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特許拒絶査定不服審判

2017-006811

細胞巨大分子の発現を調節する化合物のハイスループットスクリーニング

審判番号
2017-006811
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2014-504041
請求日
2017年05月11日
審決日
2017年12月18日
公報発行日
2018年06月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ザ スクリップス リサーチ インスティテュート
  • 【請求人代理人】恩田 誠
  • 【請求人代理人】恩田 博宣
  • 【請求人代理人】本田 淳
審判長/審判官
  • 審判長 伊藤 昌哉
  • 審判官 三崎 仁
  • 審判官 渡戸 正義
分類
P18 .121-Z (G01N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第4号、特許法第17条の2第5項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2014-504041「細胞巨大分子の発現を調節する化合物のハイスループットスクリーニング」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月11日国際公開、WO2012/139040、平成26年 5月 1日国内公表、特表2014-510926〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、2012年(平成24年)4月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年4月7日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年4月1日付けで手続補正書が提出され、平成28年2月22日付けで拒絶理由が通知され、同年8月31日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成29年1月5日付けで拒絶査定されたのに対し、同年5月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 平成29年5月11日付けでなされた手続補正は、補正前の請求項1及び24の「各々が第1及び第2の検出可能な標識を有する第1及び第2リガンド」を「第1の検出可能な標識を有する第1リガンド及び第2の検出可能な標識を有する第2リガンド」とする補正、及び補正前の請求項28~30を削除する補正である。前者については、第1リガンドが第1の検出可能な標識を有するものであり、第2リガンドが第2の検出可能な標識を有するものであることを明りょうにしたものといえることから、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、後者は、請求項を削除するものであるから、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものである。 してみれば、本願請求項1~27に係る発明は、上記平成29年5月11日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1~27に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 サンプル中の特定の標的分子を同定及び定量する方法において、 標的分子との結合用に、検出可能な標識に結合された1つの第1のリガンド又は複数の第1のリガンド及び1つの第2のリガンド又は複数の第2のリガンドを試験及び選択するか、あるいは、標的分子との結合用に、検出可能な標識に結合された1つの第1のリガンド又は複数の第1のリガンド及び1つの第2のリガンド又は複数の第2のリガンドを選択し、 (i)第1の検出可能な標識を有する第1リガンド及び第2の検出可能な標識を有する第2リガンドを添加するステップと、(ii)前記第1及び第2リガンドが特定の標的分子上の別々の特定の部位に結合するステップとを備えるが、(iii)洗浄ステップが省略されているハイスループットスクリーニングアッセイで特定の標的分子を含有するサンプルをスクリーニングし、 前記第1及び第2リガンドが前記特定の標的分子に特異的に結合したときに放出される光を検出し、それによってサンプル中の前記特定の標的分子を同定及び定量すること を備える、方法。」 第3 引用例の記載事項及び引用発明 (1)記載事項 本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である「Degorce F et al.,HTRF: A Technology Tailored for Drug Discovery-A Review of Theoretical Aspects and Recent Applications,Current Chemical Genomics,2009年,Vol.3,pp.22-32」(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。 (1ア)「Abstract:HTRF (Homogeneous Time Resolved Fluorescence) is the most frequently used generic assay technology to measure analytes in a homogenous format, which is the ideal platform used for drug target studies in high-throughput screening (HTS). This technology combines fluorescence resonance energy transfer technology (FRET) with time-resolved measurement (TR). In TR-FRET assays, a signal is generated through fluorescent resonance energy transfer between a donor and an acceptor molecule when in close proximity to each other. Buffer and media interference is dramatically reduced by dual-wavelength detection, and the final signal is proportional to the extent of product formation. The HTRF assay is usually sensitive and robust that can be miniaturized into the 384 and 1536-well plate formats. This assay technology has been applied to many antibody-based assays including GPCR signaling (cAMP and IP-One), kinases, cytokines and biomarkers, bioprocess (antibody and protein production), as well as the assays for protein-protein, protein-peptide, and protein-DNA/RNA interactions.」(22頁) (当審訳:要約:HTRF(Homogeneous Time Resolved Fluorescence)は、ホモジネートなフォーマットで検体を測定する最も一般的なアッセイ技術で、ハイスループットスクリーニング(HTS)での薬物を標的とする研究に使用される理想的な基盤技術である。この技術は、蛍光共鳴エネルギー移動技術(FRET)と時間分解測定(TR)を組み合わせたものである。TR-FRETアッセイでは、ドナーとアクセプター分子が互いに近接している時、ドナーとアクセプター分子との間で蛍光共鳴エネルギーの移動を介してシグナルが生成される。緩衝液と媒体の干渉は二波長検出によって劇的に減少し、最終シグナルは生成物形成の程度に比例する。HTRFアッセイは、通常、高感度でしっかりしており、384及び1536ウェルプレートフォーマットに小型化することができる。このアッセイ技術は、GPCRシグナル(cAMP及びIP-One)、キナーゼ、サイトカイン及びバイオマーカー、バイオプロセス(抗体とタンパク質生成物)を含む多くの抗体に基づいたアッセイに適用され、同様に、タンパク質-タンパク質、タンパク質-ペプチド、タンパク質-DNA/RNAの相互作用についてのアッセイにも適用される。) (1イ)「Fig.(6)The comparison of “sandwich” assay and competition assay. a.“sandwich”assay. HTRF signals are generated through the energy transfer from donor to acceptor that are labeled on the antibodies recognizing the target at different regions.」(26頁) (当審訳:図(6)サンドイッチアッセイと競合アッセイとの比較。a.サンドイッチアッセイ。HTRFシグナルは、標的を異なった部位で識別する各抗体に標識されたドナーからアクセプターへのエネルギー移動によって生成されたものである。) (1ウ)図6のaとして、以下の図面が記載されている。 a (1エ)「Additionally, HTRF may be used to quantify and/or detect the presence of tagged protein during protein production and through each step of the purification process.」(30頁左欄19~21行) (当審訳:さらに、HTRFは、タンパク質生成及びその精製の各工程において、標識されるタンパク質の定量及び/又は同定に使うことができる。) (1オ)「Most bioprocess ELISA assays can be easily converted to a no-wash, one-step HTRF assay. HTRF can be applied in several other ways to increase productivity in a bioprocess research facility, for instance, through monitoring cellular impurities which play a role in immunotoxicity [76].」(30頁左欄30~34行) (当審訳:ほとんどの生物学的プロセスであるELISAアッセイは、洗浄工程のない1つのHTFRアッセイに簡単に変更できる。HTRFは、免疫毒性の機能を発揮する細胞不純物の測定など、生物学的プロセスの研究設備において、生産性を上げるためにそのほかのいくつかの方法に適用される。) (2)引用発明について ア 上記摘記(1ウ)の図6のaとその説明である摘記(1イ)から、以下の事項が見て取れる。 「Cryptate-coupled antibody」(当審訳:クリプテート(ドナー)結合抗体)と「acceptor-coupled antibody」(当審訳:アクセプター結合抗体)が、それぞれ「free anttigen」(当審訳:遊離抗原)の異なった部位を識別して結合し、ドナーからアクセプターへのエネルギー移動によってHTRFシグナルが生成されている。 イ そして、摘記(1イ)のサンドイッチアッセイとは、二つの抗体で抗原をサンドイッチして抗原を検出(同定)し定量する一方法であり、摘記(1エ)に、HTRFはタンパク質の定量及び/又は同定に使うことができることが記載されていることを踏まえれば、上記生成されたHTRFシグナルを検出し、遊離抗原を同定し定量しているといえる。 ウ 引用発明 上記ア及びイを踏まえれば、上記引用例には、以下の発明が記載されていると認められる。 「抗原を同定し定量する方法において、 クリプテート(ドナー)結合抗体とアクセプター結合抗体が、それぞれ遊離抗原の異なった部位を識別して結合し、クリプテート(ドナー)からアクセプターへのエネルギー移動によってHTRFシグナルが生成され、 そのHTRFシグナルを検出し、遊離抗原を同定し定量する、方法。」(以下「引用発明」という。) 第4 対比・判断 1 対比 本願発明と引用発明とを対比する (1)本願発明の「検出可能な標識」とは具体的に蛍光団(本願発明を具体化した本願請求項2参照)であり、本願の「リガンド」とは具体的に抗体(本願発明を具体化した本願請求項4参照)であり、そして、引用発明の「クリプテート(ドナー)」と「アクセプター」は、摘記(1ア)にも示されているようにHTRF技術において蛍光を発するものである。 してみれば、引用発明の「クリプテート(ドナー)結合抗体」及び「アクセプター結合抗体」は、前者を第1、後者を第2とするなら、本願発明の「第1の検出可能な標識を有する第1リガンド」及び「第2の検出可能な標識を有する第2リガンド」に、並びに、「検出可能な標識に結合された1つの第1のリガンド」「及び」「検出可能な標識に結合された」「1つの第2のリガンド」に相当する。 (2)抗原はタンパク質であり、本願発明の「標的分子」とは具体的にタンパク質(本願発明を具体化した本願請求項6参照)であるから、引用発明の「遊離抗原」は、本願発明の「標的分子」に相当する。 そして、引用発明の「クリプテート(ドナー)結合抗体」と「アクセプター結合抗体」は、「遊離抗原」「に結合」するものであるから「遊離抗原」との結合用であり、本願発明の「標的分子との結合用」に相当する。 (3)「クリプテート(ドナー)結合抗体とアクセプター結合抗体が、それぞれ遊離抗原の異なった部位を識別して結合」することは、本願発明の「第1及び第2リガンドが特定の標的分子上の別々の特定の部位に結合するステップ」に相当する。 (4)HTRFにおけるシグナルとは蛍光であるから、「クリプテート(ドナー)結合抗体とアクセプター結合抗体が、それぞれ遊離抗原の異なった部位を識別して結合し、ドナーからアクセプターへのエネルギー移動によって」「生成された」「HTRFシグナル」は、本願発明の「第1及び第2リガンドが前記特定の標的分子に特異的に結合したときに放出される光」に相当する。 (5)引用発明の「抗原を同定し定量する方法」における「抗原」は、サンプル中のある特定の抗原といえるから、引用発明の「抗原を検出し定量する方法」は、本願発明の「サンプル中の特定の標的分子を同定及び定量する方法」に相当する。 そして、引用発明の「HTRFシグナルを検出し、遊離抗原を同定し定量する」ことは、上記(4)を踏まえれば、本願発明の「光を検出し、それによってサンプル中の前記特定の標的分子を同定及び定量すること」に相当する。 (6)してみれば、本願発明と引用発明とは、 (一致点) 「サンプル中の特定の標的分子を同定及び定量する方法において、 標的分子との結合用に、検出可能な標識に結合された1つの第1のリガンド及び1つの第2のリガンドがあり、 (i)第1の検出可能な標識を有する第1リガンド及び第2の検出可能な標識を有する第2リガンドを用いるステップと、(ii)前記第1及び第2リガンドが特定の標的分子上の別々の特定の部位に結合するステップとを備え、 前記第1及び第2リガンドが前記特定の標的分子に特異的に結合したときに放出される光を検出し、それによってサンプル中の前記特定の標的分子を同定及び定量すること を備える、方法。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 第1のリガンド及び第2のリガンドについて、本願発明ではそれらを「選択」し、そして「添加」しているが、引用発明では、選択し、そして添加しているかどうか不明である点。 (相違点2) 本願発明では、「洗浄ステップが省略されているハイスループットスクリーニングアッセイで特定の標的分子を含有するサンプルをスクリーニングし」ているのに対し、引用発明では、そのような工程があるかどうか不明である点。 2 判断 (1)相違点の判断 ア 相違点1について 相違点1の「選択」について、引用発明においても、ある特定の抗原を検出し定量する際には、その抗原に対する抗体を選択するものである。 また、相違点1の「添加」について、本願発明における「添加」は、本願明細書の【0027】等に記載されているように、容器等への添加を意味し、引用発明においても、「クリプテート(ドナー)結合抗体とアクセプター結合抗体が、それぞれ遊離抗原の異なった部位を識別して結合」する際に、クリプテート(ドナー)結合抗体とアクセプター結合抗体を遊離抗原の入っている容器等に添加することは当業者が容易になし得たことである。 してみれば、上記相違点1は、当業者が容易になし得たことである。 イ 相違点2について 例えば、文献1の摘記(1ア)に「HTRF(Homogeneous Time Resolved Fluorescence)は、ホモジネートなフォーマットで検体を測定する最も一般的なアッセイ技術で、ハイスループットスクリーニング(HTS)での薬物を標的とする研究に使用される理想的な基盤技術である。」と記載され、摘記(1オ)に「洗浄工程のない1つのHTFRアッセイ」と記載されているように、HTRFとは、洗浄ステップが省略されているハイスループットスクリーニングができるアッセイであることは、優先日前に周知(引用例の他、原査定の拒絶の理由に引用された国際公開2010/015592号公報(2頁15~17行、請求項14等参照)、武本浩「HTRFを用いたハイスループットスクリーニング」化学と生物、Vol.38、No.7、2000年)である。 引用発明は、特定の遊離抗原を含有するサンプルをスクリーニングすることは特定していないが、引用発明は、上記摘記(1ア)に記載されているように、薬物を標的とする研究等に使用されるものであるから、特定の「遊離抗原」を含有するサンプルのスクリーニングを行うことは当業者が容易になし得たことであり、そして「HTRF」であるから、そのスクリーニングは上記周知技術によれば「洗浄ステップが省略されているハイスループットスクリーニングアッセイで特定の標的分子を含有するサンプルをスクリーニング」するものであるといえる。 よって、相違点2は、周知技術に基づいて当業者が容易になし得たことである。 (2)効果について 上記相違点に基づく効果は、引用例又は周知技術から当業者が予期しうるものであり、格別顕著なものではない。 (3)請求人の主張について 請求人は、審判請求書の請求の理由で、上記引用例(以下の「引用文献1」に相当)について、 「そのため、引用文献1の第6図aにおいて、エネルギートランスファーの結果を利用して標的分子の同定や定量を行っていることが自明と言うことはできないものと思料する。また、引用文献1の図6a及びKinase Assays欄の記載から、サンプル中の、標識化されていない特定の標的分子をスクリーニングでき、例えば、様々な活性の様々な種類の医薬化合物を特定できるという本願発明の利点が予期できると言うこともできないものと思料する。」と主張している。 前者について検討するに、引用例の第6図aには標的分子の同定や定量について直接記載されていないものの、第6図aはHTRFシグナルについて明記されており、そのHTRFシグナルによって標的分子の同定や定量を行っていることは上記第3(2)イで説示したとおりであり、加えて、そもそも、HTRFの技術がサンプル中の特定の標的分子を同定及び定量する方法であることは、優先日前に周知(上記国際公開2010/015592号公報(請求項1及び6等参照)、上記「HTRFを用いたハイスループットスクリーニング」参照)のことである。 後者について検討するに、引用発明はHTRF技術を用いたものである以上、様々な活性の様々な種類の医薬化合物を特定できるという利点が予期できることは、引用例さらには上記(1)イで記載した周知技術(「HTRFを用いたハイスループットスクリーニング」)を見ても、明かである。 よって、上記請求人の主張は受け入れられるものではない。 3 小括 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり、審決する。

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2017-006811

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