特許拒絶査定不服審判
2017-004160
赤外線カットフィルム、赤外線カット合わせガラスおよび赤外線カット部材
- 審判番号
- 2017-004160
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-218443外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年03月22日
- 審決日
- 2018年04月02日
- 公報発行日
- 2018年07月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】富士フイルム株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人特許事務所サイクス
- 分類
- P18 .121-Z (G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-218443「赤外線カットフィルム、赤外線カット合わせガラスおよび赤外線カット部材」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月21日出願公開,特開2014- 71356〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
本件拒絶査定不服審判事件に係る出願(以下,「本件出願」という。)は,平成24年9月28日の出願であって,平成27年10月22日付けで拒絶理由が通知され,同年12月24日に意見書及び手続補正書が提出され,平成28年5月27日付けで拒絶理由が通知され,同年7月27日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年12月20日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされたものである。
本件拒絶査定不服審判は,これを不服として,平成29年3月22日に請求されたものであって,本件審判の請求と同時に手続補正書が提出された。
2 本件出願の請求項1に係る発明
本件出願の請求項1ないし13に係る発明は,平成29年3月22日提出の手続補正書によって補正された請求項1ないし13に記載された事項によって特定されるものと認められるところ,請求項1の記載は次のとおりである。
「透明基材と,
極大吸収波長が750nm~920nmである近赤外線吸収剤を含む近赤外線吸収層と,
コレステリック液晶相を固定化してなる少なくとも1層の近赤外線反射層とを有し,
前記近赤外線吸収剤が,下記一般式(1)で表される化合物であり,
前記近赤外線反射層のうち少なくとも1層は750nm~900nmにおける反射率の極大値が40%以上であることを特徴とする赤外線カットフィルム。
【化1】
(一般式(1)中,R1a及びR1bは互いに同じであっても異なっていてもよく,各々独立にアルキル基,アリール基またはヘテロアリール基を表す。R2およびR3は各々独立に水素原子または置換基を表し,R2およびR3のうち少なくとも一方は電子吸引性基であり,R2およびR3は互いに結合して環を形成してもよい。R4は水素原子,アルキル基,アリール基,ヘテロアリール基,置換ホウ素または金属原子を表し,R4はR1a,R1bおよびR3のうち少なくとも一方と共有結合または配位結合してもよい。)」(以下,当該請求項1に係る発明を「本件発明」という。)
3 原査定の拒絶の理由の概要
(1) 本件補正前の請求項8(本件補正後の請求項1に対応する。)に対する原査定の拒絶の理由(以下,「査定理由」という。)は,概略,次のとおりである。
請求項8に係る発明は,引用文献8に記載された発明,引用文献1,7に記載された事項,及び周知技術(周知例:引用文献3)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
(2) 査定理由で引用された引用例は,次のとおりである。
引用文献8:特開2011-154215号公報
引用文献1:特開2011-68731号公報
引用文献3:特開2011-107321号公報
引用文献7:特開2010-61119号公報
4 引用例
(1)引用文献8
ア 引用文献8の記載
引用文献8(特開2011-154215号公報)は,本件出願の出願前に頒布された刊行物であるところ,当該引用文献8には次の記載がある。(下線は,後述する「引用発明」の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「【請求項1】
基板,並びにコレステリック液晶相を固定してなる少なくとも4つの光反射層X1,X2,X3及びX4を有し,
光反射層X1及びX2それぞれの反射中心波長がλ1(nm)であり互いに等しく,且つ互いに逆方向の円偏光を反射し,その反射中心波長λ1(nm)が,1010~1070nmの範囲にあり,
光反射層X3及びX4それぞれの反射中心波長がλ2(nm)であり互いに等しく,且つ互いに逆方向の円偏光を反射し,その反射中心波長λ2(nm)が,1190~1290nmの範囲にある,
赤外線を反射する赤外光反射板。
・・・(中略)・・・
【請求項3】
前記基板が,ポリマーフィルムである請求項1又は2に記載の赤外光反射板。
【請求項4】
前記赤外光反射板の一方又は双方の表面に易接着層を有する請求項1~3のいずれか1項に記載の赤外光反射板。
・・・(中略)・・・
【請求項6】
前記基板と,前記少なくとも4つの光反射層X1,X2,X3及びX4の少なくとも1つの光反射層との間に,下塗り層及び/又は配向層を有する請求項1~5のいずれか1項に記載の赤外光反射板。
・・・(中略)・・・
【請求項10】
前記易接着層,下塗り層,配向層,及び基板のうち少なくとも1つが,少なくとも1種類の色材を含有する請求項4~9のいずれか1項に記載の赤外光反射板。」
(イ) 「【技術分野】
【0001】
本発明はコレステリック液晶相を固定してなる光反射層を複数有する赤外光反射板であって,主に建造物及び車両等の窓の遮熱に利用される赤外光反射板に関する。また,それを利用した赤外光反射性合わせガラス用の積層中間膜シート及びその製造方法に関する。また,それを利用した赤外光反射性合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年,環境・エネルギーへの関心の高まりから省エネに関する工業製品へのニーズは高く,その一つとして住宅及び自動車等の窓ガラスの遮熱,つまり日光による熱負荷を減少させるのに効果のある,ガラス及びフィルムが求められている。日光による熱負荷を減少させるのには,太陽光スペクトルの可視光領域または赤外領域のいずれかの太陽光線の透過を防ぐことが必要である。
・・・(中略)・・・
【0005】
実際に,コレステリック液晶相を固定してなる光反射層を有する光反射膜を利用して,特定の波長の光を完全に反射することは困難であり,通常は,λ/2板という,特殊な位相差板を利用するのが一般的である。例えば,特許文献4及び5では,同一の方向の旋光性を有し,且つ同一の螺旋ピッチを有する,コレステリック液晶相を固定してなる光反射層を,λ/2板の両面にそれぞれ形成することで,所定の波長の右円偏光及び左円偏光を反射する試みがなされている。
【0006】
しかし,上記した通りλ/2板は特殊な位相差板であり,その作製が困難であり,作製コストが上昇する。また,材料が特殊のものに制限され,その結果,用途が制限される場合がある。さらに,通常,λ/2板は,層面に対して法線方向から入射する光に対しては,λ/2板として作用するものの,斜めから入射する光に対しては,厳密にはλ/2板として機能しない。そのため,上記λ/2板を組合せた構成では,斜め方向から入射する光を完全に反射できないという問題がある。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って,本発明の課題は,コレステリック液晶相を固定してなる光反射層を複数有する赤外光反射板について,λ/2板の使用を必須とせずに,反射特性を改善することであり,並びに,コレステリック液晶相を固定してなる光反射層を複数有する赤外光反射板の選択反射特性を改善し,特に遮熱性の高い赤外光反射板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため,本発明者が鋭意検討した結果,互いに逆の旋光性(即ち右又は左旋光性)のコレステリック液晶相を固定してなる光反射層を2組以上,基板上に配置すれば,当該波長域の左円偏光及び右円偏光のいずれをも反射でき,さらに,それぞれの組の選択反射の中心波長を,所定の範囲とすることで,より高い遮熱性能が得られることがわかった。この知見に基づき,本発明を完成するに至った。なお,本発明では,互いに逆の旋光性(即ち右又は左旋光性)のコレステリック液晶相を固定してなる対をなす2つの光反射層は,隣接している必要はなく,また基板の同一の表面上に形成されている必要もない。
【0011】
上記課題を解決するための手段は,以下の通りである。
[1] 基板,並びにコレステリック液晶相を固定してなる少なくとも4つの光反射層X1,X2,X3及びX4を有し,
光反射層X1及びX2それぞれの反射中心波長がλ1(nm)であり互いに等しく,且つ互いに逆方向の円偏光を反射し,その反射中心波長λ1(nm)が,1010~1070nmの範囲にあり,
光反射層X3及びX4それぞれの反射中心波長がλ2(nm)であり互いに等しく,且つ互いに逆方向の円偏光を反射し,その反射中心波長λ2(nm)が,1190~1290nmの範囲にある,
赤外線を反射する赤外光反射板。・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば,コレステリック液晶相を固定してなる光反射層を複数有する赤外光反射板について,λ/2板の使用を必須とせずに,反射特性を改善することができる。本発明によれば,コレステリック液晶相を固定してなる光反射層を複数有する赤外光反射板の選択反射特性を改善し,特に遮熱性の高い赤外光反射板を提供することができる。」
(ウ) 「【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の赤外光反射板の一例の断面図である。」
(エ) 「【発明を実施するための形態】
【0014】
・・・(中略)・・・
【0017】
以下,図面を用いて,本発明の赤外光反射板,合わせガラス用積層膜シート,及び合わせガラスの実施形態について説明する。
図1に示す赤外光反射板は,基板12の一方の表面に,それぞれ,コレステリック液晶相を固定してなる光反射層14a,14b,16a及び16bを有する。ただし,本発明においては,光反射層14a,14b,16a及び16bの基板12からの積層順は,図1の記載される順番に限定されるものではない。また,4つの光反射層が,基板の一方の表面に積層されている必要はなく,基板の双方の表面に1以上の光反射層を有する態様であってもよい。
【0018】
基板12は,例えば,ポリマーフィルムであり,その光学特性については特に制限はない。・・・(中略)・・・
【0020】
光反射層14a,14b,16a及び16bは,コレステリック液晶相を固定してなる層であるので,当該コレステリック液晶相の螺旋ピッチに基づいて,特定の波長の光を反射する光選択反射性を示す。本発明の1つの実施形態では,隣接する光反射層14aと14bは,それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆であるとともに,その反射中心波長λ14が同一である。また,同様に,隣接する光反射層16aと16bは,それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆であるとともに,その反射中心波長λ16が同一である。本実施形態では,λ14≠λ16を満足するので,光反射層14aと14bによって所定の波長λ14の左円偏光及右円偏光を選択反射するとともに,光反射層16aと16bによって,波長λ14とは異なる波長λ16の左円偏光及び右円偏光を選択反射しており,全体として,反射特性の広帯域化が図れている。
【0021】
図1に示す赤外光反射板10は,光反射層14aと14bによる選択反射の中心波長λ14が,1010~1070nmの範囲にあり,光反射層16aと16bによる選択反射の中心波長λ16が,1190~1290nmの範囲にある。本発明では,選択反射波長がそれぞれ前記範囲である2組の光反射層を利用することで,赤外線の反射効率を改善している。その結果,同一の構成の赤外光反射板と比較して,遮熱性がさらに改善されている。図10に示す通り,太陽光エネルギー強度のスペクトル分布は,短波長であるほど高エネルギーであるという一般的傾向を示すが,赤外光波長域のスペクトル分布には,波長950~1130nm,及び波長1130~1350nmに,2つのエネルギー強度のピークが存在する。本発明者が鋭意検討した結果,選択反射の中心波長が,1010~1070nm(より好ましくは1020~1060nm)の範囲にある少なくとも一組の光反射層と,選択反射の中心波長が,1190~1290nm(より好ましく波1200~1280nm)の範囲にある少なくとも一組の光反射層とを利用することにより,該2つのピークに相当する光をより効率的に反射することができ,その結果,遮熱性をより改善することができることがわかった。
・・・(中略)・・・
【0023】
上記した通り,隣接する光反射層14aと14bは,それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆であり,同様に,隣接する光反射層16aと16bは,それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆である。この様に,逆向きのコレステリック液晶相からなり,選択反射の中心波長が同一の光反射層を近くに配置することで,同波長の左円偏光及び右円偏光の双方を反射することができる。この作用は,基板12の光学特性とは無関係であり,基板12の光学特性には影響されずに得られる作用である。
例えば,光反射層16bを通過した光(波長λ16の右円偏光が反射され,左円偏光のみが透過した光)が,次に通過するのが16bではなく14aや14bのように,選択反射の中心波長がλ16ではない場合,波長λ16の左円偏光成分は螺旋ピッチのサイズが異なるコレステリック液晶層を通過することになる。この場合,波長λ16の左円偏光成分は,他の光反射層中のコレステッリク液晶相の旋光性の影響を僅かではあるが受けることになり,左円偏光成分の波長がシフトするなどの変化が生じる。当然のことながら,この現象は,「波長λ16の左円偏光成分」に限って起こるわけではなく,ある波長のある円偏光が,異なる螺旋ピッチのコレステリック液晶相を通過する場合に生じる変化である。本発明者が種々検討した結果,経験則的なデータではあるが,所定の螺旋ピッチのコレステリック液晶層によって反射されなかった一方の円偏光成分が,反射されないまま,螺旋ピッチが異なる他のコレステリック液晶層を通過する場合,通過する当該層の数が3以上になると,通過する円偏光成分への悪影響が顕著になり,その後に,当該円偏光を反射可能なコレステリック液晶層に到達しても,当該層による反射率が顕著に低下することがわかった。本発明では,選択反射の中心波長が互いに同一であり,且つ螺旋方向が互いに異なる一組の光反射層は,隣接させて配置しなくても,本発明の効果が得られるが,当該一組の光反射層の間に配置される,他の光反射層(螺旋ピッチが異なるコレステリック液晶相を固定して形成された,選択反射の中心波長が異なる光反射層)は,2以下であるのが好ましい。勿論,当該一組の光反射層が隣接しているのが好ましい。
・・・(中略)・・・
【0028】
また,本発明の赤外線反射板は,勿論,上記2山のピークスペクトル以外の赤外線波長領域(例えば,780~940nm,1400~2500nm)に対しても,それぞれの波長域に合わせた選択反射特性を有していてもよい。例えば,コレステリック液晶相を固定してなる光反射層を,特には,互いに逆の旋光性(即ち右又は左旋光性)のコレステリック液晶相を固定してなる光反射層の1組をさらに積層することにより,選択反射波長域を広帯域化し,遮熱性能をより向上させることができる。
【0029】
また,反射特性のみならず,材料の光吸収特性によって遮熱効果を改善することもできる。
例えば,近赤外光域,好ましくは,780~940nm程度の波長域範囲に吸収特性を示す色材を,基板もしくは少なくとも一つの光反射層に添加することによって,又は該色材を含有する層を別途配置することによって,近赤外域の光を吸収し,遮熱性をさらに改善することもできる。光吸収素材である色材を利用すると,可視光線波長領域の透過率スペクトルに偏りが生じ,透過光に色味が生じる場合がある。用途によっては,この特性を積極的に利用して,所望の色となるように色材を選択することができる。一方,用途によっては(例えば,車のフロントガラス等)では,着色が好ましくない場合もある。本発明者が検討したところ,色材として,所望のスペクトル曲線を示す化合物を選択することで,又は吸収極大波長が780~940nmである吸収材料とともに,他の吸収特性を示す吸収材料を併用することで,色味をニュートラルに調整し得ることがわかった。この詳細について,後述する。
・・・(中略)・・・
【0033】
なお,色材,金属酸化物微粒子及び紫外線吸収剤等は,液晶の配向に影響する場合があるので,これらの材料は,基板もしくは光反射層以外の他の層中に添加する,又は光反射層が他の部材と一一体化される場合は,当該部材中に添加することが好ましい。これらの材料は同一の層に添加されていてもよいし,互いに異なる層にそれぞれ添加されていてもよい。それぞれの材料の機能による効果をより効率的に得られるように,それぞれの材料を添加する部材(層,基板等)が決定されるであろう。また,これらの材料の種々の性質(ヘイズに与える影響,溶解性,溶融性,塗布性,溶融性)を考慮して,面状故障などが生じず,透明性を顕著に低下させないように,添加される部材が決定されるであろう。・・・(中略)・・・また,色材や金属酸化物微粒子は,光反射層と比較して,より後に光が入射する部材に添加されるのが好ましい。
・・・(中略)・・・
【0046】
次に,本発明の赤外光反射板の作製に用いられる材料及び作製方法の例について詳細に説明する。
1.光反射層形成用材料
本発明の赤外光反射板では,各光反射層の形成に,硬化性の液晶組成物を用いるのが好ましい。前記液晶組成物の一例は,棒状液晶化合物,光学活性化合物(キラル剤),及び重合開始剤を少なくとも含有する。各成分を2種以上含んでいてもよい。例えば,重合性の液晶化合物と非重合性の液晶化合物との併用が可能である。また,低分子液晶化合物と高分子液晶化合物との併用も可能である。更に,配向の均一性や塗布適性,膜強度を向上させるために,水平配向剤,ムラ防止剤,ハジキ防止剤,及び重合性モノマー等の種々の添加剤から選ばれる少なくとも1種を含有していてもよい。また,前記液晶組成物中には,必要に応じて,さらに重合禁止剤,酸化防止剤,紫外線吸収剤,光安定化剤,色材,金属酸化物微粒子等を,光学的性能を低下させない範囲で添加することができる。
【0047】
(1) 棒状液晶化合物
本発明に使用可能な棒状液晶化合物の例は,棒状ネマチック液晶化合物である。前記棒状ネマチック液晶化合物の例には,アゾメチン類,アゾキシ類,シアノビフェニル類,シアノフェニルエステル類,安息香酸エステル類,シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類,シアノフェニルシクロヘキサン類,シアノ置換フェニルピリミジン類,アルコキシ置換フェニルピリミジン類,フェニルジオキサン類,トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。低分子液晶化合物だけではなく,高分子液晶化合物も用いることができる。
【0048】
本発明に利用する棒状液晶化合物は,重合性であっても非重合性であってもよい。・・・(中略)・・・
【0063】
2. 基板
本発明の赤外光反射板は,基板を有するが,当該基板は自己支持性があり,上記光反射層を支持するものであれば,材料及び光学的特性についてなんら限定はない。用途によっては,紫外光に対する高い透明性が要求されるであろう。所定の光学特性を満足するように,生産工程を管理して製造される,λ/2板等の特殊の位相差板であってもよいし,また,面内レターデーションのバラツキが大きく,具体的には,波長1000nmの面内レターデーションRe(1000)のバラツキで表現すれば,Re(1000)のバラツキが20nm以上,また100nm以上であり,所定の位相差板としては使用不可能なポリマーフィルム等であってもよい。また基板の面内レターデーションについても特に制限はなく,例えば,波長1000nmの面内レターデーションRe(1000)が,800~13000nmである位相差板等を用いることができる。
【0064】
可視光に対する透過性が高いポリマーフィルムとしては,液晶表示装置等の表示装置の部材として用いられる種々の光学フィルム用のポリマーフィルムが挙げられる。前記基板としては,例えばポリエチレンテレフタレート(PET),ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム;ポリカーボネート(PC)フィルム,ポリメチルメタクリレートフィルム;ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム;ポリイミドフィルム,トリアセチルセルロース(TAC)フィルム,などが挙げられる。ポリエチレンテレフタレート,トリアセチルセルロースが好ましい。
【0065】
3. 易接着層
本発明の赤外光反射体は,一方又は双方の最外層として,易接着層を有していてもよい。易接着層は,例えば,合わせガラス用中間膜との接着性を改善する機能を有する。・・・(中略)・・・
【0069】
4. 下塗り層
本発明の赤外光反射体は,コレステリック液晶相の光反射層と基板との間に下塗り層を有していてもよい。コレステリック液晶相の光反射層と基板との密着力が弱いと,コレステリック液晶相の光反射層を積層して製造する際の工程で剥離故障が起き易くなったり,赤外光反射板として合わせガラスにした際の強度(耐衝撃性)低下を引き起こす。よって,下塗り層として,コレステリック液晶層と基板との接着性を向上させることができる層を利用することができる。一方で,基板,又は基板と下塗り層とを剥離して,中間膜シート等の部材と光反射層を一体化する場合は,基板と下塗り層,又は下塗り層とコレステリック液晶相の光反射層との界面には,剥離可能な程度の接着性の弱さが必要である。後工程で積層中間膜シートにすることを考えると,下塗り層と基板との界面で剥離する方が好ましい。・・・(中略)・・・
【0070】
5. 配向層
本発明の赤外光反射体は,コレステリック液晶相の光反射層と基板との間に配向層を有していてもよい。配向層は,コレステリック液晶層中の液晶化合物の配向方向をより精密に規定する機能を有する。配向層は,有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理,無機化合物の斜方蒸着,マイクログルーブを有する層の形成等の手段で設けることができる。さらには,電場の付与,磁場の付与,或いは光照射により配向機能が生じる配向層も知られている。配向層は,ポリマーの膜の表面に,ラビング処理により形成するのが好ましい。
配向層は,コレステリック液晶相の光反射層と隣接する必要があるので,コレステリック液晶相の光反射層と基板又は下塗り層との間に設けるのが好ましい。但し,下塗り層が配向層の機能を有していてもよい。また,光反射層の間に配向層を有していてもよい。
・・・(中略)・・・
【0076】
9. 色材
本発明の赤外光反射体は,光反射層,易接着層,下塗り層,配向層,及び基板の少なくとも1つに,色材を含有するのが好ましい。色材の種類によっては,液晶の配向に影響を与えるため,光反射層以外の部材(層,基板等)に添加するのが好ましい。なお,色材を含有する部材を光が通過する際に生じる拡散や吸収等により,コレステリック液晶相の光反射層での赤外光反射の効率を低下させ,遮熱性能を低下させる場合がある。よって,本発明の実施態様は,種々の形態をとり得るが,光反射層と比較して,より後に光が入射する部材中に添加することが好ましい。より具体的には,室内側に配置されるガラス板と,コレステリック液晶相の光反射層との間に配置される層中に含有するのが好ましい。或いは,室内側に配置されるガラス板に接着させられる中間膜や室内側に配置されるガラス板そのものに含有されることも好ましい。
【0077】
色材としては,染料,顔料いずれも用いることができる。特に,780~940nmの波長領域に対する吸収材特性を示す材料を用いると,遮熱性をより改善できるので好ましい。また,着色を軽減できる点でも好ましい。780~940nmの波長領域に対する吸収材料としては,シアン染料,シアン顔料が好ましい。・・・(中略)・・・
【0079】
上記した通り,光吸収素材である色材を利用すると,可視光線波長領域の透過率スペクトルに偏りが生じ,透過光に色味が生じる場合がある。用途によっては,この特性を積極的に利用して,所望の色となるように色材を選択することができる。一方,用途によっては(例えば,車のフロントガラス等)では,着色が好ましくない場合もある。本発明者が検討したところ,吸収極大波長が780~940nmである吸収材料とともに,他の吸収特性を示す吸収材料を併用することで,色味をニュートラルに調整し得ることがわかった。例えば,赤外光反射板の透過光の色味をニュートラルな方向に調整するためには,上記シアン染料,及び/又はシアン顔料とともに,それ以外の色材(イエロー染料,イエロー顔料,マゼンタ染料,マゼンタ顔料等)を用いることが好ましい。これら色材は,各種文献に記載されている公知のものが利用できる。(染料は特開2005-105175号公報等に,顔料は特開2009-67956号公報等に記載されている。)
・・・(中略)・・・
【0094】
14. 赤外光反射板の用途
本発明の赤外光反射板は,太陽光エネルギーのピークに対応する1010~1070nm,1190~1290nmに反射ピークのある選択反射特性を示す。この様な特性の反射板は,住宅,オフィスビル等の建造物,又は自動車等の車両の窓に,日射の遮熱用の部材として貼付される。又は,本発明の赤外光反射板は,日射の遮熱用の部材そのもの(たとえば,遮熱用ガラス,遮熱用フィルム)として,その用途に供することができる。
【0095】
赤外光反射板としてその他の重要な性能は,可視光の透過率とヘイズである。材料の選択及び製造条件等を調整して,用途に応じて,好ましい可視光の透過率及びヘイズを示す赤外光反射板を提供できる。例えば可視光の透過率が高い用途に用いられる態様では,可視光の透過率が90%以上であり,且つ赤外の反射率が上記反応を満足する赤外光反射板とすることができる。」
(オ) 「【実施例】
【0096】
以下に実施例と比較例(なお比較例は公知技術というわけではない)を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料,使用量,割合,処理内容,処理手順等は,本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って,本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
・・・(中略)・・・
【0113】
配向層用塗布液(H2)の組成(シアン染料含有)
変性ポリビニルアルコールPVA203(クラレ社製) 10質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
水 369質量部
メタノール 119質量部
シアン染料ダイレクトブルー79 2質量部
・・・(中略)・・・
【0116】
[実施例5]
易接着層(アンダーコート層)用塗布液(U1)を,ワイヤーバーを用いて,乾燥後の膜厚が0.5μmになるようにPETフィルム(富士フイルム(株)製,厚み:188μm)上に塗布した。その後,150℃で10分間加熱し,乾燥,固化し,易接着層(アンダーコート層)を形成した。
次いで,上記で作製した易接着層(アンダーコート層)付PETフィルムの易接着層(アンダーコート層)が塗布されていない側の表面上に,下塗り層用塗布液(S1)を,ワイヤーバーを用いて,乾燥後の膜厚が0.25μmになるように塗布した。その後,150℃で10分間加熱し,乾燥,固化し,下塗り層を形成した。
次いで,形成した下塗り層の上に,配向層用塗布液(H1)を,ワイヤーバーを用いて,乾燥後の膜厚が1.0μmになるように塗布した。その後,100℃で2分間加熱し,乾燥,固化し,配向層を形成した。配向層に対し,ラビング処理(レーヨン布,圧力:0.1kgf,回転数:1000rpm,搬送速度:10m/min,回数:1往復)を施した。
次いで,形成した配向層の上に,塗布液(R1),(L1),(R2),(L2)を用い,実施例1の手順と同様にし,4層積層されたコレステリック液晶相の光反射層を形成した。
次いで,上記で形成したコレステリック液晶相の光反射層の最上層の表面に,易接着層用塗布液(I1)を,ワイヤーバーを用いて,乾燥後の膜厚が1.0μmになるように塗布した。その後,150℃で10分間加熱し,乾燥,固化し,易接着層を形成し,赤外光反射板を作製した。
【0117】
次いで,上記で作製した赤外光反射板と合わせガラス用ポリビニルブチラール中間膜シート(厚み:380μm)とを,ラミネーター(大成ラミネーター(株)製)を用いてラミネート処理(加熱温度:80℃,加圧力:1.5kg/cm2,搬送速度:0.1m/min)することにより,合わせガラス用積層中間膜シートを作製した。
次いで,上記で作製した合わせガラス用積層中間膜シートを2枚の透明ガラス(厚さ:2mm)で挟み,ゴムバッグに入れ,真空ポンプで減圧した。その後,減圧下で90℃まで昇温し,30分間保持後,いったん常温常圧まで戻した。その後,オートクレーブ内にて圧力1.3MPa,温度130℃の条件で20分間保持した。これを常温常圧まで戻し,実施例5の赤外光反射機能付合わせガラスを作製した。
・・・(中略)・・・
【0124】
[実施例7]
易接着層用塗布液(I1)を紫外線吸収剤含有易接着層用塗布液(I2)に変更した以外は実施例5と同様の手順にして実施例7の赤外光反射機能付合わせガラスを作製した。
[実施例8]
配向層用塗布液(H1)をシアン染料含有配向層用塗布液(H2)に変更した以外は実施例7と同様の手順にして実施例8の赤外光反射機能付合わせガラスを作製した。
・・・(中略)・・・
【0125】
上記で作製した各赤外光反射機能付合わせガラスについて,同様に,遮熱性能評価2,耐光性試験(気泡の発生評価)を実施した。さらに,耐光性試験として,黄変度を観察して,以下の基準で評価し,さらに,透過光色味評価も併せて実施した。
[耐光性試験(黄変度評価)]
耐光性試験条件は,気泡発生の黄変度変化と同様である。
・黄変判定
○:変化無し
△:よく観察すると,黄変に気付く
×:一目で黄変に気付く
××:黄変が激しい
【0126】
[透過光色味評価]
作製した各赤外光反射機能付合わせガラスについて,白色蛍光灯で観察を行い,目視判定を行なった。
◎:色味無し
○:よく観ると色味があるが,気にならない
△:よく観ると色味があり,気になる
×:一目で色味に気付く
結果を,下表に示す。実施例5の結果も併せて示す。
【0127】
【表7】
【0128】
実施例5は,透過光色味としては問題無いレベルであることが確認された。
実施例7では,紫外線吸収剤を易接着層に含有させたことにより,遮熱性能が向上し,耐光性試験の黄変も抑制することができた。
実施例8では,さらにシアン染料を配向層に含有させたことにより,さらに遮熱性能が向上した。また,シアン染料により色味も補正され,透過光色味はやや薄い緑色にまで抑えられ,気にならないレベルとなった。・・・(中略)・・・
【0129】
上記の結果より,本発明の実施例によれば,遮熱性能に優れる赤外光反射板を得られることが示された。・・・(中略)・・・また,色材や金属酸化物微粒子を含有させることにより,遮熱性能を向上させられることが示された。」
(カ) 「【図1】
」
イ 引用文献8に記載された発明
引用文献8の記載から,請求項10に係る発明の実施形態である「赤外光反射板10」として,次の発明が記載されていると認められる。
「ポリマーフィルムである基板12と,
前記基板12の一方の表面に設けられた下塗り層と,
前記下塗り層上に設けられた配向層と,
コレステリック液晶相を固定してなり,螺旋ピッチに基づいて特定の波長の光を反射する光選択反射性を示す光反射層14a,14b,16a及び16bであって,前記配向層上にこの順で積層された光反射層14a,14b,16a及び16bと,
一方又は双方の最外層に設けられた易接着層とを,
有する赤外光反射板10であって,
前記光反射層14aと14bは,それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆であるとともに,その反射中心波長λ14が同一であることによって,同波長の左円偏光及び右円偏光の双方を反射するよう構成され,前記反射中心波長λ14は1010ないし1070nmの範囲にあり,
前記光反射層16aと16bは,それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆であるとともに,その反射中心波長λ16が同一であることによって,同波長の左円偏光及び右円偏光の双方を反射するよう構成され,前記反射中心波長λ16は1190ないし1290nmの範囲にあり,
前記易接着層,前記下塗り層,前記配向層,及び前記基板12のうち少なくとも1つが,780ないし940nmの波長領域に吸収特性を示す色材を含有する,
主に建造物及び車両等の窓の遮熱に利用される赤外光反射板10。」(以下,「引用発明」という。)
(2)引用文献1
ア 引用文献1の記載
引用文献1(特開2011-68731号公報)は,本件出願の出願前に頒布された刊行物であるところ,当該引用文献1には次の記載がある。(下線は,後述する「引用文献1記載事項」の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「【請求項1】
下記一般式(1)で表される近赤外吸収性色素を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【化1】
(式中,R1a及びR1bは互いに同じであっても異なっていてもよく,各々独立にアルキル基,アリール基またはヘテロアリール基を表す。R2及びR3は各々独立に水素原子または置換基を表し,少なくとも一方は電子吸引性基であり,R2及びR3は結合して環を形成してもよい。R4は水素原子,アルキル基,アリール基,ヘテロアリール基,置換ホウ素または金属原子を表し,R1a,R1b及び/又はR3と共有結合もしくは配位結合していてもよい。)」
(イ) 「【技術分野】
【0001】
本発明は,不可視性の高い近赤外吸収性の硬化性組成物,インク組成物,インクジェット用インクおよびレジスト液に関する。また本発明は,該インクジェット用インクおよびレジスト液を用いた近赤外線吸収フィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近赤外線吸収色素は広い分野において様々な用途に適用されている。例えば,プラズマディスプレイパネル(PDP)やCCDなど固体撮動素子用の赤外線カットフィルム,熱線遮蔽フィルムにおける光学フィルタとして,あるいは追記型光ディスク(CD-R)やフラッシュ溶融定着材料における光熱変換材料として,近赤外吸収性色素は用いられている。
また,セキュリティインクや,不可視バーコードインクにおける情報表示材料として,近赤外吸収性色素が用いられている。セキュリティインクは,紙幣・金券類・有価証券類等の暗号化された情報(バーコード,2次元コード,OCR文字等)を印刷し,偽造を防止するために用いられている。またセキュリティインクは,印刷物の意匠性を損なわない隠しインクとしても有用である。
【0003】
近赤外線吸収色素を情報表示用途に使用する場合には,近赤外領域に強い吸収を有することに併せて,目に見えないという不可視性に優れることが非常に重要である。無機物イオン(銅,鉄,イッテルビウムなど)を含有するインクや,フタロシアニン色素,ジオチール化合物色素,スクアリウム色素,クロコニウム色素,ニッケル錯体色素などの有機色素を用いて,赤外線吸収画像を形成することが提案されている(特許文献1~5参照)。しかし,これらのインクでは,画像の赤外線吸収性は十分でも不可視性が十分とはいえない。不可視性を高めようとすると,逆に赤外線吸収性が不十分となり可視画像と混在するときの識別能が不十分なインクとなる。特に,可視領域に近い赤外領域(700nm~900nm)に極大吸収を有する近赤外線吸収色素においては,不可視性が不十分である傾向が顕著である。
【0004】
近赤外線吸収色素の別の応用例として,CCD用の赤外線吸収フィルタが挙げられる。カメラに装着されたCMOS・CCD等の固体撮像素子は,赤外領域の光(700nm~1100nm)にも高い感度を有しており,正確な色分解がなされない。この不正確な色分解を避けるため,通常は,反射型の赤外線吸収フィルタと,無機イオンまたは有機色素を用いた吸収型の赤外線吸収フィルタとをカメラの光学系に挿入している。しかし,このようなフィルタはレンズ全面に装着するため一画素ごとに赤外線カットのON/OFFを行うことは実質的に不可能であり,例えば,可視光による像と赤外光による像を一度に撮像するような用途に用いることはできない。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は,不可視性が高い近赤外吸収性の硬化性組成物,インク組成物,インクジェット用インクおよびレジスト液を提供することを課題とする。また本発明は,該インクジェット用インクおよびレジスト液を用いた近赤外線吸収フィルタの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は,下記の手段によって解決された。
<1>下記一般式(1)で表される近赤外吸収性色素を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【化1】
(式中,R1a及びR1bは互いに同じであっても異なっていてもよく,各々独立にアルキル基,アリール基またはヘテロアリール基を表す。R2及びR3は各々独立に水素原子または置換基を表し,少なくとも一方は電子吸引性基であり,R2及びR3は結合して環を形成してもよい。R4は水素原子,アルキル基,アリール基,ヘテロアリール基,置換ホウ素または金属原子を表し,R1a,R1b及び/又はR3と共有結合もしくは配位結合していてもよい。)・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0008】
本発明の硬化性組成物は,近赤外線吸収能を有し,可視部での吸収がきわめて低く,当該硬化性組成物を用いて作製された硬化膜は,近赤外での吸収性と不可視性の両方の特性を併せ持つという優れた作用効果を奏する。」
(ウ) 「【図面の簡単な説明】
【0009】
・・・(中略)・・・【図4】硬化膜C-1,C-2およびC-3の透過スペクトルを表すグラフである。」
(エ) 「【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に,まず,本発明の硬化性組成物,当該硬化性組成物を含むインクジェット用インク,および当該硬化性組成物を含むレジスト液について説明する。以下,代表的な実施態様に基づいて説明されることがあるが,本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお,本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は,「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
<近赤外線吸収色素>
まず本発明で用いられる近赤外吸収性色素について説明する。・・・(中略)・・・
【0037】
以下に,本発明の硬化性組成物に使用される近赤外吸収性色素の具体例を示すが,本発明は下記具体例に限定されるものではない。本明細書において,Meはメチル,Etはエチル基を,Buはブチル基,Phはフェニル基を表す。なお,以下の化学式において例えば式D-1やD-17等は一般式(1)の置換基R4にあたる水素原子が置換基R3を構成するヘテロ環の窒素原子と配位結合を形成するが,これを省略して示している(後記スキーム1参照)。
・・・(中略)・・・
【0048】
【化19】
・・・(中略)・・・
・・・(後略)・・・」
(オ) 「【実施例】
【0164】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料,使用量,割合,処理内容,処理手順等は,本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって,本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお,以下の実施例及び比較例において単に「部」又は「%」というとき,特に断らない限り,質量基準である。
・・・(中略)・・・
【0173】
-微粒子分散物の作製-
(調製例1)
[例示化合物(D-142)の微粒子分散物の調製]
下記表1に示す近赤外線吸収化合物(5質量部),分散剤(5質量部)とに,分散媒(90質量部)を加え100質量部とした。さらに0.1mmφのジルコニアビーズを100質量部添加し,遊星型ボールミルにて300rpmで8時間処理を行い,ビーズを濾過で分離し,微細粒子からなる分散液A-1~A-6を作製した。分散液A-1,A-3,A-4およびA-6の吸収スペクトルを極大吸収波長で規格化したものを図2(A-1およびA-3)と図3(A-4およびA-6)に示す。なお,吸収スペクトルは分散液を分散媒で希釈して測定した。図2,図3に示すとおり,分散液A-1,A-3,A-4およびA-6はともに550nmの吸光度が0.1以下であり,吸収可視部の吸収をほとんど有さず,高い不可視性を有することがわかった。また,赤外領域の吸収は非常にシャープであることがわかった。
【0174】
【表1】
分散剤 W-1 Solsperse 55000
(商品名 アビシア(社)製)
分散媒 S-1 プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(PEGMEA)
S-2 N-ビニルカプロラクタム(NVC)
S-3 フェノキシエチルアクリレート(PEA)
S-4 ジプロピレングリコールジアクリラート(DPGDA)
【0175】
-光硬化性インク組成物の作製-
(実施例1)
以下の成分を高速水冷式攪拌機により攪拌し,光硬化性インク組成物B-1を得た。
・前記微粒子分散液A-4 20.0部
・N-ビニルカプロラクタム(NVC) 42.0部
・ジプロピレングリコールジアクリラート(DPGDA) 30.0部
・Irgacure 819 8.0部
(Ciba Specialty Chemicals社製 光重合開始剤)
・・・(中略)・・・
【0177】
-光照射による硬化膜の作製-
(実施例3)
厚み1.0mmのガラス基板上に,スピンコートにより上記光硬化性インク組成物B-1を塗布した。その後,365nmにおける露光エネルギーが2000mJ/cm2の光を照射し,硬化膜C-1を作製した。
・・・(中略)・・・
【0181】
図4に実施例3,4,6で得られた硬化膜C-1,C-2およびC-3の透過スペクトルを示す。図4に示すとおり,C-1,C-2およびC-3はすべて550nmの吸光度が0.1以下であり,吸収可視部の吸収をほとんど有さず,本発明の硬化膜は,極めて高い不可視性を有することがわかった。また,赤外領域の吸収は非常にシャープであることがわかった。また,硬化反応によるスペクトルの変化は,可視領域および近赤外領域ではほとんど見られず,硬化による近赤外吸収色素の劣化およびその微粒子分散状態の劣化は起こらないことがわかった。
・・・(中略)・・・
【0184】
-硬化塗膜の耐光性試験-
(実施例7)
硬化膜C-1,C-2,C-3およびC-4をスーパーキセノンランプ(22万ルクス)搭載の褪色試験機にセットし,UVカットフィルターを使用しない条件下,48時間の光照射を行った。次に,照射後の硬化膜の透過スペクトルを測定し,極大吸収波長の吸光度について,その残存率を算出した。
なお,残存率(%)=(照射語の吸光度)÷(照射前の吸光度)×100で定義される値であり,値が大きいほど高堅牢である。
前記残存率の値を以下に示す。
C-1:97% (実施例3)
C-2:94% (実施例4)
C-3:96% (実施例6)
C-4:22% (比較例)
【0185】
以上の結果から,本発明の赤外線吸収色素を含む硬化性組成物を用いた硬化膜は,比較例に比べて,非常に高い光堅牢性を示すことがわかった。」
(カ) 「【図4】
」
イ 引用文献1に記載された技術事項
引用文献1の図4から,硬化膜C-1の吸収極大波長が約850nmにあることが看取されるから,前記ア(ア)ないし(カ)で摘記した引用文献1の記載から,次の技術事項が引用文献1に記載されていると認められる。
「下記構造を有する例示化合物(D-142)は,近赤外線吸収能を有するとともに,可視部での吸収がきわめて低い近赤外吸収性色素であり,
当該例示化合物(D-142)を含有する下記組成の光硬化性インク組成物B-1を塗布し,露光して得られる硬化膜C-1は,吸収極大波長が約850nmにあり,極めて高い不可視性を有し,かつ,非常に高い光堅牢性を示すこと。
[例示化合物D-142の構造]
[光硬化性インク組成物B-1の組成]
下記組成の微粒子分散液A-4 20.0部
N-ビニルカプロラクタム 42.0部
ジプロピレングリコールジアクリラート 30.0部
Irgacure 819(Ciba Specialty Chemicals社製の光重合開始剤) 8.0部
[微粒子分散液A-4の組成]
例示化合物(D-142) 5質量部
Solsperse 55000(アビシア(社)製の分散剤)
5質量部
N-ビニルカプロラクタム 90質量部」(以下,「引用文献1記載事項」という。)
5 判断
(1)対比
ア 引用発明の「基板12」,「780~940nmの波長領域に吸収特性を示す色材」,「コレステリック液晶相」,「光反射層14a,14b,16a及び16b」及び「赤外光反射板10」は,本件発明の「透明基材」,「近赤外線吸収剤」,「コレステリック液晶相」,「近赤外線反射層」及び「赤外線カットフィルム」に,それぞれ対応する。
イ 引用発明は,「主に建造物及び車両等の窓の遮熱に利用される赤外光反射板10」であるところ,可視光を透過する,すなわち,透明でなければ,建造物や車両等の窓の遮蔽として用をなさないことは明らかである。そうすると,引用発明の「ポリマーフィルムである基板12」(本件発明の「透明基材」に対応する。以下,「(1)対比」欄において,「」で囲まれた引用発明の構成に付した()内の文言は,当該構成に対応する本件発明の発明特定事項を表す。)は透明であると認められる。なお,この点は,引用文献8の【0064】に,基板に用いるポリマーフィルムとして,可視光に対する透過性が高いポリマーフィルムが記載されていることや,実施例8(【0124】)等において,基板として「PETフィルム(富士フイルム(株)製,厚み:188μm)」(【0116】)を用いていることから確認できることでもある。
したがって,引用発明の「基板12」は,本件発明の「透明基材」に相当し,引用発明は,「透明基材を有する」という本件発明の発明特定事項に相当する構成を具備している。
ウ 引用発明の「色材」(近赤外線吸収剤)は780ないし940nmの波長領域に吸収特性を示すから,近赤外線吸収剤(「近赤外線」は,概ね700nmないし2.5μmの波長範囲の電磁波を指す技術用語である。)といえる。(なお,引用文献8の【0079】には「吸収極大波長が780~940nmである吸収材料」なる文言が記載されているところ,当該記載が,引用発明における「780ないし940nmの波長領域に吸収特性を示す色材」を指していることは,文脈上明らかであるから,引用発明の「780ないし940nmの波長領域に吸収特性を示す」とは,「吸収極大波長が780ないし940nmの範囲にある」ことを指していると解される。)
また,引用発明の易接着層,下塗り層,配向層,及び基板12のうち「色材」を含有する層は,本件発明の「近赤外線吸収層」と,「層構成中のいずれかの層」である点で共通する。
したがって,本件発明と引用発明は,「層構成中のいずれかの層が近赤外線吸収剤を含む」点で,共通する。
エ 引用発明の「光反射層14a,14b,16a及び16b」は,「コレステリック液晶相を固定してな」るものである。
また,当該「光反射層14a,14b,16a及び16b」(近赤外線反射層)は,その反射中心波長が,1010ないし1070nmの範囲と1190ないし1290nmの範囲とにあるから,近赤外線反射層といえる。
したがって,引用発明は,「コレステリック液晶相を固定化してなる少なくとも1層の近赤外線反射層」という本件発明の発明特定事項に相当する構成を具備している。
オ 前記アないしエに照らせば,本件発明と引用発明は,
「透明基材と,
コレステリック液晶相を固定化してなる少なくとも1層の近赤外線反射層とを有する赤外線カットフィルムであって,
層構成中のいずれかの層が近赤外線吸収剤を含む赤外線カットフィルム。」
である点で一致し,次の点で一応相違する。
相違点1:
本件発明の「近赤外線吸収剤」は,一般式(1)で表される化合物であって,極大吸収波長が750nm~920nmにあるのに対して,
引用発明の「色材」は,一般式(1)で表される化合物には特定されておらず,また,吸収極大波長が780ないし940nmの範囲にあるものの,750ないし920nmの範囲にあるとは限らない(920ないし940nmの範囲にある可能性がある)点。
相違点2:
本件発明では,「近赤外線吸収剤」を含むのが,「透明基材」及び「近赤外線反射層」とは別の層である「近赤外線吸収層」であるのに対して,
引用発明では,「色材」を含有するのは,易接着層,下塗り層,配向層,及び「基板12」のうち少なくとも1つであって,「光反射層14a,14b,16a及び16b」ではないものの,「基材12」とは別の層とは限らない点。
相違点3:
本件発明では,「近赤外線反射層」のうち少なくとも1層は750nm~900nmにおける反射率の極大値が40%以上であるのに対して,
引用発明では,「光反射層14a,14b,16a及び16b」のいずれも750ないし900nmという波長範囲内に分光反射率が40%以上となる極大値を有していない点。
(2)相違点1の判断
ア 引用文献8の【0079】には,「色材」を利用すると,透過光に色味が生じる場合があること,したがって,車のフロントガラスといった着色が好ましくない用途においては,吸収極大波長が780~940nmである吸収材料とともに,「他の吸収特性を示す吸収材料」を併用することで,色味をニュートラルに調整してもよい旨が記載されているところ,【0127】の【表7】には,「色材」としてシアン染料を配向層に含有させつつも「他の吸収特性を示す吸収材料」を併用していない実施例8,9及び11について,その「透過光色味評価」の欄に,「よく観ると色味があるが,気にならない」との評価である「○」とともに「(薄い緑)」という評価が記され,同様の構成の実施例10については,「よく観ると色味があり,気になる」との評価である「△」とともに「(青)」という評価が記されている。しかるに,引用発明の色味を解消するために,引用文献8の【0079】に記載された「他の吸収特性を示す吸収材料」との併用という色味解消手段を用いた場合,可視領域における平均透過率が幾分か低下してしまうことは,当業者が容易に予測できることである。
一方,前記4(2)イで認定した引用文献1記載事項によれば,「例示化合物(D-142)」は,近赤外線吸収能を有するとともに,可視部での吸収がきわめて低い近赤外吸収性色素であって,当該例示化合物(D-142)を含有する硬化膜は,吸収極大波長が約850nmにあり,極めて高い不可視性を有し,かつ,非常に高い光堅牢性を示すものであるところ,当該「例示化合物(D-142)」は,「780ないし940nmの波長領域に吸収特性を示す」という引用発明の「色材」の要件を満足している。そして,引用発明において,「色材」として,当該「例示化合物(D-142)」を用いれば,色味を生じることなく遮熱性能を向上することができ,しかも,可視領域における平均透過率の低下といった問題が生じることもないことは,当業者が容易に理解できることがらである。
そうすると,引用発明において,可視領域における平均透過率の低下を招くことなく色味を解消するために,「色材」として,引用文献1記載事項における「例示化合物(D-142)」を用いることは,引用文献1の記載に接した当業者が容易に想到し得たことというほかない。
イ 引用文献1記載事項の「例示化合物(D-142)」は,相違点1に係る本件発明の発明特定事項の「一般式(1)で表される化合物であって,極大吸収波長が750nm~920nmにある」「近赤外線吸収剤」に該当する化合物であるから(本件明細書に記載された実施例1で「近赤外線吸収剤」として用いている「例示化合物(D-142)」と同一の化合物である。),前記アで述べた構成の変更を行った引用発明は,相違点1に係る本件発明の発明特定事項に相当する構成を具備している。
以上のとおりであるから,引用発明を,相違点1に係る本件発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,引用文献1記載事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たことである。
(3)相違点2の判断
引用発明は,「色材」を,易接着層,下塗り層,配向層,及び基板12のうち少なくとも1つに含有させたものであるところ,そのいずれの層に含有させるのかは,当業者が適宜決定すれば足りる設計上の事項である。
また,引用文献8に記載された実施例8ないし11では,「色材」であるシアン染料ダイレクトブルー79を,配向層に含有させている。
そうすると,引用発明において,「色材」を,「光反射層14a,14b,16a及び16b」及び「基材12」とは別の層である易接着層,下塗り層及び配向層のいずれかの層に含有させることは,引用文献8に記載されたも同然の事項であって,相違点2は実質的な相違点でないというべきであるか,少なくとも,引用発明を,相違点2に係る本件発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,当業者が適宜なし得たことというべきである。
(4)相違点3の判断
ア 引用文献8の【0028】には,光反射層14aと14bによる反射中心波長λ14が1010ないし1070nmの範囲にあるピークスペクトルや,光反射層16aと16bによる反射中心波長λ16が1190ないし1290nmの範囲にあるピークスペクトル以外の赤外線波長領域に,選択反射特性を有する光反射層の1組をさらに積層してもよい旨が記載され,当該追加する光反射層の1組における選択反射特性の波長域として,780ないし940nmが例示されている(なお,780ないし940nmという「波長域に合わせた選択反射特性を有」する旨の引用文献8の【0028】の表現は,780ないし940nmという波長範囲に反射中心波長を有することを意味していると解される。)。また,所定の波長領域の光線(可視光線ばかりでなく,紫外線及び赤外線を含む意味で用いている。)をカットする光線カットフィルタ部材において,前記波長領域の光線をそれぞれ吸収及び反射する吸収層及び反射層を併用することは,光線カットフィルタ部材の技術分野における常套手段でもある。そうすると,引用発明において,780ないし940nmの波長領域に吸収特性を示す「色材」(前記(2)アで述べた構成の変更を行った引用発明においては「例示化合物(D-142)」)を含有する層に加えて,780ないし940nmという波長範囲に反射中心波長を有する光反射層の1組(それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆であるとともに,その反射中心波長が同一である光反射層の1組)を,「光反射層14a,14b,16a及び16b」とは別に設けることは,引用文献8の記載にしたがって,当業者が適宜になし得たことというほかない。
しかるに,追加する光反射層の1組の反射中心波長を,780ないし940nmという波長範囲の中の如何なる値に設定するのかは,当業者が適宜決定すれば足りる設計上の事項にすぎない。(前記(2)アで述べた構成の変更を行った引用発明において,追加する光反射層の1組の反射中心波長を,「例示化合物(D-142)」の吸収極大波長約850nmと同程度の波長に設定すれば,必然的に「750nm~900nm」という相違点3に係る本願発明の反射率の極大値の要件を満足することになるともいえる。)
以上によれば,引用発明において,コレステリック液晶相を固定してなり,螺旋ピッチに基づいて特定の波長の光を反射する光選択反射性を示し,それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆であるとともに,その反射中心波長が同一である光反射層の1組であって,750ないし900nmという波長範囲に極大値を有する光反射層の1組を追加することは,当業者が容易になし得たことである。
イ また,引用発明において設けられた光反射層について,その反射率の極大値は大きければ大きいほど(無偏光の光に対する理論上の反射率の最大値は50%である。),遮熱効果が向上することは,当業者に自明であるところ,反射率の極大値が40%以上となるようなコレステリック液晶固定化反射層は,査定理由で引用された引用文献3(図5等を参照。)のほか,例えば,特開2009-53327号公報(【0075】,図8等を参照。),特開2008-46397号公報(【0057】,【0058】等を参照。),特開平10-239684号公報(【0035】,図7等を参照。)等にみられるように,本件出願の出願前に周知であったと認められるから,引用発明において,(前記アで述べた追加の光反射層の1組を含めて)光反射層の反射率の極大値を40%以上とすることは,当業者が適宜行う設計上の事項というべきである。
ウ 前記ア及びイによれば,引用発明において,コレステリック液晶相を固定してなり,螺旋ピッチに基づいて特定の波長の光を反射する光選択反射性を示し,それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆であるとともに,その反射中心波長が同一である光反射層の1組であって,750ないし900nmにおける反射率の極大値が40%以上であるような光反射層の1組を追加すること,すなわち,相違点3に係る本件発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
(5)効果について
本件発明の効果は,引用文献1の記載及び周知事項に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。
(6)請求人の主張について
審判請求書において,請求人は,750~900nmにおける反射率の極大値を40%以上まで高めることによって,本件発明が遮熱性能の高い赤外線カットフィルムを得られるという顕著な効果を奏するところ,査定理由で引用された各引用例からこのような効果を予測することはできないなどと主張するが,引用発明は,主に建造物及び車両等の窓の遮熱に利用される赤外光反射板であるところ,光反射層による近赤外線の反射率が高いほど遮熱効果が向上することは,当業者に自明な事項であるから,請求人の主張する効果が,当業者が予測し得なかった効果であるとは認められない。
(5)まとめ
以上のとおりであるから,本件発明は,引用発明及び引用文献1記載事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
6 むすび
本件出願の請求項1に係る発明は,引用発明及び引用文献1記載事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
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2017-004160