特許拒絶査定不服審判
2017-007394
変形可能な非円形膜アセンブリの改良または同アセンブリに関する改良
- 審判番号
- 2017-007394
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-502413
- 請求日
- 2017年05月23日
- 審決日
- 2018年03月19日
- 公報発行日
- 2018年09月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アドレンズ リミテッド
- 【請求人代理人】宮川 貞二
- 審判長/審判官
- 審判長 中田 誠
- 審判官 清水 康司
- 審判官 河原 正
- 分類
- P18 .537-Z (G02C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第184条の6第2項、特許法第17条の2第5項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-502413「変形可能な非円形膜アセンブリの改良または同アセンブリに関する改良」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月 3日国際公開,WO2013/144533,平成27年 4月30日国内公表,特表2015-513121〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
本件拒絶査定不服審判事件に係る出願(以下,「本願」という。)は,2012年6月20日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2012年3月27日,英国)を国際出願日とする外国語特許出願であって,平成26年11月28日に国際出願日における明細書,特許請求の範囲及び図面の中の説明文の翻訳文(特許法184条の6第2項の規定により,明細書及び特許請求の範囲の翻訳文が,それぞれ,願書に添付して提出した明細書及び特許請求の範囲と,国際出願日における図面(図面の中の説明文を除く。)及び図面の中の説明文の翻訳文が願書に添付して提出した図面とみなされる。以下,それぞれを単に「明細書」,「特許請求の範囲」及び「図面」という。)が提出され,平成28年3月11日付けで拒絶理由が通知され,同年8月25日に意見書及び手続補正書が提出されたが,平成29年1月13日付けで拒絶査定がなされたものである。
本件拒絶査定不服審判は,これを不服として,同年5月23日に請求されたものであって,本件審判の請求と同時に手続補正書が提出された。
2 補正の適否について
平成29年5月23日提出の手続補正書による補正(以下,「本件補正」という。)は,特許請求の範囲についてするものであって,平成28年8月25日提出の手続補正書による補正後の請求項2ないし36を削除しようとするものであるから,特許法17条の2第5項1号に掲げる請求項の削除を目的とするものである。
また,本件補正が,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。したがって,本件補正は,同法17条の2第3項の規定に適合する。
よって,本件補正は,適法になされたものである。
3 本願の請求項1に係る発明
前記2で述べたとおり,本件補正は適法になされたものであるから,本願の請求項1に係る発明は,平成29年5月23日提出の手続補正書による補正後の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「少なくとも部分的に可撓性のある流体充填エンベロープであって,前記エンベロープの一つの壁部が,弾性的に曲がることのできる支持リングにより縁部の周囲に保持される弾性膜によって形成される,エンベロープと;
前記エンベロープのための固定された支持体と;
前記エンベロープ内の前記流体の圧力を調節するために前記支持リングと前記支持体との間で相対移動を引き起こさせることによって,前記膜を変形させるための選択的に操作可能な移動手段とを備え;
前記リングの曲げ剛性は,前記膜の変形時に,前記リングが可変的に曲がって前記膜の形状を所定の形態に制御するように,前記リング周囲で変化し,前記移動手段は,離間する制御点において前記リングに力を印加するように配置された複数のリング係合部材を備え;
少なくとも3つの制御点が存在し,前記リング上の各点にまたはその近傍にひとつの制御点が存在し,ここで前記各点は,前記膜の変形時に前記所定の形態を生じることが必要な前記リングの外郭形状が,2つの隣接する点の間の前記制御点で印加される力の方向の転換点を呈する点であり,ここで前記2つの隣接する点で,前記リングの前記外郭形状は,前記力の方向の反対方向への転換点または変曲点を呈し;
前記所定の形態は,ひとつ以上のゼルニケ多項式Zj±k(k≦j)によって定義される球形又は別の形態であり,前記所定の形態は,前記リングが円形であるときは非球形である;
変形可能膜アセンブリ。」(以下,「本件発明」という。)
4 拒絶査定の拒絶の理由の概要
請求項1(本件補正の前後で請求項1の記載に変更はない。)に係る発明に対する拒絶査定の拒絶の理由(以下,「査定理由」という。)は,概略,次の理由を含んでいる。
本願は,特許請求の範囲の請求項1の「少なくとも3つの制御点が存在し,前記リング上の各点にまたはその近傍にひとつの制御点が存在し,ここで前記各点は,前記膜の変形時に前記所定の形態を生じることが必要な前記リングの外郭形状が,2つの隣接する点の間の前記制御点で印加される力の方向の転換点を呈する点であり,ここで前記2つの隣接する点で,前記リングの前記外郭形状は,前記力の方向の反対方向への転換点または変曲点を呈し」なる記載が,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
5 査定理由についての判断
(1) 請求項1に記載された「少なくとも3つの制御点が存在し,前記リング上の各点にまたはその近傍にひとつの制御点が存在し,ここで前記各点は,前記膜の変形時に前記所定の形態を生じることが必要な前記リングの外郭形状が,2つの隣接する点の間の前記制御点で印加される力の方向の転換点を呈する点であり,ここで前記2つの隣接する点で,前記リングの前記外郭形状は,前記力の方向の反対方向への転換点または変曲点を呈し;」なる発明特定事項(以下,「第1発明特定事項」という。)は,次の構成要件に分説することができる。
A 少なくとも3つの制御点が存在すること。
B 前記リング上の各点にまたはその近傍にひとつの制御点が存在すること。
C 前記各点は,前記膜の変形時に前記所定の形態を生じることが必要な前記リングの外郭形状が,2つの隣接する点の間の前記制御点で印加される力の方向の転換点を呈する点であること。
D 前記2つの隣接する点で,前記リングの前記外郭形状は,前記力の方向の反対方向への転換点または変曲点を呈すること。
(2)ア 構成要件Aにおける「制御点」については,請求項1において第1発明特定事項よりも前に「離間する制御点において前記リングに力を印加するように配置された複数のリング係合部材」なる発明特定事項が記載されていることから,リング係合部材がリングに力を印加する点と理解される。
したがって,構成要件Aは,リング係合部材がリングに対して力を印加する位置が,少なくとも3つ存在することを特定しているものと解するのが自然である。
イ また,構成要件Bにおける「制御点」が,構成要件Aにおける「制御点」を指していることは文言上明らかだから,構成要件Bは,構成要件Aにおける少なくとも3つの制御点のうちの一つが,「リング上の各点」にまたはその近傍に存在することを特定しているものと理解されるところ,「リング上の各点」とは,後述するとおり,構成要件Cにより規定される「各点」であると解するのが相当である。
そうすると,構成要件Bは,構成要件Aにおける少なくとも3つの制御点のうちの1つが,構成要件Cが規定する「リング上の各点」に又はその近傍に位置していることを特定しているものと解するのが自然である。
しかしながら,当該構成要件Bが,残る少なくとも2つの制御点の位置について,「リング上の各点」に又はその近傍にはないことまで特定しているのか,それとも,それらの位置については特定しておらず,任意であるのかについては,請求項1の記載からは明確に特定できない。
ウ また,構成要件Cにおける「前記各点」が,構成要件Bにおける「リング上の各点」を指していることは文言上明らかであり,「前記所定の形態」とは,請求項1において第1発明特定事項よりも前に記載された「前記リングの曲げ剛性は,前記膜の変形時に,前記リングが可変的に曲がって前記膜の形状を所定の形態に制御するように,前記リング周囲で変化し,」なる発明特定事項における「所定の形態」を指していると理解されるから,構成要件Cのうち「2つの隣接する点の間の」という表現以外の記載が,構成要件Bにおける「リング上の各点」が,膜が「所定の形態」に変形する際に必要となるリングの外郭形状において,「制御点で印加される力の方向の転換点」となる位置に存在することを特定していると解するのが自然である。
しかしながら,構成要件Cにおける「2つの隣接する点の間の」という表現が,その直後に記載された「制御点」の位置を限定しているのか,それとも,「制御点で印加される力の方向の転換点」の位置を限定しているのかについては,請求項1の記載からは明確に特定できない。
また,「制御点で印加される力の方向の転換点」とは,如何なる地点を指しているのかについても,請求項1の記載からは明確に特定できない。
エ さらに,構成要件Dにおける「前記2つの隣接する点」が,構成要件Cにおける「2つの隣接する点」を指していること,及び構成要件Dにおける「前記リングの外郭形状」が,構成要件Cにおける「前記膜の変形時に前記所定の形態を生じることが必要な前記リングの外郭形状」を指していることは文言上明らかであるから,構成要件Dは,構成要件Cにおける「2つの隣接する点」が,構成要件Cにおける「リングの外郭形状」において「力の方向の反対方向への転換点または変曲点」となるような位置であることを特定しているものと解するのが自然である。
しかしながら,構成要件Dにおける「力の方向の反対方向への転換点または変曲点」が,構成要件Cにおける「制御点で印加される力の方向の転換点」と同一内容を指すのか,それとも,「変曲点」という文言等によって,構成要件Cにおける「制御点で印加される力の方向の転換点」とは異なる範囲の概念を指しているのかは,請求項1の記載からは明確に特定できない。
オ 以上をまとめると,請求項1の記載からは,第1発明特定事項によって,少なくとも,
「リング係合部材がリングに対して力を印加する「制御点」が,少なくとも3つ存在し(構成要件A),
当該少なくとも3つの「制御点」のうちの1つが,「リング上の各点」に又はその近傍に位置しており(構成要件B),
前記「制御点」の一つがその位置に又はその近傍に設けられる「リング上の各点」とは,膜が「所定の形態」に変形する際に必要となる「リングの外郭形状」において,「2つの隣接する点」の間に位置する「制御点」で印加される力の方向の「転換点」となる位置に存在し(構成要件C),
前記「2つの隣接する点」が,膜が「所定の形態」に変形する際に必要となる「リングの外郭形状」において「力の方向の反対方向への転換点または変曲点」となるような位置であること(構成要件D)」(以下,「第1解釈」という。),
又は,
「リング係合部材がリングに対して力を印加する「制御点」が,少なくとも3つ存在し(構成要件A),
当該少なくとも3つの「制御点」のうちの1つが,「リング上の各点」に又はその近傍に位置しており(構成要件B),
前記「制御点」の一つがその位置に又はその近傍に設けられる「リング上の各点」は,膜が「所定の形態」に変形する際に必要となる「リングの外郭形状」において,「制御点で印加される力の方向の転換点」となる位置であって,かつ,「2つの隣接する点」の間の位置に存在し(構成要件C),
前記「2つの隣接する点」が,膜が「所定の形態」に変形する際に必要となる「リングの外郭形状」において「力の方向の反対方向への転換点または変曲点」となるような位置であること(構成要件D)」(以下,「第2解釈」という。),
のいずれかが特定されることになると解するのが自然であるが,第1解釈及び第2解釈のいずれが正しいのかは,請求項1の記載からは判然としない。
また,第1解釈及び第2解釈のいずれにおいても,第1発明特定事項が,
(ア) 「リング上の各点」に又はその近傍に位置する1つの「制御点」以外の少なくとも2つの「制御点」が,「リング上の各点」に又はその近傍にはないことまで特定しているのか,それとも,それらの位置については特定しておらず,任意であるのか,
(イ) 「制御点で印加される力の方向の転換点」とは,リング上の如何なる地点を指すのか,
(ウ) 「力の方向の反対方向への転換点または変曲点」が,「制御点で印加される力の方向の転換点」と同一内容を指すのか,それとも,「変曲点」という文言等によって,「制御点で印加される力の方向の転換点」とは異なる範囲の概念を指しているのか,
については,請求項1の記載からは明確に特定することができない。
(3) 第1発明特定事項について,本件明細書の記載を参酌してみても,発明の詳細な説明では,請求項1に記載された名称とは異なる名称を用いて,実施の形態を説明しているため,当該実施の形態におけるどの構成が,請求項1に記載されたどの構成に対応しているのかを正確に把握することは著しく困難であって,前記(2)オで述べた第1解釈及び第2解釈のいずれが正しいのか,また,前記オ(ア)ないし(ウ)で述べた点についてどのような解釈が正しいのかを,特定することができない。
そもそも,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された実施の形態において,リングに対して力が加えられる「制御点」に対応するのは,膜8を変形させる際に変位させられる作動点(A)や,当該作動点(A)の変位に伴って構成39からの力(膜8の膨張に伴いリングが構成39を押圧することで,リングが構成39から受ける反作用の力)を受けるヒンジ点(H1),(H2)と考えられるが,これらの「制御点」は,いずれも,「制御点で印加される力の方向の転換点」といえるような位置やその近傍にあるとはいえないから,前記(2)オで述べた第1解釈及び第2解釈のいずれもが,正しい解釈ではないとも考えられる。なお,「制御点で印加される力の方向の転換点」に関して,発明の詳細な説明の【0143】には,「図23は,光学中心OCとリング2,10との間の距離が,どのようにリング2,10の周りで第1のレンズアセンブリ1において変化するかを示している。・・・(中略)・・・また,作動点(A)が技術的に極小点(局所的に最小の転換点)である一方で,点(A)におけるリングの変位は依然として正であり((A)は,ヒンジ点(H1)および(H2)よりも光学中心から遠い),極小点として,主要な転換点(E)および(F)と比較しても重要ではなく,・・・(後略)」なる記載が存在するものの,光学中心との距離が極小となるリング上の位置において,「制御点」(作動点(A)や,ヒンジ点(H1),(H2))で印加される力の方向が転換されるはずもないから,当該【0143】の記載をもってしても,「制御点で印加される力の方向の転換点」なる表現がリング上の如何なる地点を指しているのかを明確に特定することはできない。
(4) 以上のとおりであって,たとえ本件明細書の記載を参酌しても,第1発明特定事項が如何なる構成を規定しているのかを,明確に特定することができないから,本件発明は明確でないといわざるを得ない。
したがって,本願の特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
6 むすび
本願の特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていないから,本願は,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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