特許拒絶査定不服審判
2017-004567
カバレッジロボットナビゲーション
- 審判番号
- 2017-004567
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-136604
- 請求日
- 2017年04月03日
- 審決日
- 2018年10月23日
- 公報発行日
- 2018年12月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】アイロボット コーポレイション
- 【請求人代理人】松岡 修平
- 審判長/審判官
- 審判長 栗田 雅弘
- 審判官 篠原 将之
- 審判官 平岩 正一
- 分類
- P18 .121-WY (G05D) / P18 .537-WY (G05D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-136604「カバレッジロボットナビゲーション」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月15日出願公開、特開2015-181062、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)12月30日(パリ条約による優先権主張 2010年12月30日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2013-547694号(以下「原出願」という。)の一部を、平成27年7月8日に新たな特許出願としたものであって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 4月 8日付け:拒絶理由通知書
平成28年 7月12日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年12月 1日付け:拒絶査定
平成29年 4月 3日 :審判請求書と同時に手続補正書の提出
平成30年 5月22日付け:拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由」という。)
平成30年 9月13日 :意見書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定(平成28年12月1日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1、3、4及び7ないし13に係る発明は、以下の引用文献A及びBに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本願請求項2に係る発明は、以下の引用文献A、B及びCに基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本願請求項5に係る発明は、以下の引用文献A、B、C及びDに基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
A.特開平1-106205号公報
B.特開2007-303841号公報(周知技術を示す文献)
C.特開昭62-70916号公報(周知技術を示す文献)
D.特開2006-6639号公報
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
理由1(進歩性)
本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1及び2に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本願請求項2ないし13に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2007-330567号公報(当審において新たに引用した文献)
2.特開平1-106205号公報(拒絶査定時の引用文献A)
3.特開昭62-70916号公報(拒絶査定時の引用文献C;周知技術を示す文献)
理由2(明確性)
本願請求項1及び10に係る発明は、日本語として不適切な記載を含むものであるから、不明確であり、請求項1及び10に係る発明並びに請求項1及び10を直接的に又は間接的に引用する請求項2ないし9、11ないし13に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
第4 本願発明
本願請求項1ないし12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明12」という。)は、平成30年9月13日提出の手続補正(以下「本件補正」という。)で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるとおりのものであり、本願発明1ないし12は以下のとおりである。
「【請求項1】
カメラを備える自律型カバレッジロボットを床面上で操縦する方法であって、
清掃モードにおいて前記ロボットを、記憶されている方位情報が示す方位に沿って床面上で移動するよう制御するステップと、
前記カメラから映像を取得するステップと、
前記カメラから取得した前記映像から障害物の特徴を抽出するステップと、
前記障害物を柱として識別するステップと、
前記方位と旋回中の前記ロボットが向いている方位との差を判別しながら柱として識別された前記障害物の周りを曲線の軌道に沿って旋回し、該差が所定の値となったと判断したら、該ロボットが向いている方位と前記記憶されている方位情報が示す方位が一致するまでその場で回転することで該障害物を迂回するよう前記ロボットを制御するステップと、
前記ロボットが柱として識別された前記障害物を迂回した後、該ロボットを前記方位に沿って移動するよう制御するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記映像からの特徴の抽出は、ハフ(Hough)変換による特徴の抽出を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カメラからの映像の取得は、前記方位を中心に180度の映像を取得することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記カメラは前記ロボットに対して可動であり、
前記方位を中心に180度の映像を取得することは、前記カメラを回転させて映像を取得することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記方位を中心に180度の映像を取得することは、前記ロボットをその場で回転させて映像を取得することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記障害物を柱として識別するステップは、
前記映像から抽出した特徴に少なくとも部分的に基づいて前記障害物のサイズを判別することと、
前記障害物のサイズに少なくとも部分的に基づいて、前記障害物を柱として識別することと、を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記障害物を柱として識別するステップは、前記障害物の判別したサイズを閾値と比較することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記閾値は、前記障害物のサイズに少なくとも部分的に基づいて設定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記障害物を柱として識別するステップは、前記障害物のサイズが前記閾値よりも小さいと判断した場合に、前記障害物を柱として識別する、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記ロボットが実質的に円筒形状であり、前記ロボットを前記障害物の周りを曲線の軌道に沿って旋回させることは、前記ロボットの半径以上の半径で前記ロボットを旋回させることを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ロボットの半径とほぼ等しい半径から前記ロボットの半径の約1.8倍の半径で、前記ロボットを旋回させる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記判別した障害物のサイズに少なくとも部分的に基づいた旋回半径で前記ロボットを旋回させる、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。」
第5 引用文献1ないし3並びに引用文献1に記載された発明、引用文献2及び3に記載された技術的事項
1.引用文献1について
当審拒絶理由に引用された引用文献1には、次の事項(1)ないし(9)が記載されている。
(1)段落0008「自走式掃除機1は自律的に室内を移動しながら床上の塵埃を吸引して掃除をする機器である。」
(2)段落0010「自走式掃除機1は、その場で旋回することが可能である。」
(3)段落0021「自走式掃除機1は赤外線の反射によって自走式掃除機1の周辺の物体までの距離を検出する距離センサ6を備えている。…(中略)…距離センサ6の検出に赤外線を用いているが、超音波の反射によって周辺物体までの距離を測るセンサなど他の方式によって距離を測定可能なセンサを使用しても良い。」
(4)段落0022「このような構造によって、自走式掃除機1が走行中にバンパ7が障害物や壁などに接触した場合には、接触を検知することが可能になっている。」
(5)段落0024「自走式掃除機1の上側の面には操作ボタン25が配置されており、使用者はこれらを操作することによって、自走式掃除機1の動作開始や停止,動作モードの選択などが可能になっている。」
(6)段落0025「自走式掃除機1は使用者が操作ボタン25を押すことによって自律動作を開始する。自走式掃除機1は自律動作を開始すると、ファンモータ8および回転ブラシモータ15を駆動することによって吸引を開始する。次に図7(a)に示すように、掃除をする部屋100の外壁101に沿って一周する。」
(7)段落0026「外壁に沿った一周動作が終了すると、外壁101の側の掃除が完了するとともに、部屋100の輪郭がメモリ34上に記憶される。記憶した部屋100の輪郭から、メモリ34上に部屋100のマップ104を形成する。マップ104は二次元のマトリクスであり、マトリクスの要素一つが一辺5センチメートルの正方形領域の属性を表現する。マトリクスの要素に与えられる属性としては、掃除済み領域,未到達領域,外壁領域,内部障害物領域の4種類がある。」
(8)段落0028「自走式掃除機1は外壁101に当たるとターンするアルゴリズムで、ジグザグ状の軌跡を取りながら掃除をすすめる。このとき、自走式掃除機1が通過した場所に相当するマップ104のマトリクス要素に掃除済み領域属性を書き込みながら掃除を進める(図8(b)参照)。」
(9)段落0029「自走式掃除機1が掃除を進行させていく途中で、距離センサ6または、バンパ7に対する接触によって、マップ104上の未到達領域に相当する位置に障害物102の存在を検出した場合は、検出した障害物102を自走式掃除機1の右手に見るようにして、障害物102の側面に沿って周囲を一周する(図7(b)参照)。このとき弁駆動アクチュエータ29を駆動して弁28を閉じるとともに、ファンモータの入力を高めた状態で清掃を行う。マップ104上には自走式掃除機1の走行経路および距離センサ6の出力に基づいて、障害物102の外縁の形状がマップ104上に障害物領域属性として記録される。
物体の周囲の一周を終了すると、マップ104上には障害物領域属性を持つ領域で囲まれた未到達領域属性の要素が形成されるが、これらの未到達領域属性をもつマトリクス要素を障害物領域属性に変更する。このときのマップ104の状態を表したのが図8(b)である。」
(10)段落0030「次に、再び弁28を開放してファンモータ8の入力を通常のレベルに戻し、図7(c)に示すように、自走式掃除機1は部屋100に残されている未到達領域を、ジグザグ状の軌跡を取りながら掃除をする動作の続きを行う。」
また、引用文献1の記載事項及び図面から、次の事項(11)ないし(13)が認められる。
(11)記載事項(6)及び(8)並びに図7(b)及び(c)を参酌すると、自走式掃除機1が床上の塵埃を吸引する自律動作(以下単に「自律動作」という。)において、自走式掃除機1は、図7(b)及び(c)の紙面上下方向(以下単に「上下方向」という。)に沿って床上を移動するステップを有する、と認められる。
(12)記載事項(9)並びに図7(b)及び図8(b)を参酌すると、自走式掃除機1は、走行経路及び距離センサ6の出力に基づいて、障害物102の外縁の形状を検出するステップを有する、と認められる。
(13)記載事項(7)ないし(10)並びに図7(b)及び(c)を参酌すると、自走式掃除機1は、メモリ34上に形成された部屋100のマップ104(以下単に「マップ104」という。)上における自機の現在位置を把握しながら、障害物102の周りを円周軌道に沿って旋回し、自機が障害物102の周囲の所定位置に到達したと判断したら、自走式掃除機1の進行方向と上下方向が一致するまでその場で回転(自転)することで、障害物102を迂回するステップ、及び、自走式掃除機1が障害物102を迂回した後、自走式掃除機1が上下方向に沿って床上を移動するステップ、を有する、と認められる。
以上の記載事項(1)ないし(10)及び認定事項(11)ないし(13)によれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「距離センサ6を備えている自走式掃除機1を床上で移動させる方法であって、
自律動作において自走式掃除機1を上下方向に沿って床上を移動させるステップと、
走行経路及び距離センサ6の出力に基づいて、障害物102の外縁の形状を検出するステップと、
自走式掃除機1は、マップ104上における自機の現在位置を把握しながら、障害物102の周りを円周軌道に沿って旋回し、自機がマップ104上の所定位置に到達したと判断したら、自走式掃除機1の進行方向と上下方向が一致するまでその場で回転(自転)することで、障害物102を迂回するステップと、
自走式掃除機1が障害物102を迂回した後、自走式掃除機1が上下方向に沿って床上を移動するステップと、を含む方法。」
2.引用文献2及び3について
(1)引用文献2について
当審拒絶理由に引用された引用文献2には次の技術的事項が記載されている(第2ページ右下欄第16行ないし第3ページ左下欄第14行並びに第2図及び第3図を参照。)。
「自走式掃除機本体1の外装ケース4の上ケース2の上部に配置される回転可能な測距部6であって、測距部6は回転用モータで回転させることにより、自走式掃除機本体1の全周方向の物体までの距離を測定することができ、測距部6にはTVカメラを用いることもできる、測距部6。」
(2)引用文献3について
当審拒絶理由に引用された引用文献3には次の技術的事項が記載されている(第2ページ左上欄第16行ないし同右上欄第7行を参照。)。
「境界検出方法においては、撮像画像情報をその明度差に基づいてエッジ画像に変換して2値化するので、得られた2値化画像情報には検出すべき境界情報以外の情報ではあるが真の境界情報とは区別しにくい情報が含まれるものである。又、真の境界情報であっても、その画像情報が連続した値として得られるとは限らず、画像のノイズ成分や局所的に存在する明暗変化等の影響で断続したものとなる。
このように、非連続な線分を連続した線分に統合したり、孤立した線分を消去する手段として、ハフ変換処理が有効なことが知られている。」
第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明の「自走式掃除機1」は本願発明1の「自律型カバレッジロボット」に相当する。
以下同様に、引用発明の「床上」は本願発明1の「床面上」に、引用発明の「自律動作」は本願発明1の「清掃モード」に、引用発明の「上下方向」は本願発明1の「記憶されている方位情報が示す方位」に、引用発明の「障害物102」は本願発明1の「障害物」に、それぞれ相当する。
よって、引用発明の「自走式掃除機1を床上で移動させる方法」は本願発明1の「自律型カバレッジロボットを床面上で操縦する方法」に、引用発明の「自律動作において自走式掃除機1を上下方向に沿って床上を移動させるステップ」は本願発明1の「清掃モードにおいて前記ロボットを、記憶されている方位情報が示す方位に沿って床面上で移動するよう制御するステップ」に、引用発明の「自走式掃除機1が障害物102を迂回した後、自走式掃除機1が上下方向に沿って床上を移動するステップ」は本願発明1の「前記ロボットが柱として識別された前記障害物を迂回した後、該ロボットを前記方位に沿って移動するよう制御するステップ」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「距離センサ6」と本願発明1の「カメラ」は、障害物(障害物102)の特徴を抽出する(外縁の形状を検出する)手段(以下「障害物特徴抽出手段」という。)である点を限度として一致するので、引用発明の「走行経路及び距離センサ6の出力に基づいて、障害物102の外縁の形状を検出するステップ」は、本願発明1の「前記カメラから映像を取得するステップと、前記カメラから取得した前記映像から障害物の特徴を抽出するステップ」に対応する。
また、引用発明の「自走式掃除機1は、マップ104上における自機の現在位置を把握しながら、障害物102の周りを円周軌道に沿って旋回し、自機がマップ104上の所定位置に到達したと判断したら、自走式掃除機1の進行方向と上下方向が一致するまでその場で回転(自転)することで、障害物102を迂回するステップ」と本願発明1の「前記方位と旋回中の前記ロボットが向いている方位との差を判別しながら柱として識別された前記障害物の周りを曲線の軌道に沿って旋回し、該差が所定の値となったと判断したら、該ロボットが向いている方位と前記記憶されている方位情報が示す方位が一致するまでその場で回転することで該障害物を迂回するよう前記ロボットを制御するステップ」は、障害物(障害物102)の周りを曲線の軌道(円周軌道)に沿って旋回し、所定位置において、ロボット(自走式掃除機1)が向いている方位と記憶されている方位情報が示す方位(上下方向)が一致するまでその場で回転することで障害物(障害物102)を迂回する点を限度として一致する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。なお、一致点については本願発明1の用語を用いて記載している。
(一致点)
「障害物特徴抽出手段を備える自律型カバレッジロボットを床面上で操縦する方法であって、
清掃モードにおいて前記ロボットを、記憶されている方位情報が示す方位に沿って床面上で移動するよう制御するステップと、
障害物特徴抽出手段から障害物の特徴を抽出するステップと、
前記障害物の周りを曲線の軌道に沿って旋回し、所定位置において、ロボットが向いている方位と前記記憶されている方位情報が示す方位が一致するまでその場で回転することで該障害物を迂回するステップと、
前記ロボットが柱として識別された前記障害物を迂回した後、該ロボットを前記方位に沿って移動するよう制御するステップと、を含む方法。」
(相違点)
(相違点1)
障害物の特徴を抽出するのに際し、本願発明1は、カメラから取得した映像を用いるのに対して、引用発明は、走行経路及び距離センサ6の出力を用いる点。
(相違点2)
本願発明1は、障害物の特徴を抽出した後、当該障害物を柱として識別するのに対し、引用発明は、障害物の外縁の形状を検出した後、当該障害物を柱として識別するか否かは不明である点。
(相違点3)
本願発明1は、記憶されている方位情報が示す方位と旋回中のロボットが向いている方位との差を判別しながら、障害物の周りを曲線の軌道に沿って旋回し、該差が所定の値となったと判断したら、該ロボットが向いている方位と前記方位が一致するまでその場で回転するのに対し、引用発明は、マップ104上における自走式掃除機1の現在位置を把握しながら、障害物102の周りを円周軌道に沿って旋回し、マップ104上の所定位置に到達したと判断したら、自走式掃除機1の進行方向と上下方向が一致するまでその場で回転(自転)する点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点3について先に検討すると、本願発明1の(マップ情報に頼ることなく)ロボットが向いている方位と記憶されている方位情報が示す方位とを比較することで障害物迂回の終了地点を判断する事項は、上記引用文献1ないし3には記載されておらず、原出願の優先日前において周知技術であるともいえない。
また、本願発明1は上記事項により、マップを不要とすることでロボットやプログラムの構成の簡略化を可能にし、障害物周りの移動・清掃効率を下げることなくコストダウンや処理負荷の低減を可能にするという効果を奏するものであって、当該効果は上記引用文献1ないし3からは当業者であっても予測し得ないものである。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2ないし12について
本願発明2ないし12は、請求項1を引用する請求項2ないし12に係る発明であって、本願発明1の全ての発明特定事項を含むものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 特許法第36条第6項第2号についての判断
当審では、本件補正前の、請求項1及び10に係る発明の記載「障害物の方向に曲線の軌道に沿って旋回」(ただし下線部は当審で付与。以下同じ。)は、障害物の周りではなく、障害物の方向にロボットが曲線軌道で回ることをいう点において、日本語として不適切な記載であるとの拒絶の理由を通知していたが、本件補正において、「障害物の周りを曲線の軌道に沿って旋回」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。
第8 原査定についての判断
本件補正により、本願発明1ないし12は「前記方位と旋回中の前記ロボットが向いている方位との差を判別しながら柱として識別された前記障害物の周りを曲線の軌道に沿って旋回し、該差が所定の値となったと判断したら、該ロボットが向いている方位と前記記憶されている方位情報が示す方位が一致するまでその場で回転することで該障害物を迂回するよう前記ロボットを制御するステップ」という発明特定事項を有するものとなった。当該事項は、原査定における引用文献AないしD(なお、引用文献A及びCは各々当審拒絶理由における引用文献2及び3である。)には記載されておらず、原出願の優先日前における周知技術でもないので、本願発明1ないし12は、当業者であっても、原査定における引用文献AないしDに基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。
第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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