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特許拒絶査定不服審判

2017-003470

ジスルホニルアミンアルカリ金属塩の製造方法

審判番号
2017-003470
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-506689
請求日
2017年03月08日
審決日
2018年01月22日
公報発行日
2018年03月30日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
  • 【請求人】日本曹達株式会社
  • 【請求人代理人】志賀 正武
  • 【請求人代理人】高橋 詔男
  • 【請求人代理人】鈴木 三義
  • 【請求人代理人】村山 靖彦
審判長/審判官
  • 審判長 新居田 知生
  • 審判官 瀧口 博史
  • 審判官 中澤 登
分類
P18 .121-WY (C01B) / P18 .536-WY (C01B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015-506689「ジスルホニルアミンアルカリ金属塩の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月25日国際公開、WO2014/148258、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 1 手続の経緯 本願は、平成26年3月5日(優先権主張平成25年3月18日、日本国)を国際出願日とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。 平成28年6月22日付け  拒絶理由の通知 平成28年8月22日    意見書、手続補正書の提出 平成28年10月17日   刊行物等提出書の提出 平成29年1月13日付け  拒絶査定 平成29年3月8日     審判請求、及び、手続補正書の提出 平成29年10月11日付け 拒絶理由の通知(当審) 平成29年11月27日   意見書の提出 平成29年12月19日   応対記録の作成 2 本願発明 本願の請求項1~3に係る発明は、平成29年3月8日の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(以下、「本願発明1」~「本願発明3」という。) 【請求項1】 酢酸イソプロピル中で式〔I〕 【化1】 (式〔I〕中、R1およびR2は、フッ素原子を示し、 R3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立して、水素原子、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、または1~6個の炭素原子を有するアルコキシアルキル基を示し、R3、R4、R5およびR6のうち2つの基が一緒になってそれらが結合する窒素原子を環構成原子として含む5~8員環を形成してもよい。)で表されるジスルホニルアミンオニウム塩を、カチオン交換反応させて、式〔II〕 【化2】 (式〔II〕中、M+は、アルカリ金属カチオンを示し、R1およびR2は式〔I〕におけるものと同じものを示す。)で表されるジスルホニルアミンアルカリ金属塩にする工程、 前記ジスルホニルアミンアルカリ金属塩を含有する酢酸イソプロピルを保留粒子径0.1~10μmのフィルターでろ過してろ液を得る工程、 ろ過工程の後、ろ液を0~40℃の温度で濃縮する工程、および 濃縮工程の後、ジスルホニルアミンアルカリ金属塩を晶析させる工程 を含むジスルホニルアミンアルカリ金属塩の製造方法。 【請求項2】 フィルターがメンブレンフィルターである請求項1に記載の製造方法。 【請求項3】 カチオン交換反応させる工程の後で、ろ過する工程の前に、前記酢酸イソプロピル溶液を水で洗浄して該酢酸イソプロピル溶液からオニウムカチオンを除去する工程をさらに含む請求項1または2に記載の製造方法。 3 原査定の理由について (1) 原査定の理由 以下のとおり、この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 ●理由1(特許法第29条第2項)について ・請求項 1-5 ・引用文献等 1-5 引用文献1,2には、酢酸イソプロピル等の有機溶媒において、フルオロスルホニルイミドアンモニウム塩をアルカリ金属化合物と反応させてフルオロスルホニルイミドアルカリ金属塩を製造することが記載されている(引用文献1の[0012],[0013],[0016],[0017],[0044]-[0046],[0069],引用文献2の[0012],[0013],[0016],[0017],[0036]-[0038],[0060]参照。)。また、アルカリ金属化合物を用いると、副生する無機塩を濾過や水洗で除去できるので容易に精製することができることも記載されている(引用文献1の[0046]、引用文献2の[0038]参照。)。 本願の補正後の請求項1-4に係る発明と、引用文献1に記載された発明とを対比すると、以下の具体的な数値限定等を有する工程を持つ点で相違し、その余の点で一致する。 (1)ジスルホニルアミンアルカリ金属塩を含有する有機溶媒溶液を保留粒子径0.1~10μmのフィルターでろ過してろ液を得る工程 (2)ろ過工程の後、ろ液を0~40℃の温度で濃縮する工程 (3)濃縮工程の後、ジスルホニルアミンアルカリ金属塩を晶析させる工程 上記相違点について検討すると、 (1)については、引用文献3,4に記載されているように、スルホニルイミドアルカリ金属塩を製造するにあたり、アルカリ金属化合物を反応させた後に孔径0.5μmのフッ素樹脂製フィルター(引用文献3の[0031]参照。)や孔径0.2μmのメンブランフィルター(引用文献4の第6欄第5行~第26行参照。)で濾過して精製を行うことは周知技術である。 (2)については、引用文献5の[0070]-[0086]には、スルホニルイミドアルカリ金属塩を製造するにあたり、バブリング法、又は薄膜蒸留法により、30℃以上150℃以下で濃縮する工程が記載されている。 (3)については、引用文献4の第6欄第5行~第26行において、ビストリフルオロメタンスルホンイミドの製造工程中、濾液から減圧下溶媒を留去した後、無水塩化メチレンを加えた晶析することが記載されている。 引用文献1-5は、スルホニルイミドアルカリ金属塩を製造技術という点において共通するものであり、製造方法の効率化や製造物質の高純度化といった課題も共通するものある。 したがって、引用文献1,2に記載されているフルオロスルホニルイミドアルカリ金属塩の製造方法について、文献3-5に記載されている事項に置換することで、本願の補正後の請求項1-4に係る発明とすることは、当業者にとって容易になし得ることである。 本願の補正後の請求項5に係る発明についても、平成28年6月22日付け拒絶理由通知書に記載した理由1[3]に記したように、引用文献1-5の記載に基づき、当業者が容易になし得るものである。 出願人は、平成28年8月22日付け意見書において、「濃縮工程における温度範囲について、引用文献5には「30℃以上、150℃以下」と記載されていたとしても、より高純度の生成物が得られるのは、75℃よりも100℃であることが実証されている以上、本願発明に規定するような、ろ液を「0~40℃」で濃縮する工程は、たとえ引用文献5を引用文献1ないし4と組み合わせたとしても、当業者が容易に想到し得たものではない」旨の主張をしている。 しかしながら、本願の補正後の請求項1-5に係る発明において、濃縮工程はその濃縮する方法を限定しておらず、したがって、本願の補正後の請求項1-5に係る発明は、バブリング法及び薄膜蒸留法による濃縮工程を包含するものである。そして、引用文献5には、バブリング法及び薄膜蒸留法による30-150℃の濃縮工程が開示しているものであるから、これを引用文献1-2に記載されている製造方法中の濃縮工程に置き換えることで得られる発明は、本願の補正後の請求項1-5に係る発明に含まれるものである。したがって、出願人の主張は採用できない。 <引用文献等一覧> 1.国際公開第2012/108284号 2.国際公開第2012/117961号 3.特開2003-192661号公報(周知技術を示す文献) 4.特開2000-86617号公報(周知技術を示す文献) 5.国際公開第2011/149095号 (2) 当審の判断 ア 引用文献1、2に記載された発明 引用文献1には、実施例2([0103])の記載から、「反応容器に、ジ(フルオロスルホニル)イミドアンモニウム塩6.2g(23.5mmol)、酢酸ブチル47ml、および水酸化カリウム16.5g(58.8mmol)の20%水溶液を仕込み、65torrの減圧下、37℃で1時間還流し、反応液を25℃に冷却し、その後、分液し、水相を酢酸ブチル24mlで3回抽出し、各抽出操作において得られた有機相を混ぜ合わせ、減圧下で溶媒を留去し、これに塩化メチレン39mlを添加し、室温で30分間撹拌し、その後、結晶を濾別し、得られた結晶を塩化メチレン39mlで洗浄し、室温で減圧乾燥させる、ジ(フルオロスルホニル)イミドカリウム塩の製造方法。」(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認める。 引用文献1には、実施例3([0104])の記載から、「ジ(フルオロスルホニル)イミドアンモニウム塩9.8g(49.6mmol)に、酢酸ブチル99ml、水酸化リチウム・1水和物6.2g(148.8mmol)、および水37mlを添加し、65torr減圧下、37℃で1時間加熱還流し、反応液を25℃に冷却し、その後、分液し、水層を酢酸ブチル50mlで3回抽出し、各抽出操作において得られた有機相を混ぜ合わせ、水3mlで2回洗浄し、その後、減圧下で溶媒を留去し、これに塩化メチレン50mlを添加し、室温で19時間撹拌し、その後、結晶を濾別し、得られた結晶を塩化メチレン50mlで洗浄し、室温で減圧乾燥させる、ジ(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩の製造方法。」(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認める。 引用文献1には、実施例4([0105])の記載から、「ジ(フルオロスルホニル)イミドアンモニウム塩4.9g(24.7mmol)に、酢酸ブチル49ml、および水酸化ナトリウム12.4g(61.8mmol)の20%水溶液を添加し、65torr減圧下、37℃で1時間加熱還流し、反応液を25℃に冷却し、その後、分液し、水層を酢酸ブチル25mlで3回抽出し、各抽出操作において得られた有機相を混ぜ合わせ、減圧下で溶媒を留去し、これに塩化メチレン41mlを添加し、室温で15分間撹拌し、その後、結晶を濾別し、得られた結晶を塩化メチレン20mlで洗浄し、室温で減圧乾燥させる、ジ(フルオロスルホニル)イミドナトリウム塩の製造方法。」(以下、「引用発明3」という。)が記載されているものと認める。 引用文献2には、実施例5([0095])の記載から、「ジ(フルオロスルホニル)イミドアンモニウム塩15.8g(79.8mmol)に、酢酸ブチル160ml、および水酸化ナトリウム40.0g(200.0mmol)の20%水溶液を添加し、65torr、37℃で1時間加熱還流し、反応液を25℃に冷却し、その後、分液し、水相を酢酸ブチル80mlで3回抽出した。各抽出操作において得られた有機相を混ぜ合わせ、減圧下で溶媒を留去し、これに塩化メチレン80mlを添加し、室温で15分間撹拌し、その後、結晶を濾別し、得られた結晶を塩化メチレン80mlで洗浄し、室温で減圧乾燥させる、ジ(フルオロスルホニル)イミドナトリウム塩の製造方法。」(以下、「引用発明4」という。)が記載されているものと認める。 イ 対比 本願発明1~3は、「前記ジスルホニルアミンアルカリ金属塩を含有する酢酸イソプロピルを保留粒子径0.1~10μmのフィルターでろ過してろ液を得る工程、 ろ過工程の後、ろ液を0~40℃の温度で濃縮する工程、および 濃縮工程の後、ジスルホニルアミンアルカリ金属塩を晶析させる工程」を含むのに対し、引用発明1~4は、そのような工程を有していない点で、両者は少なくとも相違する。 ウ 検討 上記の相違点について検討する。 「濃縮」とは、技術常識から、濃度を高めることを意味するものであり、そして、本願発明1~3の上記相違点に係る濃縮する工程は、本願明細書の【0044】、実施例1(【0048】)、実施例2(【0050】)の内容からも明らかなように(平成29年12月19日作成の応対記録も参照)、濃縮された溶液を得る工程であるといえる。それに対し、引用発明1~4の「減圧下で溶媒を留去」は、溶媒を蒸留除去してジ(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩そのものを得る操作である(要すれば、引用文献2の実施例3([0093])、実施例4([0094])参照。)といえるから、引用発明1~4には、そもそも濃縮する工程がない。 そうしてみると、引用発明1~4において、「濃縮」を行う積極的理由は認められず、引用文献5に、30℃以上150℃以下での、バブリング法、及び/又は、薄膜蒸留法による、フルオロスルホニルイミドのアルカリ金属塩を含む反応溶液から溶媒を除去する濃縮工程が開示されているとしても、そのような濃縮する工程をろ液を得る工程と晶析させる工程との間に採用することが容易であるとはいえない。 また、引用発明1~4において、温度範囲の一部が重なる30℃以上150℃以下での引用文献5に記載された濃縮を採用するとしても、その範囲から、さらに40℃以下を選択する動機付けがないことには、上記相違点に係る濃縮する工程に至らないところ、具体的には、引用文献5に、より好ましくは40℃以上120℃以下、更に好ましくは50℃以上110℃以下とすることが記載され([0080])、そして、濃縮を40℃以下で行った実施例は開示されておらず、実質的に、本願発明1~3よりも高い温度での濃縮が示唆されるものであるから、40℃以下、すなわち、30~40℃に収まる温度で濃縮する動機付けが存在するとは認められない。 一方で、本願発明1~3は、「濃縮時の液温度を0~50℃にすることで熱劣化による不純物を含まない高純度のジスルホニルアミンアルカリ金属塩〔II〕の有機溶媒溶液を得ることができる。」(【0044】)との効果を奏するものであり、「0~40℃」には技術的意義が認められるから、設計的事項であるともいえない。 そして、引用文献3、4は、濃縮についてなんら開示しない。 してみると、引用発明1~4において、引用文献3~5に記載された事項に基づいて、「前記ジスルホニルアミンアルカリ金属塩を含有する酢酸イソプロピルを保留粒子径0.1~10μmのフィルターでろ過してろ液を得る工程、 ろ過工程の後、ろ液を0~40℃の温度で濃縮する工程、および 濃縮工程の後、ジスルホニルアミンアルカリ金属塩を晶析させる工程」を採用することはできない。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本願発明1~3は、当業者が引用文献1~5に記載された発明、ないし、記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 4 当審拒絶理由について (1) 拒絶の理由 以下のとおり、この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないというものである。 ●理由1(委任省令要件)について ・発明の詳細な説明に、「このようにして、本発明の製造方法を行って得られるジスルホニルアミンアルカリ金属塩〔II〕は、不純物、特に、塩化物イオン、フッ素イオン、硫酸イオンの含有量が、大幅に低減されている。」(【0045】)と記載され、また、「本発明の製造方法で使用するフィルターは、保留粒子径が、好ましくは0.1~10μm、より好ましくは0.1~5μmである。このような範囲の保留粒子径を有するフィルターでろ過することにより、微細な不純物を除去することができ、高純度のジスルホニルアミンアルカリ金属塩〔II〕を得ることができる。なお、保留粒子径が小さすぎるとフィルターが目詰まりする傾向がある。」(【0043】)と記載されている。 そこで、検討するに、塩化物イオン、フッ素イオン、硫酸イオン自体は、0.1μmよりも十分に小さいことから、保留粒子径0.1~10μmのフィルターでろ別するためには、不溶性物質となり凝塊するか、または、十分な大きさの不溶性物質に吸着等しなければならないものと認められる。 しかしながら、実施例・比較例を踏まえても、吸着材となるような不溶性物質の使用は窺えないし、また、不溶性物質を形成する相手となる成分の使用も認められない。 そうであるから、「保留粒子径0.1~10μmのフィルターでろ過してろ液を得る」ことで、不純物、特に、塩化物イオン、フッ素イオン、硫酸イオンの含有量が、大幅に低減することは、技術常識に照らしても、合理的に理解できるものではない。 してみると、発明の詳細な説明の記載は、請求項1~3に係る発明について、課題解決手段、ないし、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の点が、特許法施行規則第24条の2で定めるところにより記載されたものでない。 (2) 判断 発明の詳細な説明に記載された実施例1、2を検討すれば、平成29年11月27日提出の意見書、及び、平成29年12月19日作成の応対記録に記載のとおり、カチオン交換反応の際に副生したLiCl、LiF、Li2SO4等が、各抽出工程を経た有機相中に、フィルターでろ過し得る状態で存在することは、当業者にとって明らかであるといえる。 そうであるから、「保留粒子径0.1~10μmのフィルターでろ過してろ液を得る」ことで、不純物、特に、塩化物イオン、フッ素イオン、硫酸イオンの含有量が、大幅に低減することは、合理的に理解できる。 してみると、発明の詳細な説明の記載は、本願発明1~3について、課題解決手段、及び、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の点が、特許法施行規則第24条の2で定めるところにより記載されたものである。 5 刊行物提出書の提出の理由について 平成28年10月17日の刊行物提出書で主張された拒絶の理由は、原査定で引用されたのと同じ証拠にもとづく進歩性要件違反についてのものであるので、判断は、上記3(2)で述べたとおりである。 6 むすび 以上のとおり、本願発明1~3は、当業者が引用文献1~5に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないし、また、発明の詳細な説明は、当業者が本願発明1~3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、本願については、原査定の拒絶理由、及び、当審から通知した拒絶理由のいずれを検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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