特許拒絶査定不服審判
2017-006541
後発酵茶由来の血圧上昇抑制作用を有する剤並びにそれを含む飲食品及び医薬
- 審判番号
- 2017-006541
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-185874外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年05月08日
- 審決日
- 2017年12月06日
- 公報発行日
- 2018年01月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】国立大学法人群馬大学
- 【請求人代理人】佐貫 伸一
- 【請求人代理人】川口 嘉之
- 分類
- P18 .121-WY (A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-185874「後発酵茶由来の血圧上昇抑制作用を有する剤並びにそれを含む飲食品及び医薬」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月13日出願公開、特開2014- 43406、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年8月24日の出願であって、平成28年5月26日付けで拒絶理由が通知され、平成28年8月1日(受付日)に意見書が提出された。その後、平成28年10月3日付けで拒絶理由が通知され、平成28年12月9日(受付日)に意見書及び手続補正書が提出されたのに対し、平成29年1月31日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年5月8日(受付日)に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
第2 原査定の概要
本願請求項1~3に係る発明は、平成28年10月3日付け拒絶理由通知で引用された文献6~10に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
6.日本食品科学工学会誌,2008年,55(12),640-644
7.食品工業,1992年,35(14),20-25
8.食品工業,1995年,38(10),78-82
9.茶の科学,株式会社朝倉書店,1997年,第8版,167-175
10.食品工業,2004年,47(22),45~55
第3 本願発明
本願請求項1~3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明3」、またはこれらをまとめて「本願発明」ともいう。)は、平成28年12月9日受付の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
碁石茶(登録商標)を熱水抽出したものの酢酸エチル抽出物を有効成分とする血圧上昇抑制剤。
【請求項2】
請求項1に記載の血圧上昇抑制剤を含有する血圧上昇抑制用飲食品。
【請求項3】
請求項1に記載の血圧上昇抑制剤を含有する血圧上昇抑制用医薬。」
第4 引用文献に記載の事項
1.引用文献6について
原査定の拒絶理由に引用された文献6には、以下の事項が記載されている。
(6a)
「碁石茶製造工程におけるカテキン含量とスーパーオキシドアニオン消去活性の変化」(640頁左欄のタイトル)
(6b)
「後発酵茶は微生物発酵によって作られる茶であり、・・・2段階発酵茶には愛媛県の石鎚黒茶や高知県の碁石茶が存在する1)。
碁石茶は高知県長岡郡大豊町でのみ生産されている茶である。・・・後発酵茶、特に碁石茶の抗酸化活性に関する研究例は少なく、・・・本研究では、碁石茶の製造工程中におけるスーパーオキシドアニオン消去活性、カテキン類、ならびに没食子酸含量の変化について調べた。」(640頁左欄下から5行~同頁右欄30行)
(6c)
「(2)碁石茶試料
碁石茶の製造工程は下記の通りである。・・・カビ付けと呼ばれる1段階目の好気的発酵を7日間行った。・・・漬け込みと呼ばれる2段階目の嫌気的発酵を約20日間行った。漬け込み後の茶葉を取り出して裁断後、2日間天日干しした。・・・
碁石茶抽出液は飲用条件を参考にして調製した。茶葉3gに沸騰水200mlを加えた後5分間静置し、ろ紙(No.2,アドバンテック東洋製)でろ過後、孔径0.45μmのメンブレンフィルター(アドバンテック東洋製)で処理した溶液を測定試料とした。」(640頁右欄下から5行~641頁左欄13行)
(6d)
「茶類の示すスーパーオキシドアニオン消去活性やラジカル消去活性にはカテキン類、ならびに没食子酸の関与が大きいことが明らかになっている4)10)11)。そこで本研究では、緑茶中に一般的に認められるカテキン類である(-)-カテキン(C)、(-)-エピカテキン(EC)、(-)-エピカテキン3-ガレート(ECg)、(-)-エピガロカテキン(EGC)、(-)-エピガロカテキン3-ガレート(EGCg)、(-)-ガロカテキン(GC)、(-)-ガロカテキン3-ガレート(GCg)の含量を調べると共に、没食子酸(GA)も分析対象とした(Table 1)。」(641頁右欄下から14行~6行)
(6e)
「
」(642頁のTable 1)
(6f)
「これまでの碁石茶に関する研究は、その歴史的背景1)、風味特性12)13)、微生物学的特性14)15)を追究するものが主であり、機能性に関する情報は乏しい状態にあった。しかし近年、その機能性が注目を集めるようになり、抗酸化活性、高脂血症及び動脈硬化抑制効果、抗インフルエンザウイルス作用に関する報告が立て続けになされた5)~7)。」(642頁左欄下から5行~同頁右欄1行)
(6g)
「今回の研究では、通常の飲用条件を参考に茶葉の抽出物を調製した。従って、天日干し2日目の碁石茶(DL2)の抽出液は市販の碁石茶を飲用する際のカテキン類、ならびに没食子酸の組成に相当する。」(643頁左欄2~5行)
(6h)
「4. 要約
高知県長岡郡大豊町で生産されている碁石茶熱水抽出物のスーパーオキシドアニオン消去活性、カテキン類含量、ならびに没食子酸含量の製造工程中の変化を調べた。その結果、碁石茶のスーパーオキシドアニオン消去活性はその製造工程中、好気的発酵と嫌気的発酵で大きく増加することが判明した。また、カテキン類の大部分(EC, ECg, EGC, EGCg, GCg, GA)は好気的発酵工程中に最大となり、その後減少するのに対して、CとGCは嫌気的発酵工程において最大値に達し、碁石茶最終製品中に高い濃度で含まれることが明らかとなった。しかし、今回分析対象として定量したカテキン7種類、ならびに没食子酸の碁石茶最終製品のスーパーオキシドアニオン消去活性に対する寄与率は低かった。従って、好気的、および嫌気的発酵工程で生成される他の物質が主要な抗酸化物質である可能性が高いと考えられた。今後、関与成分の全容を明らかにすることで、高知県の貴重な地域資源である碁石茶に科学的知見が付与され、高付加価値化を図ることができるものと期待される。」(643頁左欄下から6行~右欄13行)
上記のように、引用文献6には、碁石茶の製造工程中におけるスーパーオキシドアニオン消去活性、カテキン類、ならびに没食子酸含量の変化について調べた結果及び当該結果についての考察が記載されている。そして、Table 1(摘記(6e))において、各製造工程毎に採取した茶葉である碁石茶試料L~DL2それぞれの熱水抽出物に対し、カテキン類および没食子酸含量、ならびにスーパーオキシドアニオン消去活性に対する寄与率を測定した実験結果が記載されている。
ここで、上記L~DL2のうち「DL2」と称される碁石茶試料は、Table 1の脚注の「DL, sun-dried (for 1-2 days) leaf」、「天日干し2日目の碁石茶(DL2)」(摘記(6g))、及び碁石茶の製造工程における「漬け込みと呼ばれる2段階目の嫌気的発酵を約20日間行った。漬け込み後の茶葉を取り出して裁断後、2日間天日干しした。」(摘記(6c))という記載からみて、漬け込みと呼ばれる2段階目の嫌気的発酵を約20日間行った後の茶葉を裁断後2日間天日干しして得られた碁石茶であると解される。
そして、Table 1には、上記「DL2」の熱水抽出物が、(-)-カテキン(C)、(-)-エピカテキン(EC)、(-)-エピガロカテキン(EGC)、(-)-エピガロカテキン3-ガレート(EGCg)、(-)-ガロカテキン(GC)、(-)-ガロカテキン3-ガレート(GCg)、及び没食子酸(GA)を含有することが記載されている(摘記(6f)及び(6d))。
そうすると、引用文献6には「(-)-カテキン(C)、(-)-エピカテキン(EC)、(-)-エピガロカテキン(EGC)、(-)-エピガロカテキン3-ガレート(EGCg)、(-)-ガロカテキン(GC)、(-)-ガロカテキン3-ガレート(GCg)、及び没食子酸(GA)を含有する、漬け込みと呼ばれる2段階目の嫌気的発酵を約20日間行った後の茶葉を裁断後2日間天日干しして得られた碁石茶(DL2)の熱水抽出物。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
2.引用文献7~10について
原査定の拒絶理由に引用された文献7には、以下の事項が記載されている。
(7a)
「茶の血圧上昇抑制作用」(20頁のタイトル)
(7b)
「筆者らは茶の渋み成分であるポリフェノール類に注目し、緑茶に10~15%含まれるカテキン類を「粗カテキン」として分離し、さらに「粗カテキン」を構成するエピガロカテキンガレート(EGCg)などの各カテキン成分を単離結晶化した。」(20頁左欄下から9~5行)
(7c)
「
」(21頁の表1)
(7d)
「2-1 高血圧自然発症ラット(SHR)に対する効果
SHRは、岡本らによって確立された遺伝的に100%高血圧を発症するラットである7)。本態性高血圧に関する実験では、ヒトのモデルとしてよく用いられる。
SHRを2群に分け、試験群には標準食に「粗カテキン」を0.5%添加した飼料を、対照群には標準食を与え飼育した。・・・さらに16週齢目に飼料を交換したところ、2週間後には両群間の血圧は逆転し、そのままの状態で推移した(図2)。これらの結果より、「粗カテキン」はSHRに対し血圧上昇抑制作用を持つことが認められた。」(22頁左欄4行~22行)
(7e)
「
」(22頁の図2)
(7f)
「茶カテキン類およびテアフラビン類のACE阻害作用が確認され、茶カテキンが血圧上昇抑制作用をもつことも動物実験によって示された。さらに、茶カテキンはヒトに対しても緩やかな血圧降下作用を示すとの知見も得られた。緑茶や紅茶はわれわれの日常生活のなかで嗜好飲料として馴染み深いものであり、その主要成分である茶ポリフェノール類に関してもその安全性の高さは証明済みである。これらのことから、茶の示す血圧上昇抑制作用のメカニズムのより詳しい解明が進み、それらの機能を強化した茶や茶ポリフェノールがより幅広く利用されることが期待される。」(24頁左欄下から3行~右欄9行)
原査定の拒絶理由に引用された文献8には、以下の事項が記載されている。
(8a)
「茶の血圧上昇抑制作用」(78頁のタイトル)
(8b)
「茶ポリフェノール類のアンジオテンシン変換酵素阻害能
ヒトの高血圧の90%以上は、原因となる疾患がつかめない本態性高血圧であるが、これにレニン・アンジオテンシン系が大きく関わっているということが知られている。レニン・アンジオテンシン系では、タンパク質分解酵素であるレニンがアンジオテンシノーゲンを分解してアンジオテンシンIを生成し、このアンジオテンシンIがアンジオテンシンI変換酵素(ACE)によってC末端ジペプチドを切断され、強い昇圧作用をもつアンジオテンシンIIになる(図1)。従ってこのACEを阻害すれば、血圧の上昇が防げるわけである。実際に、現在市販されている降圧剤はACE阻害剤が主流となっている。
鈴木らは日常摂取する食品についてACE阻害能を測定し、大豆食品、茶類、貝類、果実類、蕎麦などに活性を認めた1)。筆者らは、その中で比較的強い阻害活性が認められた茶抽出物についてさらに検討し、緑茶から得られるエステル型カテキン類およびテアフラビン類が特に強いACE阻害活性をもつことを確認した2)。」(78頁左欄下から3行~79頁左欄3行)
(8c)
「脳卒中易発症ラットに対する茶カテキンの効果
つぎに筆者らは、SHRを選択的に交配させ、脳卒中を起こしやすくさせた脳卒中易発症ラット(SHRSP)を用いてさらに検討を加えた。本実験で用いたSHRSPは95%以上が脳卒中で死亡するラットである。
SHRSPを2群に分け、試験群には0.5%「粗カテキン」添加食を、対照群には標準食を投与して飼育し、血圧を測定するとともに生存率を調べた。その結果「粗カテキン」添加群ではSHRSPに対しても血圧上昇抑制効果を示した(図3)。」(79頁左欄5~16行)
(8d)
「
」(80頁の図3)
原査定の拒絶理由に引用された文献9には、以下の事項が記載されている。
(9a)
「5.6 茶の血圧上昇抑制効果」(167頁のタイトル)
(9b)
「1)アンジオテンシン変換酵素に及ぼす茶カテキンの影響
茶の主成分であるカテキンの血圧上昇抑制機構について、原ら19)はアンジオテンシン変換酵素(ACE)をカテキンが阻害すること、として説明している。」(173頁19~21行)
原査定の拒絶理由に引用された文献10には、以下の事項が記載されている。
(10a)
「がん予防効果を持つ茶葉中の水溶性高分子画分」(45頁のタイトル)
(10b)
「1. 茶葉中のがん予防物質
1-1 緑茶カテキンはその1つでしかない3)
18年前、筆者らの研究室では細菌や培養細胞を利用した抗変異原、あるいは抗発がんプロモーターの検出・研究システムが構築され、動植物成分のスクリーニングが行われていた。・・・
当時、すでに緑茶カテキンに注目が集まりその発がん抑制に関する研究が始まっていたが、当初からカテキン以外にも活性物質はあると考えていたので、我々はあえてはじめから洗い出そうと考えた。そのため、茶葉も緑茶(非発酵茶)に限定することなく、紅茶(発酵茶)、ウーロン茶(半発酵茶)、黒茶(後発酵茶)の4種類を検討の対象とした。」(45頁左欄下から4行~同頁右欄15行)
(10c)
「茶葉50gを500mlの熱湯に加えて10分間置き、熱湯抽出物(TE)を作り、これをさらにクロロホルム、酢酸エチル、n-ブタノールという性質が違う溶剤で順次分画して茶葉成分をグループ分けした。溶剤に溶けない残りの部分を水溶性画分とした。それぞれの収量を図1に示したが、クロロホルムにはカフェインやクロロフィル、酢酸エチルにはカテキン類、n-ブタノールにはテアフラビンやテアルビジンなどの酸化重合体が主に分画される。・・・緑茶の場合、カテキン画分に全体の約2/3の活性が認められ、緑茶のがん予防研究がカテキンに集中することの正当性を結果的に裏付けるものであった。一方、紅茶では酢酸エチル画分には全体の約1/4の活性が示されたのみで、活性の43.2%は水溶性画分に認められた。後発酵茶である黒茶の場合、全体の活性の2/3は水溶性画分に存在することが明らかになった。水溶性画分は透析膜により低分子画分と高分子画分に分けたところ、活性のほとんどは高分子画分にあることが判明した。」(45頁右欄15行~47頁左欄2行)
(10d)
「
」(46頁の図1)
第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明との対比
引用発明の「漬け込みと呼ばれる2段階目の嫌気的発酵を約20日間行った後の茶葉を裁断後2日間天日干しして得られた碁石茶(DL2)」は、碁石茶の製造工程(摘記(6c))に従って製造された碁石茶最終製品であるので、本願発明の「碁石茶(登録商標)」に該当する。
そうすると、引用発明の「漬け込みと呼ばれる2段階目の嫌気的発酵を約20日間行った後の茶葉を裁断後2日間天日干しして得られた碁石茶の熱水抽出物」は、本願発明の「碁石茶(登録商標)を熱水抽出したもの」に相当し、本願発明1と引用発明とは、「碁石茶(登録商標)を熱水抽出したもの、または碁石茶(登録商標)を熱水抽出したものを用いて得られた剤」である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]
本願発明は、碁石茶(登録商標)を熱水抽出したものの酢酸エチル抽出物を有効成分とする血圧上昇抑制剤であるのに対し、引用発明は、上記酢酸エチル抽出物を有効成分とする血圧上昇抑制剤ではない点。
(2)相違点についての判断
引用文献10の記載からみて、緑茶(非発酵茶)、紅茶(発酵茶)、ウーロン茶(半発酵茶)、黒茶(後発酵茶)の各種茶葉の熱水抽出物をさらに酢酸エチルで分画すること、酢酸エチルにはカテキン類が主に分画されることは、本願出願日当時既に知られていた事項であり(摘記(10a)~(10d))、引用発明の熱水抽出物をさらに酢酸エチルで抽出した場合、得られた酢酸エチル分画は主にカテキン類を含有する可能性があるといえる。
ここで、引用文献6で「今回分析対象として定量したカテキン7種類、ならびに没食子酸の碁石茶最終製品のスーパーオキシドアニオン消去活性に対する寄与率は低かった。従って、好気的、および嫌気的発酵工程で生成される他の物質が主要な抗酸化物質である可能性が高いと考えられた。今後、関与成分の全容を明らかにすることで、高知県の貴重な地域資源である碁石茶に科学的知見が付与され、高付加価値化を図ることができるものと期待される」(摘記(6h))と記載されているように、引用文献6で分析対象として定量したカテキン類及び没食子酸は、碁石茶最終製品のスーパーオキシドアニオン消去活性に対する寄与率が低く、主要な抗酸化物質ではないと考察されていた。そして、上記「碁石茶最終製品」は、引用発明の「漬け込みと呼ばれる2段階目の嫌気的発酵を約20日間行った後の茶葉を裁断後2日間天日干しして得られた碁石茶(DL2)」に相当するので、引用文献6では、引用発明の熱水抽出物中のカテキン類及び没食子酸は、主要な抗酸化物質ではないと考察されていたといえる。
また、引用文献6には、碁石茶の製造工程中におけるスーパーオキシドアニオン消去活性の測定結果が記載されているが(摘記(6a)~(6e)及び(6h))、他の薬理活性については測定されていない。しかも、引用文献6には、碁石茶の機能性について、抗酸化活性、高脂血症及び動脈硬化抑制効果、抗インフルエンザウイルス作用に関する報告がなされていたことが記載されているが(摘記(6f))、血圧上昇抑制作用に関する報告がなされていたことは記載されておらず、碁石茶が血圧上昇抑制作用を有することを示唆する記載もない。
そうすると、引用文献6及び10に接した当業者が、引用発明の熱水抽出物において、主要な抗酸化物質ではないと考察されたカテキン類にあえて着目し、当該カテキン類を主に含有する可能性がある酢酸エチル抽出物を得て、さらに当該酢酸エチル抽出物を有効成分とする新たな血圧上昇抑制剤を得ることを容易に想到しえたとはいえない。
また、引用文献7~9には、茶の主成分であるカテキンはアンジオテンシン変換酵素I(ACE)を阻害する作用を有し(摘記(7f)、(8b)及び(9b))、緑茶から抽出されたエピガロカテキンガレート(EGCg)等のカテキン類を有する粗カテキンは、高血圧自然発症ラット(SHR)及び脳卒中易発症ラット(SHRSP)に対して血圧上昇抑制作用を有することが確認されたこと(摘記(7e)及び(8c))、茶カテキンはヒトに対しても緩やかな血圧降下作用を示すとの知見も見られること(摘記(7f))が記載されており、茶の主成分であるカテキン類が血圧上昇抑制作用を有することは、本願出願日当時既に知られていたといえる。
しかし、既に検討したように、引用文献6では、引用発明の熱水抽出物中のカテキン類及び没食子酸は、主要な抗酸化物質ではないと考察されていたのであるから、引用文献6及び引用文献7~9に接した当業者が、引用発明の熱水抽出物において、主要な抗酸化物質ではないと考察されたカテキン類にあえて着目し、当該カテキン類を有効成分とする新たな血圧上昇抑制剤を得ることを容易に想到しえたとはいえない。
以上のように、引用発明及び引用文献6~10に記載された技術的事項に接した当業者が、引用発明の熱水抽出物から酢酸エチル抽出物を得て、さらに当該酢酸エチル抽出物を有効成分とする本願発明1の血圧上昇抑制剤を得ることを容易に想到しえたとはいえない。
2.本願発明2、3について
本願発明2の血圧上昇抑制用飲食品及び本願発明3の血圧上昇抑制用医薬は、いずれも本願発明1の血圧上昇抑制剤を含有するのであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用文献6~10に記載された技術的事項から本願発明2、3を得ることを、当業者が容易に想到しえたとはいえない。
3.本願発明による効果について
本願明細書及び図面には、本願発明の「碁石茶(登録商標)を熱水抽出したものの酢酸エチル抽出物」が、血管平滑筋に直接作用する血管平滑筋弛緩作用、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害能、及び雄性高血圧自然発症ラット(SHR)に対する血圧低下作用を有し、血圧上昇抑制剤の有効成分として使用できるものであることを裏付ける実験結果が記載されている(段落【0034】~【0051】、【図1】~【図9】)。
そして、特に血管平滑筋に直接作用する血管平滑筋弛緩作用については引用文献6~10のいずれにも記載されておらず、本願発明の上記「酢酸エチル抽出物」によって、血管平滑筋に直接作用する血管平滑筋弛緩作用、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害能、及び雄性高血圧自然発症ラット(SHR)に対する血圧低下作用という効果が得られたこと自体が、引用文献6~10に記載された技術的事項から当業者が予測し得た程度のものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願請求項1~3に係る発明は、引用文献6~10に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-006541