図2は、駆動歯車1の面取り形状を示す斜視図である。駆動歯車1の歯1aの反回転方向歯面側面取り部1bと端面1dとの稜線B1は、軸方向から見たときに、駆動歯車1の歯形インボリュート曲線と同一形状のインボリュート曲線となっている。」(段落【0011】ないし【0015】)
5b)図2から、駆動歯車1の歯面と、駆動歯車1の先端部とが交わる角部分に面取り部を設けることが看取できる。
(2)引用例5技術
上記(1)及び図面からみて、引用例5には以下の技術(以下、「引用例5技術」という。)が記載されている。
「スタータ6に設けられた電動機7で回転駆動されるピニオンである駆動歯車1の歯面と、駆動歯車1の先端部とが交わる角部分に面取り部を設ける技術。」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明における「エンジン自動停止条件の成立により」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明1における「エンジンの出力を必要としなくなった場合に」に相当し、以下同様に、「エンジンを自動停止させ」は「エンジンを自動的に停止させ」に、「再始動条件の成立により」は「エンジンの出力が必要になりエンジン再始動要求があれば」に、「エンジンを再始動させる」は「エンジン始動装置を作動させてエンジンを再始動させる」に、「エンジン自動停止再始動装置」は「アイドルストップシステムを採用した車両のエンジン始動装置」に、「エンジンのクランク軸に連結されている」は「エンジンに連結された」に、「リングギア23」は「リングギア」に、「噛み合わされる」は「噛み合う」に、「回転する」は「回転駆動する」に、「レバー243」は「押し出し機構」に、「エンジン再始動判定部32の判定により」は「エンジン再始動要求に基づいて」に、「プランジャ242」は「プランジャー」に、「移動」は「駆動」に、「移動させるように動作させる」は「移動させる動作をさせる」に、「接点」は「電磁スイッチ」または「電磁スイッチの接点」に、「接点を閉じて」は「電磁スイッチを作動させて」に、「回転させる」は「回転駆動する操作をさせる」に、「接点を閉じる」は「電磁スイッチの作動」に、「ソレノイド241」は「プランジャー駆動コイル」に、「設けた」は「採用した」に、「エンジン自動停止再始動装置」は「車両のエンジン始動装置」に、「接点が閉じられることにより」は「電磁スイッチの作動によって」に、「駆動力」は「回転駆動力」に、「ワンウェイクラッチ246」は「オーバランニングクラッチ」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明における「ピニオンギア244」と、本願発明1における「噛み合い時間短縮タイプ」の「ピニオンギア」とは、「ピニオンギア」という限りにおいて一致し、
引用発明における「スタータモータ245」と、本願発明1における「直巻巻線界磁式直流電動機」または「モータ」とは、「モータ」という限りにおいて一致し、
引用発明における「スタータモータ245に通電され」と、本願発明1における「直巻巻線界磁式直流電動機の直巻巻線および回転子に通電され」とは、「モータに通電され」という限りにおいて一致する。
したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「エンジンの出力を必要としなくなった場合にエンジンを自動的に停止させ、エンジンの出力が必要になりエンジン再始動要求があれば、エンジンの惰性回転中であっても、エンジン始動装置を作動させてエンジンを再始動させるアイドルストップシステムを採用した車両のエンジン始動装置において、
エンジンに連結されたリングギヤに噛み合うピニオンギヤ、
ピニオンギヤを回転駆動するモータ、
ピニオンギヤをリングギヤと噛み合う位置に移動させる押し出し機構、および
エンジン再始動要求に基づいて通電されると、プランジャーを駆動して押し出し機構にピニオンギヤをリングギヤと噛み合う位置に移動させる動作をさせると共に、電磁スイッチを作動させてモータにピニオンギヤを回転駆動する動作をさせるプランジャーの駆動および電磁スイッチの作動に共用のプランジャー駆動コイルを設けたアイドルストップシステムを採用した車両のエンジン始動装置であって、
エンジン再始動要求に基づくプランジャー駆動コイルの通電による電磁スイッチの作動によって電磁スイッチの接点を介してモータに通電され、
エンジン再始動要求に基づくプランジャー駆動コイルの通電による電磁スイッチの作動によって動作したモータの回転駆動力がオーバランニングクラッチを介してピニオンギヤに伝達される、アイドルストップシステムを採用した車両のエンジン始動装置。」
[相違点1]
「エンジン再始動要求に基づくプランジャー駆動コイルの通電による電磁スイッチの作動によって電磁スイッチの接点を介してモータに通電され、
エンジン再始動要求に基づくプランジャー駆動コイルの通電による電磁スイッチの作動によって動作したモータの回転駆動力がオーバランニングクラッチを介してピニオンギヤに伝達される」に関して、本願発明1においては、「モータを直巻巻線界磁式直流電動機とすると共に、ピニオンギヤを噛み合い時間短縮タイプのピニオンギヤとし、
エンジン再始動要求に基づいて、電磁スイッチの接点をバイパスして直巻巻線界磁式直流電動機に直列接続されたプランジャー駆動コイルおよび直巻巻線界磁式直流電動機の直巻巻線界磁に通電され」、
エンジン再始動要求に基づくプランジャー駆動コイルの通電による電磁スイッチの作動によって電磁スイッチの接点を介して「直巻巻線界磁式直流電動機の直巻巻線界磁および回転子」に通電され、
エンジン再始動要求に基づくプランジャー駆動コイルの通電による電磁スイッチの作動によって動作した「直巻巻線界磁式直流電動機」の回転駆動力がオーバランニングクラッチを介して前記ピニオンギヤに伝達されるのに対して、
引用発明においては、「エンジン再始動判定部32の判定によるソレノイド241の通電によって接点が閉じられることにより、接点を介してスタータモータ245に通電され、
エンジン再始動判定部32の判定によるソレノイド241の通電によって接点が閉じられることにより動作したスタータモータ245の駆動力がワンウェイクラッチ246を介してピニオンギア244に伝達され」るものであるが、
「スタータモータ245」を直巻巻線界磁式直流電動機としたか、また、「ピニオンギア244」を噛み合い時間短縮タイプとしたか不明であり、エンジン再始動判定部32の判定により接点をバイパスして直巻巻線界磁式直流電動機に直列接続されたソレノイド241および直巻巻線界磁式直流電動機の直巻巻線界磁に通電されるものであるか不明であるとともに、接点を介して直巻巻線界磁式直流電動機の直巻巻線界磁および回転子に通電されるものであるかも不明である点(以下、「相違点1」という。)。
[相違点2]
本願発明1においては、「アイドルストップによるエンジンの停止中におけるリングギヤの惰性回転の回転数が直巻巻線界磁式直流電動機からオーバランニングクラッチを介して駆動されたピニオンギヤの回転数より高い状態下で、エンジン再始動要求に基づくプランジャー駆動コイルの通電によって作動した電磁スイッチの接点を介して通電された直巻巻線界磁式直流電動機による噛み合い時間短縮タイプのピニオンギヤの回転駆動と、エンジン再始動要求に基づくプランジャー駆動コイルの通電によって作動した押し出し機構による噛み合い時間短縮タイプのピニオンギヤのリングギヤとの噛み合い位置への移動とが行われることにより、エンジン再始動要求からエンジン再始動までの時間の短縮化が行われる」のに対して、
引用発明においては、「エンジン再始動判定部32は、エンジン回転数Nrが、ピニオンギア244とリングギア23とを噛合可能な所定回転数Nengageよりも小さいか否かを判定し、エンジン回転数Nrが、ピニオンギア244とリングギア23とを噛合可能な所定回転数Nengageよりも小さいと判定された場合には、エンジン再始動判定部32は、ピニオンギア244とリングギア23との噛合が可能であると判断して、ソレノイド241への通電をオンにする」ものであるが、リングギア23の回転数がピニオンギア244の回転数よりも高い状態下で、スタータモータ245によるピニオンギア244の回転と、レバー243によるピニオンギヤのリングギヤとの噛み合い位置への移動が行なわれるか不明である点(以下、「相違点2」という。)。
事案に鑑み、まず、上記相違点2から検討する。
[相違点2について]
引用例2技術は、「ピニオンギア17を回転駆動させるエンジンのスタータモータ19を直巻きコイル式のモータとする技術」、
引用例3技術は、「エンジン始動装置1における回転力を発生させるモータ2を磁気回路を構成するヨーク10の内周に複数の界磁コイルを配置して構成される界磁と、電機子軸12aに固定された電機子鉄心12bに電機子コイル12cを巻線して構成する技術」、
引用例4技術は、「スタータモータ1のピニオンギアを、歯厚の薄い噛み合い同期用の同期専用ピニオンギア55及び歯厚の厚い噛み合い後のトルク伝達用ピニオンギア54で構成する技術」、
引用例5技術は、「スタータ6に設けられた電動機7で回転駆動されるピニオンである駆動歯車1の歯面と、駆動歯車1の先端部とが交わる角部分に面取り部を設ける技術」であるが、これら引用例2技術ないし引用例5技術はいずれも、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項のうち、「アイドルストップによるエンジンの停止中におけるリングギヤの惰性回転の回転数が直巻巻線界磁式直流電動機からオーバランニングクラッチを介して駆動されたピニオンギヤの回転数より高い状態下で」、「噛み合い時間短縮タイプのピニオンギヤの回転駆動と、エンジン再始動要求に基づくプランジャー駆動コイルの通電によって作動した押し出し機構による噛み合い時間短縮タイプのピニオンギヤのリングギヤとの噛み合い位置への移動とが行われる」ことについて開示や示唆をするものではない。
したがって、本願発明1は、上記相違点1について検討するまでもなく、引用発明及び引用例2技術ないし引用例5技術に基いて当業者が容易に想到し得たとすることはできない。
2 本願発明2ないし6について
本願の特許請求の範囲における請求項2ないし6は、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく直接又は間接的に引用して記載されたものであるから、本願発明2ないし6は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明2ないし6は、本願発明1と同様の理由で、引用発明及び引用例2技術ないし引用例5技術に基いて当業者が容易に想到し得たとすることはできない。
第6 原査定について
1 理由1(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1ないし6は「アイドルストップによるエンジンの停止中におけるリングギヤの惰性回転の回転数が直巻巻線界磁式直流電動機からオーバランニングクラッチを介して駆動されたピニオンギヤの回転数より高い状態下で」、「噛み合い時間短縮タイプのピニオンギヤの回転駆動と、エンジン再始動要求に基づくプランジャー駆動コイルの通電によって作動した押し出し機構による噛み合い時間短縮タイプのピニオンギヤのリングギヤとの噛み合い位置への移動とが行われる」(下線部は補正された箇所を示す)という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用例1ないし5に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
2 理由2(特許法第36条第6項第2号)について
(1)請求項5の記載について
審判請求時の補正により、「前記ピニオンギアの前記リングギアの側の端面の反トルク伝達歯面側に、噛み合い時間を短縮する面取りを有する」という記載は、「前記ピニオンギヤの歯面と前記ピニオンギヤの前記移動の方向の先端側の面との交わる角部分に形成され前記歯面に対いて所定角度傾斜した面取を有する」に補正されており、記載が明確となった。
(2)請求項6の記載について
審判請求時の補正により、請求項6は請求項1を引用するものから請求項5を引用するものとなり、請求項6の記載のうち面取りに関する部分である、「噛み合い時間を短縮する少なくとも2面以上の多段面取りを有する」という記載は、「前記面取りが、前記歯面に沿って少なくとも2面以上の多段面取りである」と補正されており、記載が明確となった。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-007441