特許拒絶査定不服審判
2017-002776
太陽電池の製造方法
- 審判番号
- 2017-002776
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-513414外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年02月27日
- 審決日
- 2018年01月05日
- 公報発行日
- 2018年02月23日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (H01L) / P18 .537-WY (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-513414「太陽電池の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月30日国際公開、WO2014/174613、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)4月24日を国際出願日とする出願であって、その手続の概要は、以下のとおりである。
平成27年 4月28日:手続補正書の提出
平成28年 4月27日:拒絶理由の通知
平成28年 7月 6日:意見書、手続補正書の提出
平成28年12月 2日:拒絶査定(同年12月13日送達)
平成29年 2月27日:審判請求書、手続補正書の提出
平成29年11月 2日:拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の 通知
平成29年11月17日:意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明(以下「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、平成29年11月17日付け手続補正で補正された請求項1ないし6に特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
半導体基板の表面及び裏面に異なる導電型の拡散層を有する太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板の一方の面全面を被覆するように、BSG膜からなる拡散保護マスクを形成する工程と、
前記半導体基板の一方の面全面を、前記拡散保護マスクで被覆した状態で、第1の不純物であるホウ素とは異なる導電型の第2の不純物を含有するガス中で、前記拡散保護マスクから前記ホウ素を前記一方の面に拡散するとともに、前記半導体基板の他方の面に前記ガスから前記第2の不純物を拡散する熱工程を含む両面同時拡散工程とを実施し、
前記一方の面に第1の不純物拡散層を形成するとともに、
前記他方の面に、前記拡散保護マスクとは異なる導電性となる第2の不純物拡散層を形成することを特徴とする太陽電池の製造方法。」
本願発明2ないし6は、本願発明1を減縮した発明である。
第3 引用文献の記載
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2013-26578号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。以下同様である。)
(1)「【0001】
本発明は、太陽電池素子のn型拡散層の製造方法及び太陽電池素子の製造方法に関する。」
(2)「【0037】
図1(2)では、半導体基板10の表面即ち受光面となる面に、前記n型拡散層形成組成物を塗布して、n型拡散層形成組成物層11を形成する。本発明では、塗布方法には制限がないが、例えば、印刷法、スピン法、刷毛塗り、スプレー法、ドクターブレード法、ロールコーター法、インクジェット法等がある。
上記n型拡散層形成組成物の塗布量としては特に制限は無いが、例えば、ガラス粉末量として0.01g/m2~100g/m2とすることができ、0.1g/m2~10g/m2であることが好ましい。」
(3)「【0042】
本発明の製造方法において、裏面のp+型拡散層(高濃度電界層)14の製造方法としては、アルミニウムによるn型拡散層からp+型拡散層への変換による方法に限定されることなく、いずれの方法も採用できる。例えば、B(ボロン)等の第13族の元素を含む組成物13を半導体基板上に付与して高濃度電界層14を形成する方法でもよい。従って、本発明を用いれば、製造方法の選択肢が広がる。
前記B(ボロン)等の第13族の元素を含む組成物13としては、例えば、ドナー元素を含むガラス粉末の代わりにアクセプタ元素を含むガラス粉末を用いて、n型拡散層形成組成物と同様にして構成されるp型拡散層形成組成物を挙げることができる。アクセプタ元素は第13族の元素であればよく、例えば、B(ボロン)、Al(アルミニウム)及びGa(ガリウム)等を挙げることができる。またアクセプタ元素を含むガラス粉末はB2O3、Al2O3及びGa2O3から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
前記p型拡散層形成組成物を半導体基板の裏面に付与する方法は、既述のn型拡散層形成組成物を半導体基板10上に塗布する方法と同様である。
裏面に付与された前記p型拡散層形成組成物を、後述するn型拡散層形成組成物における熱拡散処理と同様に熱拡散処理することで、裏面に高濃度電界層14を形成することができる。尚、p型拡散層形成組成物の熱拡散処理は、n型拡散層形成組成物の熱拡散処理と同時に行なうことが好ましい。
【0043】
次いで、図1(3)では、前記n型拡散層形成組成物を塗布してn型拡散層形成組成物層11を形成した半導体基板10に熱拡散を行うための第二の熱処理工程を施す。
前記第二の熱処理工程における処理温度は、例えば600℃~1200℃の範囲とされ、800℃~950℃の範囲とされることが好ましい。前記第二の熱処理工程により、半導体基板10中へドナー元素が拡散し、n型拡散層12が形成される。
前記第二の熱処理工程においては、公知の連続炉、バッチ炉等が適用できる。また、前記第二の熱処理工程における炉内雰囲気は、空気、酸素、窒素等に適宜調整することもできる。中でも、酸素雰囲気とすることが好ましく、この場合、炉内の酸素濃度は5体積%未満であることが好ましい。
前記第二の熱処理工程における処理時間は、n型拡散層形成組成物に含まれるドナー元素の含有率に応じて適宜選択することができる。例えば、1分間~60分間とすることができ、2分間~30分間であることがより好ましい。前記処理温度が600℃以上であると、ドナー元素の拡散が十分に行われ、十分なBSF効果が得られる。1200℃以下であると、基板が劣化することを抑制できる。
尚、n型拡散層12を形成する熱処理は、短時間熱処理(RTP)技術を用いて実施することもできる。」
(4)上記(1)ないし(3)から、上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「半導体基板の表面に、n型拡散層形成組成物層を形成し、熱処理工程を施し、n型拡散層が形成され、裏面に付与されたB(ボロン)含む組成物で形成されたp型拡散層形成組成物を、熱拡散処理することで、裏面に高濃度電界層を形成され、p型拡散層形成組成物の熱拡散処理は、n型拡散層形成組成物の熱拡散処理と同時に行なう太陽電池素子の製造方法。」
2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(国際公開第2010/090090号)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「[0068]また、第2導電型ドーパント拡散剤4としては、第2導電型ドーパント源を含むものを用いることができ、第2導電型ドーパント源としては、第2導電型がp型である場合には、たとえば、酸化ホウ素、ホウ酸、有機ホウ素化合物、ホウ素-アルミニウム化合物、有機アルミニウム化合物またはアルミニウム塩のようなホウ素原子および/またはアルミニウム原子を含む化合物を単独でまたは2種以上併用して用いることができ、第2導電型がn型である場合には、たとえば、リン酸塩、酸化リン、五酸化二リン、リン酸または有機リン化合物のようなリン原子を含む化合物を単独でまたは2種以上併用して用いることができる。」
(2)「[0146]以下、図5(a)~図5(j)の模式的断面図を参照して、本実施の形態における太陽電池の製造方法について説明する。なお、図5(a)~図5(j)においても、説明の便宜上、半導体基板1に1つの高濃度第1導電型ドーパント拡散層5と、1つの高濃度第2導電型ドーパント拡散層6のみが形成されるように示されているが、実際には複数の高濃度第1導電型ドーパント拡散層5と、複数の高濃度第2導電型ドーパント拡散層6とが形成されてもよいことは言うまでもない。
[0147]まず、図5(a)に示すように、半導体基板1を用意し、続いて、図5(b)に示すように、半導体基板1の表面の一部に開口部2bと厚膜部2aとを有する拡散抑制マスク2を形成する。ここで、拡散抑制マスク2は、実施の形態1~3と同様の方法で形成することができる。
[0148]次に、図5(c)に示すように、半導体基板1の表面の拡散抑制マスク2の一部を覆うように第2導電型ドーパントを含有する第2導電型ドーパント拡散剤4を塗布する。
[0149]次に、図5(d)に示すように、半導体基板1を熱処理することによって、第2導電型ドーパント拡散剤4から半導体基板1の表面に第2導電型ドーパントを拡散させて、低濃度第2導電型ドーパント拡散層17および高濃度第2導電型ドーパント拡散層6を形成するとともに、第1導電型ドーパント含有ガス15を流すことによって半導体基板1の表面に第1導電型ドーパントを拡散させて、低濃度第1導電型ドーパント拡散層16および高濃度第1導電型ドーパント拡散層5を形成する。
[0150]なお、第1導電型ドーパント含有ガス15を用いた第1導電型ドーパントの拡散工程は第2導電型ドーパントの拡散工程と同一の工程で行なってもよく、第2導電型ドーパントの拡散工程の直前および/または直後に連続して行なってもよい。」
(3)上記(1)及び(2)から、上記引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「半導体基板の表面に第2導電型ドーパントを含有する第2導電型ドーパント拡散剤を塗布し、導体基板を熱処理することによって、第2導電型ドーパント拡散剤から半導体基板の表面に第2導電型ドーパントを拡散させて、低濃度第2導電型ドーパント拡散層および高濃度第2導電型ドーパント拡散層を形成するとともに、第1導電型ドーパント含有ガスを流すことによって半導体基板の表面に第1導電型ドーパントを拡散させて、低濃度第1導電型ドーパント拡散層および高濃度第1導電型ドーパント拡散層形成し、第1導電型ドーパント含有ガスを用いた第1導電型ドーパントの拡散工程は第2導電型ドーパントの拡散工程と同一の工程で行なってもよく、第2導電型ドーパント拡散剤としては、第2導電型ドーパント源を含むものを用いることができ、第2導電型ドーパント源としては、第2導電型がp型である場合には、たとえば、酸化ホウ素、ホウ酸、有機ホウ素化合物、ホウ素-アルミニウム化合物、有機アルミニウム化合物またはアルミニウム塩のようなホウ素原子および/またはアルミニウム原子を含む化合物を単独でまたは2種以上併用して用いることができる太陽電池の製造方法。」
第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 引用発明1の「半導体基板」は、本願発明1の「半導体基板」に、引用発明1の「半導体基板の表面」は、本願発明1の「半導体基板の表面」に、引用発明1の「『半導体基板の』『裏面』」は、本願発明1の「『半導体基板の』『裏面』」に、引用発明1の「太陽電池素子の製造方法」は、本願発明1の「太陽電池の製造方法」に、引用発明1の「p型拡散層形成組成物の熱拡散処理は、n型拡散層形成組成物の熱拡散処理と同時に行なう」は、本願発明1の「熱工程を含む両面同時拡散工程とを実施し」に、それぞれ相当する。
イ n型とp型は異なる導電型であり、本願発明1の「拡散保護マスク」は「BSG膜からな」り、「第2の不純物」は「第1の不純物であるホウ素とは異なる導電型」であるので、引用発明1の「半導体基板の表面に、n型拡散層形成組成物層を形成し、熱処理工程を施し、n型拡散層が形成され、裏面に付与されたB(ボロン)含む組成物で形成されたp型拡散層形成組成物を、熱拡散処理することで、裏面に高濃度電界層を形成され」と、本願発明1の「半導体基板の表面及び裏面に異なる導電型の拡散層を有する」、「第1の不純物であるホウ素とは異なる導電型の第2の不純物を含有するガス中で、前記拡散保護マスクから前記ホウ素を前記一方の面に拡散するとともに、前記半導体基板の他方の面に前記ガスから前記第2の不純物を拡散する」及び「前記一方の面に第1の不純物拡散層を形成するとともに、前記他方の面に、前記拡散保護マスクとは異なる導電性となる第2の不純物拡散層を形成する」は、「半導体基板の表面及び裏面に異なる導電型の拡散層を有する」、「『第1の不純物である』『ホウ素を前記一方の面に拡散するとともに、前記半導体基板の他方の面に』『前記第2の不純物を拡散する』」及び「前記一方の面に第1の不純物拡散層を形成するとともに、前記他方の面に、第1の不純物であるホウ素とは異なる導電型の第2の不純物拡散層を形成する」点で、一致する。
ウ 本願発明1と引用発明1とを対比すると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「半導体基板の表面及び裏面に異なる導電型の拡散層を有する太陽電池の製造方法であって、
第1の不純物であるホウ素を一方の面に拡散するとともに、前記半導体基板の他方の面に第2の不純物を拡散する熱工程を含む両面同時拡散工程とを実施し、
前記一方の面に第1の不純物拡散層を形成するとともに、
前記他方の面に、第1の不純物であるホウ素とは異なる導電性となる第2の不純物拡散層を形成する太陽電池の製造方法。」
(相違点1)
太陽電池の製造方法において、本願発明1では、「半導体基板の一方の面全面を被覆するように、BSG膜からなる拡散保護マスクを形成する工程」を実施するのに対し、引用発明1では、そのような特定がない点。
(相違点2)
第1の不純物であるホウ素を一方の面に拡散するとともに、半導体基板の他方の面に第2の不純物を拡散する熱工程を含む両面同時拡散工程が、本願発明1では「半導体基板の一方の面全面を、前記拡散保護マスクで被覆した状態で、第1の不純物であるホウ素とは異なる導電型の第2の不純物を含有するガス中」で実施され、前記ホウ素を前記一方の面に拡散するのは「前記拡散保護マスクから」であり、前記第2の不純物を拡散するの「前記ガスから」であるのに対し、引用発明1では、そのような特定がない点。
(2)判断
引用文献2には、上記相違点1の構成は記載されていないから、上記相違点1は、当業者が引用発明1に引用文献2に記載された技術を採用して容易に想到し得たものではない。そして、本願発明1は上記相違点1の構成を備えることで、引用文献2から想定され得るものに比べて、さらに「低コストで高効率の太陽電池の製造が可能であるという効果を奏する。」という効果を奏するものである。
したがって、本願発明1は、相違点2について検討するまでもなく、当業者が引用発明1及び引用発明2に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 本願発明2ないし6について
本願発明2ないし6は、本願発明1を減縮した発明であるから、本願発明1と同様の理由により、当業者が上記引用発明1及び上記引用発明2に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1ないし9について上記引用文献1及び2に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、上記のとおり、平成29年11月17日付け手続補正で補正された請求項1ないし6は、当業者が上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、原査定を維持することはできない。
第6 当審拒絶理由について
当審では、特許法第36項第6項第1号及び特許法第36項第6項第2号の拒絶理由を通知しているが、平成29年11月17日付け手続補正で補正された結果、この拒絶理由は解消した。
第7 むすび
以上のとおり、原査定及び当審の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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